リニアモータまたは交流発電機に連結されたフリーピストン装置の固定子共振バランス手段
【課題】振動のバランスユニットを別個必要とすることなく振動を最小限にできる。
【解決手段】スターリング装置に連結したリニア電磁機械変換装置の固定子230を、間挿したスプリング250を介してケーシング238の内部に取り付け、運転中この固定子を往復運動させてこのスプリングを撓ませるようにする。固定子の固有振動数ωsを、数式(数32)[ωp×平方根(1−αp/Kp)]と同等にすると共に、パワーピストン214の固有振動数ωpを、スターリング装置及びリニア電磁機械変換装置の動作振動数ωoと同等に維持する。動作ガスの平均温度および平均圧力の変化が、パワーピストン214の共振振動数ωpの実質的な変化を引き起こすような場合には、これらの変化を補正する手段によって振動のバランスを保つ。
【解決手段】スターリング装置に連結したリニア電磁機械変換装置の固定子230を、間挿したスプリング250を介してケーシング238の内部に取り付け、運転中この固定子を往復運動させてこのスプリングを撓ませるようにする。固定子の固有振動数ωsを、数式(数32)[ωp×平方根(1−αp/Kp)]と同等にすると共に、パワーピストン214の固有振動数ωpを、スターリング装置及びリニア電磁機械変換装置の動作振動数ωoと同等に維持する。動作ガスの平均温度および平均圧力の変化が、パワーピストン214の共振振動数ωpの実質的な変化を引き起こすような場合には、これらの変化を補正する手段によって振動のバランスを保つ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的にリニア交流発電機またはリニアモータに連結されたベータ型フリーピストンスターリングサイクルエンジンおよび冷却器に関し、より詳細には、従来の受動的な振動バランス装置を用いることなく、このような連結システムの振動を最小にするバランス手段を備えるスターリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スターリングサイクルエンジンは、機械的負荷を駆動するために、熱エネルギーを機械エネルギーに変換する効率的な熱機関(thermo-mechanical device)として知られている。同様に、スターリングサイクル冷却器は、機械的エネルギーを効率的に変換して、低い温度からより高い温度に熱エネルギーをくみ上げ、極めて低い温度まで熱負荷を冷却することに役に立つと知られている。まとめてスターリング装置として知られているこれらのエンジンおよび冷却器は、しばしばリニアモーターまたはリニア交流発電機に、機械的に連結される。スターリングエンジンは、発電用のリニア交流発電機を駆動し、スターリング冷却器は、リニアモーターによって駆動される。リニアモーターおよび交流発電機は、同じ基本的構成部品を有しており、その最も典型的なものは、永久磁石である。この永久磁石は、固定子を形成する磁気抵抗の低い強磁性体コアの上に巻かれたコイルの中を往復運動する。したがって、これらの装置は、まとめてリニア電磁機械変換装置(linear electro-magnetic-mechanical transducer)と呼ばれている
。
【0003】
スターリング装置は、種々の構成によって、リニア電磁機械変換装置に連結されるが、最も実用的、効率的およびコンパクトな構成の1つは、リニア電磁機械変換装置を、スターリング装置と一体的に連結したベータ型のスターリング装置を使用しており、これらは全て、密封したケーシング内に収納される。この構成において、往復運動する全ての構成部品は、共通の軸に沿って往復運動する。これらの往復運動する部材は、ピストン、ディスプレーサ、全ての連結ロッド、往復運動するマグネット、および支持あるいは取り付け構造を含む。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これらの部材の往復運動は、ケーシングに振動力を生じさせ、この振動力は、ケーシングおよびケーシングに取り付けられている全ての部材の振動を引き起こす。この振動を減少、最小化、あるいは消滅させるために、従来技術では、往々にして誤って振動吸収部材と呼ばれている振動バランサーを、ケーシングの内外に機械的に連結していた。振動バランサー、より典型的には、受動的振動バランサーは、相互に組み合わされ連結されたスターリング装置とリニア電磁機械変換装置とのコスト、及び容積を増加させ、かなり重量を増加させる。振動バランサーは、実際の運転時に発生する振動数に合わせるように、高精度に調整しなければならないが、高精度に調整することは、時として困難となる。さらに、スターリング装置とリニア交流発電機またはリニアモーターとを組み合わせた構造体の動作振動数が、調整した振動バランサーの共振数から外れた場合には、振動バランサーの有効性が損なわれる。また、振動バランサーは、スターリング冷却器を、通常の冷却モードの運転と併せて、エンジンモードの運転をさせたときに発生する、うなり振動数によって、この冷却器に望ましくない動的な挙動を引き起こす可能性がある。
【0005】
そこで本発明の目的および特徴は、振動バランサーの必要性を無くし、重量と振動数の精密な調整作業の要求とを減少させると共に、連結した装置に最小限の質量と容積とからなる数個の追加部品を加えるだけで、結果的にコストを削減する振動バランス手段を備える、リニア電磁機械変換装置と連結するベータ型スターリング装置を提供することにある。またこの発明は、発電の比出力および冷却器の能力を改善する。
【0006】
図1は、リニア電磁機械変換装置12に連結され、従来技術による振動バランサーを有するベータ型スターリング装置10を示す。ベータ型スターリング装置10は、パワーピストン14を有し、このパワーピストンは、ディスプレーサ18が往復運動する同じシリンダ16内において往復運動する。ディスプレーサ18は、連結ロッド20に固定され、この連結ロッドは、延伸して面スプリング22に連結される。パワーピストン14は、連結ロッド20上を密封状態で滑動し、第2の面スプリング24に連結される。
【0007】
パワーピストン14は、円周方向に配置された一連の永久磁石26を保持しており、この永久磁石は、パワーピストンと共に往復運動する。永久磁石26は、電機子巻線32を有する低磁気抵抗コア28の磁極の間を往復運動し、この電機子巻線32が固定子30を構成する。電機子巻線32を有する固定子30は、ケーシング38の内部に固定される。永久磁石26および固定子30は、共にリニアモーターまたは交流発電機を構成する。ベータ型スターリング装置10は、当該分野の専門家に周知の従来型の熱交換器34および再生器36を有する。これらの構成部品の全ては、ケーシング38の内部に、密封状態で収容され、このケーシングには、加圧された動作ガス(working gas)が充填される。リニア電磁機械変換装置に連結されたスターリング装置に関する従来技術において説明した付随的な構成部品と同様に、本発明に使用できる構成部品については、多くの構成の代替や変更が可能であるが、本発明の説明には不要であるので、これらについては説明しない。
【0008】
従来技術において周知のように、スターリング装置において、動作ガスは、膨張空間および圧縮空間から成る動作空間に密閉される。動作ガスは、仕事または熱の汲み上げを行うために、交互に膨張、圧縮される。往復運動するディスプレーサは、圧縮空間および膨張空間の間で、動作ガスを周期的に往復運動させ、この2の空間は、受熱器、再生器および放熱器を経由して、流体的に連通している。往復運動は、各空間における動作ガスの相対的な比率を周期的に変化させる。膨張空間に在るガス、及び/または再生器と膨張空間との間に位置する受熱熱交換器(アクセプター)を経由して膨張空間に流入するガスは、周囲の表面から熱を受け取る。圧縮空間に在るガス、及び/または再生器と圧縮空間との間に位置する放熱熱交換器(リジェクター)を経由して、圧縮空間に流入するガスは、周囲の表面に熱を放出する。これらの空間は、比較的低い流れ抵抗を有する流路を経由して相互に連通しているので、両方の空間のガス圧は、いかなる瞬間にも基本的に同じである。しかしながら、動作空間における動作ガスの圧力は、全体としては、周期的に変動する。大部分の動作ガスが圧縮空間にある場合には、ガスから熱が放出される。大部分の動作ガスが膨張空間にある場合には、ガスは熱を受け取る。このような熱の授受は、装置がヒートポンプとし動作しているか、エンジンとして動作しているかに関わらず当てはまる。仕事を生み出すか、熱を汲み上げるかを区別するための唯一の条件は、膨張行程が行われる温度である。膨張行程の温度が圧縮空間の温度より高い場合には、装置は仕事を生み出す方向にあり、したがって、装置はエンジンとして機能する。膨張行程の温度が圧縮空間の温度より低い場合、装置は低温の熱源から高温の熱溜め(heat sink)に熱を汲み上げる。
【0009】
リニア電磁機械変換装置に連結されたスターリング装置は、ケーシング内を往復運動する質量部分を有する複雑な振動システムであり、これらの質量部分は、これらに種々の力を印加するスプリング構造および減衰構造によって連結される。結果的に、これらは、往復運動する質量部分およびスプリング部分によって決定される固有振動数を持つ。
【0010】
「スプリング」という用語は、コイルスプリング、リーフスプリング、及び面スプリングのような機械的スプリング、空間内で移動する境界面を有するピストンのようなガススプリング、並びに従来技術で周知の他のスプリング等を含む。ガススプリングは、スターリング装置の動作空間を含み、ある具体例においては、後方空間の動作空間も含んでおり、ガスの体積が変化する際、運動する構成部品にスプリング力を加える。当該分野の専門家に周知のように、スプリングとは、一方の物体の他方の物体に対する変移に比例する力を、2個の物体に加えるような、構造物または構造物の組み合わせのことである。スプリング力と変移とを関連付ける比例定数は、スプリングのばね定数と称される。機械的スプリングは、動作あるいは移動されて、連結している二つの物体に加わる力が変化する場合に、しばしば「たわむ(flexed)」と表現される。同様の用語が、ガススプリングについても適用され、ガススプリングの圧縮または膨張とは、ガススプリングのたわみのことである。さらに、スプリングとは、複合スプリング、すなわち、二つ以上のスプリング要素を有するスプリングも含む。例えば、二つの物体間に並列に連結された二つのスプリングは、正味(net)で一つのスプリング、あるいは複合スプリングを構成する。スプリングの一方が可変、すなわち、可変のばね定数を持つ場合、複合スプリングも可変となる。「スプリング連結(spring coupling)」という用語は、二つの物体がひとつ以上のスプリングで連結される、すなわち、正味で一つのスプリングで連結されていることを示すために使われる。
【0011】
一つ以上の物体の振動運動を説明するために、一つの物体の質量とは、この物体に取り付けられ、共に運動する全ての構造物の質量をも含むものとする。ピストンの質量はマグネットの質量とピストンに取り付けられているマグネットの支持部材の質量とを含む。同様に、固定子の質量は、発電機乃至モーターのコイルと、低磁気抵抗強磁性体と、支持部材のような付加的質量との合計である。ディスプレーサの質量はディスプレーサ連結ロッドの質量も含む。
【0012】
リニア電磁機械変換装置に連結されたスターリング装置は、周期的に往復運動する質量部分を有するため、そのケーシング38は振動する。したがって通常、振動バランサー40がケーシング38に取り付けられ、周期的な振動力を相殺する。図1を参照すれば、典型的な振動バランサーは、平面またはリーフスプリング44、ときにはコイルスプリング(図示せず)に取り付けられた複数の質量部分42を有し、これらもまた振動する物体となる。リーフスプリング44は、連結部材46によってケーシング38に連結される。リニア電磁機械変換装置に連結されたスターリング装置は、所定の動作振動数を有し、振動バランサーは、この動作振動数の固有振動数を持つように調整される。その原理とは、次のような条件で、質量部分42およびこれらに取り付けられたリーフスプリングが設計されていることである。すなわちその条件とは、振動する質量部分42が、リーフスプリング44によってケーシング38に加えられる周期的な力を引き起こし、この周期的な力が、往復運動する部材、主にパワーピストン14およびディスプレーサ18によってケーシング38に加えられる振動力と、大きさが等しく、かつ位相が反対になっていることである。このような方法で、ケーシング38に加えられる力の合計はゼロに等しいか、ゼロにほとんど等しくなる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、受動的な振動バランス装置の必要性をなくする。リニア電磁機械変換装置の固定子を、ケーシングの内部に剛体的に結合する(in rigid connection)代わりに、固定子は、スプリング上を自由に動けるように、1つ以上のスプリングを介してケーシングの内部に取り付けられる。スプリング部材は、スターリング装置および連結した電磁機械変換装置の動作中に、固定子が往復運動する他の部材の往復運動軸に沿って往復運動して、スプリングを撓ませることができるように配置される。固定子、ディスプレーサ及びピストンは、それぞれの部材に作用するスプリング力を持つ質量であって、それ故、それぞれの部材は共振振動数を持つ。詳細な説明において説明するように、装置の相互に連結する質量部分が、これらの共振振動数、動作振動数、減衰構造(damping)、スプリングの連結、及び装置のその他のパラメータの間の特別な数学的な関係を、実質的または近似的に持つように設計することによって、振動は、減少され、最小化され、あるいは消滅する。一般的に、固定子の共振振動数は、リニア電磁機械変換装置に連結されたスターリング装置の動作振動数に実質的ないし基本的に等しく、かつピストンの共振振動数より若干低くすべきである。
【0014】
しかしながら、リニア電磁機械変換装置に連結されたスターリング装置のいくつかの実施例においては、ピストンの共振振動数は、温度と動作ガスの平均圧力との関数として変化する。それ故、温度および平均圧力が、動作の過程で変化するような装置については、固定子とケーシングとの間、またはピストンとケーシングとの間のスプリング連結を変える構造によって、温度および平均圧力の変化を相殺する。スプリング連結を変えることは、固定子またはピストンの共振振動数をずらして、振動を最小限にするパラメータ間の数学的関係を維持し、それによって変化を相殺する。
【0015】
なお添付図面に示す本発明の好ましい具体例の説明おいては、明確性を増すために特殊な専門用語を使用している。しかしながら本発明を、選択した特定の用語に限定することは意図しておらず、さらに各々の特定の用語は、同様の方法で同様な目的を達成する全ての技術的等価物を含むことを理解すべきである。例えば、用語「連結」またはこれの類似用語がしばしば用いられるが、これらは、直接的に連結しているものに限定されず、他の部材を介した連結も含んでおり、このような連結構造は当該分野の専門家により等価物であると認識されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図2に本発明の基本的な構成を示す。図2に示す構成部品は、既に説明したか、あるいは当該分野の専門家に明らかである部分を除いて、図1の装置に類似している。図2の具体例において、固定子230は、間挿されたスプリング250を経由して、ケーシング238の内部に取り付けられる。この構成により、スターリング装置及びそれに連結したリニアモータまたは交流発電機の動作中に、固定子230が往復運動し、スプリング250を撓ませることを可能にする。固定子230それ自身が、パワーピストン214とディスプレーサ218とに共通な往復運動軸に沿って、往復して振動する質量部分となり、これらのパワーピストンおよびディスプレーサには、これらに連結されて、それぞれ往復運動する質量部分も含まれる。図2は、固定子230とケーシング238とを連結するために、機械的なスプリングを使用した場合を示しているが、先に説明したように、他のタイプのスプリングも使用できる。結果として、固定子230は、リニアモータまたは交流発電機の固定子としての役割と、振動をバランスさせる質量としての役割との両方を同時に果たす。
【0017】
リニア電磁機械変換装置に連結されたスターリング装置において、ケーシングに作用して、合計するとゼロになる力をもたらす、各パラメータ間の関係は、数学的解析で見出される。図3は、数学解析を行うために、図2に示す具体例をモデル化した略図である。図3には、すべてのパラメータを示してはいないが、本発明を説明するために使用されるパラメータを、参照のため図9に一括して示し、定義する。
【0018】
振動をバランスさせるために、本発明で使用する条件の数学的な展開は、本明細書の後半に示す。しかしながら、解析の結果、固定子の共振振動数は、図11の数式(数13)に示すようになる。ところで小さい項目を無視して上記式を簡単化すると、固定子の共振振動数は基本的に、図11の数式(数14)に示すようになる。
【0019】
通常αpは、kpに比べると小さいから、上記数式(数14)は、固定子共振振動数ωsが、ピストンの共振振動数ωpより若干小さいことを意味している。
【0020】
パラメータ間の上記関係に加え、動作振動数ωoは、図11の数式(数15)に示すようになる。
【0021】
ディスプレーサのピストンに対する減衰係数Ddpが非常に小さいような典型的な条件においては、上記数式(数15)は、図11の数式(数16)に示すように簡単になる。
【0022】
これは、動作振動数ωoが、基本的には固定子共振振動数ωpに等しいことを意味する。
【0023】
これらの関係を満足すれば、ケーシングに対して正味の力が作用しないという結果となり、本発明による固定子の共振バランスの条件を得ることができる。
【0024】
多くの現実的な工学的な解法と同様に、数学的に正確であることは必要とされない。通常、数学的な正確さからずれてはいるが、装置の運転が許容されるような範囲あるいは幅があり、また、わずかな不正確さ、及び正確さの間の差異を知ることが難しいか、あるいは不可能な、更に狭い幅も存在する。このことは、共振システムを取り扱う場合には、特に当てはまる。当業者に周知のように、共振システムの応答は、共振のピークによって表現され、そのピークの鋭さが質的な要因Q(quality factor)によって定量化される。ピークの中心からの僅かな変位が、性能の僅かな劣化を引き起こす。本発明に関すれば、上述のように定義され、バランスを達成するために必要なパラメータ間の関係は、数式で表す関係に対して±20%以内にあることが必要である。±20%の範囲内であれば、本発明の実施例のあるものは、許容され、有利となる。±10%の範囲内であれば、殆んどの実施例は優れた結果を与えるであろう。パラメータが上記方程式で定義される関係に対して、±5%の範囲内にあれば、正確である考えることができる。
【0025】
上記方程式のパラメータのいくつかは、温度および/または圧力に依存する。それ故に、上記原理にのみ基づく本発明の具体例は、動作ガスの平均温度および平均圧力が、ほとんど一定に保たれるか、あるいは少なくとも温度および圧力の一方または両方の変動が十分小さくて、数学的な関係が、運転中の変動について定義された限界内に、実質的に維持されている場合には、有効である。しかしながら、運転中に、温度および圧力の一方または両方が変動して、許容できない大きい振幅の振動が生じる場合は、数学的な関係を許容できる範囲内に戻すように、圧力および/または温度の変動を補正することが可能である。
【0026】
数学的な導出において以下説明するように、温度および圧力の関数としての変動を示す唯一のパラメータは、ピストンの共振振動数ωpである。ピストンの共振振動数ωpの典型的な変動特性を、温度の関数として図7に示す。しかしながら、ピストンの共振振動数ωpは、次のような3つの方法で補正することができる。
(1)ピストンの共振振動数ωpを制御しながら調整または変化させ、許容できる範囲内にこれらの関係を戻す。
(2)固定子の共振振動数ωsを制御しながら調整または変化させ、許容できる範囲内にこれらの関係を戻す。
及び/または、
(3)残留力変換器をケーシングに連結し、この残留力変換器が付加的な周期力をケーシングに印加して、残留振動を消滅させるようにする。
【0027】
振動するスプリングおよび質量システムの共振振動数は、その正味のスプリングのばね定数の関数であるので、ピストンの共振振動数ωp、または固定子の共振振動数ωsの一方またはこれらの両方を、これらのばね定数kpおよびksを変化させる手段をそれぞれ設けることによって、変化させることができる。このことは一般的に、用いるスプリングのばね定数が可変である場合には、これらのスプリングのばね定数を変化させることによって達成され、あるいは付加的な可変スプリングを並行して連結することによって達成される。従来技術において周知のように、ガススプリングは、容積を変えることによって可変となり、多様なガススプリングが従来技術に示される。固定子430とケーシング438との間の正味のスプリングのばね定数ksは、平面状の固定子スプリング450のばね定数と、並行に取り付けられた可変スプリングのばね定数との合計である。それ故、可変スプリングのばね定数が変化すると、ばね乗数ksが変化する。
【0028】
図4は、固定子430をケーシング438に取り付けているスプリングの、正味のばね定数ksを変化させる手段の1例を示す。固定子430は、両方のスプリング450と、前述した具体例のように、これらのスプリングに図式的に並行に連結した可変ガススプリングとによって、ケーシングに連結される。可変ガススプリングは、小さいシリンダ462の内部を密封状態で滑動する、複数の小さいピストン460によって構成され、連結ロッド464により固定子430に連結される。小さいシリンダ462のそれぞれの内部空間は、二つの並行な分岐路を含む通路を経由して、後方空間466に連通しており、それぞれの分岐路は、チェックバルブ468と流量制御バルブ470とを有している。チェックバルブ468と流量制御バルブ470とは、それぞれの分岐路において、直列して連結されているが、一方の分岐路と他方の分岐路では、向きが逆向きにしてある。
【0029】
殆んどのスターリング装置において、後方空間の圧力は、僅かな圧力変化を受けるが、基本的には平均的な動作空間圧力を維持する。一方、動作空間圧力は、運転中に周期的に変化する。可変ガススプリングピストン460が往復運動すると、小さいシリンダ462内の圧力は、平均動作ガス圧力の上下に周期的に変化する。小さいシリンダ462内の圧力が相対的に低い場合、ガスは、後方空間466から、小さいシリンダ462に漏れ出る。小さいシリンダ462の圧力が相対的に高い場合、ガスは、小さいシリンダ462から、後方空間466に漏れ出る。可変ガススプリングの体積を変化させ、それによって、これらのばね定数を変化させるために、バルブ470が設置されて異なる流量を提供する。各サイクルの間に、小さいシリンダ462に流入するガス流量が、この小さいシリンダから流出するガス流量を超える場合は、この小さいシリンダへの正味の流入流量が生じて、この小さいシリンダの容積を膨張させ、結果的にばね定数を減少させる。なお逆に、正味の流出流量は、反対の効果を生じる。この差動漏洩(differential leakage)システムは、小さいシンリンダー462内の可変ガススプリングピストン460の平均位置を制御しながら変化させるように、流量制御バルブ470を変化させ、さらにこの方法によって、正味のばね定数ksを制御可能な状態で変化させ、それ故にピストンの共振振動数ωpの変動を、温度および圧力の関数として補正することが可能になる。変動が小さい場合は、流量制御バルブを固定オリフィスで代替できる場合、または流量制御バルブを持たない並行流路の直径が十分に小さくて流量を制限するように機能する場合には、流量制御バルブの一方を省略できる。その場合、残りの流量制御バルブを、流量制御バルブを省いた流路より大きいか、または少ない流量を提供するように変化させることができる。
【0030】
平均動作ガス圧力および温度の変化の結果としての、ピストンの共振振動数ωpの変動を補正する一つの代替法は、差動漏洩システムを含む可変ガススプリングを用いて、ピストンの共振振動数ωpを制御しながら変化させるものであって、この差動漏洩システムは、図4に示すものに類似しているが、ピストン414およびケーシング438の間に連結されている。図示してはいないが、この構成は、上述したものと類似するものであって、正味のばね定数kpに対する同等の制御を可能にする、図式的に並行に設けられた可変スプリングを提供する。
【0031】
平均動作ガス圧力および温度の変化の結果としての、ピストンの共振振動数ωpの変化を補正する他の代替法は、パワーピストンの平均位置を変化させるという原理に基づく。ピストンとケーシングとの間に位置する正味のスプリングの主なスプリング要素の一つは、往復運動するピストンに作用する動作空間内にある動作ガスに対する、ガススプリングの効果である。ピストンが往復運動すると、動作ガスは周期的に膨張圧縮し、ピストンに時間的に変化する圧力を加える。どのようなガススプリングにおいても、ばね定数は、密封された動作ガスの体積の関数である。ピストンの平均位置は、往復運動の両端部の中間にあって、動作空間の平均体積を代表する。往復運動するピストンの平均位置が外方向に移動して、動作空間の平均体積が増加すると、密封された動作ガスがピストンに作用することによって生じるガススプリングのばね定数は、減少する。逆に、往復運動するピストンの平均位置が内方向に移動して、動作空間の平均体積を減少させる場合、密封された動作ガスがピストンに作用することによって生じるガススプリングのばね定数は、増加する。ピストンからケーシングへの正味のばね定数kpの重要な要素は、動作ガスのガススプリング効果であるため、ピストンの平均位置を変えることによって、ピストンの共振振動数ωpを制御しつつ変化させることができる。
【0032】
平均動作ガス圧力および温度の変化の結果としてのピストンの共振振動数ωpの変動を補正するために、平均ピストン位置を制御しながら変化させることに基づく多くの手段がある。このような方法の一つは、図4に示す差動漏洩システムに、概念的に類似する差動漏洩システムを含む。従来技術において周知のように、ピストンと後方空間との間のガス漏洩が対称的でないため、従来技術では、ピストンの位置を往復運動の中心に設定する、すなわち、平均ピストン位置を一定に維持する場合における、多様な差動漏洩システムを提示している。後方空間と動作空間との間のガス流量を制御するため、既存のバルブシステム、あるいは一つ以上の追加バルブを制御し、平均ピストン位置を移動させて、動作空間の平均体積を変化させることができる。結果的に、これらのバルブは、ピストンとケーシングとの間の正味のばねの要素のばね定数を変化させるために用いられる。なおこの正味のばねは、動作ガスがピストンに作用することに起因するばね定数kpを有する。
【0033】
平均動作ガス圧力または温度の変化の結果として発生するピストンの共振振動数ωpの変化を、平均ピストン位置の移動によって補正する手段であって、簡単かつ単純である好ましい手段は、リニアモータまたは交流発電機の電機子巻線に、直列に連結した直流電源から、一定の直流電圧をかけることである。このことは、リニアモータまたは交流発電機に、増加する電流を飽和させることなく処理できることが要求される。図8に、補正のための手段を示す。電源800から電機子巻線832に直流電圧を加えることは、ピストン814で保持されるマグネット826、したがってピストン814に作用する一定の磁力を生じさせる。ピストン814へ加えられる力の大きさは、印加した電圧によって生じる電機子の電流の関数であって、往復運動の軸に沿った方向を有し、この方向は、印加した電圧の極性の関数である。ピストンに加わった力が、ピストンを動作空間から離すように作用する場合、この力は、往復運動するピストンの平均位置を、動作空間から離れるように変位させ、それによって動作空間の平均容積を増加させ、さらには、ピストンに作用する動作ガスに起因するばね定数を減少させる。反対の極性の直流電圧は、反対の効果を生じる。平均ピストン位置が移動する距離は、印加電圧に起因する電流の関数である。
【0034】
全ての条件の下で、ピストンの共振振動数のバランスを達成する他の手段は、固定子とケーシングとの間に、または、ピストンとケーシングとの間に、残留力変換器
(residual force transducer)を設けることである。残留力変換器は、リニア交流発電機またはモーターの形態とすることが可能である。残留力変換器は、ケーシングに時間的に変化する力を加え、この力は、残留振動を引き起こす非平衡の残留力と、大きさが同じで、方向が逆である。この力は、非平衡力が非正弦曲線である場合、非正弦曲線的であり、また残留非平衡力と位相が逆である。残留力変換器により加えられる力は複雑であり、高次の調和振動数を持つことがある。力を連結したもの(force coupling)は、速度と同相(in phase)である事が望ましく、これにより減衰機能を果たす。しかしながら実際のハードウエアにおいて、完全に調整できるものは存在せず、常にスプリング要素、すなわち、エネルギーを貯蔵するように反応する要素が存在する。
【0035】
固定子とケーシングとの間に連結された残留力変換器の、他の好ましい実施例を図5に示すと共に、その略図を図6に示す。この実施例は、固定子をケーシングに力学的に連結するために、2次的なリニアモーターによる残留力変換器500を使用する。残留力変換器の力学的な結合は、図6に示すFsによって表わされる。スプリング550の手段によって、固定子530をケーシングに取り付けることに加えて、図4に示す具体例のように、固定子530上に巻きつけられた2次的な電機子巻線570と、ケーシングに固定された永久磁石572とによって、2次的なリニアモータが構成される。時間的に変化する周期的な電圧が、2次的な電機子巻線570に印加され、2次的な電機子コイルの磁場と、永久磁石の磁場との相互作用の結果として、大きさが等しく、向きが反対の時間的に変化する磁気力が生成されて、固定子530とケーシングとに印加される。残留振動を引き起こす残留非平衡力と、大きさが等しく向きが逆の時間的に変化する力を、ケーシングに加えるように、時間的に変化する周期的な電圧が選択される。時間的に変化する周期的な電圧は、大きさと位相とを手動で調整することができ、あるいは負のフィードバック制御システムにより発生させることができる。このフィードバック制御システムは、残留力を検知し、残留振動をゼロまたは最小限にするように、大きさと位相とを調整する。
【0036】
リニア電磁機械変換器に連結されたベータ型スターリング装置に関する構成部品、有効なスプリング、減衰構造、並びに種々の部品の結合構造についての変数、係数および定数を指定する記号等や、運動、他の振動、パラメータは、図9にリストアップしたとおりである。
【0037】
式における微細な項目を無視または省略するときは、無視する項目が、式の他の項目に比べて一桁以上小さい場合であることを意味している。
【0038】
ケーシングへの力がゼロであるためには、ケーシングへ連結する全ての部分からの力の合計がゼロとなることが必要である。これは、図10の数式(数1)の条件を課すことで達成される。なお上記数式(数1)において、xdの上の点は、時間および速度に関する一階微分を示す。
【0039】
正弦運動を仮定すれば、上記数式(数1)は、図10の数式(数2)のように書き直される。
【0040】
ケーシングが静止している場合、システムの重心の運動は、図10の数式(数3)によって表される。
【0041】
上記数式(数3)を整理して複素振幅を用いれば、図10の数式(数4)となる。
【0042】
上記数式(数4)を数式(数2)に代入すれば、図10の数式(数5)となる。
【0043】
動的システムのQは、使いやすい量であり、ディスプレーサに対しては、図10の数式(数6)のように定義される。
【0044】
単純な質量のスプリングの固有振動数は、便利な量であって、図10の数式(数7)のように定義される。
【0045】
上記数式(数6)及び数式(数7)を、数式(数5)に適用すると、図10の数式(数8)に示す結果が得られる。
【0046】
固定子について完全なバランスが取れた場合、ケーシングは動かず、ディスプレーサの運動について、従来どおりの結果が適用される。この形式の装置に関する標準的な線形解析は、Redlich R.W.およびBerchowitz D.M.等の「Linear dynamics of free-
piston Stirling engines」(Proc. Institution of Mechanical Engineers, Vol.199,no.A3,March 1985,pp203-213)において議論されている。本明細書では、この論文を参考にしている。ケーシングの運動がゼロと仮定すると、標準的な線形解析によって、図10の数式(数9)に示す結果が得られる。
【0047】
上記数式(数9)を数式(数8)に代入すれば、図10の数式(数10)に示す結果となる。
【0048】
上記数式(数10)が成り立つためには、実数項および虚数項の両方がゼロである必要がある。これは2つの結果を与える。実数項からは、図11の数式(数11)が成立する。また虚数項からは、図11の数式(数12)が成り立つ。
【0049】
最終的に、上記数式(数11)および数式(数12)から、固定子の共振振動数および動作振動数が得られる。すなわち上記数式(数12)から、固定子の共振振動数は、図11の数式(数13)によって得られる。さらに大きさの小さい項目を無視して近似すれば、図11の数式(数14)が得られる。
【0050】
上記数式(数11)に、近似的結果である(数14)を適用すれば、動作振動数は、図11の数式(数15)のようになる。
【0051】
ディスプレーサからピストンへの減衰係数、すなわちDdpが、非常に小さいという条件の下では、上記数式(数15)は、図11の数式(数16)のように簡単になる、
【0052】
このことは、動作振動数が固定子の共振振動数と同じであって、固定子の共振振動数がピストンの共振振動数より僅かに低いことを示唆している。
【0053】
上記数式(数13)または数式(数14)と、数式(数15)または数式(数16)とを満足させることは、ケーシングへ加わる正味の力が無いという結果となり、固定子の共振バランス(RSB)の条件となる。
【0054】
しかしながら実際に適用することを考えると、この条件が、上記数式(数13)から数式(数16)に示す項目が、特別な値である場合だけについて成立し得ることが明らかである。これらの項目の多くは、圧力および/または温度に依存し、それ故、設計からずれた点では、完全なバランスは得られない。
【0055】
フリーピストン装置についての線形力学から、αpおよびkpは、それぞれ図11の数式(数17)及び数式(数18)ように表される。
【0056】
ガススプリングに比べると効果が少ない機械的なスプリングについては、αpおよびkpは、近似的には同じ割合で変化するので、αp/kpの比率は、殆んど一定となることは明らかである。ピストン上に機械的なスプリングを有しない装置については、図11の数式(数18A)が成立する。
【0057】
したがって上記数式(数14)において、変化する唯一のパラメータは、ピストンの共振振動数ωpである。このピストンの共振振動数ωpは、図7に示すように温度に対して変化し、また圧力に対しても変化する。全ての動作条件においてバランスを達成するために、固定子の共振振動数ωsは、ピストンの共振振動数ωpに従って変化させなければならない。これは、明らかに、固定子上に可変スプリングを実装することを要求する。これを実施する手段を図4に示す。ここでは、ガススプリングのプランジャー
(plunger)の平均位置は、ガススプリングと反発する体積部分(bounce volume)との間の、差動ポンプ動作(differential pumping)を制御することによって、移動させる。ガススプリングのプランジャーの僅かな移動が、固定子の正味のばね定数を変化させる。ガススプリングのプランジャーが内側に移動すれば、スプリングは強化され、ガススプリングのプランジャーが外側に移動すれば、スプリングは弱められる。
【0058】
ピストンの共振振動数の変化を補正するための簡単な技術は、ピストンの平均ばね定数を変化させる手段を設けることである。この手段は、固定子の共振振動数について説明したものと類似の手段によって実現されるが、この手段においては、ピストンに対して適用される。言い換えれば、固定子を調整するのではなく、同じ正味の効果が得られように、ピストンの平均位置を調整できるようにする。ピストンの共振振動数が増加する場合、ピストンのガススプリング効果が強化され、ピストン平均位置の外側への移動によってガススプリングの効果が弱められ、したがって正しい調整を行えば、ピストンの共振振動数を、正常な値に戻すことができることを意味している。ピストンガススプリング効果が弱まる場合、この手段は、逆方向に作用する。差動漏洩によって、ピストンの平均位置の移動を調整することは別に、モーターまたは交流発電機に印加された直流電圧は、モーターまたは交流発電機において増加する電流が飽和しなければ、同様な効果を達成する。
【0059】
全ての条件でバランスを達成するひとつの代替手段は、固定子とケーシングとの間、または、ピストンとケーシングとの間に残留力変換器を設置することである。図6は、この構成を概略的に示しており、固定子からケーシングへの連結構造を設けるという実例を示している。残留力変換器は、リニア交流発電機またはモーターの形態を取る。図5は、リニアモーター力変換器の一例を示す。ピストンの共振振動数が変化するような条件の下で、ケーシングの運動を消滅するために要する残留力を決定することは有益である。
【0060】
ケーシングに作用する力の合計は、図11の数式(数19)により与えられる。
【0061】
上述した方法により、上記数式(数19)は、結果的に図12の数式(数20)になる。
【0062】
ここで図12の数式(数21)を設定する。
【0063】
さらに加えて、図12の数式(数22)を設定する。すなわち、動作振動数を、固定子の共振振動数に等しくする。
【0064】
上記数式(数20)に、数式(数21)および数式(数22)を代入すると、図12の数式(数23)が得られる。
【0065】
Fsの項目について整理すると、図12の数式(数24)となる。
【0066】
図12の数式(数25)を定義する。ここで、図12の数式(数26)に示すピストンの共振振動数ωpの定義に注目する。そしてαp/kpが一定(すなわちピストン上に機械的スプリングが存在しない)となる瞬間を仮定する。このωpを代入すると、上記数式(数24)は、図12の数式(数27)になる。ここでδは、図12の数式(数28)で表され、通常1より小さい。
【0067】
テイラー展開を用いれば、上記数式(数27)は、図12の数式(数29)のように近似できる。そして2次の項目を無視すれば、上記数式(数29)は、図13の数式(数30)に示すように、さらに簡略化される。上記数式(数30)は、ピストンの単位振幅当たりの残留力が、図13の数式(数31)より小さな実数成分と、同様に典型的には小さい虚数成分Ddpωoとを持つことを示す。
【0068】
図面と関連する詳細な説明は、専ら本発明の好ましい具体例を説明することを意図するものであって、本発明を構成し利用する唯一の形態を示すことを意図するものではない。この説明は、図示した具体例に関して、本発明を実施するための設計、機能、手段、及び方法等を述べるものである。しかしながら、同じまたは等価な機能および特徴は、本発明の精神および範囲に包含されるよう意図された異なる具体例によっても達成され、また多くの改良も、次に述べる本発明の特許請求の範囲内のものとして、採用され得ることを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】従来技術によるスターリング装置の概略断面図であって、リニア電磁機械変換装置に連結され、従来の振動バランサーを有する。
【図2】本発明の具体例を示す概略断面図であって、変更箇所を除いては、図1に類似する。
【図3】図2の構成部品の質量を示す略図であって、これらの間のスプリング構造、減衰構造および力の結合構造を示し、これらの数学的パラメータと、往復運動する部品の運動とを定義する。
【図4】動作パラメータの変化を相殺する代替手段を有する本発明の、他の具体例を示す概略断面図であって、変更個所を除いては、第2図の具体例に類似する。
【図5】動作パラメータの変化を相殺する他の代替手段を有する本発明の、さらなる他の具体例を示す概略断面図であって、変更個所を除いては、第2図の具体例に類似する。
【図6】図5の具体例のパラメータを示す略図であって、変更個所を除いては、図3の略図と類似する。
【図7】動作ガス温度の関数として、ピストンの共振振動数の変化を示すグラフである。
【図8】動作温度の変化を相殺する他の代替手段を有する本発明の、他の具体例を示す概略断面図であって、部分を除いては、変更個所を除いては、第2図の具体例に類似する。
【図9】数式に用いた記号の説明図である。
【図10】数式の説明図である。
【図11】数式の他の説明図である。
【図12】数式の他の説明図である。
【図13】数式の他の説明図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的にリニア交流発電機またはリニアモータに連結されたベータ型フリーピストンスターリングサイクルエンジンおよび冷却器に関し、より詳細には、従来の受動的な振動バランス装置を用いることなく、このような連結システムの振動を最小にするバランス手段を備えるスターリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スターリングサイクルエンジンは、機械的負荷を駆動するために、熱エネルギーを機械エネルギーに変換する効率的な熱機関(thermo-mechanical device)として知られている。同様に、スターリングサイクル冷却器は、機械的エネルギーを効率的に変換して、低い温度からより高い温度に熱エネルギーをくみ上げ、極めて低い温度まで熱負荷を冷却することに役に立つと知られている。まとめてスターリング装置として知られているこれらのエンジンおよび冷却器は、しばしばリニアモーターまたはリニア交流発電機に、機械的に連結される。スターリングエンジンは、発電用のリニア交流発電機を駆動し、スターリング冷却器は、リニアモーターによって駆動される。リニアモーターおよび交流発電機は、同じ基本的構成部品を有しており、その最も典型的なものは、永久磁石である。この永久磁石は、固定子を形成する磁気抵抗の低い強磁性体コアの上に巻かれたコイルの中を往復運動する。したがって、これらの装置は、まとめてリニア電磁機械変換装置(linear electro-magnetic-mechanical transducer)と呼ばれている
。
【0003】
スターリング装置は、種々の構成によって、リニア電磁機械変換装置に連結されるが、最も実用的、効率的およびコンパクトな構成の1つは、リニア電磁機械変換装置を、スターリング装置と一体的に連結したベータ型のスターリング装置を使用しており、これらは全て、密封したケーシング内に収納される。この構成において、往復運動する全ての構成部品は、共通の軸に沿って往復運動する。これらの往復運動する部材は、ピストン、ディスプレーサ、全ての連結ロッド、往復運動するマグネット、および支持あるいは取り付け構造を含む。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これらの部材の往復運動は、ケーシングに振動力を生じさせ、この振動力は、ケーシングおよびケーシングに取り付けられている全ての部材の振動を引き起こす。この振動を減少、最小化、あるいは消滅させるために、従来技術では、往々にして誤って振動吸収部材と呼ばれている振動バランサーを、ケーシングの内外に機械的に連結していた。振動バランサー、より典型的には、受動的振動バランサーは、相互に組み合わされ連結されたスターリング装置とリニア電磁機械変換装置とのコスト、及び容積を増加させ、かなり重量を増加させる。振動バランサーは、実際の運転時に発生する振動数に合わせるように、高精度に調整しなければならないが、高精度に調整することは、時として困難となる。さらに、スターリング装置とリニア交流発電機またはリニアモーターとを組み合わせた構造体の動作振動数が、調整した振動バランサーの共振数から外れた場合には、振動バランサーの有効性が損なわれる。また、振動バランサーは、スターリング冷却器を、通常の冷却モードの運転と併せて、エンジンモードの運転をさせたときに発生する、うなり振動数によって、この冷却器に望ましくない動的な挙動を引き起こす可能性がある。
【0005】
そこで本発明の目的および特徴は、振動バランサーの必要性を無くし、重量と振動数の精密な調整作業の要求とを減少させると共に、連結した装置に最小限の質量と容積とからなる数個の追加部品を加えるだけで、結果的にコストを削減する振動バランス手段を備える、リニア電磁機械変換装置と連結するベータ型スターリング装置を提供することにある。またこの発明は、発電の比出力および冷却器の能力を改善する。
【0006】
図1は、リニア電磁機械変換装置12に連結され、従来技術による振動バランサーを有するベータ型スターリング装置10を示す。ベータ型スターリング装置10は、パワーピストン14を有し、このパワーピストンは、ディスプレーサ18が往復運動する同じシリンダ16内において往復運動する。ディスプレーサ18は、連結ロッド20に固定され、この連結ロッドは、延伸して面スプリング22に連結される。パワーピストン14は、連結ロッド20上を密封状態で滑動し、第2の面スプリング24に連結される。
【0007】
パワーピストン14は、円周方向に配置された一連の永久磁石26を保持しており、この永久磁石は、パワーピストンと共に往復運動する。永久磁石26は、電機子巻線32を有する低磁気抵抗コア28の磁極の間を往復運動し、この電機子巻線32が固定子30を構成する。電機子巻線32を有する固定子30は、ケーシング38の内部に固定される。永久磁石26および固定子30は、共にリニアモーターまたは交流発電機を構成する。ベータ型スターリング装置10は、当該分野の専門家に周知の従来型の熱交換器34および再生器36を有する。これらの構成部品の全ては、ケーシング38の内部に、密封状態で収容され、このケーシングには、加圧された動作ガス(working gas)が充填される。リニア電磁機械変換装置に連結されたスターリング装置に関する従来技術において説明した付随的な構成部品と同様に、本発明に使用できる構成部品については、多くの構成の代替や変更が可能であるが、本発明の説明には不要であるので、これらについては説明しない。
【0008】
従来技術において周知のように、スターリング装置において、動作ガスは、膨張空間および圧縮空間から成る動作空間に密閉される。動作ガスは、仕事または熱の汲み上げを行うために、交互に膨張、圧縮される。往復運動するディスプレーサは、圧縮空間および膨張空間の間で、動作ガスを周期的に往復運動させ、この2の空間は、受熱器、再生器および放熱器を経由して、流体的に連通している。往復運動は、各空間における動作ガスの相対的な比率を周期的に変化させる。膨張空間に在るガス、及び/または再生器と膨張空間との間に位置する受熱熱交換器(アクセプター)を経由して膨張空間に流入するガスは、周囲の表面から熱を受け取る。圧縮空間に在るガス、及び/または再生器と圧縮空間との間に位置する放熱熱交換器(リジェクター)を経由して、圧縮空間に流入するガスは、周囲の表面に熱を放出する。これらの空間は、比較的低い流れ抵抗を有する流路を経由して相互に連通しているので、両方の空間のガス圧は、いかなる瞬間にも基本的に同じである。しかしながら、動作空間における動作ガスの圧力は、全体としては、周期的に変動する。大部分の動作ガスが圧縮空間にある場合には、ガスから熱が放出される。大部分の動作ガスが膨張空間にある場合には、ガスは熱を受け取る。このような熱の授受は、装置がヒートポンプとし動作しているか、エンジンとして動作しているかに関わらず当てはまる。仕事を生み出すか、熱を汲み上げるかを区別するための唯一の条件は、膨張行程が行われる温度である。膨張行程の温度が圧縮空間の温度より高い場合には、装置は仕事を生み出す方向にあり、したがって、装置はエンジンとして機能する。膨張行程の温度が圧縮空間の温度より低い場合、装置は低温の熱源から高温の熱溜め(heat sink)に熱を汲み上げる。
【0009】
リニア電磁機械変換装置に連結されたスターリング装置は、ケーシング内を往復運動する質量部分を有する複雑な振動システムであり、これらの質量部分は、これらに種々の力を印加するスプリング構造および減衰構造によって連結される。結果的に、これらは、往復運動する質量部分およびスプリング部分によって決定される固有振動数を持つ。
【0010】
「スプリング」という用語は、コイルスプリング、リーフスプリング、及び面スプリングのような機械的スプリング、空間内で移動する境界面を有するピストンのようなガススプリング、並びに従来技術で周知の他のスプリング等を含む。ガススプリングは、スターリング装置の動作空間を含み、ある具体例においては、後方空間の動作空間も含んでおり、ガスの体積が変化する際、運動する構成部品にスプリング力を加える。当該分野の専門家に周知のように、スプリングとは、一方の物体の他方の物体に対する変移に比例する力を、2個の物体に加えるような、構造物または構造物の組み合わせのことである。スプリング力と変移とを関連付ける比例定数は、スプリングのばね定数と称される。機械的スプリングは、動作あるいは移動されて、連結している二つの物体に加わる力が変化する場合に、しばしば「たわむ(flexed)」と表現される。同様の用語が、ガススプリングについても適用され、ガススプリングの圧縮または膨張とは、ガススプリングのたわみのことである。さらに、スプリングとは、複合スプリング、すなわち、二つ以上のスプリング要素を有するスプリングも含む。例えば、二つの物体間に並列に連結された二つのスプリングは、正味(net)で一つのスプリング、あるいは複合スプリングを構成する。スプリングの一方が可変、すなわち、可変のばね定数を持つ場合、複合スプリングも可変となる。「スプリング連結(spring coupling)」という用語は、二つの物体がひとつ以上のスプリングで連結される、すなわち、正味で一つのスプリングで連結されていることを示すために使われる。
【0011】
一つ以上の物体の振動運動を説明するために、一つの物体の質量とは、この物体に取り付けられ、共に運動する全ての構造物の質量をも含むものとする。ピストンの質量はマグネットの質量とピストンに取り付けられているマグネットの支持部材の質量とを含む。同様に、固定子の質量は、発電機乃至モーターのコイルと、低磁気抵抗強磁性体と、支持部材のような付加的質量との合計である。ディスプレーサの質量はディスプレーサ連結ロッドの質量も含む。
【0012】
リニア電磁機械変換装置に連結されたスターリング装置は、周期的に往復運動する質量部分を有するため、そのケーシング38は振動する。したがって通常、振動バランサー40がケーシング38に取り付けられ、周期的な振動力を相殺する。図1を参照すれば、典型的な振動バランサーは、平面またはリーフスプリング44、ときにはコイルスプリング(図示せず)に取り付けられた複数の質量部分42を有し、これらもまた振動する物体となる。リーフスプリング44は、連結部材46によってケーシング38に連結される。リニア電磁機械変換装置に連結されたスターリング装置は、所定の動作振動数を有し、振動バランサーは、この動作振動数の固有振動数を持つように調整される。その原理とは、次のような条件で、質量部分42およびこれらに取り付けられたリーフスプリングが設計されていることである。すなわちその条件とは、振動する質量部分42が、リーフスプリング44によってケーシング38に加えられる周期的な力を引き起こし、この周期的な力が、往復運動する部材、主にパワーピストン14およびディスプレーサ18によってケーシング38に加えられる振動力と、大きさが等しく、かつ位相が反対になっていることである。このような方法で、ケーシング38に加えられる力の合計はゼロに等しいか、ゼロにほとんど等しくなる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、受動的な振動バランス装置の必要性をなくする。リニア電磁機械変換装置の固定子を、ケーシングの内部に剛体的に結合する(in rigid connection)代わりに、固定子は、スプリング上を自由に動けるように、1つ以上のスプリングを介してケーシングの内部に取り付けられる。スプリング部材は、スターリング装置および連結した電磁機械変換装置の動作中に、固定子が往復運動する他の部材の往復運動軸に沿って往復運動して、スプリングを撓ませることができるように配置される。固定子、ディスプレーサ及びピストンは、それぞれの部材に作用するスプリング力を持つ質量であって、それ故、それぞれの部材は共振振動数を持つ。詳細な説明において説明するように、装置の相互に連結する質量部分が、これらの共振振動数、動作振動数、減衰構造(damping)、スプリングの連結、及び装置のその他のパラメータの間の特別な数学的な関係を、実質的または近似的に持つように設計することによって、振動は、減少され、最小化され、あるいは消滅する。一般的に、固定子の共振振動数は、リニア電磁機械変換装置に連結されたスターリング装置の動作振動数に実質的ないし基本的に等しく、かつピストンの共振振動数より若干低くすべきである。
【0014】
しかしながら、リニア電磁機械変換装置に連結されたスターリング装置のいくつかの実施例においては、ピストンの共振振動数は、温度と動作ガスの平均圧力との関数として変化する。それ故、温度および平均圧力が、動作の過程で変化するような装置については、固定子とケーシングとの間、またはピストンとケーシングとの間のスプリング連結を変える構造によって、温度および平均圧力の変化を相殺する。スプリング連結を変えることは、固定子またはピストンの共振振動数をずらして、振動を最小限にするパラメータ間の数学的関係を維持し、それによって変化を相殺する。
【0015】
なお添付図面に示す本発明の好ましい具体例の説明おいては、明確性を増すために特殊な専門用語を使用している。しかしながら本発明を、選択した特定の用語に限定することは意図しておらず、さらに各々の特定の用語は、同様の方法で同様な目的を達成する全ての技術的等価物を含むことを理解すべきである。例えば、用語「連結」またはこれの類似用語がしばしば用いられるが、これらは、直接的に連結しているものに限定されず、他の部材を介した連結も含んでおり、このような連結構造は当該分野の専門家により等価物であると認識されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図2に本発明の基本的な構成を示す。図2に示す構成部品は、既に説明したか、あるいは当該分野の専門家に明らかである部分を除いて、図1の装置に類似している。図2の具体例において、固定子230は、間挿されたスプリング250を経由して、ケーシング238の内部に取り付けられる。この構成により、スターリング装置及びそれに連結したリニアモータまたは交流発電機の動作中に、固定子230が往復運動し、スプリング250を撓ませることを可能にする。固定子230それ自身が、パワーピストン214とディスプレーサ218とに共通な往復運動軸に沿って、往復して振動する質量部分となり、これらのパワーピストンおよびディスプレーサには、これらに連結されて、それぞれ往復運動する質量部分も含まれる。図2は、固定子230とケーシング238とを連結するために、機械的なスプリングを使用した場合を示しているが、先に説明したように、他のタイプのスプリングも使用できる。結果として、固定子230は、リニアモータまたは交流発電機の固定子としての役割と、振動をバランスさせる質量としての役割との両方を同時に果たす。
【0017】
リニア電磁機械変換装置に連結されたスターリング装置において、ケーシングに作用して、合計するとゼロになる力をもたらす、各パラメータ間の関係は、数学的解析で見出される。図3は、数学解析を行うために、図2に示す具体例をモデル化した略図である。図3には、すべてのパラメータを示してはいないが、本発明を説明するために使用されるパラメータを、参照のため図9に一括して示し、定義する。
【0018】
振動をバランスさせるために、本発明で使用する条件の数学的な展開は、本明細書の後半に示す。しかしながら、解析の結果、固定子の共振振動数は、図11の数式(数13)に示すようになる。ところで小さい項目を無視して上記式を簡単化すると、固定子の共振振動数は基本的に、図11の数式(数14)に示すようになる。
【0019】
通常αpは、kpに比べると小さいから、上記数式(数14)は、固定子共振振動数ωsが、ピストンの共振振動数ωpより若干小さいことを意味している。
【0020】
パラメータ間の上記関係に加え、動作振動数ωoは、図11の数式(数15)に示すようになる。
【0021】
ディスプレーサのピストンに対する減衰係数Ddpが非常に小さいような典型的な条件においては、上記数式(数15)は、図11の数式(数16)に示すように簡単になる。
【0022】
これは、動作振動数ωoが、基本的には固定子共振振動数ωpに等しいことを意味する。
【0023】
これらの関係を満足すれば、ケーシングに対して正味の力が作用しないという結果となり、本発明による固定子の共振バランスの条件を得ることができる。
【0024】
多くの現実的な工学的な解法と同様に、数学的に正確であることは必要とされない。通常、数学的な正確さからずれてはいるが、装置の運転が許容されるような範囲あるいは幅があり、また、わずかな不正確さ、及び正確さの間の差異を知ることが難しいか、あるいは不可能な、更に狭い幅も存在する。このことは、共振システムを取り扱う場合には、特に当てはまる。当業者に周知のように、共振システムの応答は、共振のピークによって表現され、そのピークの鋭さが質的な要因Q(quality factor)によって定量化される。ピークの中心からの僅かな変位が、性能の僅かな劣化を引き起こす。本発明に関すれば、上述のように定義され、バランスを達成するために必要なパラメータ間の関係は、数式で表す関係に対して±20%以内にあることが必要である。±20%の範囲内であれば、本発明の実施例のあるものは、許容され、有利となる。±10%の範囲内であれば、殆んどの実施例は優れた結果を与えるであろう。パラメータが上記方程式で定義される関係に対して、±5%の範囲内にあれば、正確である考えることができる。
【0025】
上記方程式のパラメータのいくつかは、温度および/または圧力に依存する。それ故に、上記原理にのみ基づく本発明の具体例は、動作ガスの平均温度および平均圧力が、ほとんど一定に保たれるか、あるいは少なくとも温度および圧力の一方または両方の変動が十分小さくて、数学的な関係が、運転中の変動について定義された限界内に、実質的に維持されている場合には、有効である。しかしながら、運転中に、温度および圧力の一方または両方が変動して、許容できない大きい振幅の振動が生じる場合は、数学的な関係を許容できる範囲内に戻すように、圧力および/または温度の変動を補正することが可能である。
【0026】
数学的な導出において以下説明するように、温度および圧力の関数としての変動を示す唯一のパラメータは、ピストンの共振振動数ωpである。ピストンの共振振動数ωpの典型的な変動特性を、温度の関数として図7に示す。しかしながら、ピストンの共振振動数ωpは、次のような3つの方法で補正することができる。
(1)ピストンの共振振動数ωpを制御しながら調整または変化させ、許容できる範囲内にこれらの関係を戻す。
(2)固定子の共振振動数ωsを制御しながら調整または変化させ、許容できる範囲内にこれらの関係を戻す。
及び/または、
(3)残留力変換器をケーシングに連結し、この残留力変換器が付加的な周期力をケーシングに印加して、残留振動を消滅させるようにする。
【0027】
振動するスプリングおよび質量システムの共振振動数は、その正味のスプリングのばね定数の関数であるので、ピストンの共振振動数ωp、または固定子の共振振動数ωsの一方またはこれらの両方を、これらのばね定数kpおよびksを変化させる手段をそれぞれ設けることによって、変化させることができる。このことは一般的に、用いるスプリングのばね定数が可変である場合には、これらのスプリングのばね定数を変化させることによって達成され、あるいは付加的な可変スプリングを並行して連結することによって達成される。従来技術において周知のように、ガススプリングは、容積を変えることによって可変となり、多様なガススプリングが従来技術に示される。固定子430とケーシング438との間の正味のスプリングのばね定数ksは、平面状の固定子スプリング450のばね定数と、並行に取り付けられた可変スプリングのばね定数との合計である。それ故、可変スプリングのばね定数が変化すると、ばね乗数ksが変化する。
【0028】
図4は、固定子430をケーシング438に取り付けているスプリングの、正味のばね定数ksを変化させる手段の1例を示す。固定子430は、両方のスプリング450と、前述した具体例のように、これらのスプリングに図式的に並行に連結した可変ガススプリングとによって、ケーシングに連結される。可変ガススプリングは、小さいシリンダ462の内部を密封状態で滑動する、複数の小さいピストン460によって構成され、連結ロッド464により固定子430に連結される。小さいシリンダ462のそれぞれの内部空間は、二つの並行な分岐路を含む通路を経由して、後方空間466に連通しており、それぞれの分岐路は、チェックバルブ468と流量制御バルブ470とを有している。チェックバルブ468と流量制御バルブ470とは、それぞれの分岐路において、直列して連結されているが、一方の分岐路と他方の分岐路では、向きが逆向きにしてある。
【0029】
殆んどのスターリング装置において、後方空間の圧力は、僅かな圧力変化を受けるが、基本的には平均的な動作空間圧力を維持する。一方、動作空間圧力は、運転中に周期的に変化する。可変ガススプリングピストン460が往復運動すると、小さいシリンダ462内の圧力は、平均動作ガス圧力の上下に周期的に変化する。小さいシリンダ462内の圧力が相対的に低い場合、ガスは、後方空間466から、小さいシリンダ462に漏れ出る。小さいシリンダ462の圧力が相対的に高い場合、ガスは、小さいシリンダ462から、後方空間466に漏れ出る。可変ガススプリングの体積を変化させ、それによって、これらのばね定数を変化させるために、バルブ470が設置されて異なる流量を提供する。各サイクルの間に、小さいシリンダ462に流入するガス流量が、この小さいシリンダから流出するガス流量を超える場合は、この小さいシリンダへの正味の流入流量が生じて、この小さいシリンダの容積を膨張させ、結果的にばね定数を減少させる。なお逆に、正味の流出流量は、反対の効果を生じる。この差動漏洩(differential leakage)システムは、小さいシンリンダー462内の可変ガススプリングピストン460の平均位置を制御しながら変化させるように、流量制御バルブ470を変化させ、さらにこの方法によって、正味のばね定数ksを制御可能な状態で変化させ、それ故にピストンの共振振動数ωpの変動を、温度および圧力の関数として補正することが可能になる。変動が小さい場合は、流量制御バルブを固定オリフィスで代替できる場合、または流量制御バルブを持たない並行流路の直径が十分に小さくて流量を制限するように機能する場合には、流量制御バルブの一方を省略できる。その場合、残りの流量制御バルブを、流量制御バルブを省いた流路より大きいか、または少ない流量を提供するように変化させることができる。
【0030】
平均動作ガス圧力および温度の変化の結果としての、ピストンの共振振動数ωpの変動を補正する一つの代替法は、差動漏洩システムを含む可変ガススプリングを用いて、ピストンの共振振動数ωpを制御しながら変化させるものであって、この差動漏洩システムは、図4に示すものに類似しているが、ピストン414およびケーシング438の間に連結されている。図示してはいないが、この構成は、上述したものと類似するものであって、正味のばね定数kpに対する同等の制御を可能にする、図式的に並行に設けられた可変スプリングを提供する。
【0031】
平均動作ガス圧力および温度の変化の結果としての、ピストンの共振振動数ωpの変化を補正する他の代替法は、パワーピストンの平均位置を変化させるという原理に基づく。ピストンとケーシングとの間に位置する正味のスプリングの主なスプリング要素の一つは、往復運動するピストンに作用する動作空間内にある動作ガスに対する、ガススプリングの効果である。ピストンが往復運動すると、動作ガスは周期的に膨張圧縮し、ピストンに時間的に変化する圧力を加える。どのようなガススプリングにおいても、ばね定数は、密封された動作ガスの体積の関数である。ピストンの平均位置は、往復運動の両端部の中間にあって、動作空間の平均体積を代表する。往復運動するピストンの平均位置が外方向に移動して、動作空間の平均体積が増加すると、密封された動作ガスがピストンに作用することによって生じるガススプリングのばね定数は、減少する。逆に、往復運動するピストンの平均位置が内方向に移動して、動作空間の平均体積を減少させる場合、密封された動作ガスがピストンに作用することによって生じるガススプリングのばね定数は、増加する。ピストンからケーシングへの正味のばね定数kpの重要な要素は、動作ガスのガススプリング効果であるため、ピストンの平均位置を変えることによって、ピストンの共振振動数ωpを制御しつつ変化させることができる。
【0032】
平均動作ガス圧力および温度の変化の結果としてのピストンの共振振動数ωpの変動を補正するために、平均ピストン位置を制御しながら変化させることに基づく多くの手段がある。このような方法の一つは、図4に示す差動漏洩システムに、概念的に類似する差動漏洩システムを含む。従来技術において周知のように、ピストンと後方空間との間のガス漏洩が対称的でないため、従来技術では、ピストンの位置を往復運動の中心に設定する、すなわち、平均ピストン位置を一定に維持する場合における、多様な差動漏洩システムを提示している。後方空間と動作空間との間のガス流量を制御するため、既存のバルブシステム、あるいは一つ以上の追加バルブを制御し、平均ピストン位置を移動させて、動作空間の平均体積を変化させることができる。結果的に、これらのバルブは、ピストンとケーシングとの間の正味のばねの要素のばね定数を変化させるために用いられる。なおこの正味のばねは、動作ガスがピストンに作用することに起因するばね定数kpを有する。
【0033】
平均動作ガス圧力または温度の変化の結果として発生するピストンの共振振動数ωpの変化を、平均ピストン位置の移動によって補正する手段であって、簡単かつ単純である好ましい手段は、リニアモータまたは交流発電機の電機子巻線に、直列に連結した直流電源から、一定の直流電圧をかけることである。このことは、リニアモータまたは交流発電機に、増加する電流を飽和させることなく処理できることが要求される。図8に、補正のための手段を示す。電源800から電機子巻線832に直流電圧を加えることは、ピストン814で保持されるマグネット826、したがってピストン814に作用する一定の磁力を生じさせる。ピストン814へ加えられる力の大きさは、印加した電圧によって生じる電機子の電流の関数であって、往復運動の軸に沿った方向を有し、この方向は、印加した電圧の極性の関数である。ピストンに加わった力が、ピストンを動作空間から離すように作用する場合、この力は、往復運動するピストンの平均位置を、動作空間から離れるように変位させ、それによって動作空間の平均容積を増加させ、さらには、ピストンに作用する動作ガスに起因するばね定数を減少させる。反対の極性の直流電圧は、反対の効果を生じる。平均ピストン位置が移動する距離は、印加電圧に起因する電流の関数である。
【0034】
全ての条件の下で、ピストンの共振振動数のバランスを達成する他の手段は、固定子とケーシングとの間に、または、ピストンとケーシングとの間に、残留力変換器
(residual force transducer)を設けることである。残留力変換器は、リニア交流発電機またはモーターの形態とすることが可能である。残留力変換器は、ケーシングに時間的に変化する力を加え、この力は、残留振動を引き起こす非平衡の残留力と、大きさが同じで、方向が逆である。この力は、非平衡力が非正弦曲線である場合、非正弦曲線的であり、また残留非平衡力と位相が逆である。残留力変換器により加えられる力は複雑であり、高次の調和振動数を持つことがある。力を連結したもの(force coupling)は、速度と同相(in phase)である事が望ましく、これにより減衰機能を果たす。しかしながら実際のハードウエアにおいて、完全に調整できるものは存在せず、常にスプリング要素、すなわち、エネルギーを貯蔵するように反応する要素が存在する。
【0035】
固定子とケーシングとの間に連結された残留力変換器の、他の好ましい実施例を図5に示すと共に、その略図を図6に示す。この実施例は、固定子をケーシングに力学的に連結するために、2次的なリニアモーターによる残留力変換器500を使用する。残留力変換器の力学的な結合は、図6に示すFsによって表わされる。スプリング550の手段によって、固定子530をケーシングに取り付けることに加えて、図4に示す具体例のように、固定子530上に巻きつけられた2次的な電機子巻線570と、ケーシングに固定された永久磁石572とによって、2次的なリニアモータが構成される。時間的に変化する周期的な電圧が、2次的な電機子巻線570に印加され、2次的な電機子コイルの磁場と、永久磁石の磁場との相互作用の結果として、大きさが等しく、向きが反対の時間的に変化する磁気力が生成されて、固定子530とケーシングとに印加される。残留振動を引き起こす残留非平衡力と、大きさが等しく向きが逆の時間的に変化する力を、ケーシングに加えるように、時間的に変化する周期的な電圧が選択される。時間的に変化する周期的な電圧は、大きさと位相とを手動で調整することができ、あるいは負のフィードバック制御システムにより発生させることができる。このフィードバック制御システムは、残留力を検知し、残留振動をゼロまたは最小限にするように、大きさと位相とを調整する。
【0036】
リニア電磁機械変換器に連結されたベータ型スターリング装置に関する構成部品、有効なスプリング、減衰構造、並びに種々の部品の結合構造についての変数、係数および定数を指定する記号等や、運動、他の振動、パラメータは、図9にリストアップしたとおりである。
【0037】
式における微細な項目を無視または省略するときは、無視する項目が、式の他の項目に比べて一桁以上小さい場合であることを意味している。
【0038】
ケーシングへの力がゼロであるためには、ケーシングへ連結する全ての部分からの力の合計がゼロとなることが必要である。これは、図10の数式(数1)の条件を課すことで達成される。なお上記数式(数1)において、xdの上の点は、時間および速度に関する一階微分を示す。
【0039】
正弦運動を仮定すれば、上記数式(数1)は、図10の数式(数2)のように書き直される。
【0040】
ケーシングが静止している場合、システムの重心の運動は、図10の数式(数3)によって表される。
【0041】
上記数式(数3)を整理して複素振幅を用いれば、図10の数式(数4)となる。
【0042】
上記数式(数4)を数式(数2)に代入すれば、図10の数式(数5)となる。
【0043】
動的システムのQは、使いやすい量であり、ディスプレーサに対しては、図10の数式(数6)のように定義される。
【0044】
単純な質量のスプリングの固有振動数は、便利な量であって、図10の数式(数7)のように定義される。
【0045】
上記数式(数6)及び数式(数7)を、数式(数5)に適用すると、図10の数式(数8)に示す結果が得られる。
【0046】
固定子について完全なバランスが取れた場合、ケーシングは動かず、ディスプレーサの運動について、従来どおりの結果が適用される。この形式の装置に関する標準的な線形解析は、Redlich R.W.およびBerchowitz D.M.等の「Linear dynamics of free-
piston Stirling engines」(Proc. Institution of Mechanical Engineers, Vol.199,no.A3,March 1985,pp203-213)において議論されている。本明細書では、この論文を参考にしている。ケーシングの運動がゼロと仮定すると、標準的な線形解析によって、図10の数式(数9)に示す結果が得られる。
【0047】
上記数式(数9)を数式(数8)に代入すれば、図10の数式(数10)に示す結果となる。
【0048】
上記数式(数10)が成り立つためには、実数項および虚数項の両方がゼロである必要がある。これは2つの結果を与える。実数項からは、図11の数式(数11)が成立する。また虚数項からは、図11の数式(数12)が成り立つ。
【0049】
最終的に、上記数式(数11)および数式(数12)から、固定子の共振振動数および動作振動数が得られる。すなわち上記数式(数12)から、固定子の共振振動数は、図11の数式(数13)によって得られる。さらに大きさの小さい項目を無視して近似すれば、図11の数式(数14)が得られる。
【0050】
上記数式(数11)に、近似的結果である(数14)を適用すれば、動作振動数は、図11の数式(数15)のようになる。
【0051】
ディスプレーサからピストンへの減衰係数、すなわちDdpが、非常に小さいという条件の下では、上記数式(数15)は、図11の数式(数16)のように簡単になる、
【0052】
このことは、動作振動数が固定子の共振振動数と同じであって、固定子の共振振動数がピストンの共振振動数より僅かに低いことを示唆している。
【0053】
上記数式(数13)または数式(数14)と、数式(数15)または数式(数16)とを満足させることは、ケーシングへ加わる正味の力が無いという結果となり、固定子の共振バランス(RSB)の条件となる。
【0054】
しかしながら実際に適用することを考えると、この条件が、上記数式(数13)から数式(数16)に示す項目が、特別な値である場合だけについて成立し得ることが明らかである。これらの項目の多くは、圧力および/または温度に依存し、それ故、設計からずれた点では、完全なバランスは得られない。
【0055】
フリーピストン装置についての線形力学から、αpおよびkpは、それぞれ図11の数式(数17)及び数式(数18)ように表される。
【0056】
ガススプリングに比べると効果が少ない機械的なスプリングについては、αpおよびkpは、近似的には同じ割合で変化するので、αp/kpの比率は、殆んど一定となることは明らかである。ピストン上に機械的なスプリングを有しない装置については、図11の数式(数18A)が成立する。
【0057】
したがって上記数式(数14)において、変化する唯一のパラメータは、ピストンの共振振動数ωpである。このピストンの共振振動数ωpは、図7に示すように温度に対して変化し、また圧力に対しても変化する。全ての動作条件においてバランスを達成するために、固定子の共振振動数ωsは、ピストンの共振振動数ωpに従って変化させなければならない。これは、明らかに、固定子上に可変スプリングを実装することを要求する。これを実施する手段を図4に示す。ここでは、ガススプリングのプランジャー
(plunger)の平均位置は、ガススプリングと反発する体積部分(bounce volume)との間の、差動ポンプ動作(differential pumping)を制御することによって、移動させる。ガススプリングのプランジャーの僅かな移動が、固定子の正味のばね定数を変化させる。ガススプリングのプランジャーが内側に移動すれば、スプリングは強化され、ガススプリングのプランジャーが外側に移動すれば、スプリングは弱められる。
【0058】
ピストンの共振振動数の変化を補正するための簡単な技術は、ピストンの平均ばね定数を変化させる手段を設けることである。この手段は、固定子の共振振動数について説明したものと類似の手段によって実現されるが、この手段においては、ピストンに対して適用される。言い換えれば、固定子を調整するのではなく、同じ正味の効果が得られように、ピストンの平均位置を調整できるようにする。ピストンの共振振動数が増加する場合、ピストンのガススプリング効果が強化され、ピストン平均位置の外側への移動によってガススプリングの効果が弱められ、したがって正しい調整を行えば、ピストンの共振振動数を、正常な値に戻すことができることを意味している。ピストンガススプリング効果が弱まる場合、この手段は、逆方向に作用する。差動漏洩によって、ピストンの平均位置の移動を調整することは別に、モーターまたは交流発電機に印加された直流電圧は、モーターまたは交流発電機において増加する電流が飽和しなければ、同様な効果を達成する。
【0059】
全ての条件でバランスを達成するひとつの代替手段は、固定子とケーシングとの間、または、ピストンとケーシングとの間に残留力変換器を設置することである。図6は、この構成を概略的に示しており、固定子からケーシングへの連結構造を設けるという実例を示している。残留力変換器は、リニア交流発電機またはモーターの形態を取る。図5は、リニアモーター力変換器の一例を示す。ピストンの共振振動数が変化するような条件の下で、ケーシングの運動を消滅するために要する残留力を決定することは有益である。
【0060】
ケーシングに作用する力の合計は、図11の数式(数19)により与えられる。
【0061】
上述した方法により、上記数式(数19)は、結果的に図12の数式(数20)になる。
【0062】
ここで図12の数式(数21)を設定する。
【0063】
さらに加えて、図12の数式(数22)を設定する。すなわち、動作振動数を、固定子の共振振動数に等しくする。
【0064】
上記数式(数20)に、数式(数21)および数式(数22)を代入すると、図12の数式(数23)が得られる。
【0065】
Fsの項目について整理すると、図12の数式(数24)となる。
【0066】
図12の数式(数25)を定義する。ここで、図12の数式(数26)に示すピストンの共振振動数ωpの定義に注目する。そしてαp/kpが一定(すなわちピストン上に機械的スプリングが存在しない)となる瞬間を仮定する。このωpを代入すると、上記数式(数24)は、図12の数式(数27)になる。ここでδは、図12の数式(数28)で表され、通常1より小さい。
【0067】
テイラー展開を用いれば、上記数式(数27)は、図12の数式(数29)のように近似できる。そして2次の項目を無視すれば、上記数式(数29)は、図13の数式(数30)に示すように、さらに簡略化される。上記数式(数30)は、ピストンの単位振幅当たりの残留力が、図13の数式(数31)より小さな実数成分と、同様に典型的には小さい虚数成分Ddpωoとを持つことを示す。
【0068】
図面と関連する詳細な説明は、専ら本発明の好ましい具体例を説明することを意図するものであって、本発明を構成し利用する唯一の形態を示すことを意図するものではない。この説明は、図示した具体例に関して、本発明を実施するための設計、機能、手段、及び方法等を述べるものである。しかしながら、同じまたは等価な機能および特徴は、本発明の精神および範囲に包含されるよう意図された異なる具体例によっても達成され、また多くの改良も、次に述べる本発明の特許請求の範囲内のものとして、採用され得ることを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】従来技術によるスターリング装置の概略断面図であって、リニア電磁機械変換装置に連結され、従来の振動バランサーを有する。
【図2】本発明の具体例を示す概略断面図であって、変更箇所を除いては、図1に類似する。
【図3】図2の構成部品の質量を示す略図であって、これらの間のスプリング構造、減衰構造および力の結合構造を示し、これらの数学的パラメータと、往復運動する部品の運動とを定義する。
【図4】動作パラメータの変化を相殺する代替手段を有する本発明の、他の具体例を示す概略断面図であって、変更個所を除いては、第2図の具体例に類似する。
【図5】動作パラメータの変化を相殺する他の代替手段を有する本発明の、さらなる他の具体例を示す概略断面図であって、変更個所を除いては、第2図の具体例に類似する。
【図6】図5の具体例のパラメータを示す略図であって、変更個所を除いては、図3の略図と類似する。
【図7】動作ガス温度の関数として、ピストンの共振振動数の変化を示すグラフである。
【図8】動作温度の変化を相殺する他の代替手段を有する本発明の、他の具体例を示す概略断面図であって、部分を除いては、変更個所を除いては、第2図の具体例に類似する。
【図9】数式に用いた記号の説明図である。
【図10】数式の説明図である。
【図11】数式の他の説明図である。
【図12】数式の他の説明図である。
【図13】数式の他の説明図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
改良されたベータ型のスターリング装置、及びこのスターリング装置が駆動するように連結されたリニア電磁機械変換装置(linear electro-magnetic-mechanical
transducer)であって、
上記スターリング装置は、往復運動するデスプレサーと往復運動するピストンとを含み、
上記リニア電磁機械変換装置は、電機子巻線を有する固定子を有し、
上記デスプレサー、ピストン及び固定子は、全てケーシング内に取り付けられており、
上記固定子は、間挿されたスプリングを介して上記ケーシング内部に取り付けられ、
上記スターリング装置と、この連結スターリング装置が連結された上記リニア電磁機械変換装置とが動作する間、上記固定子が往復運動して上記スプリングを撓ませることを特徴とする。
【請求項2】
請求項1による改良されたスターリング装置、及びこのスターリング装置が連結されたリニア電磁機械変換装置であって、
上記ピストン、デスプレサー及び固定子の往復運動は、往復運動の共通軸に沿っていることを特徴とする。
【請求項3】
請求項2による改良されたスターリング装置、及びこのスターリング装置が連結されたリニア電磁機械変換装置であって、
さらに上記ケーシングと固定子との間に間挿された上記スプリングの正味の
(net)ばね定数を変化させる手段を含むことを特徴とする。
【請求項4】
請求項3による改良されたスターリング装置、及びこのスターリング装置が連結されたリニア電磁機械変換装置であって、
上記正味のばね定数を変化させる上記手段は、上記固定子を上記ケーシングに連結する2次スプリングを有しており、
上記2次スプリングは、調整可能なばね定数を持つことを特徴とする。
【請求項5】
請求項4による改良されたスターリング装置、及びこのスターリング装置が連結されたリニア電磁機械変換装置であって、
上記2次スプリングは、差動漏洩バルブ(differential leakage valves)を有するガススプリングを備え、
上記差動漏洩バルブは、並列に連結された相互に逆向の少なくとも2のチェックバルブと、少なくとも1の流量制御バルブとを含み、
上記チェックバルブは、上記スターリング装置の後方空間と上記ガススプリングのシリンダとの間に連結され、
上記流量制御バルブは、2の上記チェックバルブの1に、直列に連結されていることを特徴とする。
【請求項6】
請求項2による改良されたスターリング装置、及びこのスターリング装置が連結されたリニア電磁機械変換装置であって、
上記ピストンは、このピストンと上記ケーシングとの間にスプリング連結
(spring coupling)を備え、
上記スプリング連結は、正味のばね定数kpを有し、
さらに上記ばね定数kpを変化させる手段を備えていることを特徴とする。
【請求項7】
請求項6による改良されたスターリング装置、及びこのスターリング装置が連結されたリニア電磁機械変換装置であって、
上記ばね定数kpを変化させる上記手段は、ピストンの平均位置を移動させる手段を備えていることを特徴とする。
【請求項8】
請求項7による改良されたスターリング装置、及びこのスターリング装置が連結されたリニア電磁機械変換装置であって、
上記ばね定数kpを変化させる手段は、上記電機子巻線に直列に接続された直流電源を備えていることを特徴とする。
【請求項9】
請求項2による改良されたスターリング装置、及びこのスターリング装置が連結されたリニア電磁機械変換装置であって、
上記固定子の固有振動数ωsは、本質的に次の数式(数32)と同等であって、
上記ピストンの固有振動数ωpは、上記スターリング装置及びこのスターリング装置が連結されるリニア電磁機械変換装置の動作振動数ωoと本質的に同等である
ことを特徴とする。
(数32)[ωp × 平方根(1−αp/Kp)]
【請求項10】
請求項2による改良されたスターリング装置、及びこのスターリング装置が連結されたリニア電磁機械変換装置であって、
上記固定子の固有振動数ωsは、次の数式(数32)による値の20%以内であって、
上記ピストンの固有振動数ωpは、上記スターリング装置及びこのスターリング装置が連結されるリニア電磁機械変換装置の動作振動数ωoの20%以内である
ことを特徴とする。
(数32)[ωp × 平方根(1−αp/Kp)]
この数式(数32)において、
αpは、上記ディスプレーサとピストンとの間のスプリング連結のばね定数、
kpは、上記ピストンとケーシングとの間のスプリング連結のばね定数
を意味する。
【請求項11】
請求項10による改良されたスターリング装置、及びこのスターリング装置が連結されたリニア電磁機械変換装置であって、
請求項9における上記関係は、双方とも10%以内であることを特徴とする。
【請求項12】
請求項11による改良されたスターリング装置、及びこのスターリング装置が連結されたリニア電磁機械変換装置であって、
請求項9における上記関係は、双方とも5%以内であることを特徴とする。
【請求項13】
請求項2による改良されたスターリング装置、及びこのスターリング装置が連結されたリニア電磁機械変換装置であって、
さらに上記ケーシングと上記固定子との間を連結する力変換器を有することを特徴とする。
【請求項14】
請求項13による改良されたスターリング装置、及びこのスターリング装置が連結されたリニア電磁機械変換装置であって、
上記力変換器が2次的なリニアモーターを備えることを特徴とする。
【請求項1】
改良されたベータ型のスターリング装置、及びこのスターリング装置が駆動するように連結されたリニア電磁機械変換装置(linear electro-magnetic-mechanical
transducer)であって、
上記スターリング装置は、往復運動するデスプレサーと往復運動するピストンとを含み、
上記リニア電磁機械変換装置は、電機子巻線を有する固定子を有し、
上記デスプレサー、ピストン及び固定子は、全てケーシング内に取り付けられており、
上記固定子は、間挿されたスプリングを介して上記ケーシング内部に取り付けられ、
上記スターリング装置と、この連結スターリング装置が連結された上記リニア電磁機械変換装置とが動作する間、上記固定子が往復運動して上記スプリングを撓ませることを特徴とする。
【請求項2】
請求項1による改良されたスターリング装置、及びこのスターリング装置が連結されたリニア電磁機械変換装置であって、
上記ピストン、デスプレサー及び固定子の往復運動は、往復運動の共通軸に沿っていることを特徴とする。
【請求項3】
請求項2による改良されたスターリング装置、及びこのスターリング装置が連結されたリニア電磁機械変換装置であって、
さらに上記ケーシングと固定子との間に間挿された上記スプリングの正味の
(net)ばね定数を変化させる手段を含むことを特徴とする。
【請求項4】
請求項3による改良されたスターリング装置、及びこのスターリング装置が連結されたリニア電磁機械変換装置であって、
上記正味のばね定数を変化させる上記手段は、上記固定子を上記ケーシングに連結する2次スプリングを有しており、
上記2次スプリングは、調整可能なばね定数を持つことを特徴とする。
【請求項5】
請求項4による改良されたスターリング装置、及びこのスターリング装置が連結されたリニア電磁機械変換装置であって、
上記2次スプリングは、差動漏洩バルブ(differential leakage valves)を有するガススプリングを備え、
上記差動漏洩バルブは、並列に連結された相互に逆向の少なくとも2のチェックバルブと、少なくとも1の流量制御バルブとを含み、
上記チェックバルブは、上記スターリング装置の後方空間と上記ガススプリングのシリンダとの間に連結され、
上記流量制御バルブは、2の上記チェックバルブの1に、直列に連結されていることを特徴とする。
【請求項6】
請求項2による改良されたスターリング装置、及びこのスターリング装置が連結されたリニア電磁機械変換装置であって、
上記ピストンは、このピストンと上記ケーシングとの間にスプリング連結
(spring coupling)を備え、
上記スプリング連結は、正味のばね定数kpを有し、
さらに上記ばね定数kpを変化させる手段を備えていることを特徴とする。
【請求項7】
請求項6による改良されたスターリング装置、及びこのスターリング装置が連結されたリニア電磁機械変換装置であって、
上記ばね定数kpを変化させる上記手段は、ピストンの平均位置を移動させる手段を備えていることを特徴とする。
【請求項8】
請求項7による改良されたスターリング装置、及びこのスターリング装置が連結されたリニア電磁機械変換装置であって、
上記ばね定数kpを変化させる手段は、上記電機子巻線に直列に接続された直流電源を備えていることを特徴とする。
【請求項9】
請求項2による改良されたスターリング装置、及びこのスターリング装置が連結されたリニア電磁機械変換装置であって、
上記固定子の固有振動数ωsは、本質的に次の数式(数32)と同等であって、
上記ピストンの固有振動数ωpは、上記スターリング装置及びこのスターリング装置が連結されるリニア電磁機械変換装置の動作振動数ωoと本質的に同等である
ことを特徴とする。
(数32)[ωp × 平方根(1−αp/Kp)]
【請求項10】
請求項2による改良されたスターリング装置、及びこのスターリング装置が連結されたリニア電磁機械変換装置であって、
上記固定子の固有振動数ωsは、次の数式(数32)による値の20%以内であって、
上記ピストンの固有振動数ωpは、上記スターリング装置及びこのスターリング装置が連結されるリニア電磁機械変換装置の動作振動数ωoの20%以内である
ことを特徴とする。
(数32)[ωp × 平方根(1−αp/Kp)]
この数式(数32)において、
αpは、上記ディスプレーサとピストンとの間のスプリング連結のばね定数、
kpは、上記ピストンとケーシングとの間のスプリング連結のばね定数
を意味する。
【請求項11】
請求項10による改良されたスターリング装置、及びこのスターリング装置が連結されたリニア電磁機械変換装置であって、
請求項9における上記関係は、双方とも10%以内であることを特徴とする。
【請求項12】
請求項11による改良されたスターリング装置、及びこのスターリング装置が連結されたリニア電磁機械変換装置であって、
請求項9における上記関係は、双方とも5%以内であることを特徴とする。
【請求項13】
請求項2による改良されたスターリング装置、及びこのスターリング装置が連結されたリニア電磁機械変換装置であって、
さらに上記ケーシングと上記固定子との間を連結する力変換器を有することを特徴とする。
【請求項14】
請求項13による改良されたスターリング装置、及びこのスターリング装置が連結されたリニア電磁機械変換装置であって、
上記力変換器が2次的なリニアモーターを備えることを特徴とする。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−133299(P2009−133299A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−201599(P2008−201599)
【出願日】平成20年8月5日(2008.8.5)
【出願人】(399028023)グローバル クーリング ビー ヴイ (6)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−201599(P2008−201599)
【出願日】平成20年8月5日(2008.8.5)
【出願人】(399028023)グローバル クーリング ビー ヴイ (6)
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