説明

リングバインダーの頁検出装置

【課題】リングバインダーによるファイリングは、頁の交換や追加等が容易に行えるので広く普及しているが、利用に関しては、単独で閲覧、記録等をするだけで、他のメディアや装置との連携は考慮されてなかった。リングバインダーのファイリングの有用性を更に高めるために、ファイリングされる頁情報を他のメディアや装置で使用可能とすること。
【解決手段】ファイリングされる紙葉の頁に、その頁固有の情報を有するコードシンボルを印刷し、リングバインダーの中央部分の左右の紙葉の間に、読み取り光学系を配し、ミラーによって左右の頁のコードシンボルを別々に読み取るようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の頁に写真を貼ったり記述を残したりして一冊の本の形態で利用、保存するリングバインダー形式のファイリング用具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数の紙葉を一冊の本としてまとめるためのファイリング用具は種々のものが存在しているが、半円状に曲げられた棒材を紙葉に開けられた穴に通した後、半円同士を突き合わせて紙葉を保持する、いわゆるリングバインダーは、紙葉の差し替えが容易なため、様々な用途で広く用いられている。
【0003】
例えば写真を保存するアルバムを作る場合、リングバインダーを使用すれば、後から頁の順番を変更したり、新たな頁を追加したり等の編集が容易である。この編集の容易さは写真に限らず、記述によって記録、保存する場合も同様である。
【0004】
さらに、例えば絵本等の印刷された連続頁を本としてまとめる場合も、リングバインダーによれば、頁をめくりやすく、かつ見開きの状態を維持しやすい利点がある。
【0005】
以上のように、ファイリングとしてのリングバインダーの機能の優位性は論を待たない。
【0006】
一方、リングバインダーでファイリング可能な写真や記述による記録は視覚情報に限られるが、記録手段としては視覚情報の他に音声による聴覚情報記録もある。
【0007】
例えばある場面を記録する場合、視覚記録と聴覚記録はその場面に応じた同時性を有するので、両者が関係付けられていることが望ましい。また絵本には場面を表現する絵とともに文字によるストーリーも書かれているが、文字が読めない児童に対しては、読み聞かせによって聴覚情報を同時に与えることが広く行われている。
【0008】
以上の二つの場合、見開き頁に対応した音声記録、再生が可能であれば、非常に有効な装置として広く使われるであろう。
【0009】
このためには、写真や絵などが貼り付けられた頁を検知して特定することが必要である。音声記録、再生は、ほとんど磁気テープや磁気ディスク等の電子的な手段によるので、特定の頁に対応させて記録、再生を行うことは容易である。
【0010】
また頁検知が可能になれば、パソコンと接続して頁情報を送り、複数の本同士での異なる頁内容の関係付けや、本の頁内容をパソコン側に登録して管理することも容易になり、ファイリング機能はさらに向上する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
リングバインダーが見開かれた状態に於いて、束ねられた複数の紙葉の表裏である頁のうち、見開かれた頁を特定可能とすること。
【0012】
リングバインダーに束ねられた複数の紙葉の順番が変更されたり、紙葉が追加あるいは削除されても常に見開かれた頁を特定可能にすること。
【0013】
上記の見開かれた頁の特定を電気的手段によってなし、その特定情報によって他のメディアの特定の一部分を参照可能とすること。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、リングバインダーに束ねられる紙葉の表裏の一部分に特定のコードシンボルが印刷されており、リングバインダーが開かれ、頁が見開かれた状態に於いて、
その見開かれた頁のコードシンボルを、左右の紙葉の中央に配設された読み取り光学系によって読み取ることを可能にする。
【0015】
さらに、本発明は、読み取り光学系の一部をなすミラーを操作して光軸を左右いずれかに曲げて、見開かれた左右の頁のいずれかを選択して、そのコードシンボルを読み取ることを可能にする。
【0016】
さらに、本発明は、背に回転可能な表紙サポーターを軸支し、その回転サポーターを回して横位置にすることで、リングバインダーが開かれた状態において表紙カバーの背面にその一部が当接し、表紙カバーが必要以上に曲げられ、左右に分かれた紙葉が段違いになることを防止する。
【0017】
さらに、本発明は、表紙サポーターの回転操作によって、読み取り光学系への電源供給スイッチを入切する。
【0018】
さらに、本発明は、ミラーの位置にかかわらず、見開いた左右の頁を連続認識可能なように、頁順序の情報と同時に、左側の頁と右側の頁の特定の桁に、各々、同一の値を与えたコードシンボルを使用する。
【発明の効果】
【0019】
本発明のリングバインダーの頁検出装置によれば、リングバインダーを開いて、その頁を繰りながら閲覧あるいは書き込む際に、かならず見開かれたページが検出されているので、音声データとのひも付けが可能である。頁検知情報を入力可能なボイスレコーダーを接続すれば、見開いた頁に対応した音声データを録音あるいは再生可能となり、視覚情報と聴覚情報の一体化が可能になる。
【0020】
例えば、絵本のように頁の順序が定められている場合、見開かれた左右の頁をひとつの場面として、それぞれを繋いで認識させる場合があるが、本発明の各頁には、頁順序の連続番号と同時に見開きの左右識別情報も与えられているので、左右いずれかの頁を検知すれば、見開きの両側の2頁の音声を連続録音あるいは連続再生可能である。見開き片側、両側連続の識別情報は、本発明の装置に接続される装置内で保持される。
【0021】
また、パソコンに検知情報を読み取り可能なソフトを搭載すれば、本発明の装置をパソコンとつないで検知情報をパソコン側に登録可能である。従って本及び頁情報を入力する手間を省き、パソコン側での本および頁情報の管理が容易となる。
【0022】
以上のように、本発明の効果は明らかなものである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施例を背側から見た外観斜視図である。
【図2】本発明の実施例に於けるリングバインダーを開いた状態を、左手前から見た外観斜視図である。
【図3】本発明の実施例に於ける、左手前から見た分解斜視図である。尚、リングバインダー構造部分は分解されていない。
【図4】本発明の実施例を背側から見た分解斜視図である。尚、リングバインダー構造部分は分解されていない。
【図5】図2に於けるAA断面図である。尚、図2に於いて右側に開かれた紙葉は左側に戻されており、左側の頁のコードシンボルを読む状態である。
【図6】図2に於けるもうひとつのAA断面図である。右側のコードシンボルを読む状態である。
【図7】図5の読み取り光学系のミラーを廃して、光軸を直線に展開した光路図である。
【図8】本発明の実施例の使用時を手前から見た正面図である。
【図9】本発明によらない従来例を手前から見た正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を、図を基に説明する。
【0025】
図1から図8までは本発明による実施例を示す。尚、図9は本発明によらないリングバインダーの従来例を示す。
【0026】
図1に示す通り、使用に際してリングバインダー1の背面の表紙サポーター4を、回動軸41を中心として矢印B方向に90度回す。図示していないが、表紙サポーター4はこの二つの位置にクリックストップ等で確実に維持される。この操作で、背面カバー3内に固設された電源スイッチ32が作動し、頁検出装置が作動可能となる。
【0027】
表紙サポーター4の上下には、同じ厚さの背面カバー3が固設されて背面の段差を無くしているので、リングバインダー1を机上面5に置いたときにも安定する。また下側の背面カバー3の内部には、検出制御基板31と電源スイッチ32が配設されており、さらに、他の装置と接続するための外部コネクター33が背面に露出している。
【0028】
この構造によって、頁検出装置を作動させない従来通りのリングバインダーとしての使用も可能である。
【0029】
図8は表紙カバー11を開いた状態であるが、横位置まで回された表紙サポーター4が、概略一直線になるまで開かれた表紙カバー11に当接し、図9に示す従来例のような表紙カバー11が一直線を超えて折り曲げられることを防止し、コードシンボル12aが印刷された紙葉12と読み取り光学系20の相対位置関係を一定に維持している。
【0030】
図3、図4に示す通り、読み取り光学系20及び電池29は筐体21に内蔵され、リングバインダー1のリング16の内側に配設される。図示を省略しているが、筐体21はリングカバー13上に固定される。
【0031】
リングバインダー1の一般的構造は、リング16が植設されたリングリテーナ15が左右で突き合わされ、リングカバー13とリングベース14の内側に保持される。リング開閉レバー17を操作すると、リングリテーナ15が、その左右端でリングカバー13とリングベース14をわずかに押しひろげながら回転してリング16を開く。従って、この時リングカバー13はわずかに変形、振動するので、筐体21の固定は、変形、振動の影響を排除するようになされなければならない。
【0032】
図示しないが、筐体21は、例えばリングカバー13の円弧の頂上部分で接触しねじ等で固定するといった配慮が必要である。
【0033】
図4に示す通り、読み取り光学系20は、ミラーホルダー22に固着されたミラー23と4個の照明LED24、レンズ鏡筒26に組み込まれたレンズ27と絞り27a、撮像素子28とから構成される。ミラーホルダー22には、筐体21の回転支持穴21aで軸支される回転軸22aが設けられている。回転軸22aの一方の端部には回転操作部材25が接続される。
【0034】
以上の構成により、回転操作部材25を回転操作することで、図5、図6に示す通り、光軸を左右に切り替える。なお図示していないが、それぞれの位置に於いてクリックストップ等で確実に姿勢が保持される。またリングバインダー1が閉じられた状態で紙葉12が筐体21に干渉しないように切り欠き12cが設けられ、コードシンボル12aは、読み取り干渉を起こさない範囲で切り欠き12cの近傍におかれる。
【0035】
図示していないが、電池29、照明LED24からの配線は、リングカバー13、リングリテーナ15、リングベース14、表紙カバー11を貫通し、表紙カバー11の背側に配設される背面カバー3の内側まで導かれる。撮像素子28の例えばフレキパターン等の配線も同様に、リングリテーナ15、リングベース14、表紙カバー11を貫通し、背面カバー3内の検出制御基板31まで導かれる。
【0036】
図7によって、読み取り光学系20の概略を説明する。尚、図7は図5に示す断面の読み取り光学系20を抜き出し、ミラー23を廃して光軸27bを直線上に展開したものである。
【0037】
左側の2点鎖線の円はレンズ27の物体面27cを平面視している。円内にある3つのコードシンボル12aは最小モジュール幅0.17mmのバーコードで横に50モジュール(8.5mm)、縦に13モジュール(2.2mm)の大きさである。この構成で12ビットの固有情報とチェックデジット1ビットがコーディング可能である。物体面27dに於いて、コードシンボル縦印刷範囲12bは投影縮小されている。
【0038】
上側のコードシンボル12aは重なった紙葉12の一番上の、下側のものは紙葉12の一番下の紙葉の上側に印刷されたもので、14.2mmの直径の物体面27c内に収まっている。
【0039】
尚、像面27dは4.6mmの直径で、1/3インチの撮像素子28に結像する。また像面27dに於いては、撮像素子28の短辺は像面27dの直径の80%をカバーするので、上側と下側のコードシンボルはケラレ無く撮影される。
【0040】
撮像素子28は659×494の約33万画素で画素ピッチは約0.007mmである。レンズ27による撮影倍率は4.6÷14.2で約0.32倍なので、コードシンボル12aの最小モジュール幅は0.17×0.32≒0.05mmで結像するが、画素ピッチはその約1/7の大きさなので撮像素子28の分解能としては全く問題ない。
【0041】
次に物体面27c側でレンズ27の被写界深度を説明する。今、有限距離での開放F値4.5、焦点距離6.4mmのレンズを描いている。参考までに、このレンズの物体距離、全長、像距離、物像間距離も寸法記入した。前記の像面27dでの最小モジュール幅0.05mmを問題なく解像可能な、最小錯乱円0.025mmで、絞りをF6.7まで絞って計算すると、物体面27cより遠側に約3mm、近側に約2.5mmの深度を有する。
【0042】
図7に示す通り、上側のコードシンボル縦印刷範囲12bの中心は近側に1.6mm、下側のコードシンボル縦印刷範囲12bの中心は遠側に2mm離れているが、いずれも上記の被写界深度内なので、問題ない。
【0043】
さらに、コードシンボル縦印刷範囲12bの近側と遠側の物体距離の差から生じるディストーションも、上記の数字から問題ないと判断される。
【0044】
以上のように、解像度、被写界深度は実用上余裕があり、撮像素子28はCCDでは無く、低い電圧で駆動可能でPCカメラ等に多く出回っている低コストのCMOSタイプが使用可能である。
【0045】
また、低輝度下での使用を考慮して、照明LED24を設けることが望ましいが、コードシンボル12aは白色、黒色の2種類で、その反射率を設定した閾値で判読するだけなので、レンズ27の設計上もコスト面でも、非常に有利で選択幅が広い。尚、照明による乱反射を避けるため、紙葉22のコバは反射防止のため墨塗りする等の対策が必要である。
【0046】
今、コードシンボル12aを前記の大きさのRSS−14Stackedで仮定しているが、これに拘ることなく、例えば1セルが0.5mmの大きさの縦横に各11セルのマイクロQRコード等の2次元シンボルも十分に使用可能である。
【0047】
ただし、この場合、コードシンボルの縦印刷範囲12bが大きくなるので、被写界深度内に収め、像面27dでのケラレを生じないように、図7に於いて1mmの厚さの紙葉12が9枚重ねられ上側と下側の8mmの頁間距離を、紙葉12を薄くしたり枚数を減らしたりして、小さくして調整することが必要である。
【0048】
逆に、前記8mmの頁間距離を限度にして、紙葉12の厚さを減じて枚数を増やす、といった調整も可能である。
【0049】
リングバインダー1を開き、かつ表紙サポーター4を横位置にして電源スイッチ32が入っている間、一定のインターバルでごく短時間、頁検出装置2を繰り返し作動させる。例えば、コードシンボル12の検出、解読に0.1秒を費やし、その後0.9秒は休止状態とし、秒間一回の作動を繰り返す。
【0050】
以上のようなダイナミック駆動で、消費電力を抑えると同時に、頁がめくられても、常に見開き頁を検知可能とする。
【0051】
以上、ひとつの実施例で説明したが、例えば、筐体21に収納された電池29を廃して、外部コネクター33を通して電源供給しても良い。本発明の範囲を逸脱しない変更が様々に可能である。
【産業上の利用可能性】
【0052】
以上述べたように、本発明によってリングバインダーの利用価値、利便性が大幅に高まり、あらゆる分野でひろく利用されるものである。
【符号の説明】
【0053】
1 リングバインダー
11 表紙カバー 12 紙葉
12a コードシンボル 12b コードシンボル縦印刷範囲
12c 切り欠き 13 リングカバー
14 リングベース 15 リングリテーナ
16 リング 17 リング開閉レバー
2 頁検出装置
20 読み取り光学系 21 筐体
21a 回転支持穴 22 ミラーホルダー
22a 回転軸 23 ミラー
24 照明LED 25 回転操作部材
26 レンズ鏡筒 27 レンズ
27a 絞り 27b 光軸
27c 物体面 27d 像面
28 撮像素子
3 背面カバー
31 検出制御基板 32 電源スイッチ
33 外部コネクター
4 表紙サポーター
41 回動軸
5 机上面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その表裏が頁をなす紙葉の複数を束ねて任意の頁を見開き可能なリングバインダーと、見開かれた状態の左右の該紙葉の間に配置されたミラー及びレンズ及び撮像素子とからなり、該紙葉の頁には固有のコードシンボルが印刷されており、該ミラー及び該レンズ及び該撮像素子によって該コードシンボルを検出することを特徴とするリングバインダーの頁検出装置。
【請求項2】
前記ミラーは回転可能であって、左右に見開かれた頁の両側の前記コードシンボルの任意のいずれか一方を検出可能とすることを特徴とする請求項1記載のリングバインダーの頁検出装置。
【請求項3】
前記リングバインダーの背に回転可能で長方形の表紙サポーターを軸支し、該表紙サポーターを回転操作して横位置にすることで、前記リングバインダーの表紙カバーの開閉角度を規制することを特徴とする請求項1記載のリングバインダーの頁検出装置。
【請求項4】
前記表紙サポーターの前記回転によって、前記撮像素子を含む制御回路への通電回路を開閉することを特徴とする請求項1記載のリングバインダーの頁検出装置。
【請求項5】
前記コードシンボルの特定の数桁を頁順序識別に用い、限定された枚数の前記紙葉の各頁に連続番号を与え、さらに別の特定の桁には、左に見開かれる各頁に共通の値を与え、右側に見開かれる各頁には、左側とは異なる共通の値を与えることを特徴とする請求項1記載のリングバインダーの頁検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−75503(P2013−75503A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−228338(P2011−228338)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
【出願人】(507237417)
【Fターム(参考)】