説明

レンズモジュール及びカメラモジュール

【課題】磨耗片が撮影品質に悪影響を与えることがないレンズモジュールを提供する。
【解決手段】カメラモジュール1は、外部から入射される光を集光して出射する第1及び第2のレンズ4,6と、レンズ4,6を保持するバレル2aと、バレル2aを収納するレンズ収納部3aと、レンズ4,6から出射される光を受けるセンサ16を収納する素子収納部3bとを有し、レンズ収納部3aの内底面には素子収納部3bへ貫通する貫通孔3eが形成された台座3とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば携帯電話機等に搭載されるレンズモジュール等に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば携帯電話機や監視用カメラ等に用いられる小型カメラモジュール等のレンズモジュールでは、レンズを収納したバレルが結像調節を兼ねたねじで台座に固定されている。このとき、螺合部にて生じた磨耗片がレンズモジュール内に留まることがある。
カメラモジュール内の磨耗片に関する公報記載の従来技術として、例えば、雄ねじ部が設けてあるホルダと、雌ねじ部が設けてあるホルダ受けとを有する光学機器ユニットが連結された小型撮像装置にて、雄ねじ部の一部に雄ねじ部の他の部分より小径の雄ねじ部を設け、この小径の雄ねじ部にプラスチック成形時の型の分離ラインを位置させて、小径の雄ねじ部のねじ山は、雌ねじ部のねじ山との間に所定の重なり量があるように設定する技術が存在する(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2003−32525号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、小型のカメラモジュールやレンズモジュールにおいては、ねじを使ったレンズの結像調節が広く行われている。そして、結像調節の際に螺合部にて生じた磨耗片がレンズモジュール内に留まることがある。例えば、磨耗片が撮像領域に入り込むと、撮影された映像中に磨耗片が映り込み、撮影品質へ悪影響を与えることがある。
結像調節によって磨耗片が生じても、従来は、例えば、赤外線カットフィルタ(IRCF:Infrared Cut Filter)で、磨耗片が生じる空間と撮像素子が収納される空間とが区切られていて、しかも、IRCFは撮像素子から離れた位置に配置されていた。よって、たとえ磨耗片がIRCF上に載っても磨耗片は撮像素子から離れているので、磨耗片の写り込みによる撮影品質への影響が少なかった。
【0005】
しかしながら、近年の技術革新により、カメラの薄型化や製造原価の低減等の目的のために、撮像素子が取り付けられたガラスカバーに例えばIRCFを直接形成したり、或いは、撮像素子に例えばIRCFを直接付着したりするようになった。このような構造上の変更により、磨耗片がガラスカバーや撮像素子に直接載る恐れがある。このとき、磨耗片と撮像素子とは近くなり、その結果、磨耗片の映り込みによる撮影品質への影響は大きくなってきた。
【0006】
本発明は、磨耗片が撮影品質に悪影響を与えることがないレンズモジュール等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明にかかるレンズモジュールは、外部から入射される光を集光して出射するレンズと、レンズを保持するバレルと、バレルを収納するバレル収納部と、レンズから出射される光を受ける撮像素子を収納する素子収納部とを有し、バレル収納部の内底面には素子収納部へ貫通する貫通孔が形成された台座マウントとを有することを特徴とする。
【0008】
ここで、バレルは、バレルの外周面に雄ねじが形成され、台座マウントは、台座マウントのバレル収納部の内周面に雌ねじが形成され、台座マウントは、台座マウントのバレル収納部の内底面であってバレルの雄ねじが台座マウントのバレル収納部の雌ねじに螺合する螺合部に対応する位置に貫通孔が形成されていることを特徴とすれば、バレルがバレル収納部に螺合される際に螺合部で発生する磨耗片を、貫通孔を通じて素子収納部の撮像領域から離れた場所に排出できる。
また、台座マウントは、台座マウントのバレル収納部の内底面に複数の貫通孔が形成されていることを特徴とすれば、磨耗片が螺合部のどの位置で発生しても、複数の貫通孔を通じて素子収納部に排出できる。
更に、台座マウントは、台座マウントのバレル収納部の側の開口部が広く、素子収納部の側の開口部が狭いテーパを有する貫通孔が形成されていることを特徴とすれば、発生した磨耗片を貫通孔から素子収納部に排出でき、排出された磨耗片が貫通孔からバレル収納部へ戻ることを抑制できる。
更にまた、台座マウントは、台座マウントのバレル収納部の内底面が貫通孔に向かって下方に形成されていることを特徴とすれば、発生した磨耗片を効率よく貫通孔に落とすことができる。
更にまた、台座マウントのバレル収納部に摺動可能な状態で収納され、バレルを保持するバレル保持部と、バレル保持部の下端面と台座マウントのバレル収納部の内底面とに形成され、バレル保持部をレンズの光軸方向に移動させる移動手段とを更に有することを特徴とすれば、バレル保持部の移動によって発生する磨耗片を、貫通孔を通じて素子収納部の撮像領域から離れた場所に排出できる。
更にまた、移動手段は、バレル保持部の下端面に形成される凹部と、台座マウントのバレル収納部の内底面に形成される凸部とにより構成され、台座マウントは、台座マウントのバレル収納部の内底面であってバレル保持部が摺動する軌跡上に貫通孔が形成されていることを特徴とすれば、バレル保持部の移動によって発生する磨耗片を効率よく貫通孔から排出できる。
【0009】
上記課題を解決するために、本発明にかかるカメラモジュールは、レンズモジュールと、レンズモジュールにて結像された光を電気信号に変換する撮像素子とを含み、レンズモジュールは、外部から入射される光を集光して撮像素子に結像するレンズと、レンズを保持する円筒形状のバレルと、バレルを収納するバレル収納部と、撮像素子を収納する素子収納部とを有し、バレル収納部の内底面には素子収納部へ貫通する貫通孔が形成された台座マウントとを有することを特徴とする。
【0010】
ここで、レンズモジュールのバレルは、バレルの外周面に雄ねじが形成され、レンズモジュールの台座マウントは、台座マウントのバレル収納部の内周面に雌ねじが形成され、台座マウントは、台座マウントのバレル収納部の内壁面に沿ってバレル収納部の内底面に貫通孔が形成されていることを特徴とすれば、バレルがバレル収納部に螺合される際に発生する磨耗片を、貫通孔を通じて素子収納部の撮像領域から離れた場所に排出できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、磨耗片が撮影品質に悪影響を与えることがないレンズモジュール等を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(第1の実施形態)
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための第1の実施形態について詳細に説明する。
図1は、第1の実施形態にかかるカメラモジュール1を示す外観斜視図であり、図2は、第1の実施形態にかかるカメラモジュール1の分解斜視図である。
【0013】
図1及び図2に示すように、カメラモジュール1は、複数枚のレンズ4,6を保持し(図3参照)、撮像素子の一例としてのセンサ16の受光領域(撮像エリア)16a上に入射光を結像するレンズユニット2と、レンズユニット2を保持する台座マウントの一例としての台座3とを備えている。
台座3は、接着剤(図示省略)を使って回路基板20に接着されている。回路基板20において、台座3が接着された位置とは反対側の端にコネクタ21が接続されている。台座3は、回路基板20に埋め込まれた図示しない回路パターンによってコネクタ21に電気的に接続されている。
【0014】
レンズユニット2は、レンズユニット2本体を構成するバレル(鏡筒)2aと、バレル2aに保持される第1及び第2のレンズ4,6(図3参照)とを有する。バレル2aには、外光が入射する端面側に開口部2bが形成されている。また、バレル2aには、外周面に雄ねじ2cが形成されている。
台座3は、レンズユニット2が取り付けられるバレル収納部の一例としてのレンズ収納部3aと、センサ16やガラスカバー17を収容保持する素子収納部3bとが一体に構成されている。
【0015】
レンズユニット2は、台座3のレンズ収納部3aにねじ込まれ、ねじ作用により結像調整が行われる。そして、結像調整後に、レンズユニット2は、図示しない接着剤により台座3に固着される。これにより、カメラモジュール1の焦点合わせを実現している。
バレル2a及び台座3は、例えば、黒色のポリカーボネート(PC)樹脂、液晶ポリマー(LCP)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリフタルアミド(PFA)樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂等の遮光性を有し、且つ、耐熱性を有する合成樹脂により構成される。
【0016】
図3は、第1の実施形態にかかるカメラモジュール1の縦断面図である。
図3に示すように、レンズユニット2は、レンズユニット2本体を構成するバレル2aと、バレル2aに保持される第1のレンズ4と第2のレンズ6とを有する。また、レンズユニット2は、第1及び第2のレンズ4,6の間に中間環5を備えている。更に、レンズユニット2は、レンズ押さえ7を有しており、第2のレンズ6を所定位置に保持している。
【0017】
台座3は、レンズ収納部3aの内部空間と素子収納部3bの内部空間とが連続するように透光孔が形成されている。また、台座3は、内面から延びて内部空間を狭めるように形成されたフランジ部3dを有する。台座3のレンズ収納部3aには、内周面に雌ねじ3cが形成されている。
第1及び第2のレンズ4,6は、外光を透過してセンサ16の受光領域(撮像エリア)16aに結像させるための光学素子である。即ち、開口部2bから入射した外光が第1及び第2のレンズ4,6によってセンサ16の受光領域16aに結像させるように、第1及び第2のレンズ4,6が所定の光学系を形成する。尚、第1の実施形態では、レンズユニット2は、第1及び第2のレンズ4,6という2枚のレンズで構成されるが、レンズは1枚或いは3枚であっても構わない。即ち、所定の光学系は、単一のレンズ又は複数枚のレンズ群で構成される。
第1及び第2のレンズ4,6は、例えば、透明なポリカーボネート(PC)樹脂や環状オレフィン(COP)樹脂等の熱可塑性樹脂、或いは、シリコーン樹脂やガラスなど耐熱性を有する材料で構成される。
【0018】
中間環5は、薄板円環形状を有している。中間環5は、例えば、カーボンブラックを練り込んだ延伸ポリエステル(PET)樹脂等の合成樹脂フィルムで構成されている。中間環5は、第1のレンズ4と第2のレンズ6の面間距離を一定に保つと共に、通過光量を制限する絞り機能を有しており、光学系の開口径を決定する光学絞り、或いは、ゴースト、フレア等の不要光を遮光する遮光絞りとして使われる。
レンズ押さえ7は、略円環形状を有している。レンズ押さえ7は、例えば、黒色のポリカーボネート(PC)樹脂等で構成される。図示しない接着剤にてバレル2aの内壁面に接着されることで、第1及び第2のレンズ4,6を所定位置に取り付けて保持している。
【0019】
ここで、台座3の形状を図面を用いて説明する。
図4は、台座3の斜視図であり、図5は、台座3の縦断面図である。図5(a)は、図4に示す断面位置X−X’における断面図であり、図5(b)は、図5(a)に示す拡大位置Pにおける断面の拡大図である。
図4に示すように、台座3は、レンズ収納部3aの内底面の全周に複数の貫通孔3eが形成されている。貫通孔3eが形成される位置は、バレル2aが螺合される雌ねじ3cの位置(螺合部)に対応している。より具体的には、貫通孔3eは、レンズ収納部3aの内壁面に沿って、レンズ収納部3aの内底面に形成されている。貫通孔3eは、レンズ収納部3aの径方向に100μm以下となる幅を有している。画像シミとして映り込む磨耗片の大きさが30〜50μm程度であるから、磨耗片を通過させるに足りる大きさである。
【0020】
図5(a)及び(b)に示すように、貫通孔3eは、レンズ収納部3aの側の開口が広く、素子収納部3bの側が狭いテーパに形成されている。貫通孔3eをテーパとすることで、磨耗片が発生するレンズ収納部3a側の開口を大きくできると共に、フランジ部3dの強度を確保している。テーパは、例えば、内定面に対して45°或いはそれ以上(例えば50°)として、磨耗片が貫通孔3eを通過できるようにすることが好ましい。
また、台座3のフランジ部3dは、レンズ収納部3aの内底面は透光孔から貫通孔3eに向かって下方に傾斜したスロープが形成されている。傾斜面(スロープ)は、レンズ収納部3a内で生じた磨耗片が貫通孔3eへ入り込むように極力内周側にまで形成されていることが好ましい。
【0021】
図3に戻って説明を続ける。
センサ16は、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等のイメージセンサ(撮像素子)である。第1の実施形態では、CSP(Chip Scale Package)構造を有するセンサを用いている。センサ16は、レンズユニット2を介して受光領域16aに結像した光に応じて電気信号を生成し、出力する。
【0022】
ガラスカバー17は、レンズユニット2とセンサ16との間に配置されている。ガラスカバー17には、センサ16の受光領域16a側の面(図3における下面)をガラスカバー17に向けた状態でセンサ16が固着されている。これにより、センサ16の受光領域16aに埃等が直接落ちることを防いでいる。
ガラスカバー17は、方形を有している。ガラスカバー17は、例えば、ガラス又は石英ガラス等の可視光に対して透光性を有する透明体により構成される。また、ガラスカバー17は、センサ16の受光領域16a側の面(図3における下面)に外光の特定の波長成分を除去するフィルタ15が貼り付けられている。第1の実施形態では、多層膜による光の干渉によって赤外光をカットする赤外線除去フィルタ(IRCF:Infrared Cut Filter)を用いている。尚、フィルタ15は、ガラスカバー17とは別の部材とし、台座3のフランジ部3dに取り付けられてもよい。フィルタ15がフランジ部3dに取り付けられたとき、台座3の内部空間はレンズ収納部3aと素子収納部3bの2つに仕切られる。
【0023】
ガラスカバー17の出射面(図3における下面)側には、配線パターン17aが予め設けられている。そして、この配線パターン17aの電極とセンサ16とをつなぐように複数の半田バンプ18が位置している。電極の位置に取り付けられた半田バンプ18によって、センサ16はガラスカバー17に固定されると共に、ガラスカバー17の電極と電気的に接続されている。
ここで、センサ16とガラスカバー17との離間距離は、半田バンプ18の大きさによって決定される。半田バンプ18の大きさを制御することは容易であるから、センサ16とガラスカバー17との位置決めを正確に行うことが可能である。また、複数の半田バンプ18により位置決めすることから、センサ16とガラスカバー17との離間距離が平均化される。
【0024】
ガラスカバー17の出射面側の電極の別の位置に、半田バンプ19が配置されている。この半田バンプ19により、ガラスカバー17と回路基板20との間の電気的な接続が確保される。この半田バンプ19は、ガラスカバー17に固定されているセンサ16と回路基板20とが互いに離間するためのスペーサとしても用いられている。
回路基板20は、例えば、ガラス繊維とエポキシ樹脂を主材とする絶縁性材料で構成され、表面に銅等の導体箔層を形成し、更に導体箔層の上に絶縁体層を被せて保護している。尚、ポリイミド樹脂を主体とするフレキシブルプリント基板で構成されても良い。
【0025】
ここで、第1の実施形態にかかるカメラモジュール1の組み立て(製造)方法を説明する。
バレル2aに第1のレンズ4が圧入される。その後に中間環5が収納される。そして、第1のレンズ4との間で中間環5を挟み込むように第2のレンズ6が圧入されて、レンズ押さえ7が嵌め込まれる。レンズ押さえ7とバレル2aの内周壁との境に接着剤(図示省略)が塗布されて接着されて、レンズユニット2が組み立てられる。
その後、レンズユニット2が台座3のレンズ収納部3aに仮螺合される。この仮螺合により生じる磨耗片は、圧縮空気によるエアブローによって吹き飛ばされて除去される。
【0026】
一方、センサ16は、複数の半田バンプ18を介してガラスカバー17に固定される。その後、半田バンプ19によって回路基板20に固定させる。
レンズユニット2が仮螺合された台座3は、接着剤(図示省略)によって回路基板20に接着される。
レンズユニット2は、台座3のレンズ収納部3aにて結像調整が行われ、動かないように接着される。以上の手順により、カメラモジュール1が完成する。
【0027】
このように、第1の実施形態にかかるカメラモジュール1によれば、レンズユニット2の雄ねじ2cと台座3のレンズ収納部3aの雌ねじ3cとの螺合(ねじ嵌合)によって発生する磨耗片を、貫通孔3eを通じて素子収納部3bの受光領域16aから離れた場所に排出する。よって、排出された磨耗片は受光領域16aに入らないので、磨耗片によって発生する画像シミを抑止できる。カメラモジュール1の内部の形状を工夫するだけなので、製造原価をほとんど上げることなく、撮影品質の高いカメラモジュール1を提供できる。
【0028】
図6は、他の例にかかるカメラモジュール22の縦断面図である。
図6に示すように、カメラモジュール22の台座23は、バレル収納部の一例としてのレンズ収納部23aの雌ねじ23cの下方に、全周にわたって環状凹部23gが形成されている。環状凹部23gは、バレル2aの下端部が入り込んだときのバレル2aとの隙間が30μm以下となる幅を有している。レンズの結像調節には、光学設計の中心値に対して±100μm程度の範囲を確保するために、50μm程度の空間高さが望ましく、バレル2aと環状凹部23gの壁部との重なり代(しろ)として0.1mm程度必要であることから、深さは0.2mm以上あればよい。
レンズユニット2の結像調節によって生じた磨耗片は環状凹部23gに入り、貫通孔23eから素子収納部23bに排出される。
【0029】
(第2の実施形態)
第1の実施形態にかかるカメラモジュール1は、レンズの焦点位置を調節することができないタイプ(標準タイプ)であった。これに対して、以下に説明する第2の実施形態にかかるカメラモジュール31は、レンズの焦点位置を変更できる、いわゆるモード切り替えタイプ(マクロタイプ)である。以下の説明では、第1の実施形態にかかるカメラモジュール1の構成部品と同一の構成部品は、同一の参照符号を付することで、説明を省略する。
【0030】
図7は、第2の実施形態にかかるカメラモジュール31を示す外観斜視図であり、図8は、第2の実施形態にかかるカメラモジュール31の分解斜視図である。
図7及び図8に示すように、カメラモジュール31は、レンズユニット2を螺合して保持するバレル保持部8を有している。また、カメラモジュール31は、バレル保持部8に取り付けられる弾性部材の一例としてのばね10と、ばね10を押さえる弾性部材押圧手段の一例としてのばね押さえ9とを有している。更に、カメラモジュール31は、バレル保持部8を摺動可能な状態で収納する台座マウントの一例としての台座33を備えている。台座33には、ばね押さえ9が取り付けられている。そして、ばね押さえ9と台座33との間から後述するバレル保持部8のレバー8aが突出している。
【0031】
図9は、図7の断面Y−Y’の位置におけるカメラモジュール31の縦断面図である。
図9に示すように、レンズユニット2は、バレル保持部8にねじ込まれる。バレル保持部8の上部にはばね10が取り付けられ、ばね押さえ9が台座33の所定位置に嵌め込まれることによって(図7及び図8参照)、バレル保持部8は台座33のレンズ収納部33aに収納される。
【0032】
ここで、バレル保持部8の形状を図面を用いて説明する。
図10は、バレル保持部8の斜視図である。
バレル保持部8は、例えば、黒色のポリカーボネート(PC)樹脂、液晶ポリマー(LCP)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリフタルアミド(PFA)樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂、ポリアセタール(POM)樹脂等の遮光性を有する合成樹脂により構成される。
【0033】
図10に示すように、バレル保持部8は、概ね円筒形状であって、外周面にレバー8aが突出して形成されている。このレバー8aを操作することにより、バレル保持部8はレンズ収納部33a(図9参照)内で回転する。また、バレル保持部8は、内壁面にバレル2aの雄ねじ2c(共に図9参照)と螺合する雌ねじ8bが形成されている。
バレル保持部8は、側壁部の下端面8cに複数の(第2の実施形態では3つの)凹部8dが周方向にほぼ均等に形成されている。
【0034】
ここで、台座33の形状を図面を用いて説明する。
図11は、台座33の斜視図である。
図9及び図11に示すように、台座33は、バレル保持部8が収納されるバレル収納部の一例としてのレンズ収納部33aと、センサ16やガラスカバー17を収容保持する素子収納部33bとが一体に構成されている。また、台座33は、フランジ部33dを有し、レンズ収納部33aの内部空間と素子収納部33bの内部空間とが連続するように透光孔を形成している。
更に、台座33は、レンズ収納部33aの内底面に、内壁面に沿って全周にわたって、複数の貫通孔33eが形成されている。また、複数の貫通孔33eの間に複数の凸部33fが周方向にほぼ均等に形成されている。そして、バレル保持部8がレンズユニット2を収納した状態で台座33にセットされると、この凸部33fがバレル保持部8の下端面8cに形成された凹部8d(図10参照)に当接して、焦点調節機能を果たす。これについては、後述する。
【0035】
図9に戻って説明を続ける。
ばね押さえ9は、後述するばね10を押さえるように覆いかぶさった状態で取り付けられる円環部と、その円環部の周囲に形成されたスカート部とを有している。そして、スカート部が台座33に嵌まり込むことで、ばね押さえ9は固定される。
【0036】
ばね押さえ9は、例えば、黒色のポリカーボネート(PC)樹脂、液晶ポリマー(LCP)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリフタルアミド(PFA)樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)樹脂等の遮光性を有する合成樹脂により構成される。ばね押さえ9は、台座33に嵌め込まれ使用されるので、カメラモジュール31の使用環境下の温度における台座33との膨張差を考慮して材料が選択される。例えば、台座33と同じ材料が好ましい。
ばね10は、略円環形状で、周方向に山と谷とが交互に且つ等間隔に複数形成された波状の薄板である。例えば、板厚が0.05mm程度のリン青銅やSUS鋼板等の一般的なばね材で構成される。ばね10は、ばね押さえ9と共に、バレル保持部8を上方から下方に向かって押し付けている。これにより、バレル保持部8の下端面8c(図10参照)が、レンズ収納部33aの内底面に当接する。
【0037】
(焦点調節機能)
以上の構成を有するカメラモジュール31における焦点調節機能について説明する。
図12は、焦点調節機能を説明するための図である。
レバー8a(図10参照)が操作されてバレル保持部8(図10参照)が台座33(図11参照)のレンズ収納部33a(図9参照)内で回転されると、バレル保持部8の下端面8c(図10参照)は台座33のレンズ収納部33aの内底面に接触した状態で摺動して回転する。このとき、ばね押さえ9とばね10(共に図9参照)とによってバレル保持部8は台座33に押し付けられる方向の力を受けるので、バレル保持部8が浮き上がることはない。
【0038】
図12(a)及び(b)に示すように、凹部8dには、深さが異なる第1の保持位置8d1及び第2の保持位置8d2が傾斜面を挟んで接続されて形成されている。また、説明のために、台座33の凸部33fが、第1及び第2の保持位置8d1,8d2のそれぞれに係合した状態が表示されている。
バレル保持部8が回転されて、図12(a)に示すように、第1の保持位置8d1が凸部33fに係合するとき、バレル保持部8はレンズユニット2(図9参照)の光軸方向の第1の焦点位置に移動する。これにより、レンズユニット2は、センサ16(図9参照)の側に近い位置(第1の焦点位置)となる。このとき、レンズユニット2は、焦点位置が無限遠モード(標準撮影モード)となるように調整される。
レバー8a(図10参照)が操作されてバレル保持部8が台座33のレンズ収納部33a(図9参照)内で回転するとき、ばね押さえ9とばね10(共に図9参照)とによってバレル保持部8は台座33に押し付けられて、凹部8dは凸部33fに当接された状態で摺動する。
【0039】
図12(b)に示すように、第2の保持位置8d2が凸部33fに係合するとき、バレル保持部8はレンズユニット2(図9参照)の光軸方向の第2の焦点位置に移動する。これにより、バレル保持部8はセンサ16(図9参照)から離れる位置(第2の焦点位置)に持ち上げられる。このとき、レンズユニット2は、焦点位置が接写モードとなるように調整される。
このように、レバー8a(図10参照)を操作することによって、レンズユニット2(図9参照)を無限遠モード又は接写モードにセットすることができる。よって、台座33の内底面に形成された凸部33fとバレル保持部8の凹部8dとは、バレル保持部8をレンズユニット2(図9参照)の光軸方向に移動させる移動手段の一例として機能する。尚、カメラモジュール31は、部品をすべて組み立てた後に焦点調節を行い、図示しない接着剤で接着することで、無限遠モードと接写モードの設定を確実にしている。
【0040】
以上に説明したように、第2の実施形態にかかるカメラモジュール31によれば、台座33のレンズ収納部33aの内底面に形成された凸部33fとバレル保持部8の側壁部の下端面8cに形成された凹部8dとが移動手段として機能し、バレル保持部8をレンズユニット2の光軸方向に移動させる。凸部33fと凹部8dとの摺動によって生じる磨耗片は約50μmであり、凸部33fに隣接して形成された貫通孔33eの大きさは約100μmになるように製作されているので、磨耗片は貫通孔33eを通って素子収納部33bに排出される。排出された磨耗片は受光領域16aに入らない。よって、カメラモジュール31は良好な撮影品質を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】第1の実施形態にかかるカメラモジュールの外観斜視図である。
【図2】図1に示すカメラモジュールの分解斜視図である。
【図3】図1に示すカメラモジュールの縦断面図である。
【図4】図1に示すカメラモジュールの台座の斜視図である。
【図5】図1に示すカメラモジュールの台座の縦断面図である。
【図6】他の例にかかる台座の貫通孔付近を拡大した縦断面図である。
【図7】第2の実施形態にかかるカメラモジュールの外観斜視図である。
【図8】図7に示すカメラモジュールの分解斜視図である。
【図9】図7に示すカメラモジュールの縦断面図である。
【図10】図7に示すカメラモジュールのバレル保持部の斜視図である。
【図11】図7に示すカメラモジュールの台座の斜視図である。
【図12】図7に示すカメラモジュールの焦点調節機能を説明するための図である。
【符号の説明】
【0042】
1,22,31…カメラモジュール、2…レンズユニット、2a…バレル、2b…開口部、2c…雄ねじ、3,23,33…台座(台座マウント)、3a,23a,33a…レンズ収納部(バレル収納部)、3b,23b,33b…素子収納部、3c,23c…雌ねじ、3d,33d…フランジ部、3e,23e,33e…貫通孔、4…第1のレンズ、5…中間環、6…第2のレンズ、7…レンズ押さえ、8…バレル保持部、8a…レバー、8b…雌ねじ、8c…下端面、8d…凹部(移動手段)、9…ばね押さえ、10…ばね、15…フィルタ、16…センサ(撮像素子)、16a…受光領域(撮像エリア)、17…ガラスカバー、17a…配線パターン、18,19…半田バンプ、20…回路基板、21…コネクタ、23g…環状凹部、33f…凸部(移動手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から入射される光を集光して出射するレンズと、
前記レンズを保持するバレルと、
前記バレルを収納するバレル収納部と、前記レンズから出射される光を受ける撮像素子を収納する素子収納部とを有し、当該バレル収納部の内底面には当該素子収納部へ貫通する貫通孔が形成された台座マウントと
を有することを特徴とするレンズモジュール。
【請求項2】
前記バレルは、当該バレルの外周面に雄ねじが形成され、
前記台座マウントは、当該台座マウントの前記バレル収納部の内周面に雌ねじが形成され、
前記台座マウントは、当該台座マウントの前記バレル収納部の前記内底面であって前記バレルの前記雄ねじが当該台座マウントの当該バレル収納部の前記雌ねじに螺合する螺合部に対応する位置に前記貫通孔が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のレンズモジュール。
【請求項3】
前記台座マウントは、当該台座マウントの前記バレル収納部の前記内底面に複数の前記貫通孔が形成されていることを特徴とする請求項2に記載のレンズモジュール。
【請求項4】
前記台座マウントは、当該台座マウントの前記バレル収納部の側の開口部が広く、前記素子収納部の側の開口部が狭いテーパを有する前記貫通孔が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のレンズモジュール。
【請求項5】
前記台座マウントは、当該台座マウントの前記バレル収納部の前記内底面が前記貫通孔に向かって下方に傾斜して形成されていることを特徴とする請求項1に記載のレンズモジュール。
【請求項6】
前記台座マウントの前記バレル収納部に摺動可能な状態で収納され、前記バレルを保持するバレル保持部と、
前記バレル保持部の下端面と前記台座マウントの前記バレル収納部の前記内底面とに形成され、当該バレル保持部を前記レンズの光軸方向に移動させる移動手段と
を更に有することを特徴とする請求項1に記載のレンズモジュール。
【請求項7】
前記移動手段は、
前記バレル保持部の下端面に形成される凹部と、
前記台座マウントの前記バレル収納部の前記内底面に形成される凸部と
により構成され、
前記台座マウントは、当該台座マウントの前記バレル収納部の前記内底面であって前記バレル保持部が摺動する軌跡上に前記貫通孔が形成されていることを特徴とする請求項6に記載のレンズモジュール。
【請求項8】
レンズモジュールと、
前記レンズモジュールにて結像された光を電気信号に変換する撮像素子と
を含み、
前記レンズモジュールは、
外部から入射される光を集光して前記撮像素子に結像するレンズと、
前記レンズを保持する円筒形状のバレルと、
前記バレルを収納するバレル収納部と、前記撮像素子を収納する素子収納部とを有し、当該バレル収納部の内底面には当該素子収納部へ貫通する貫通孔が形成された台座マウントと
を有することを特徴とするカメラモジュール。
【請求項9】
前記レンズモジュールの前記バレルは、当該バレルの外周面に雄ねじが形成され、
前記レンズモジュールの前記台座マウントは、当該台座マウントの前記バレル収納部の内周面に雌ねじが形成され、
前記台座マウントは、当該台座マウントの前記バレル収納部の内壁面に沿って当該バレル収納部の前記内底面に前記貫通孔が形成されていることを特徴とする請求項8に記載のカメラモジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−147664(P2009−147664A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−322625(P2007−322625)
【出願日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】