レンズ鏡筒
【課題】安価で高品質のレンズ鏡筒を提供する。
【解決手段】鏡筒本体12の内周に嵌合された、第1コイル30、第2コイル40により、鏡筒本体12の内周に凹凸が形成されている。この凹凸により、鏡筒本体12の内周面での光の反射が抑えられ、ゴーストやフレアなどの問題を防止できる。内周にコイルを嵌合させて凹凸を形成するようにしたので、レンズ鏡筒が小径であっても容易に凹凸を形成できる。また、レンズ鏡筒を分割した状態で凹凸を形成し、後に一体化する場合と比較して、分割に伴う精度の低下やコストの増加を防止できる。
【解決手段】鏡筒本体12の内周に嵌合された、第1コイル30、第2コイル40により、鏡筒本体12の内周に凹凸が形成されている。この凹凸により、鏡筒本体12の内周面での光の反射が抑えられ、ゴーストやフレアなどの問題を防止できる。内周にコイルを嵌合させて凹凸を形成するようにしたので、レンズ鏡筒が小径であっても容易に凹凸を形成できる。また、レンズ鏡筒を分割した状態で凹凸を形成し、後に一体化する場合と比較して、分割に伴う精度の低下やコストの増加を防止できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズを保持するレンズ鏡筒に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カメラなどの光学機器では、レンズ鏡筒の内壁へ向かった迷光がレンズ鏡筒の内壁で反射することに起因してゴーストやフレアが発生してしまう。このため、レンズ鏡筒の内壁には、迷光の反射を抑えるための凹凸が形成されている。
【0003】
このような凹凸は、一般には機械加工によって形成されているが、近年、光学機器の小型化に伴ってレンズ鏡筒が小型化されており、この小型のレンズ鏡筒の内壁に機械的に凹凸を形成することが難しいという問題があった。
【0004】
このため、下記特許文献1では、軸方向で半分に分割される内筒と、内筒が挿入される外筒とからレンズ鏡筒を構成するとともに、分割した状態で内筒の内壁に遮光壁(凹凸)を形成または遮光シートを貼り付けた後、内筒を一体化して外筒に挿入している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−242150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1のようにレンズ鏡筒を分割式とすると、凹凸の形成自体は簡単となるが、一体化したときに所望の精度を得るために、部品の制作精度を向上させるだけでなく組み立て精度も向上させる必要があり、コストがかかってしまうといった問題があった。
【0007】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、コストをかけずに迷光による問題を防止できるレンズ鏡筒を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明のレンズ鏡筒は、筒状に形成され、内部にレンズが配置された鏡筒本体と、表面に低反射処理が施され、前記レンズの光軸を囲むように設けられた複数の光低反射要素が、前記鏡筒本体の一方の端部から他方の端部に向かって前記鏡筒本体の内部に整列して保持され、前記鏡筒本体の内壁へ向かった迷光を低減させる反射防止手段と、を備えたことを特徴としている。
【0009】
前記反射防止手段は、螺旋状の線材からなり、一巻分が前記光低反射要素の1つに相当する反射防止コイルであってもよい。
【0010】
前記反射防止コイルの外周が前記鏡筒本体の内壁に近接していてもよい。
【0011】
前記反射防止コイルの両端は、それぞれ前記レンズ鏡筒本体に前記光軸方向に不動に支持されていてもよい。
【0012】
前記反射防止コイルは、軸方向に圧縮された状態で前記鏡筒本体に支持されていてもよい。
【0013】
前記反射防止コイルの一端は、前記鏡筒本体に固定されたレンズに圧着して支持されていてもよい。
【0014】
前記反射防止コイルの一端は、前記鏡筒本体の内壁に固定されたリングに圧着して支持されていてもよい。
【0015】
前記線材の断面が、円形であってもよい。
【0016】
前記線材の断面が、多角形であってもよい。
【0017】
前記線材の断面が、L字型であってもよい。
【0018】
前記線材の断面が、I字型であってもよい。
【0019】
前記低反射処理は、黒色材料のめっき処理であってもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、鏡筒本体内に複数の光低反射要素を整列して配置するといった簡単な構成で迷光による問題を防止するので、コストをかけずに迷光による問題を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】レンズ鏡筒の外観図である。
【図2】レンズ鏡筒の分解図である。
【図3】レンズ鏡筒の断面図である。
【図4】レンズ鏡筒の断面の一部を拡大した拡大図である。
【図5】レンズ鏡筒の断面の一部を拡大した拡大図である。
【図6】レンズ鏡筒の断面の一部を拡大した拡大図である。
【図7】レンズ鏡筒の断面図である。
【図8】レンズ鏡筒の断面の一部を拡大した拡大図である。
【図9】レンズ鏡筒の断面の一部を拡大した拡大図である。
【図10】レンズ鏡筒の断面の一部を拡大した拡大図である。
【図11】レンズ鏡筒の断面の一部を拡大した拡大図である。
【図12】レンズ鏡筒の断面の一部を拡大した拡大図である。
【図13】レンズ鏡筒の断面の一部を拡大した拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1〜3に示すように、本発明のレンズ鏡筒10は、鏡筒本体12と、第1、第2、第3レンズ14、16、18と、第1、第2、第3係止リング24、26、28とを備えている。鏡筒本体12は、略円筒形状に形成され、内周面は光の反射率を低下させるために黒色に塗装されている。また、鏡筒本体12の内周には、突起12aと段差12b、12cが設けられている。
【0023】
第1レンズ14は、凸レンズであり、鏡筒本体12の先端部に配置されている。第1レンズ14は、外周が鏡筒本体12の内周により支持されるともに、段差12bと第1係止リング24とによって前後への移動が規制されている。第2レンズ16は、凹レンズであり、鏡筒本体12の中央部に配置されている。第2レンズ16は、外周が鏡筒本体12の内周により支持されるとともに、突起12aと第2係止リング26とによって前後への移動が規制されている。第3レンズ18は、凸レンズであり、鏡筒本体12の後端部に配置されている。第3レンズ18は、外周が鏡筒本体12の内周により支持されるとともに、段差12cと第3係止リング28とによって前後への移動が規制されている。
【0024】
また、鏡筒本体12には、第1コイル30と、第2コイル40とが設けられている。第1コイル30は、第1レンズ14と第2係止リング26との間に配置され、第2コイル40は、突起12aと第3レンズ18との間に配置されている。これら、第1、第2コイル30、40は、表面の光反射率を低下させるために黒色に塗装されている。
【0025】
第1コイル30は、線径が第1レンズ14と第2係止リング26との間の鏡筒本体12の内径の2%程度に形成され、線間が線径と同程度に形成されている。また、第1コイル30は、外径が第1レンズ14と第2係止リング26との間の鏡筒本体12の内径とほぼ等しく形成され、長さ(自由長)が第1レンズ14と第2係止リング26との間の長さとほぼ等しく形成されている。そして、第1コイル30は、鏡筒本体12の内周に嵌合されて固定(鏡筒本体12と一体化)される。
【0026】
図4に示すように、第1コイル30が鏡筒本体12に嵌合されると、第1コイル30により鏡筒本体12の内周に凹凸が形成される。そして、この凹凸により、鏡筒本体12の内周面へ向かう光(図4の矢印の指標参照)が再び鏡筒本体12の内側へ向かうまでに要する反射回数が多くなり、鏡筒本体12の内側へ向かう光が減衰される(すなわち、鏡筒本体12の内周面での光の反射が抑えられる)。これにより、ゴーストやフレアなどの問題を防止できる。
【0027】
同様に、第2コイル40は、線径が突起12aと第3レンズ18との間の鏡筒本体12の内径の2%程度に形成され、線間が線径と同程度に形成されている。また、第2コイル40は、外径が突起12aと第3レンズ18との間の鏡筒本体12の内径とほぼ等しく形成され、長さ(自由長)が突起12aと第3レンズ18との間の長さとほぼ等しく形成されている。そして、第2コイル40は、鏡筒本体12の内周に嵌合されて固定(鏡筒本体12と一体化)される。これにより、鏡筒本体12の内周に凹凸が形成され、この凹凸によって鏡筒本体12の内周面での光の反射が抑えられ、ゴーストやフレアなどの問題を防止できる。
【0028】
以上のように、本発明のレンズ鏡筒10は、内周にコイルを嵌合させて凹凸を形成するようにした。このため、例えば、内周に機械加工により凹凸を形成する場合と比較して、容易に凹凸を形成できる。また、機械加工により凹凸を形成する場合、レンズ鏡筒が小径となるほど凹凸形成の難易度が上がってしまうが、本発明によればこのような問題もない。さらに、レンズ鏡筒を2分割式にして凹凸を形成する場合と比較して、一体化したときに所望の精度を得るためにコストが高くなってしまうといった問題もない。
【0029】
なお、本発明は鏡筒本体内に複数の光低反射要素を整列して配置することにより迷光による問題を防止(レンズ鏡筒の内周面での光の反射を防止または低減)できればよいので、細部の構成は上記実施形態に限定されず適宜変更できる。例えば、上記実施形態では、3枚のレンズを用いるレンズ鏡筒に本発明を適用する例で説明をしたが、レンズの枚数や種類、及び配列はこれに限定されず適宜変更できる。また、上記実施形態では、2本のコイルを用いる例で説明をしたが、コイルの本数はレンズの枚数などに応じて適宜変更できる。
【0030】
さらに、上記実施形態では、コイルの線径を鏡筒本体の2%程度とする例で説明をしたが、コイルの線径は自由に設定できる。ただし、コイルの線径が太くなると、鏡筒本体の内径が細くなり、有効な光路の径が減少してしまう。また、コイルの線径が細くなると、凹凸としての機能が低下、すなわち、反射率を低下させる作用が低下してしまう。このため、コイルの線径は鏡筒本体の内径の0.5%〜5%の範囲であることが好ましい。
【0031】
また、上記実施形態では、コイルの線間をコイルの線径と同程度とする例で説明をしたが、コイルの線間は自由に設定できる。例えば、図5に示すように、線間密着したコイル50を用いてもよい。また、図6に示すように、線間が線径よりも大きいコイル60を用いてもよい。なお、図5以降の図面を用いた説明では、上述した実施形態と同様の部材については同様の符号を付して説明を省略している。
【0032】
図5の例のように、線間密着したコイル50を用いても、鏡筒本体12の内周には凹凸が形成されるので、反射光を減衰できる。ただし、線間を無くした場合、線間を有する場合と比較して、コイル50の外周と鏡筒本体12の内周との間の領域52を利用して反射光を減衰させることができなくなるので、反射光を減衰させる効果が弱くなってしまう。このため、コイルは線間を有するように配置することが好ましい。
【0033】
他方、図6の例のように、線間が線径よりも大きいコイル60を用いても、鏡筒本体12の内周には凹凸が形成されるので、反射光を減衰できる。ただし、線間が線径よりも極端に(2、3倍程度)大きくなってしまうと、鏡筒本体12の内周が大きく露呈され、凹凸の効果を十分に発揮できなくなってしまう。よって、コイルの線間は、コイルの線径の150%未満であることが好ましい。
【0034】
また、上記実施形態では、外径が鏡筒本体の内径とほぼ等しいコイルを用い、このコイルを、鏡筒本体の内周に嵌合させて一体化する例で説明をしたが、本発明はこれに限定されるものではない。図7に示すように、外径が鏡筒本体12の内径よりも一回り小さいコイル70を用い、このコイル70を、鏡筒本体12の内周と離間させた状態で配置してもよい。
【0035】
図7の例では、鏡筒本体12の内周にコイル保持用のリング72、74を設け、このリング72、74によりコイル70の先端及び後端を支持している。このように、鏡筒本体12の内周と離間させた状態でコイル70を配置することによって、図8に示すように、コイル70の外周と鏡筒本体12の内壁との間の領域を有効活用して反射光をより確実に減衰できる。
【0036】
さらに、上記実施形態では、コイル配置部位とほぼ等しい長さ(自由長)のコイルを用いる例、すなわち、コイルが前後の部材に付勢力を及ぼさない例で説明をしたが、本発明はこれに限定されるものではない。コイル配置部位よりも長く、弾性を有する材料から形成されたコイルを用い、このコイルを軸方向に圧縮した状態で配置することによって、前後の部材に付勢力が加えられるようにしてもよい。こうすれば、コイル自身のがたつきを防止できるだけでなく、コイルの前後に配置された部材(例えば、レンズ)のがたつきも防止できる。
【0037】
また、上記実施形態では、コイルを形成する線材の断面が円形である例で説明をしたが、コイルを形成する線材の断面(以下、単にコイルの断面と称する)は適宜変更できる。例えば、図9に示すコイル90や、図10に示すコイル100のように、断面が三角形状のコイルを用いてもよい。さらに、図11に示すコイル110のように、断面がI形状のコイルを用いてもよい。また、図12に示すコイル120や、図13に示すコイル130のように、断面がL形状のコイルを用いてもよい。もちろん、コイルの断面が4角形、5角形、6角形などの多角形でもよい。
【0038】
さらに、上記実施形態では、鏡筒本体の内周やコイルを黒色に塗装する例で説明をしたが、塗料の色や種類、塗装の手法はこれに限定されず適宜変更できる。例えば、黒色のめっき加工を施すことによって塗装面にμm単位の微細な凹凸を形成し、この微細な凹凸によって、鏡筒本体の内周面やコイルの表面での反射を抑えるようにしてもよい。もちろん、塗装に代えて鏡筒本体やコイルを黒色の材料から形成してもよいし、塗装以外の表面加工処理によって鏡筒本体の内周面やコイルの表面での反射を抑えるようにしてもよい。
【0039】
また、上記実施形態では、鏡筒本体内に配置する反射防止手段としてコイルを用いる例で説明をしたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、リング状のエレメントを複数並べたものを反射防止手段として用いてもよい。もちろん、コイル状のエレメントを直列に複数並べたものを反射防止手段として用いてもよい。このように、複数のエレメントを並べるようにすれば、鏡筒本体の長さが変化しても(長さの異なるレンズ鏡筒に本発明を適用する際に)、個々のエレメントの構成を変えずに並べるエレメントの数を変化させることで簡単に対応できる。
【0040】
なお、上記実施形態では、内周が円形の鏡筒本体内に外周が円形のエレメントを配置する例で説明をしたが、内周が矩形の鏡筒本体内に外周が矩形のエレメントを配置してもよい。もちろん、内周が多角形状の鏡筒本体内に外周が多角形状のエレメントを配置してもよい。また、内周が矩形の鏡筒本体内に外周が円形のエレメントを配置するなど、鏡筒本体の内周形状とエレメントの外周形状とが一致しなくてもよい。
【符号の説明】
【0041】
10 レンズ鏡筒
12 鏡筒本体
14 第1レンズ
16 第2レンズ
18 第3レンズ
30 第1コイル
40 第2コイル
50、60、70、80、90、100、110、120、130 コイル
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズを保持するレンズ鏡筒に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カメラなどの光学機器では、レンズ鏡筒の内壁へ向かった迷光がレンズ鏡筒の内壁で反射することに起因してゴーストやフレアが発生してしまう。このため、レンズ鏡筒の内壁には、迷光の反射を抑えるための凹凸が形成されている。
【0003】
このような凹凸は、一般には機械加工によって形成されているが、近年、光学機器の小型化に伴ってレンズ鏡筒が小型化されており、この小型のレンズ鏡筒の内壁に機械的に凹凸を形成することが難しいという問題があった。
【0004】
このため、下記特許文献1では、軸方向で半分に分割される内筒と、内筒が挿入される外筒とからレンズ鏡筒を構成するとともに、分割した状態で内筒の内壁に遮光壁(凹凸)を形成または遮光シートを貼り付けた後、内筒を一体化して外筒に挿入している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−242150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1のようにレンズ鏡筒を分割式とすると、凹凸の形成自体は簡単となるが、一体化したときに所望の精度を得るために、部品の制作精度を向上させるだけでなく組み立て精度も向上させる必要があり、コストがかかってしまうといった問題があった。
【0007】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、コストをかけずに迷光による問題を防止できるレンズ鏡筒を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明のレンズ鏡筒は、筒状に形成され、内部にレンズが配置された鏡筒本体と、表面に低反射処理が施され、前記レンズの光軸を囲むように設けられた複数の光低反射要素が、前記鏡筒本体の一方の端部から他方の端部に向かって前記鏡筒本体の内部に整列して保持され、前記鏡筒本体の内壁へ向かった迷光を低減させる反射防止手段と、を備えたことを特徴としている。
【0009】
前記反射防止手段は、螺旋状の線材からなり、一巻分が前記光低反射要素の1つに相当する反射防止コイルであってもよい。
【0010】
前記反射防止コイルの外周が前記鏡筒本体の内壁に近接していてもよい。
【0011】
前記反射防止コイルの両端は、それぞれ前記レンズ鏡筒本体に前記光軸方向に不動に支持されていてもよい。
【0012】
前記反射防止コイルは、軸方向に圧縮された状態で前記鏡筒本体に支持されていてもよい。
【0013】
前記反射防止コイルの一端は、前記鏡筒本体に固定されたレンズに圧着して支持されていてもよい。
【0014】
前記反射防止コイルの一端は、前記鏡筒本体の内壁に固定されたリングに圧着して支持されていてもよい。
【0015】
前記線材の断面が、円形であってもよい。
【0016】
前記線材の断面が、多角形であってもよい。
【0017】
前記線材の断面が、L字型であってもよい。
【0018】
前記線材の断面が、I字型であってもよい。
【0019】
前記低反射処理は、黒色材料のめっき処理であってもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、鏡筒本体内に複数の光低反射要素を整列して配置するといった簡単な構成で迷光による問題を防止するので、コストをかけずに迷光による問題を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】レンズ鏡筒の外観図である。
【図2】レンズ鏡筒の分解図である。
【図3】レンズ鏡筒の断面図である。
【図4】レンズ鏡筒の断面の一部を拡大した拡大図である。
【図5】レンズ鏡筒の断面の一部を拡大した拡大図である。
【図6】レンズ鏡筒の断面の一部を拡大した拡大図である。
【図7】レンズ鏡筒の断面図である。
【図8】レンズ鏡筒の断面の一部を拡大した拡大図である。
【図9】レンズ鏡筒の断面の一部を拡大した拡大図である。
【図10】レンズ鏡筒の断面の一部を拡大した拡大図である。
【図11】レンズ鏡筒の断面の一部を拡大した拡大図である。
【図12】レンズ鏡筒の断面の一部を拡大した拡大図である。
【図13】レンズ鏡筒の断面の一部を拡大した拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1〜3に示すように、本発明のレンズ鏡筒10は、鏡筒本体12と、第1、第2、第3レンズ14、16、18と、第1、第2、第3係止リング24、26、28とを備えている。鏡筒本体12は、略円筒形状に形成され、内周面は光の反射率を低下させるために黒色に塗装されている。また、鏡筒本体12の内周には、突起12aと段差12b、12cが設けられている。
【0023】
第1レンズ14は、凸レンズであり、鏡筒本体12の先端部に配置されている。第1レンズ14は、外周が鏡筒本体12の内周により支持されるともに、段差12bと第1係止リング24とによって前後への移動が規制されている。第2レンズ16は、凹レンズであり、鏡筒本体12の中央部に配置されている。第2レンズ16は、外周が鏡筒本体12の内周により支持されるとともに、突起12aと第2係止リング26とによって前後への移動が規制されている。第3レンズ18は、凸レンズであり、鏡筒本体12の後端部に配置されている。第3レンズ18は、外周が鏡筒本体12の内周により支持されるとともに、段差12cと第3係止リング28とによって前後への移動が規制されている。
【0024】
また、鏡筒本体12には、第1コイル30と、第2コイル40とが設けられている。第1コイル30は、第1レンズ14と第2係止リング26との間に配置され、第2コイル40は、突起12aと第3レンズ18との間に配置されている。これら、第1、第2コイル30、40は、表面の光反射率を低下させるために黒色に塗装されている。
【0025】
第1コイル30は、線径が第1レンズ14と第2係止リング26との間の鏡筒本体12の内径の2%程度に形成され、線間が線径と同程度に形成されている。また、第1コイル30は、外径が第1レンズ14と第2係止リング26との間の鏡筒本体12の内径とほぼ等しく形成され、長さ(自由長)が第1レンズ14と第2係止リング26との間の長さとほぼ等しく形成されている。そして、第1コイル30は、鏡筒本体12の内周に嵌合されて固定(鏡筒本体12と一体化)される。
【0026】
図4に示すように、第1コイル30が鏡筒本体12に嵌合されると、第1コイル30により鏡筒本体12の内周に凹凸が形成される。そして、この凹凸により、鏡筒本体12の内周面へ向かう光(図4の矢印の指標参照)が再び鏡筒本体12の内側へ向かうまでに要する反射回数が多くなり、鏡筒本体12の内側へ向かう光が減衰される(すなわち、鏡筒本体12の内周面での光の反射が抑えられる)。これにより、ゴーストやフレアなどの問題を防止できる。
【0027】
同様に、第2コイル40は、線径が突起12aと第3レンズ18との間の鏡筒本体12の内径の2%程度に形成され、線間が線径と同程度に形成されている。また、第2コイル40は、外径が突起12aと第3レンズ18との間の鏡筒本体12の内径とほぼ等しく形成され、長さ(自由長)が突起12aと第3レンズ18との間の長さとほぼ等しく形成されている。そして、第2コイル40は、鏡筒本体12の内周に嵌合されて固定(鏡筒本体12と一体化)される。これにより、鏡筒本体12の内周に凹凸が形成され、この凹凸によって鏡筒本体12の内周面での光の反射が抑えられ、ゴーストやフレアなどの問題を防止できる。
【0028】
以上のように、本発明のレンズ鏡筒10は、内周にコイルを嵌合させて凹凸を形成するようにした。このため、例えば、内周に機械加工により凹凸を形成する場合と比較して、容易に凹凸を形成できる。また、機械加工により凹凸を形成する場合、レンズ鏡筒が小径となるほど凹凸形成の難易度が上がってしまうが、本発明によればこのような問題もない。さらに、レンズ鏡筒を2分割式にして凹凸を形成する場合と比較して、一体化したときに所望の精度を得るためにコストが高くなってしまうといった問題もない。
【0029】
なお、本発明は鏡筒本体内に複数の光低反射要素を整列して配置することにより迷光による問題を防止(レンズ鏡筒の内周面での光の反射を防止または低減)できればよいので、細部の構成は上記実施形態に限定されず適宜変更できる。例えば、上記実施形態では、3枚のレンズを用いるレンズ鏡筒に本発明を適用する例で説明をしたが、レンズの枚数や種類、及び配列はこれに限定されず適宜変更できる。また、上記実施形態では、2本のコイルを用いる例で説明をしたが、コイルの本数はレンズの枚数などに応じて適宜変更できる。
【0030】
さらに、上記実施形態では、コイルの線径を鏡筒本体の2%程度とする例で説明をしたが、コイルの線径は自由に設定できる。ただし、コイルの線径が太くなると、鏡筒本体の内径が細くなり、有効な光路の径が減少してしまう。また、コイルの線径が細くなると、凹凸としての機能が低下、すなわち、反射率を低下させる作用が低下してしまう。このため、コイルの線径は鏡筒本体の内径の0.5%〜5%の範囲であることが好ましい。
【0031】
また、上記実施形態では、コイルの線間をコイルの線径と同程度とする例で説明をしたが、コイルの線間は自由に設定できる。例えば、図5に示すように、線間密着したコイル50を用いてもよい。また、図6に示すように、線間が線径よりも大きいコイル60を用いてもよい。なお、図5以降の図面を用いた説明では、上述した実施形態と同様の部材については同様の符号を付して説明を省略している。
【0032】
図5の例のように、線間密着したコイル50を用いても、鏡筒本体12の内周には凹凸が形成されるので、反射光を減衰できる。ただし、線間を無くした場合、線間を有する場合と比較して、コイル50の外周と鏡筒本体12の内周との間の領域52を利用して反射光を減衰させることができなくなるので、反射光を減衰させる効果が弱くなってしまう。このため、コイルは線間を有するように配置することが好ましい。
【0033】
他方、図6の例のように、線間が線径よりも大きいコイル60を用いても、鏡筒本体12の内周には凹凸が形成されるので、反射光を減衰できる。ただし、線間が線径よりも極端に(2、3倍程度)大きくなってしまうと、鏡筒本体12の内周が大きく露呈され、凹凸の効果を十分に発揮できなくなってしまう。よって、コイルの線間は、コイルの線径の150%未満であることが好ましい。
【0034】
また、上記実施形態では、外径が鏡筒本体の内径とほぼ等しいコイルを用い、このコイルを、鏡筒本体の内周に嵌合させて一体化する例で説明をしたが、本発明はこれに限定されるものではない。図7に示すように、外径が鏡筒本体12の内径よりも一回り小さいコイル70を用い、このコイル70を、鏡筒本体12の内周と離間させた状態で配置してもよい。
【0035】
図7の例では、鏡筒本体12の内周にコイル保持用のリング72、74を設け、このリング72、74によりコイル70の先端及び後端を支持している。このように、鏡筒本体12の内周と離間させた状態でコイル70を配置することによって、図8に示すように、コイル70の外周と鏡筒本体12の内壁との間の領域を有効活用して反射光をより確実に減衰できる。
【0036】
さらに、上記実施形態では、コイル配置部位とほぼ等しい長さ(自由長)のコイルを用いる例、すなわち、コイルが前後の部材に付勢力を及ぼさない例で説明をしたが、本発明はこれに限定されるものではない。コイル配置部位よりも長く、弾性を有する材料から形成されたコイルを用い、このコイルを軸方向に圧縮した状態で配置することによって、前後の部材に付勢力が加えられるようにしてもよい。こうすれば、コイル自身のがたつきを防止できるだけでなく、コイルの前後に配置された部材(例えば、レンズ)のがたつきも防止できる。
【0037】
また、上記実施形態では、コイルを形成する線材の断面が円形である例で説明をしたが、コイルを形成する線材の断面(以下、単にコイルの断面と称する)は適宜変更できる。例えば、図9に示すコイル90や、図10に示すコイル100のように、断面が三角形状のコイルを用いてもよい。さらに、図11に示すコイル110のように、断面がI形状のコイルを用いてもよい。また、図12に示すコイル120や、図13に示すコイル130のように、断面がL形状のコイルを用いてもよい。もちろん、コイルの断面が4角形、5角形、6角形などの多角形でもよい。
【0038】
さらに、上記実施形態では、鏡筒本体の内周やコイルを黒色に塗装する例で説明をしたが、塗料の色や種類、塗装の手法はこれに限定されず適宜変更できる。例えば、黒色のめっき加工を施すことによって塗装面にμm単位の微細な凹凸を形成し、この微細な凹凸によって、鏡筒本体の内周面やコイルの表面での反射を抑えるようにしてもよい。もちろん、塗装に代えて鏡筒本体やコイルを黒色の材料から形成してもよいし、塗装以外の表面加工処理によって鏡筒本体の内周面やコイルの表面での反射を抑えるようにしてもよい。
【0039】
また、上記実施形態では、鏡筒本体内に配置する反射防止手段としてコイルを用いる例で説明をしたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、リング状のエレメントを複数並べたものを反射防止手段として用いてもよい。もちろん、コイル状のエレメントを直列に複数並べたものを反射防止手段として用いてもよい。このように、複数のエレメントを並べるようにすれば、鏡筒本体の長さが変化しても(長さの異なるレンズ鏡筒に本発明を適用する際に)、個々のエレメントの構成を変えずに並べるエレメントの数を変化させることで簡単に対応できる。
【0040】
なお、上記実施形態では、内周が円形の鏡筒本体内に外周が円形のエレメントを配置する例で説明をしたが、内周が矩形の鏡筒本体内に外周が矩形のエレメントを配置してもよい。もちろん、内周が多角形状の鏡筒本体内に外周が多角形状のエレメントを配置してもよい。また、内周が矩形の鏡筒本体内に外周が円形のエレメントを配置するなど、鏡筒本体の内周形状とエレメントの外周形状とが一致しなくてもよい。
【符号の説明】
【0041】
10 レンズ鏡筒
12 鏡筒本体
14 第1レンズ
16 第2レンズ
18 第3レンズ
30 第1コイル
40 第2コイル
50、60、70、80、90、100、110、120、130 コイル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状に形成され、内部にレンズが配置された鏡筒本体と、
表面に低反射処理が施され、前記レンズの光軸を囲むように設けられた複数の光低反射要素が、前記鏡筒本体の一方の端部から他方の端部に向かって前記鏡筒本体の内部に整列して保持され、前記鏡筒本体の内壁へ向かった迷光を低減させる反射防止手段と、
を備えたことを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項2】
前記反射防止手段は、螺旋状の線材からなり、一巻分が前記光低反射要素の1つに相当する反射防止コイルであることを特徴とする請求項1記載のレンズ鏡筒。
【請求項3】
前記反射防止コイルの外周が前記鏡筒本体の内壁に近接していることを特徴とする請求項2記載のレンズ鏡筒。
【請求項4】
前記反射防止コイルの両端は、それぞれ前記レンズ鏡筒本体に前記光軸方向に不動に支持されていることを特徴とする請求項2または3記載のレンズ鏡筒。
【請求項5】
前記反射防止コイルは、軸方向に圧縮された状態で前記鏡筒本体に支持されていることを特徴とする請求項2〜4いずれか記載のレンズ鏡筒。
【請求項6】
前記反射防止コイルの一端は、前記鏡筒本体に固定されたレンズに圧着して支持されていることを特徴とする請求項2〜5いずれか記載のレンズ鏡筒。
【請求項7】
前記反射防止コイルの一端は、前記鏡筒本体の内壁に固定されたリングに圧着して支持されていることを特徴とする請求項2〜6いずれか記載のレンズ鏡筒。
【請求項8】
前記線材の断面が、円形であることを特徴とする請求項2〜7いずれか記載のレンズ鏡筒。
【請求項9】
前記線材の断面が、多角形であることを特徴とする請求項2〜7いずれか記載のレンズ鏡筒。
【請求項10】
前記線材の断面が、L字型であることを特徴とする請求項2〜7いずれか記載のレンズ鏡筒。
【請求項11】
前記線材の断面が、I字型であることを特徴とする請求項2〜7いずれか記載のレンズ鏡筒。
【請求項12】
前記低反射処理は、黒色材料のめっき処理であることを特徴とする請求項1〜11いずれか記載のレンズ鏡筒。
【請求項1】
筒状に形成され、内部にレンズが配置された鏡筒本体と、
表面に低反射処理が施され、前記レンズの光軸を囲むように設けられた複数の光低反射要素が、前記鏡筒本体の一方の端部から他方の端部に向かって前記鏡筒本体の内部に整列して保持され、前記鏡筒本体の内壁へ向かった迷光を低減させる反射防止手段と、
を備えたことを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項2】
前記反射防止手段は、螺旋状の線材からなり、一巻分が前記光低反射要素の1つに相当する反射防止コイルであることを特徴とする請求項1記載のレンズ鏡筒。
【請求項3】
前記反射防止コイルの外周が前記鏡筒本体の内壁に近接していることを特徴とする請求項2記載のレンズ鏡筒。
【請求項4】
前記反射防止コイルの両端は、それぞれ前記レンズ鏡筒本体に前記光軸方向に不動に支持されていることを特徴とする請求項2または3記載のレンズ鏡筒。
【請求項5】
前記反射防止コイルは、軸方向に圧縮された状態で前記鏡筒本体に支持されていることを特徴とする請求項2〜4いずれか記載のレンズ鏡筒。
【請求項6】
前記反射防止コイルの一端は、前記鏡筒本体に固定されたレンズに圧着して支持されていることを特徴とする請求項2〜5いずれか記載のレンズ鏡筒。
【請求項7】
前記反射防止コイルの一端は、前記鏡筒本体の内壁に固定されたリングに圧着して支持されていることを特徴とする請求項2〜6いずれか記載のレンズ鏡筒。
【請求項8】
前記線材の断面が、円形であることを特徴とする請求項2〜7いずれか記載のレンズ鏡筒。
【請求項9】
前記線材の断面が、多角形であることを特徴とする請求項2〜7いずれか記載のレンズ鏡筒。
【請求項10】
前記線材の断面が、L字型であることを特徴とする請求項2〜7いずれか記載のレンズ鏡筒。
【請求項11】
前記線材の断面が、I字型であることを特徴とする請求項2〜7いずれか記載のレンズ鏡筒。
【請求項12】
前記低反射処理は、黒色材料のめっき処理であることを特徴とする請求項1〜11いずれか記載のレンズ鏡筒。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−68755(P2013−68755A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206747(P2011−206747)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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