説明

リフター

【課題】基台上に被搬送物支持台をクロスリンクを介して平行昇降自在に支持すると共に、当該クロスリンクを起伏運動させる駆動手段と被搬送物支持台の落下防止手段とを併設して成るリフターにおいて、前記落下防止手段の構造の簡素化を図りながら、動作を確実に行わせる。
【解決手段】落下防止手段30、31は、クロスリンクの基台1側で水平にスライドする水平支軸14に上下揺動自在に支承されたラチェット爪33と、水平支軸14の移動経路と平行に基台1上に敷設された棒状ラチェットギヤ32と、ラチェット爪33を棒状ラチェットギヤ32に係合する下向きに付勢するバネ34と、このバネ34の付勢力に抗してラチェット爪33を非作用姿勢に切り換えて保持するアクチュエーター35とから構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送用走行体上などに設置されて、被搬送物の支持高さを変更する手段として利用されるリフターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のリフターとして、特許文献1に記載されるように、基台上に被搬送物支持台を、クロスリンクを介して平行昇降自在に支持すると共に、当該クロスリンクを起伏運動させる駆動手段と被搬送物支持台の落下防止手段とを併設して成るリフターが知られている。前記落下防止手段は、駆動手段の故障や破損事故などが生じたとき、被搬送物支持台が重力で降下するのを防止するために併設されるもので、ラチェット機構によって構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭63−208500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されるように、従来のこの種のリフターに組み込まれる落下防止手段は、クロスリンクの基台側の水平スライド支軸を有するリンクの当該水平スライド支軸の近傍で、前記水平スライド支軸から離れた位置に、ラチェット爪を軸支して構成されていたので、ラチェット爪を軸支する専用の水平支軸が必要であることから、部品点数が多くなり、コスト高になるばかりでなく、被搬送物支持台の支持高さ、即ち、クロスリンクの交差角度の変化に対応してラチェット爪の軸支高さが変化し、この結果、基台側に敷設される棒状のラチェットギヤに対するラチェット爪の係合角度が変動し、ラチェットギヤの歯に対してラチェット爪を常に最良の角度で係合させることが出来ない。更に、ラチェット爪をラチェットギヤに係合させる方向に付勢するバネを併用する場合も、前記のように基台側に敷設される棒状のラチェットギヤに対するラチェット爪の係合角度が変動するので、常に同一強さでラチェット爪をラチェットギヤに係合させることが出来ない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記のような従来の問題点を解消することのできるリフターを提案するものであって、請求項1に記載の本発明に係るリフターは、後述する実施例との関係を理解し易くするために、当該実施例の説明において使用した参照符号を括弧付きで付して示すと、基台(1)上に被搬送物支持台(2)を、クロスリンク(3,4)を介して平行昇降自在に支持すると共に、当該クロスリンク(3,4)を起伏運動させる駆動手段(5)と被搬送物支持台(2)の落下防止手段(30,31)とを併設して成るリフターにおいて、前記落下防止手段(30,31)は、前記クロスリンク(3,4)の基台(1)側で水平にスライドする水平支軸(14)に上下揺動自在に支承されたラチェット爪(33)と、前記水平支軸(14)の移動経路と平行に前記基台(1)上に敷設された棒状ラチェットギヤ(32)と、前記ラチェット爪(33)を前記棒状ラチェットギヤ(32)に係合する下向きに付勢するバネ(34)と、このバネ(34)の付勢力に抗して前記ラチェット爪(33)を非作用姿勢に切り換えて保持するアクチュエーター(35)とから構成されている。
【0006】
上記本発明を実施する場合、具体的には請求項2に記載のように、基台(1)側で水平にスライドする前記水平支軸(14)に上下揺動自在に支承され且つ底辺が基台(1)側の水平支持面(1b)上に滑動自在に支持されたスライド板(36)を設け、前記バネ(34)は、前記スライド板(36)とラチェット爪(33)との間に介装し、前記アクチュエーター(35)は、前記スライド板(36)に取り付けることが出来る。又、この場合、請求項3に記載のように、前記スライド板(36)には、ラチェット爪(33)が前記アクチュエーター(35)で非作用姿勢に切り換えられた状態を検出するセンサー(42)を取り付けることが出来る。更に、請求項4に記載のように、前記スライド板(36)には、基台(1)側の水平支持面(1b)上に滑動自在に摺接する摺接部材(36a)を着脱自在に取り付けることが出来る。
【0007】
尚、被搬送物支持台(2)を平行昇降自在に支持するクロスリンク(3,4)は左右一対並設することが一般的であるが、幅広の1つのセンターリンクと当該幅広センターリンクの左右両側に軸支された左右一対のサイドリンクとから成る1つの幅広クロスリンクで構成することも可能である。何れも場合も、基台(1)側で水平にスライドする前記水平支軸(14)は左右一対同心状に設けられることになるが、この場合、両水平支軸(14)がクロスリンク(3,4)毎に独立して設けられているときは、落下防止手段(30,31)は各水平支軸(14)に夫々設けることが出来る。又、前記被搬送物支持台(2)が、互いに連動して起伏運動する左右一対のクロスリンク(3,4)を介して平行昇降自在に支持され、左右両クロスリンク(3,4)の基台(1)側で水平にスライドする前記水平支軸(14)が1本の長尺軸体(39)の両端部で構成されている場合、請求項5に記載のように、前記落下防止手段(30,31)は、前記長尺軸体(39)の両端部夫々に設けることも出来るが、請求項6に記載のように、前記長尺軸体(39)の長さ方向中央部に、左右一対のクロスリンク(3,4)に共通の1つの落下防止手段(30)を設けることも出来る。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の本発明の構成によれば、クロスリンクの基台側で水平にスライドする水平支軸の移動経路と平行に前記基台上に敷設された棒状ラチェットギヤに係合するラチェット爪が、前記水平支軸に上下揺動自在に支承されているので、ラチェット爪を支承する支軸をクロスリンクの基台側で水平にスライドする水平支軸で兼用させることが出来て、部品点数が少なくなり、コストダウンを図ることが出来るというだけでなく、被搬送物支持台の高さを変えるためにクロスリンクの交差角度を変化させてもラチェット爪の軸支高さが一定であるから、ラチェットギヤの歯に対してラチェット爪を常に最良の角度で係合させることが出来る。又、被搬送物支持台の高さを変えても、常にラチェット爪の軸支高さが一定であって、ラチェットギヤに対するラチェット爪の係合角度が一定であるから、ラチェット爪をラチェットギヤに係合させる方向に付勢するバネ力が変化することは無く、常に同一強さでラチェット爪をラチェットギヤに係合させることが出来る。即ち、本発明の構成により、落下防止手段のラチェット爪とラチェットギヤとの係合状態を常に最良の状態に維持させて、確実良好な落下防止効果が期待出来る。
【0009】
尚、請求項2に記載の構成によれば、被搬送物支持台の高さを変えるためにクロスリンクの交差角度を変化させても、ラチェット爪の水平支軸、即ち、クロスリンクの基台側で水平にスライドする水平支軸に対して位置や姿勢が変化しないスライド板に、ラチェット爪付勢用のバネやラチェット爪を非作用姿勢に切り換えるアクチュエーターを取り付けるので、前記バネやアクチュエーターをクロスリンク側のラチェット爪を軸支するリンクに取り付ける構成と比較して、被搬送物支持台の高さを変えても、前記バネやアクチュエーターがラチェット爪に対して位置や角度が変化することが無く、常に所期通りに前記バネやアクチュエーターを機能させることが出来る。従って又、ラチェット爪が前記アクチュエーターで非作用姿勢に切り換えられた状態を検出するセンサーを併用する場合でも、請求項3に記載の構成によれば、ラチェット爪が前記アクチュエーターで非作用姿勢に切り換えられた状態を当該センサーにより正確且つ確実に検出させることが出来る。
【0010】
又、請求項4に記載の構成によれば、前記スライド板が着脱自在な摺接部材を介して基台側の水平支持面上に滑動自在に支持されるので、基台側の水平支持面の平滑精度が悪くとも、専用のガイドレールを敷設しないで前記スライド板をして円滑に、そして摺接音を抑えながら良好に滑動させることが出来ると共に、前記摺接部材の経年磨耗の程度に応じて当該摺接部材を交換することにより、スライド板の良好な滑動支持状態を容易に維持させることが出来る。
【0011】
尚、請求項5に記載の構成によれば、落下事故発生時に、左右一対のクロスリンクの基台側で水平にスライドする水平支軸がスライド方向に位置ずれを起こして被搬送物支持台が傾くのを、左右両クロスリンクの基台側で水平にスライドする水平支軸が1本の共通長尺軸体で軸支されていることと、当該長尺軸体の両端夫々に落下防止手段が設けられていることとによって、確実に防止することが出来る。勿論、被搬送物支持台の幅が比較的狭くて、左右両クロスリンク間の間隔が比較的狭い場合には、請求項6に記載の構成を採用して、落下防止手段にかかるコストを半減させることも出来る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】落下防止手段が組み込まれていないリフターの基本構造を、被搬送物支持台が上昇位置にあるときの状態で示す一部縦断側面図である。
【図2】同上の被搬送物支持台が下降位置にあるときの状態を示す一部縦断側面図である。
【図3】落下防止手段を組み込んだ本発明の実施例を示す横断平面図である。
【図4】図3の要部の拡大横断平面図である。
【図5】A図は落下防止手段のラチェット爪が作用姿勢にあるときの状態を示す要部の縦断側面図、B図は同上ラチェット爪が非作用姿勢にあるときの状態を示す要部の縦断側面図である。
【図6】図4の縦断正面図である。
【図7】第二実施例を示す要部の縦断正面図である。
【図8】第三実施例を示す要部の縦断正面図である。
【図9】第四実施例を示す要部の一部切欠き平面図である。
【図10】同上実施例の要部の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1〜図3において、1は基台、2は被搬送物支持台、3,4は左右一対のクロスリンク、5は駆動手段である。基台1と被搬送物支持台2とは、平面視形状が長方形の略同一サイズのものであって、基台1の周囲には上向きに周壁部1aが連設され、被搬送物支持台2の周囲には下向きに周壁部2aが連設され、基台1の四隅上側には、下降限高さまで降下した被搬送物支持台2の四隅を支持する、高さ調整自在の支持具6が突設されている。クロスリンク3,4は左右対称構造のものであって、同一長さの外側リンク7と内側リンク8とを中央位置で互いに同心状の水平交点支軸9により軸支連結したものである。
【0014】
左右両クロスリンク3,4の外側リンク7の一端は、基台1の長さ方向一端の左右両角部内側に互いに同心状の水平支軸10により軸支し、左右両クロスリンク3,4の内側リンク8の一端は、被搬送物支持台2の長さ方向一端の左右両角部内側に互いに同心状の水平支軸11により軸支している。そして左右両クロスリンク3,4の外側リンク7の他端には、互いに同心状の水平支軸12により上側水平スライドローラー13が軸支され、左右両クロスリンク3,4の内側リンク8の他端には、互いに同心状の水平支軸14により下側水平スライドローラー15が軸支されている。左右両クロスリンク3,4の上側水平スライドローラー13は、被搬送物支持台2の長さ方向他端の左右両角部内側に左右両側辺に沿って付設された溝形ガイドレール16に水平前後方向に転動自在に嵌合し、左右両クロスリンク3,4の下側水平スライドローラー15は、基台1の長さ方向他端の左右両角部内側に左右両側辺に沿って付設された溝形ガイドレール17に水平前後方向に転動自在に嵌合している。
【0015】
駆動手段5は、左右両クロスリンク3,4の水平交点支軸9間に架設されたギヤボックス18、このギヤボックス18に一端部が自転のみ可能に支持された左右一対の互いに平行な前後方向の螺軸19,20、これら両螺軸19,20が螺合貫通する雌ネジ体21,22を備えた可動体23、この可動体23の左右両端外側に互いに同心状の水平支軸24,25で軸支された、夫々左右一対のローラー26a,26b,27a,27b、及び減速機付きモーター28から構成されている。減速機付きモーター28は、前記可動体23を前後往復移動させるように両螺軸19,20を、ギヤボックス18内のギヤを介して連動駆動するものであって、前記ギヤボックス18に、両螺軸19,20が突出する側とは反対側で左右幅方向の中央位置に取り付けられている。
【0016】
上記構成の駆動手段5の両螺軸19,20の軸心と減速機付きモーター28の軸心、及びローラー26a〜27bの軸心は、側面視(図1参照)において、左右両クロスリンク3,4の水平交点支軸9の軸心を通る1つの水平面上にあって、一方のローラー26a,26bは、一方のクロスリンク3の外側リンク7の下向き突曲側縁7aと内側リンク8の上向き突曲側縁8aとに当接し、他方のローラー27a,27bは、他方のクロスリンク4の外側リンク7の下向き突曲側縁7aと内側リンク8の上向き突曲側縁8aとに当接し、被搬送物支持台2側から受ける下向き荷重で左右両クロスリンク3,4が閉動して被搬送物支持台2が降下するのを阻止している。
【0017】
上記構成の駆動手段5において、両螺軸19,20を減速機付きモーター28により正転駆動して可動体23を左右両クロスリンク3,4の水平交点支軸9の方に引き寄せ、以て、左右両クロスリンク3,4を可動体23側のローラー26a,26b及び27a,27bにより上下方向に押し開いて開動させることにより、被搬送物支持台2を平行に上昇移動させることが出来る。図1は、左右両クロスリンク3,4が開動限まで開動されて起立姿勢に切り換えられ、被搬送物支持台2が上昇限位置まで上昇せしめられた状態を示している。この状態から減速機付きモーター28により両螺軸19,20を逆転駆動し、可動体23を左右両クロスリンク3,4の水平交点支軸9から遠ざかる方向に移動させると、被搬送物支持台2側からの下向き荷重により閉動方向に(倒伏姿勢に方に)付勢されている左右両クロスリンク3,4が、夫々の外側リンク7と内側リンク8との間に位置するローラー26a,26b及び27a,27bが左右両クロスリンク3,4の水平交点支軸9から遠ざかる方向に移動するのに伴って閉動し、被搬送物支持台2の降下を許すことになる。図2は、可動体23が左右両クロスリンク3,4の水平交点支軸9から最大限遠ざかった位置まで移動して、左右両クロスリンク3,4が閉動限の倒伏姿勢に達した状態を示しており、被搬送物支持台2は下降限位置に達して、その四隅が基台1側の支持具6によって支持されている。
【0018】
上記のように、駆動手段5により左右両クロスリンク3,4を起伏(開閉)運動させて被搬送物支持台2を平行に昇降運動させることが出来るのであるが、この左右両クロスリンク3,4の起伏(開閉)運動時には、左右両クロスリンク3,4の上側水平スライドローラー13が被搬送物支持台2側の溝形ガイドレール16内を水平前後方向に転動移動すると共に、左右両クロスリンク3,4の下側水平スライドローラー15(基台1側の水平にスライドする水平支軸14)が基台1側の溝形ガイドレール17内を水平前後方向に転動移動することになる。これら上側水平スライドローラー13と下側水平スライドローラー15の内、少なくとも下側水平スライドローラー15の水平支軸14は、図3に示すように、1本の長尺軸体39の両端部によって構成されている。具体的には、長尺軸体39の本体となる大径鋼管の両端に、左右両クロスリンク3,4の下側水平スライドローラー15を支承する水平支軸14を同心状に固着連設して構成することが出来る。
【0019】
而して、図3及び図4に示すように、左右両クロスリンク3,4の下側水平スライドローラー15を軸支する水平支軸14には、夫々落下防止手段30,31が併設されている。これら左右両落下防止手段30,31は左右対称構造のものであって、図4〜図6に詳細を示すように、基台1上に敷設された棒状のラチェットギヤ32、これらラチェットギヤ32に係合するラチェット爪33、このラチェット爪33をラチェットギヤ32の歯部に係合させる方向に付勢するバネ34、及びラチェット爪33をラチェットギヤ32の歯部から離脱する非作用姿勢(図5B参照)に切り換えて保持するアクチュエーター35から構成されている。
【0020】
ラチェット爪33は、そのボス部33aが下側水平スライドローラー15の内側に位置する内側リンク8よりも内側で水平支軸14に回転自在に支承されると共に、当該水平支軸14に対して、左右両クロスリンク3,4が閉動倒伏して被搬送物支持台2が降下するときの下側水平スライドローラー15の移動方向に向かって延出する先端部の下側に爪部33bを備えたものである。ラチェットギヤ32は、ラチェット爪33の爪部33bが歯部に係合出来る位置で基台1上に、左右両クロスリンク3,4の開閉起伏運動時の下側水平スライドローラー15の往復移動方向と平行に固定されたもので、ラチェット爪33の爪部33bが係合する歯部は、左右両クロスリンク3,4が図1に示す起立姿勢から図2に示す倒伏姿勢に変化するときの下側水平スライドローラー15の後方への移動方向にラチェット爪33が移動することは阻止するが、左右両クロスリンク3,4が図2に示す倒伏姿勢から図1に示す起立姿勢に変化するときの下側水平スライドローラー15の前方への移動方向にラチェット爪33が移動することは許す、鋸歯状の逆止形状に形成されている。
【0021】
上記のラチェットギヤ32は、その長さ方向の複数個所に固着された取付け板部32aがボルト32bにより基台1に固定されるが、このとき、当該ラチェットギヤ32の後端、即ち、左右両クロスリンク3,4が図1に示す起立姿勢から図2に示す倒伏姿勢に変化するときの下側水平スライドローラー15の後方への移動方向側の端部は、基台1の周壁部1aの内側に当接しており、落下阻止作用時にラチェット爪33からラチェットギヤ32に作用する大きな水平方向の外力を基台1の周壁部1aで受け止め、このラチェットギヤ32を基台1上に固定するボルト32bに無理な力が作用するのを防止している。
【0022】
前記ラチェット爪33の内側(内側リンク8のある側とは反対側)には、垂直なスライド板36が水平支軸14に回転自在に支持され、当該スライド板36の垂直な一側面の下側辺には、基台1の表面で形成される水平支持面1bに対して円滑に摺接できる材料から形成された帯状の摺接部材36aがボルトナット36bにより着脱自在に取り付けられ、この摺接部材36aの底辺においてスライド板36が基台1の水平支持面1b上を水平支軸14と一体に前後方向に摺接移動するように構成されている。又、このスライド板36には、水平支軸14を支承する筒状軸受け部材37が取り付けられている。
【0023】
ラチェット爪33をラチェット2に対する係合方向に付勢するバネ34には、ラチェットギヤ3とスライド板36との間で水平支軸14に遊嵌された捩りコイルバネが使用されており、この捩りコイルバネ34の両端に折曲形成された係止部34a,34bが互いに交差する状態で、ラチェット爪33から突設された係止ピン33cとスライド板36から突設された係止ピン36cとを挟持するように構成され、常時は、図5Aに示すように、捩りコイルバネ34の捩り復元力で係止部34a,34bが両係止ピン33c、36cを挟むことにより、ラチェット爪33が、その爪部33bがラチェットギヤ32の歯部に係合する作用姿勢に付勢保持されるように構成している。
【0024】
アクチュエーター35は、スライド板36のラチェット爪33のある側の垂直側面に取り付けられたソレノイドから成るもので、その励磁により引き込まれると共に消磁により内装のバネ力で進出移動する駆動ロッド35aは、ラチェット爪33のスライド板36のある側に固着された翼板部40に、この翼板部40に形成された長孔と当該長孔を貫通するピン41とで連結され、アクチュエーター(ソレノイド)35を通電励磁することにより、駆動ロッド35aがラチェット爪33を、その爪部33bをラチェットギヤ32の歯部から引き上げる方向に捩りコイルバネ34の付勢力に抗して所要角度回転させ、図5Bに示すように、当該爪部33bがラチェットギヤ32の歯部から離脱した非作用姿勢にラチェット爪33を保持できるように構成している。アクチュエーター(ソレノイド)35への通電を断って消磁させると、ラチェット爪33は捩りコイルバネ34の付勢力で回転し、その爪部33bがラチェットギヤ32の歯部に係合する作用姿勢(図5A参照)に切り換えられる。
【0025】
尚、ラチェット爪33がアクチュエーター35によって非作用姿勢に切り換えられた状態を検出するセンサー42がスライド板36に取り付けられている。このセンサー42は、ラチェット爪33と一体の翼板部40に形成した被検出用延出部40aを無接触で検出するものであって、ラチェット爪33が図5Bに示す非作用姿勢に切り換えられたとき、センサー42と重なる位置に移動した被検出用延出部40aがセンサー42によって検出される。
【0026】
上記構成の落下防止手段30,31は、先に説明したように駆動手段5によって左右両クロスリンク3,4が開動起立運動せしめられて被搬送物支持台2が上昇するときには、アクチュエーター35への通電は断たれた状態であって、ラチェット爪33は図5Aに示す作用姿勢に保持されており、ラチェットギヤ32の歯部に係合する作用姿勢に捩りコイルバネ34により付勢保持されているラチェット爪33が、その爪部33bがラチェットギヤ32の歯部を乗り越える上下脈動運動を行いながら、左右両クロスリンク3,4の基台1側の下側水平スライドローラー15の前方への移動を許すことになる。
【0027】
駆動手段5によって左右両クロスリンク3,4が閉動倒伏運動せしめられて被搬送物支持台2が下降するときには、その駆動手段5の起動の直前にアクチュエーター35が通電励磁され、ラチェット爪33は、図5Bに示す非作用姿勢に切り換えられて保持される。このラチェット爪33の非作用姿勢への切換えは、センサー42がラチェット爪33側の被検出用延出部40aを検出したことによって得られる検出信号により確認できる。従って、センサー42の検出信号に基づいて駆動手段5を起動し、左右両クロスリンク3,4を閉動倒伏運動せしめることにより、左右両クロスリンク3,4の基台1側の下側水平スライドローラー15は、落下防止手段30,31に影響されずに後方に移動することが出来る。被搬送物支持台2が目的の高さまで降下した後は、アクチュエーター35への通電が断たれ、ラチェット爪33は、図5Aに示す作用姿勢に切り換えられて保持される。
【0028】
従って、駆動手段5により被搬送物支持台2が上昇されるとき、或いは所定高さで被搬送物支持台2が保持されているときに、駆動手段5の故障や破損事故により被搬送物支持台2が不測に落下するような異常事態が生じても、落下防止手段30,31のラチェット爪33が、その爪部33bがラチェットギヤ32の歯部に係合する作用姿勢にあるので、ラチェット爪33の爪部33bとラチェットギヤ32の歯部との間の前後方向の遊びの範囲内で被搬送物支持台2が僅かに降下するだけで、被搬送物支持台2が下降限高さまで落下することは、落下防止手段30,31のラチェット爪33の爪部33bとラチェットギヤ32の歯部との係合により確実に阻止される。
【0029】
尚、図7に示すように、左右両クロスリンク3,4の基台1側の下側水平スライドローラー15の水平支軸14が長尺軸体39の両端部で構成されないで、左右両クロスリンク3,4毎に独立して設けられている場合でも、落下防止手段30,31は、これら左右両クロスリンク3,4の水平支軸14の夫々に併設することが出来る。又、上記実施例のように、左右両クロスリンク3,4の基台1側の下側水平スライドローラー15の水平支軸14が長尺軸体39の両端部で構成される場合、図8に示すように、当該長尺軸体39の中央部に1つの落下防止手段30を併設することも可能である。この場合、図示のように、1つの落下防止手段30のラチェット爪33を支承する中央支軸39aと、この中央支軸39aの両端に接続した大径鋼管39b,39cと、これら大径鋼管39b,39cの外端部に接続された水平支軸14により、長尺軸体39を構成することが出来るが、中央支軸39aと大径鋼管39b,39cを1本の長尺鋼管で置き換えても良いし、鋼管を使用しないで、両端の水平支軸14を含む長尺軸体39の全体を適当直径の1本の中実軸体で構成しても良い。
【0030】
更に、上記各実施例では、クロスリンク3,4の基台1側で水平にスライドする水平支軸14によって、溝形ガイドレール17内で転動移動する水平スライドローラー15が軸支されているが、この溝形ガイドレール17と水平スライドローラー15は、本発明に必須のものではない。例えば、図9及び図10に示すように、各クロスリンク3,4の内側リンク8の基台1側の端部を直線スライドガイド43によって基台1上に水平スライド自在に支承させることも出来る。前記直線スライドガイド43は、基台1上に敷設されたスライドガイドレール44と、このスライドガイドレール44上に嵌合するスライダー45とから成り、このスライダー45に前記内側リンク8の基台1側の端部が水平支軸14により上下揺動自在に軸支される。前記水平支軸14は、内側リンク8の基台1側の端部に固着すると共に、スライダー45に軸受け46を介して自転可能に支承することができる。
【0031】
上記のような直線スライドガイド43が基台1側に使用されるクロスリンク3,4に対しても、前記水平支軸14に先の実施例と同様に落下防止手段30,31を取り付けることが出来るのであるが、この場合、各クロスリンク3,4の基台1側で水平にスライドする水平支軸14に夫々落下防止手段30,31を取り付けても良いが、図9及び図10に示すように、片側のクロスリンク3にのみ落下防止手段30を取り付け、他方のクロスリンク4の基台1側で水平にスライドする水平支軸14には、被搬送物支持台2が昇降行程限に達したときの前記水平支軸14の位置を検出するためのリミットスイッチ操作手段47を取り付けることが出来る。このリミットスイッチ操作手段47は、落下防止手段30のスライド板36と同一構造で前記水平支軸14に取り付けられた小型のスライド板48に、基台1上に付設されたリミットスイッチ49の操作レバー49aを動作させるための操作部50を設けたものである。リミットスイッチ49は、被搬送物支持台2が昇降行程限に達したときの前記水平支軸14の位置を検出するために2つ配設されるが、図では被搬送物支持台2が下降限に達したときのクロスリンク4の水平支軸14の位置を検出する片側のリミットスイッチ49のみが示されている。48aはスライド板48の下側辺に着脱自在に取り付けられた摺接部材である。
【0032】
本発明のリフターを実施する場合、クロスリンクの構造や当該クロスリンクを起伏運動させるための駆動手段は、図示の実施例で示したクロスリンク3,4や駆動手段5に限定されるものではなく、如何なる構造のものであっても良い。例えば、クロスリンク3,4は、図9及び図10に示すように、一対の対面する側壁部51a,51bが上下に位置する向きのC形鋼51を、その垂直壁部51cが互いに隣接するように並列配置すると共に、両C形鋼51の垂直壁部51cどうしを水平交点支軸9により連結して構成することが出来る。この場合、内側のリンク8を構成するC形鋼51の下側壁部51bは、落下防止手段30及びリミットスイッチ操作手段47と干渉する端部領域を切除しておくことにより、落下防止手段30及びリミットスイッチ操作手段47を垂直壁部51cに隣接させて配置することが出来る。又、本発明のリフターは、床上に据え付けられるものであっても良いし、搬送用走行体上に搭載されるものであっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明のリフターは、平行昇降駆動される被搬送物支持台を支持するクロスリンクや当該クロスリンクを開閉起伏運動させる駆動手段に故障や破損が生じたときに、当該被搬送物支持台が落下するのを未然に防止できる安全性の高いリフターとして、搬送用走行体上に搭載するなどして活用することが出来る。
【符号の説明】
【0034】
1 基台
1b 水平支持面
2 被搬送物支持台
3,4 クロスリンク
5 駆動手段
7 外側リンク
8 内側リンク
9 水平交点支軸
10〜12,14,24,25 水平支軸
13 上側水平スライドローラー
15 下側水平スライドローラー
16,17 溝形ガイドレール
19,20 螺軸
21,22 雌ネジ体
23 可動体
26a〜27b ローラー
28 減速機付きモーター
30,31 落下防止手段
32 ラチェットギヤ
33 ラチェット爪
33c,36c 係止ピン
34 捩りコイルバネ
35 アクチュエーター(ソレノイド)
36,48 スライド板
36a,48a 摺接部材
39 長尺軸体
40 翼板部
40a 被検出用延出部
42 センサー
43 直線スライドガイド
44 スライドガイドレール
45 スライダー
46 軸受け
47 リミットスイッチ操作手段
49 リミットスイッチ
50 操作部
51 C形鋼

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台上に被搬送物支持台を、クロスリンクを介して平行昇降自在に支持すると共に、当該クロスリンクを起伏運動させる駆動手段と被搬送物支持台の落下防止手段とを併設して成るリフターにおいて、前記落下防止手段は、前記クロスリンクの基台側で水平にスライドする水平支軸に上下揺動自在に支承されたラチェット爪と、前記水平支軸の移動経路と平行に前記基台上に敷設された棒状ラチェットギヤと、前記ラチェット爪を前記棒状ラチェットギヤに係合する下向きに付勢するバネと、このバネの付勢力に抗して前記ラチェット爪を非作用姿勢に切り換えて保持するアクチュエーターとから構成されている、リフター。
【請求項2】
基台側で水平にスライドする前記水平支軸に上下揺動自在に支承され且つ底辺が基台側の水平支持面上に滑動自在に支持されたスライド板が設けられ、前記バネは、前記スライド板とラチェット爪との間に介装され、前記アクチュエーターは、前記スライド板に取り付けられている、請求項1に記載のリフター。
【請求項3】
前記スライド板には、ラチェット爪が前記アクチュエーターで非作用姿勢に切り換えられた状態を検出するセンサーが取り付けられている、請求項2に記載のリフター。
【請求項4】
前記スライド板には、基台側の水平支持面上に滑動自在に摺接する摺接部材が着脱自在に取り付けられている、請求項2又は3に記載のリフター。
【請求項5】
前記被搬送物支持台は、互いに連動して起伏運動する左右一対のクロスリンクを介して平行昇降自在に支持され、左右両クロスリンクの基台側で水平にスライドする前記水平支軸は、1本の長尺軸体の両端部で構成され、前記落下防止手段は、前記長尺軸体の両端部夫々に設けられている、請求項1〜4の何れか1項に記載のリフター。
【請求項6】
前記被搬送物支持台は、互いに連動して起伏運動する左右一対のクロスリンクを介して平行昇降自在に支持され、左右両クロスリンクの基台側で水平にスライドする前記水平支軸は、1本の長尺軸体の両端部で構成され、この長尺軸体の長さ方向中央部に、左右一対のクロスリンクに共通の1つの落下防止手段が設けられている、請求項1〜4の何れか1項に記載のリフター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−41110(P2012−41110A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−182000(P2010−182000)
【出願日】平成22年8月17日(2010.8.17)
【出願人】(000003643)株式会社ダイフク (1,209)