説明

リン酸質肥料の製造方法およびリン酸質肥料

【課題】枯渇資源である高価なリン鉱石を用いることなく、低コストでリン資源のリサイクル促進を図ることができるリン酸質肥料の製造方法およびリン酸質肥料を提供する。
【解決手段】有機性廃棄物の炭化物をリン源として、これを熱処理することによりリン酸質肥料を製造する。炭化炉(1)において生させられた炭化物は、肥料製造炉(3)に供給され、炭化物が供給された肥料製造炉(3)の炉内では、補給用のリン鉱石および蛇紋岩や炭酸ナトリウム等の副資材がさらに供給され、燃料の燃焼または電力の印加により炉内を加熱して、リン酸質肥料を生じさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リン系の化学肥料であるリン酸質肥料の製造方法およびリン酸質肥料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、リン鉱石をリン源としてリン酸質肥料である熔成リン肥、焼成リン肥を製造する方法が知られている。
【0003】
熔成リン肥および焼成リン肥の製造方法の一例を挙げる。
【0004】
熔成リン肥は、図2に示すように、リン鉱石にマグネシウム源となる蛇紋岩を加えて混合し、場合によってはさらにケイ砂を添加して、電気炉または重油燃焼による平炉による溶解炉を用いて1300〜1450℃に加熱溶融し、融液を水で冷却することによって製造される。
【0005】
また、焼成リン肥は、図3に示すように、リン鉱石に炭酸ナトリウムとリン酸液を添加し、これを造粒した後、焼成炉において重油の燃焼により1300〜1500℃に加熱し、水蒸気を吹き込みながら焼成して脱フッ素することにより製造される。
【0006】
しかしながら、リン酸質肥料の原料であるリン鉱石は埋蔵量が限られている枯渇資源であり、世界的な食糧増産の影響からその価格が高騰を続けている。特に、わが国では、リン肥料およびその原料であるリン鉱石の全量を輸入で賄っており、前記のように枯渇資源であることと世界的な食糧増産による価格の高騰化から輸出を制限している国もあり、今後ますますリン肥料およびその原料であるリン鉱石は入手が困難になることは明らかである。
【0007】
リン肥料は植物の生産性向上のために必要量よりも過剰に施用されている。また、リンを含む有機性廃棄物の埋立てや廃棄物由来の肥料(堆肥)施用が重なり、リンの土壌蓄積や水域への流出が問題視されている。そこで、廃棄物から薬品により有効成分であるリン成分を抽出する等の技術が開発されている。
【0008】
しかしながら、一般的なリン回収技術は、廃棄物を焼却することでリンを濃縮し、溶液中で固定・回収する方法であるが、エネルギーの有効利用を考慮すると、大規模な焼却により廃熱をボイラ等で回収しなければ廃棄物が保有するエネルギーを利用しにくく、分散型の資源である有機性廃棄物ではエネルギーを有効利用しにくいと言え、また、薬品コストにより経済性が悪い等の理由もあって、リサイクルされている量は僅かである。
【0009】
畜産系や食品廃棄物の堆肥化は一般的に行われているが、需要時期が限られる、施肥作業性が悪い、成分が安定しない等の理由により十分に利用されているとは言い難い。
【0010】
また、畜産系の廃棄物や下水汚泥等の有機性廃棄物から、肥料として使用できる炭化物を製造する方法が知られている(特許文献1、2)。
【0011】
このような炭化処理は、従来から知られている技術であり、廃棄物由来の炭化物は土壌改良剤、水質浄化剤および肥料として利用されているが、販売単価が安い、肥料として使用する場合には化学肥料の併用が必要である等の問題があり、炭化処理システムだけで継続的に資源循環させることは困難である。
【特許文献1】特開2002−146360号公報
【特許文献2】特開2007−119740号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、枯渇資源である高価なリン鉱石を用いることなく、低コストでリン資源のリサイクル促進を図ることができるリン酸質肥料の製造方法およびリン酸質肥料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明は、有機性廃棄物の炭化物をリン源として、これを熱処理することによりリン酸質肥料を製造する方法である。
【0014】
有機性廃棄物は、家畜排せつ物、堆肥等の畜産系廃棄物、下水汚泥等の生活系廃棄物、食品廃棄物等の生物由来の廃棄物であり、植物または動物細胞由来の有機物から主としてなるものであることから、リンを少なくとも含有している。
【0015】
これらの有機性廃棄物の中で、畜産系廃棄物が好ましいものとして挙げることができる。それは以下の理由による:
・畜産系廃棄物である豚ふん、鶏ふんにはリンが多く含まれている;
・家畜排せつ物法が施行され、排せつ物はその殆どが堆肥処理されており、かなりの水分が発酵熱により蒸発する;
・豚ふんを堆肥化したものは、生産地域が集中していること、飼料にて供給する銅、亜鉛が残留していて土壌蓄積が懸念されること等の理由から特に余剰率が高く、焼却や埋立て処分されている場合もある。
【0016】
しかしながら、有機性廃棄物は、水分や塩素、硫黄等の酸性成分も含んでいるので、直接肥料製造炉に供給すると、燃料使用量が増加すると共に、酸性ガス処理装置を別途設けることが必要である。
【0017】
したがって、上記の有機性廃棄物を炭化物に変換すれば、炭化物にする工程で水分や酸性成分が除去され、上記の問題は解消される。
【0018】
また、有機性廃棄物中に含まれるリンの濃度は低いが、炭化物に変換する工程で、その濃度を高くすることができる。炭化工程は、焼却よりも低温の処理であり、リンがガス中に揮散せずに炭化物中に残留する割合が高い。
【0019】
さらに、水分や酸性成分が除去されているので、輸送面や肥料製造炉への供給量を低減させる面での効果もある。
【0020】
以上に説明したように、本発明では、有機性廃棄物の炭化物をリン源として利用するので、効率良くリン酸質肥料を製造することができる。
【0021】
また、炭化処理することにより有機性廃棄物から炭化物にエネルギー(発熱量)を保有させ、熱源のために肥料製造炉に供給されるべき化石燃料や電力の使用量を低減させることができ、地球温暖化防止にも寄与する。
【0022】
前記炭化物の熱処理は、燃料を加えるか、または電力を付与することに行われる。
【0023】
上記本発明の方法において、上記炭化物のリン含量が十分でない場合にはリン鉱石が添加される。
【0024】
また、本発明は、上記方法によって製造されたリン酸質肥料である。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、有機性廃棄物の炭化物をリン源として、これを熱処理することによりリン酸質肥料を製造する方法であるので、廃棄または廃棄同然の利用しかできなかった有機性廃棄物を有用資源としてリサイクル可能であり、高価なリン鉱石を用いることなく、低コストでリン資源のリサイクル促進を図ることができる。
【0026】
また、有機性廃棄物を炭化処理した炭化物をリン源として利用するので、処理を施していない有機性廃棄物と比較して体積が低減するので輸送面で経済性が増す。また、炭化処理により、有機性廃棄物の臭い成分が除去されると共に、不要な水分や酸成分が除去される。さらに、低濃度で存在するリン成分を濃縮することができる。また、炭化物自体がエネルギー(発熱量)を保有するので、肥料製造炉での化石燃料や電力を低減させることも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明のリン酸質肥料の製造方法およびリン酸質肥料について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0028】
図1は、本発明のリン酸質肥料の製造方法を説明するフローシートである。
【0029】
炭化炉(1)は、有機性廃棄物を炭化するための炉であり、有機性廃棄物が搬入された炉内において、熱風発生炉(2)から送られる熱風によって有機性廃棄物を加熱することにより炭化物に変換する。熱風発生炉(2)は、有機性廃棄物から発生する乾留ガスと、場合によっては助燃剤を燃焼することにより炭化に必要な熱源を発生させる炉である。
【0030】
炭化炉(1)において生させられた炭化物は、肥料製造炉(3)に供給される。
【0031】
炭化物が供給された肥料製造炉(3)の炉内では、補給用のリン鉱石および蛇紋岩や炭酸ナトリウム等の副資材がさらに供給され、燃料の燃焼または電力の印加により炉内を加熱して、リン酸質肥料を生じさせる。
【0032】
肥料製造炉(3)で生じたリン酸質肥料は、次に、冷却器(4)に送られ、ここで、室温まで冷却される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明のリン酸質肥料の製造方法を説明するフローシートである。
【図2】従来の熔成リン肥の製造方法を説明するフローシートである。
【図3】従来の焼成リン肥の製造方法を説明するフローシートである。
【符号の説明】
【0034】
1 炭化炉
2 熱風発生炉
3 肥料製造炉
4 冷却器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機性廃棄物の炭化物をリン源として、これを熱処理することによりリン酸質肥料を製造する方法。
【請求項2】
燃料を加えるか、または電力を付与することにより前記炭化物の熱処理を行う、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
リン鉱石を添加する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の方法を用いて製造されたリン酸質肥料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−24091(P2010−24091A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−187025(P2008−187025)
【出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【出願人】(000005119)日立造船株式会社 (764)
【Fターム(参考)】