説明

リポソーム含有X線造影剤

【課題】
非イオン型ヨウド系化合物を効率よく内包するリポソームを含み、安全性の高いX線造
影剤を提供すること。
【解決手段】
種類以上の生理的に許容される製剤助剤を含有するリポソームを含み、
該リポソームが、リン脂質およびポリエチレングリコール(PEG)基を有する脂質を含む脂質膜成分と、超臨界二酸化炭素を、40〜65℃、10〜30MPaの条件下に混合すること
により作製され、かつ実質的に有機溶剤を含まないものであり、
脂質膜成分のリン脂質(ポリエチレングリコール基を有する脂質を含まず)/ポリエチ
レングリコール基を有する脂質のモル比が1000/1以上100/5未満である
ことを特徴とするX線造影剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リポソーム含有X線造影剤に関し、詳しくは肝臓のX線画像診断用造影剤に使用すると造影コントラストを鮮明にすることが可能なリポソーム含有X線造影剤に関する。
【背景技術】
【0002】
X線による検査・診断は、画像診断の中核をなす技術の一つである。臓器などの軟組織のX線検査では、骨、歯などのいわゆる硬組織とは異なり、X線吸収の差が小さいことから高いコントラスト像を得ることは困難である。このため、造影剤を使用してコントラストの高い画像を得ることが一般に行なわれている。
【0003】
現在実用化されているX線造影剤の大部分は、トリヨウドフェニル基を含み水溶性化された化合物を造影物質とするものである。目標とする組織もしくは疾患部位に選択的に造影剤を集積し、病変箇所の周囲またはその他の部位と明瞭なコントラストで区別できるX線造影剤が望まれている。
【0004】
その解決には、造影剤を微粒子状にするとともにその血中半減期を改善することにより標的組織へ選択的に送達する方法が有効である。そこで、生体膜類似の脂質から構成され、低い抗原性であるリポソームに造影物質を内包させたリポソーム含有製剤を造影剤として使用することが試みられている。
【0005】
特に、脂質成分は肝臓に貯まりやすいため、脂質を主成分とするリポソーム含有製剤を使用すれば、リポソームは肝臓に取り込まれる可能性が高くなる。肝臓に存在するKupffer細胞の食作用により、該細胞部位に造影物質を集積することができる。肝臓癌の撮像に
おいては、その癌組織は正常組織に比べてKupffer細胞が少ないために、リポソームの取
込み量が少なく、集積する造影物質の量も少ないので、病変箇所の周囲部位と明瞭なコントラストで区別することが可能となる。このように肝臓造影用のX線造影剤として、リポソーム含有製剤への期待は高い。
【0006】
リポソームを含むX線造影剤として、例えば国際公開WO88/09165、同WO89/00988、
同WO90/07491、特開平07-316079号公報などに提案されている。
しかしながら、従来より提案された方法では、素材としての安全性が高く、生体内で適度な分解性を有するリポソームを用いるにもかかわらず、製造過程においてリポソーム膜を構成するリン脂質の溶剤として、有機溶媒、特にクロロホルム、ジクロロメタンといったクロル系溶剤を使用する(例えば、特許文献1参照)。このため、残存する溶剤の毒性があるという理由で実用化に至っていないのが現状である(特許文献2)。
【0007】
また、特開2003-119120号公報(特許文献3)では、薬効成分を内包したリポソームを
、超臨界二酸化炭素を用いて製造する方法が開示されている。しかしながら、この方法では、エタノール等の助溶剤の使用が望まれることが示唆されており、助溶剤を使用せずに内包率の高いリポソームを作製することは困難であった。また、得られたリポソームも、安定性が低く、内包物が時間経過とともに外部へ漏出することもあるなど問題点が多い。
【0008】
したがって、造影能に優れた造影物質を効率よくリポソームに内包できるとともに、安定にそれを保持し、しかも特定の臓器志向性を有する製剤組成の改良について、特別の要求が存在する。
【特許文献1】特許2619037号公報
【特許文献2】特開平7-316079号公報
【特許文献3】特開2003-119120号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、リポソームを構成する脂質膜成分の組成が、臓器志向性の要めであり、ポリエチレングリコール基を有する脂質の量を特定の範囲とすることで、リポソームが捕獲・分解されにくくなるとともに、とりわけ肝臓に到達しやすくなり、しかも、薬剤の粘度自体も低くすることができることを見出した。本発明は、有機溶媒を使用せずに作製されたリポソーム内に安定に造影物質が内包され、しかも特定の臓器、特に肝臓への志向性を有するX線造影剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、以下の本発明を完成するに至った。
[1]脂質膜内外の水相に、造影物質として水溶性の非イオン型ヨウド系化合物、ならびに
1種類以上の生理的に許容される製剤助剤を含有するリポソームを含み、
該リポソームが、リン脂質およびポリエチレングリコール(PEG)基を有する脂質を含む脂質膜成分と、超臨界二酸化炭素を、40〜65℃、10〜30MPaの条件下に混合すること
により作製され、かつ実質的に有機溶剤を含まないものであり、
脂質膜成分のリン脂質(ポリエチレングリコール基を有する脂質を含まず)/ポリエチ
レングリコール基を有する脂質のモル比が1000/1以上100/5未満であるX線造影剤。
[2]ポリエチレングリコール(PEG)基を有する脂質中のオキシエチレン単位が50〜5000の範囲にある。
[3]製剤のpHが6.5〜8.5であり、37℃における粘度が20 mPa・s以下である。
[4]該ヨウド系化合物をヨウド原子として100〜350mgI/mL造影剤、全脂質を20〜100mg/mL造影剤の濃度で含む。
[5]前記ヨウド系化合物の70〜95質量%が、リポソームに内包されていない形態にあり、
リポソームを懸濁する水性媒体中に存在する。
[6]前記ヨウド系化合物のうち、リポソームに内包された部分の前記脂質の量に対する重
量比が、3〜8(g/g)である。
[7]前記ヨウド系化合物が、イオメプロール、イオパミドール、イオヘキソール、イオプ
ロミド、イオキシラン、イオタスル、イオトロランまたはイオジキサノールである。
[8]ポリエチレングリコール(PEG)基を有する脂質が存在する条件下で、
リン脂質を含む脂質膜形成成分と、ヨウド系化合物および製剤助剤を含む溶液もしくは懸濁液と、超臨界状態二酸化炭素とを、
前記のポリエチレングリコール基を有する脂質とリン脂質との量比が、リン脂質(ポリエチレングリコール基を有するリン脂質)/ポリエチレングリコール基を有する脂質のモ
ル比で、1000/1以上100/5未満の範囲となるように、
40〜65℃、10〜30MPaの条件下に混合したのち、
二酸化炭素を排出して、それらのヨウド系化合物および製剤助剤を内部に含有するリポソームを作製するX線造影剤の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明のX線造影剤では、リポソームを構成するリン脂質(PEG-リン脂質を含まず
)/ポリエチレングリコール基を有する脂質のモル比が、1000/1以上100/5未満という極めて限定的な範囲にあるので、リポソームは多く肝臓に到達しやすくなり、しかもそれまでに捕獲・分解されにくい。さらに、肝臓に送達されたリポソームは、肝臓に存在するKupffer細胞の食作用により取り込まれる可能性が高くなり、その細胞部位に造影物質を集積
することができる。このため、肝臓癌の撮像においては、病変箇所の周囲部位と明瞭なコントラストで区別することが可能となる。また造影剤の粘度も増加しない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明のX線造影剤は、脂質膜内外の水相に、造影物質として水溶性の非イオン型ヨウド系化合物、ならびに1種類以上の生理的に許容される製剤助剤を含有するリポソームを含み、
該リポソームが、リン脂質およびポリエチレングリコール(PEG)基を有する脂質を含む脂質膜成分と、超臨界二酸化炭素とを、40〜65℃、10〜30MPaの条件下に混合するこ
とにより作製され、かつ実質的に有機溶剤を含まないものであり、
脂質膜成分のリン脂質(ポリエチレングリコール基を有する脂質を含まず)/ポリエチ
レングリコール基を有する脂質のモル比が1000/1以上100/5未満である。
【0013】
本明細書において、「リポソーム」は、通常、脂質膜、すなわち脂質二重膜から形成されている構造物である。また本明細書では、リポソーム膜を「脂質膜」と言及することもある。リポソーム内に「内包」されるとは、リポソーム内に封入されてそのリン脂質膜と会合しているか、またはリン脂質膜内部に閉じ込められている水相(内部水相)中に存在している状態の両方を含むものとする。「実質的に」とは、造影剤における残存有機溶媒の濃度の上限値が10μg/Lであることを意味する。
造影物質
本発明の造影剤に使用される造影物質は、水溶性の非イオン型ヨウド系化合物である。
【0014】
水溶性の非イオン型ヨウド系化合物として、ヨウ化フェニルが挙げられ、例えば2,4,6
−トリヨウドフェニル基を少なくとも1個有する非イオン型ヨウド系化合物が好適である

【0015】
本発明のX線造影剤の造影物質として、特に好ましいヨウド系化合物は、イオメプロール、イオパミドール、イオヘキソール、イオペントール、イオプロミド、イオキシラン、イオシミド、イオベンゾール、イオトロラン、イオジキサノール、イオデシモル、イオタスル、メトリザミド、1,3−ビス−(N−3,5−ビス−(2,3−ジヒドロキシプロピルアミノカルボニル)−2,4,6−トリヨードフェニル)−N−ヒドロキシアセチル−アミノ
)−プロパンなどが挙げられる。これらの化合物は単独で用いてもよく、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。またその例示に限定されるものではない。前記ヨウド系化合物のうち、特にイオメプロール、イオパミドール、イオヘキソール、イオプロミド、イオキシラン、イオタスル、イオトロランまたはイオジキサノールが好ましい。
薬剤助剤
製剤助剤として、少なくとも水溶性アミン系緩衝剤、EDTANa2−Ca(エデト酸カル
シウム2ナトリウム)、無機塩、浸透圧調節剤および保存剤などが挙げられる。
リポソーム
本発明で使用されるリポソームは、リン脂質およびポリエチレングリコール(PEG)基を有する脂質を含む脂質膜成分と、超臨界二酸化炭素を、40〜65℃、10〜30MPaの条件
下に混合することにより作製され、かつ実質的に有機溶剤を含まないものである。
(脂質膜成分)
脂質膜成分としては、リン脂質およびポリエチレングリコール(PEG)基を有する脂質を含む。さらに脂質膜成分として、糖脂質、ステロール類、カチオン性脂質などが含まれていてもよい。
【0016】
好ましい中性リン脂質として、大豆、卵黄などから得られるレシチン、リゾレシチンおよび/またはこれらの水素添加物、水酸化物の誘導体を挙げることができる。
その他のリン脂質として、卵黄、大豆またはその他の動植物に由来するか、または半合成のホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴミエリン、合成
により得られるホスファチジン酸、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジミリストリルホスファチジルコリン(DMPC)、ジオレイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジステアロイルホスファチジルセリン(DSPS)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、ジパルミトイルホスファチジルイノシトール(DPPI)、
ジステアロイルホスファチジルイノシトール(DSPI)、ジパルミトイルホスファチジン酸(DPPA)、ジステアロイルホスファチジン酸(DSPA)などを挙げることができる。
【0017】
リン脂質類には、転移温度を有するリン脂質が少なくとも含まれていることが望ましい。リン脂質の「(相)転移温度」とは、リン脂質がとり得るゲルと液晶との両状態間の相転移を生じる温度である。その測定は、示差走査熱量計(DSC)を使用する示差熱分析による。相転移点を有するリン脂質として、ジミリストイルホスファチジルコリン(転移温度、以下同じ、23〜24℃)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(41.0〜41.5℃)、水素添加大豆レシチン(53℃)、水素添加大豆ホスファチジルコリン(54℃)、ジステアロイルホスファチジルコリン(54.1〜58.0℃)などが例示される。
【0018】
ポリエチレングリコール(PEG)基を有する脂質としては、例えばPEG−リン脂質またはPEG-コレステロールが好適である。これらのオキシエチレン単位が50〜5000、好ましくは100〜4000の範囲にあることが望ましい。ポリエチレングリコール(PEG)基の
長さと導入する割合を適宜変えることにより、その臓器志向性機能を調節することができる。このような範囲にあれば、後述するように、得られる造影剤の粘度が高くなることはない。本発明では、相対的にオキシエチレン単位が長いものが望ましい。
【0019】
ポリエチレングリコール基を有する脂質は、リポソーム膜の構成成分であるのみならず、リポソームを調製する際の溶解助剤として機能する。すなわち、溶解助剤として、ポリエチレングリコール(PEG)基を有する脂質を用いると、脂質膜成分を、薬剤水溶液、および超臨界二酸化炭素と混合する際に、必ずしもエタノールなどの有機溶媒を使用する必要がない。
【0020】
本発明のように脂質膜成分として、ポリエチレングリコール(PEG)基を有する脂質、好ましくはPEG-リン脂質を含んでいると、PEG鎖がリポソーム膜表面に導入され
、PEG化されたリポソームほど免疫系から認識されにくくなる(「ステルス化」された状
態である)効果が期待できる。逆に、肝臓造影用にはステルス化は好ましくない。
【0021】
脂質膜成分のリン脂質(ポリエチレングリコール基を有する脂質を含まず)/ポリエチ
レングリコール基を有する脂質のモル比が1000/1以上100/5未満、好ましくは1000/1.5〜100/4.5の範囲にあることが望ましい。特に肝臓造影用には、モル比を小さくする。
【0022】
このような限定されたモル比でPEG鎖が導入されていれば、脂質量が多くても製剤の粘
度を低くくすることができる。したがって、注射もしくは注入投与の操作が容易となり、しかも、脂質量が相対的に多いため、肝臓に到達する可能性が高くなる。さらに、PEG鎖による水和作用の寄与もあるため、リポソームの血中滞留性および経時安定性を向上させることも可能となる。
【0023】
このような、PEG-リン脂質の量による生成リポソームの構造の違いについては、図
1のすモデル図のように考えられる。図1中、(1)のモデルは、前記モル比が本発明の範
囲(1000/1以上100/5未満)にあるもの、(2)のモデルは、前記モル比が(100/5より多く100/7.5)程度で、PEG-リン脂質の量が本発明より多いもの(つまりPEG鎖が多いも
の)、(3)のモデルは、前記モル比が100/7.5以上で、PEG-リン脂質の量がさらに多い
ものである。
【0024】
図1(1)のモデル図のように、リポソームを構成するリン脂質(PEG-リン脂質を含まず)/ポリエチレングリコール基を有する脂質のモル比が本発明の範囲内にあるものは、
リポソーム表面のPEG鎖が少ないので、PEG鎖はリポソーム表面に寝ているものと考えられる。このような構造でも、他のリポソームのPEG鎖との相互作用が低く、溶媒中に
良好に分散していると考えられる。
【0025】
図1(2)のように、PEG鎖が多くなれば、PEG鎖はリポソーム表面から、多くが伸
長して立った状態で存在し、一部屈曲していると考えられ、さらにPEG鎖が増えると、図1(3)のようにPEG鎖間での反発が強くなり、PEG鎖が直立した状態で存在してい
ると考えられる。このような構造になると、長鎖のPEG鎖が溶媒分子との摩擦、リポソー
ム同士の相互作用、鎖同士の絡み合いなどが生じて製剤の粘度を増大させるものと考えられる。
【0026】
上記脂質膜成分には、さらに、カチオン性脂質、糖脂質などを含んでいてもよい。
カチオン性脂質は、1、2−ジオレオイルオキシ−3−(トリメチルアンモニウム)プロパン(DOTAP)、N、N−ジオクタデシルアミドグリシルスペルミン(DOGS)、ジメチ
ルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DDAB)、N−[1−(2、3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N、N、N−トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、2、3−ジ
オレイルオキシ−N−[2(スペルミン−カルボキサミド)エチル]−N、N−ジメチル−1−プロパンアミニウムトリフルオロアセテート(DOSPA)およびN−[1−(2、3
−ジミリスチルオキシ)プロピル]−N、N−ジメチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムブロミド(DMRIE)、ホスファチジン酸とアミノアルコールとのエステル、
例えばジパルミトイルホスファチジン酸(DPPA)もしくはジステアロイルホスファチジン酸(DSPA)とヒドロキシエチレンジアミンとのエステルなどが挙げられる。
【0027】
これらのカチオン性脂質は全脂質量に対し0.1〜5質量%、好ましくは全脂質量に対し0.3〜3質量%、より好ましくは全脂質量に対し0.5〜2質量%の割合で含有するように添加すればよい。なお、全脂質とは、PEG基を有する脂質を含む。
【0028】
糖脂質としては、ジガラクトシルジグリセリド、ガラクトシルジグリセリド硫酸エステルなどのグリセロ脂質、ガラクトシルセラミド、ガラクトシルセラミド硫酸エステル、ラクトシルセラミド、ガングリオシドG7、ガングリオシドG6、ガングリオシドG4などのスフィンゴ糖脂質などを挙げることができる。
【0029】
脂質膜成分として、上記脂質の他に、脂質膜安定化剤として作用するステロール類を含む。ステロール類としては、例えばコレステロール、ジヒドロコレステロール、コレステロールエステル、フィトステロール、シトステロール、スチグマステロール、カンペステロール、コレスタノール、またはラノステロールなどが挙げられる。また1−O−ステロールグルコシド,1−O−ステロールマルトシドまたは1−O−ステロールガラクトシドといったステロール誘導体もリポソームの安定化に効果がある(特開平5-245357号公報参照)。これらの中で、特にコレステロールが好ましい。
【0030】
リポソーム膜中のコレステロールは、ポリアルキレンオキシド導入用のアンカーにもなり得る。特開平09−3093号公報には、ポリオキシアルキレン鎖の先端に、種々の機能性物質を共有結合により固定化することができ、リポソーム形成用の成分として利用することができる新規なコレステロール誘導体が開示されている。
【0031】
ステロール類の使用量として、リン脂質(PEG-リン脂質を含まず)/ステロール類のモル比が100/60〜100/90、好ましくは100/70〜100/85である。モル比が100/60未満である
と混合脂質の分散性を向上させるステロール類による安定化が充分に発揮されない。
【0032】
本発明では、上記以外にリポソーム膜構成成分として、負荷電物質であるジセチルホスフェートといったリン酸ジアルキルエステルなど、正電荷を与える化合物であるステアリルアミンといった脂肪族アミンなどを含んでいてもよい。
【0033】
また、公知の各種ポリアルキレンオキシド基、−(AO)n−Y(AOは炭素数2〜4
のオキシアルキレン基を表し、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数である。また、Yは、水素原子、アルキル基または機能性官能基を表す。)をリポソーム膜表面に導入してもよい。
【0034】
炭素数2〜4のオキシアルキレン基(AOで表される)として、例えばオキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシトリメチレン基、オキシテトラメチレン基、オキシ−1−エチルエチレン基、オキシ−1,2−ジメチルエチレン基などが挙げられる。これらのオキシアルキレン基は、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、オキセタン、1−ブテンオキシド、2−ブテンオキシド、テトラヒドロフランなどのアルキレンオキシド等が挙げられる。
【0035】
nは50〜5000、好ましくは100〜4000の正の整数である。
nが50以上の場合、オキシアルキレン基の種類は、同一のものでも異なるものでもよい。後者の場合、ランダム状に付加していても、ブロック状に付加していてもよい。
【0036】
ポリオキシアルキレン基としてはエチレンオキシド基が単独で付加したもの、またはポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドとのブロック共重合物が好ましい。
Yは、水素原子、アルキル基または機能性官能基である。アルキル基として、炭素数1〜5の、分岐していてもよい脂肪族炭化水素基が挙げられる。上記の機能性官能基は、ポリアルキレンオキシド鎖の先端に糖、糖タンパク質、抗体、レクチン、細胞接着因子といった「機能性物質」を付するためのもので、例えばアミノ基、オキシカルボニルイミダゾール基、N-ヒドロキシコハク酸イミド基といった反応性に富む官能基が挙げられる。先
端に「機能性物質」を結合しているポリアルキレンオキシド鎖が固定化されたリポソームは、ポリアルキレンオキシド鎖導入の効果に加えて、ポリアルキレンオキシド鎖に妨げられることなく「機能性物質」の機能、例えば「認識素子」として特定臓器指向性、癌組織指向性などの作用が充分に発揮される。
(リポソームの調製)
リポソームは、圧力容器内で、ポリエチレングリコール(PEG)基を有する脂質が存在する条件下で、
前記したリン脂質を含む脂質膜形成成分と、ヨウド系化合物および製剤助剤を含む溶液もしくは懸濁液(薬剤溶液)と、超臨界状態二酸化炭素とを、40〜65℃、10〜30MPaの条
件下に混合したのち、二酸化炭素を排出することで調製される。これにより、ヨウド系化合物および製剤助剤を内部に含有するリポソーム分散液が調製される。
【0037】
本発明による製造方法は、有機溶媒を使用せずに、超臨界二酸化炭素もしくは亜臨界二酸化炭素を用いて上記リポソームを作製する。二酸化炭素は、臨界温度が31.1℃、臨界圧力が7.38MPaと比較的扱いやすく、不活性なガスゆえ残存しても人体に無害であり、高純
度流体が安価で容易に入手できる。本発明の製造方法で使用する超臨界状態(亜臨界状態を含む)の二酸化炭素の温度は、通常40〜65℃、好ましくは45〜65℃の範囲にあることが好ましい。この温度範囲にあると、リン脂質が規則的に配列したリポソーム膜を形成できる。また、圧力は、温度に応じて適宜選択されるが、10〜30MPa、好ましくは15〜30MPaの範囲である。
【0038】
臨界状態もしくは亜臨界状態の二酸化炭素としては、超臨界二酸化炭素流体を使用してもよく、また、液体二酸化炭素を充填したのち、特定条件に加圧・加熱して、超臨界状態にしてもよい。本発明では、取り扱いのしやすさなどの点で液体二酸化炭素を使用することが望ましい。
【0039】
ヨウド系化合物および製剤助剤を含む溶液もしくは懸濁液の濃度は特に制限されず、撮像の目的、部位、造影物質の性質、患者の症状意図する製剤の投与経路、薬剤の溶解度などに応じて調節することができる。溶媒としては水性媒体が使用され、水性媒体には、蒸留水、局方注射用水、純水などの水のほか、生理食塩水、各種緩衝液、塩類などを含む水溶液などが用いられる。
【0040】
各成分の混合順序としては特に制限されるものではないが、たとえば、圧力容器内で、ポリエチレングリコール(PEG)基を有する脂質を含む脂質膜成分と超臨界二酸化炭素と混合したのち、得られた懸濁液に、薬剤溶液を混合してもよく、ポリエチレングリコール(PEG)基を有する脂質を含む脂質膜成分と、薬剤溶液とを混合したのち、得られた懸濁液に液化二酸化炭素を供給し、前記温度で、加圧して液化二酸化素を超臨界状態二酸化炭素としてもよい。
【0041】
混合する超臨界二酸化炭素と脂質膜成分との重量比は、二酸化炭素1質量部に対して0.01〜0.3質量部、好ましくは0.03〜0.1質量部の範囲にあることが望ましい。この範囲にあると、脂質膜成分と超臨界二酸化炭素とを混合しやすく、また均質なリポソームを調製することができる。
【0042】
前記量比で混合すると、脂質膜成分、超臨界二酸化炭素、薬剤溶液を均一に混合することができる。
本発明では、ヨウド系化合物をヨウド原子として100〜350mgI/mL造影剤、好ましくは150〜300mgI/mLの濃度で、全脂質を20〜100mg/mL、好ましくは20〜80 mg/mL造影剤、より好ましくは30〜65mg/mL造影剤の濃度で含むように各成分を混合することが望ましい。
【0043】
攪拌・混合手段は、リポソーム膜構成成分を均一に分散・混合できれば特に制限されるものではないが、公知の攪拌・混合装置を特に制限無く採用することが可能であり、たとえばマグネチックスターラーに、ホモジナイザー、ホモミキサー、ウルトラミキサーなどが例示される。なお、混合し難い場合は、強攪拌装置を用いてもよい。
【0044】
最終的に塊状の脂質の集合物が存在しないように充分に撹拌しながら、混合すると、超臨界二酸化炭素が水溶性薬剤中に乳化分散して、二酸化炭素/水相エマルション(CO2/Wエマルション)を形成する。
【0045】
次に、系内を減圧して二酸化炭素を排出する。その結果、脂質単膜から2分子膜へ転換
して、ヨウド系化合物および製剤助剤を内包するリポソームが分散している水性分散液が生成する。本発明の製造方法によれば、主として2〜10枚程度、好ましくは数枚膜からな
るリポソームが得られる。
【0046】
得られたリポソームの水性分散液を、該リポソーム膜を構成する脂質成分のリン脂質の転移温度〜該転移温度+10℃で、0.1〜3時間、好ましくは10〜60分間、インキュベートし
てもよい。さらにリポソーム分散液を必要に応じて0.1〜1μmの孔径を有する濾過膜で、50〜90℃の温度条件下、および0.01〜0.8MPaの圧力下に、濾過してもよい。濾過すること
によって、リポソームの粒径が均一になるとともに、内包率を高めることができる。濾過手段としては、特に制限さるものではなく、公知の加圧濾過方法で行うことが可能であり、好適には、ポリカーボネート、セルロース系のフィルターを装着した押出し濾過装置が
望ましい。
X線造影剤
本発明のX線造影剤は、上記造影物質および製剤助剤とを、前記製法でリポソームの内外に含む。このようなリポソーム内外におけるヨウド系化合物の濃度は、その造影物質の性質、意図する製剤の投与経路および臨床上の指標といった諸要因に基づき任意に設定することができる。
【0047】
ヨウド系化合物を効率的に内包化し、ヨウド系化合物を担持するリポソームの経時的不安定化を充分に防止するためには、リポソーム内に封入されたヨウド系化合物の量は、X線造影剤における全ヨウド系化合物の5〜35質量%、好ましくは5〜30質量%、より好ましくは5〜25質量%であることが望ましい。X線造影剤において、リポソーム内に封入され
たヨウド系化合物の割合が、全体の5〜30質量%(好ましくは5〜25質量%)であれば、残り70〜95質量%(好ましくは75〜95質量%)が存在するリポソーム外の水性分散液へ流出する量については実質的に無視できる。
【0048】
本発明のX線造影剤において、含有されるリポソームの粒径とその分布はターゲットの種類、送達部位に応じて適宜選択される。
前記リポソームの平均粒径が、通常、0.05μm〜1.0μm、より好ましくは0.05〜0.85
μm 、特に好ましくは0.1〜0.5μmに揃えることが望ましい。このような平均粒径にあれ
ば、リポソームをターゲットへ効率的に送達できる。また粒径を0.2μm以上に大きくすると、Kupffer細胞の食作用により肝臓に取り込まれる可能性が高くなり、その細胞部位に
造影物質を集積することができる。これにより肝臓癌の撮像においては、その癌組織には正常組織に比べてKupffer細胞が少ないために、造影剤リポソームの取込み量が、相対的
に少なくなり造影のコントラストが鮮明となる。
【0049】
なお、粒径(粒子径)はリポソームを含む分散液を凍結し、その後破砕した界面をカーボン蒸着し、このカーボンを電子顕微鏡で観察すること(凍結破砕TEM法)により測定することができる。ここで「平均粒径」とは、観察された造影剤粒子の一定の個数、例えば20個の径の単純平均を指している。これは粒径分布で最も出現頻度の高い粒径を言う「中心粒径」と、通常一致するか、または概ね近似している。
【0050】
リポソーム内への薬物の封入量として、リポソーム内に封入された水溶液中に、全薬物(非イオン型ヨウド系化合物および製剤助剤を含む)がリポソーム膜脂質に対して、1〜8、好ましくは3〜8、より好ましくは5〜8の重量比(g/g)で含有されていることが望まし
い。
【0051】
X線造影剤は、ヨウド含有量として、通常、想定される10〜300mLの製剤溶液の投与量
では、40〜450mgI/mLであり、好ましくは70〜400mgI/mL、リポソーム内への造影物質を内包する効率の観点からは 100〜350mgI/mL、特に好ましくは、150〜300mgI/mLの範囲
である。また、前記脂質膜内外の水相に、製剤助剤がそれぞれ実質的に同一の濃度で含有されることが好ましい。
【0052】
本発明のX線造影剤における全脂質濃度は、20〜100 mg/mL造影剤、好ましくは20〜80
mg/mL造影剤、より好ましくは30〜65mg/mL造影剤の濃度で含むことを特徴としている
。この場合の「全脂質」とは、リポソームを構成するリン脂質、ステロール、グリコールといったすべての種類の脂質類を含める意味である。リポソームの膜脂質の重量が多くなると製剤の粘度が大きくなる。
【0053】
本発明では、前記したように、リポソームを構成する脂質膜成分のリン脂質(ポリエチレングリコール基を有する脂質を含まず)/ポリエチレングリコール基を有する脂質のモ
ル比が1000/1以上100/5未満の範囲にあるので、粘度が低くくすることができる。
【0054】
たとえば、製剤のpHが6.5〜8.5であり、37℃における粘度が、20 mPa・s以下、好ましくは18 mPa・s以下、より好ましくは15 mPa・s以下である。
またX線造影剤の浸透圧モル濃度は、典型的には250〜500 mosmol/L、好ましくは290〜350 mosmol/Lである。投与する造影剤の浸透圧モル濃度が高いと、心臓・循環系の負担が大きい。血液と等張の溶液または懸濁液を得るには、等張液を提供する濃度で、造影剤を媒質中に溶解もしくは懸濁させる。例えば造影物質の溶解性が低いために造影物質だけでは等張液を提供できない場合、等張の溶液もしくは懸濁液が形成されるように他の非毒性の水溶性物質、例えば塩化ナトリウムのごとき塩類、マンニトール、グルコース、ショ糖、ソルビトールなどの糖類を媒質中に添加してもよい。
【0055】
上記溶液もしくは懸濁液の好ましいpH範囲は、室温で6.5〜8.5、さらに好ましくは6.8〜7.8である。造影物質が多ヒドロキシル基を有する水溶性ヨウド系化合物である場合、好ましい緩衝液は、米国特許第4278654号に記載されているような負の温度係数を有する
緩衝液である。アミン系緩衝液はこのような要求を満たす性質を有しており、特に好ましくはトリス(TRIS)である。このタイプの緩衝液は、オートクレーブ温度で低いpHを有し、このことがオートクレーブ中のX線造影剤の安定性を増し、他方、室温では生理的に許容されるpHに戻る。したがって、注射用無菌造影剤を製造するために、リポソーム調製物をオートクレーブ滅菌できることは極めて便利であり、貯蔵安定性なども確保できる。しかしオートクレーブ滅菌を適用できないリポソームには、濾過滅菌を行うのがよい。
【0056】
本発明のX線造影剤は、全身投与または局所投与いずれにも使用される。好ましくは注射剤または点滴注入剤として全身的に静注投与される。直接投与ができない部位へ局所的に投与する場合は、例えばカテーテルまたは他の適当な薬物送達システムなどを用いて、当業界で公知の技術により投与を行うことができる。
【実施例】
【0057】
以下、本発明を具体な例を示してさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定的に解釈されるものではない。
本実施例では、PEG-リン脂質として、以下の構造のものを使用した。
【0058】
【化1】

【0059】
(Rは、末端がメトキシ基であるポリエチレングリコール基を表し、それぞれPEG鎖の分子量が2000、5000、10000のものを実施例で使用した)
なお、実施例および比較例で調製した造影剤の粘度は以下の方法で評価した。
<粘度の評価>
得られた試料に対して、限外濾過により内包されていない薬剤部分を除き、内包率が30%になるように調製した。調製した試料を、粘度計(英弘精機社製 レオストレスRS1)を用いて、37℃の条件で測定した。
[実施例1]
ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)368.4mgと、コレステロール147.4mg、PE
G-リン脂質(PEG鎖の分子量5000)58.0mgの混合物をステンレス製の特製オートクレーブ
に仕込み、次いで液体二酸化炭素13gを加え、50℃・12MPaの超臨界状態とした。ついで容器内を撹拌しながら、さらに造影剤溶液(日局イオパミドール溶液:ヨウド濃度240mgI/mL)10mLを定量ポンプで連続的に注入した。注入終了後、系内を減圧して二酸化炭素を排
出し、造影剤溶液を含有するリポソームの分散液を得た。得られた分散液を80℃まで加熱し、アドバンテック社製のポリカーボネートフィルター、0.8μmおよび0.4μmの孔径で、加圧濾過して、造影剤溶液を含有するリポソーム分散液を得た。
【0060】
得られたリポソーム含有造影剤中の薬剤水溶液の内包率および粘度を評価した。内包率はヨウド定量法で求めた。
その結果を表1および表2に示す。
[実施例2]
ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)368.4mgと、コレステロール147.4mg、PEG−リン脂質(PEG鎖の分子量10000)75.6mgの混合物を、ステンレス製の特製オートクレーブに仕込み、次いで液体二酸化炭素13gを加え、50℃・12MPaの超臨界状態とした。ついで容器内を撹拌しながら、さらに造影剤溶液(日局イオパミドール溶液:ヨウド濃度240mgI/mL)10mLを定量ポンプで連続的に注入した。注入終了後、系内を減圧して二酸化炭
素を排出し、造影剤溶液を含有するリポソームの分散液を得た。得られた分散液を80℃まで加熱し、アドバンテック社製のポリカーボネートフィルター、0.8μmおよび0.4μmの孔径で、加圧濾過して、造影剤溶液を含有するリポソーム分散液を得た。
【0061】
得られたリポソーム含有造影剤中の薬剤水溶液の内包率および粘度を評価した。その結果を表1に示す。
[実施例3]
水素添加大豆ホスファチジルコリン(HSPC)394.0mgと、コレステロール147.4mg、PEG−リン脂質(PEG鎖の分子量5000)58.0mgの混合物を、ステンレス製の特製オートクレ
ーブに仕込み、次いで液体二酸化炭素13gを加え、60℃・12MPaの超臨界状態とした。ついで容器内を撹拌しながら、さらに造影剤溶液(日局イオパミドール溶液:ヨウド濃度300mgI/mL)10mLを定量ポンプで連続的に注入した。注入終了後、系内を減圧して二酸化炭素
を排出し、造影剤溶液を含有するリポソームの分散液を得た。得られた分散液を80℃まで加熱し、アドバンテック社製のポリカーボネートフィルター、0.8μmおよび0.4μmの孔径で、加圧濾過して、造影剤溶液を含有するリポソーム分散液を得た。
【0062】
得られたリポソーム含有造影剤中の薬剤水溶液の内包率および粘度を評価した。その結果を表1に示す。
[比較例1]
ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)368.4mgと、コレステロール147.4mg、PEG−リン脂質(PEG鎖の分子量2000)111.5mgの混合物を、クロロホルムとエタノールと水との混合物(質量比100:20:0.1)10mlにメスフラスコ中で混合した。この混合物を湯浴(50℃)上で加熱し、溶液をロータリーエバポレーターで溶媒を蒸発させた。残液をさらに2時間、真空乾燥して、脂質フィルムを形成させた。ここに、造影剤溶液(日局イオパ
ミドール溶液:ヨウド濃度240mgI/mL)10mLを混合し、この混合物を50℃に加熱しながら
ミキサーで約10分間攪拌した、さらに攪拌することにより造影剤溶液を含有するリポソームの分散液を得た。この混合物を80℃まで加熱し、アドバンテック社製のポリカーボネートフィルター、0.8μmおよび0.4μmの孔径で加圧濾過して、リポソーム含有造影剤を得た。
【0063】
得られたリポソーム含有造影剤中の薬剤水溶液の内包率および粘度を評価した。その結果を表1に示す。
【0064】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】図1はPEG-リン脂質の量による生成リポソームの表面構造の違い示すモデル図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂質膜内外の水相に、造影物質として水溶性の非イオン型ヨウド系化合物、ならびに1種類以上の生理的に許容される製剤助剤を含有するリポソームを含み、
該リポソームが、リン脂質およびポリエチレングリコール(PEG)基を有する脂質を含む脂質膜成分と、超臨界二酸化炭素を、40〜65℃、10〜30MPaの条件下に混合すること
により作製され、かつ実質的に有機溶剤を含まないものであり、
脂質膜成分のリン脂質(ポリエチレングリコール基を有する脂質を含まず)/ポリエチ
レングリコール基を有する脂質のモル比が1000/1以上100/5未満である
ことを特徴とするX線造影剤。
【請求項2】
ポリエチレングリコール(PEG)基を有する脂質中のオキシエチレン単位が50〜5000の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載のX線造影剤。
【請求項3】
製剤のpHが6.5〜8.5であり、37℃における粘度が20 mPa・s以下であることを特徴と
する請求項1または2に記載のX線造影剤。
【請求項4】
該ヨウド系化合物をヨウド原子として100〜350mgI/mL造影剤、全脂質を20〜100mg/mL
造影剤の濃度で含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のX線造影剤。
【請求項5】
前記ヨウド系化合物の70〜95質量%が、リポソームに内包されていない形態にあり、リポソームを懸濁する水性媒体中に存在することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のX線造影剤。
【請求項6】
前記ヨウド系化合物のうち、リポソームに内包された部分の前記脂質の量に対する重量比が、3〜8(g/g)であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のX線造影剤。
【請求項7】
前記ヨウド系化合物が、イオメプロール、イオパミドール、イオヘキソール、イオプロミド、イオキシラン、イオタスル、イオトロランまたはイオジキサノールであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のX線造影剤。
【請求項8】
ポリエチレングリコール(PEG)基を有する脂質が存在する条件下で、
リン脂質を含む脂質膜形成成分と、ヨウド系化合物および製剤助剤を含む溶液もしくは懸濁液と、超臨界状態二酸化炭素とを、
前記のポリエチレングリコール基を有する脂質とリン脂質との量比が、リン脂質(ポリエチレングリコール基を有するリン脂質)/ポリエチレングリコール基を有する脂質のモ
ル比で、1000/1以上100/5未満の範囲となるように、
40〜65℃、10〜30MPaの条件下に混合したのち、
二酸化炭素を排出して、それらのヨウド系化合物および製剤助剤を内部に含有するリポソームを作製することを特徴とするX線造影剤の製造方法。




【図1】
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【公開番号】特開2006−298841(P2006−298841A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−124072(P2005−124072)
【出願日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】