説明

レンズユニット、及び画像取得装置

【課題】レンズユニットの組立て時、収容空間からのシール部材の逃げ出しによって、レンズホルダ内でのレンズ位置にズレが生じることを抑制すること。
【解決手段】カメラモジュール100には、レンズユニット80が組み込まれている。レンズユニット80は、少なくとも1つのレンズ11と、レンズ11を保持する筒状のレンズホルダ31と、レンズ11の外周に装着されると共に、レンズホルダ31内にレンズ11が配置された状態のとき、レンズホルダ31によってレンズ11側へ押圧されるOリング21と、を備え、レンズ11とレンズホルダ31間には、Oリング21を収容する収容空間が設けられており、レンズ11及びレンズホルダ31の少なくとも一方には、収容空間からのOリング21の逃げ出しを防止する構造が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズユニット、及び画像取得装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話、ノートパソコン等の小型な電子機器に加えて、自動車等にもカメラが組み込まれることが一般的になりつつある。自動車にカメラを搭載することによって、カメラを介して運転者が視認しにくい場所を視認可能とすることができる。
【0003】
特許文献1には、保持枠に対してレンズを高精度に組み付ける機構が開示されている。具体的には、熱変形によりレンズを光軸方向の一方側に押圧してレンズを固定する構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−347996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車載用カメラの小型化を図るためには、イメージセンサの前方に配されるレンズユニットをケーシングから部分的に露出させると良い場合がある。しかしながら、この場合、レンズユニットに対して防水構造を具備させなければ、レンズユニット内の隙間を介して、外部からカメラ内に水蒸気、水が浸入してしまい、結果として、レンズユニットの機能が損なわれてしまうおそれがある。例えば、外部からカメラ内への水蒸気の浸入により、レンズがくもってしまうおそれがある。同様に、外部からカメラ内への水の浸入により、レンズ間に水が充填してしまうおそれがある。
【0006】
レンズユニット内に防水構造を設ける場合には、これに応じて、レンズユニットが大型化してしまうことを回避することが重要になる。このような観点からすれば、Oリングを採用して、レンズユニット内に防水構造を設けると良い。しかしながら、Oリングは弾性を有し、押圧によって変形するものであるため、レンズユニットの組立て時、Oリングがその収容空間から逃げ出し、意図せずに、レンズホルダ内のレンズ位置が微妙にズレてしまう場合がある。レンズホルダ内でのレンズ位置のズレが大きい場合には、レンズユニットが所望の光学特性を有しないものとして製品の出荷検査段階で不良品として扱われてしまい、レンズユニットの歩留まりが劣化してしまう。
【0007】
上述の説明から明らかなように、レンズユニットの組立て時、収容空間からのOリングの逃げ出しによって、レンズホルダ内でのレンズ位置にズレが生じることを抑制することが求められている。
【0008】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、レンズユニットの組立て時、収容空間からのシール部材の逃げ出しによって、レンズホルダ内でのレンズ位置にズレが生じることを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るレンズユニットは、少なくとも1つのレンズと、前記レンズを保持する筒状のレンズホルダと、前記レンズの外周に装着されると共に、前記レンズホルダ内に前記レンズが配置された状態のとき、前記レンズホルダによって前記レンズ側へ押圧されるシール部材と、を備え、前記レンズと前記レンズホルダ間には、前記シール部材を収容する収容空間が設けられており、前記レンズ及び前記レンズホルダの少なくとも一方には、前記収容空間からの前記シール部材の逃げ出しを防止する構造が設けられている。
【0010】
収容空間からのシール部材の逃げ出しを防止する構造をレンズ又はレンズホルダに具備させることによって、レンズユニットの組立て時、収容空間からのシール部材の逃げ出しによって、レンズホルダ内でのレンズ位置にズレが生じることを抑制することができる。
【0011】
前記レンズには、前記シール部材が嵌め込まれる溝部が設けられている、と良い。
【0012】
前記レンズの光軸に沿って前記レンズと前記レンズホルダ間の間隔が狭くなることによって、前記収容空間からの前記シール部材の逃げ出しが防止される、と良い。
【0013】
前記レンズには、前記収容空間からの前記シール部材の逃げ出しを規制する傾斜面が設けられている、と良い。
【0014】
前記レンズホルダには、前記収容空間からの前記シール部材の逃げ出しを規制する傾斜面が設けられている、と良い。
【0015】
前記溝部は、前記レンズの外周側面に凹状に形成されている、と良い。
【0016】
前記レンズ及び前記レンズホルダの少なくとも一方に、前記シール部材に対して密着する密着面が設けられることによって、前記収容空間からの前記シール部材の逃げ出しが防止される、と良い。
【0017】
前記シール部材は、断面形状が円形状であり、前記密着面は、前記シール部材の形状に応じて湾曲している、と良い。
【0018】
前記レンズは、前記レンズホルダが部分的に熱変形されることによって、前記レンズホルダ内に位置固定される、と良い。
【0019】
前記レンズホルダは、前記シール部材が外周に装着された第1レンズと、前記第1レンズが物体側に積層された第2レンズとを少なくとも保持する、と良い。
【0020】
前記第1レンズの径は、前記第2レンズの径よりも大きい、と良い。
【0021】
前記シール部材は、Oリングである、と良い。
【0022】
前記レンズは、前記レンズホルダによって押圧保持されている、と良い。
【0023】
本発明に係る画像取得装置は、上記に記載のレンズユニットと、前記レンズを介して入力する像を撮像する撮像手段と、を備える。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、レンズユニットの組立て時、収容空間からのシール部材の逃げ出しによって、レンズホルダ内でのレンズ位置にズレが生じることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施形態にかかるカメラモジュールの構成を示す模式図である。
【図2】本発明の第1実施形態にかかるレンズユニットの構成を示す模式図である。
【図3】本発明の第1実施形態にかかるレンズユニットの構成を示す部分拡大模式図である。
【図4】本発明の第1実施形態にかかるレンズユニットの構成を示す部分拡大模式図である。
【図5】本発明の第1実施形態にかかるレンズユニットの組立工程を示す工程図である。
【図6】本発明の第1実施形態にかかるレンズユニットの組立工程を示す工程図である。
【図7】本発明の第1実施形態にかかるレンズユニットの組立工程を示す工程図である。
【図8】本発明の第1実施形態にかかるレンズユニットの組立工程を示す工程図である。
【図9】本発明の第1実施形態にかかるレンズユニットの組立工程を示す工程図である。
【図10】本発明の第2実施形態にかかるレンズユニットの構成を示す模式図である。
【図11】本発明の第3実施形態にかかるレンズユニットの構成を示す模式図である。
【図12】本発明の第4実施形態にかかるレンズユニットの構成を示す模式図である。
【図13】本発明の第5実施形態にかかるレンズユニットの構成を示す模式図である。
【図14】本発明の第6実施形態にかかるレンズユニットの構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。なお、各実施の形態は、説明の便宜上、簡略化されている。図面は簡略的なものであるから、図面の記載を根拠として本発明の技術的範囲を狭く解釈してはならない。図面は、もっぱら技術的事項の説明のためのものであり、図面に示された要素の正確な大きさ等は反映していない。同一の要素には、同一の符号を付し、重複する説明は省略するものとする。上下左右といった方向を示す言葉は、図面を正面視することを前提とする。
【0027】
各実施形態は独立したものではなく、相互に組み合わせることが可能である。例えば、第1実施形態と第5実施形態とを組み合わせても良い。同様にして複数の実施形態同士を相互に組み合わせることも可能である。各実施形態の組み合わせによって、各実施形態にて得られる固有の効果が相乗され、より良い効果を得ることが可能になる。
【0028】
〔第1実施形態〕
以下、図1乃至図9を参照して本発明の第1実施形態について説明する。図1は、カメラモジュールの概略的な構成を示す模式図である。図2は、レンズユニットの概略的な構成を示す模式図である。図3及び図4は、レンズユニットの概略的な部分拡大模式図である。図5乃至図9は、レンズユニットの組立て構成を示す工程図である。
【0029】
図1に示すように、カメラモジュール100は、レンズ11、レンズ12、レンズ13、レンズ14、遮光板15、遮光板16、Oリング(シール部材)21、レンズホルダ31、ホルダ台座41、透明基板51、イメージセンサ52、配線基板53、半導体集積回路54、Oリング55、前部ケーシング61、及び後部ケーシング62を有する。レンズ11〜14は、共通の光軸AXを有する。
【0030】
カメラモジュール100内には、図2に示すレンズユニット80が組み込まれている。レンズユニット80は、レンズ11、レンズ12、レンズ13、レンズ14、遮光板15、遮光板16、Oリング21、及びレンズホルダ31から構成される。
【0031】
カメラモジュール100は、車載用カメラモジュールである。カメラモジュール100は、レンズ11〜14を介して物体側から入力する像をイメージセンサ52で撮像し、取得データを半導体集積回路54で処理する。カメラモジュール100から出力されるイメージデータは、半導体集積回路54から液晶ディスプレイ等の表示装置に転送されて表示される。自動車の運転手は、表示装置に表示される画像を確認することによって、例えば、視認しにくい場所にヒトがいるかいないかを確認することができる。
【0032】
カメラモジュール100内に組み込まれるレンズユニット80は部分的に外部に露出している。従って、レンズユニット80の信頼性を確保するためには、その内部に防水構造を設けると良い。本実施形態では、レンズユニット80内にOリング21を用いた防水構造を設けているため、レンズ11とレンズホルダ31間の隙間を介して、水蒸気、水がレンズユニット80の結像面側へ浸入することは抑制されている。
【0033】
図1に示すように、レンズユニット80は、ホルダ台座41に保持される。レンズホルダ31の下部の外周面には螺旋状のネジ山が設けられている。他方、ホルダ台座41の内周面には螺旋状のねじ溝が設けられている。レンズホルダ31のネジ山とホルダ台座41のネジ溝とを嵌め合わせた状態で、ホルダ台座41に対してレンズホルダ31を回転させることによって、ホルダ台座41に対してレンズホルダ31が固定される。
【0034】
ホルダ台座41には、レンズ11〜14の光軸に対応して開口が設けられている。ホルダ台座41には、その開口を塞ぐ態様で透明基板51が固定されている。ホルダ台座41は、配線基板53上に実装される。配線基板53の上面には、イメージセンサ52が予め実装されている。配線基板53の下面には、半導体集積回路54が予め実装されている。なお、イメージセンサ52と半導体集積回路54とは、配線基板53を介して互いに電気的に接続されている。半導体集積回路54は、配線基板53を介して、マザーボード等の他の電子部品に接続されている。
【0035】
ホルダ台座41は、プラスチック材料の成型により製造される部品である。透明基板51は、ガラス、透明プラスチック等の材料からなり、可視光線に対して実質的に透明な板状部材である。なお、透明基板51に代えて、IRカットフィルタ等の透過波長選択性を有する平板を採用しても良い。
【0036】
イメージセンサ52は、CCD(Charge Coupled Device)、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の一般的な半導体撮像素子である。イメージセンサ52は、複数の画素がマトリクス状に配置された撮像領域を有する。イメージセンサ52は、各画素での光電変換によって、撮像領域に投影された画像を取得する。イメージセンサ52は、取得した画像を、例えば、画素列単位で順に半導体集積回路54に転送する。半導体集積回路54は、画像処理機能を有する機能回路である。半導体集積回路54は、イメージセンサ52から転送される画像データに対してノイズフィルタリング等の処理を施す。
【0037】
図1に示すように、ホルダ台座41、透明基板51、イメージセンサ52、配線基板53、及び半導体集積回路54は、ケーシング内に収納される。なお、前部ケーシング61及び後部ケーシング62を組み合わせたものを単にケーシングと呼ぶことがある。他方、図1に示すように、レンズユニット80は、下半分(イメージセンサ52側の部分)がケーシング内に収納され、上半分(物体側の部分)がケーシングの外部に露出している。
【0038】
前部ケーシング61は、後部ケーシング62上に積層される。前部ケーシング61と後部ケーシング62は凸凹間の嵌め合いによって互いに固定される。前部ケーシング61は、レンズホルダ31とホルダ台座41間の係合を許容する開口を有する。前部ケーシング61の開口部の前方側の周縁には窪みが設けられており、Oリング55は、この窪みに配置されている。レンズユニット80をホルダ台座41に対して螺合させる過程で、Oリング55は、レンズホルダ31と前部ケーシング61とによって押圧されて両者の間で挟持される。このようにして、レンズユニット80と前部ケーシング61間の空間はシールされ、レンズユニット80と前部ケーシング61間が防水され、外部からケーシング内部への水蒸気、水の流入を防ぐことができる。なお、Oリング55は、リング状の弾性部材であり、例えば、シリコンゴム等からなる。
【0039】
次に、図2を参照して、レンズユニット80の構造について詳細に説明する。
【0040】
図2に示すように、レンズホルダ31内には、レンズ14、レンズ13、レンズ12、及びレンズ11が、物体側からレンズホルダ内に順次圧入される。各レンズ11〜14は、レンズホルダ31によって押圧保持される。レンズホルダ31内にレンズ11〜14を圧入する構成を採用することによって、レンズユニット80の小型化を図ると共に、Oリング21の影響によってレンズ位置にズレが生じることを抑制することができる。
【0041】
また、レンズ11〜14は、熱カシメによって、レンズホルダ31内に位置固定される。具体的には、レンズホルダ31の頂端部分を加熱して変形することによって、レンズホルダ31からレンズ11が外れてしまうことが抑制されている。熱カシメを採用することによって、レンズユニット80の大型化を伴うことなく、レンズユニット80からのレンズの脱落を防止することができる。
【0042】
レンズ11は、上面視円形状のガラスレンズ(光学素子)である。レンズ11は、レンズ径W1の部分(幅広部と呼ぶこともできる)と、レンズ径W2の部分(幅狭部と呼ぶこともある)とを有する。レンズ径W1は、レンズ径W2より大きい。レンズ径W2は、物体側から離間するに従って広くなる。レンズ11の外周面は、レンズ径W1の部分にて、レンズホルダ31の内周面に密着する。レンズ11の外周面は、レンズ径W2の部分にて、レンズホルダ31の内周面から離間している。このように、レンズ11は、レンズ径W1の部分にて、レンズホルダ31によって押圧保持されている。レンズ11の外周面とレンズホルダ31の内周面とは互いに密着しており、両者は、一方から見て他方に密着している密着面を有している。この点は、他のレンズについても同様である。
【0043】
図2に示すように、レンズ径W2は、物体側から離間するに従って大きくなる。これによって、レンズ11とレンズホルダ31に形成されるOリング21の収容空間は、物体側から離間するに従って幅狭になる。これによって、Oリング21を好適に位置決めし、レンズユニット80の組立て過程において、Oリング21の変形により、上述の収容空間からOリング21が逃げ出すことを効果的に抑制することができる。そして、Oリング21によって、レンズ11、レンズ12の位置が変位してしまうことを効果的に抑制することができる。
【0044】
図3に示すように、レンズ11には、レンズ径W1とレンズ径W2間の差に応じて、Oリング21が嵌め込まれる溝(溝部、切欠き部)11aが設けられている。Oリング21は、弾性を有する環状シール部材であり、レンズ11の外周に装着される。レンズ11にOリング21用の溝11aを設けておくことによって、レンズ11に対してOリングを簡易に装着させることができる。なお、Oリング21の具体的な形状、材料は任意である。例えば、輪状のシリコンゴムをOリング21として採用すると良い。Oリング21は、レンズ11の外周面に当接し、レンズ11の外周に沿って延在する。Oリング21の断面形状は円形状である。
【0045】
図3に示すように、溝11aの幅は、物体側から離間するに従って狭くなる。具体的には、幅W10>幅W11>幅W12の関係が成立する。また、レンズ11には、傾斜面11bが形成されている。傾斜面11bは、レンズ11の光軸に沿って物体側から離間するに従って、レンズホルダ31側へ近接する。溝11a、傾斜面11bは、ガラスレンズの切削加工により簡易に形成可能である。従って、溝11a、傾斜面11bをレンズ11に設けることに伴って、レンズユニット80が高価格化してしまうことはほとんどない。
【0046】
図4に示すように、Oリング21は、レンズ11とレンズホルダ31間に、両者によって押圧保持される。Oリング21の位置を上述の傾斜面11bによって規制することで、レンズ11とレンズホルダ31間の収容空間に保持されたOリング21がレンズ12側へ逃げ出すことを効果的に抑制することができる。
【0047】
図4に示すように、Oリング21は、レンズ11とレンズホルダ31間に押圧挟持により変形する。Oリング21は、幅W20と幅W21の部分を有する。このとき、幅W20>幅W21の関係が成立する。
【0048】
図4に示すように、レンズ11は、平坦面11dを有する。平坦面11dは、乱反射によるノイズ光の発生を回避するために黒化処理されている。換言すると、平坦面11dには、黒色層が形成されている。平坦面11dを黒化処理することによって外乱光の発生を回避し、取得画像の品質を向上することができる。
【0049】
しかしながら、このような構成を採用する場合には、レンズユニット80の外観検査時、溝11aからのOリング21の逃げ出しを外部から視認することが困難になる。本実施形態では、上述のように、溝11aからのOリング21の逃げ出しを防止する傾斜面11bをレンズ11に設ける。これによって、溝11aからのOリング21の逃げ出し自体を効果的に抑制し、平坦面11dに対して黒化処理を施すことを許容することができる。また、この場合、レンズユニット80の光学特性の試験を実施することを条件として、Oリング21の逃げ出しの確認を省略化することもできる。
【0050】
図2に戻って説明する。レンズ12は、レンズ11と同様、上面視円形状のガラスレンズである。レンズ12は、レンズ径W3の部分と、レンズ径W4の部分とを有する。レンズ径W4は、レンズ径W3より大きい。レンズ12の外周面は、レンズ径W4の部分にて、レンズホルダ31の内周面に密着する。レンズ12の外周面は、レンズ径W3の部分にて、レンズホルダ31の内周面から離間している。このように、レンズ12は、レンズ12は、レンズ径W4の部分で、レンズホルダ31により押圧保持されている。この構成を採用することによって、仮に、Oリング21が溝11aからはみ出したとしても、Oリング21によってレンズ12が押圧されることを回避し、レンズ12の位置が変動してしまうことを効果的に抑制することができる。なお、レンズ12のレンズ径W3、W4は、レンズ11のレンズ径W1、W2よりも小さい。
【0051】
遮光板15は、レンズ12とレンズ13間に配置される。遮光板15は、レンズ11〜14の光軸に対応する位置に開口を有する。遮光板15は、例えば、黒色の平板板であり、黒色プラスチックからなる。
【0052】
レンズ13は、上面視円形状のガラスレンズである。レンズ13のレンズ径W5は、レンズ12のレンズ径W3、W4よりも小さい。レンズ13は、レンズホルダ31により押圧保持されている。
【0053】
遮光板16は、レンズ13とレンズ14間に配置される。遮光板16は、レンズ11〜14の光軸に対応する位置に開口を有する。遮光板16は、例えば、黒色の平板板であり、黒色プラスチックからなる。
【0054】
レンズ14は、上面視円形状のガラスレンズである。レンズ14のレンズ径W6は、レンズ13のレンズ径W5よりも小さい。レンズ14は、レンズホルダ31により押圧保持されている。
【0055】
レンズホルダ31は、レンズ11〜14を収納する枠体である。レンズホルダ31は、受け部31a〜31dを有する。受け部31aは、レンズ11を受け入れる。受け部31bは、レンズ12を受け入れる。受け部31cは、レンズ13を受け入れる。受け部31dは、レンズ14を受け入れる。各受け部31a〜31dの受け入れ幅は、各レンズ11〜14のレンズ径に応じて設定されている。より具体的には、受け部の受け入れ空間に対してレンズが嵌め入れられた状態のとき、レンズホルダ31によって各レンズ11〜14が内側へ押圧されるように、各受け部31a〜31dの受け入れ幅は設定されている。
【0056】
レンズホルダ31の頂端部には、熱変形部32が設けられている。レンズホルダ31の頂端部を熱変形し、そこに熱変形部32を形成することによって、レンズユニット80の大型化を伴うことなく、レンズホルダ31内にレンズ11〜14を確実に位置決めし、レンズホルダ31からのレンズ11〜14の脱落を防止することができる。なお、熱変形部32は、内側(光軸AX側へ)へ延在し、レンズ11の上面に対して当接している。熱変形部32は、レンズホルダ31の全周に沿って連続的に形成していても、複数個所に個別に設けられていても良い。
【0057】
レンズホルダ31には、複数の凹部33が設けられている。凹部33に対して工具を嵌め合わせることによって、ホルダ台座41に対してレンズホルダ31を螺入することができる。レンズホルダ31の下部の外周面には、上述のように、螺旋状のネジ山が形成されている(図面では、簡略化して表示している)。
【0058】
レンズホルダ31は、レンズ11〜14の光軸に対応する位置に開口を有する底板部35を有する。底板部35の内周部は、断面視して先細りに形成されている。
【0059】
本実施形態では、上述の説明から明らかなように、レンズ径W2は、物体側から離間するに従って大きくなる。これによって、レンズ11とレンズホルダ31に形成されるOリング21の収容空間は、物体側から離間するに従って幅狭になる。これによって、Oリング21を好適に位置決めし、レンズユニット80の組立て過程において、Oリング21の変形により、上述の収容空間からOリング21が逃げ出すことを効果的に抑制することができる。そして、Oリング21の逃げ出しによって、レンズ11、レンズ12の位置が変位してしまうことを効果的に抑制することができる。
【0060】
レンズ11は、ガラスレンズであるが、本実施形態のようにレンズ径を変化させることは切削加工により簡易に行うことができる。
【0061】
本実施形態では、熱カシメによって、レンズホルダ31内にレンズ11〜14を位置固定する。熱カシメによってレンズホルダ31内のレンズを位置固定する場合には、熱カシメ後にレンズユニット80をばらして再度組み立てることは困難である。この場合、レンズユニット80を不良品として扱わざるを得ず、その歩留まりの低下は避けられない。本実施形態では、上述のように、溝11aからのOリング21の逃げ出し自体を抑制することができるため、仮に熱カシメしたとしても、溝11aからのOリング21の逃げ出しが生じることは抑制されており、これによりレンズユニット80の歩留まりが劣化してしまうこともない。なお、熱カシメを採用することによって、レンズユニット80の大型化を伴うことなく、レンズユニット80からのレンズの脱落を防止することができる。
【0062】
また、溝11aからのOリング21の逃げ出し自体を抑制することができるため、レンズ11の平坦面11dに対して黒化処理を施すことを許容でき、Oリングの逃げ出しの確認工程を省略化することもできる。
【0063】
最後に、図5乃至図9を参照して、レンズユニット80の組立て方法について説明する。
【0064】
はじめに、図5に示すように、レンズホルダ31を基板200上に載置する。
【0065】
次に、図6に示すように、レンズホルダ31内にレンズ14、レンズ13、レンズ12を圧入する。
【0066】
次に、図7に示すように、レンズ11の溝11aに対してOリング21を嵌め合わせる。
【0067】
次に、図8に示すように、レンズホルダ31内にレンズ11を圧入する。このとき、レンズ11には、上述のように傾斜面11bが設けられているため、レンズ12側へ溝11aからOリング21が逃げ出すことは抑制されている。
【0068】
次に、図9に示すように、点線円の部分に対して治具を当接し、レンズホルダ31の頂端部を内側へ倒し、上述の熱変形部32を形成する。このようにしてレンズユニット80は製造される。なお、レンズユニット80の具体的な製造方法は任意である。
【0069】
[第2実施形態]
図10を参照して本発明の第2実施形態を説明する。図10は、レンズユニット80の概略的な構成を示す模式図である。
【0070】
本実施形態では、第1実施形態とは異なり、レンズホルダ31の内周面に傾斜面31pを設ける。このような場合であっても、レンズホルダ31とレンズ11間に形成されるOリング21の収容空間を、レンズ11〜14の光軸に沿って物体側から離間するに従って幅狭とさせ、これをもってOリング21の位置を効果的に規制することができる。そして、第1実施形態と同様、レンズ11の溝11aからレンズ12側へOリング21が逃げ出すことを効果的に抑制することができる。
【0071】
[第3実施形態]
図11を参照して本発明の第3実施形態を説明する。図11は、レンズユニット80の概略的な構成を示す模式図である。
【0072】
本実施形態では、第1実施形態と同様、レンズ11に傾斜面11bを設けると共に、第2実施形態と同様、レンズホルダ31に傾斜面31pを設ける。これによって、第1及び第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0073】
[第4実施形態]
図12を参照して本発明の第4実施形態を説明する。図12は、レンズユニット80の概略的な構成を示す模式図である。
【0074】
本実施形態では、第1乃至第3実施形態とは異なり、レンズ11の外周側面に対して凹状の溝(溝部)11eを設ける。レンズ11の溝11eに対してOリング21を嵌め合わせることによって、Oリング21の位置は効果的に規制される。これによって、上述の実施形態と同様の効果を得ることができる。特に、レンズ11とレンズホルダ31間の収納空間からレンズ12側へOリング21が逃げ出すことがレンズ11自体によって妨げられているため、Oリング21がレンズ12に当接することによってレンズ12の位置が変位してしまうことを効果的に抑制することができる。
【0075】
[第5実施形態]
図13を参照して本発明の第5実施形態を説明する。図13は、レンズユニット80の概略的な構成を示す模式図である。
【0076】
本実施形態では、第1乃至第4実施形態とは異なり、レンズ11の溝11aに対して湾曲面(密着面)11fを設ける。なお、湾曲面11fは、レンズ11のレンズ面(光軸AXに対して直交する方向に延在する面)に対して略平行に存在する面である。湾曲面11fは、Oリング21に対して密着する。この構成を採用することによって、レンズホルダ31とレンズ11とが互いに密着している箇所へOリング21が入り込むことを効果的に抑制することができる。つまり、収容空間からのOリング21の逃げ出しによって、レンズホルダ内でのレンズ11の位置にズレが生じることを抑制することができる。
【0077】
[第6実施形態]
図14を参照して本発明の第5実施形態を説明する。図14は、レンズユニット80の概略的な構成を示す模式図である。
【0078】
本実施形態では、レンズ11の溝11aに対して湾曲面(密着面)11gを設ける。なお、湾曲面11gは、レンズ11の光軸に対して略平行に存在する面である。湾曲面11gは、Oリング21に対して密着する。この構成を採用することによって、レンズ11とレンズホルダ31間の収容空間からレンズ12側へOリング21が逃げ出すことを抑制し、レンズ11、12の位置ずれを効果的に抑制することができる。
【0079】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。冒頭で説明したように、各実施形態は独立したものではなく、相互に組み合わせることが可能である。レンズユニット80の用途は任意である。レンズユニット80の組立て方法は任意である。レンズユニット80を構成する各部材の具体的な形状は任意である。Oリング以外の部材をシール部材として採用しても良い。レンズユニット80に防水構造を設ける場合だけでなく、レンズユニット80に気密構造を設ける場合にも適用できる。必ずしも環状のシール部材を採用する必要はない。複数のシール部材を用いても良い。熱カシメ以外の方法を採用しても良い。レンズユニット80が保持するレンズの枚数は任意であり、発明の本質的には1枚であっても良い。各レンズの具体的なレンズ形状は任意である。
【符号の説明】
【0080】
100 カメラモジュール

41 ホルダ台座
51 透明基板
52 イメージセンサ
53 配線基板
54 半導体集積回路
55 Oリング
61 前部ケーシング
62 後部ケーシング

80 レンズユニット

11 レンズ
11a 溝
11b 傾斜面
11c 平坦面
11e 溝
11f 湾曲面
11g 湾曲面
12 レンズ
13 レンズ
14 レンズ
15 遮光板
16 遮光板
21 Oリング
31 レンズホルダ
31a〜31d レンズ受け部
31p 傾斜面
32 熱変形部
33 凹部
35 底板部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのレンズと、
前記レンズを保持する筒状のレンズホルダと、
前記レンズの外周に装着されると共に、前記レンズホルダ内に前記レンズが配置された状態のとき、前記レンズホルダによって前記レンズ側へ押圧されるシール部材と、を備え、
前記レンズと前記レンズホルダ間には、前記シール部材を収容する収容空間が設けられており、
前記レンズ及び前記レンズホルダの少なくとも一方には、前記収容空間からの前記シール部材の逃げ出しを防止する構造が設けられている、レンズユニット。
【請求項2】
前記レンズには、前記シール部材が嵌め込まれる溝部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項3】
前記レンズの光軸に沿って前記レンズと前記レンズホルダ間の間隔が狭くなることによって、前記収容空間からの前記シール部材の逃げ出しが防止されることを特徴とする請求項1又は2に記載のレンズユニット。
【請求項4】
前記レンズには、前記収容空間からの前記シール部材の逃げ出しを規制する傾斜面が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のレンズユニット。
【請求項5】
前記レンズホルダには、前記収容空間からの前記シール部材の逃げ出しを規制する傾斜面が設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のレンズユニット。
【請求項6】
前記溝部は、前記レンズの外周側面に凹状に形成されていることを特徴とする請求項2に記載のレンズユニット。
【請求項7】
前記レンズ及び前記レンズホルダの少なくとも一方に、前記シール部材に対して密着する密着面が設けられることによって、前記収容空間からの前記シール部材の逃げ出しが防止されることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載のレンズユニット。
【請求項8】
前記シール部材は、断面形状が円形状であり、
前記密着面は、前記シール部材の形状に応じて湾曲していることを特徴とする請求項7に記載のレンズユニット。
【請求項9】
前記レンズは、前記レンズホルダが部分的に熱変形されることによって、前記レンズホルダ内に位置固定されることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載のレンズユニット。
【請求項10】
前記レンズホルダは、前記シール部材が外周に装着された第1レンズと、前記第1レンズが物体側に積層された第2レンズとを少なくとも保持することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載のレンズユニット。
【請求項11】
前記第1レンズの径は、前記第2レンズの径よりも大きいことを特徴とする請求項10に記載のレンズユニット。
【請求項12】
前記シール部材は、Oリングであることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか一項に記載のレンズユニット。
【請求項13】
前記レンズは、前記レンズホルダによって押圧保持されていることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか一項に記載のレンズユニット。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれか一項に記載のレンズユニットと、
前記レンズを介して入力する像を撮像する撮像手段と、
を備える、画像取得装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−59396(P2011−59396A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−209270(P2009−209270)
【出願日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】