説明

リンクチェーン用継ぎリンク

【課題】チェーンブロック用リンクにおいて、同一寸法の溶接リンクに比して、変形開始時の耐荷重が殆んど劣らず、略同一の強度基準をクリアできる継ぎリンクを提供する。
【解決手段】切断された線状体を縦長C字状に弯曲して形状したリンクの端部が間隔を有して対向する継ぎ目2を有するとともに、内幅及びピッチ長で規定される空間部3を有するチェーンブロック用リンク1において、前記リンク1は、線状体の線径D1、リンクの空間部の内幅寸法B1、ピッチ寸法P1が、同一寸法の溶接リンク1aの線径Do、リンクの空間部の内幅寸法Bo、ピッチ寸法Poに対し、次式(1)、(2)、(3)、(4)で規定する寸法を有する。(1) DO<D1<B0(2).0≦(P0−P1)≦2(D1−D0)(3).0≦(B0−BP1)≦2(D1−D0)(4) DO<B1

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手動チェーンブロックに使用される手鎖(ハンドチェーン)に用いられる一連のリンクチェーンを連結するリンク素子(継ぎリンク)に関するものである。更に詳しくは、溶接によって製造した一連のリンクチェーンをエンドレスの輪にして手鎖(ハンドチェーン)とするため、一連のリンクチェーンの端末のリンク素子同士を連結するリンク素子(継ぎリンク)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
手動チェーンブロックに使用されるリンクチェーンにおいて、リンクチェーンの強度等を改善するためさまざまな改良が行われている。例えば、引用文献1に記載されているリンクチェーンは、リンク表面に無電解メッキ皮膜を形成し、耐食性、耐摩耗性を改善するようにしたものである。引用文献1に代表されるように、リンクチェーンを物理的、また化学的に改良しようとする試みは従来から行なわれてきたが、ハンドチェーンについて改良しようとする試みは未だ殆ど実施されていない。
【0003】
これまで、所定長さの素線を縦長のC字状に曲げ加工しリンク素子を形成し、かつリンク素子同士を順次連接し、リング素子を形成する素線の対向する両端末を溶接にて接合したリンクチェーン(以下、溶接リンクチェーンといい、各リンク素子を溶接リンクという)を製造したのち、同一線径、同一形状のリンク素子で一連の溶接リンクチェーンの端末リンク同士を連結してエンドレスのハンドチェーンを製造していた。
【0004】
比較的大型の手動チェーンブロックでは、ハンドチェーンのリンク素子も太い線径の素線を用いていたので、同一線径、同一形状のリンク素子にて一連の溶接リンクチェーンの端末リンク同士を連結しても、連結後にこのC字状のリンク素子の素線接合部を溶接しなくても、人力に対し十分な強度を有していた。一方、手動チェーンブロックの小型化に伴い、ハンドチェーンに用いる素線の線径も細くなり、同一線径、同一形状のリンク素子では、一連のリンクチェーンの端末リンク同士を連結後、C字状のリンク素子の素線の継ぎ目を溶接しなければ、強度が不足することから、連結用のリンク素子も連結後に一連の溶接リンクチェーンの各素子と同様に溶接されていた。
【0005】
本発明は、一連の溶接リンクチェーンを連結するリンク素子(以下、継ぎリンクという)の形状を改良することにより、ハンドチェーンに必要とされる強度と操作性を兼ね備えたリンクチェーンの継ぎリンクを提供するものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、継ぎリンクを形状、構造の面から改善し、強度基準をクリアする継ぎリンクを提供することを目的とするもので、継ぎリンクを一連のリンクチェーンを連結後に継ぎリンクのリンク素子素線の接合部を溶接しなくても、強度基準をクリアできる継ぎリンクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記課題を解決するもので、所定長さに切断した断面円形の素線を縦長のC字状に曲げ加工してリンク素子を形成した後、溶接にてリンク素子の素線の対向する両端を接合して製造した溶接リンクチェーンを連結する継ぎリンクであって、前記継ぎリンクは、所定長さに切断した断面円形の素線を縦長のC字状に曲げ加工したのち熱処理を行うとともに、前記継ぎリンクの素線の線形D1、平行部素線間の内寸法B1、ピッチ寸法P1が、連結する前記溶接リンクチェーンを構成するリンク素子の素線の線径D0、平行部素線間の内寸法B0、ピッチ寸法P0に対し、次式(1)、(2)、(3)、(4)で規定する寸法を有することを特徴とする溶接リンクチェーンの継ぎリンク。
・ D0<D1<B0
・ 0≦(P0―P1)≦2(D1−D0)
・ 0≦(B0―B1)≦2(D1−D0)
・ D0<B1
【発明の効果】
【0008】
本発明の継ぎリンクは、継ぎリンクの素線の線形D1を、一連の溶接リンクチェーンの溶接リンクの素線の線径D0より大きく、かつ、溶接リンクの平行部素線間の内寸法B0より小さく設定し、ピッチ寸法P1を溶接リンクのピッチ寸法P0と同等か小さく、かつ、その差が継ぎリンクと溶接リンクの線径の差の2倍と同等か小さく設定し、同様に、平行部素線間の内寸法B1を溶接リンクの内幅B0と同等か小さく、かつその差が継ぎリンクと溶接リンクの線径の差の2倍と同等か小さく設定し、継ぎリンクの平行部素線間の内寸法B1を溶接リンク線径D0よりも大きく設定し、上記条件を満たす範囲で継ぎリンクの素線の線径D1を太くしたので、チェーンブロックのハンドチェーンとして、ハンドチェーンを巻き掛けたハンドホイール(手鎖車)とも良好に係合するので、操作性を損なうことなくハンドチェーンの強度基準に適合させることが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下本発明の実施の形態について説明する。
【0010】
図1は、リンクチェーンが使用されるチェーンブロックの正面図、図2(a)は本実施の形態の継ぎリンクの正面図、(b)は従来の溶接リンクの正面図である。
【0011】
図1において、4はチェーンブロック本体、5はリンクチェーンが使用されるハンドチェーン、6は上フック、7は下フック、8はロードチェーン、9はハンドチェーンが巻き掛けられたハンドホイールである。
【0012】
図2(a)(b)において1は継ぎリンク、1aは溶接リンク、2は継ぎリンクのリンク素子の素線の対向する両端である継ぎ目、2aは溶接リンクの素線の対向する両端を溶接した接合部、3、3aは空間部、D1,D0は素線の線径、B1,B0はC字状に曲げられた素線の平行部の素線間の内寸法、P1,P0はピッチ寸法、W1,WOはリンクの外幅、L1、L0はリンク長である。
【0013】
次に、本実施の形態の継ぎリンクについて説明する。本実施の形態の継ぎリンク1は、所定長さに切断された断面円形の素線を縦長C字状に曲げ加工してリンク素子を形成され、切断された素線の端部は間隔を有して対向する継ぎ目2を有している。3は、リンク1の空間部で、空間部3の形状は、内幅B1、ピッチ寸法P1で規定される。尚、図2(a)は継ぎリンク1と(b)の溶接リンク1aは略相似形であり、各寸法は後述する(1)から(4)の条件式を満足する範囲で決められる。
【0014】
次に、本実施の形態の継ぎリンクの特徴について説明する。本実施の形態の継ぎリンク1は、継ぎリンクの素線の線径D1を、溶接リンク素線の線径D0より大きく、かつ、溶接リンクの平行素線間の内寸法B0より小さく設定する。
【0015】
次に、ピッチ寸法P1を溶接リンクのピッチ寸法P0と同等か小さく、かつ、その差が継ぎリンクと溶接リンクの線径の差の2倍と同等か小さく設定し、同様に、平行部素線間の内寸法B1を溶接リンクの平行部素線間の内寸法B0と同等か小さく、かつその差が継ぎリンクと溶接リンクの線径の差の2倍と同等か小さく設定し、継ぎリンクの平行部素線間の内寸法B1を溶接リンクの素線の線径D0よりも大きく設定する。
【0016】
上記寸法条件は次式の通りである。
・ D0<D1<B0
・ 0≦(P0―P1)≦2(D1−D0)
・ 0≦(B0―B1)≦2(D1−D0)
・ D0<B1
上記した通り、本実施の形態の継ぎリンク1は、連結するリンクチェーンの溶接リンク1aよりも太い鋼素線を熱処理によってHRC30〜55の硬さとすることで、線径の細いハンドチェーン(直径4mm以下)でも、継ぎリンクが変形を開始する荷重1200Nの強度基準をクリアすることが出来た。
【0017】
また、継ぎリンクの線径D1を溶接リンクよりも太くしても、上記寸法条件を満たす範囲であればハンドチェーンを巻き掛けたハンドホイール(手鎖車)とも良好に係合し、操作性を損なうことなくハンドチェーンの強度基準に適合させることが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】チェーンブロックの正面図である。
【図2】(a)継ぎリンクの正面図、(b)溶接リンクの正面図である。
【符号の説明】
【0019】
1 継ぎリンク
2 継ぎ目
3 空間部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定長さに切断した断面円形の素線を縦長のC字状に曲げ加工してリンク素子を形成した後、溶接にてリンク素子の素線の対向する両端を接合して製造した溶接リンクチェーンを連結する継ぎリンクであって、前記継ぎリンクは、所定長さに切断した断面円形の素線を縦長のC字状に曲げ加工したのち熱処理を行うとともに、前記継ぎリンクの素線の線形D1、平行部素線間の内寸法B1、ピッチ寸法P1が、連結する前記溶接リンクチェーンを構成するリンク素子の素線の線径D0、平行部素線間の内寸法B0、ピッチ寸法P0に対し、次式(1)、(2)、(3)、(4)で規定する寸法を有することを特徴とする溶接リンクチェーンの継ぎリンク。
・ D0<D1<B0
・ 0≦(P0―P1)≦2(D1−D0)
・ 0≦(B0―B1)≦2(D1−D0)
・ D0<B1

【図2】
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【図1】
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【公開番号】特開2008−239326(P2008−239326A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−84945(P2007−84945)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(000129367)株式会社キトー (101)