説明

リール

【課題】 ハブに巻回される記録テープに変則的な巻回傾向が生じ難くできるリールの提供を課題とする。
【解決手段】 幅が1/2インチとされた記録テープTが巻回される周面を有し、記録テープTが巻回されていないときの周面の上端部における最大直径S1と下端部における最大直径S2の差ΔSが0.03mm以下とされたハブ62と、対向間隔Wが12.70mm〜12.95mmとされ、記録テープTのエッジを規制する上フランジ64及び下フランジ66と、を備えたリール60において、記録テープTを巻回する前と巻回した後のハブ62の周面の上端部における最大半径R1の変化量ΔR1と下端部における最大半径R2の変化量ΔR2の差ΔRを0.025mm未満とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主にコンピューター等の記録再生媒体として使用される磁気テープ等の記録テープが巻装されるリールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、コンピューター等のデータ記録再生媒体として使用されている磁気テープ等の記録テープを単一のリールに巻装し、そのリールを合成樹脂製のケース内に回転可能に収容してなる記録テープカートリッジが知られている。この記録テープの先端(自由端)には、リーダーピンやリーダーテープ、リーダーブロックといったリーダー部材が設けられており、そのリーダー部材をドライブ装置側に設けられた引出手段が記録テープカートリッジの開口から引き出し、それに固着された記録テープをドライブ装置側の巻取リールに巻装させるようになっている。
【0003】
このような記録テープカートリッジのリールにおいて、記録テープは通常、そのリールハブの外周面に巻回される。リールハブの上下には、それぞれ上フランジと下フランジが設けられており、この上下フランジによって、記録テープは、その上下方向の高さ位置が規制されたり、巻姿が良好となるように保持され、更には、不使用時において過度のダメージが防止されたり、走行安定性が向上されたりしている。
【0004】
また一方で、記録テープは、カーバチャー(湾曲値)と言われる長手方向の反りを有しており、その反り癖によって、記録テープは、図8で示すように、上フランジ64に沿って(又は上フランジ64寄りに)巻回されたり、図9で示すように、下フランジ66に沿って(又は下フランジ66寄りに)巻回されたりする。記録テープにおけるカーバチャー(湾曲値)は、1m当たりの反り量で表され、昨今の記録テープは0mm〜±1mm前後に収まっている。「±1mm」というのは、一方に反っている場合をプラス、他方に沿っている場合をマイナスと定義したことによる。
【0005】
しかしながら、そのカーバチャー(湾曲値)が大きいと(例えば±1mm/m前後であると)、上下フランジは、記録テープの上下方向の高さ規制をするだけではなく、記録テープの端部(エッジ)を傷めることがあった。これが、カーバチャー(湾曲値)が大きい場合の上下フランジのデメリットである。ところが、記録テープのカーバチャー(湾曲値)が小さい(例えば0.0mm/m〜±0.3mm/mとされた)場合でも、上記のような問題が発生することがあった。
【0006】
すなわち、リールハブの外周面の高さ方向略中央に記録テープを巻回したときに、リールハブに近い側では、上フランジ又は下フランジに沿って巻回されることがあった。このような巻回傾向であると、上フランジ又は下フランジを記録テープが押し上げるように巻回されて行くので、記録テープのエッジを傷める結果となる。
【0007】
このような現象に対しては、上下フランジの間隔を広げれば、ある程度は改善できることになるが、上下フランジの間隔は、ある程度狭くないと、記録テープの上下方向(幅方向)の規制が殆どできないことになるため、一般に巻姿が良好にならない問題がある(特に、途中で上下方向に飛び出す現象が起きることがある)。
【0008】
また、記録テープのカーバチャー(湾曲値)が小さい(例えば0.0mm/m〜±0.3mm/mとされた)場合に、図7で示すように、途中まで、上フランジ64(又は下フランジ66)に沿って巻回されながら、その途中から段差Nをなしてリールハブ62の高さ方向略中央寄りに巻回されるという現象も起きることがあった。
【0009】
この場合は、一見すると、元の記録テープの巻回傾向(カーバチャーが小さく、傾かないで略水平に巻回される傾向)に戻るため、良いように見えるが、段差Nをなした部分では、記録テープのエッジが、それに隣接して巻回される記録テープの磁性面を傷つけることがあり、高温・高湿環境で保存した場合には、サーボ信号の読み取り不良等の様々な問題を引き起こす懸念があった。また、その段差Nが1個だけできるとは限らず、時として複数個できることもあった。このような現象は、記録テープへのダメージという観点からして好ましくない。
【0010】
また、期待する巻癖とは反対方向に記録テープが巻回されることがあった。つまり、例えば+0.7mm/mのカーバチャー(湾曲値)を有し、仮に上フランジに沿って巻回される巻癖のある記録テープであるとした場合に、リールハブの外周面付近では、下フランジに沿って巻回され、途中で上フランジに沿って巻回されようとする傾向に変化することがあった。このような場合でも、上記したような問題が発生しやすく、記録テープへのダメージという観点からして好ましくない。
【0011】
なお、この対策として、従来では、例えばリールハブの形状を鼓状に形成したり(例えば、特許文献1参照)、上端側の径が下端側の径よりも大径になるようにリールハブに傾斜角度を形成したり(例えば、特許文献2参照)することが提案されたが、記録テープの変則的な巻回傾向を抑止する対策としては、未だ改善の余地があるのが現状である。
【特許文献1】特開平8−297952号公報
【特許文献2】特開2004−134060号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、本発明は、ハブに巻回される記録テープに変則的な巻回傾向が生じ難くできるリールを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するために、本発明に係る請求項1に記載のリールは、幅が1/2インチとされた記録テープが巻回される周面を有し、該記録テープが巻回されていないときの前記周面の上端部における最大直径と下端部における最大直径の差が0.03mm以下とされたハブと、対向間隔が12.70mm〜12.95mmとされ、前記記録テープのエッジを規制する上フランジ及び下フランジと、を備えたリールにおいて、前記周面に前記記録テープを巻回する前と巻回した後の該周面の上端部における最大半径の変化量と下端部における最大半径の変化量の差が0.025mm未満とされたことを特徴としている。
【0014】
そして、請求項2に記載のリールは、請求項1に記載のリールにおいて、前記周面に前記記録テープを巻回した後の該周面の上端部における最大半径と下端部における最大半径の差が0.015mm以下とされたことを特徴としている。
【0015】
請求項1及び請求項2に記載の発明では、記録テープを巻回する前と巻回した後におけるハブの周面の上端部における最大半径の変化量と下端部における最大半径の変化量の差が0.025mm未満とされ、更に、記録テープを巻回した後におけるハブの周面の上端部における最大半径と下端部における最大半径の差が0.015mm以下とされているので、ハブに巻回される記録テープにおいて変則的な巻回傾向が生じ難くなる。したがって、記録テープはハブの高さ方向略中央に略水平に巻回される。
【0016】
なお、請求項3に記載のリールは、請求項1又は請求項2に記載のリールにおいて、前記記録テープの湾曲値が0mm〜0.3mmであることを特徴としている。
【0017】
そして、請求項4に記載のリールは、請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載のリールにおいて、前記記録テープのテンションが80g〜100gであることを特徴としている。
【0018】
また、請求項5に記載のリールは、請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載のリールにおいて、前記記録テープの長さが、600m〜950mであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明によれば、ハブに巻回される記録テープに変則的な巻回傾向が生じ難くできるリールを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の最良な実施の形態について、図面に示す実施例を基に詳細に説明する。なお、説明の便宜上、図1、図2で示す矢印A方向を記録テープカートリッジ10のドライブ装置への装填方向とし、それを記録テープカートリッジ10の前方向(前側)とする。そして、矢印A方向と直交する矢印B方向を右方向(右側)とする。
【0021】
まず最初に、記録テープカートリッジ10について説明する。図1、図2で示すように、記録テープカートリッジ10は、合成樹脂製の上ケース20と下ケース40とが、互いにその周壁24、44を突き合わせるとともに、超音波溶着等により接合されてなる略矩形箱状に形成されており、その内部には、情報記録再生媒体である磁気テープ等の記録テープTを巻装した単一のリール60が回転可能に収容されている。
【0022】
リール60は、円筒状のリールハブ62と、リールハブ62の上端外周から径方向に張出した上フランジ64とが合成樹脂により一体成形され、上フランジ64と略同形状の下フランジ66がリールハブ62の下端に超音波溶着等により接合されている。そして、リールハブ62の外周面に記録テープTが巻装されている。
【0023】
また、リールハブ62の下フランジ66側は、中央に透孔68Aが穿設された底壁68により閉塞され、その底壁68の下面外周部に、リール60を回転駆動するためのリールギア70が環状に刻設されている。そして、そのリールギア70の内側には、透孔68Aよりも若干大きめな透孔72Aが穿設された環状金属板のリールプレート72が、インサート成形等により取り付けられている。また、下ケース40の中央には円形状の開孔50が穿設され、リール60の下面に環状に設けられたリールギア70、リールプレート72等が、その開孔50から露出するようになっている。
【0024】
したがって、このリール60は、リールプレート72がドライブ装置の回転シャフト(図示省略)に設けられたマグネット(図示省略)で吸着され、リールギア70がその回転シャフトに設けられた駆動ギア(図示省略)に噛合されることにより、回転駆動される。なお、リールギア70の外側には環状溝74が設けられており、不使用時(記録テープカートリッジ10がドライブ装置に装填されないとき)には、開孔50の周縁部に立設されたリブ54が、その環状溝74に嵌入されることで、防塵が図れるようになっている。
【0025】
また、上ケース20の天板22内面と、下ケース40の底板42内面には、それぞれ内壁としての遊動規制壁26、46が、開孔50と同軸的な円筒状に部分的に立設されており、それらの各端部が周壁24、44と連設されることで、リール60の設置空間と、それより外側の空間とを仕切っている。つまり、遊動規制壁26、46の内部にリール60が収容される収容空間が形成され、リール60は、その遊動規制壁26、46によってガタつかないように保持されている。
【0026】
また、リールハブ62の内側に臨む底壁68の上面外周部にもリールギア76が環状に刻設されており、そのリールハブ62の内側に挿設する制動部材80の制動ギア86と噛合するようになっている。この制動部材80は、記録テープカートリッジ10の不使用時に、リール60の回転を防止するために設けられるものであって、下面外周部に制動ギア86が環状に刻設された円板状に形成されている。
【0027】
制動部材80の上面には、平面視略U字状の柱状凸部(以下、U字状凸部という)84が開放側を対向させて立設されており、上ケース20の天板22の内面中央に2本並んで突設された係止ピン34が、それぞれそのU字状凸部84の内面に挿入されることによって、制動部材80の回転が阻止されるようになっている。
【0028】
そして、上ケース20の天板22の内面中央で係止ピン34の外側には環状突起36が突設され、かつ、制動部材80の上面でU字状凸部84の外側には環状溝82が設けられており、コイルばね78は、その環状突起36の内側(又は外側)に一端が嵌入され、環状溝82内に他端が嵌入されて、上ケース20と制動部材80との間で保持されるようになっている。
【0029】
したがって、そのコイルばね78によって制動部材80が下方に向かって付勢され、その制動ギア86がリールギア76に噛合することにより、不使用時において、リール60が不用意に回転しないようになっている。また、制動部材80の下面中央には、透孔68Aに挿通可能な略円柱状突起88が突設されている。
【0030】
したがって、記録テープカートリッジ10の使用時にあっては、ドライブ装置の回転シャフト中央に設けられた係合部材(図示省略)により、コイルばね78の付勢力に抗して、突起88を介して制動部材80が押し上げられ、制動ギア86がリールギア76から離間して両者の噛合が解除されるようになっており、これによって、リール60が回転可能となるように構成されている。
【0031】
また、記録テープカートリッジ10のドライブ装置への装填方向前側の1つの隅角部である右前隅角部における周壁24、44の一部がそれぞれ斜めに切り欠かれて開口12が形成されている。この開口12はリール60に巻装された記録テープTを外部に引き出すためのものであり、記録テープカートリッジ10の不使用時には、記録テープTの先端(自由端)部分に取り付けられた略矩形状のリーダーブロック90が、その隅角部に係止保持されて開口12を閉塞するようになっている。
【0032】
すなわち、その隅角部(開口12)近傍の上ケース20の天板22内面と、下ケース40の底板42内面には、それぞれリーダーブロック90の外形状に合致した嵌合壁28、48が突設され、更に、その上ケース20の天板22の前壁24A側が、その前壁24Aと平行に細長く切り欠かれて、前壁24Aの一部を板ばね状とした係止部25とされている。
【0033】
したがって、リーダーブロック90は、その係止部25の弾性変形を利用して、平面視略円弧状に屈曲形成された先端部90Aが係止部25先端の突起(図示省略)に係止され、上面部90B及び下面部90Cがそれぞれ嵌合壁28、48に嵌合されることにより、右側面部90Dが外部に露出した状態で、上ケース20及び下ケース40に係止保持されて、開口12を閉塞するようになっている。なお、嵌合壁28、48の内側には、遊動規制壁26、46と一体の内壁26A、46Aが突設されており、開口12閉塞時には、その内壁26A、46Aにリーダーブロック90の左側面部が当接するようになっている。
【0034】
また、リーダーブロック90の先端部90Aには、ドライブ装置側の引出部材(図示省略)が係合する平面視略U字状の凹部92が形成されており、開口12近傍の上ケース20と下ケース40には、その凹部92と平面視でほぼ同形状となる凹部32、52が、それぞれ凹部92と対応する位置に形成されている。
【0035】
したがって、リーダーブロック90を引き出す際、ドライブ装置側の引出部材は、凹部32、52によって凹部92と容易に係合でき、その係合状態のままドライブ装置の巻取リール(図示省略)側へ移動させることにより、リーダーブロック90及び記録テープTを記録テープカートリッジ10から引き出すことができる。
【0036】
そして、その係合状態のまま巻取リールのリールハブ(図示省略)に設けられている嵌入部にリーダーブロック90を嵌入させることにより、ドライブ装置側の巻取リールに記録テープTが巻装可能となる構成であり、リーダーブロック90の曲面状に形成された後面部90Eが、そのリールハブの外周面の一部となる構成である。
【0037】
また、リーダーブロック90の左側面部の略中央にも平面視略U字状の凹部94が形成されており、弾性を有する合成樹脂製の固着ピン96が、記録テープTの先端部分を挟み込みながら、この凹部94に嵌合されることにより、記録テープTの先端にリーダーブロック90が固着されるようになっている。
【0038】
また、下ケース40において、開口12近傍の右壁の内側には、内部に位置規制用穴56Aが形成された袋部56が突設され、左前隅角部の内側には、内部に長穴状の位置規制用穴58Aが形成された袋部58が遊動規制壁46とは離間して突設されている。これら位置規制用穴56A、58Aは、記録テープカートリッジ10がドライブ装置内に完全に装填された後、ピン等の位置決め部材(図示省略)が挿入する穴であり、矢印B方向に沿った一直線上に配置されている。
【0039】
なお、下ケース40の底板42外面において、位置規制用穴56A、58Aの周囲は、他の部分よりも平滑に仕上げられた光沢面56B、58Bとされており、この光沢面56B、58Bがドライブ装置内における記録テープカートリッジ10の高さ方向の基準面とされている。
【0040】
また、記録テープカートリッジ10への記録可・不可が設定されるライトプロテクト14が、上ケース20と下ケース40の各前壁24A、44Aの内側に設けられた円筒状の支持部23、43に、上下の軸部16が枢支されることにより、回転自在に設けられている。そして、上ケース20の前壁24Aには、そのライトプロテクト14を操作する操作部18と、記録可・不可を表示する表示部15を露出させる開孔30が穿設されている。その他、上ケース20の天板22外面には、ラベルエリア38が形成されている。
【0041】
以上のような構成の記録テープカートリッジ10において、次に、その作用について説明する。この記録テープカートリッジ10は、不使用時(保管時や運搬時等)にあっては、開口12がリーダーブロック90によって閉塞されている。そして、記録テープカートリッジ10を使用する際には、前壁24A、44A側を先頭にして、矢印A方向に沿って、記録テープカートリッジ10をドライブ装置内へ装填する。
【0042】
すると、記録テープカートリッジ10は、所定高さ下降して、袋部56、58に形成された位置規制用穴56A、58Aに、ドライブ装置の位置決め部材(図示省略)がそれぞれ挿入され、更に光沢面(基準面)56B、58Bによって高さ方向が規定されて、ドライブ装置内において、精度よく位置決めされる。
【0043】
その後、ドライブ装置の引出部材がリーダーブロック90と係合して、そのリーダーブロック90をケースから引き出すが、上記の通り、記録テープカートリッジ10はドライブ装置内において精度よく位置決めされているので、引出部材は確実にリーダーブロック90の凹部92と係合できる。こうして、記録テープカートリッジ10から引き出されたリーダーブロック90はドライブ装置側の図示しない巻取リールのリールハブに収容される。
【0044】
他方、ドライブ装置側の回転シャフトが上昇し、その中央に設けられた係合部材が突起88を介して制動部材80を押し上げ、制動ギア86とリールギア76との噛合を解除する。そして、マグネットがリールプレート72を吸着し、駆動ギアがリールギア70と噛合することにより、リール60を巻取リールと同期して回転駆動する。これにより、記録テープTは、巻取リールに巻き取られつつ順次記録テープカートリッジ10内から引き出され、所定のテープ経路に沿って配設された記録再生ヘッド等によって情報の記録や再生が行われる。
【0045】
記録テープカートリッジ10をドライブ装置から排出する際には、まず、記録テープTがリール60に巻き戻される。そして、リーダーブロック90が係止部25に係止され、開口12を閉塞すると、回転シャフトが下降して、駆動ギアとリールギア70との噛合が解除され、係合部材による制動部材80の押圧が解除される。すると、コイルばね78の付勢力により、制動ギア86がリールギア76と噛合し、リール60の不用意な回転が防止される。
【0046】
その後、記録テープカートリッジ10が上昇移動することにより、位置規制用穴56A、58Aから位置決め部材が抜き出され、記録テープカートリッジ10のドライブ装置に対する位置決め状態が解除される。そして、記録テープカートリッジ10は図示しないイジェクト機構によって、矢印A方向とは反対方向に移動させられることにより、ドライブ装置内から完全に排出される。
【0047】
以上のような記録テープカートリッジ10において、次に、本発明に係るリール60について、図3乃至図6を基に詳細に説明する。このリール60は、記録テープTが巻回されていないときのリールハブ62の外周面の上端部における最大直径S1と下端部における最大直径S2の差ΔSが、ΔS=0.03mm以下とされ、記録テープTの幅が1/2インチの場合で、上下フランジ64、66の対向間隔Wが、W=12.70mm〜12.95mmとされている。
【0048】
そして、リールハブ62の外周面に記録テープTを巻回する前と巻回した後において、その外周面の上端部における最大半径R1の変化量ΔR1と下端部における最大半径R2の変化量ΔR2の差ΔRが、ΔR=0.025mm未満とされ、更に、リールハブ62の外周面に記録テープTを巻回した後において、その外周面の上端部における最大半径R1aと下端部における最大半径R2aの差ΔRaが、ΔRa=0.015mm以下とされている。このような構成とすることにより、記録テープTの変則的な巻回傾向が抑止され、記録テープTをリールハブ62の高さ方向略中央に略水平に巻回可能としている。以下、実際の測定データに基づいて、その説明をする。
【0049】
リール60は、ポリカーボネート(PC)にグラスファイバー(GF)を8%〜20%添加された合成樹脂材で成形され、そのヤング率Eが、E=5000〜7000とされている。また、このリール60は、図3で示すように、記録テープTを巻回していない状態で、リールハブ62の上端部における最大直径S1が、S1=48.00mm〜48.03mm、下端部における最大直径S2が、S2=48.00mm〜48.01mmとなっている。
【0050】
このように、直径値に範囲があるのは、リールハブ62の外周面が成形上、平面視で真円になり難いためであり、部位によって直径が異なるからである(図4、図5参照)。何れにしても、このリールハブ62の上端部における最大直径S1と、下端部における最大直径S2の差ΔSは、ΔS=S1−S2=48.03mm−48.01mm=0.02mmであり、ΔS=0.03mm以下となっている。なお、ΔSは絶対値であればよく、この場合は、S1>S2なので、上記のようにS1−S2とした。
【0051】
また、ここで言うリールハブ62の外周面の「上端部」及び「下端部」とは、図3で示すように、リールハブ62の上端面62A側及び下端面62B側から、それぞれ1mm以内とされた外周面の一部を指す。また、図4、図5では、リールハブ62の上端部と下端部の外周面が誇張して、かつ重なって示されており、外側のリングG1が上端部の外周面を表し、内側のリングG2が下端部の外周面を表している。そして、この図4、図5では、リールハブ62の上端部における最大半径R1と下端部における最大半径R2が示されている。
【0052】
また、図3で示すリールハブ62の板厚Dは、D=2.2mm〜2.8mmとされ、リールハブ62の径方向の全振れは35μm以下となっている。そして、上下フランジ64、66の高さ方向の振れ幅は、リールハブ62側(以下「内周部」という)で0.07mm以内、上下フランジ64、66の外周縁部側(以下「外周部」という)近傍、即ち外周部から径方向内側へ1mm以内の部位で0.2mm以内となっている。
【0053】
また、上下フランジ64、66の間隔Wは、W=12.70mm〜12.95mmであり、そのテーパー量、即ち内周部における間隔W1と外周部(誘い用のR面を除く)における間隔W2との差ΔWは、記録テープTが巻回されていない状態で、ΔW=0.1mm〜0.3mmとなっている。なお、このテーパー量は、内周部と外周部の実際のテーパー量、即ち径方向における同位置(同位相)での間隔Wの差で規定される。
【0054】
次に、このような構成のリール60に、実際に記録テープTを巻回したときの測定結果について説明する。なお、測定時の環境は、温度23℃、湿度35%である。また、記録テープTは、1/2インチ幅の磁気テープであり、そのテープ長は約600m〜約950m、厚みは6.8μmで、カーバチャー(湾曲値)が、絶対値で0.0mm/m〜0.3mm/mである。
【0055】
そして、この記録テープTを、80gのテープテンションで、かつ最大約8m/秒の巻き込みスピードで、更には、中心に対する高さ方向のズレ量が±0.025mm以内とされたテープガイド(図示省略)で支持しつつ、リールハブ62の外周面に巻回した後のリールハブ62の上端部における最大半径R1と下端部における最大半径R2を測定した。なお、テープガイドは、図示しない巻き込み装置の走行ガイド系のうち、リール60と最も近い位置にあるテープガイドである。また、このときの上下フランジ64、66の間隔Wは、W=12.75mmである。
【0056】
この結果、リールハブ62の上端部における最大半径R1は、R1b=24.015mmからR1a=23.978mmに変化し、下端部における最大半径R2は、R2b=24.005mmからR2a=23.998mmに変化した。なお、記録テープTを巻回する前及び巻回した後のリールハブ62の最大半径R1、R2の測定結果は、実際にはリールハブ62の内周面の最大直径Lを測定し、その測定部分におけるリールハブ62の板厚Dを測定することによって算出した。
【0057】
すなわち、記録テープTを巻回する前のリールハブ62の上端部における最大半径R1bは、R1b=L1b/2+D1b=44.03/2mm+2.00mm=24.015mmとなり、下端部における最大半径R2bは、R2b=L2b/2+D2b=43.91/2mm+2.05mm=24.005mmとなる。同様に、記録テープTを巻回した後のリールハブ62の上端部における最大半径R1aは、R1a=L1a/2+D1a=43.956/2mm+2.00mm=23.978mmとなり、下端部における最大半径R2aは、R2a=L2a/2+D2a=43.896/2mm+2.05mm=23.998mmとなる。
【0058】
以上により、このときのリールハブ62の上端部における最大半径R1の変化量ΔR1は、ΔR1=R1b−R1a=24.015mm−23.978mm=0.037mmとなり、下端部における最大半径R2の変化量ΔR2は、ΔR2=R2b−R2a=24.005mm−23.998mm=0.007mmとなる。したがって、それらの変化量の差ΔRは、ΔR=ΔR1−ΔR2=0.037mm−0.007mm=0.030mmとなる。
【0059】
なお、ΔRは絶対値であればよく、この場合は、ΔR1>ΔR2なので、上記のようにΔR1−ΔR2とした。また、記録テープTを巻回した後のリールハブ62の上端部における最大半径R1aと下端部における最大半径R2aの差ΔRaは、ΔRa=R2a−R1a=23.998mm−23.978mm=0.020mmである。このΔRaも絶対値であればよく、この場合は、R2a>R1aなので、上記のようにR2a−R1aとした。
【0060】
そして、この変化量の差ΔRが、ΔR=0.030mmで、巻回後の最大半径R1a、R2aの差ΔRaが、ΔRa=0.020mmのときには、図7で示すように、記録テープTは、リールハブ62の外周面から外方に向かう距離αで、α1=7mmのところまでは上フランジ64に沿うように巻回され、それ以降は、リールハブ62の高さ方向略中央に戻って、略水平に巻回された。つまり、段差Nが発生した。なお、この段差Nは、テープテンションを80g〜100gと変化させた場合に、リールハブ62の外周面から外方に向かう距離αで、α=0.7mm〜9.0mmの範囲で発生した。
【0061】
そこで、今度は、同様な測定を、リールハブ62の板厚Dを上記よりも厚くした(又はGFの含有率を上記よりも増加させた)リール60で行った。この結果、リールハブ62の上端部における最大半径R1は、R1b=24.013mmからR1a=23.987mmに変化し、下端部における最大半径R2は、R2b=24.007mmからR2a=23.999mmに変化した。なお、このときも記録テープTを巻回する前及び巻回した後のリールハブ62の最大半径R1、R2の測定結果は、実際にはリールハブ62の内周面の最大直径Lを測定し、その測定部分におけるリールハブ62の板厚Dを測定することによって算出した。
【0062】
すなわち、記録テープTを巻回する前のリールハブ62の上端部における最大半径R1bは、R1b=L1b/2+D1b=43.026/2mm+2.50mm=24.013mmとなり、下端部における最大半径R2bは、R2b=L2b/2+D2b=43.114/2mm+2.45mm=24.007mmとなる。同様に、記録テープTを巻回した後のリールハブ62の上端部における最大半径R1aは、R1a=L1a/2+D1a=42.974/2mm+2.50mm=23.987mmとなり、下端部における最大半径R2aは、R2a=L2a/2+D2a=43.098/2mm+2.45mm=23.999mmとなる。
【0063】
以上により、このときのリールハブ62の上端部における最大半径R1の変化量ΔR1は、ΔR1=R1b−R1a=24.013mm−23.987mm=0.026mmとなり、下端部における最大半径R2の変化量ΔR2は、ΔR2=R2b−R2a=24.007mm−23.999mm=0.008mmとなる。したがって、それらの変化量の差ΔRは、ΔR=ΔR1−ΔR2=0.026mm−0.008mm=0.018mmとなる。
【0064】
なお、ΔRは絶対値であればよく、この場合は、ΔR1>ΔR2なので、上記のようにΔR1−ΔR2とした。また、記録テープTを巻回した後のリールハブ62の上端部における最大半径R1aと下端部における最大半径R2aの差ΔRaは、ΔRa=R2a−R1a=23.999mm−23.987mm=0.012mmである。このΔRaも絶対値であればよく、この場合は、R2a>R1aなので、上記のようにR2a−R1aとした。
【0065】
そして、この変化量の差ΔRが、ΔR=0.018mmで、巻回後の最大半径R1a、R2aの差ΔRaが、ΔRa=0.012mmのときには、図6で示すように、記録テープTは、リールハブ62の高さ方向略中央に略水平に巻回された。つまり、段差Nは発生しなかった。これは、テープテンションを80g〜100gと変化させた場合でも、上記変化量の差ΔRが、ΔR=0.025mm未満であり、巻回後の最大半径R1a、R2aの差ΔRaが、ΔRa=0.015mm以下となっている場合には、記録テープTは、リールハブ62の高さ方向略中央に略水平に巻回された。更に、これは、他のファクター(例えばテープ長など)の数値を変えて測定した場合でも、ΔR=0.025mm未満であり、ΔRa=0.015mm以下となっている場合には、同様に、記録テープTが、リールハブ62の高さ方向略中央に略水平に巻回された。
【0066】
以上のことから、記録テープTを巻回する前と巻回した後のリールハブ62の外周面の形状変化と、記録テープTの巻回傾向とには相関があることが判った。つまり、記録テープTをリールハブ62の外周面に巻回する前と巻回した後において、その外周面における上下端部の最大半径R1、R2の変化量ΔR1、ΔR2の差ΔRが、ΔR=0.025mm未満、好ましくは0.020mm以下であり、記録テープTをリールハブ62の外周面に巻回した後において、その外周面における上下端部の最大半径R1a、R2aの差ΔRaが、ΔRa=0.015mm以下であれば、図6で示したように、上フランジ64又は下フランジ66に沿わないで巻回されることが判明した(リールハブ62の高さ方向略中央に巻回されることが判明した)。
【0067】
換言すれば、その最大半径R1、R2の変化量ΔR1、ΔR2の差ΔRが、ΔR=0.025mm以上であり、記録テープTを巻回した後の最大半径R1a、R2aの差ΔRaが、ΔRa=0.015mmより大きいと、カーバチャー(湾曲値)が小さい(絶対値で0.0mm/m〜0.3mm/mとされた)記録テープTであっても、最初は上フランジ64又は下フランジ66に沿って巻回され、その後、リールハブ62の高さ方向略中央に巻回される、所謂段差N(図7参照)が発生するため、記録テープTにダメージが起こることが判明した。
【0068】
以上、説明したように、記録テープTを巻回する前と巻回した後のリールハブ62の上端部における最大半径R1の差ΔR1(変化量)と下端部における最大半径R2の差ΔR2(変化量)から算出される、それら変化量の差ΔRが、ΔR=0.025mm未満であり、記録テープT巻回後の最大半径R1a、R2aの差ΔRaが、ΔRa=0.015mm以下であれば、カーバチャー(湾曲値)が小さい(絶対値で0.0mm/m〜0.3mm/mとされた)記録テープTでは、変則的な巻回傾向を抑止することができる。
【0069】
つまり、記録テープTが、リールハブ62の外周面付近(α=0.7mm〜9mm)では、上フランジ64又は下フランジ66に沿って巻回され、途中でリールハブ62の高さ方向略中央付近に戻って略水平に巻回されるような現象、即ち段差Nが発生するような現象が起きることはない。したがって、記録テープTのエッジダメージ、磁性面への損傷、保存後のエッジの変形、また、これらによるサーボ信号の読み込みエラーやドロップアウトの増加を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】記録テープカートリッジの上方から見た概略分解斜視図
【図2】記録テープカートリッジの下方から見た概略分解斜視図
【図3】リールの拡大概略側断面図
【図4】記録テープ巻回前のリールハブの上端側と下端側の外周面の形状を示す説明図
【図5】記録テープ巻回後のリールハブの上端側と下端側の外周面の形状を示す説明図
【図6】リールのリールハブに巻回された記録テープの状態を示す説明図
【図7】リールのリールハブに巻回された記録テープの状態を示す説明図
【図8】リールのリールハブに巻回された記録テープの状態を示す説明図
【図9】リールのリールハブに巻回された記録テープの状態を示す説明図
【符号の説明】
【0071】
10 記録テープカートリッジ
20 上ケース
40 下ケース
60 リール
62 リールハブ
64 上フランジ
66 下フランジ
68 底壁
80 制動部材
90 リーダーブロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
幅が1/2インチとされた記録テープが巻回される周面を有し、該記録テープが巻回されていないときの前記周面の上端部における最大直径と下端部における最大直径の差が0.03mm以下とされたハブと、
対向間隔が12.70mm〜12.95mmとされ、前記記録テープのエッジを規制する上フランジ及び下フランジと、
を備えたリールにおいて、
前記周面に前記記録テープを巻回する前と巻回した後の該周面の上端部における最大半径の変化量と下端部における最大半径の変化量の差が0.025mm未満とされたことを特徴とするリール。
【請求項2】
前記周面に前記記録テープを巻回した後の該周面の上端部における最大半径と下端部における最大半径の差が0.015mm以下とされたことを特徴とする請求項1に記載のリール。
【請求項3】
前記記録テープの湾曲値が0mm〜0.3mmであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のリール。
【請求項4】
前記記録テープのテンションが80g〜100gであることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載のリール。
【請求項5】
前記記録テープの長さが600m〜950mであることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載のリール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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