説明

リン酸含有排水の処理方法及びリン酸含有排水処理剤

【課題】リン酸含有排水を処理する方法において、亜リン酸、次亜リン酸を含有する排水から全リン酸を高度に除去する方法及び処理剤を提案する。
【解決手段】亜リン酸、次亜リン酸を含有する排水にジルコニウム化合物、又はジルコニウム化合物と硫酸化合物を添加し、該ジルコニウム化合物を排水中で加水分解し、引き続き該排水のpHを10以下に維持することで、排水中に含まれる亜リン酸、次亜リン酸を不溶化させる。ジルコニウム化合物としては、オキシ塩化ジルコニウム等が用いることが出来、特にpHが7以下とすることが好ましい。排水中には正リン酸が含まれていてもよい。不溶化された亜リン酸、次亜リン酸は、固液分離すればよい。さらに硫酸塩を添加することにより白濁のない処理排水が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリン酸含有排水の処理方法に係り、特に亜リン酸、次亜リン酸を含むリン酸濃度の低い排水を処理する方法及び処理剤に関する。
【背景技術】
【0002】
リン酸を含有する排水は、生活排水として、また下水処理施設、肥料工場、めっき工場など種々の工場から排出されている。現在、水質汚濁防止法ではリンの排出基準が16mg(日間平均8mg)/リットルに定められているが、さらに環境への負荷低減を目的として地方自治体などでより厳しい排出基準を課しているところもあり、リン酸の高度処理技術の開発が望まれている。
【0003】
従来、リン酸含有排水の処理方法としては、カルシウム化合物を添加して、リン酸をヒドロキシアパタイトなどのリン酸カルシウム類として沈殿させて固液分離する凝集沈殿法がある。しかしながら、この方法で排水から除去されるリン酸は正リン酸のみであり、亜リン酸、次亜リン酸を除去することはできない。
【0004】
また、他の方法としてはアルミニウム化合物を添加してリン酸をリン酸アルミニウム類として沈殿させて固液分離する凝集沈殿法がある。しかしながら、この方法で排水から除去されるリン酸は正リン酸と亜リン酸であり、やはり次亜リン酸を除去することはできなかった。さらに、亜リン酸を高度に除去するには多量のアルミニウム化合物の添加が必要となり、含水性の高い水酸化アルミニウムスラッジが多量に発生するという問題があった。
【0005】
一方、ジルコニル塩を用いるリンの除去方法が提案されている。(特許文献1)しかし、特許文献1の方法におけるリン酸の除去剤はジルコニル塩が溶解された水溶液の形態であり、固形粉末や粒体の形態ではないことが示されている。さらに、当該報告では対象が正リン酸のみであり、亜リン酸、次亜リン酸に対するものではなかった。正リン酸を含有する水溶液にジルコニウム化合物を添加すると不溶性の化合物を生成することは知られている(非特許文献1)が、亜リン酸、次亜リン酸は正リン酸とは化学的な挙動が異なり、これまで有効に除去する方法は知られていなかった。
【0006】
また、多孔質材料にジルコニウムを担持した吸着剤をカラムに充填し、これに排水を通液することによりリン酸イオンを吸着除去する方法が提案されている。(特許文献2)この方法では、正リン酸には十分な効果があったが、亜リン酸、次亜リン酸の吸着除去効果はまだ十分ではなく、さらには排水処理設備として専用の吸着処理塔や、事前に粒子状物質を取り除く設備、吸着剤の再生処理をおこなう設備などが必要となり、設備コストが高価となるという課題を有していた。
【0007】
一方、ジルコニウム塩を加水分解したジルコニウム酸化物の粉末、懸濁剤、乳剤、シロップ剤等をリン酸イオン吸着剤に用いる方法が知られており、ジルコニウム塩としてオキシ塩化ジルコニウムの例示がされている。(特許文献3)
しかし特許文献3に記載されたジルコニウム酸化物は、いずれもpHが2〜9.5までで加水分解したものであり、さらに一旦乾燥して用いられており、正リン酸には十分な効果があったが、亜リン酸、次亜リン酸の除去効果はまだ十分ではなかった。
【0008】
【特許文献1】特開2004−000827号
【特許文献2】特開平05−068969号
【特許文献3】特開平05−329361号
【非特許文献1】基礎無機化学 J.D.Lee著 浜口博訳 東京化学同人発行(1966)(第187頁7行〜9行)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
リン酸には正リン酸、亜リン酸、次亜リン酸の3つの形態がある。それぞれ化学的性質が異なり、従来の処理方法においては、正リン酸はある程度除去することはできたが、亜リン酸、次亜リン酸を含有する排水から全リン酸を高度に除去することまではできなかった。
【0010】
本発明は、従来困難であった、亜リン酸、次亜リン酸を含む全リン酸を一般的な排水処理設備である凝集沈殿処理設備において高度に除去する方法及び処理剤を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、上記の課題を解決するために、亜リン酸及び/又は次亜リン酸を含有する排水にジルコニウム化合物、又はジルコニウム化合物と硫酸化合物を添加し、該排水のpHを10以下に維持すること、特にジルコニウム化合物を加水分解し、活性な水和酸化ジルコニウムを得、引き続き濾過、乾燥等の処理によって該水和酸化ジルコニウムのイオン交換活性を下げることなくそのまま亜リン酸、次亜リン酸の除去剤として用いることにより、ジルコニア化合物に対して正リン酸とはイオン交換特性の異なる亜リン酸、次亜リン酸を含む全リン酸を高度に除去する方法及び処理剤である。
【0012】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0013】
本発明で用いられるジルコニウム化合物としては、硫酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、塩化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、水和酸化ジルコニウムなどが挙げられ、これらの一種または二種以上用いてもよい。その中でも溶解度が高いオキシ塩化ジルコニウムが特に好ましく、オキシ塩化ジルコニウムを用いると、高濃度溶液として供給することが可能となる。使用に際しては、当初はオキシ塩化ジルコニウムを水に溶解させた液体を処理排水に添加した後に加水分解しても良いが、先に加水分解して固体を析出させた加水分解水溶液(懸濁液)を処理排水に添加することも可能である。ここで、加水分解した水和酸化ジルコニウムを乾燥するとリン酸、特に亜リン酸、次亜リン酸に対するイオン交換活性が低下するため、乾燥しないでそのまま連続して用いることが好ましい。
【0014】
上記のジルコニウム化合物は被処理排水に添加後、攪拌、振とうなどの操作により十分に排水中に拡散させて加水分解することが好ましい。拡散が不十分であると十分なリン酸の除去効果が得られない。
【0015】
ジルコニウム化合物の添加量は、排水中の全リン酸のモル量に対し等量から10倍量添加することが好ましい。添加量が排水中のリン酸のモル量より少ないとリン酸を十分に除去することができない。また添加量が10倍量より多いとリン酸を高度に除去するという目的は達成できるが、発生するスラッジが多量となり、廃棄物量を削減するという観点からは好ましくない。
【0016】
本発明の処理では処理排水のpHの管理がきわめて重要である。
【0017】
ジルコニウム化合物を添加後、加水分解物を得た後に、亜リン酸、次亜リン酸の除去処理では、排水のpHは10以下に維持することが必須であり、そのため、必要に応じて、酸またはアルカリを添加してpH調整を行う必要がある。10を超えるpH領域では加水分解した水和酸化ジルコニウムが亜リン酸、次亜リン酸のイオン交換に対して不活性なため、除去処理効率が悪化する。
【0018】
亜リン酸の除去に好ましいpHは10以下、さらに好ましくは2〜8の範囲である。
【0019】
次亜リン酸の除去にはより酸性の条件が好ましく、特にpH7以下が好ましい。さらに好ましくは2〜5の範囲である。一方、4以下のpHでは十分な加水分解が難しい。そのため概ね5以上、好ましくは7以上のpHにおいて加水分解処理した後に、最終的に低pHに調整すればよい。
【0020】
本発明では、被処理排水が亜リン酸及び次亜リン酸の両方を含む場合は、その含有割合により好適なpH範囲は変動するが、特に7以下のpH、さらに好ましくは2〜5の範囲のpHで亜リン酸及び次亜リン酸の両方を除去することができる。被処理排水が亜リン酸に加え正リン酸を含有する場合は、亜リン酸の処理条件と同じくpH10以下、さらに好ましくは2〜8の範囲で亜リン酸及び正リン酸の両方を除去することができる。被処理排水が次亜リン酸に加え正リン酸を含有する場合は、次亜リン酸の処理条件と同じくpH7以下、さらに好ましくは2〜5の範囲で次亜リン酸及び正リン酸の両方を除去することができる。被処理排水が亜リン酸及び次亜リン酸の他に正リン酸を含有する場合は、その含有割合により好適なpH範囲は変動するが、概ね7以下のpH、さらに好ましくは2〜5の範囲のpHで全リン酸を除去することができる。
【0021】
排水のpHの調整には硫酸、塩酸、硝酸などの無機酸、或いは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムなどの無機アルカリが有用に使用できる。この内、アルカリとしては、特に水酸化カルシウムを用いて調整することが好ましい。水酸化カルシウムはアルカリ剤として作用するだけでなく、正リン酸イオンと反応してヒドロキシアパタイトなどのリン酸カルシウム類を形成しリン酸の不溶化除去にも寄与するためである。
【0022】
上述のように、本発明の処理では処理排水のpHの管理がきわめて重要であり、ジルコニウム化合物を添加後、加水分解物を得た後に、亜リン酸、次亜リン酸の除去処理では、排水のpHは10以下に維持することが必須である。しかしながら、概ね4以下の低いpHでは、ジルコニウム化合物の加水分解が不十分となり、処理排水が白濁することがある。この際にはジルコニウム化合物の他に硫酸化合物を添加することにより特に無色透明な処理排水を得ることができる。なお、硫酸化合物の添加によって、上述の好適な処理pHが変化する事はない。
【0023】
本発明で用いられる硫酸化合物としては、硫酸、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニウム、硫酸アルミニウム、硫酸鉄など水に溶解して硫酸イオンを放出する硫酸塩を使用することができ、これらの一種または二種以上用いてもよい。硫酸化合物は、固体のまま使用しても、水溶液として使用してもよい。
【0024】
上記の硫酸化合物は、ジルコニウム化合物の投入の前後、またはジルコニウム化合物の投入と同時に被処理排水に添加する。あらかじめジルコニウム化合物の水溶液に硫酸化合物を溶解させておいて、これを被処理排水に添加することも可能である。
【0025】
本発明では、特に保存安定性、加水分解特性に優れたオキシ塩化ジルコニウムを用い、硫酸供給源としてはアルカリ金属等の硫酸塩を用いることにより、白濁の程度によって添加する硫酸塩の量を調整することが好ましい。
【0026】
硫酸化合物の添加量は、被処理排水の組成、処理をおこなうpH、ジルコニウム化合物の添加量により最適量が変動するため、一概に限定することはできないが、被処理排水中の硫酸イオン量、pH調整に使用した硫酸量、ジルコニウム化合物由来の硫酸イオン量を合わせて、概ね1〜50mMの硫酸イオン量となるよう添加する。
【0027】
概ね6以上のpHで処理する場合で、なおかつジルコニウム化合物の加水分解が十分に進行する場合には、硫酸化合物の添加は不要である。
【0028】
硫酸化合物の添加量が過剰な場合、無色透明の処理排水は得られるが、排水中のリン酸の残存量が増加することがあるため、硫酸化合物の添加量は必要最低限に留めるのが好ましい。一般に被処理排水中の次亜リン酸含有量が多いほど、また排水の初期処理pHが低いほど、さらにジルコニウム化合物の添加量が多くなるほど必要な硫酸化合物の添加量は増加する。
【0029】
初期のリン酸含有量がきわめて高濃度である場合には、先にカルシウム化合物および/またはアルミニウム化合物を添加し、リン酸濃度をある程度まで低減した後に、ジルコニウム化合物を添加することで、ジルコニウム化合物の添加量を最小限とすることができる。ただし、先述のようにカルシウム化合物で除去できるリン酸は正リン酸のみであり、亜リン酸、次亜リン酸を除去することはできず、アルミニウム化合物により除去されるリン酸は正リン酸と亜リン酸であり、次亜リン酸を除去することはできないことに留意する必要がある。
【0030】
上記のようにして生成させたリン酸不溶化物は固液分離後廃棄される。固液分離には、例えば、沈降分離、浮上分離、圧搾、濾過などの一般的な固液分離法が有用に適用される。この際に、本発明の処理方法で得られたリン酸不溶化物は凝集してフロック状になっていて固液分離し易いものであるが、必要に応じて硫酸バンドや塩化第二鉄などの一般的な無機凝集剤またはアクリル系ポリマーなどの高分子凝集剤を併用してより固液分離を容易にする方法が適宜採用される。
【0031】
また、本発明の処理方法は、他のリン酸処理方法と併用または組み合わせておこなうことが可能である。例えば石灰凝集法、硫酸バンド凝集法などの従来法による一次処理後に本発明の処理方法をおこなうことで全リン酸が高度に除去された高水質処理排水を得ることができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明の方法では、従来除去が困難であった排水中の亜リン酸、次亜リン酸の除去が可能である。特にジルコニウム化合物とともに硫酸化合物を用いることにより、白濁のない浄化排水が得られる。
【実施例】
【0033】
次に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何等限定されるものではない。
【0034】
実施例1
亜リン酸を265mg/リットル溶解して調製した、リンとして100mg/リットルを含有する溶液1リットルをモデル排水としてリン酸処理試験をおこなった。このモデル排水に、攪拌下、ジルコニウムとして14重量%の濃度のオキシ塩化ジルコニウム水溶液5gを添加し、水酸化ナトリウムでpH11に調整し10分間攪拌後、そのまま濾別しないで塩酸を添加しpHを2〜11の範囲で一定のpHに維持しながら10分間攪拌した後、懸濁物を濾過し、濾液中のリン酸をイオンクロマトグラフにより定量分析を行った。その結果を図1に示す。
【0035】
pH10以下に維持した処理条件下において、濾液中の亜リン酸濃度が減少していた。特にpH2〜8の範囲での亜リン酸除去能が顕著に優れた。
【0036】
実施例2
次亜リン酸を213mg/リットル溶解して調製した、リンとして100mg/リットルを含有する溶液1リットルをモデル排水としてリン酸処理試験をおこなった。このモデル排水に、攪拌下、ジルコニウムとして14重量%の濃度のオキシ塩化ジルコニウム水溶液10gを添加し、水酸化ナトリウムでpH11に調整し10分間攪拌後、そのまま濾別しないで塩酸を添加しpHを2〜11の範囲で一定のpHに維持しながら10分間攪拌した後、懸濁物を濾過し、濾液中のリン酸をイオンクロマトグラフにより定量分析を行った。その結果を図2に示す。
【0037】
pH7以下に維持した処理条件下において、濾液中の次亜リン酸濃度が減少していた。特にpH2〜5の範囲での次亜リン酸除去能が顕著に優れていた。
【0038】
実施例3
亜リン酸、次亜リン酸をそれぞれ50mg−P/リットルずつの濃度で溶解して調製した、リンとして合計100mg/リットルを含有する溶液1リットルをモデル排水としてリン酸処理試験をおこなった。このモデル排水に、攪拌下、ジルコニウムとして14重量%の濃度のオキシ塩化ジルコニウム水溶液10gを添加し、水酸化ナトリウムでpH11に調整し10分間攪拌後、そのまま濾別しないで塩酸を添加しpHを2〜11の範囲で一定のpHに維持しながら10分間攪拌した後、懸濁物を濾過し、濾液中のリン酸をイオンクロマトグラフにより定量分析を行った。その結果を図3に示す。
【0039】
亜リン酸は実験した全pHにおいて、次亜リン酸はpH8以下に維持した処理条件下において、濾液中の濃度が減少していた。特にpH2〜5の範囲で亜リン酸および次亜リン酸の両方を水質汚濁防止法で定められたリンの排出基準、日間平均8mg/リットル以下の高度に除去した高水質処理排水を得ることができた。
【0040】
実施例4
正リン酸を40mg−P/リットル、亜リン酸を30mg−P/リットル、次亜リン酸を30mg−P/リットルの濃度で溶解して調製した、リンとして合計100mg/リットルを含有する溶液1リットルをモデル排水としてリン酸処理試験をおこなった。このモデル排水に、攪拌下、ジルコニウムとして14重量%の濃度のオキシ塩化ジルコニウム水溶液10gを添加し、水酸化ナトリウムでpH11に調整し10分間攪拌後、そのまま濾別しないで塩酸を添加しpHを2〜11の範囲で一定のpHに維持しながら10分間攪拌した後、懸濁物を濾過し、濾液中のリン酸をイオンクロマトグラフ、ICPにより定量分析を行った。その結果を表1および図4に示す。
【0041】
正リン酸は実験した全pHにおいて、亜リン酸はpH10以下に維持した処理条件下において、次亜リン酸はpH7以下に維持した処理条件下において、濾液中の濃度が減少していた。特にpH2〜5の範囲では正リン酸のみならず、亜リン酸、次亜リン酸を含む全リン酸を水質汚濁防止法で定められたリンの排出基準、日間平均8mg/リットル以下の高度に除去した高水質処理排水を得ることができた。
【0042】
【表1】

【0043】
実施例5
次亜リン酸を26mg/リットル、亜リン酸を60mg/リットル、正リン酸を7mg/リットル、硫酸イオンを88mg/リットル含有する電解メッキ槽洗浄排水のリン酸処理試験をおこなった。
【0044】
この排水1リットルに、硫酸ナトリウムを0.7g溶解し、攪拌下、ジルコニウムとして14重量%の濃度のオキシ塩化ジルコニウム水溶液を添加し、排水のpHを4に維持しながら10分間攪拌した後、懸濁物を濾過し、濾液中のリン酸をICPにより定量分析を行った。その結果を図5に示す。
【0045】
ジルコニウム溶液3g以上の添加で水質汚濁防止法で定められたリンの排出基準、日間平均8mg/リットルを下回る処理排水を得た。またジルコニウム溶液の添加量によらず、無色透明な処理排水を得た。
【0046】
なお、硫酸ナトリウムを添加せずに処理をおこなうと、ジルコニウム溶液3g以上の添加で処理排水が白濁し、無色透明な処理排水を得ることができなかった。
【0047】
実施例6
次亜リン酸を119mg/リットル、亜リン酸を1mg/リットル、硫酸イオンを120mg/リットル含有する電解メッキ槽洗浄排水のリン酸処理試験をおこなった。
【0048】
この排水1リットルに、硫酸ナトリウムを2.8g溶解し、攪拌下、ジルコニウムとして14重量%の濃度のオキシ塩化ジルコニウム水溶液を添加し、排水のpHを4に維持しながら10分間攪拌した後、懸濁物を濾過し、濾液中のリン酸をICPにより定量分析を行った。その結果を図6に示す。
【0049】
ジルコニウム溶液12g以上の添加で水質汚濁防止法で定められたリンの排出基準、日間平均8mg/リットルを下回る処理排水を得た。またジルコニウム溶液の添加量によらず、無色透明な処理排水を得た。
【0050】
なお、硫酸ナトリウムを添加せずに処理をおこなうと、処理排水が白濁し、無色透明な処理排水を得ることができなかった。
【0051】
実施例7
実施例6と同じ電解メッキ槽洗浄排水1リットルに、硫酸ナトリウムを4.3g溶解し、攪拌下、ジルコニウムとして14重量%の濃度のオキシ塩化ジルコニウム水溶液を添加し、排水のpHを3に維持しながら10分間攪拌した後、懸濁物を濾過し、濾液中のリン酸をICPにより定量分析を行った。その結果を図6に示す。
【0052】
ジルコニウム溶液7g以上の添加で水質汚濁防止法で定められたリンの排出基準、日間平均8mg/リットルを下回る処理排水を得た。またジルコニウム溶液の添加量によらず、無色透明な処理排水を得た。
【0053】
なお、硫酸ナトリウムを添加せずに処理をおこなうと、処理排水が白濁し、無色透明な処理排水を得ることができなかった。
【0054】
比較例1
次亜リン酸を256mg/リットル溶解して調製し、リンとして120mg/リットルを含有する溶液1リットルをモデル排水としてリン酸処理試験をおこなった。このモデル排水に、攪拌下、下記に示した処理剤を添加し、水酸化ナトリウムでpH5に調整し10分間攪拌後、懸濁物を濾過し、濾液中のリン酸をイオンクロマトグラフにより定量分析を行った。
【0055】
使用した処理剤
a.ジルコニウムとして14重量%の濃度のオキシ塩化ジルコニウム水溶液10g
b.ジルコニウムとして14重量%の濃度のオキシ塩化ジルコニウム水溶液10gと硫酸ナトリウム0.29g
c.ジルコニウムとして14重量%の濃度の硫酸ジルコニウム水溶液10g
各処理剤による処理試験の結果は下記のようであった。
a.リンの残存量は10mg/リットルであったが、処理水は白濁した。
b.リンの残存量は14mg/リットルで、処理水は無色透明であった。
c.リンの残存量は37mg/リットルで、処理水は無色透明であった。
【0056】
ジルコニウム源として硫酸ジルコニウムを用いた場合よりオキシ塩化ジルコニウムを用いた方がリンの残存量が少なく、なおかつ別途硫酸塩を添加することによって白濁もなく、良好な処理結果が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】実施例1における処理後のリン残存量を示すグラフである。
【図2】実施例2における処理後のリン残存量を示すグラフである。
【図3】実施例3における処理後のリン残存量を示すグラフである。
【図4】実施例4における処理後のリン残存量を示すグラフである。(正リン酸と亜リン酸、次亜リン酸ではジルコニウムによる除去挙動が異なる。)
【図5】実施例5における処理後のリン残存量を示すグラフである。
【図6】実施例6および実施例7における処理後のリン残存量を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜リン酸及び/又は次亜リン酸を含有する排水にジルコニウム化合物を添加し、該排水のpHを10以下に維持することを特徴とするリン酸含有排水の処理方法。
【請求項2】
亜リン酸及び/又は次亜リン酸を含有する排水中でジルコニウム化合物を加水分解して水和酸化ジルコニウムを析出させた後、引き続き該排水のpHを10以下とすることを特徴とする請求項1に記載の処理方法。
【請求項3】
亜リン酸及び/又は次亜リン酸を含有する排水にジルコニウム化合物を加水分解して水和酸化ジルコニウムを析出させた懸濁液を添加し、引き続き該排水のpHを10以下とすることを特徴とする請求項1に記載の処理方法。
【請求項4】
ジルコニウム化合物の他に硫酸化合物を添加することを特徴とする請求項1〜3に記載のリン酸含有排水の処理方法。
【請求項5】
亜リン酸及び/又は次亜リン酸を含有する排水にジルコニウム化合物を加水分解して水和酸化ジルコニウムを析出させた懸濁液と硫酸化合物を添加し、引き続き該排水のpHを10以下とすることを特徴とする請求項1〜4に記載の処理方法。
【請求項6】
リン酸含有排水にさらに正リン酸を含有することを特徴とする請求項1〜5に記載のリン酸含有排水の処理方法。
【請求項7】
ジルコニウム化合物がオキシ塩化ジルコニウムである請求項1〜6のいずれかに記載のリン酸含有排水の処理方法。
【請求項8】
ジルコニウム化合物及び硫酸化合物を含んでなるリン酸含有排水処理剤。
【請求項9】
オキシ塩化ジルコニウム及び/又はその加水分解物と硫酸塩を含んでなる請求項8に記載のリン酸含有排水処理剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−218471(P2006−218471A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−264142(P2005−264142)
【出願日】平成17年9月12日(2005.9.12)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】