説明

レンズ鏡筒およびレンズユニット

【課題】本発明は、カムフォロアをレンズ保持枠から外すことなく、カムフォロアをレンズ保持枠に接着剤で固着できるレンズ鏡筒およびレンズユニットの提供を目的とする。
【解決手段】レンズ鏡筒は、レンズ保持枠43とカムフォロア5を備えている。レンズ保持枠43は、カムフォロア5と接着剤9により接着される接着部40cを備えている。カムフォロア5は、レンズ保持枠43に組み付けられてカム溝33内に配設された状態で、カム筒3bの外部と接着部40cとが連通するように開けられた接着剤充填用孔51を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクタやカメラ等に用いられるレンズ鏡筒およびレンズユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、カム筒の内側に配設され移動レンズ群を保持するレンズ保持枠と、前記レンズ保持枠の外周側に組み付けられるとともに、前記カム筒に設けられたカム溝内に摺動可能に配設されるカムフォロアとを備えたレンズ鏡筒は、従来から知られており、例えば特許文献1に開示されたものがある。
【0003】
このようなレンズ鏡筒においては、カムフォロアをレンズ保持枠の外周に組み付けた後、外れないようにカムフォロアをレンズ保持枠に接着剤により固定する場合が多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−131588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のようなレンズ鏡筒においては、カムフォロアが摺動するカム筒のカム溝とカムフォロアの径との加工精度により、組み付け後に、引っ掛かりやスティックスリップ等が生じる場合があり、そのような場合には、カム溝に適合したカムフォロアを再選定する場合がある。又、想定外の適合性不良が起こった場合には、カムフォロアをレンズ保持枠から外して、レンズ群をばらして再調整する場合もある。
【0006】
従って、カムフォロアをレンズ保持枠に接着剤により固着するのは、カム溝とカムフォロアとの互いの適合性確認後の最終工程が望ましい。しかし、適合性確認後に毎回カムフォロアをレンズ保持枠から外して、カムフォロアの先端に接着剤を塗布して再組み付けを行うとなると、組立工数の増大を招く。そのため、上記のような不具合が起こったときのみ、接着剤の接着力に抗して無理やりカムフォロアをレンズ保持枠から外すという方法も採られている場合も多い。
【0007】
しかしながら、強固に接着したカムフォロアをレンズ保持枠から安定して取り外すことは難しく、頻繁にカムフォロアをレンズ保持枠から外して調整を行う必要があるレンズユニットには適さない。例えば、近年のレンズユニットの高解像力化に伴い、部品加工誤差、組立誤差による各レンズの結像性能に対する誤差が大きくなっているため、想定外の適合性不良が起こる確率が増加しており、カムフォロアをレンズ保持枠から外して、レンズ群をばらして再調整する必要性も増えてきている。
【0008】
本発明は、カムフォロアをレンズ保持枠から外すことなく、カムフォロアをレンズ保持枠に接着剤で固着できるレンズ鏡筒およびレンズユニットの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、カム筒の内側に配設され移動レンズ群を保持するレンズ保持枠と、前記レンズ保持枠の外周側に組み付けられるとともに、前記カム筒に設けられたカム溝内に摺動可能に配設されるカムフォロアとを備えたレンズ鏡筒であって、前記レンズ保持枠は、前記カムフォロアと接着剤により接着される接着部を備え、前記カムフォロアは、当該カムフォロアが前記レンズ保持枠に組み付けられて前記カム溝内に配設された状態で、前記カム筒の外部と前記接着部とが連通するように開けられた接着剤充填用孔を備えていることを特徴とするレンズ鏡筒を提供する。
【0010】
この構成によれば、例えばカムフォロアがレンズ保持枠に組み付けられてカム溝内に配設された状態で、カム溝とカムフォロアとの互いの適合性を最終的に確認した後に、その状態のままで、接着剤充填用孔からレンズ保持枠の接着部に接着剤を充填できる。これにより、カムフォロアをレンズ保持枠から外すことなく、両者を固着できる。従って、従来のようにカム溝とカムフォロアとの互いの適合性を最終的に確認した後に、接着剤を充填するためにカムフォロアをレンズ保持枠から一旦、外すようなことをせずに済ませることができ、組み立て工程を簡素化できる。
【0011】
他の一態様によれば、前記レンズ鏡筒において、前記接着部は、当該接着部と前記カムフォロアの端面との間に接着剤充填用空間部が形成されるように構成されていることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、接着剤充填用空間部に接着剤が充填されることにより、その充填された接着剤によってカムフォロアとレンズ保持枠とを、より強固に固着できる。
【0013】
他の一態様によれば、前記レンズ鏡筒において、前記接着剤充填用孔は、前記接着部に充填した接着剤を密閉するためのボルト部材に設けられた外ネジ部と螺合する内ネジ部を備えていることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、接着剤充填用孔の内ネジ部にボルト部材の外ネジ部を螺合すれば、接着剤を充填した後の接着剤充填用空間部を密封でき、嫌気性接着剤を用いることも可能になる。
【0015】
他の一態様によれば、前記レンズ鏡筒において、前記接着剤充填用孔は、前記接着部に充填した接着剤を密閉するための軸状部材の外周と嵌合する嵌合部を備えていることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、嵌合部に軸状部材の外周を嵌合すれば、接着剤を充填した後の接着剤充填用空間部を密封でき、嫌気性接着剤を用いることも可能になる。
【0017】
又、本発明は、上述の何れかのレンズ鏡筒と、前記レンズ鏡筒内に保持された1又は複数のレンズとを備えていることを特徴とするレンズユニットを提供する。
【0018】
この構成によれば、例えばカム溝とカムフォロアとの互いの適合性を最終的に確認した後に、カムフォロアがレンズ保持枠に組み付けられてカム溝内に配設された上記の最終的に確認した状態で、接着剤充填用孔からレンズ保持枠の接着部に接着剤を充填できる。これにより、カムフォロアをレンズ保持枠から外すことなく、両者を固着できる。従って、従来のようにカム溝とカムフォロアとの互いの適合性を最終的に確認した後に、接着剤を充填するためにカムフォロアをレンズ保持枠から一旦、外すようなことをせずに済ませることができ、組み立て工程を簡素化できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、カムフォロアをレンズ保持枠から外すことなく、カムフォロアをレンズ保持枠に接着剤で固着できるレンズ鏡筒およびレンズユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態のレンズ鏡筒を備えたレンズユニットの断面図である。
【図2】図1のレンズユニットにおけるカムフォロアが付設された第1〜第5レンズ保持枠と固定筒とカム筒との分解斜視図である。
【図3】(a)は、カムフォロアが組み付けられた状態の第3レンズ保持枠と固定筒とカム筒との要部拡大断面図、(b)は、(a)の状態から、接着剤充填用空間部に接着剤充填用孔から接着剤が充填された状態の要部拡大断面図である。
【図4】他の実施形態のカムフォロアが組み付けられ接着剤充填用空間部に接着剤充填用孔から接着剤が充填された状態の第3レンズ保持枠と固定筒とカム筒との要部拡大断面図である。
【図5】他の実施形態のカムフォロアが組み付けられ接着剤充填用空間部に接着剤充填用孔から接着剤が充填された状態の第3レンズ保持枠と固定筒とカム筒との要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の一実施の形態のレンズ鏡筒を備えたレンズユニットの断面図、図2は、図1のレンズ鏡筒を備えたレンズユニットにおけるカムフォロアが付設された第1〜第5レンズ保持枠と固定筒とカム筒との分解斜視図、図3(a)は、カムフォロアが組み付けられた状態の第3レンズ保持枠と固定筒とカム筒との要部拡大断面図、図3(b)は、(a)の状態から、接着剤充填用空間部に接着剤充填用孔から接着剤が充填された状態の要部拡大断面図である。は、図1のレンズユニットにおけるカムフォロアが付設された第3レンズ保持枠と固定筒とカム筒との要部拡大断面図である。尚、図のX方向を前方側とし、Y方向を後方側として説明する。
【0022】
この実施形態のレンズユニット1は、撮像用のものとされており、図1に示すように、レンズ鏡筒10と、レンズ群4a〜4gとを備えている。レンズ群は、フォーカス機構部として機能する移動レンズ群である第1レンズ群4a及び第2レンズ群4bと、ズーム機構部として機能する移動レンズ群である第3レンズ群4c、第4レンズ群4d及び第5レンズ群4eと、固定レンズ群である第6レンズ群4f及び第7レンズ群4gとを備えている。尚、これらのレンズ群は、夫々、1又は複数のレンズにより構成される。
【0023】
レンズ鏡筒10は、図1、図2に示すように円筒状の固定筒2と、円筒状のカム筒3a、3bと、上記第1レンズ群4a〜第7レンズ群4gを保持した円筒状の第1レンズ保持枠41〜第7レンズ保持枠47と、第1レンズ保持枠41〜第5レンズ保持枠45に付設された複数のカムフォロア5とを備えている。
【0024】
固定筒2は、図2に示すように前部側の周面に、内周面から外周面に貫通するようにして、軸方向(光軸方向)の前後方向に延ばされた第1ガイド溝21aと、後部側の周面に、内周面から外周面に貫通するようにして、軸方向(光軸方向)の前後方向に延ばされた第2ガイド溝21bとを備えている。
【0025】
第1ガイド溝21aは、第1レンズ群4a及び第2レンズ群4bと係合して光軸方向にガイドし、第2ガイド溝21bは、第3レンズ群4c〜第5レンズ群4eと係合して光軸方向にガイドする。
【0026】
第2ガイド溝21bは、周方向に、等間隔に配設された3対のものから構成されている。第1ガイド溝21aも、第2ガイド溝21bと略同構成を採っており、図示しないが、周方向に、等間隔に配設された3対のものから構成されている。又、第1ガイド溝21aと第2ガイド溝21bは、全て同じ幅に形成されている。
【0027】
カム筒は、この実施形態では、第1レンズ群4a及び第2レンズ群4bと係合した第1カム筒3aと、第3レンズ群4c〜第5レンズ群4eと係合した第2カム筒3aとの2つから構成されている。
【0028】
第1カム筒3aは、図2に示すように、周面に、内周面から外周面に貫通するようにして、軸方向及び周方向に対して斜め方向に延ばされて軸方向及び周方向に所定の角度を持つように形成されたカム溝と、固定筒2と係合するための第1カム筒用係合溝30aとを備えている。
【0029】
この実施形態のカム溝は、第1カム溝31と、第1カム溝31の後方側に配設された第2カム溝32との2種類のものから構成されている。
【0030】
これらの第1カム溝31及び第2カム溝32は、夫々、周方向に等間隔に配設された3対のものから構成されている。
【0031】
第1カム筒用係合溝30aは、第2カム溝32の後方側に、内周面から外周面に貫通するようにして周方向に沿って形成されている。
【0032】
上記のように構成された第1カム筒3aは、図1に示すように固定筒2の前部側の外周に、固定筒2の軸心回りに回転自在に嵌合されるとともに、第1カム筒用係合溝30a(図2参照)に、固定筒2に設けられた係合突片(図示せず)が入れられて摺動可能に係合する。これにより、第1カム筒3aが固定筒2に軸方向に移動不能且つ回転可能に保持されている。
【0033】
第2カム筒3bは、図2に示すように、上記第2カム筒3bと同様に、周面に、内周面から外周面に貫通するようにして、軸方向及び周方向に対して斜め方向に延ばされて軸方向及び周方向に所定の角度を持つように形成されたカム溝と、固定筒2と係合するための第2カム筒用係合溝30bとを備えている。
【0034】
この第2カム筒3bのカム溝は、最前方側に配設された第3カム溝33と、第3カム溝33の後方側に配設された第4カム溝34と、第4カム溝34の後方側に配設された第5カム溝35との3種類のものから構成されている。
【0035】
これらの第3カム溝33〜第5カム溝35も、夫々、周方向に等間隔に配設された3対のものから構成されている。尚、第1カム溝31〜第5カム溝35は、全て同じ幅に形成されている。又、これらの第1カム溝31〜第5カム溝35は、上記第1ガイド溝21a及び第2ガイド溝21bと同幅に形成されている。
【0036】
第2カム筒用係合溝30bは、第5カム溝35の後方側に、内周面から外周面に貫通するようにして周方向に沿って形成されている。
【0037】
そして、このように構成された第2カム筒3bは、図1に示すように固定筒2の前部側の外周に、固定筒2の軸心回りに回転自在に嵌合されるとともに、第2カム筒用係合溝30b(図2参照)に、固定筒2に設けられた係合突片(図示せず)が入れられて摺動可能に係合する。これにより、第2カム筒3bが固定筒2に軸方向に移動不能且つ回転可能に保持されている。
【0038】
第1レンズ保持枠41は、図1、図2に示すように、内周側に第1レンズ群4aを移動不能に保持し、固定筒2の径内側であって第1カム筒3aの径内側に移動可能に配設されている。
【0039】
第2レンズ保持枠42は、内周側に第2レンズ群4bを移動不能に保持し、固定筒2の径内側であって第1カム筒3aの径内側における第1レンズ保持枠41の後方側に移動可能に配設されている。
【0040】
第3レンズ保持枠43は、内周側に第3レンズ群4cを移動不能に保持し、固定筒2の径内側であって第2カム筒3bの径内側に移動可能に配設されている。
【0041】
第4レンズ保持枠44は、内周側に第4レンズ群4dを移動不能に保持し、固定筒2の径内側であって第2カム筒3bの径内側における第3レンズ保持枠43の後方側に移動可能に配設されている。
【0042】
第5レンズ保持枠45は、内周側に第5レンズ群4eを移動不能に保持し、固定筒2の径内側であって第2カム筒3bの径内側における第4レンズ保持枠44の後方側に移動可能に配設されている。
【0043】
又、上記第1レンズ保持枠41〜第5レンズ保持枠45は、夫々、図2に示すように、その外周に、カムフォロア5を取り付けるカムフォロア取付部40を3つ、備えている。これらのカムフォロア取付部40は、第1レンズ保持枠41〜第5レンズ保持枠45夫々の周方向に沿って等間隔になるように配設されている。
【0044】
これらのカムフォロア取付部40は、全て同構成を採っており、以下に、第3レンズ保持枠43のものについて説明する。このカムフォロア取付部40は、図3に示すように、カムフォロア5を受容する受容凹部40aと、カムフォロア5と螺合する取付用内ネジ部40bと、取付用内ネジ部40bの奥部に形成されカムフォロア5と接着剤により接着される接着部40cとを備えている。
【0045】
受容凹部40aは、カムフォロア5を受容可能な円形状に、第3レンズ保持枠43の外周から所定の深さで形成されている。
【0046】
接着部40cは、この実施形態では、カムフォロア5の端面が接着部40cに非接触になるように、取付用内ネジ部40bから奥(径内側)に行くに従い漸次径が小さくなるように形成され、この接着部40cとカムフォロア5の端面とで接着剤充填用空間部8を区画形成している。
【0047】
図1に戻り、第6レンズ保持枠46は、内周側に第6レンズ群4fを移動不能に保持し、固定筒2の前方側に移動不能に配設されている。
【0048】
第7レンズ保持枠47は、内周側に第7レンズ群4gを移動不能に保持し、固定筒2の
後方側に移動不能に配設されている。以上のように、この実施形態では、物体側から像側へ順に第6レンズ群4f、第1レンズ群4a、第2レンズ群4b、第3レンズ群4c、第4レンズ群4d、第5レンズ群4e、第7レンズ群4gが配置されている。
【0049】
次に、カムフォロア5について説明する。カムフォロア5は、この実施形態では、上述のように第1レンズ保持枠41〜第5レンズ保持枠45の夫々に3個ずつ付設されており、合計27個から構成されている。
【0050】
これらのカムフォロア5は、全て同一構成を採っている。以下に、第3レンズ保持枠43に付設されたものについて説明する。
【0051】
カムフォロア5は、図2、図3に示すように、円筒体から構成されている。カムフォロア5は、その外周の先端に配設されたカム溝係合部51と、外周の基端に配設された外ネジ部(雄ネジ部)53と、外周におけるカム溝係合部51と外ネジ部52との間に配設されたガイド溝係合部52とを備えている。
【0052】
外ネジ部53は、カム溝係合部51およびガイド溝係合部52よりも径小に形成された径小部の外周に形成されている。尚、カム溝係合部51とガイド溝係合部52とは、同じ径である。
【0053】
カム溝係合部51は、その外径が第2カム筒3bの第3カム溝33の溝幅と同程度に設定され、第2カム筒3bの第3カム溝33に嵌り込んで摺動可能に係合する。ガイド溝係合部52は、その外径が固定筒2の第2ガイド溝21bの溝幅と同程度に設定され、固定筒2の第2ガイド溝21bに嵌り込んで摺動可能に係合する。また、外ネジ部53は、上記第3レンズ保持枠43の取付用内ネジ部40bに螺合する。
【0054】
又、カムフォロア5は、その内部に、基端から先端に貫通するように軸方向に開けられた接着剤充填用孔54を備えている。
【0055】
次に、このカムフォロア5の組み立て方法について説明する。例えば図3(a)に示すようにカムフォロア5の外ネジ部53を、第2カム筒3bの第3カム溝33から固定筒2の第2ガイド溝21bに通して、予め固定筒2の内側に配設した第3レンズ保持枠43の取付用内ネジ部40bに螺合させる。
【0056】
この状態で、カムフォロア5の基端の端面と空間形成用凹部40bとで、その間に接着剤充填用空間部8が区画形成される。
【0057】
また、この状態で、第3レンズ保持枠43に組み付けられたカムフォロア5のカム溝係合部51が第3カム溝33と係合し、ガイド溝係合部52が第2ガイド溝21bに係合した状態になる。
【0058】
そして、カム溝係合部51と第2カム溝32との適合性を確認する。この実施形態では、以下のようにして確認を行っている。カム溝係合部51の径が異なる4種類(5.00mm、5.01mm、5.02mm、5.03mm)のものを予め準備しておく。そして、その内の1つを上記のように第3レンズ保持枠43に組み付けた後、両者に引っ掛かり、或いは、スティックスリップ等が生じたか否かにより適合性の良否を判定し、良好でないと判定された場合には、第3カム溝33に上記準備した他のものに交換する。
【0059】
その際、カムフォロア5は、外ネジ部53が第3レンズ保持枠43の取付用内ネジ部40bに螺合されているだけのため、容易に交換できる。
【0060】
適合性が良いと判定された場合は、図3(b)に示すように接着剤充填用孔54から接着剤を接着剤充填用空間部8に充填する。使用できる接着剤は、特に限定されないが、例えばエポキシ樹脂系のものを例示できる。
【0061】
これにより、カムフォロア5を第3レンズ保持枠43に強固に固定できる。従って、従来のように、適合性が良好であることを確認できた後に、カムフォロア5を第3レンズ保持枠43から一旦外して接着剤を取付用内ネジ部40bに入れてカムフォロア5を再度螺合させて接着させるようなことを行わずに済み、組み付け工程を容易なものにできる。
【0062】
同様にして、第1レンズ保持枠41、第2レンズ保持枠42、第3レンズ保持枠41及び第5レンズ保持枠45の夫々に、カム溝に適合するカムフォロア5が組み付けられて接着剤により固着される。
【0063】
以上のようにして第1レンズ保持枠41〜第5レンズ保持枠45が組み付けられたレンズユニット1は、例えば第1カム筒3aの外周側に、第1カム筒3aに回転不能且つ固定筒2に回転可能に配設された第1カム筒用操作環6aが回転操作されることにより、第1カム筒3aが回転する。
【0064】
そして、その回転に伴って、第1レンズ保持枠41に付設されたカムフォロア5が固定筒2の第1ガイド溝21a及び第1カム筒3aの第1カム溝31を摺動し、これにより、第1レンズ保持枠41が光軸方向に移動する。また、第2レンズ保持枠42に付設されたカムフォロア5が固定筒2の第2ガイド溝21b及び第1カム筒3aの第2カム溝32を摺動し、これにより、第2レンズ保持枠42が光軸方向に移動する。
【0065】
又、第2カム筒3bの外周側に、第2カム筒3bに回転不能且つ固定筒2に回転可能に配設された第2カム筒用操作環6bが回転操作されることにより、第2カム筒3bが回転する。
【0066】
そして、その回転に伴って、第3レンズ保持枠43に付設されたカムフォロア5が固定筒2の第2ガイド溝21b及び第2カム筒3bの第3カム溝33を摺動し、これにより、第3レンズ保持枠43が光軸方向に移動する。
【0067】
又、第4レンズ保持枠44に付設されたカムフォロア5が固定筒2の第2ガイド溝21b及び第2カム筒3bの第4カム溝34を摺動し、これにより、第4レンズ保持枠44が光軸方向に移動する。
【0068】
さらに、又、第5レンズ保持枠45に付設されたカムフォロア5が固定筒2の第2ガイド溝21b及び第2カム筒3bの第5カム溝35を摺動し、これにより、第5レンズ保持枠45が光軸方向に移動する。尚、第1カム筒用操作環6aおよび第2カム筒用操作環6bは、手動で操作されるものでもよく、又、モータ等の駆動部材により駆動操作される形態のものでもよい。
【0069】
尚、上記実施形態では、カムフォロア5の接着剤充填用孔54は、接着剤充填用空間部8に接着剤を充填した状態でそのまま放置するように構成されたが、この形態のものに限らず、適宜変更できる。例えば接着剤充填用孔54に、密閉部材用係止部が設けられ、接着剤充填用空間部8を密閉するための密閉部材をその密閉部材用係止部に係止できるようにしてもよい。
【0070】
詳しくは、例えば図4に示すように、カムフォロア105の接着剤充填用孔154における接着剤充填用空間部8の近傍に、密閉部材用係止部としての内ネジ部154aが設けられる。そして、この内ネジ部154aに、接着剤充填用空間部8に接着剤109を充填した後、密閉部材としてのボルト部材155の外周に設けた外ネジ部(雄ネジ部)155aを螺合して接着剤109(接着剤充填用空間部8)を密閉する。
【0071】
このようにすれば、接着剤として嫌気性接着剤109を使用することも可能になり、より強固に接着できる。嫌気性接着剤109としては、例えばねじ緩み止め用嫌気性接着剤(ロックタイト社製)、3M(登録商標)スコッチ・ウェルド(登録商標)ねじ緩み止め用嫌気性接着剤(3M社製)などを例示できる。
【0072】
又、例えば図5に示すように、カムフォロア205の接着剤充填用孔254における接着剤充填用空間部8の近傍に、密閉部材用係止部としての嵌合部254aが設けられる。そして、この嵌合部254aに、接着剤充填用空間部8に接着剤209を充填した後、密閉部材としての軸部255の外周を嵌合して接着剤209(接着剤充填用空間部8)を密閉する。この場合も、接着剤として上記嫌気性接着剤209を使用することも可能になる。
【0073】
尚、上記実施形態では、接着剤充填用孔を備えてカムフォロアを、第1レンズ保持枠41〜第5レンズ保持枠45の全部に付設させたが、この形態のものに限らず、例えば第1レンズ保持枠41〜第5レンズ保持枠45の内の少なくとも1つのレンズ保持枠における複数のカムフォロアの少なくとも1つに、接着剤充填用孔を備えてカムフォロアを付設させるようにしてもよい。
【0074】
又、上記実施形態では、接着部とカムフォロアの端面との間に接着剤充填用空間部が形成されているが、この形態のものに限らず、接着剤充填用空間部を形成しないものでもよく、適宜変更できる。
【0075】
又、上記実施形態では、撮像用のレンズユニットに実施されているが、例えば投射用のレンズユニットとして実施することもでき、適宜変更できる。
【符号の説明】
【0076】
1 レンズユニット
10 レンズ鏡筒
2 固定筒
3a 第1カム筒
3b 第2カム筒
5 カムフォロア
8 接着剤充填用空間部
54 接着剤充填用孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カム筒の内側に配設され移動レンズ群を保持するレンズ保持枠と、前記レンズ保持枠の外周側に組み付けられるとともに、前記カム筒に設けられたカム溝内に摺動可能に配設されるカムフォロアとを備えたレンズ鏡筒であって、
前記レンズ保持枠は、前記カムフォロアと接着剤により接着される接着部を備え、
前記カムフォロアは、当該カムフォロアが前記レンズ保持枠に組み付けられて前記カム溝内に配設された状態で、前記カム筒の外部と前記接着部とが連通するように開けられた接着剤充填用孔を備えていることを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項2】
前記接着部は、当該接着部と前記カムフォロアの端面との間に接着剤充填用空間部が形成されるように構成されていることを特徴とする請求項1記載のレンズ鏡筒。
【請求項3】
前記接着剤充填用孔は、前記接着部に充填した接着剤を密閉するためのボルト部材に設けられた外ネジ部と螺合する内ネジ部を備えていることを特徴とする請求項1又は2記載のレンズ鏡筒。
【請求項4】
前記接着剤充填用孔は、前記接着部に充填した接着剤を密閉するための軸状部材の外周と嵌合する嵌合部を備えていることを特徴とする請求項1又は2記載のレンズ鏡筒。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載のレンズ鏡筒と、前記レンズ鏡筒内に保持された1又は複数のレンズとを備えていることを特徴とするレンズユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−68710(P2013−68710A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205883(P2011−205883)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(303000408)コニカミノルタアドバンストレイヤー株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】