説明

リベッター

【課題】リベットから引抜ピンを引き抜くためにジョーを引き操作するときに特定の負荷状態になっても油圧機構部内での作動油の漏れを確実に防止することができ、ジョーの引き操作を適正に行うことのできるリベッターを提供する。
【解決手段】 リベットに挿通された引抜ピンを挟持するジョーを引き操作するための油圧機構部を備え、該油圧機構部は、筒状のシリンダ本体と、該シリンダ本体に対して軸心方向に移動可能に内装されたオイルピストンとを備え、該オイルピストンは、シリンダ本体の内部空間を一端側と他端側とに区切るピストン部と、該ピストン部に連設されてシリンダ本体の一端から延出した先端側に前記ジョーが作動的に連結されたピストンロッドとを備え、前記ピストン部の外周に溝深さの異なる少なくとも二条の無端環状溝が形成されるとともに各無端環状溝内に環状シール部材が装着され、各環状シール部材の線径方向の変形量が異なっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二つ以上の部材をリベット締めする際に用いられるリベッターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、二つ以上の部材をリベット締めする際に用いられるリベッターには、種々タイプのものがあり、その一つとして、図6に示す如く、リベットLに挿通された引抜ピンPを挟持するジョー23を引き操作するための油圧機構部3を備えたものが提供されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
かかるリベッター1は、当該リベッター1自身が備えた作動油供給手段5又は外部に配置された作動油供給手段によって油圧機構部3に作動油が供給されることで、該油圧機構部3が原点位置(引抜ピンPを挟持し得る位置)にあるジョー23を移動させる(引き操作する)ように構成されている。
【0004】
より具体的に説明すると、前記油圧機構部3は、筒状のシリンダ本体30と、該シリンダ本体30に対して軸心方向に移動可能に内装されたオイルピストン31とを備えている。該オイルピストン31は、シリンダ本体30の内部空間Aを軸心方向の一端側の空間A1と他端側の空間A2とに区切るピストン部310と、該ピストン部310に連設されてシリンダ本体30から外方に延出するピストンロッド311とを備えており、前記ピストンロッド311の先端側に前記ジョー23が作動的に連結されている。そして、該油圧機構部3は、オイルピストン31のピストン部310にOリングや角リング等の弾性を有する環状シール部材35a,35bが外嵌されており、ピストン部310の外周面とシリンダ本体30の内周面との間を液密にしつつオイルピストン31が軸心方向に移動できるようになっている。
【0005】
すなわち、オイルピストン31は、ピストン部310の外周面に周方向に延びる無端環状溝350a,350bが形成され、無端環状溝350a,350b内に環状シール部材35a,35bが装着されている。そして、無端環状溝350a,350bに装着された環状シール部材35a,35bは、無端環状溝350a,350bの底面とシリンダ本体30の内周面とに挟まれて線径方向に圧縮変形し、ピストン部310の外周面とシリンダ本体30の内周面との間を液密にしている。これにより、該油圧機構部3は、シリンダ本体30内がピストン部310を境にして前記軸心方向で一端側の空間A1と他端側の空間A2とに液密に区画されている。
【0006】
そして、この種のリベッター1は、当該リベッター1が備えた作動油供給手段5又は外部に配置された作動油供給手段によって油圧機構部3(シリンダ本体30)の一端側の空間A1に対して高圧な作動油が所定流量で供給されることで、オイルピストン31(ピストン部310)がシリンダ本体30の他端部側に高速で移動し、オイルピストン31(ピストンロッド311)に対して作動的に連結されたジョー23も同方向に高速で移動する(ジョー23を引き操作する)ようになっている。
【0007】
そして、この種のリベッター1は、ジョー23に対する引き操作が完了する(引抜ピンPがリベットLを変形させて破断する)と、該ジョー23が原点位置に復帰するようになっている。
【0008】
より具体的に説明すると、この種のリベッター1には、シリンダ本体30の他端側の空間A2に対してコイルバネが内装されたものや、前記他端側の空間A2内に圧縮空気を供給可能に構成されたもの、前記他端側の空間A2内にコイルバネが内装されるとともに該他端側の空間A2内に圧縮空気を供給可能に構成されたものがあり、何れのリベッター1もジョー23に対する引き操作が完了した状態で一端側の空間A1が開放されて該空間A1から作動油が排出されるようになっている。
【0009】
すなわち、この種のリベッター1は、ジョー23に対する引き操作が完了すると、油圧機構部3の一端側の空間A1を圧力開放し、他端側から一端側に向けて作用する付勢力(コイルバネの付勢及び圧縮空気の圧力の少なくとも何れか一方による付勢力)によって、オイルピストン31(ピストン部310)を一端側に移動させてジョー23を原点位置に復帰させるようになっている。
【0010】
これにより、この種のリベッター1は、油圧機構部3に対する作動油の供給と排出とを切り換えることで、ジョー23の引き操作(引抜ピンPに対する引っ張り操作)とジョー23の原点復帰とを行えるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2002−228353号公報
【特許文献2】特開2010−99439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、上記構成のリベッター1は、リベット締めする際の物理的な要因(例えば、リベットLや引抜ピンPのサイズ、材質、機械的強度、リベット締めする部材の数等)によって、引抜ピンPを引き抜くとき(リベットLをかしめるとき)に負荷が異なったり負荷変動が生じたりするため、負荷状態によってオイルピストン31の移動速度が異なることになる。
【0013】
そして、上記構成のリベッター1の油圧機構部3は、無端環状溝350a,350bに装着した環状シール部材35a,35bを該無端環状溝350a,350bの底面とシリンダ本体30の内周面とで挟んで線径方向に圧縮変形させることで、オイルピストン31のピストン部310の外周面とシリンダ本体30の内周面との間を液密にしているため、シリンダ本体30の一端側の空間A1に作動油が供給されてオイルピストン31(ピストン部310)が他端側に移動する際、環状シール部材35a,35bがシリンダ本体30の内周面上を摺動することになるが、上述の如く、オイルピストン31が高速で移動すると、環状シール部材35a,35bの外周側(シリンダ本体30の内周面側)が引き摺られた状態(環状シール部材35a,35bのシリンダ本体30の内周面と圧接する外周側がオイルピストン31の移動に追従できずに無端環状溝350a,350bの底面と圧接する内周側に遅れて付いてくる状態)になり、オイルピストン31の移動速度によって環状シール部材35a,35bのシリンダ本体30の内周面に対する引き摺られ方(シリンダ本体30の内周面に対する環状シール部材35a,35bの圧接状態)が異なった状態になってしまう。
【0014】
このような状況の基、上記構成のリベッター1は、環状シール部材35a,35bが摺動するシリンダ本体30の内周面の表面状態(例えば、表面のうねりや表面粗さ等)との関係で引抜ピンPを引き抜くときの負荷(オイルピストン31の移動速度)によって、シリンダ本体30の内周面に対して環状シール部材35a,35bが圧接した状態を維持できない状況になることがある。すなわち、上記構成のリベッター1は、ピストン部310に外嵌した環状シール部材35a,35bのシリンダ本体30の内周面に対する圧接状態と、オイルピストン31の移動速度との組み合わせ条件が特定の組み合わせ条件になったときに、ピストン部310に外嵌した環状シール部材35a,35bのシリンダ本体30の内周面に対する圧接(圧接力)が低下し、シリンダ本体30の内周面とピストン部310の外周面との間が液密な状態で維持されなくなってしまうことがある。
【0015】
その結果、上記構成のリベッター1は、オイルピストン31の移動中に一端側の空間A1に供給された作動油が他端側の空間A2に流れ込んで一端側の空間A1に戻ることができない状態(他端側の空間A2に作動油が滞留した状態)になり、該他端側の空間A2内にある作動油がオイルピストン31(ピストン部310)の移動を阻害し、該オイルピストン31に作動的に連結されたジョー23を適正に引き操作(移動)させることができなくなることがあった。
【0016】
また、上記構成のリベッター1は、上述の如く、オイルピストン31の移動中(ジョー23の引き操作中)に一端側の空間A1に供給された作動油が他端側の空間A2に流れ出てしまう(漏れ出てしまう)ことがあるため、一端側の空間A1に対して供給すべき作動油の油量が減少してしまい、オイルピストン31の移動(ジョー23の引き操作)を適正に行うことができなくなってしまう。特に、リベッター1に作動油供給手段5を装備した場合、該作動油供給手段5が一端側の空間A1に供給すべき作動油を一定量で貯留するオイルタンクを備えることになるため、一端側の空間A1に供給すべき作動油の油量が減少すると、供給した作動油でオイルピストン31を必要な距離移動させることができなくなり、ジョー23の引き操作を適正に行うことができなくなってしまう。
【0017】
そして、この種のリベッター1には、ピストン部310とシリンダ本体30との間のシール性(液密性)を高めるべく、ピストン部310の外周に二条又は三条以上の無端環状溝350a,350bが形成されるとともに各無端環状溝350a,350bに環状シール部材35a,35bが装着されたものもあるが、各環状シール部材35a,35bは、軸心方向での配置が異なるもののピストン部310に対して同じ態様で装着されているため、オイルピストン31が移動したときのシリンダ本体30の内周面に対する引き摺られ方が同じ状態になる。そのため、かかるリベッター1は、引抜ピンPを引き抜くためにジョー23を引き操作するときの負荷(オイルピストン31の移動速度)によって、二つ又は三つ以上の環状シール部材35a,35bにおけるシリンダ本体30の内周面に対する圧接力が低下した状態(シール性能が低下又は発揮していない状況)が同時に発生し、一端側の空間A1に供給された作動油がオイルピストン31の移動中(ジョー23の引き操作中)に他端側の空間A2に向けて流れ出てしまうことがある。
【0018】
そして、ジョー23に対する引き操作が完了したときにシリンダ本体30の他端側の空間A2内に圧縮空気を供給することで、ジョー23を原点位置に復帰させるようにしたリベッター1は、作動油の流通を阻止するための環状シール部材35a,35bに加えて圧縮空気の流通を阻止するための別の環状シール部材(例えば、Oリングや角リング等)がピストン部310の外周面に対して装着されるが、該別の環状シール部材は、圧縮空気の漏れを防止するもの(圧力が油圧よりも低い空圧(圧縮空気による圧力)に対する耐圧を考慮したもの)であるため、オイルピストン31が高速で移動したときに作動油の流通を阻止するための環状シール部材35a,35bのシール性能が低下して一端側の空間A1から他端側の空間A2に向けて作動油の流れた場合、圧縮空気の漏れを防止するための別の環状シール部材で作動油の流通を阻止することができずに他端側の空間A2内に作動油が流れ込んでしまうことがある。
【0019】
従って、従来の何れのリベッター1も、ジョー23を引き操作するときの負荷状態(オイルピストン31の移動速度)によって、一端側の空間A1に供給された作動油がオイルピストン31の移動中(ジョー23の引き操作中)に他端側の空間A2に向けて流れ出てしまい、該他端側の空間A2に流れ込んだ作動油にオイルピストン31の移動が阻害されてジョー23を適正に引き操作できなくなる虞があった。
【0020】
そこで、本発明は、斯かる実情に鑑み、リベットから引抜ピンを引き抜くためにジョーを引き操作するときに特定の負荷状態になっても油圧機構部内での作動油の漏れを確実に防止することができ、ジョーの引き操作を適正に行うことのできるリベッターを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明に係るリベッターは、リベットに挿通された引抜ピンを挟持するジョーを引き操作するための油圧機構部を備え、前記油圧機構部は、筒状のシリンダ本体と、該シリンダ本体に対して軸心方向に移動可能に内装されたオイルピストンとを備え、該オイルピストンは、シリンダ本体の内部空間を一端側と他端側とに区切るピストン部と、該ピストン部に連設されてシリンダ本体の一端から延出した先端側に前記ジョーが作動的に連結されたピストンロッドとを備え、ピストン部の外周面に形成された無端環状溝内に装着された環状シール部材が無端環状溝の底面とシリンダ本体の内周面とに挟まれて圧縮変形してピストン部の外周面とシリンダ本体の内周面との間を液密にし、シリンダ本体内の一端側の空間に対して作動油が供給されることでオイルピストンがシリンダ本体の他端側に移動するように構成されたリベッターにおいて、前記オイルピストンは、ピストン部の外周に溝深さの異なる少なくとも二条の無端環状溝が形成されるとともに各無端環状溝内に環状シール部材が装着され、各環状シール部材の線径方向の変形量が異なっていることを特徴とする。
【0022】
上記構成のリベッターによれば、オイルピストンのピストン部の外周に溝深さの異なる少なくとも二条の無端環状溝が形成されるとともに各無端環状溝内に環状シール部材が装着され、各環状シール部材の線径方向の変形量が異なっているため、リベットから引抜ピンを引き抜くとき(リベットをかしめるとき)に一端側の空間から他端側の空間に向けて作動油が流れ出ることを防止することができる。
【0023】
より具体的に説明すると、上記構成のリベッターは、無端環状溝の底面とシリンダ本体の内周面とに挟まれて圧縮変形した各環状シール部材の線径方向の変形量が異なるため、シリンダ本体の内周面に対する各環状シール部材の圧接状態が異なった状態になる。従って、オイルピストンが移動したときのシリンダ本体の内周面に対する各環状シール部材の摺接状態(引き摺られ方)が異なることになる。すなわち、上記構成のリベッターは、作動油の漏れ(一端側の空間から他端側の空間に向けて作動油が流れること)を防止するために設けられた少なくとも二つの環状シール部材のそれぞれがシリンダ本体の内周面との圧接状態が初期の状態から異なるため、オイルピストンが移動したときの各環状シール部材におけるシリンダ本体の内周面に対する引き摺られ方が異なることになる。
【0024】
これにより、上記構成のリベッターは、各環状シール部材のシリンダ本体の内周面に対する圧接力が低下する条件(シール性能が低下する条件)が異なることになるため、ジョーを引き操作するときの負荷状態が特定の状態になったとき(オイルピストンの移動速度が特定の速度になったとき)に、各環状シール部材のシリンダ本体の内周面に対する圧接力が同時に同じ状態で低下することがない。
【0025】
すなわち、上記リベッターは、ジョーを引き操作するときの負荷状態が特定の状態になって何れかの環状シール部材がシリンダ本体の内周面に対する圧接状態を維持できなくなっても、残りの環状シール部材がピストン部とシリンダ本体の内周面との間を液密な状態にする(シールする)ことになる。従って、上記リベッターは、シリンダ本体内の一端側の空間に供給された作動油が他端側の空間に流れ込むことがなく、ジョーの引き操作を適正に行うことができる。
【0026】
本発明の一態様として、一端側にある無端環状溝の溝深さが他端側にある無端環状溝の溝深さよりも深く設定され、一端側にある無端環状溝に装着された環状シール部材の線径方向の変形量が他端側にある無端環状溝に装着された環状シール部材の線径方向の変形量よりも小さくなっていることが好ましい。このようにすれば、シリンダ本体の内周面に対する圧接力が、一端側にある環状シール部材よりも他端側にある環状シール部材の方が大きくなるため、当該他端側にある環状シール部材によるシリンダ本体の内周面とオイルピストン(ピストン部)の外周面との間のシール性能が一端側にある環状シール部材のシール性能よりも勝ることになる。従って、一端側の環状シール部材がシリンダ本体の内周面との圧接状態を維持できなくなって一端側の空間内の作動油が他端側の空間に流れ出ようとしても、他端側の環状シール部材が作動油の流出を確実に阻止することができる。すなわち、他端側の環状シール部材によるシール性能を高めておくことで、他端側の空間への作動油の漏れを確実に阻止することができる。
【発明の効果】
【0027】
以上のように、本発明のリベッターによれば、リベットから引抜ピンを引き抜くためにジョーを引き操作するときに特定の負荷状態になっても油圧機構部内での作動油の漏れを確実に防止することができ、ジョーの引き操作を適正に行うことができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態に係るリベッターの全体斜視図を示す。
【図2】同実施形態に係るリベッターの縦断面図を示す。
【図3】同実施形態に係るリベッターの部分拡大図であって、リベッター本体の本体先端部の拡大断面図を示す。
【図4】同実施形態に係るリベッターの部分拡大図であって、リベッター本体の油圧機構部の拡大断面図を示す。
【図5】同実施形態に係るリベッターの油圧機構部の説明図であって、(a)は、図4のX部拡大断面図を示し、(b)は、圧縮変形前の状態を実線で示すとともに圧縮変形した状態を二点鎖線で示した線方向から見た環状シール部材の断面形状を示す。
【図6】従来のリベッターの部分拡大断面図を含む縦断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の一実施形態に係るリベッターについて、添付図面を参照しつつ説明する。
【0030】
本実施形態に係るリベッターは、一端部に大径の鍔部が形成された筒状のリベットに対して他端側から一端側に向けて挿通された軸状の引抜ピンを引き抜いて前記リベットの他端部をかしめるために用いられる。
【0031】
かかるリベッター1は、図1に示す如く、作業時に作業者が把持する棒状のハンドル部1aと、該ハンドル部1aの一端に該ハンドル部1aに対して交差方向に延びるように連設されたリベッター本体1bとを備えている。
【0032】
そして、該リベッター1は、図2に示す如く、前記リベッター本体1bに引抜ピンPを挟持するジョー23や該ジョー23を引き操作するための油圧機構部3が設けられ、前記ハンドル部1a内に前記油圧機構部3に対して作動油を供給するための作動油供給手段5の一部が内装されている。
【0033】
より具体的に説明すると、前記リベッター本体1bは、引抜ピンPを挟持するジョー23が内装された本体先端部2と、該本体先端部2に連設された油圧機構部3とを備えている。また、本実施形態に係るリベッター本体1bは、リベットLから引き抜かれた引抜ピンPを回収するピン回収部4を更に備えている。
【0034】
前記本体先端部2は、図3に示す如く、筒状のハウジング20と、ハウジング20の先端部に取り付けられたノズル21と、ハウジング20に軸心方向で往復動可能に内装された筒状のジョーケース22と、ジョーケース22に内装されたジョー23とを備えている。
【0035】
前記ハウジング20は、基端部が油圧機構部3(後述するシリンダ本体30)の一端部に連結されている。本実施形態において、前記ハウジング20は、リベッター1(リベッター本体1b)の外装の一部を構成している。
【0036】
前記ノズル21は、引抜ピンPを遊挿可能な貫通穴210が穿設されており、該貫通穴210とハウジング20の孔とが同心になるように該ハウジング20の先端部に連結されている。また、該ノズル21は、ハウジング20内部に突出してジョー23の先端部が当接するように構成されている。
【0037】
前記ジョーケース22は、ハウジング20に対して同心で内挿されており、軸心方向に移動するときにハウジング20の内周面に外周面が案内されるようになっている。そして、該ジョーケース22は、ハウジング20の先端側に位置する先端部(該ジョーケース22の先端部)の内周面が先端の開口に向けて先細りしたテーパー面で構成されている。そして、ジョーケース22は、基端部が前記油圧機構部3の後述するピストンロッド311に対して同心をなして連結されている。
【0038】
前記ジョー23は、引抜ピンPの外径よりやや小さな径に設定された貫通穴が軸心上に穿孔された栽頭円錐体を軸心に沿って分割(本実施形態において二分割)した複数の分割体で構成される。該ジョー23(複数の分割体)は、ジョーケース22の先端部に軸心方向に移動可能に内装され、該軸心方向に移動するに際して外周面がジョーケース22の先端部の内周面に案内されて互いに接離するようになっている。また、該ジョー23は、油圧機構部3のピストンロッド311に内装されたバネ(コイルバネ)24によってジョーケース22の先端側に付勢されている。
【0039】
これにより、該ジョー23(複数の分割体)は、ジョーケース22が油圧機構部3側に移動したときに、バネ24の付勢でジョーケース22の先端側に移動しつつ互いに接近して引抜ピンPを挟持し、ジョーケース22がハウジング20の先端側に移動したときに、ノズル21と接触してジョーケース22の基端側に移動しつつ互いに離間して引抜ピンPの挟持を解除するようになっている。
【0040】
前記油圧機構部3は、図4に示す如く、筒状のシリンダ本体30と、該シリンダ本体30に対して軸心方向に移動可能に内装されたオイルピストン31とを備えている。
【0041】
本実施形態において、前記シリンダ本体30は、当該リベッター1(リベッター本体1b)の外装の一部を構成している。本実施形態に係るシリンダ本体30は、円柱状の内部空間Aを形成し、一端部にピストンロッド311を挿通するためのロッド挿通孔300が形成されている。また、本実施形態に係るシリンダ本体30は、他端部に後述する第二のガイドパイプ401を挿通するためのパイプ挿通孔301がロッド挿通孔300と同心になるように穿設されている。そして、該シリンダ本体30は、一端部に前記ハウジング20がロッド挿通孔300と同心になるように連結されている。なお、特に採番しないが、本実施形態に係るシリンダ本体30は、軸心方向で分割可能な二つの部材で構成されており、オイルピストン31や後述するコイルバネ34a,34b等を内装した上で二つの部材を連結することで形成されている。
【0042】
前記オイルピストン31は、シリンダ本体30の内部空間Aを軸心方向で一端側の空間(以下、第一空間という)A1と他端側の空間(以下、第二空間という)A2とに区切るピストン部310と、該ピストン部310に連設されてシリンダ本体30の一端から延出した先端側に前記ジョー23が作動的に連結されたピストンロッド311とを備えている。
【0043】
前記ピストン部310は、図4及び図5(a)に示す如く、外周面に環状シール部材32a,32b(本実施形態においてはOリング)を装着するための無端環状溝312a,312bが形成されている。そして、該油圧機構部3は、無端環状溝312a,312b内に装着された環状シール部材32a,32bが該無端環状溝312a,312bの底面とシリンダ本体30の内周面とに挟まれて圧縮変形してピストン部310の外周面とシリンダ本体30の内周面との間をシールするようになっている。
【0044】
本実施形態において、前記ピストン部310は、外周に周方向に連続する無端環状溝312a,312bが軸心方向に間隔をあけて二条形成されている。前記二条の無端環状溝312a,312bは、それぞれ溝深さが異なっている。
【0045】
そして、本実施形態に係る油圧機構部3は、各無端環状溝312a,312bに対し、形態、サイズ、及び素材が同一の弾性を有する環状シール部材32a,32b(本実施形態においてはOリング)が装着されている。そのため、各無端環状溝312a,312bに対して装着された二つ環状シール部材32a,32bのそれぞれは、線径方向の変形量(無端環状溝312a,312bの底面とシリンダ本体30の内周面とに挟まれることによる圧縮変形量)が異なっている。
【0046】
本実施形態の油圧機構部3は、第一空間A1に作動油を供給するようになっている。これを前提に、本実施形態の油圧機構部3は、第一空間A1側にある無端環状溝(以下、第一環状溝という)312aの溝深さが第二空間A2側にある無端環状溝(以下、第二環状溝という)312bの溝深さよりも深く設定され、第一環状溝312aに装着された環状シール部材(以下、第一シール部材という)32aの線径方向の変形量が第二環状溝312bに装着された環状シール部材(以下、第二シール部材という)32bの線径方向の変形量よりも小さくなっている。すなわち、作用油が供給される空間A1側にある第一シール部材32aの変形量が反対の空間A2側にある第二シール部材32bの変形量よりも小さくなっている。
【0047】
本実施形態では、第一シール部材32a及び第二シール部材32bは、それぞれJISで規格されたOリングが採用されており、第二環状溝(溝深さが浅い方の溝)312bの溝深さをJISの推奨値(Oリングの潰し代がJISで推奨される潰し代になる溝深さ)に設定している。すなわち、第二シール部材32bの潰し代を標準(基準)の潰し代にした上で、第一環状溝(溝深さが深い方の溝)312aの溝深さをJISの推奨値から外れた溝深さ(Oリングの潰し代がJISで推奨される潰し代よりも少ない潰し代になる溝深さ)に設定している。
【0048】
そして、本実施形態においては、第一環状溝312a及び第二環状溝312bは、同一の環状シール部材(第一シール部材及び第二シール部材)32a,32bが装着されることを前提に、第一空間(作動油の供給される空間)A1側の第一環状溝312aの溝深さH1(図5(a)参照)、第二空間(作動油の供給される空間とは反対の空間)A2側の第二環状溝312bの溝深さH2(図5(a)参照)、及び圧縮変形前の環状シール部材(第一シール部材、第二シール部材)32a,32bの線径φd(図5(b)参照)が以下の式(1)の関係になるように設定されている。
(H1−H2)/φd≧0.03…式(1)
【0049】
すなわち、本実施形態に係るリベッター1(油圧機構部3)は、第一環状溝312aの溝深さH1と第二環状溝312bの溝深さH2との差を圧縮変形前の環状シール部材(第一シール部材、第二シール部材)32a,32bの線径φdで除した値が3%以上になるように第一環状溝312a及び第二環状溝312bの溝深さが設定されている。
【0050】
そして、本実施形態に係る油圧機構部3は、第一空間A1内に作動油が供給されるため、第一空間A1側にある第一シール部材32aに作動油の圧力が直接かかり、該圧力で第一シール部材32aがピストン部310とシリンダ本体30との間に食い込む虞があるとして、第一空間A1側にある第一環状溝312aに軸心方向の他端側で第一シール部材32aと隣接するようにバックアップリング33が装着されている。これにより、本実施形態に係る油圧機構部3は、ピストン部310とシリンダ本体30との間への第一シール部材32aの食い込みが防止されている。
【0051】
前記ピストンロッド311は、ピストン部310の一端に同心で延設されている。本実施形態に係るピストンロッド311は、上述の如く、筒状に形成されており、基端部がピストン部310に貫通した状態で連結されている。
【0052】
そして、該ピストンロッド311は、先端側がシリンダ本体30のロッド挿通孔300に挿通されてハウジング20内にまで延びてジョーケース22と連結されている。すなわち、ピストンロッド311は、ピストン部310がシリンダ本体30内の最も一端側に位置した状態で、ハウジング20の先端側に位置するジョーケース22と連結できる長さに設定されている(図2及び図3参照)。
【0053】
そして、本実施形態に係るピストンロッド311は、先端側にジョー23を付勢するためのバネ(コイルバネ)24が同心をなして内装されている。なお、本実施形態においては、ピストンロッド311に内装されたバネ24で直接ジョー23を付勢せずに、ジョー23とバネ24との間に筒状のスペーサ(採番しない)が介装されており、スペーサを介してバネ24の付勢力をジョー23に伝達するようになっている(図2及び図3参照)。
【0054】
そして、本実施形態に係る油圧機構部3は、オイルピストン31を本体先端部2側に移動させるためのコイルバネ34a,34bが第二空間A2に内装されている。本実施形態に係る油圧機構部3は、外径を異にする二本のコイルバネ34a,34bが同心又は略同心になるようにピストン部310とシリンダ本体30の他端部との間に配置されている。
【0055】
図2に戻り、前記ピン回収部4は、シリンダ本体30の他端部(後述する第二のガイドパイプ401を挿通するパイプ挿通孔301)を包囲するように取り付けられた容器で構成されている。
【0056】
本実施形態に係るリベッター1は、油圧機構部3を貫通してジョー23の近傍からピン回収部4にまで延びる管状のピン移送経路40が形成されており、引き抜かれた引抜ピンPを該ピン移送経路40で本体先端部2からピン回収部4に移送できるようになっている。また、本実施形態に係るリベッター1は、ピン移送経路40の途中位置にピン回収部4に向けて圧縮空気を流入させるようになっており、該管状のピン移送経路40に流入した空気の流れで引抜ピンPを本体先端部2からピン回収部4にまで誘導できるようになっている。
【0057】
具体的に説明すると、本実施形態に係るリベッター1(リベッター本体1b)は、シリンダ本体30の第二空間A2内に圧縮空気が導入されるようになっている。そして、該リベッター1は、ピストンロッド311に対してジョー23の近傍にまで延びる筒状の第一のガイドパイプ400が挿入される(図2及び図3参照)とともに、ピストン部310の他端側に筒状の第二のガイドパイプ401が延設されており(図2及び図4参照)、該第一のガイドパイプ400及び第二のガイドパイプ401で管状のピン移送経路40を形成している。
【0058】
そして、本実施形態に係るリベッター1は、図4に示す如く、第二のガイドパイプ401のピストン部310近傍に第二空間A2に供給された圧縮空気を流入させるノズル孔402が穿設されており、該ノズル孔402から流入する圧縮空気の流れにより管状のピン移送経路40内で本体先端部2側からピン回収部4に向けて空気の流れが形成されるようになっている。これにより、本実施形態に係るリベッター1は、ジョー23が引抜ピンPの挟持を解除した状態で、該引抜ピンPが空気の流れに乗って管状のピン移送経路40内を移動してピン回収部4にまで誘導されるようになっている。
【0059】
本実施形態に係るリベッター1は、図2及び図4に示す如く、シリンダ本体30の第二空間A2内に圧縮空気を導入する経路の途中に該経路の遮断と開放を行うための流路開閉スイッチ41が設けられており、該流路開閉スイッチ41をオンにしたとき(経路を開にしたとき)に圧縮空気がシリンダ本体30の第二空間A2を介して管状のピン移送経路40内に供給され、引抜ピンPを回収できるようになっている。
【0060】
前記作動油供給手段5は、図2に示す如く、作動油を貯留するオイルタンク50と、エアーシリンダ51とで構成されている。
【0061】
前記オイルタンク50は、前記ハンドル部1a内に設けられており、油圧機構部3のシリンダ本体30の一端部と流体的に接続されている。すなわち、オイルタンク50は、ピストン部310がシリンダ本体30の最も一端側に位置した状態でも第一空間A1に作動油を供給できる位置に接続されている。本実施形態に係るオイルタンク50は、筒状に形成されており、起立した状態で配置されている。
【0062】
前記エアーシリンダ51は、内部空間Bを形成したエアーシリンダ本体52と、該エアーシリンダ本体52に内装されたエアピストン53とを備えている。本実施形態に係るエアーシリンダ本体52は、有底筒状のケーシング520と、該ケーシング520の上端開口を閉塞する蓋体521とで構成されている。本実施形態に係るエアーシリンダ本体52は、ケーシング520の周壁が円筒形状に形成されており、円柱状の内部空間Bを形成している。そして、前記蓋体521には、筒状のオイルタンク50の一端部(下端部)を挿入するための貫通穴522が穿設されている。そして、蓋体521は、オイルタンク50の下端部が貫通穴522に挿入された状態で液密に連結されている。また、蓋体521は、上面にオイルタンク50を内装したハンドル部1aも連結されている。
【0063】
そして、前記エアピストン53は、エアーシリンダ本体52に軸心方向に移動可能に内装されたピストン本体530と、該ピストン本体530に延設されてオイルタンク50内に延びるプランジャロッド531とを備えている。該エアピストン53は、ピストン本体530の外周面とエアーシリンダ本体52(周壁)の内周面との間がシールされており、ケーシング520の底部側に圧縮空気を供給することでエアピストン53が移動するようになっている。そして、前記作動油供給手段5は、エアピストン53が蓋体521側に移動することでプランジャロッド531がオイルタンク50内の作動油を油圧機構部3に押し出すようになっている。
【0064】
本実施形態に係るリベッター1は、ハンドル部1aにトリガースイッチSが設けられており、トリガースイッチSのON−OFFの切り換えでエアピストン53に対する圧縮空気の供給と停止とを切り換えるようになっている。すなわち、本実施形態に係るリベッター1は、トリガースイッチSのON−OFFの切り換えで圧縮空気の流路を切り換える流路切換バルブ54が設けられており、トリガースイッチSをONにしたときにエア供給原からの圧縮空気をケーシング520の底部側に供給し、トリガースイッチSをOFFにしたときにエア供給原からの圧縮空気の供給を絶ってケーシング520の底部側に圧縮空気を放出するようになっている。
【0065】
本実施形態に係るリベッター1は、以上の通りであり、続いて、上記構成のリベッター1の作動について説明する。
【0066】
まず、リベットLに挿通された引抜ピンPをノズル21の貫通穴210に挿入する。この状態で、引抜ピンPはジョー23内(複数の分割体間)に位置することになる。そして、トリガースイッチSをONにすると、エアーシリンダ51に圧縮空気が供給され、エアピストン53が蓋体521側に移動してプランジャロッド50がオイルタンク50内の作動油を第一空間A1に押し出すことになる。そうすると、第一空間A1内の作動油の圧力がコイルバネ34a,34bの付勢に勝ち、オイルピストン31(ピストン部310)がシリンダ本体30の他端側に移動し始めることになる。
【0067】
そして、オイルピストン31が移動し始めると、該オイルピストン31のピストンロッド311に連結されたジョーケース22が軸心方向に移動することになる。ジョー23は、引抜ピンPをノズル21に挿入した状態で、該ノズル21との接触でハウジング20の基端側に押された状態になっているため、ジョーケース22が所定量移動した後にジョーケース22と一緒に移動し始めることになる。
【0068】
すなわち、ジョーケース22が所定量移動するとバネ24の付勢でジョー23がノズル21側に移動して引抜ピンPを挟持し、引き続きジョーケース22が移動することでジョー23が引抜ピンPを挟持したままハウジング20の基端側に移動する(引き操作される)ことになる。
【0069】
そして、引抜ピンPを挟持したジョー23を引き操作し始めてから該引抜ピンPがリベットLから引き抜かれて(リベットLがかしめられて)オイルピストン31がシリンダ本体30の他端側の移動限界位置に到達するまでの間に負荷変動が生じてオイルピストン31(ピストン部310)の移動速度が変化することになる。特に、引抜ピンPがリベットLから引き抜かれると、負荷がゼロになってオイルピストン31の移動速度が急激に速くなり、オイルピストン31の移動速度が顕著に変化することになる。
【0070】
従って、ピストン部310に装着された第一シール部材32a及び第二シール部材32bのシリンダ本体30の内周面に対する引き摺られ方(圧接状態)に変化が生じ、ピストン部310の移動速度によって、第一シール部材32a及び第二シール部材32bがシリンダ本体30の内周面に対して圧接した状態(シール性能を発揮した状態)で維持できない状態(作動油が流通し得る状態)になることがある。
【0071】
しかしながら、本実施形態に係るリベッター1は、図4及び図5(a)に示す如く、オイルピストン31のピストン部310の外周に形成された溝深さの異なる第一環状溝312a及び第二環状溝312bのそれぞれに同一規格の第一シール部材32a及び第二シール部材32bが装着されることで、第一シール部材32aの線径方向の変形量と第二シール部材32bの線径方向の変形量とが異なった状態になっているため、リベットLから引抜ピンPを引き抜くとき(リベットLをかしめるとき)に第一空間A1から第二空間A2に向けて作動油が流れ出ることが防止される。
【0072】
より具体的に説明すると、上記構成のリベッター1は、第一環状溝312aに装着されて該第一環状溝312aの底面とシリンダ本体30の内周面とに挟まれて圧縮変形した第一シール部材32aの線径方向の変形量と、第二環状溝312bに装着されて該第二環状溝312bの底面とシリンダ本体30の内周面とに挟まれて圧縮変形した第二シール部材32bの線径方向の変形量とが異なるため、シリンダ本体30の内周面に対する第一シール部材32aの圧接状態と、シリンダ本体30の内周面に対する第二シール部材32bの圧接状態とが異なった状態になる。従って、オイルピストン31が移動したときのシリンダ本体30の内周面に対する第一シール部材32aの摺接状態及びシリンダ本体30の内周面に対する第二シール部材32bの摺接状態も異なることになる。すなわち、上記構成のリベッター1は、作動油の漏れ(第一空間A1から第二空間A2に向けて作動油が流れること)を防止するために設けられた第一シール部材32a及び第二シール部材32bのそれぞれがシリンダ本体30の内周面との圧接状態が初期の状態から異なるため、オイルピストン31が移動したときの第一シール部材32a及び第二シール部材32bにおけるシリンダ本体30の内周面に対する引き摺られ方が異なることになる。
【0073】
これにより、上記構成のリベッター1は、第一シール部材32aにおけるシリンダ本体30の内周面に対する圧接力(シール性能)が低下する条件と、第二シール部材32bにおけるシリンダ本体30の内周面に対する圧接力(シール性能)が低下する条件とが異なるため、ジョー23を引き操作するときの負荷状態が特定の状態になったとき(オイルピストン31の移動速度が特性の速度になったとき)に、第一シール部材32a及び第二シール部材32bにおけるシリンダ本体30の内周面に対する圧接力が同時に同じ状態にはならず、第一シール部材32a及び第二シール部材32bの少なくとも何れか一方がシリンダ本体30の内周面に対して適正に圧接した状態になる。
【0074】
すなわち、上記リベッター1は、ジョー23を引き操作するときの負荷状態が特定の状態になって第一シール部材32a又は第二シール部材32bの何れか一方がシリンダ本体30の内周面に対して圧接状態を維持できなくなっても、第一シール部材32a又は第二シール部材32bの何れか他方がピストン部310とシリンダ本体30の内周面との間をシールすることになる。
【0075】
特に、本実施形態に係るリベッター1は、作動油の供給される第一空間A1側にある第一環状溝312aの溝深さが第二空間A2側にある第二環状溝312bの溝深さよりも深く設定され、第一環状溝312aに装着された第一シール部材32aの線径方向の変形量が第二環状溝312bに装着された第二シール部材32bの線径方向の変形量よりも小さくなっているため、シリンダ本体30の内周面に対する圧接力が第一シール部材32aよりも第二シール部材32bの方が大きくなっている。
【0076】
従って、当該第二シール部材32bによるシリンダ本体30の内周面とオイルピストン31(ピストン部310)の外周面との間のシール性能が第一シール部材32aのシール性能よりも勝ることになり、第一シール部材32aがシリンダ本体30の内周面との圧接状態を維持できなくなって第一空間A1内の作動油が第二空間A2に流れ出ようとしても、第二シール部材32bが作動油の流出を確実に阻止することになる。すなわち、第二シール部材32bによるシール性能を高めておくことで、第二空間A2への作動油の漏れが確実に阻止される。
【0077】
そして、ピストン部310(ジョー23)の移動が続行されて、引抜ピンPが引き抜かれることで、リベットLがかしめられることになる。そして、作業者がトリガースイッチSをOFFにすると、エアーシリンダ本体52内の圧縮空気が排気され(圧力開放され)、油圧機構部3のコイルバネ34a,34bの付勢力でピストン部310がシリンダ本体30の一端側に押されて第一空間A1内にある作動油がオイルタンク50内に押し戻されることになる。
【0078】
そして、ジョー23がハウジング20の先端部にまで戻る(引抜ピンPを挟持し得る原点位置に復帰する)と、該ジョー23はノズル21と接触してリベットLから引き抜かれた引抜ピンPの挟持を解除することになる。従って、この状態で流路開閉スイッチ41がONになっていると、圧縮空気がシリンダ本体30の第二空間A2を介して管状のピン移送経路40内に供給され、引抜ピンPがピン移送経路40内を移動してピン回収部4に回収されることになる。
【0079】
以上のように、本実施形態に係るリベッター1は、前記オイルピストン31のピストン部310の外周に溝深さの異なる二条の無端環状溝312a,312bが形成されるとともに各無端環状溝312a,312b内に環状シール部材32a,32bが装着され、各環状シール部材32a,32bの線径方向の変形量が異なっているため、リベットLから引抜ピンPを引き抜くとき(リベットLをかしめるとき)に第一空間A1から第二空間A2に向けて作動油が流れ出ること(油圧機構部3内での作動油の漏れ)を防止することができ、ジョー23の引き操作を適正に行うことができるという優れた効果を奏し得る。
【0080】
また、本実施形態に係るリベッター1は、第一環状溝312aが第二環状溝312bよりも溝深さが深く設定され、第一環状溝312aに装着された第一シール部材32aの線径方向の変形量が第二環状溝312bに装着された第二シール部材32bの線径方向の変形量よりも小さくなっているため、第二空間A2への作動油の漏れを確実に阻止することができる。
【0081】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加え得ることは勿論のことである。
【0082】
上記実施形態において、ピストン部310の外周に二条の無端環状溝312a,312bを設け、作動油の供給される第一空間A1側にある第一環状溝312aの溝深さを第二環状溝312bの溝深さよりも深く設定し、作動油の供給される第一空間A1側にある第一シール部材32aの線径方向の変形量を第二シール部材32bの線径方向の変形量よりも小さくしたが、これに限定されるものではなく、例えば、作動油の供給される第一空間A1側にある第一環状溝312aの溝深さを第二環状溝312bの溝深さよりも浅く設定し、作動油の供給される第一空間A側にある第一シート部材32aの線径方向の変形量を第二シート部材32bの線径方向の変形量よりも大きくするようにしてもよい。
【0083】
すなわち、ピストン部310の外周に設けられる各無端環状溝312a,312bの溝深さを異なる溝深さに設定し、各無端環状溝312a,312bに装着した環状シール部材32a,32bの線径方向の変形量を異ならせるようにすればよい。なお、作動油の漏れ(第一空間A1側から第二空間A2側への作動油の流通)を確実に阻止するには、作動油の供給される第一空間A1側にある第一環状溝312aの溝深さを第二空間A2側にある第二環状溝312bの溝深さよりも深く設定し、第一空間A1側にある第一シート部材32aの線径方向の変形量を第二空間A2側にある第二シート部材32bの線径方向の変形量よりも小さくすることが好ましい。このようにすることで、第二空間A2側にある第二シート部材32bによるシール性能が第一空間A1側にある第一シール部材32aによるシール性能よりも高まるため、第一空間A1側の第一シール部材32aによるシール性能が低下して作動油が第二空間A2側に流れても該第二空間A2側にある第二シール部材32bが作動油の流通を阻止することになり、第二空間A2に対する作動油の流入を確実に防止することができる。
【0084】
上記実施形態において、ピストン部310の外周に二条の無端環状溝(第一環状溝及び第二環状溝)312a,312bを設けるとともに各無端環状溝312a,312b内に環状シート部材(第一シール部材及び第二シール部材)32a,32bを装着したが、これに限定されるものではなく、例えば、ピストン部310の外周に三条以上の無端環状溝312a,312b…を設けるとともに各無端環状溝312a,312b…内に環状シート部材32a,32b…を装着するようにしてもよい。この場合においても、各無端環状溝312a,312b…の溝深さを異なる溝深さに設定し、各無端環状溝312a,312b…に装着した環状シール部材32a,32b…の線径方向の変形量を異ならせることは勿論のことである。
【0085】
上記実施形態において、環状シール部材32a,32bにOリングを採用したが、これに限定されるものではなく、例えば、環状シール部材32a,32bに角リングを採用してもよい。すなわち、環状シール部材32a,32bは、線径方向に弾性変形可能な環状(リング状)のものであればよい。
【0086】
上記実施形態において、第一空間A1側にある第一環状溝312aのみにバックアップリング33を装着したが、これに限定されるものではなく、第二環状溝312bにもバックアップリング33を装着してもよい。また、上記実施形態では、一つの無端環状溝312aに一つのバックアップリング33を装着したが、これに限定されるものではなく、例えば、環状シール部材32aを挟み込むようにして一つの無端環状溝312aに二つのバックアップリング33,33を装着してもよい。すなわち、バックアップリング33は、必要に応じて適宜設ければよい。
【0087】
上記実施形態において、圧縮空気の供給で作動する作動油供給手段5(作動油を送り出すためエアーシリンダ51を有する作動油供給手段5)を備えたリベッター1(エアーリベッター)について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、作動油供給手段5としての油圧ユニットから油圧機構部3に対して作動油を供給するように構成されたリベッター1であってもよい。また、上記実施形態において、作動油供給手段5を一体的に備えたリベッター1について説明したが、例えば、作動油供給手段5を別置きのものとし、該作動油供給手段5によって作動油を供給するようにしたものであってもよい。
【0088】
また、上記実施形態において、リベットLから引き抜かれた引抜ピンPを圧縮空気の流れでピン回収部4まで移送して回収するようにしたが、これに限定されるものではなく、例えば、引抜ピンPを移送するための管状のピン移送経路40のみを設け、リベッター1を傾倒させることで引抜ピンPをピン回収部4に移送させるようにしたものであってもよい。また、引抜ピンPを移送するための環状の経路及びピン回収部4を設けずに、ノズル21から引き抜かれた引抜ピンPを取り出すようにしたものであってもよい。
【符号の説明】
【0089】
1…リベッター、1a…ハンドル部、1b…リベッター本体、2…本体先端部、3…油圧機構部、4…ピン回収部、5…作動油供給手段、20…ハウジング、21…ノズル、22…ジョーケース、23…ジョー、24…バネ、30…シリンダ本体、31…オイルピストン、32a,32b…環状シール部材、33…バックアップリング、34a,34b…コイルバネ、40…ピン移送経路、41…流路開閉スイッチ、50…オイルタンク、51…エアーシリンダ、52…エアーシリンダ本体、53…エアピストン、210…貫通穴、300…ロッド挿通孔、301…パイプ挿通孔、310…ピストン部、311…ピストンロッド、312a,312b…無端環状溝、400…第一のガイドパイプ、401…第二のガイドパイプ、402…ノズル孔、520…ケーシング、521…蓋体、522…貫通穴、530…ピストン本体、531…プランジャロッド、A…内部空間、A1…一方の空間、A2…他方の空間、B…内部空間、d…変形前の環状シール部材の線径、H1…一方の無端環状溝の溝深さ、H2…他方の無端環状溝の溝深さ、S…トリガースイッチ、L…リベット、P…引抜ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リベットに挿通された引抜ピンを挟持するジョーを引き操作するための油圧機構部を備え、前記油圧機構部は、筒状のシリンダ本体と、該シリンダ本体に対して軸心方向に移動可能に内装されたオイルピストンとを備え、該オイルピストンは、シリンダ本体の内部空間を一端側と他端側とに区切るピストン部と、該ピストン部に連設されてシリンダ本体の一端から延出した先端側に前記ジョーが作動的に連結されたピストンロッドとを備え、ピストン部の外周面に形成された無端環状溝内に装着された環状シール部材が無端環状溝の底面とシリンダ本体の内周面とに挟まれて圧縮変形してピストン部の外周面とシリンダ本体の内周面との間を液密にし、シリンダ本体内の一端側の空間に対して作動油が供給されることでオイルピストンがシリンダ本体の他端側に移動するように構成されたリベッターにおいて、前記オイルピストンは、ピストン部の外周に溝深さの異なる少なくとも二条の無端環状溝が形成されるとともに各無端環状溝内に環状シール部材が装着され、各環状シール部材の線径方向の変形量が異なっていることを特徴とするリベッター。
【請求項2】
一端側にある無端環状溝の溝深さが他端側にある無端環状溝の溝深さよりも深く設定され、一端側にある無端環状溝に装着された環状シール部材の線径方向の変形量が他端側にある無端環状溝に装着された環状シール部材の線径方向の変形量よりも小さくなっている請求項1に記載のリベッター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−196687(P2012−196687A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−61392(P2011−61392)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000232830)株式会社ロブテックス (21)