説明

リン酸含有排水の処理方法

【課題】リン酸含有排水中のリン酸をリン酸カルシウムとして分離除去する方法において、生成汚泥容積を大幅に低減する。
【解決手段】第1反応槽1において、リン酸含有排水に、排水中のリン酸をリン酸カルシウムとするために必要な塩化カルシウムを添加するとともにpHを4.5〜6に調整し、第2反応槽2において、pH8〜11に調整した後、沈殿槽4で固液分離するリン酸含有排水の処理方法。沈殿槽4の分離汚泥を第1反応槽1に返送することにより、より一層の汚泥容積の低減を図れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリン酸含有排水の処理方法に係り、特にリン酸含有排水中のリン酸をリン酸カルシウムとして分離除去する方法において、生成する汚泥容積を大幅に低減する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコンウェハを加工する半導体工場、液晶製造工場、塗装の下地処理としてリン酸被膜を形成する自動車工場、その他肥料工場、食品添加剤工場、金属表面処理工場等の各種の工場から排出される排水や、一般家庭排水、農業排水には、リン酸が含まれている。従来、これらのリン酸含有排水中のリン酸の除去方法としては、pH10以上のアルカリ条件下におけるカルシウム化合物との反応でリン酸カルシウムを生成させ、これを沈殿分離して除去する方法が一般的である。
【0003】
しかし、この方法で生成するリン酸カルシウム汚泥は、圧密性が悪いために、処理するリン酸含有排水のリン酸濃度が高くなると、沈殿槽における固液分離が困難となるという問題がある。即ち、沈殿槽では、汚泥容積が沈殿槽容積の40〜50%に達すると、汚泥ゾーンが膨張して汚泥の流出が起こるため、高濃度リン酸含有排水の処理で大量の汚泥が生成する場合には、沈殿槽による連続処理は実質的に困難となる。
【0004】
また、特に、カルシウム化合物としてアルカリ剤との兼用で消石灰(Ca(OH))を添加する場合には、Ca(OH)粒子の表面に難溶性のCa(POが生成し、Ca(OH)の反応性を低下させるために、消石灰を反応の理論量よりも大量に添加することが必要となるという問題もある。
【0005】
従来、Ca(OH)粒子表面でのCa(POの生成を防止して、消石灰を過剰添加することなく処理する方法として、高濃度リン酸含有排水を消石灰で処理する方法において、pH5以下で理論量の消石灰の大部分を添加し、その後アルカリを添加してpH9以上にする方法が提案されている(特許第2598456号公報)。この方法では、pH5以下で消石灰を添加することにより、Ca(OH)粒子表面でのCa(POの生成を防止し、懸濁状リン酸カルシウム系結晶種と共にリン酸イオンとカルシウムイオンを含む系を次いでpH9以上とすることによりリン酸カルシウムを沈殿させる。
【0006】
また、汚泥の返送を行い、返送汚泥とカルシウム化合物とを予め混合してリン酸含有排水に添加することにより、汚泥濃度の向上、即ち汚泥容積の低減を図る方法も提案されている(特許第3468907号公報)。
【特許文献1】特許第2598456号公報
【特許文献2】特許第3468907号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許第2598456号公報に記載される方法では、消石灰の必要添加量を低減することはできるが、この方法では、汚泥容積について全く考慮されておらず、特に高濃度リン酸含有排水の処理を行った場合には後述の実験例1に示すように、汚泥容積が非常に大きくなるために、沈殿槽での連続処理が困難であるという欠点がある。
【0008】
一方、特許第3468907号公報の汚泥返送法では、汚泥を返送しない場合に比べて汚泥濃度が約10倍となり、従って汚泥容積は1/10となるが、この方法では、返送汚泥とカルシウム化合物を混合するための混合槽が必要となり、設備スペースの面で問題がある。即ち、返送汚泥とカルシウム化合物との混合槽は、システムの構成上、リン酸含有排水にカルシウム化合物を添加して反応させる反応槽の上方に設置されるため、室内設置型の処理設備では、高さ方向のスペースの確保が困難であり、また、既存の設備を改造する場合には、大幅な改造工事が必要となったり、耐震性や重量増加による強度面での負荷増加のために構造上の問題で適用が困難な場合もある。
【0009】
本発明は上記従来の問題点を解決し、簡単な設備で生成汚泥容積を大幅に低減することができるリン酸含有排水の処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明(請求項1)のリン酸含有排水の処理方法は、リン酸含有排水に、排水中のリン酸をリン酸カルシウムとするために必要な塩化カルシウムを添加するとともにpHを4.5〜6に調整する第1反応工程と、第1反応工程処理水をpH8〜11に調整する第2反応工程と、第2反応工程処理水を固液分離する固液分離工程とを有することを特徴とする。
【0011】
請求項2のリン酸含有排水の処理方法は、請求項1において、固液分離工程で分離した汚泥を第1反応工程に返送することを特徴とする。
【0012】
請求項3のリン酸含有排水の処理方法は、請求項1又は2において、第1反応工程及び第2反応工程において、非カルシウム系アルカリ剤を添加してpHを調整することを特徴とする。
【0013】
請求項4のリン酸含有排水の処理方法は、請求項1ないし3において、塩化カルシウムの添加量が、リン酸含有排水中のリン酸をすべてCa(POOHとするに必要なCaClの理論量(Caとして)をX(mg/L)とした場合、X〜X+500mg/Lであることを特徴とする。
【0014】
なお、以下において、リン酸含有排水中のリン酸をすべてCa(POOHとするに必要なCaClの理論量(Caとして)を「理論Ca量」と称す場合がある。
【発明の効果】
【0015】
本発明のリン酸含有排水の処理方法によれば、後述の表2の結果からも明らかなように、生成汚泥容積を従来法に比べて1/4〜1/7と大幅に低減することができる。このため、高濃度リン酸含有排水の処理においても沈殿槽での連続処理が可能となる。汚泥容積の低減は汚泥濃度の増加と同義であり、従って、本発明によれば、脱水性に優れた高濃度汚泥を得ることができ、排出汚泥の処理効率も向上する。
【0016】
請求項2の方法によれば、汚泥の返送を行うことにより、より一層の汚泥容積の低減を図ることができる。なお、この方法において、汚泥と塩化カルシウムとの混合槽は不要であり、汚泥はそのまま第1反応工程に添加することができるため、設備スペースの増大、反応槽の増加等の問題はなく、既存の設備にも容易に適用することができる。
【0017】
なお、本発明による汚泥容積の低減効果の作用機構の詳細は明らかではないが、次のように推定される。
【0018】
一般的には、リン酸含有排水を消石灰(Ca(OH))で処理する場合、反応は下記式に従って進行すると考えられる。
6HPO+6Ca(OH)→6CaHPO+12HO 中性 ‥(1)
6CaHPO+3Ca(OH)→3Ca(PO(無定型)
+6HO アルカリ性 ‥(2)
3Ca(PO+Ca(OH)→2Ca(POOH(結晶型)
アルカリ性 ‥(3)
【0019】
特許第2598456号公報の方法は、pH5以下でリン酸カルシウムをある程度析出させておき、次にアルカリ性にして無定型で嵩高いCa(POを析出させるため、汚泥容積は大きくなると考えられる。
【0020】
これに対して、カルシウム化合物として塩化カルシウム(CaCl)を必要量添加し、NaOH等のアルカリを用いてpHを2段階で調整する本発明の方法では、pH4.5〜6の第1反応工程においてリン酸カルシウムの大部分を析出させるが、必要Caを十分共存させておくことで、上記(3)式の反応までが完結して結晶性のCa(POOHが生成し、第2反応工程では、pHを8〜11とすることにより、未反応の少量のPOを析出させることで、放流可能な処理水を得ると共に低容積のCa(POOHを析出させることができる。
【0021】
なお、本発明において、第1反応工程で、Ca(POOHが生成していることは、後述の実験例2の結果からも明らかである。すなわち、図2(a)においてpH6にするためのNaOHは7000mg/Lであり、これをpH11にするためのアルカリは500mg/Lでよく、図2(b)においてはpH5にするためのNaOH8500mg/Lに対しその後pH11にするには1000mg/Lの追加でよい。この添加アルカリ量の関係をpH11/pH5〜6で示せば、図2(a)では500/7000→0.07/1、図2(b)では1000/8500→0.012/1であり、わずかのNaOH量でpH6からpH11に到達することから、pH6以下で反応は終了している。
【0022】
逆に、従来の考え方により前記(1)式がpH6以下で起き、pH11で(3)式の反応が起きるとすれば、この反応は下式で表される。
3CaHPO+2Ca(OH)→Ca(POOH
【0023】
すなわち、出発物質がHPOの場合、これにCa(OH)を添加してCaHPOとし、次いでCa(POOHにするための添加アルカリ量の関係はpH11/pH5〜6=2/3→0.67/1となる。この当量関係では上記の当量関係が説明できず、本発明の方式ではpH6以下で結晶性のCa(POOHが生成していると考えるのが妥当である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に図面を参照して本発明のリン酸含有排水の処理方法の実施の形態を詳細に説明する。
【0025】
図1は本発明のリン酸含有排水の処理方法の実施の形態を示す系統図である。
【0026】
図1の方法では、原水(リン酸含有排水)をまず第1反応槽1に導入して、必要量の塩化カルシウム(CaCl)を添加すると共に、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)等の、消石灰以外の非カルシウム系アルカリ剤を添加してpHを4.5〜6に調整する。
【0027】
この第1の反応槽1で添加するCaCl量は、原水中のリン酸をすべてリン酸カルシウムとするために必要な量であり、通常、前述の理論Ca量Xmg/Lに対してX〜X+500mg/L、特にX+50〜X+500mg/Lの範囲とすることが好ましい。このCaCl添加量が少な過ぎると原水中のリン酸を十分に除去し得ず、多過ぎてもそれ以上の処理効果を得ることはできず、不経済である。
【0028】
後述の実験例2に示すように、第1反応槽1におけるリン酸カルシウムの反応はpH4.5で完結すると考えられるため、第1反応槽1における調整pHは4.5以上とする。ただし、この第1反応槽1における調整pHが過度に高いと、無定型のCa(POが析出し、本発明の生成汚泥の圧密化の効果を十分に得ることができないことから、第1反応槽1における調整pHは6以下とする。第1反応槽1の好ましい調整pHは5〜6である。
【0029】
可能であれば、図2に示すようなpH滴定曲線を作成し、pHが急上昇する反応終点を求めておけば、pH設定値はより確実となる。
【0030】
なお、図1においては、第1反応槽1に、後段の沈殿槽4の分離汚泥の一部が返送汚泥として添加されている。この汚泥の返送は必ずしも必要とされないが、図1に示す如く、汚泥の返送を行うことにより、第1反応槽1で沈降性に富む汚泥の生成を促進することができ、より一層良好な汚泥の減容化効果を得ることができる。
【0031】
汚泥の返送量は、少な過ぎると汚泥返送による上記効果を十分に得ることができず、多過ぎると必要とする反応槽容積が課題となり、また、処理水が過剰返送汚泥のために白濁し、好ましくない。一般的に、汚泥返送量は、第1反応槽1で発生するリン酸カルシウムの5重量倍以上であれば上記促進剤として有効に作用する。ただし、汚泥返送量が多く、例えば第1反応槽1で発生するリン酸カルシウムの50倍以上であると、処理水が白濁するため、汚泥返送量は、第1反応槽1で生成するリン酸カルシウムの5〜20倍程度とするのが好ましい。
【0032】
なお、PO−P:1000mg/Lの原水の発生汚泥量は、3P→Ca(POOH(分子量502)の反応によれば、Ca(PO/3P≒5より、概略5000mg/Lである。第1反応槽1で生成するリン酸カルシウムの約10倍の汚泥を返送する場合、返送汚泥量は5000×10=50000mg/Lであり、汚泥濃度が10%の場合、原水1部に対して0.5部の汚泥を返送すれば良いことになる。
【0033】
この第1反応槽1の反応時間(滞留時間)は短過ぎるとリン酸カルシウム生成反応が十分に進行せず、長過ぎてもそれ以上の処理効果は得られず、処理効率が低下して好ましくない。従って、この第1反応槽1の反応時間は5〜30分、特に10〜20分とすることが好ましい。
【0034】
第1反応槽1の流出水は、次いで第2反応槽2に導入され、この第2反応槽2で、更にNaOH、KOH等の、消石灰以外の非カルシウム系アルカリ剤が添加されてpH8〜11に調整される。
【0035】
この第2反応槽2における調整pHが8未満ではリン酸が完全に除去されず、11を超えると注入アルカリ量が増えるのみで、経済的に不利となる。従って、第2反応槽2の調整pHは8〜11、好ましくは9〜10とする。
【0036】
この第2反応槽2の反応時間(滞留時間)は短過ぎるとリン酸とカルシウムとの反応が十分に進行せず、長過ぎてもそれ以上の処理効果は得られず、処理効率が低下して好ましくない。従って、この第2反応槽2の反応時間は3〜30分、特に5〜10分とすることが好ましい。
【0037】
第2反応槽2の流出水は次いで、凝集槽3に導入され、高分子凝集剤(ポリマー)の添加により凝集処理される。このポリマーとしては、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド、尿素−ホルマリン樹脂などのノニオン性ポリマー、ポリアミノアルキルメタクリレート、ポリエチレンイミン、ハロゲン化ポリジアリルアンモニウム、キトサンなどのカチオン性ポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド部分加水分解物、部分スルホメチル化ポリアクリルアミド、ポリ(2−アクリルアミド)−2−メチルプロパン硫酸塩などのアニオン性ポリマーを使用することができる。これらのポリマーの中で、ノニオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーは凝集効果に優れているので、特に好適に使用することができる。
【0038】
ポリマーの添加量は、用いるポリマーの種類によっても異なるが、通常2〜10mg/L程度である。
【0039】
凝集槽3の凝集処理水は次いで沈殿槽4に導入されて固液分離され、上澄水は処理水として系外へ排出され、分離汚泥の一部は返送汚泥として第1反応槽1に返送され、残部は系外へ排出される。
【0040】
この沈殿槽4の形状には特に制限はなく、例えば、中央駆動型シックナー、周辺駆動型クラリファイヤー、水平流型沈殿装置などを使用することができる。なお、凝集処理水の固液分離は、沈殿槽に限らず、膜分離装置、遠心分離機など他の固液分離手段を使用してもよい。
【0041】
系外へ排出された汚泥は、脱水処理された後処分されるが、本発明で得られる汚泥は、高濃度で脱水性に優れるため、効率的に脱水処理することができる。
【実施例】
【0042】
以下に実験例、実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。
【0043】
実験例1
特許第2598456号公報に記載される方法では、汚泥容量が多く、沈殿槽での連続処理が困難であることを実証する実験を行った。
【0044】
表1に示すリン酸濃度の各リン酸含有排水に硫酸を500mg/L添加し、消石灰を添加してpHを4.2に調整して10分間反応させた。次いで、更に消石灰をpHが10となるように添加して10分間反応させ、その後静置10時間での汚泥容積(SV10)を測定し、結果を表1に示した。
【0045】
【表1】

【0046】
前述の如く、汚泥容積が沈殿槽の40〜50%になると汚泥ゾーンの膨張、汚泥の流出で沈殿槽における連続処理が困難となる。特許第2598456号公報の方法では、PO−P:1000mg/L以上の高濃度リン酸含有排水では連続処理が困難であることが分かる。
【0047】
実験例2
リン酸含有排水に必要量のCaClとNaOHを添加した場合、pH4.5の条件で、CaClとリン酸との反応が実質的に完結してCa(POOHが生成していることを確認する実験を行った。
【0048】
まず、pH:2.2、PO−P:2350mg/Lの液晶製造排水(理論Ca量は5050mg/L)に、CaClを5200mg/L(as Ca)添加すると共にNaOHの添加量を種々変えて、pHを調べた。
【0049】
その結果、図2(a)に示す如く、NaOHの添加量約7000mg/LでpH4.5〜6に達し、その後はわずか500mg/L添加するだけで、pH11に急激に上昇しており、pH4.5〜6でCa(POOHの析出反応が既に終了していることが確認された。
【0050】
また、この反応が供試排水に特有なものではないことを確認するために、試薬のHPOを水道水に溶解してPO−P:2000mg/Lとした合成水(理論Ca量は4300mg/L)について、CaClを4500mg/L(as Ca)添加し、同様にNaOHの添加量を種々変えてpHを調べたところ、図2(b)に示す如く、やはりNaOH添加量8500mg/LでpHが4.5になり、その後わずかのNaOH添加量でpH11に急激に変化しており、pH4.5でCa(POOHの析出反応が既に終了していることが確認された。
【0051】
これらの結果から、Ca(POOHの生成は、弱酸性で、少過剰のCaClが存在すれば十分であることが確認された。
【0052】
実施例1
図1に示す方法(ただし、汚泥返送は行わず。)で、pH:2.2、PO−P:2350mg/Lの液晶製造排水(理論Ca量は5050mg/L)を原水として、1L/hrの通水量で処理を行った。各槽の滞留時間は次の通りとした。凝集槽3の凝集剤としては、栗田工業(株)製アクリルアミド系ポリマー「クリフロックPA−331」を10mg/L添加した。
第1反応槽1:10分
第2反応槽2:5分
凝集槽3:5分
沈殿槽(容量5L)4:5時間
【0053】
第1反応槽1にCaClを5200mg/L(as Ca)添加すると共にNaOHを添加してpH5に調整した。第2反応槽2では更にNaOHを添加してpH10に調整した。
【0054】
このときの処理水のPO−P濃度と、得られた汚泥の汚泥容積(SV24:静置24時間での汚泥容積)を調べ、結果を表2に示した。
【0055】
実施例2
実施例1において、沈殿槽4からの汚泥を第1反応槽1に3L/hrで返送したこと以外は同様にて処理を行い、得られた処理水のPO−P濃度と汚泥容積(SV24)を調べ、結果を表2に示した。
【0056】
なお、本実施例では、汚泥の返送を行っても実施例1と同等の滞留時間を確保することができるように、各反応槽1,2及び凝集槽3の容積は実施例1の場合の4倍とした。
【0057】
比較例1
実施例1において、CaClとNaOHの代りにCa(OH)を用い、第1反応槽1にCa(OH)を添加してpH5とし、第2反応槽2に更にCa(OH)を添加してpH10としたこと以外は同様にして処理を行い、得られた処理水のPO−P濃度と汚泥容積(SV24)を調べ、結果を表2に示した。
【0058】
比較例2
実施例2において、CaClとNaOHの代りにCa(OH)を用い、汚泥の返送を行うと共に、第1反応槽1にCa(OH)を添加してpH5とし、第2反応槽2に更にCa(OH)を添加してpH10としたこと以外は同様にして処理を行い、得られた処理水のPO−P濃度と汚泥容積(SV24)を調べ、結果を表2に示した。
【0059】
比較例3
実施例1において、第1反応槽1のpHが10となるようにNaOHを添加し、第2反応槽2も同様にpH10を維持するように調整を行ったこと以外は同様にして処理を行い、得られた処理水のPO−P濃度と汚泥容積(SV24)を調べ、結果を表2に示した。
【0060】
比較例4
実施例3において、第1反応槽1のpHが10となるようにCa(OH)を添加し、第2反応槽2も同様にpH10を維持するように調整を行ったこと以外は同様にして処理を行い、得られた処理水のPO−P濃度と汚泥容積(SV24)を調べ、結果を表2に示した。
【0061】
【表2】

【0062】
表2より、本発明によれば、汚泥容積の低減が可能となり、更に汚泥の返送を行うことにより、より一層の汚泥容積の低減が図れることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明のリン酸含有排水の処理方法は、シリコンウェハを加工する半導体工場、液晶製造工場、塗装の下地処理としてリン酸被膜を形成する自動車工場、その他肥料工場、食品添加剤工場、金属表面処理工場から排出される排水や、一般家庭排水、農業排水等の各種のリン酸含有排水の処理に有効であるが、特に、シリコンウェハを加工する半導体工場、液晶製造工場、塗装の下地処理としてリン酸被膜を形成する自動車工場排水等のリン酸を主体とする排水の処理に好適であり、とりわけ、PO−P:200mg/L以上、例えば500〜5000mg/Lというような高濃度リン酸含有排水の処理に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明のリン酸含有排水の処理方法の実施の形態を示す系統図である。
【図2】実験例2における滴定曲線を示すグラフであり、(a)図は供試水が液晶製造排水の場合、(b)図は供試水が合成水の場合を示す。
【符号の説明】
【0065】
1 第1反応槽
2 第2反応槽
3 凝集槽
4 沈殿槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン酸含有排水に、排水中のリン酸をリン酸カルシウムとするために必要な塩化カルシウムを添加するとともにpHを4.5〜6に調整する第1反応工程と、第1反応工程処理水をpH8〜11に調整する第2反応工程と、第2反応工程処理水を固液分離する固液分離工程とを有することを特徴とするリン酸含有排水の処理方法。
【請求項2】
請求項1において、固液分離工程で分離した汚泥を第1反応工程に返送することを特徴とするリン酸含有排水の処理方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、第1反応工程及び第2反応工程において、非カルシウム系アルカリ剤を添加してpHを調整することを特徴とするリン酸含有排水の処理方法。
【請求項4】
請求項1ないし3において、塩化カルシウムの添加量が、リン酸含有排水中のリン酸をすべてCa(POOHとするに必要なCaClの理論量(Caとして)をX(mg/L)とした場合、X〜X+500mg/Lであることを特徴とするリン酸含有排水の処理方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−142191(P2006−142191A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−334792(P2004−334792)
【出願日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】