説明

レンジフード

【課題】排気効率の改善を図るとともに空気の滞留を回避し、吸気口からファンの吸い込み口に至るまでの通路が汚損し難いレンジフードを提供すること。
【解決手段】側面16に吸気口20が設けられる内側ケース11と、当該内側ケース11との間に空間を形成する外側ケース12とを含むフード本体13と、吸気口20から吸気された空気を外部に排出するファン15とを備えてレンジフード10が構成されている。前記空間は、上流側通路18を形成する第1の空間S1と、これより大きい容積の第2の空間S2とからなり、ファン15の吸い込み口26に沿って仕切り部材30が第2の空間S2内に配置されている。この仕切部材30は、上流側通路18との容積差が縮小された下流側通路31を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレンジフードに係り、更に詳しくは、フード本体の後部空間内にファンを配置するとともに、前記後部空間より前方の左右両側に設けられた吸気口を通じて吸気した空気の円滑な流れを確保して効率良く排気することのできるレンジフードに関する。
【背景技術】
【0002】
システムキッチンの一般的な設備としては、内部に収容空間を備えたキッチンキャビネットと、当該キッチンキャビネットの上方に位置するとともに、加熱調理機器が配置されるキッチンカウンターと、前記加熱調理機器の上方に相対配置されるレンジフードとが含まれる。
公知のレンジフードとしては、例えば、特許文献1に開示されるように、レンジフードの左右内面側に吸気口を設け、当該吸気口から吸気された空気を左右両側の排気空間と、これに連なる後方空間に流通させて当該後方空間内のファンを介して排気できる構成が知られている。
【0003】
しかしながら、特許文献1に開示されたレンジフードにあっては、前記左右両側の排気空間に対して後方空間の容積が相当に大きい構成となっているため、通気抵抗による損失が大きくなり、結果として、ファンによる排気効率を低下させる、という不都合がある。この場合、後方空間を狭く形成して左右両側の排気空間との容積差を縮小することが考えられるが、後方空間にファンを収容する構成では、狭い空間設計を採用できない、という制約がある。また、ファンを回転させるモータの回転数を上げて排気を行うことは可能となるが、この場合には、ファンの回転に伴う騒音が大きくなりすぎるという反射的不利益を生ずることとなる。
【0004】
ところで、特許文献2には、吸気口より吸気された排気流の通気抵抗の損失を低減させる構成が提案されている。
特許文献2に記載されたレンジフードは、フード部の上部に連結された排気ダクトと、壁面の外部に配置されたファンと、当該ファンの吸込口との間における壁面内に配置された中間ダクトとを備え、この中間ダクトによって空気通路の容積変化を回避してスムースな空気の流れを確保し、排気効率を低下させることなく排気可能とする構成が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3388166号公報
【特許文献2】特開2003−130416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載されたレンジフードにあっては、ファンを一体に備えたレンジフードとはなっていない。
そのため、ファン一体型としたときの、ファンや電装部品等が油成分等を含む空気に晒されることなく、吸気口からファンの吸い込み口に至るまでの通路の容積変化を小さくして排気効率を改善することのできるレンジフードが待望されていた。
【0007】
[発明の目的]
本発明は、このような要請に対応して案出されたものであり、その目的は、排気効率の改善を図るとともに空気の滞留を回避し、吸気口からファンの吸い込み口に至るまでの通路を汚損し難い構成とすることができるレンジフードを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明は、特許請求の範囲記載の構成を採用したものであり、具体的には、本発明は、下向きに開放するとともに側面に吸気口が設けられる内側ケースと、この内側ケースを収容した状態で当該内側ケースとの間に空間を形成する外側ケースとを含むフード本体と、前記空間を通じて前記吸気口から吸気された空気を外部に排気するファンとを備えたレンジフードにおいて、
前記空間は、前記内側ケースと外側ケースの各側面間との間を上流側通路とする第1の空間と、当該第1の空間の容積よりも大きい容積を有するとともに前記ファンが配置される第2の空間とからなり、
前記ファンの吸い込み口に沿って仕切り部材を設け、当該仕切部材により前記第2の空間を区分することで、前記上流側通路との容積差が縮小された下流側通路を第2の空間内に形成する、という構成を採っている。
【0009】
本発明において、前記第2の空間は内側ケースの後部と外側ケースの後部との間に形成され、前記ファンの吸い込み口は内側ケースの後部に向けられた状態で第2の空間内の中央に位置し、前記吸い込み口と略同一平面内に前記仕切り部材が配置されて当該仕切り部材と内側ケースの後部との間に下流側通路が形成される、という構成を採ることが好ましい。
【0010】
また、前記仕切り部材の後方空間は、前記ファンと電装部品の収容空間として利用される、という構成を採っている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、仕切部材により上流側通路との容積差が縮小された下流側通路を形成したから、吸気口からファンの吸い込み口までの空気の流れが円滑となり、期待する排気効率を得ることができる。この場合、ファンの回転数を上げて排気効率を確保する必要がないことになり、静音駆動タイプのレンジフードを提供することができる。
また、前記仕切り部材を吸い込み口と略同一平面内に配置した構成では、吸い込み口のみが空気の通路に臨む形態となり、後方空間の内面全域が汚れた空気によって汚損されることがない。
更に、前記仕切り部材の後方空間を利用して電装部品を収容する構成により、排気に含まれる油成分等が電装部品に付着して堆積することによって生じ得る故障要因も回避可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係るレンジフードがシステムキッチンに適用された実施形態を示す概略側面図。
【図2】前記レンジフードを下方から見た概略斜視図。
【図3】前記レンジフードの概略平面図。
【図4】前記レンジフードの概略正面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、本明細書における方向を示す用語は、壁面に固定されたレンジフードを正面に見た場合について用いられる。従って、「左右」は、図1の紙面直交方向に沿って位置し、「上下」は、同図中上下方向に沿って位置することとなる。また、「前後」は図1中左右方向に沿って位置する。
【0014】
図1において、キッチンフロアF上で壁面Wに接する位置にキッチンキャビネットCが設置され、このキッチンキャビネットCの上部カウンター面内に設けられた調理機器Aの上方相対位置にレンジフード10が配置されている。レンジフード10は、壁面Wに固定されており、当該レンジフード10の上端に図示しない排気ダクトを接続することで屋外への排気が行えるようになっている。
【0015】
前記レンジフード10は、図2に示されるように、下向きに開放する内側ケース11と、この内側ケース11を収容する外側ケース12とからなるフード本体13と、当該フード本体13の内部に収容されたファン15とを備えて構成されている。内側ケース11は、左右一対の側面16と、これら側面16間に設けられて下向きに開放するとともに一部が内側ケース11の後部を形成する湾曲面17と、この湾曲面17の後端に連なる傾斜面19とを含み、側面16及び湾曲面17の内側空間内に、前記調理機器Aの使用時に発生する臭気、煙、或いは油成分を含む空気が導入されるようになっている。ここで、前記各側面16の面内にはフィルター等を含む吸気口20が設けられている。
【0016】
前記外側ケース12は、前方に向かうに従って下向きに湾曲する面形状を備えた上面21と、この上面21の左右両側に位置する外側面23と、当該外側面23の下端縁に連なる内向きの屈曲面24と、上面21及び外側面23の後端に位置する後面25とを含み、前記外側面23と内側ケース11の側面16との間に上流側通路18を形成する第1の空間S1が形成されている。また、内側ケース11の前記湾曲面17と外側ケース12の後面25との間には、第1の空間S1よりも大きい容積を有する第2の空間S2が形成され、当該第2の空間S2の後部中央にファン15が収容配置されている。なお、ファン15は、その吸い込み口26が湾曲面17に向くように設けられている。
【0017】
前記第2の空間S2内には仕切り部材30が配置されている。この仕切り部材30は、第2の空間Sを前後に2区分するものであり、当該仕切り部材30を配置することによって、上流側通路18との容積差を縮小して当該上流側通路18に連通する下流側通路31が形成される。ここで、仕切り部材30は、ファン15の吸い込み口25と略同一平面(鉛直面)内に設けられている。
また、第2の空間S2において、仕切り部材30よりも後方の空間内には、ファン15を駆動制御するための電装部品36が収容されている。
【0018】
次に、本実施形態におけるレンジフード10の作用について説明する。
【0019】
図示しない電源をON操作することにより、ファン15が回転し、前記内側ケース11の下方開放空間に空気が取り込まれる。取り込まれた空気は、湾曲面17によって生成される当該湾曲面17に沿う渦流を伴いながら吸気口20に吸気される。
吸気口20を通じて上流側通路18に流れた空気は、下流側通路31を経てファン15の吸い込み口26に吸い込まれる。
この際、下流側通路31は、第2の空間S2を前後に区分する仕切部材30によって形成され、上流側通路18との容積差が小さく設けられていることから、通路内で空気の滞留が生ずることなく円滑な流れとなる。従って、ファン15の回転数に応じた排気効率を得ることができ、空気の滞留を回避して通路内面を汚損し難いものとすることができる。しかも、電装部品36は、仕切り部材30の後方空間内に設けられているため、排気される空気流に晒されることはなく、電装部品36の外面に油成分等が付着するような不都合を効果的に排斥することができる。
【0020】
本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。
すなわち、本発明は、特定の実施の形態に関して特に図示し、且つ、説明されているが、本発明の技術的思想及び目的の範囲から逸脱することなく、以上に述べた実施例に対し、形状、位置若しくは方向、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状などの限定の一部若しくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【0021】
例えば、前記実施形態では、仕切り部材30が吸い込み口26と略同一平面内に位置する場合について図示、説明したが、上流側通路18の容積、或いは、図3に例示される通路幅に応じて前後何れかにずらして配置することを妨げない。
【0022】
また、第2の空間S2は、内側ケース11の後部に設けたが、当該内側ケース11の上部に設ける設計も採用可能である。要するに、本発明は、上流側通路18からファン15の吸い込み口26に至るまでの通路の容積差を縮小できる限り、種々の変更を行うことができる。
【0023】
更に、前記実施形態では、内側ケース11の左右両側の側面16に吸気口20を設けるとともに、当該吸気口20に対応する上流側通路18を左右一対配置としたが、吸気口20及び上流側通路18は、片側配置であってもよい。
【符号の説明】
【0024】
10…レンジフード、11…内側ケース、12…外側ケース、13…フード本体、15…ファン、16…側面、17…湾曲面、18…上流側通路、20…吸気口、23…外側面、25…後面、26…吸い込み口、30…仕切り部材、31…下流側通路、36…電装部品、S1…第1の空間、S2…第2の空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下向きに開放するとともに側面に吸気口が設けられる内側ケースと、この内側ケースを収容した状態で当該内側ケースとの間に空間を形成する外側ケースとを含むフード本体と、前記空間を通じて前記吸気口から吸気された空気を外部に排出するファンとを備えたレンジフードにおいて、
前記空間は、前記内側ケースと外側ケースの各側面間との間を上流側通路とする第1の空間と、当該第1の空間の容積よりも大きい容積を有するとともに前記ファンが配置される第2の空間とからなり、
前記ファンの吸い込み口に沿って仕切り部材を設け、当該仕切部材により前記第2の空間を区分することで、前記上流側通路との容積差が縮小された下流側通路を第2の空間内に形成したことを特徴とするレンジフード。
【請求項2】
前記第2の空間は内側ケースの後部と外側ケースの後部との間に形成され、前記ファンの吸い込み口は内側ケースの後部に向けられた状態で第2の空間内の中央に位置し、前記吸い込み口と略同一平面内に前記仕切り部材が配置されて当該仕切り部材と内側ケースの後部との間に下流側通路が形成されていることを特徴とする請求項1記載のレンジフード。
【請求項3】
前記仕切り部材の後方空間は、前記ファンと電装部品の収容空間として利用されることを特徴とする請求項1又は2記載のレンジフード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−96686(P2013−96686A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243199(P2011−243199)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(392008529)ヤマハリビングテック株式会社 (349)
【Fターム(参考)】