説明

リモ−トコントロ−ルシステムの送受信方式

【目的】 リモートコントロールシステムの送受信方式に関し、複数のリモートコントロールシステムが同時に使用可能で、構成が簡単な送受信方式を実現することを目的とする。
【構成】 リモートコントロールシステムの送信データをランダムな間隔で送出するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は赤外線、電波、音波等のリモ−トコントロ−ルシステムに関し、特に、複数のリモ−トコントロ−ルシステムを同一場所で同時に使用することができるようにするための送受信方式に関する。
【0002】
【従来の技術】各種の機器を遠隔操作するためには、その機器特有のリモ−トコントロ−ルシステムが設けられ、そのリモ−トコントロ−ルシステムは、一般に、機器本体から離れた場所で操作される送信部(以下リモコンという)と、機器本体側に設置される受信部と、送信部と受信部間を結ぶ通信リンクとからなる。
【0003】リモコンは、手動または自動で入力される機器本体に対する指令データに基づき送信デ−タを作成し、この送信デ−タによって搬送波を変調し、変調信号を通信リンクへ送出する。
【0004】受信部は、通信リンクを介して受信した信号を復調し、送信デ−タを解読し、解読結果に従って所定の信号を機器本体に送りそれを動作させる。また、通信リンクは有線または無線(RF、赤外線、音波等)の単方向または双方向通信経路を形成する。
【0005】従来のリモ−トコントロ−ルシステムにおいては、PAM−PPM処理された16乃至32ビットを1フレ−ムとする送信デ−タを一定の時間間隔(インタ−バル)を置いてリモコンから送出する送受信方式が使用されている。
【0006】このような従来の送受信方式は、リモ−トコントロ−ルシステムがある限られた場所に一つしか存在しない場合や、それが複数であっても使用時間帯が異なる場合には何ら問題は生じない。
【0007】しかし、最近、複数の音響、映像機器を一つの場所で同時にかつそれぞれ別々のリモコンによって遠隔操作する使用形態が急激に増加しつつあり、このような使用形態においては、複数のリモコンの出力信号が相互に混信し合わないようにすることが最も重要である。
【0008】通信リンクの周波数が同一でしかも送信デ−タの送信間隔が一定な同種の複数のリモ−トコントロ−ルシステムを同じ場所で同時に使用した場合、複数のリモコンの送信デ−タが重なるようなタイミングで発信された時には、各受信部で送信デ−タの解読が不能となり、従って、遠隔操作が不可能となる不具合が起こることになる。
【0009】そこで、上記の不具合を無くするために、従来、リモ−トコントロ−ルシステム毎に異なる周波数を割り当てる周波数多重方式や、双方向リモコンにより送受信をプロトコルで規制するようにしたポ−リング方式が知られている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これらの送受信方式は、回路や制御機構が複雑になったり、高価なデバイスを使用したりするために、リモ−トコントロ−ルシステムの送信部および受信部が大型でかつ高価になるという欠点があった。
【0011】従って、上記従来技術の欠点を除去し、複数で、同じ場所で、同時に使用することができる、小型で低価格のリモ−トコントロ−ルシステムを実現することに解決しなければならない課題を有している。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明による赤外線リモ−トコントロ−ルシステムの送受信方式は、送信デ−タの送信期間と休止期間とを交互に置き、休止期間をランダムに変えるように構成される。
【0013】又、本発明によるリモ−トコントロ−ルシステムの送受信方式は、複数のリモ−トコントロ−ルシステムを同時に使用するための送受信方式であって、複数のリモ−トコントロ−ルシステムは、夫々送信デ−タを送出する間隔をランダムに変える手段を有する送信部と、受信した送信デ−タの重なりの有無を判断する手段を有する受信部とを備えて構成される。
【0014】
【作用】上記のように構成されたリモ−トコントロ−ルシステムにおいて、送信部は、自分の識別番号(IDコ−ド)と機器本体に対する指令データとを含めて1フレ−ムの送信デ−タを作成し、この送信デ−タのフレ−ムを休止期間を挟んで通信リンクを介して繰り返し送信する。
【0015】送信デ−タの送出のタイミングは送信間隔をランダムに変える手段によって制御され、その結果、休止期間の長さはランダムに変化する。
【0016】受信部は、送信部から送られる送信デ−タを受信し、送信デ−タの重なりの有無を判断する手段によって他との重なりが無いか否かを調べ、重なりが検出された時には全ての受信信号を棄却し、送信デ−タが他と重ならずかつ自分と対応する送信部のIDコ−ドを含む時にはこの送信デ−タを受容し、これに従って機器本体へ所定の信号を送る。
【0017】上述のようなリモ−トコントロ−ルシステムは、同一場所で、複数、かつ同時に使用されても、各送信部から送出される送信デ−タが全く重ならない時が必ず存在し、従って、いずれのリモ−トコントロ−ルシステムも同一の周波数を使用しているにも関わらず、各リモ−トコントロ−ルシステム共支障無く遠隔操作を行うことができる。
【0018】
【実施例】以下、本発明の実施例について赤外線を利用したシステムにつき図面を参照して詳細に説明する。本発明によるリモ−トコントロ−ルシステムは、図1に示すように、リモコン1と、リモコン1によって遠隔操作される機器本体2と、機器本体2側に設けられた受信部3と、リモコン1と受信部3とを結ぶ通信リンク4とから構成される。
【0019】リモコン1は、手動または自動で遠隔操作のための指令を入力するための操作入力部5と、操作入力部5からの出力信号に基ずき後述するような手順で送信デ−タを作成する制御部6と、制御部6によって制御されて送信デ−タを通信リンク4へ送出する発信部7とから構成されている。
【0020】受信部3は、赤外線4を受光する受光器9と、受光器9からの信号を復調する復調回路10と、復調回路10から出力される復調信号に後述する判断処理を施した上で機器本体2へ所定の信号を送る制御部8とからなる。
【0021】リモコン1の制御部6は、マイコンで構成され、図2のフロ−チャ−トに示す機能を有する。即ち、制御部6は、以下に示すような手順に従った動作をする。
【0022】(1)リモコン1の識別番号を表すIDコ−ドと、操作入力部5から入力される指令データとを含む送信デ−タのフレ−ム(図3の(B)参照)を作成する(ステップ21)。
【0023】(2)次に乱数を発生させ(ステップ22)。乱数の発生方式は自然発生式でもテ−ブル式でもよい。
(3)発生した乱数を内蔵のタイマ−にセットする(ステップ23)。
【0024】(4)タイマ−のカウントを開始し、同時に上記送信デ−タの1フレ−ムを発信部7から送出させる(ステップ24)。発信部7は送信デ−タにより変調された赤外線信号を通信リンク4へ送出する。
【0025】(5)送信デ−タの1フレ−ムの送信が終了すると休止期間に入る。尚、休止期間の間は送信デ−タは送出されない。
【0026】(6)タイマ−のカウントが終了したら、再びステップ22に戻る(ステップ25)。
(7)ステップ22〜25を数回繰り返す。
【0027】次に上記手順(1)〜(7)によりリモコン1から送出される赤外線送信信号の一例を図を参照にして説明する。
【0028】送信信号は、図3(A)に示すように、ランダムな送信間隔X1,X2,X3,X4…からなる送信信号により形成され、例えば送信間隔X1は送信期間Taと休止期間Tbとから構成されている。
【0029】そして、送信期間Taでは、1フレ−ムの送信デ−タ30を送出する。この1フレ−ムは、図3(B)に示すように、リモコン1の識別番号を表すIDコ−ドと、機器本体2を遠隔操作するための指令データとを含んでいる(その他チェックビット等は省略してある)。
【0030】このように構成されたランダムな送信間隔X1,X2,X3,X4…は、送出されるi回目の送信デ−タ30の送出開始からi+1回目の送信デ−タ30の送出開始までの間の時間(送信間隔)Xiは、i回目の送信デ−タを送出する前に乱数によってランダムに決定されるのである(図2参照)。
【0031】つまり、各送信デ−タ30を送出し終わった後の各休止期間Tbの長さはXiに従ってランダムである(Tb=Xi−Ta)。
【0032】次に受信部3はマイコン等で構成された制御部8と、リモコンから送出された赤外線4を受光する受光器9と、該受光器9で受光した赤外線信号を復調する復調回路とから構成されている。
【0033】このように構成されている受信部3の制御部8は、受光器9に光入力がある度に、復調回路10から復調信号を入力し、複数の送信デ−タの重なりが無いかどうかを判断し、重なっている時はすべての受信したデータを棄却する。
【0034】そして、重なっていない送信デ−タを受信した時は、その送信デ−タに含まれるIDコ−ドを調べ、そのIDコ−ドが自分に対応するリモコン1のリモコン番号であった時はこの送信デ−タを受容し、それに含まれる指令データに従って所定の信号を機器本体2へ送る。
【0035】以上の送受信動作によって、一つのリモ−トコントロ−ルシステムの遠隔操作が完全に遂行される。
【0036】次に、上記説明したと同様の構成および動作を有する複数のリモ−トコントロ−ルシステムが同一場所において同時に使用される場合の各リモ−トコントロ−ルシステムの動作について図を参照にして説明する。
【0037】4つのリモ−トコントロ−ルシステムを同時に使用する場合は、図4に示すように、第1〜4リモ−トコントロ−ルシステムの各リモコン1から送信信号S1、S2、S3、S4を送出する。
【0038】この送信信号S1〜S4は、それぞれ、ランダムな送信間隔X1,X2,X3…で送出される送信デ−タ31〜34から形成されている。尚、送信間隔X1,X2,X3…は各リモコン1の制御部6内でランダムに決められるから、送信信号S1〜S4のタイミングは相互に無関係である。
【0039】いま、時刻t1では、4つのリモコン1が同時に送信デ−タ31〜34を送出したとすると、これらの送信デ−タ31〜34は全てのリモ−トコントロ−ルシステムの受信部3で受信されるが、各受信部3共、制御部8によって送信デ−タの重なりを検出し、全ての送信デ−タ31〜34を棄却する。
【0040】時刻t2においては、第2リモ−トコントロ−ルシステムの送信信号S2の送信デ−タ32が他の送信デ−タと重なっていない。従って、第1、第3、第4のリモ−トコントロ−ルシステムの受信部3においては自分と対応するリモコン1のIDコ−ドを含んでいないから受容されない。
【0041】しかし、この送信デ−タ32は、第2のリモートコントロールシステムの受信部3においてのみ、自分と対応するリモコン1のIDコ−ドを含んでいるため受容され、その結果、第2のリモ−トコントロ−ルシステムの遠隔操作が実行されることになる。
【0042】時刻t3においては、第1リモ−トコントロ−ルシステムの送信信号S1の送信デ−タ31が他の送信デ−タと重なっていない。従って、第2、第3、第4のリモ−トコントロ−ルシステムの受信部3においては自分と対応するリモコン1のIDコ−ドを含んでいないから受容されない。
【0043】しかし、この送信デ−タ31は、第1リモ−トコントロ−ルシステムの受信部3においてのみ、自分と対応するリモコン1のIDコ−ドを含んでいるため受容され、その結果、第1リモ−トコントロ−ルシステムの遠隔操作が実行されることになる。
【0044】時刻t4においては、第3リモ−トコントロ−ルシステムの送信信号S3の送信デ−タ33が他の送信デ−タと重なっていない。従って、第1、第2、第4のシステムの受信部3においては自分と対応するリモコン1のIDコ−ドを含んでいないため受容されない。
【0045】しかし、この送信デ−タ33は、第3リモ−トコントロ−ルシステムの受信部3においてのみ、自分と対応するリモコン1のIDコ−ドを含んでいるため受容され、その結果、第3のシステムの遠隔操作が実行される。
【0046】同様にして、時刻t5では、第2、第4のシステムの送信デ−タ32、34が重なっているため、全ての受信部3で棄却される。時刻t6では、第2のシステムの遠隔操作が動作可能となり、時刻t7では全てのリモ−トコントロ−ルシステムが遠隔操作不能となる。
【0047】時刻t8において、やっと、第4のシステムの遠隔操作が動作可能となる。このように複数のリモ−トコントロ−ルシステムが同時に使用されている場合でも、いったん送信デ−タを送出したリモ−トコントロ−ルシステムは、ある時間経過後には必ず遠隔操作の動作が可能となる。
【0048】複数のリモ−トコントロ−ルシステムが送信デ−タを送出している場合に、各リモ−トコントロ−ルシステムが最初の送信デ−タの送出から遠隔操作の動作可能となるまで待たなければならない時間は、送信デ−タ31、32、33、34…の時間長(送信期間)Taと送信間隔X1、X2、X3、X4…の大きさとの関係による。
【0049】この関係を表したのが表1である。即ち、表1は4つのリモ−トコントロ−ルシステムを同時に使用した場合の実験データを示したものである。表1において、リモコンNo.1〜4は第1〜4リモ−トコントロ−ルシステムの各リモコンを示し、X1〜X5欄の数字はテ−ブル式乱数発生方式による各リモコン1の送信デ−タの送信間隔X1、X2、X3、X4…を示す。
【0050】また、表中、重ならない平均時間、重ならない最大時間とは、あるリモ−トコントロ−ルシステムのリモコン1が送信デ−タを送出し始めてから他のリモ−トコントロ−ルシステムの送信デ−タと重ならないで始めて受信されるまでに要した時間、言わば待ち時間の平均値および最大値である。
【0051】なお、表中の数字の単位は送信デ−タの長さTa(例えば10ms)である。例えば、リモコンNo.1のX1=6は、送信間隔X1がTaの6倍(例えば60ms)であることを示す。
【0052】最初、4つのリモ−トコントロ−ルシステムの各リモコン1(No.1〜4)が同時刻に送信デ−タを送出し、以後表1のX1〜X5欄に示す間隔で送信デ−タをそれぞれ送出した場合、リモコンNo.1の重ならない平均時間、重ならない最大時間、それぞれ24.9Ta、66Taであった。
【0053】
【表1】


【0054】同様に、リモコンNo.2、3、4の重ならない平均時間それぞれ29.5Ta、34.9Ta、53.1Taであり、重ならない最大時間はそれぞれ66Ta、72Ta、72Taである。
【0055】これは、送信デ−タの長さである送信期間Taが、例えば10msの場合、各リモ−トコントロ−ルシステムにおいて、リモコン1が送信デ−タを送出し始めてから受信部3で送信デ−タが受容され遠隔操作が実行されるまでの時間は、最悪の場合でも720ms(最悪値という)であることを意味する。
【0056】つまり、ランダムな間隔で送信デ−タを720msの間継続して送出し続ければ、その間に必ず遠隔操作が可能となるということである。
【0057】以上4つのリモ−トコントロ−ルシステムによる実施例について述べたが、リモ−トコントロ−ルシステムの数がより少ないかあるいはより多い場合においても、本発明による送受信方式は有効であることは勿論である。
【0058】また、上記実施例は赤外線リモコンで構成したが、本発明による送受信方式はRFリモコン、音波リモコン、バス型のワイア−ドリモコン等にも応用できる。
【0059】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によるリモ−トコントロ−ルシステムの送受信方式によれば、複数のリモ−トコントロ−ルシステムを同一場所で同時に使用することができ、単一周波数送信なので送信および受信回路の構成が簡単になり、また、送信部では送信デ−タをランダムな間隔で送出し受信部では送信デ−タの重なりを判断するのみであるので制御部の構成も簡単になり、その結果リモ−トコントロ−ルシステムが小型で低価格になるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るリモ−トコントロ−ルシステムの構成を示す説明図である。
【図2】同送信部の制御部の動作を示すフロ−チャ−ト図である。
【図3】本発明に係るリモコンの送信信号をタイミングチャ−トで示したものである。
【図4】本発明において、同時に使用される4つのリモコンの送信信号のタイミングチャ−トである。
【符号の説明】
1 リモコン
2 機器本体
3 受信部
4 通信リンク
5 操作入力部
6 制御部
7 発信部
8 制御部
9 受光器
10 復調回路
21〜25 フロ−チャ−トのステップ
30〜34 送信デ−タ
S1〜S4 リモコンの送信信号
X1〜X5 送信デ−タの送信間隔
Ta 送信期間(送信デ−タの長さ)
Tb 休止期間
t1〜t8 時刻

【特許請求の範囲】
【請求項1】 送信デ−タの送信期間と休止期間とを交互に置き、休止期間をランダムに変えることを特徴とするリモ−トコントロ−ルシステムの送受信方式。
【請求項2】 複数のリモ−トコントロ−ルシステムを同時に使用するための送受信方式であって、前記複数のリモ−トコントロ−ルシステムは、それぞれ、送信デ−タを送出する間隔をランダムに変える手段を有する送信部と、受信した前記送信デ−タの重なりの有無を判断する手段を有する受信部とを備えたことを特徴とする請求項1に記載のリモ−トコントロ−ルシステムの送受信方式。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開平6−98383
【公開日】平成6年(1994)4月8日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−270952
【出願日】平成4年(1992)9月14日
【出願人】(000102500)エスエムケイ株式会社 (528)