説明

ルーフスポイラ

【課題】ルーフスポイラとしての機能を阻害することなく防汚機能を向上させる。
【解決手段】ルーフスポイラSPの本体部12には、上面案内部18に開口すると共に、前面案内部20の後側に開口するバイパス路22が連通形成される。このバイパス路22は、前面案内部20と交差する方向に延在する。従って、上面案内部18で案内される第1空気流の一部を、第3空気流として、前面案内部20で案内した第2空気流と交差するように案内する。これにより、リアガラスRWに沿って案内される空気流の量が増加するので、該リアガラスRWの外面に対する付着物の付着を防止でき、ルーフスポイラSPの機能を発揮させつつ防汚機能が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車体におけるルーフ部の後方に延出する上面案内部で該ルーフ部に沿う空気流の一部を後方に案内すると共に、車体に相対する前面案内部で前記ルーフ部に沿う空気流の一部を該ルーフ部に連なる車体後部に沿って案内するルーフスポイラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車では、車体におけるルーフ部の後方にルーフスポイラを装着することで、走行中において車体に対する揚力の発生を抑えて走行安定性を向上させたり、ルーフ部に沿って後方へ移動する空気をスムーズに後方へ案内して車体後方での空気の乱流を抑えるようになっている。
【0003】
また、ルーフ部の後縁に連なる車体後部が急勾配で傾斜するワゴンタイプやワンボックスタイプの自動車では、ルーフ部に沿って後方へ移動した空気が車体後部に沿って移動せずにそのまま車体後方へ流れてしまうので、車体後部に配設されたリアガラスの外面には、走行中に巻き上げた塵埃や砂、雨水または雪等(以下「付着物」という)が付着し易くなっている。このため前記ルーフスポイラには、ルーフ部に沿って後方へ移動する空気の一部を車体後部側へ分岐させるよう構成して、リアガラスに対する前記付着物の付着を防止する防汚機能を備えたもの(「デフレクタスポイラ」ともいう)も実用化されている。すなわち、防汚機能を備えたルーフスポイラは、自動車の走行中にルーフ部に沿って後方へ移動する空気を、略水平後方へ移動する第1空気流と、車体後部のリアガラスの外面に沿って下方へ移動する第2空気流とに分岐させ、この第2空気流による「エアフロー効果」を利用してリアガラスの外面に対する付着物の付着を防止するものである。このような防汚機能を備えたルーフスポイラは、特許文献1および特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−27681号公報
【特許文献2】実開昭63−143464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
防汚機能を備えたルーフスポイラは、前記第2空気流の風量を増加することで防汚機能の向上が期待できる。このため、特許文献1のルーフスポイラは、該ルーフスポイラの前端部分に可動式導風板を設け、該可動式導風板を上方へ姿勢変位させることで第2空気流の風量を増加するよう構成されている。しかし、特許文献1のルーフスポイラの構成では、可動式導風板を上方へ姿勢変位させた際に、第1空気流の案内が阻害されて前述したルーフスポイラの本来の機能が阻害され、空気抵抗が増加して燃費が悪化すると共に揚力および風切り音が発生する等の問題がある。また、可動式導風板を設けることで部品点数が増加するから、製造コストが嵩むと共に重量が増加する問題もある。一方、特許文献2のルーフスポイラは、上段ルーフディフレクタを設け、該上段ルーフディフレクタにより第2空気流の流量を増加するよう構成されている。しかし、特許文献2のルーフスポイラの構成では、上段ルーフディフレクタが車体から上方へ大きく突出しているので、第1空気流の案内が阻害されてルーフスポイラの本来の機能が十分に発揮されず、空気抵抗が増加して燃費が悪化すると共に揚力および風切り音が発生する等の問題がある。また、上段ルーフディフレクタを設けることでブロー成形により製造できず、かつ部品点数が増加するから、製造コストが嵩むと共に重量が増加し、更に外形サイズが大きくなって車体のデザインを損ねる問題もある。更に、特許文献2のルーフスポイラは、下段ルーフディフレクタで案内された空気流と上段ルーフディフレクタで案内された空気流とが平行に送出されているので、下段ルーフディフレクタで案内された空気流が車体後部から離れることを上段ルーフディフレクタで案内された空気流で阻むことができない。
【0006】
従って本発明では、ルーフスポイラとしての機能を阻害することなく防汚機能を向上させたルーフスポイラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決し、所期の目的を達成するため、本願の請求項1に記載の発明は、
自動車の車体におけるルーフ部の後方に延出する上面案内部で該ルーフ部に沿う空気流の一部を後方に案内すると共に、車体に相対する前面案内部で前記ルーフ部に沿う空気流の一部を該ルーフ部に連なる車体後部に沿って案内するルーフスポイラであって、
前記上面案内部に開口して前記前面案内部と交差するように連通形成され、該上面案内部で案内される空気流の一部を該前面案内部で案内した空気流と交差するように案内するバイパス路を設けたことを特徴とする。
【0008】
従って、請求項1に係る発明によれば、上面案内部に開口して前面案内部と交差するようにバイパス路を設けたことで、走行中において上面案内部に沿って案内した空気流の一部を、第2案内壁により車体後部の外面へ案内した空気流と合流させることができる。これにより、ルーフスポイラの機能を阻害することなく車体後部に沿って案内される空気流の量を増加して、該車体後部の外面に対する付着物の付着を好適に防止することができ、ルーフスポイラの機能を発揮させつつ防汚機能を適切に向上させ得る。
【0009】
請求項2に記載の発明は、
前記上面案内部は、前後方向の中途部に開口する前記バイパス路を挟む前側と後側とが連なる面を形成するように延在し、
前記バイパス路の後側を構成する部分は、該バイパス路の前側を構成する部分と比べて上下方向の厚みが小さく形成されることを要旨とする。
従って、請求項2に係る発明によれば、上面案内部のバイパス路を挟む前側と後側とが連なる面を形成するので、該上面案内部により空気流を後方へ適切に案内することができ、ルーフスポイラの機能が適切に発揮される。また、ルーフスポイラにおけるバイパス路の後側を構成する部分の厚みを小さくしたことで、該部分の下方に存在する空気を該バイパス路で案内される空気流と合流させることができ、第2案内壁により車体後部に沿って案内される空気流と合流する空気流の量を増加させて防汚機能を更に向上させ得る。
【0010】
請求項3に記載の発明は、
前記バイパス路は、前記上面案内部側の開口から前記前面案内部と交差して延在する空気流通軸線が、該上面案内部における該バイパス路の前側上面に対して90度以上の交差角度で交差するよう形成されることを要旨とする。
従って、請求項3に係る発明によれば、バイパス路の空気流通軸線と上面案内部におけるバイパス路の前側上面との交差角度が90度以上となっているから、上面案内部に沿って案内される空気流の一部をバイパス路に向けて進入させ易くなる。
【0011】
請求項4に記載の発明は、
前記バイパス路は、前記上面案内部側の開口から前記前面案内部と交差して延在する空気流通軸線が、前記車体後部に沿う外面基準面に対して45度以下の交差角度で交差するよう形成されることを要旨とする。
従って、請求項4に係る発明によれば、バイパス路の空気流通軸線と車体後部の外面との交差角度が45度以下となっているから、バイパス路で案内された空気流が前面案内部で案内された空気流に対して斜め方向から合流するようになる。これにより、前面案内部で案内された空気流は、バイパス路で案内された空気流により車体後部の外面側へ押されて該外面に沿って移動するようになり、車体後部の外面に付着物が付着し難くなる。
【0012】
請求項5に記載の発明は、
前記上面案内部は、前記ルーフ部に沿うように、または前縁部から後縁部に向かうにつれて上方傾斜するように前後方向に延在し、
前記前面案内部は、前記上面案内部の前縁部から後方に向かうにつれて該上面案内部の下方に離れるように延在し、
前記バイパス路は、前記前面案内部より後側に開口し、下端が該前面案内部の下端に連なる前壁と該前壁に対向する後壁によって、該上面案内部側の開口から前面案内部の後側の開口に向かう空気流通軸線が直線的に延在するように形成されることを要旨とする。
従って、請求項5に係る発明によれば、上面案内部がルーフ部に沿うようにまたは上方傾斜するように前後方向に延在すると共に、前面案内部が上面案内部の前縁部から後方に向かうにつれて該上面案内部の下方に離れるように延在しているので、ルーフ部に沿う空気流を、上面案内部により後方へ案内する空気流と前面案内部により車体後部へ案内する空気流とに適切に分岐させ得る。そして、バイパス路が上面案内部から上方へ突出していないから、該バイパス路を設けたことによりルーフスポイラが大型化することがなく、また部品点数が増加しないので製造コストが嵩まず、重量増加も回避し得る。更に、バイパス路が上面案内部から上方へ突出していないので走行中に空気抵抗が増加せず、燃費の悪化を防止し得ると共に揚力や風切り音の発生等も好適に抑え得る。なお、上面案内部、前面案内部およびバイパス路を、ブロー成形により一体的に成形することが可能である。
【0013】
請求項6に記載の発明は、
前記バイパス路は、前記前面案内部と車体との間に画成される空気流通路の車幅方向の長さと同じ長さに形成され、
前記バイパス路には、該バイパス路の前後方向で対向する前壁および後壁の間に連設部が架設されることを要旨とする。
従って、請求項6に係る発明によれば、バイパス路で案内された空気流を、空気流通路を介して前面案内部で案内された空気流に対して車幅方向の全体に亘って合流させることができ、前面案内部で案内された空気流の全体を車体後部の外面に沿わせることができる。また、バイパス路の前後方向で対向する前壁および後壁の間に架設した連設部により、該バイパス路が設けられてもルーフスポイラの強度低下を防止し得る。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るルーフスポイラによれば、ルーフスポイラとしての機能を阻害することなく防汚機能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図2のI−I線断面図であって、ルーフスポイラ各部の寸法条件を同時に示している。
【図2】ルーフ部の後方に配設された実施例のルーフスポイラを示す斜視図である。
【図3】実施例のルーフスポイラを破断して示す斜視図である。
【図4】変更例のルーフスポイラを破断して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明に係るルーフスポイラにつき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照しながら以下説明する。なお実施例では、ルーフスポイラを自動車の車体に装着した状態において、自動車の前後方向をルーフスポイラの前後方向、自動車の車幅方向をルーフスポイラの左右方向、自動車の上下方向をルーフスポイラの上下方向とする。
【実施例】
【0017】
実施例のルーフスポイラSPは、図1および図2に示す如く、自動車の車体Bにおけるルーフ部B1に連なるバックドア(車体後部)B2の上部に配設され、該ルーフ部B1の後方に位置すると共にバックドアB2の上方へ延出する。このルーフスポイラSPは、バックドアB2の上部の左右幅(ルーフ部B1の後縁の左右幅)と略同サイズの横長に形成された中空部材であって、左右方向に延在する本体部12と、この本体部12の左端から前方へ延出した左取付部14および該本体部12の右端から前方へ延出した右取付部16とを有し、平面視において略「コ」字形を呈している。そしてルーフスポイラSPは、図2に示すように、左取付部14をバックドアB2の左上部に固定すると共に右取付部16をバックドアB2の右上部に固定することで該バックドアB2の上部に左右水平に固定され、該バックドアB2を車体Bに閉めた状態において、ルーフ部B1およびバックドアB2の境界部B3に相対して、該境界部B3との間に空気流通路Dを形成する。なおルーフスポイラSPは、ブロー成形された単一部材から構成されるものや、ブロー成形またはインジェクション成形された複数の部材を組み合わせて構成される。
【0018】
本体部12は、図1に示すように、上下方向の厚みが最大となっている最厚部12Cが、前後中央からやや前方に位置している。そして本体部12は、最厚部12Cを含む前側を構成する部分(以降「前側部分」という)13Aが、該最厚部12Cから前縁部12Aに近づくにつれて厚みが徐々に小さくなるよう形成されている。また本体部12は、最厚部12Cから後側を構成する部分(以降「後側部分」という)13Bが、前側部分13Aと比べて上下方向の厚みが小さく形成されており、これにより該後側部分13Bの下方には、該本体部12の下方外側へ開放する凹部34が画成されている。なお実施例では、後側部分13Bの厚みH2が、前側部分13Aの厚みH1の約1/2に設定されている。
【0019】
本体部12の上部には、該本体部12の前縁部12Aから後縁部12Bに亘って略平坦の上面案内壁(上面案内部)18が形成されている。この上面案内壁18は、バックドアB2を車体Bに閉めた状態において、ルーフ部B1の後部外面より上方に位置すると共に、該ルーフ部B1の外面に沿って前後方向へ延在するように形成されている。また上面案内壁18は、該上面案内壁18の前後方向の中途部に開口する後述のバイパス路22を挟む前側と後側とが連なる面を形成するように延在している。これにより実施例のルーフスポイラSPは、図1に示すように、走行中においてルーフ部B1に沿って後方へ移動する空気の一部、すなわち本体部12の前縁部12Aより上方に到来する空気を、上面案内壁18で後方へスムーズに案内することができる。なお上面案内壁18は、バックドアB2を車体Bに閉めた状態において、前縁部12Aから後縁部12Bに向かうにつれて徐々に高くなる上方傾斜となるように形成してもよい。この場合、上面案内壁18の上方傾斜角度を大きく設定すると、ダウンフォースが増大して揚力の発生を抑え得る。また上面案内壁18は、平坦状に限らず、前端部12Aから後端部12Bに向かうにつれて上方へ湾曲する凹曲面状に形成される場合もある。
【0020】
本体部12の前側部分13Aの前部には、該本体部12の前縁部12Aから後方へ向かうにつれて上面案内壁18から離れるよう下方へ延在し、かつ凹面状に湾曲する前面案内壁(前面案内部)20が形成されている。この前面案内壁20は、バックドアB2を車体Bに閉めた状態において、上部分がルーフ部B1の後縁より上方に位置しており、下部分はバックドアB2に配設したリアガラスRWの上縁に臨んでおり、車体Bに相対してバックドアB2との間の空気流通路Dを形成するようになっている。これにより実施例のルーフスポイラSPは、図1に示すように、走行中においてルーフ部B1に沿って後方へ移動する空気の一部、すなわち本体部12の前縁部12Aより下方へ到来する空気を、前面案内壁20で空気流通路Dを介してバックドアB2に設けたリアガラスRWの外面に沿って下方へ案内することができる。
【0021】
そして、実施例のルーフスポイラSPでは、図1および図2に示すように、本体部12の前後方向の略中央に、該本体部12を上下に貫通するバイパス路22が設けられている。このバイパス路22は、上面案内壁18に開口すると共に前面案内壁20より後側に開口して該前面案内壁20と交差し、かつ前記空気流通路Dの左右方向の長さと同じ長さで左右方向へ延在している。バイパス路22の上開口24は、上面案内壁18における前後方向の中途部において左右に細長に開口形成されており、該バイパス路22は上面案内壁18の外面から上方へ突出していない。バイパス路22の下開口26は、凹部34の前側において左右に細長に位置している。すなわち、バイパス路22を画成する前壁30は、本体部12の最厚部12Cにおいて上面案内壁18から前面案内壁20の下縁に隣接する位置まで延在するように形成されている。また、バイパス路22を画成する後壁32は、本体部12の後側部分13Bにおいて上面案内壁18から凹部34まで延在し、前記前壁30と平行に形成されている。従ってバイパス路22は、前壁30に沿って本体部12を貫通して上面案内壁18および前面案内壁20と交差するように延在している。
【0022】
バイパス路22には、図1〜図3に示すように、前後方向に延在して前壁30と後壁32の間に架設される補強リブ(連設部)28が、左右方向へ所要間隔毎に複数個備えられている。これにより実施例のルーフスポイラSPは、バイパス路22を設けたことによる本体部12の強度低下が抑えられ、該本体部12の左右方向の撓みや捻れが規制されている。なお各補強リブ28は、板状に形成されているので、バイパス路22へ流入する空気の流れを阻害することは殆どない。
【0023】
前記バイパス路22は、図1に示すように、前記前壁30および後壁32の間において上面案内壁18側の上開口24から前面案内壁20より後側の下開口26に向かうよう延在する空気流通軸線Lと、該上面案内壁18における該バイパス路22から前方の前側上面18Aとの交差角度R1が、90度以上となるように形成されている。すなわち、バイパス路22の前壁30および後壁32は、上面案内壁18の前側上面18Aに対して鉛直または下方に向かうにつれて後方へ変位する傾斜状に形成されている。また、上面案内壁18の前記前側上面18Aとバイパス路22の前壁30との連設部は、上面案内壁18から前壁30に向けて曲面状に形成されている。従って本体部12は、上面案内壁18に沿って後方へ移動する空気の一部を、上開口24を介してバイパス路22へ流入させ易く構成されている。
【0024】
また、実施例のルーフスポイラSPは、図1に示すように、バックドアB2の上部に取り付けてバックドアB2を車体Bに閉めた状態において、バイパス路22の前記空気流通軸線LとバックドアB2に配設したリアガラスRWの外面基準面Cとの交差角度R2が、45度以下となるように設定されている。すなわち、バックドアB2に設けたリアガラスRWの外面基準面Cが、下方に向かうにつけて車体Bの後方へ変位する下方傾斜となっているのに対し、本体部12に設けたバイパス路22の空気流通軸線Lは略垂直に延在している。従って本体部12は、バイパス路22で案内された空気流を、略垂直下方へ吹き出すことでリアガラスRWの外面に向けて斜め方向から送出するよう構成されている。
【0025】
前述のように構成された実施例のルーフスポイラSPは、自動車の走行中においてルーフ部B1に沿って後方へ移動する空気のうち、本体部12の前縁部12Aより上方に到来する空気を、第1空気流として上面案内壁18により車体後方へ案内し、ルーフスポイラとしての機能を発揮して当該自動車の走行安定性を向上させる。また、自動車の走行中においてルーフ部B1に沿って後方へ移動する空気のうち、本体部12の前縁部12Aより下方に到来する空気を、第2空気流として前面案内壁20によりバックドアB2のリアガラスRWの外面へ案内する。更に、前記第1空気流の一部を、第3空気流としてバイパス路22により本体部12の下方へ案内して、前面案内壁20により案内された前記第2空気流と合流させる。これにより実施例のルーフスポイラSPは、第2空気流および第3空気流をリアガラスRWの外面に沿って案内するので、該リアガラスRWの外面に対する付着物の付着を防止して防汚機能が適切に発揮される。なお、本体部12の後側部分13Bの下方に形成された凹部34内に存在する空気を前記第3空気流に合流させ、該第3空気流の量を増加させ得る。
【0026】
従って、実施例のルーフスポイラSPによれば、走行中において上面案内壁18に沿って案内される第1空気流の一部を、第3空気流としてバイパス路22で案内して、前面案内壁20によりバックドアB2のリアガラスRWの外面へ案内される第2空気流と合流させることができる。これにより、ルーフスポイラSPの機能を阻害することなくリアガラスRWの外面に対する付着物の付着を好適に防止することができ、ルーフスポイラの機能を充分に発揮しつつ防汚機能を適切に向上させ得る。
【0027】
そして、実施例のルーフスポイラSPは、本体部12の後側部分13Bの厚みH2を前側部分13Aの厚みH1より小さくして、バイパス路22の後側に凹部34を画成したことにより、後側部分13Bの下方に存在する空気を、バイパス路22で案内された第3空気流と合流させることができる。これにより、リアガラスRWの外面に沿って案内される空気流の量を増加することができ、防汚機能を更に向上させることが可能である。
【0028】
前記バイパス路22は、別部材を本体部12に装着して設けられるものではなく、また該本体部12の外面から突出するものでもないから、該バイパス路22を設けることによりルーフスポイラSPが大型化することはなく、部品点数が増加しないので製造コストが嵩まないと共に重量増加も回避し得る。また、バイパス路22が上面案内壁18から上方に突出しないので、走行中に空気抵抗が増加することがなく、燃費の悪化を防止し得ると共に揚力や風切り音の発生等を好適に抑え得る。そして、バイパス路22は、本体部12に一体に形成される前壁30および後壁32により形成されるので、ルーフスポイラSPは、ブロー成形により一体的に製造することが可能である。
【0029】
また、バイパス路22の上開口24から下開口26に向かうよう延在する空気流通軸線Lと上面案内壁18の前側上面18Aとの交差角度R1を90度以上としたから、上面案内壁18に沿って案内される第1空気流の一部を、上開口24を介してバイパス路22へ適切に進入させることができ、第3空気流を適切に確保し得る。一方、バイパス路22の空気流通軸線LとリアガラスRWの外面基準面Cとの交差角度R2を45度以下としたから、バイパス路22で案内された第3空気流を、前面案内壁20で案内された第2空気流に対して斜め方向から合流させ得る。従って、バイパス路22で案内された第3空気流は、前面案内壁20で案内された第2空気流をリアガラスRWの外面側へ押し付けるようになり、該第2空気流が該リアガラスRWの外面から離れることを阻むことができる。これにより、第2空気流および第3空気流が合流してリアガラスRWの外面に沿って移動するから、より一層リアガラスRWの外面に対して付着物が付着することを困難とし得る。
【0030】
更に、バイパス路22の左右方向の長さを、前記空気流通路Dの左右方向の長さと同じにしたので、バイパス路22で案内された第3空気流を、前面案内壁20で案内された第2空気流に対して左右方向の全体に亘って合流させることができ、該第2空気流の全体をリアガラスRWの外面に沿わせることができる。
【0031】
(変更例)
(1)バイパス路22に設けた補強リブ28は、図4に示すように、上面案内壁18と同一平面となる形状であってもよい。この形態では、バイパス路22が、各補強リブ28により左右方向へ複数に分割された形態となる。
(2)本体部12の後側部分13Bの厚みH2は、前側部分13Aの厚みH1の1/2に限定されるものではなく、例えば後側部分13Bの厚みを更に小さくすれば凹部34内に存在する空気の量が増えるので、第3空気流の量を増加させることが可能である。
(3)実施例では、本体部12に設けたバイパス路22に関し、上面案内壁18の前後方向の中途部に上開口24が形成されると共に前面案内壁20より後側に下開口26が形成された形態を例示したが、前記各交差角度R1,R2の設定条件を充足すれば、このバイパス路22は、下開口26を前面案内壁20に形成して該前面案内壁20と交差する形態としてもよい。なお、下開口26が前面案内壁20に形成される形態では、該下開口26の開口位置は該前面案内壁20の下縁に近接させることが望ましい。
(4)車体Bに対するルーフスポイラSPの配設位置は、実施例に例示した形態に限定されず、本体部12の上面案内壁18がルーフ部B1の後縁より適宜低くなる状態で配設するようにしてもよい。
(5)実施例では、本体部12が左右方向に真っ直ぐに延在するルーフスポイラを例示したが、該本体部12は、左右中央部が後方へ膨出した湾曲形状であってもよい。この場合には、バイパス路22も、左右方向において湾曲した形状としてもよい。
【符号の説明】
【0032】
12A 前縁部,12B 後縁部,13A 前側部分(バイパス路の前側を構成する部分)
13B 後側部分(バイパス路の後側を構成する部分),18 上面案内壁(上面案内部)
18A 前側上面,20 前面案内壁(前面案内部),22 バイパス路
24 上開口(上面案内部側の開口),26 下開口(前面案内部の後側の開口)
28 補強リブ(連設部),30 前壁,32 後壁,B 車体,B1 ルーフ部
B2 バックドア(車体後部),C 外面基準面,D 空気流通路,L 空気流通軸線
R1 交差角度,R2 交差角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の車体におけるルーフ部の後方に延出する上面案内部で該ルーフ部に沿う空気流の一部を後方に案内すると共に、車体に相対する前面案内部で前記ルーフ部に沿う空気流の一部を該ルーフ部に連なる車体後部に沿って案内するルーフスポイラであって、
前記上面案内部に開口して前記前面案内部と交差するように連通形成され、該上面案内部で案内される空気流の一部を該前面案内部で案内した空気流と交差するように案内するバイパス路を設けた
ことを特徴とするルーフスポイラ。
【請求項2】
前記上面案内部は、前後方向の中途部に開口する前記バイパス路を挟む前側と後側とが連なる面を形成するように延在し、
前記バイパス路の後側を構成する部分は、該バイパス路の前側を構成する部分と比べて上下方向の厚みが小さく形成される請求項1記載のルーフスポイラ。
【請求項3】
前記バイパス路は、前記上面案内部側の開口から前記前面案内部と交差して延在する空気流通軸線が、該上面案内部における該バイパス路の前側上面に対して90度以上の交差角度で交差するよう形成される請求項1または2記載のルーフスポイラ。
【請求項4】
前記バイパス路は、前記上面案内部側の開口から前記前面案内部と交差して延在する空気流通軸線が、前記車体後部に沿う外面基準面に対して45度以下の交差角度で交差するよう形成される請求項1〜3の何れか一項に記載のルーフスポイラ。
【請求項5】
前記上面案内部は、前記ルーフ部に沿うように、または前縁部から後縁部に向かうにつれて上方傾斜するように前後方向に延在し、
前記前面案内部は、前記上面案内部の前縁部から後方に向かうにつれて該上面案内部の下方に離れるように延在し、
前記バイパス路は、前記前面案内部より後側に開口し、下端が該前面案内部の下端に連なる前壁と該前壁に対向する後壁によって、該上面案内部側の開口から前面案内部の後側の開口に向かう空気流通軸線が直線的に延在するように形成される請求項1〜4の何れか一項に記載のルーフスポイラ。
【請求項6】
前記バイパス路は、前記前面案内部と車体との間に画成される空気流通路の車幅方向の長さと同じ長さに形成され、
前記バイパス路には、該バイパス路の前後方向で対向する前壁および後壁の間に連設部が架設される請求項1〜5の何れか一項に記載のルーフスポイラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−81937(P2012−81937A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−232014(P2010−232014)
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)