説明

レンズアレイの製造方法、成形型組立体

【課題】成形時の空気溜まりの発生を確実に防止して、安定な品質のレンズアレイを高い生産性で低コストにて製造する。
【解決手段】成形型組立体10のスリーブ11の内部に対向して挿入される下型12と上型13の間に平凸状成形素材40を挟み込んで、上型13の成形面13aに形成された複数の小レンズ成形凹面13bを転写する成形方法において、上型13の複数の小レンズ成形凹面13bの配列中央の凹面頂点13cに平凸状成形素材40の凸状表面42の表面中心部43が一致するように位置決めして成形することで、小レンズ成形凹面13b内の空気が、平凸状成形素材40の変形に伴って外周方向に速やかに排除されるようにして、小レンズ成形凹面13bに空気溜まりが生じることを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズアレイの製造技術および成形型組立体に関し、例えば、複数の小レンズの集合体であるレンズアレイを型成形によって製造する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のレンズの集合体であるレンズアレイは、照明用、光ファイバ通信用、センサー集光用などのレンズとして利用される。
このレンズアレイの製造方法としては、ガラスやプラスチックなどの材料からできた単一の平行平板状の成形素材を軟化させながら成形型で押圧し、レンズアレイを製造する方法が従来から知られている。
【0003】
このような型成形による一般的なレンズアレイの製造方法では、小レンズ部分に空気溜りが発生しやすいため、レンズアレイの品質が安定しにくく、歩留まりが良くないという技術的課題があった。
【0004】
このため、特許文献1には、成形型を真空のチャンバ内に収容し、ガラスの成形素材を真空中で加熱軟化させ、金型で押圧してレンズアレイを製造する方法が開示されている。
また、特許文献2には、金型における複数のマイクロレンズキャビティの配列領域の中心にガラスプリフォームが載置される中心ネストを設け、この中心ネストに単一のガラスプリフォームを配置し、加熱状態で金型を押圧し、溶融したガラスプリフォームが中心ネスト部分から周囲のマイクロレンズキャビティに広がるように変形させてレンズアレイを成形した後、中心ネスト部分がレンズアレイから取り除かれるように小レンズ部を切り出してマイクロレンズアレイを得る製造方法が提示されている。
【0005】
ところが、上述の特許文献1の技術では、成形型の全体をチャンバに収容して真空中で加熱するために、チャンバや真空ポンプ等の大掛かりな真空設備が必要となり、成形装置全体のコスト上昇、引いては成形製品のコスト上昇を招くという技術的課題がある。
【0006】
また、成形前の真空排気処理や成形後の大気圧への復帰処理等の冗長な所要時間が発生し、成形工程におけるサイクルタイムの増大による生産性の低下を招く、という技術的課題もある。
【0007】
一方、特許文献2の場合には、ガラスプリフォームが配置される中心ネスト部分は光学面としては利用できないため、成形可能なマイクロレンズアレイの設計や成形可能な形状仕様に制約が生じるとともに、マイクロレンズアレイの中央に位置する中心ネスト部分を切除する場合には、ガラスプリフォームの歩留りが低下するとともに、切断工程の分だけサイクルタイムの増大や製造コストの上昇を招き、生産性が低下する、という技術的課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6−144842号公報
【特許文献2】特開2001−48554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、必要以上に大掛かりな製造設備を必要とすることなく、成形工程におけるサイクルタイムの増大や製造コストの上昇を招くことなく、レンズアレイの形状に制約を生じることなく、成形時の空気溜まりの発生を確実に防止して、安定な品質のレンズアレイを高い生産性で低コストにて製造することが可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上型および下型の少なくとも一方の成形面に配列された複数の光学機能凹面の配列中心部に、凸形状の成形素材の頂部が一致するように位置決めする工程と、
前記上型および下型の前記成形面の間で前記成形素材を挟圧し、前記配列中心部から周辺方向に前記成形素材が広がるように変形させる工程と、
を含み、
前記成形面には、隣り合う前記光学機能凹面の境界部が前記配列中心に一致するように複数の前記光学機能凹面が配列され、
個々の前記光学機能凹面の最小曲率半径をRaとし、前記成形素材の前記頂部の曲率半径をRpとしたとき、Rp≦2Raを満足するように前記成形素材の形状が設定されているレンズアレイの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、必要以上に大掛かりな製造設備を必要とすることなく、成形工程におけるサイクルタイムの増大や製造コストの上昇を招くことなく、レンズアレイの形状に制約を生じることなく、成形時の空気溜まりの発生を確実に防止して、安定な品質のレンズアレイを高い生産性で低コストにて製造することが可能な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施の形態であるレンズアレイの製造方法が実施される成形装置の構成の一例を示す略側面図である。
【図2A】本発明の一実施の形態であるレンズアレイの製造方法を実施する成形型組立体の常温下での組み立て状態の一例を示す断面図である。
【図2B】その一部を拡大して例示する断面図である。
【図2C】その加熱下での成形状態を示す断面図である。
【図2D】本発明の一実施の形態である成形型組立体にて成形されたレンズアレイの一例を示す側面図である。
【図3】本発明の一実施の形態である成形型組立体における上型の成形面の一例を示す平面図である。
【図4】本発明の一実施の形態である成形に使用される平凸状成形素材を示す断面図である。
【図5A】本発明の他の実施の形態のレンズアレイの製造方法における常温下での成形型組立体の組み立て状態を示す断面図である。
【図5B】その加熱下での成形状態を示す断面図である。
【図5C】その製造方法にて得られたレンズアレイの一例を示す断面図である。
【図6】そのレンズアレイの製造方法に用いられる成形型組立体を構成する上型の成形面に配置された複数の小レンズ成形面の配列状態を示す平面図である。
【図7】そのレンズアレイの製造方法における成形素材の変形過程を説明するための説明図である。
【図8A】本発明の他の実施の形態のレンズアレイの製造方法の変形例において、常温下での成形型組立体の組み立て状態を示す断面図である。
【図8B】その変形例における上型の成形面の形状を示す斜視図である。
【図8C】その変形例における上型の成形面の形状を示す平面図である。
【図9】その変形例にて得られた矩形のレンズアレイを示す斜視図である。
【図10A】本発明の他の実施の形態のレンズアレイの製造方法の他の変形例に用いられる凸レンズ断面成形素材の外観を例示した斜視図である。
【図10B】その凸レンズ断面成形素材から得られるレンズアレイの外観を示す斜視図である。
【図11A】その変形例における上型の凹状の半円筒面からなる複数の小レンズ成形面の配列状態を示す平面図である。
【図11B】その変形例における上型の凹状の半円筒面からなる複数の小レンズ成形面の配列状態を示す斜視図である。
【図11C】その小レンズ成形面によって成形されたレンズアレイを示す斜視図である。
【図12A】凸形状の小レンズ部が基板部の両面に配置されたレンズアレイを示す断面図である。
【図12B】そのレンズアレイの成形に用いられる成形素材の一例を示す側面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
(第1実施の形態)
図1は、本発明の一実施の形態であるレンズアレイの製造方法が実施される成形装置の構成の一例を示す略側面図である。
【0014】
図2Aは、本発明の一実施の形態であるレンズアレイの製造方法を実施する成形型組立体の常温下での組み立て状態の一例を示す断面図、図2Bは、その一部を拡大して例示する断面図、図2Cは、その加熱下での成形状態を示す断面図、図2Dは、本実施の形態の成形型組立体にて成形されたレンズアレイの一例を示す側面図である。
【0015】
図3は、本実施の形態の成形型組立体における上型の成形面の一例を示す平面図、図4は、本実施の形態の成形に使用される平凸状成形素材を示す断面図である。
まず、図2Dを参照して、本実施の形態のレンズアレイの製造方法にて製造されるレンズアレイ40Aについて説明する。
【0016】
本実施の形態にて製造されるレンズアレイ40Aは基板部41aと、この基板部41aの片面に突設された複数の小レンズ部42aの配列からなる。
基板部41aは円形の平行平板形状である。個々の小レンズ部42aの形状は凸形状で、主に一定の曲率半径を持つ球面になっている。
【0017】
この場合、小レンズ部42aの数は、一例として、3×3の9個で、基板部41aの片面上に等間隔で正方の配列として配置される。
レンズアレイ40Aの材料、すなわち、このレンズアレイ40Aの成形に用いられる後述の平凸状成形素材40(成形素材)としては、可視域において透明な光学ガラスが用いられる。本実施の形態では光学ガラスとして市販のL−BSL7(ガラス転移点498℃、屈伏点549℃)を用いた例を説明する。
【0018】
図1に例示されるように、本実施の形態の成形装置100は、成形ステージ110、下側プレート120、上側プレート130、加圧装置140を備えている。
成形ステージ110の上に下側プレート120が配置され、この下側プレート120と上下方向に対向する位置に、加圧装置140によって上下方向に駆動される上側プレート130が設けられている。
【0019】
本実施の形態の成形装置100は、大気下または窒素ガス等の置換雰囲気下で稼動可能な任意の構成のものを使用できる。すなわち、成形装置100に真空容器および真空ポンプ等を付属させる必要はない。
【0020】
この成形装置100を用いたレンズアレイの製造工程では、平凸状成形素材40等の成形素材が内部に組み込まれた成形型組立体10が、成形装置100内の下側プレート120載置される。
【0021】
下側プレート120および上側プレート130の各々の内部には、それぞれ複数のヒータ121、ヒータ131が実装されており、下側プレート120と上側プレート130との間に挟持される成形型組立体10を、所望の成形温度に加熱することが可能になっている。
【0022】
なお、ヒータ121、ヒータ131の代わりに赤外線ランプを成形型組立体10の側面周辺に配置して加熱する構成としても構わない。
上述のように、下側プレート120は成形ステージ110に固定された状態にあり、上側プレート130には、加圧装置140が連結されている。
【0023】
加圧装置140によって上側プレート130を下降させることで、成形型組立体10は下側プレート120と上側プレート130で挟まれた状態になり、さらに上側プレート130によって加圧されると押圧状態になる。
【0024】
図2Aに例示されるように、本実施の形態の成形型組立体10は、円筒状のスリーブ11と、外形が円柱状の下型12、上型13、で構成されている。
上型13および下型12は、各々の成形面13a、成形面12aが対向するようにスリーブ11の両端から挿入されることによってスリーブ11に嵌合可能になっている。
【0025】
成形型組立体10を構成するスリーブ11、下型12、上型13が嵌合された状態では、上型13、下型12、スリーブ11の各中心軸が一致するように構成されている。
なお、以下では、上型13と下型12の対向方向の前記中心軸を中心軸CZとし、この中心軸CZに直交する平面内で直交する二つの軸を中心軸CXおよび中心軸CYとする。
【0026】
上型13の成形面13aの中央には、上述のレンズアレイ40Aの複数の小レンズ部42aに対応した複数の小レンズ成形凹面13b(光学機能凹面)が配置されている。
個々の小レンズ成形凹面13bは対応する個々の小レンズ部42aに合わせるように形成され、形状は凹形状で一定の曲率半径R0を有している。この場合、小レンズ成形凹面13bの配置数は9個(L11〜L33)で、正方格子の格子点に小レンズ成形凹面13bの各々の中心が一致する配列状態に配置されている。
【0027】
ここで、本実施の形態の成形型組立体10の上型13における小レンズ成形凹面13bに関してさらに詳細に説明する。
上述のような円柱形の上型13の成形面13aは外形が円形を呈しており、外形の円の中心部(中心軸CZ)を成形面13aの中心部に設定する。下型12の成形面12aの中心部も同様に設定する。
【0028】
上型13における複数の小レンズ成形凹面13bの配列(L11〜L33)において、中央に位置する一つの小レンズ成形凹面13b(L22)に着目する。
本実施の形態の上型13の場合、成形面13aの中心部(中心軸CZ)に対して、小レンズ成形凹面13b(L22)の頂点(凹面頂点13c(配列中心部))が一致するように、複数の小レンズ成形凹面13bを整列して配置する。
【0029】
この場合、下型12の成形面12aは、中心軸CZに直交する平坦面に形成されている。
本実施の形態の場合、成形型組立体10の上型13、下型12、スリーブ11を構成する材料としては、例えば、超硬合金、炭化珪素、ステンレス鋼などが利用できる。
【0030】
小レンズ成形凹面13bの形状は、切削加工、研削加工、研磨加工等の中から適当な処理を選択あるいは組み合わせて製作される。
次に、本実施の形態において用いられる成形素材について説明する。
【0031】
本実施の形態では、断面形状が平凸のレンズ形状を呈する平凸状成形素材40を使用する。すなわち、平凸状成形素材40は、円柱の一端に底面41が形成され、他端部に、例えば球面からなる凸状表面42が形成された外観を呈している。この平凸状成形素材40は、単一の部材で構成されている。
【0032】
また、平凸状成形素材40の体積は、当該平凸状成形素材40を用いて製造される上述のレンズアレイ40Aの体積と一致させる。これにより、成形後に切り落とし等の付加的加工を必要とすることなく、目的の形状のレンズアレイ40Aが得られる。
【0033】
平凸状成形素材40における凸状表面42は一定の曲率半径を有しており、表面中心部43(頂部)が、底面41から最も高い頂点になっている。
ここで、本実施の形態の平凸状成形素材40では、凸状表面42の曲率半径Rpを以下のように設定する。
【0034】
上型13に形成された小レンズ成形凹面13bの最小曲率半径Raに着目すると、小レンズ成形凹面13bは一定の曲率半径R0を有しているため、最小曲率半径Raは個々の小レンズ成形凹面13bの曲率半径R0と一致している。
【0035】
そして、本実施の形態では、平凸状成形素材40の凸状表面42における曲率半径Rpは、小レンズ成形凹面13bの最小曲率半径Raに対して、以下の式(1)の関係を満足するように設定する。
Rp≦Ra ………(1)
【0036】
レンズアレイ40Aとなる平凸状成形素材40の素材は光学ガラスからなり、上述のL−BSL7を使用する。
この平凸状成形素材40は、予め、研削加工、研磨加工、あるいは、溶融ガラスのプレス加工によって、上述の形状に製作される。
以下、本実施の形態におけるガラス成形によるレンズアレイの製造方法の作用を説明する。
【0037】
本実施の形態のレンズアレイの製造工程は、成形型組立体10の組み立て工程、加熱工程、成形工程、冷却工程からなる。
まず、成形型組立体10の組み立て工程について説明する。
【0038】
平凸状成形素材40の底面41を下側にして下型12の成形面12aの上に載せる。
このとき、平凸状成形素材40の位置は、下型12の成形面12aの中心部に対して、平凸状成形素材40の中心が一致するように位置決めする。
【0039】
この状態で、スリーブ11と下型12を嵌合させ、さらに、上型13をその成形面13aが、下型12上の平凸状成形素材40に対向するように嵌合させる。
上型13と下型12は、スリーブ11に挿入されると、上型13の中心部と下型12の中心部とがスリーブ11の孔の中心軸(中心軸CZ)上に整列された状態になる。
【0040】
すなわち、平凸状成形素材40の凸状表面42の中心にある表面中心部43(頂点)は、上型13の成形面13aの中心部、つまり、複数の小レンズ成形凹面13bの配列中央に位置する小レンズ成形凹面13b(L22)の凹面頂点13cと、中心軸CZ上に整列する。
【0041】
このように、スリーブ11に対向して挿入される上型13と下型12とで平凸状成形素材40を挟み込むことで、図2Aのような成形型組立体10を得る。
図2Bに示されるように、平凸状成形素材40が下型12と上型13の間に挟み込まれた状態では、上型13における複数の小レンズ成形凹面13bの配列の中央に位置する小レンズ成形凹面13b(L22)の凹面頂点13cと平凸状成形素材40の凸状表面42の表面中心部43とが接触している。
【0042】
ただし、凹面頂点13c以外の部分では小レンズ成形凹面13b(L22)と平凸状成形素材40とは接触していない。
次に、上述のように構成された成形型組立体10の加熱工程について説明する。
【0043】
成形装置100内の下側プレート120と上側プレート130の間に、平凸状成形素材40を組み付けた成形型組立体10を入れる。
この下側プレート120と上側プレート130を介して、成形型組立体10および内部の平凸状成形素材40が、当該平凸状成形素材40の素材に応じた成形温度に達するように所定時間だけ加熱する。
【0044】
この成形温度は平凸状成形素材40に使用されるガラスの屈伏点温度よりも高い温度に設定する。これにより、成形温度下では平凸状成形素材40は軟化状態になる。
次に、成形工程について説明する。
【0045】
上述の成形温度に保持された状態で、成形装置100の下側プレート120と上側プレート130とで成形型組立体10を加圧する。
成形型組立体10において下型12と上型13で挟圧される平凸状成形素材40は変形しながら、下型12の成形面12aと上型13の成形面13aとの間の空間部に充満していく。
【0046】
変形が進行すると、成形面12aおよび成形面13a(小レンズ成形凹面13b)の形状が平凸状成形素材40に転写されることにより、レンズアレイ40Aの基板部41aと複数の小レンズ部42aとが形成される。
【0047】
ここで、本実施の形態の場合には、変形の初期段階では、軟化した平凸状成形素材40が配列中央にある小レンズ成形凹面13b(L22)の中心部(凹面頂点13c)から周囲の隣接線13dに向かって押し広げられる。
【0048】
このため、小レンズ成形凹面13b(L22)の内部に存在した空気は凹面頂点13cから外方に広がるように変形する平凸状成形素材40によって順次押し出されることになり、小レンズ成形凹面13b内には滞留しない。
【0049】
すなわち、小レンズ成形凹面13bの凹面頂点13cと平凸状成形素材40の表面中心部43の接触部の周囲には、外周方向に開いた断面が略楔形の空間として常に形成されるため、凹面頂点13cを中心として外周方向に広がる平凸状成形素材40の凸状表面42の変形とともに、小レンズ成形凹面13b内の空気は、確実に外周方向に追い出されて排除される。
【0050】
中央に位置する小レンズ成形凹面13b(L22)に対して隣接する周辺の個々の小レンズ成形凹面13bにおいては、軟化した平凸状成形素材40が成形面13aの中心部から外周に向かう方向に当該小レンズ成形凹面13bの表面形状に沿って入り込んでいく。
【0051】
それに伴い、周辺部の各小レンズ成形凹面13bの内部に存在した空気も平凸状成形素材40の変形の流れに沿って成形面13aの外周方向に押し出されていくこととなり、滞留することはない。
【0052】
仮に小レンズ成形凹面13b内に空気が残存したとしても、個々の小レンズ成形凹面13bの隣接線13dの稜線部分にわずかな空気溜りが形成されるレベルに留まる。
このようにして、平凸状成形素材40から得られるレンズアレイ40Aの個々の小レンズ部42aの表面、すなわち光学面には、ほとんど空気が残らない状態に成形することができる。
【0053】
平凸状成形素材40からレンズアレイ40Aの所望形状が得られた段階で上側プレート130の加圧を止めれば、レンズアレイ40Aの成形が完了し、上述の図2Dに例示した外観のレンズアレイ40Aが得られる。
【0054】
なお、レンズアレイ40Aの所望形状を得るためには、上述のように上側プレート130と下側プレート120の間で成形型組立体10を加圧する際に、上側プレート130の移動量を制御してもよいし、加圧力と加圧時間を設定して制御してもよい。
【0055】
次に、上述のような成形後の冷却工程について説明する。
レンズアレイ40Aの冷却工程では、加熱された光学ガラスを軟化状態から固化状態に移行させ、レンズアレイ40Aの形状を安定させる。
【0056】
図示していない冷却装置により、成形型組立体10を冷却する。
冷却時は、成形されたレンズアレイ40Aの転写精度の確保と歪の低減のため、加圧状態が必要になる場合もある。
【0057】
なお、この冷却時の加圧力はレンズアレイ40A等の成形品に割れが発生しない程度の範囲で設定する。
成形型組立体10および成形されたレンズアレイ40Aが常温付近まで冷却された時点で冷却が完了する。
【0058】
この冷却が完了した後、成形型組立体10から上型13を外して成形品を取り出せば、レンズアレイ40Aを得ることができる。
本実施の形態において成形された上述のレンズアレイ40Aの形状は一例であり、上述の図2Dに例示したレンズアレイ40Aにおける基板部41aの形状、小レンズ部42aの形状と数、さらには、平凸状成形素材40(レンズアレイ40A)を構成するガラスの種類、上型13における小レンズ成形凹面13bの配置、平凸状成形素材40の形状、製造工程の順序等については、上述の例示内容に限定されない。
【0059】
例えば、レンズアレイ40Aにおける基板部41aの形状は、用途および枠への取り付け状態に応じて、本実施の形態で例示した円形以外に、矩形、多角形等でも構わない。
また、レンズアレイ40Aにおける小レンズ部42aの形状および数は、要求される光学的性能や仕様に応じて変更可能である。
【0060】
レンズアレイ40Aの基板部41aと小レンズ部42aは同一のガラスで構成され、ガラスの種類が限定されることはない。
また、成形型組立体10において、小レンズ成形凹面13bは上型13でなく、下型12の成形面12aに形成してもよい。
【0061】
本実施の形態では、上型13および下型12はそれぞれ単一部品で構成される例を示したが、複数の別体部品を組み合わせて構成してもよい。
例えば、上型13の場合、成形面13aを有する基本部品に小レンズ成形凹面13bを有する入れ子型部品を嵌合させるように構成したものを使用してもよい。
【0062】
成形素材としては、平凸状成形素材40に限らず、表面に凸状の曲面を有していれば、平凸のレンズ形状以外でも構わない。
例えば、両凸レンズ形状、ボール形状、卵形、ラグビーボール形状、ゴブ形状等のものが利用できる。
【0063】
あるいは、特に図示しないが、円柱の端面に凸の円錐面を設け、この円錐面の頂点が表面中心部43となるようにして、この頂点の曲率半径Rpを随意に設定する構成としてもよい。
【0064】
本実施の形態で例示したレンズアレイの製造工程では、組立工程、加熱工程、成形工程、冷却工程を組み合わせる例を示したが、自動組立装置と組み合わせれば、組立工程と加熱工程の順序を入れ替えることも可能で、加熱工程後に組立工程を入れた順序で製造しても構わない。
【0065】
後工程として、レンズアレイ40Aは外形寸法を確保するため、必要であれば基板部41aの芯取り工程を追加して、余分な外径部分を削り落としてもよい。
あるいは、芯取り作業をなくすためにスリーブ11の内径および下型12と上型13の外径を調整しておき、スリーブ11の内壁面を、基板部41aの外形を規定する変形規制部として利用することも可能である。
【0066】
また、変形規制部はスリーブ11以外の別部材で構成しても構わない。
軟化した成形素材は外径方向の変形が変形規制部で規制される。成形完了時に、スリーブ11の内壁面、上型13、下型12で囲まれた空間が、変形した成形素材で充填され、所望の外形寸法を有するレンズアレイ40Aが得られる。
【0067】
反射防止などの機能を付加する場合は、後工程でレンズアレイ40Aの表面にコーティング処理を行う。
本実施の形態のレンズアレイの製造方法によれば、平凸状成形素材40の表面中心部43を、上型13の成形面13aにおける複数の小レンズ成形凹面13bの配列中心に位置する小レンズ成形凹面13bの凹面頂点13cに一致させるとともに、表面中心部43の曲率半径Rpを、小レンズ成形凹面13bの最小曲率半径Raよりも小さい形状とすることで、平凸状成形素材40の変形による成形中に、小レンズ成形凹面13bの内部の空気を、平凸状成形素材40の表面中心部43から外周方向へと確実に排除でき、単一の平凸状成形素材40を使用しても空気溜りのない良好な品質のレンズアレイ40Aを製造することができる。
【0068】
さらに、成形中における小レンズ成形凹面13bでの空気溜まりに起因する成形不良を回避する等の目的で、成形型組立体10の全体を大掛かりな真空チャンバ等に収容する必要もなくなり、真空設備の付加等に起因する成形設備のコスト上昇、ひいてはレンズアレイ40Aのコスト上昇を抑制できるとともに、成形プロセスに真空引きや大気圧復帰等の余分な所要時間が発生せず、成形工程全体の所要時間(サイクルタイム)の短縮による生産性の向上も達成できる。
【0069】
また、複数の小レンズ成形凹面13bが配列される上型13の成形面13aに、平凸状成形素材40を配置するための、小レンズ成形凹面13bとは異なる特別な形状部位を設ける必要がないため、成形面13aの全体を、レンズアレイ40Aの成形に有効に利用でき、任意の形状の小レンズ成形凹面13bを自由に配置した所望の形状仕様や設計仕様のレンズアレイ40Aを成形できる。
【0070】
さらに、平凸状成形素材40を配置するための、小レンズ成形凹面13bとは異なる特別な形状部位を成形後に切除する等の余分な工程も不要になり、切除工程の所要時間の解消や、切除によって捨てられる成形素材の量の削減による歩留り向上も実現でき、生産性は一層向上する。
【0071】
すなわち、本実施の形態によれば、必要以上に大掛かりな製造設備を必要とすることなく、成形工程におけるサイクルタイムの増大や製造コストの上昇を招くことなく、レンズアレイの形状に制約を生じることなく、成形時の空気溜まりの発生を確実に防止して、安定な品質のレンズアレイを高い生産性で低コストにて製造することが可能となる。
(第2実施の形態)
上述の実施の形態1では、成形面13aにおける複数の小レンズ成形凹面13bの配列中心の小レンズ成形凹面13bの凹面頂点13cに、平凸状成形素材40の表面中心部43を当接させるように成形型組立体10を組み立てる例を示したが、この実施の形態2では、隣接する複数の小レンズ成形凹面のエッジ状の境界部に平凸状成形素材40の表面中心部43を一致させるように成形型組立体10を組み立てる場合を例示する。
【0072】
成形装置100および成形型組立体等の基本的な構成は上述の実施の形態1と共通するため、同一の構成要素には同一の符号を付して重複した説明は割愛し、相違点を説明する。
【0073】
図5Aは、本実施の形態2のレンズアレイの製造方法における常温下での成形型組立体の組み立て状態を示す断面図であり、図5Bは、加熱下での成形状態を示す断面図であり、図5Cは、成形後に得られたレンズアレイの一例を示す断面図である。
【0074】
図6は、本実施の形態における成形型組立体を構成する上型の成形面に配置された複数の小レンズ成形面の配列状態を示す平面図である。
図7は、本実施の形態2における成形素材の変形過程を説明するための説明図である。
【0075】
まず、本実施の形態2で成形されるレンズアレイ40Bについて説明する。
図5Cに例示されるように、本実施の形態のレンズアレイ40Bでは、小レンズ部42aの数は2×2の4個で、基板部41aの片面上に等間隔Xpで正方の配列として配置される。
【0076】
レンズアレイ40Bの材料は可視域において透明な光学ガラスが用いられる。本実施の形態では、この光学ガラスとして市販のL−BSL7(ガラス転移点498℃、屈伏点549℃)を用いた例を説明する。
【0077】
このような、形状のレンズアレイ40Bを成形するため、本実施の形態の成形型組立体10Aでは、上述の上型13の代わりに、図6に例示される成形面の形状を備えた上型14を用いる。
【0078】
この上型14の成形面14aには、レンズアレイ40Bの個々の小レンズ部42aに対応した小レンズ成形凹面14b(光学機能凹面)が配置されている。
個々の小レンズ成形凹面14bは対応するレンズアレイ40Bの個々の小レンズ部42aの形状が転写されるように形成される。
【0079】
小レンズ成形凹面14bの形状は凹形状で一定の曲率半径を有しており、成形面14aに形成される総数は4個で、正方の配列(L11〜L22)として配置され、隣接する小レンズ成形凹面14bの間には、エッジ状の隣接境界14cが存在する。
【0080】
本実施の形態の上型14における複数の小レンズ成形凹面14bの配置状態に関して説明する。
上型14の成形面14aは外形が円形をしており、円の中心を成形面14aの中心部に設定する。
【0081】
この場合、成形面14aにおける複数の小レンズ成形凹面14bの配列(L11〜L22)において、中心軸CY方向および中心軸CX方向の各々の隣接境界14cは、成形面14aの中心部で交差し、隣接交点14d(配列中心部)(P1)になっている。
【0082】
すなわち、この成形型組立体10Aの場合、上型14の成形面14aの中心部(中心軸CZ)に対して、隣接交点14d(P1)が一致するように、複数の小レンズ成形凹面14bが整列して配列されている。
【0083】
下型12の成形面12aは、上述の実施の形態1と同様に、平坦な形状に形成されている。
次に、本実施の形態2にて用いられる平凸状成形素材40について説明する。
【0084】
本実施の形態2で用いられる平凸状成形素材40は、上述の実施の形態1とほぼ同様であるが、表面中心部43が形成された凸状表面42の曲率半径Rpの設定条件が異なる。
すなわち、上述の上型14に形成された複数の小レンズ成形凹面14bの最小曲率半径Raに着目すると、個々の小レンズ成形凹面14bは一定の曲率半径R0を有しているため、最小曲率半径Raは個々の曲率半径R0と一致している。
【0085】
本実施の形態2の場合には、後述のような原理で小レンズ成形凹面14bの空気溜まりを防止するため、平凸状成形素材40の凸状表面42の曲率半径Rpは、小レンズ成形凹面14bの最小曲率半径Raに対して、以下の式(2)の関係を満足するように設定する。
Rp≦2Ra ………(2)
【0086】
次に、本実施の形態2において、成形型組立体10Aを用いたガラス成形によるレンズアレイの製造法の作用の一例を説明する。
まず、成形型組立体10Aの組み付け工程について説明する。
【0087】
平凸状成形素材40の平坦な底面41の側を下側にして下型12の成形面12aの上に載せる。
このとき、平凸状成形素材40の位置は、下型12の成形面12aの中心部(中心軸CZ)に対して、平凸状成形素材40の中心(この場合、表面中心部43)が一致するように位置決めする。
【0088】
上型14と下型12は、スリーブ11に挿入されると、上型14の中心部と下型12の中心部とがスリーブ11の中心軸上に整列された状態になる。
平凸状成形素材40の凸状表面42の中心部の頂点に位置する表面中心部43は、上型14の成形面14aの中心部、つまり、成形面14aの中央に位置する隣接交点14d(P1)に当接し、中心軸CZ上に整列する。
【0089】
このように、スリーブ11を介し、上型14と下型12とで平凸状成形素材40を挟み込むことで、成形型組立体10Aを得る。
成形型組立体10Aの内部において、平凸状成形素材40が上型14と下型12の間に挟み込まれた状態では、成形面14aの中央に位置する隣接交点14d(P1)と平凸状成形素材40の凸状表面42の表面中心部43とはほぼ点接触している。
【0090】
ただし、隣接交点14d(P1)以外の部分では上型14の成形面14aと平凸状成形素材40とは接触していない。
次に、上述のように組み立てられた成形型組立体10Aを用いる成形工程について説明する。
【0091】
成形装置100における下側プレート120と上側プレート130の間で成形型組立体10Aが所定の成形温度に加熱されて加圧されると、下型12と上型14で挟まれた平凸状成形素材40は変形しながら、下型12と上型14の間の空間に充満していく。
【0092】
この変形の初期段階では、軟化した平凸状成形素材40が隣接交点14d(P1)から外周に向かって押し広げられる。
変形が進行し、平凸状成形素材40の下端の外周部がスリーブ11の内周面に到達すると、レンズアレイ40Bの基板部41aと複数の小レンズ部42aとが形成される。
【0093】
ここで、上型14の成形面14aが平凸状成形素材40の変形に追随して変位するときに、個々の小レンズ成形凹面14bと、平凸状成形素材40の凸状表面42との間に閉空間が作られないように制御すると、空気溜りの発生を防ぐことができる。
【0094】
図7を参照して、上述の閉空間が作られない条件を検討すると以下のようになる。
この条件としては、着目する隣接交点14dに対して隣の隣接交点(隣接境界14c)の位置で、小レンズ成形凹面14bの球面が作る接線T1と、平凸状成形素材40の凸状表面42の球面が作る接線T2を交差させないことが必要である。
【0095】
すなわち、凸状表面42の接線T2が成形面14aとなす角度θ2と、小レンズ成形凹面14bの接線T1が成形面14aとなす角度θ1との差Δθ=θ2−θ1が、Δθ≧0の場合に接線T1と接線T2は交差しない。
【0096】
したがって、幾何学的な関係から、凸状表面42の曲率半径Rpと、小レンズ成形凹面14bの最小曲率半径Raについて、Rp≦2Raの関係を満足すれば、上述の接線T1と接線T2各が交差しない条件を実現することができる。
【0097】
上述の式(2)で示したように、本実施の形態2の平凸状成形素材40における凸状表面42の曲率半径Rpは、小レンズ成形凹面14bの最小曲率半径Raに対して、Rp≦2Raの関係を満足させている。
【0098】
これにより、本実施の形態2の場合には、平凸状成形素材40の変形は、小レンズ成形凹面14bの表面形状に順次沿うように、中央部から周辺部に向かってを接触範囲が広がるように進行する。
【0099】
このため、個々の小レンズ成形凹面14bでは、内部に存在した空気が、変形する平凸状成形素材40の流れに沿って成形面14aの中央から外周方向に押し出されるように確実に排除される。
【0100】
仮に残存したとしても、個々の小レンズ成形凹面14bの隣接境界14cの稜線部分にわずかな空気溜りが形成されるレベルに留まる。
これにより、本実施の形態2の場合には、レンズアレイ40Bの個々の小レンズ部42aの表面(光学面)にはほとんど空気が残らない状態にすることができる。
【0101】
所望形状が成形面14aから平凸状成形素材40に転写された段階で加圧装置140(上側プレート130)による加圧を止めれば、レンズアレイ40Bの成形が完了する。
本実施の形態2においても、上述の説明で例示したレンズアレイ40Bの基板部41aの形状、小レンズ部42aの形状および総数、素材ガラスの種類、上型14における複数の小レンズ成形凹面14bの配置、平凸状成形素材40の形状、製造工程の順序等については上述の例示内容に限定されることはない。
【0102】
レンズアレイ40Bに対する光学的な要求性能に応じて小レンズ部42aの形状および総数は変更可能である。
レンズアレイ40Bにおいて、基板部41aと個々の小レンズ部42aは同一のガラス素材で構成され、ガラス素材の種類が限定されることはない。
【0103】
また、成形型組立体10Aにおいて、小レンズ成形凹面14bは上型14でなく、下型12の側に形成してもよい。
成形素材は表面に凸状の曲面を有していれば、平凸状成形素材40のような断面が平凸のレンズ形状以外でも構わない。
【0104】
例えば、両凸レンズ形状、ボール形状、ゴブ形状、凸レンズ断面を持つ棒形状、ロッド形状のものが利用できる。
本実施の形態2のレンズアレイの製造方法によれば、上型14の成形面14aに配列された複数の小レンズ成形凹面14bの配列中心に位置する隣接境界14cの隣接交点14dに対して、平凸状成形素材40の表面中心部43が当接するように配置する場合、表面中心部43の曲率半径Rpと、小レンズ成形凹面14bの最小曲率半径Raの関係が、Rp≦2Raの関係を満足するように曲率半径Rpを設定することで、単一の平凸状成形素材40を使用して成形しても空気溜りのない良好な品質のレンズアレイ40Bを製造することができる。
【0105】
さらに、小レンズ成形凹面14bにおける成形時の空気溜まりの防止対策として大がかりな真空チャンバ等の設備や、真空排気処理を不要にして、成形装置100に対する余分な設備の付加によるコストアップおよび製造工程で必要な処理時間の増加を抑制して、生産性を向上させることができる。
【0106】
また、上述の実施の形態1と比較して、本実施の形態2の場合には、平凸状成形素材40における凸状表面42の曲率半径Rpの制約が緩和されているので、成形素材の形状の自由度が大きいという利点もある。
【0107】
次に、図8A、図8B、図8C、図9を参照して、本実施の形態2の変形例を説明する。
この変形例では、スリーブの内周面を任意の形状に設定した変形規制部を設け、さらに、成形素材としてボール状成形素材を使用して矩形のレンズアレイを製造する方法を説明する。
【0108】
図8Aは、常温下での成形型組立体の組み立て状態を示す断面図、図8Bは、上型の成形面の形状を示す斜視図、図8Cは、上型の成形面の形状を示す平面図、図9は、本変形例にて得られた矩形のレンズアレイを示す斜視図である。
【0109】
まず、図9を参照して、本変形例で得られるレンズアレイ50Aの形状について説明する。このレンズアレイ50Aの基板部52は輪郭が矩形の平行平板形状である。
そして、この基板部52の片面に複数の小レンズ部53が格子状に等間隔で配列されている。小レンズ部53の総数は4×4の16個である。
【0110】
次に、本変形例で用いる成形型組立体20について説明する。
図8Aおよび図8Bに例示されるように、成形型組立体20は、スリーブ21と、下型22および上型23で構成されている。
【0111】
下型22および上型23が嵌合されるスリーブ21の貫通孔の横断面は、上述のレンズアレイ50Aの輪郭に対応した矩形を呈しており、内周面が、矩形の変形規制面21aとして機能する。
【0112】
上型23および下型22の成形面23aおよび成形面22aが形成されたスリーブ21に対する挿入端の外周形状は、スリーブ21の内周面(変形規制面21a)に嵌合するように形成され、この例では矩形形状になる。
【0113】
この場合、図8Bに例示されるように、上型23の矩形の成形面23aの全面には、例えば、4×4(L11〜L44)の複数の小レンズ成形凹面23bが隣接して格子状に配列され、隣り合う小レンズ成形凹面23bの間には、エッジ状の隣接境界23cが形成されている。
【0114】
また、縦横方向の各々の中央の隣接境界23cの交点、すなわち、隣接交点23d(配列中心部)は、成形面23aの中心軸CZに一致している。
一方、下型22の成形面22aは、矩形の平坦面である。
【0115】
本変形例の成形型組立体20では、下型22の成形面22aの上に成形素材を配置する際、配置状態が不安定になるのを防止するため、スリーブ21の側壁面を貫通する複数の治具孔21bを設けている。
【0116】
個々の治具孔21bには、ピン形状の位置決め部材25(位置決め手段)が、例えば螺着等の方法で着脱可能に装着される。
個々の位置決め部材25の長さは、治具孔21bへ挿入した際、位置決め部材25の先端部が、中心部に配置された成形素材と接するように設定される。
【0117】
本変形例では、成形素材として、例えば球形のボール状成形素材50(成形素材)を用いる。ボール状成形素材50の体積は製造されるレンズアレイ50Aの体積と一致させる。
【0118】
上述の実施の形態2と同様に、ボール状成形素材50の曲率半径Rpは、小レンズ成形凹面23bの最小曲率半径Raに対して、Rp≦2Ra、の関係を満足させるように設定される。
【0119】
なお、ボール状成形素材50が球形の場合には、外周の任意の部位が表面中心部51(頂部)として機能する。
本変形例の成形型組立体20における組み立て工程を説明する。
【0120】
スリーブ21に下型22を嵌合させた状態で、スリーブ21の側面に設けた治具孔21bの各々に位置決め部材25を挿入する。
下型22の成形面22aの中心部にボール状成形素材50を載置する。
【0121】
変形規制面21aの中心部に載置されたボール状成形素材50は、個々の位置決め部材25の先端部と接して、位置が固定されて安定する。
この状態で、上型23をスリーブ21に嵌合させれば、上型23と下型22とでボール状成形素材50を挟み込んだ成形型組立体20が得られる。
【0122】
このように上型23と下型22の間にボール状成形素材50が挟み込まれた状態では、中央に位置する隣接交点23d(P2)とボール状成形素材50の頂点(表面中心部51)とが接触している。
【0123】
また、個々の治具孔21bに挿入した位置決め部材25は、後の成形工程で邪魔にならないよう、取り外しておく。
次に、上述のように組み立てられた成形型組立体20の成形工程について説明する。
【0124】
所定の成形温度への加熱状態で、成形型組立体20を加圧すると、下型22と上型23で挟まれたボール状成形素材50は変形しながら、成形面22aと成形面23aの間の空間部に充満していく。
【0125】
このとき、上述の実施の形態2の場合と同様に、ボール状成形素材50は、中央の隣接交点23dに接する表面中心部51から外周方向に小レンズ成形凹面23bに密着して広がるので、空気溜まりの発生が確実に防止される。そして、上下の成形面23a(小レンズ成形凹面23b)および成形面22aの形状が転写されることによって、レンズアレイ50Aの基板部52と複数の小レンズ部53とが形成される。
【0126】
さらに、スリーブ21の内周面を変形規制面21aとして用いるため、ボール状成形素材50の変形は変形規制面21aに沿って進む。
上述のように、スリーブ21の変形規制面21aの断面は矩形形状をしており、変形するボール状成形素材50が上型23、下型22、スリーブ21で構成される空間に充満すると、成形されるレンズアレイ50Aの外形は矩形形状になる。
【0127】
所望の形状のレンズアレイ50Aが得られた段階で成形型組立体20の加圧を止めれば、レンズアレイ50Aの成形が完了する。
そして、成形温度から室温までの冷却工程を経ると、基板部52の一つの面の全体に小レンズ部53が配列された矩形形状のレンズアレイ50Aが得られる。
【0128】
本変形例の成形型組立体20では、スリーブ21の内周面を変形規制面21aとして利用することで、任意の輪郭形状の基板部52を有するレンズアレイ50Aを成形することができる。
【0129】
また、スリーブ21に位置決め部材25を装着可能な構成としたことにより、例えば、球形のボール状成形素材50はもとより、卵形、ラグビーボール形状、ゴブ形状等の不安定な任意形状の成形素材を、下型22と上型23の間の中心軸CZの位置に正確かつ安定に位置決めして成形型組立体20の組立を行うことができる。
【0130】
なお、本変形例においては、レンズアレイ50Aに関して上述の説明で例示した基板部52の形状、小レンズ部53の形状および数、素材ガラスの種類、さらには、成形型組立体20の上型23における小レンズ成形凹面23bの配置、成形素材の形状、製造工程の順序等については上述の説明内容に限定されることはない。
【0131】
例えば、スリーブ21の変形規制面21aで構成される変形規制部の形状は、目的のレンズアレイの基板部の外形形状に合わせて変更することが可能である。
また、位置決め部材25が装着される治具孔21bおよび位置決め部材25の数を4つにしているが、2つ以上あればよい。
【0132】
次に、実施の形態2のさらなる変形例として上述の変形例の成形型組立体20において、ボール状成形素材50の代わりに棒状の凸レンズ断面成形素材60(成形素材)を用いる場合について説明する。
【0133】
図10Aは、凸レンズ断面成形素材の外観を例示した斜視図であり、図10Bは、この凸レンズ断面成形素材から得られるレンズアレイの外観を示す斜視図である。
図10Aに例示されるように、凸レンズ断面成形素材60の形状は棒形状であり、棒の長さ方向の断面が一定で凸レンズ断面の形状を有している。すなわち、平坦な底面61と反対側に円筒面62が設けられた、いわゆる蒲鉾形を呈している。
【0134】
したがって、凸レンズ断面成形素材60の円筒面62の頂点は、中心軸CY方向に平行な直線となり、その中央部を表面中心部63(頂部)とする。
凸レンズ断面をなす円筒面62の曲率半径Rpは、上型23の小レンズ成形凹面23bの最小曲率半径Raに対して、Rp≦2Raの関係を満足するように設定される。
【0135】
また、凸レンズ断面成形素材60の体積は、製造されるレンズアレイ60Aの体積と一致させる。
次に、上述の凸レンズ断面成形素材60を用いる場合の成形型組立体20の組み立て工程について説明する。
【0136】
スリーブ21に下型22を嵌合させた状態で、スリーブ21の側面に設けた治具孔21bの各々に位置決め部材25を挿入する。
下型22の成形面22aの中心部に凸レンズ断面成形素材60を載せる。
【0137】
スリーブ21の矩形の変形規制面21aの辺方向に合わせて凸レンズ断面成形素材60の方向を決める。
成形面22aの中心部に載置された凸レンズ断面成形素材60は、各位置決め部材の先端部と接して位置調整が行われることにより、位置が固定されて安定する。
【0138】
この状態で、上型23をスリーブ21に嵌合させれば、上型23と下型22とで凸レンズ断面成形素材60を挟み込んだ成形型組立体20が得られる。
このとき、成形型組立体20の内部では、凸レンズ断面成形素材60の表面中心部63が、上型23の複数の小レンズ成形凹面23bの隣接交点23d(P2)に一致し、かつ中心軸CYの方向が、隣接交点23dを通る中央の隣接境界23cに一致するように位置決めされた状態となる。
【0139】
治具孔21bに挿入されていた位置決め部材25は、後の成形工程で邪魔にならないよう、取り外しておく。
次に、上述のように組み立てられた成形型組立体20の成形工程について説明する。
【0140】
所望の成形温度にて成形型組立体20を押圧することで、下型22と上型23とで挟まれた凸レンズ断面成形素材60は変形しながら、成形面23aと成形面22aの間の空間に充満していく。
【0141】
変形の初期段階では、軟化した凸レンズ断面成形素材60が隣接交点23d(P2)を含む中心等分線(すなわち中心軸CY)の位置から外周方向に向かって押し広げられる。
凸レンズ断面成形素材60の変形が進行すると、レンズアレイ60Aの基板部61aと複数の小レンズ部62aとが凸レンズ断面成形素材60に転写されて形成される。
【0142】
さらに、スリーブ21の内周面を変形規制面21aにしているため、凸レンズ断面成形素材60の変形は変形規制面21aに沿って進む。
上述のように、変形規制面21aの断面は矩形形状をしており、凸レンズ断面成形素材60が上型23、下型22、スリーブ21で構成される成形空間に充填されると、成形されたレンズアレイ60Aの外形は矩形形状になる。
【0143】
所望の形状が得られた段階で成形型組立体20の加圧を止めれば、レンズアレイ60Aの成形が完了する。
ここで、凸レンズ断面成形素材60を用いる場合における空気溜りの抑制効果について説明する。
【0144】
上型23の小レンズ成形凹面23bが、下型22に接近する方向に変位したときに、この小レンズ成形凹面23bと凸レンズ断面成形素材60の円筒面62との間に閉空間を作らないようにすることが空気溜りの発生を防ぐことになる。
【0145】
凸レンズ断面成形素材60の凸部(円筒面62)を含む断面方向では、上述のように、曲率半径Rpは小レンズ成形凹面23bの最小曲率半径Raに対して、Rp≦2Raの関係を満足している。
【0146】
この条件を満足することにより、凸レンズ断面成形素材60の変形では、中心等分線(中心軸CY)の位置から外周方向に向かって、個々の小レンズ成形凹面23bの表面形状に沿って順次接触範囲が広がるように制御される。
【0147】
なお、凸レンズ断面と直交する方向(中心軸CYの方向)では小レンズ成形凹面23bと凸レンズ断面成形素材60の円筒面62との間に閉領域が形成されるように見えるが、円筒面62の直線状の頂部が、中央の隣接交点23dを通る隣接境界23cに一致しているため、3次元空間で考えると閉空間は形成されていない。
【0148】
個々の小レンズ成形凹面23bでは、内部に存在した空気が、変形する凸レンズ断面成形素材60の流れに沿って成形面23aの外周方向に押し出されるように移動して排除される。
【0149】
仮に残存したとしても、個々の小レンズ成形凹面23bの隣接境界23cの稜線部分にわずかな空気溜りが形成されるレベルに留まる。
これによって、凸レンズ断面成形素材60から成形されるレンズアレイ60Aの小レンズ部62aの光学面にはほとんど空気が残らない状態にすることができる。
【0150】
その後、室温までの冷却工程を経ると、図10Bに例示されるような、矩形形状のレンズアレイ60Aが得られる。
本変形例において、上述のレンズアレイ60Aにおける基板部61aの形状、小レンズ部62aの形状および数、素材ガラスの種類、さらには、上型23における小レンズ成形凹面23bの配置、成形素材の形状、製造工程の順序等については上述の例示内容に限定されない。
【0151】
例えば、棒形状の成形素材としては、断面に凸状の曲面を有していれば、上述の凸レンズ断面成形素材60に限らず、円柱形のロッド状成形素材でも構わない。
次に、さらに別の変形例として、棒形状の成形素材を使用し、半円筒面の小レンズ部を有したレンズアレイを得る製造方法を説明する。
【0152】
図11Aは、本変形例における上型の凹状の半円筒面からなる複数の小レンズ成形面の配列状態を示す平面図、図11Bは、その斜視図、図11Cは、それによって成形されたレンズアレイを示す斜視図である。
【0153】
図11Cに例示されるように、本変形例で得られるレンズアレイ60Bの基板部61aは矩形の平行平板形状である。この基板部61aの一つの平面に複数のシリンドリカル小レンズ部62bが平行に配列されている。
【0154】
シリンドリカル小レンズ部62bの数は6個で、凸形の半円筒面を呈している。
このレンズアレイ60Bを成形するための成形型組立体としては、上述の成形型組立体20を使用する。
【0155】
この場合、成形型組立体20では、上述の上型23の代わりに、図11Aおよび図11Bに例示される上型24を使用する。
この上型24の成形面24aには、複数の小レンズ成形凹面24b(光学機能凹面)(L1〜L6)が、軸方向を平行にして所定のピッチで隣接して配列されている。隣り合う小レンズ成形凹面24bの間には、直線状のエッジからなる隣接境界24cが形成されている。
【0156】
複数の隣接境界24cのうち、複数の小レンズ成形凹面24bの配列方向の対称中心に対応するものが中央隣接境界24d(配列中心部)である。
上型24および下型22の外周形状は、スリーブ21の矩形の内周面(変形規制面21a)に嵌合するよう矩形形状に形成されている。
【0157】
配置後の成形素材の安定性を確保するため、スリーブ21に設けられた治具孔21bおよび位置決め部材25を用いる。
成形素材としては、上述の図10Aに例示した棒形状の凸レンズ断面成形素材60を用いる。
【0158】
ここで、凸レンズ断面成形素材60における、凸部の円筒面62の曲率半径Rpは、上型24における小レンズ成形凹面24bの最小曲率半径Raに対して、Rp≦2Ra、の関係を満足するように設定される。
【0159】
次に、上述の成形型組立体20および凸レンズ断面成形素材60の工程を説明する。
成形型組立体20の組み立て工程では、凸レンズ断面成形素材60は、成形面24aの中心部に、凸レンズ断面の方向(中心軸CY)が、小レンズ成形凹面24bの長手方向に平行となるように配置する。
【0160】
この状態で、上型24をスリーブ21に嵌合させれば、上型24と下型22とで凸レンズ断面成形素材60を挟み込んだ成形型組立体20が得られる。
このように凸レンズ断面成形素材60が挟み込まれた状態の成形型組立体20では、中央に位置する隣接境界24c(E4)、すなわち中央隣接境界24dと、凸レンズ断面成形素材60の円筒面62の表面中心部63を通る中心線(中心軸CY)とが全長にわたって線接触している。
【0161】
所望の成形温度に成形型組立体20を加熱して加圧する成形工程では、下型22と上型24で挟まれた凸レンズ断面成形素材60は変形しながら、成形面24aと成形面22aの間の空間を充満していく。
【0162】
このとき、凸レンズ断面成形素材60の中央隣接境界24dに線接触する表面中心部63では、上述の図7で説明した原理により、個々の小レンズ成形凹面24bとの間に、小レンズ成形凹面24bの配列方向に開いた空間が形成されつつ変形が進行するため、小レンズ成形凹面24bの内部の空気は、滞留することなく、小レンズ成形凹面24bの配列方向に外側に向かって排除されるので、小レンズ成形凹面24bに空気溜まりが発生することが防止される。
【0163】
このようにして、凸レンズ断面成形素材60の変形が進行すると、成形面24aおよび小レンズ成形凹面24b、成形面22aの転写により、レンズアレイ60Bの基板部61aと複数のシリンドリカル小レンズ部62bとが形成される。
【0164】
上述のように、スリーブ21の変形規制面21aからなる変形規制部の断面は矩形形状をしており、成形されたレンズアレイ60Bの外形は矩形形状になる。
所望の形状が得られた段階で成形型組立体20の加圧を止めれば、レンズアレイ60Bの成形が完了する。
【0165】
その後、室温までの冷却工程を経ると、図11Cに例示されるような矩形形状のレンズアレイ60Bが得られる。
本変形例において、上述のレンズアレイ60Bの基板部61aの形状、シリンドリカル小レンズ部62bの形状および数、素材ガラスの種類、さらには、上型24における小レンズ成形凹面24bの配置、成形素材の形状、製造工程の順序等については、上述の例示内容に限定されることはない。
【0166】
例えば、棒形状の成形素材は、断面に凸状の曲面を有していれば凸レンズ断面成形素材60に限らず、例えば、円柱状のロッド状成形素材でも構わない。
上述の各実施の形態では、レンズアレイの片面に小レンズ部やシリンドリカル小レンズ部を形成した場合を例示したが、両面に形成してもよい。
【0167】
以下、両凸レンズ状成形素材を使用して、小レンズ部を基板部の両面に配置したレンズアレイを得る製造方法を説明する。
図12Aは、凸形状の小レンズ部が基板部の両面に配置されたレンズアレイを示す断面図であり、図12Bは、このレンズアレイの成形に用いられる成形素材の一例を示す側面図である。
【0168】
図12Aに例示されるレンズアレイ70Aの基板部71aは矩形の平行平板形状である。この基板部71aの両面の各々に、複数の小レンズ部72bおよび小レンズ部73bが、基板部71aの中心面に対して面対称に形成されている。
【0169】
個々の小レンズ部72b、小レンズ部73bの形状は凸形状で、基板部71aの片面ごとに、たとえば、一定の曲率半径を持つ球面で形成されている。
小レンズ部72bおよび小レンズ部73bの数は、基板部71aの片面に4×4の16個づつ、両面に合計で32個が配置されている。
【0170】
複数の小レンズ部72bおよび小レンズ部73bは、基板部71aの両面の各々に等間隔で正方の配列として配置され、両面で配列の方向と中心位置を合わせている。これにより、たとえば、対応する小レンズ部72bおよび小レンズ部73bの光軸は一致している。
【0171】
なお、意図的に、対応する小レンズ部72bと小レンズ部73bの位置をずらして配置することにより、必要な光学的機能を実現してもよいことは言うまでもない。
成形型組立体としては、上述の成形型組立体20を用いることができる。ただし、この場合には、下型22の代わりに、下型26を用いる。図8Bのように、この下型26には、上型23と同様な小レンズ成形凹面26b(光学機能凹面)(成形面26a)が形成されている。
【0172】
すなわち、上型23と下型26の各々の成形面23aおよび成形面26aには、レンズアレイ70Aの両面の小レンズ部73bおよび小レンズ部72bに対応して、それぞれ16個の小レンズ成形凹面23bおよび小レンズ成形凹面26bが形成されている。
【0173】
上型23と下型26の各々の小レンズ成形凹面23b、小レンズ成形凹面26bの配列については、配列方向を合わせておく必要がある。
成形型組立体20のように、矩形の変形規制面21aに嵌合する上型23および下型26の場合には、自動的に、上下の小レンズ成形凹面23bおよび小レンズ成形凹面26bの位置合わせが行われる。
【0174】
なお、変形規制面21aが円形の場合には、上型23および下型26の各々における小レンズ成形凹面23bの配列方向を合わせる手段として、スリーブ21の側に図示しないガイド形状を設け、上型23と下型26には、このガイド形状に嵌合する図示しないキー形状を設ける方法が考えられる。
【0175】
なお、上述の成形型組立体20の場合には、上型23および下型26の矩形の外形と、スリーブ21の矩形の変形規制面21aがキー形状およびガイド形状として機能する。
この場合には、図12Bに例示されるような両凸状成形素材70(成形素材)が用いられる。この両凸状成形素材70は、円柱形の胴部71の両端に、たとえば球面からなる凸状表面72および凸状表面73が設けられた形状を呈している。両凸状成形素材70の体積は製造されるレンズアレイ70Aの体積と一致させる。
【0176】
両凸状成形素材70における凸状表面73および凸状表面72の球面の曲率半径Rp、Rpは、対応する上型23および下型26の成形面23a、成形面26aに配置された小レンズ成形凹面23b、小レンズ成形凹面26bの最小曲率半径Ra、Raに対して以下の式(3)を満足するように設定される。
Rp≦2Ra かつ Rp≦2Ra、 ………(3)
【0177】
次に、上述のような上型23および下型26を備えた成形型組立体20の組み立て工程について説明する。
成形型組立体20の組み立て工程では、両凸状成形素材70は、下型26の成形面26aの中心部(図8CのP3)に表面中心部72a(頂部)が一致するように配置する。
【0178】
この状態で、上型23をスリーブ21に嵌合させれば、上型23と下型26とで両凸状成形素材70を挟み込んだ成形型組立体20が得られる。
この組立状態では、上型23(下型26)の成形面23a(成形面26a)の中央に位置する隣接交点P2(P3)と、両凸状成形素材70の表面中心部73a(表面中心部72a)(頂部)とが接触している。
【0179】
次に、上述の上型23および下型26を備えた成形型組立体20の成形工程について説明する。
所望の成形温度に加熱された成形型組立体20を加圧すると、下型26と上型23で挟まれた両凸状成形素材70は変形しながら、成形面23aと成形面26aの間の空間に充満していく。
【0180】
このとき、両凸状成形素材70の凸状表面72および凸状表面73が、対応する下型26の小レンズ成形凹面26bおよび上型23の小レンズ成形凹面23bに対して上述の式(3)の条件を満たす形状に設定されているので、下型26および上型23の各々に設けられた小レンズ成形凹面26bおよび小レンズ成形凹面23bでは、上述の図7で説明した原理により、空気が、成形面26aおよび成形面23aの中央に位置する隣接交点P3(P2)から外側に向かって排除されるので、小レンズ成形凹面26bおよび小レンズ成形凹面23bに空気溜まりが生じることが防止される。
【0181】
そして、両凸状成形素材70の変形が進行すると、レンズアレイ70Aの基板部71aと複数の小レンズ部72b、小レンズ部73bが、下型26および上型23から転写されて形成される。
【0182】
所望の形状が得られた段階で成形型組立体20の加圧を止めれば、レンズアレイ70Aの成形が完了する。
そして、室温までの冷却工程を経ると、図12Aに例示される矩形形状のレンズアレイ70Aが得られる。
【0183】
なお、両凸状成形素材70の凸状表面72および凸状表面73の曲率半径を、互いに等しい曲率半径Rpに設定し、次の式(4)を満足させるようにしても同様の効果が得られる。
Rp≦2Ra、かつ、Rp≦2Ra、 ………(4)
【0184】
また、本変形例において、上述のレンズアレイ70Aの基板部71aの形状、小レンズ部72b、小レンズ部73bの形状および数、素材ガラスの種類、さらには、上型23および下型26における小レンズ成形凹面23b、小レンズ成形凹面26bの配置、両凸状成形素材70の形状、製造工程の順序等については上述の開示内容に限定されない。
【0185】
例えば、要求性能に応じて小レンズ部の形状および数は変更可能であり、前述した内容に限定されることはない。
上型23および下型26の各々の小レンズ成形凹面23b、小レンズ成形凹面26bの配列方向を合わせる手段として用いられるガイド形状とキー形状に制約はなく、様々な形状のものが利用できる。
【0186】
成形素材の形状としては、上述の両凸状成形素材70に限らず、ボール形状、ゴブ形状、両凸レンズ断面の棒形状、ロッド形状のものを使用してもよい。
以上説明したように、本発明の各実施の形態によれば、成形素材の形状を工夫することで、単一の成形素材を使用して成形しても空気溜りのない良好な品質のレンズアレイを製造することができる。
【0187】
さらに、従来必要とされた真空装置と成形時の真空状態を不要にして、製造装置の付加によるコストアップおよび製造工程で必要な処理時間の増加を抑制することが可能となる。
【0188】
すなわち、必要以上に大掛かりな製造設備を必要とすることなく、成形工程におけるサイクルタイムの増大や製造コストの上昇を招くことなく、レンズアレイの形状に制約を生じることなく、成形時の空気溜まりの発生を確実に防止して、安定な品質のレンズアレイを高い生産性で低コストにて製造することができる。
【0189】
なお、本発明は、上述の実施の形態に例示した構成に限らず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【0190】
(付記1)
上型と下型とで単一の成形素材を成形して、凸形状を有する複数の小レンズ部の配列が基板部の少なくとも一方の面に配置されたレンズアレイを製造する方法において、
上型および下型はそれぞれ成形面を有し、上型および下型の少なくとも一方には、複数の小レンズ部にそれぞれ対応した小レンズ成形面が設けられ、
成形素材の表面は凸形状の曲面を有しており、
成形素材の表面中心部を小レンズ成形面が設けられた成形面の中心部に整列配置して上型と下型の間に組み込む工程と、
加熱軟化した成形素材を上型と下型とで押圧して中心方向から外周方向へ変形するようにレンズアレイを成形する工程と、
を有することを特徴とするレンズアレイの製造方法。
【0191】
(付記2)
複数の小レンズ成形面を有する成形面は、成形面の中心部に対し、各小レンズ成形面の配列の中央に位置する小レンズ成形面の面頂を整列して配置しており、
複数の小レンズ成形面は凹形状の曲面を有し、各曲面の最小曲率半径をRaとしたとき、
成形素材には曲率半径Rpの曲面が形成され、
曲率半径Rpは最小曲率半径Raとの関係がRp≦Raを満足するように設定されている、
ことを特徴とする付記1に記載のレンズアレイの製造方法。
【0192】
(付記3)
複数の小レンズ成形面を有する成形面は、成形面の中心部に対し、各小レンズ成形面の配列の中央に位置して隣接する小レンズ成形面で作られる隣接部を整列して配置しており、
各小レンズ成形面は凹形状の曲面を有し、各曲面の最小曲率半径をRaとしたとき、
成形素材には曲率半径Rpの曲面が形成され、
曲率半径Rpは最小曲率半径Raとの関係がRp≦2Raを満足するように設定されている、
ことを特徴とする付記1に記載のレンズアレイの製造方法。
【0193】
(付記4)
レンズアレイは基板部の両面に凸形状を有する複数の小レンズ部の配列が配置されており、
組み込み工程において、上型の成形面の中心部と下型の成形面の中心部とが同一軸上にあって、上型の各小レンズ成形面の配列と下型の各小レンズ成形面の配列とは配列方向を合わせて配置される、
ことを特徴とする付記1から3に記載のレンズアレイの製造方法。
【0194】
(付記5)
上型と下型との間に、加熱軟化した成形素材の変形状態を規制して所望の外形形状を得るための変形規制部を設けた、
ことを特徴とする付記1から4に記載のレンズアレイの製造方法。
【0195】
(付記6)
成形素材の材料は光学ガラスである、
ことを特徴とする付記1から5に記載のレンズアレイの製造方法。
【0196】
(付記7)
成形素材の形状は、ボール形状、凸レンズ形状、ロッド形状、凸レンズ断面を有する棒形状のいずれかである、
ことを特徴とする付記1から6に記載のレンズアレイの製造方法。
【0197】
(付記8)
成形素材の体積は、レンズアレイの体積と一致する、
ことを特徴とする付記1から7に記載のレンズアレイの製造方法。
【符号の説明】
【0198】
10 成形型組立体
10A 成形型組立体
11 スリーブ
12 下型
12a 成形面
13 上型
13a 成形面
13b 小レンズ成形凹面
13c 凹面頂点
13d 隣接線
14 上型
14a 成形面
14b 小レンズ成形凹面
14c 隣接境界
14d 隣接交点
20 成形型組立体
21 スリーブ
21a 変形規制面
21b 治具孔
22 下型
22a 成形面
23 上型
23a 成形面
23b 小レンズ成形凹面
23c 隣接境界
23d 隣接交点
24 上型
24a 成形面
24b 小レンズ成形凹面
24c 隣接境界
24d 中央隣接境界
25 位置決め部材
26 下型
26a 成形面
26b 小レンズ成形凹面
40 平凸状成形素材
40A レンズアレイ
40B レンズアレイ
41 底面
41a 基板部
42 凸状表面
42a 小レンズ部
43 表面中心部
50 ボール状成形素材
50A レンズアレイ
50B レンズアレイ
51 表面中心部
52 基板部
53 小レンズ部
60 凸レンズ断面成形素材
60A レンズアレイ
60B レンズアレイ
61 底面
61a 基板部
62 円筒面
62a 小レンズ部
62b シリンドリカル小レンズ部
63 表面中心部
70 両凸状成形素材
70A レンズアレイ
71 胴部
71a 基板部
72 凸状表面
72a 表面中心部
72b 小レンズ部
73 凸状表面
73a 表面中心部
73b 小レンズ部
100 成形装置
110 成形ステージ
120 下側プレート
121 ヒータ
130 上側プレート
131 ヒータ
140 加圧装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上型および下型の少なくとも一方の成形面に配列された複数の光学機能凹面の配列中心部に、凸形状の成形素材の頂部が一致するように位置決めする工程と、
前記上型および下型の前記成形面の間で前記成形素材を挟圧し、前記配列中心部から周辺方向に前記成形素材が広がるように変形させる工程と、
を含み、
前記成形面には、隣り合う前記光学機能凹面の境界部が前記配列中心に一致するように複数の前記光学機能凹面が配列され、
個々の前記光学機能凹面の最小曲率半径をRaとし、前記成形素材の前記頂部の曲率半径をRpとしたとき、Rp≦2Raを満足するように前記成形素材の形状が設定されていることを特徴とするレンズアレイの製造方法。
【請求項2】
請求項1記載のレンズアレイの製造方法において、
前記上型の前記成形面に配列された前記光学機能凹面の最小曲率半径Raと、前記下型の前記成形面に配列された前記光学機能凹面の最小曲率半径Raとが互いに異なり、
前記上型および下型の各々の前記成形面には、隣り合う前記光学機能凹面の境界部が前記配列中心に一致するように複数の前記光学機能凹面が配列されている場合、
前記成形素材の、前記上型および下型の各々の前記成形面の前記配列中心に一致する二つの前記頂部の各々の曲率半径RpおよびRpが、Rp≦2RaかつRp≦2Raを満たすことを特徴とするレンズアレイの製造方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のレンズアレイの製造方法において、
各々が半円筒面からなる複数の前記光学機能凹面が、前記半円筒面の軸方向を平行にして前記成形面に配列されているとき、
ロッド形状、または凸レンズ断面を有する棒形状の前記成形素材の軸を前記半円筒面の軸方向と平行に配置することを特徴とするレンズアレイの製造方法。

【図1】
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【図2B】
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【図3】
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【図6】
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【図8B】
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【図8C】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図12A】
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【図12B】
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【図2A】
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【図2C】
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【図2D】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図7】
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【図8A】
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【公開番号】特開2012−87050(P2012−87050A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−14779(P2012−14779)
【出願日】平成24年1月27日(2012.1.27)
【分割の表示】特願2007−320630(P2007−320630)の分割
【原出願日】平成19年12月12日(2007.12.12)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)