説明

レンズ駆動装置及び撮像装置

【課題】レンズ枠の移動時においてレンズの径方向へのガタを除去できるレンズ駆動装置を提供する。
【解決手段】ヨーク4を光軸方向に延在させ、延在したヨーク4の内周面4c,4dとレンズ枠1の外周面1c,1dとを部分的に摺接して、該レンズ枠1を光軸方向へ往復動自在に支持し、レンズ枠1と磁石3又はヨーク4との間に、このレンズ枠1を光軸方向へ付勢する弾性体5を備え、該弾性体5の付勢力でレンズ枠1の外周面1dを、ヨーク4の内周面4dの光軸方向と交差する方向へ片寄って押圧するように配置することにより、弾性体5の付勢力でレンズ枠1には光軸方向への押圧力が発生すると同時に、光軸方向と交差する方向へも押圧力が発生して、該レンズ枠1の外周面1dのみが、ヨーク4の内周面4dの周方向一部に接触しながら移動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイスコイル型モータを駆動源としてレンズを光軸方向に駆動するレンズ駆動装置、及び、これを用いたデジタルカメラ、銀塩フィルム式カメラ、携帯電話機,携帯型パーソナルコンピュータ,携帯型音楽プレーヤ,PDAなどの携帯情報端末機などからなる撮像装置に関する。
詳しくは、レンズを保持するレンズ枠と、このレンズ枠に固定されるコイルと、このコイルに近接して配置される磁石と、この磁石が固定されるヨークとを備え、これらコイル、磁石及びヨークにより該レンズ枠を光軸方向に移動させるレンズ駆動装置、及び、これを用いた撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のレンズ駆動装置としては、レンズ後部を保持する鏡枠の光軸方向中間部が、円筒状継鉄の内径面に対してボールベアリングを介して摺動自在に軸受けされ、この円筒状継鉄内に永久磁石を固定し、レンズ後部の鏡枠に固定されたコイルへの通電時に、電磁力によって光軸方向へ直線的に可動するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭59−116627号公報(第2頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし乍ら、このような従来のレンズ駆動装置では、レンズ枠(鏡枠)をボールベアリングで光軸方向へ往復動自在に支持するため、ボールベアリングが必要となって、その分だけ部品点数が増えて、組立て時間も長くなり、コストアップの要因となると共に、コンパクト化し難くなるという問題があった。
さらに、部品点数の増加による部品の寸法公差の積み上げ誤差や、組立時の誤差のため、レンズの移動時にレンズ枠自体が光軸に対して傾き易く、それにより、像ゆれ、像ボケ、像ゆがみなどの光学性能の劣化が生じるという問題もあった。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みて成されたものであり、その目的とするところは、レンズ枠の移動時においてレンズの径方向へのガタを除去できるレンズ駆動装置及び撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のレンズ駆動装置は、ヨークを光軸方向に延在させ、延在したヨークの内周面とレンズ枠の外周面とを部分的に摺接して、該レンズ枠を光軸方向へ往復動自在に支持し、前記レンズ枠と磁石又はヨークとの間に、前記レンズ枠を光軸方向へ付勢する弾性体を備え、該弾性体の付勢力で前記レンズ枠の外周面を、前記ヨークの内周面の光軸方向と交差する方向へ片寄って押圧するように配置したことを特徴としている。
この構成によれば、弾性体の付勢力により、レンズ枠には光軸方向への押圧力が発生すると同時に、光軸方向と交差する方向へも押圧力が発生して、該レンズ枠の外周面のみが、ヨークの内周面の周方向一部に接触しながら移動する。
したがって、レンズ枠の移動時においてレンズの径方向へのガタを除去することができる。
その結果、レンズ移動時のどの位置においても安定して撮影することができる。
それにより、安定的に直線移動させるレンズ駆動装置を提供できると共に、レンズ枠を安定的に直線移動させるためにボールベアリングなどの軸受け部品を配備する必要がないため、その分だけレンズ駆動装置の小型が図れる。
【0007】
上記構成のレンズ駆動装置において、前記弾性体がコイルばねであり、該コイルばねの巻端位置を周方向への移動を制限する位置決め部を前記レンズ枠に設けた、構成を採用することができる。
この構成によれば、レンズ枠に対して弾性体のコイルばねが周方向へ位置ズレせず、レンズ枠の外周面の周方向一部である摺動部が必ずヨークの内周面に接触しながら光軸方向へ移動する。
したがって、レンズ枠の片寄り方向を固定させることができる。
それにより、レンズ移動の安定性を更に向上させることができる。
【0008】
上記構成のレンズ駆動装置において、前記弾性体がコイルばねであり、前記レンズ枠に該コイルばねのばね受け面を光軸方向に対し所定角度で傾斜するように設けた、構成を採用することができる。
この構成によれば、光軸と傾斜したばね受け面により、コイルばねの軸線方向が光軸と斜めに配置されるため、レンズ枠の往復動に伴ってレンズ枠の外周面の周方向一部である摺動部が必ずヨークの内周面に接触しながら光軸方向へ移動する。
したがって、レンズ枠の片寄り方向を固定させることができる。
それにより、レンズ移動の安定性を更に向上させることができる。
【0009】
そして、本発明の撮像装置は、上記構成をなすレンズ駆動装置を含む、ことを特徴としている。
この構成によれば、駆動源として上述のレンズ駆動装置を搭載するため、撮像装置の小型化、軽量化を達成できると共に、像ゆれ、像ボケ、像ゆがみなどの光学性能の劣化防止を達成することができる。
【発明の効果】
【0010】
上記構成をなす本発明のレンズ駆動装置によれば、構造の簡素化、部品の集約化、光軸に垂直な径方向の小型化(小径化)などを達成しつつ、レンズを光軸方向に円滑にまた高精度に駆動することができる。
したがって、小型化が要求される携帯情報端末装置などに搭載されるモバイルカメラなどに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係るレンズ駆動装置の一実施形態を示す光軸を含む断面図である。
【図2】図1に示すレンズ駆動装置の動作を説明するためのものであり、レンズ枠が無限遠撮影位置にある状態を示す断面図である。
【図3】図1に示すレンズ駆動装置の動作を説明するためのものであり、レンズ枠が近接撮影位置にある状態を示す断面図である。
【図4】図1に示すレンズ駆動装置の分解斜視図である。
【図5】本発明に係るレンズ駆動装置の他の実施形態を示す光軸を含む断面図である。
【図6】本発明に係るレンズ駆動装置の他の実施形態を示す光軸を含む断面図である。
【図7】図6に示すレンズ駆動装置を光軸方向の前方から見た正面図である。
【図8】図6に示すレンズ駆動装置の動作を説明するためのものであり、レンズ枠が無限遠撮影位置にある状態を示す断面図である。
【図9】図6に示すレンズ駆動装置の動作を説明するためのものであり、レンズ枠が近接撮影位置にある状態を示す断面図である。
【図10】図6に示すレンズ駆動装置の分解斜視図である。
【図11】本発明に係るレンズ駆動装置の他の実施形態を示す光軸を含む断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
図1〜図4は、本発明に係るレンズ駆動装置の一実施形態を示すものであり、図1はオートフォーカス(AF)駆動によりレンズ枠が通常撮影位置にある装置の光軸方向の断面図、図2はレンズ枠が無限遠撮影位置にある装置の光軸方向の断面図、図3はレンズ枠が近接撮影位置にある装置の光軸方向の断面図、図4は装置の分解斜視図である。
【0013】
このレンズ駆動装置は、図1〜図4に示すように、レンズGを保持するレンズ枠1、このレンズ枠1を光軸方向へ往復駆動するために該レンズ枠1に固定されたコイル2、このコイル2に近接して配置される磁石3、この磁石3が固定されるヨーク4、上記レンズ枠1を光軸方向のどちらか一方向に押す圧縮コイルばねなどの弾性体5、これらヨーク4などを固定するフレーム6などを備えている。
【0014】
上記レンズ枠1は、合成樹脂などの材料を用いて、図1〜図4に示すように、レンズGの外周を囲むように円筒状に形成され、その内周に前記レンズGを保持すると共に、該レンズ枠1の外周を後述するヨーク4の内周と平行に形成し、これら両者を部分的に摺接させて、該レンズ枠1を光軸方向へ往復動自在に支持している。
【0015】
さらに、このレンズ枠1には、前記レンズGの径方向へ外形寸法が異なる円筒小径部1aと円筒大径部1bを光軸方向へ形成して、これらの外周には、小径外周面1cと大径外周面1dをそれぞれ光軸Lと平行に形成することが好ましい。
【0016】
図示例の場合には、上記小径外周面1cを光軸方向の前方(図1〜図3では左方向)に、上記大径外周面1dを光軸方向の後方(図1〜図3では右方向)にそれぞれ配置しており、これら円筒小径部1a及び円筒大径部1bの内周に、前記レンズGとして複数枚のレンズを光軸方向へ分散して所定間隔毎に配置固定している。
【0017】
これら複数枚のレンズの光軸方向の前方又は後方若しくは各レンズの間には、内面反射等の影響を防ぐために口径板Aを設けることが好ましい。
図示例の場合には、複数枚のレンズの光軸方向の前方及び各レンズの間に口径板Aをそれぞれ配置している。
【0018】
上記コイル2は、ボイスコイル型モータの一部をなす電磁コイルであり、図1〜図4に示すように、予め環状(円筒状)に成形され、その後、上記レンズ枠1の外周に後述する磁石3と近接して固着されている。
また、このコイル2は、図示しないボビンを介して配置することも可能である。
【0019】
上記磁石3は、ボイスコイル型モータの一部をなす永久磁石であり、図1〜図4に示すように、予め環状(円筒状)に形成され、その後、後述するヨーク4の内周に、上記コイル2と所定の隙間を空けて対向するように固着されている。
【0020】
上記ヨーク4は、ボイスコイル型モータの一部をなすものであり、図1〜図4に示すように、軟磁性材料を用いて予め環状(円筒状)に形成され、その後、その外周に突設された取り付け部4xを前記フレーム6の外周に突設された取り付け部6xに対し、ビス止めするなどして固定支持される。
【0021】
また、このヨーク4を光軸方向に延在させ、その内周面と上記レンズ枠1の外周面とを部分的に摺接して、該レンズ枠1を光軸方向へ往復動自在に支持している。
さらに、このヨーク4の内周面と上記レンズ枠1の外周面を平行に配置し、該レンズ枠1の光軸方向2箇所以上の外周面において、光軸方向両端部のみを、上記ヨーク4の平滑な内周面にそれぞれ部分的に摺接させることが好ましい。
【0022】
詳しく説明すれば、上記ヨーク4は、小径な内側円筒部4aと大径な外側円筒部4bを光軸方向の断面コ字状にもつ二重円筒状に形成され、これら内側円筒部4a及び外側円筒部4bをそれぞれ光軸Lと平行に形成している。
内側円筒部4aは、上記コイル2とレンズ枠1の円筒小径部1aとの間に挿入され、その内周面4cを、上記小径外周面1cと部分的に摺接する第1ガイド部としている。
また、外側円筒部4bには、上記磁石3を内嵌させて保持すると共に、光軸Lと平行な方向に磁石3より長くなるようにフレーム6へ向け後方に延長され、その内周面4dを、上記レンズ枠1の円筒大径部1bの大径外周面1dと部分的に摺接する第2ガイド部としている。
【0023】
これら部分的な摺接部は、図1〜図4に示すように、上記レンズ枠1の小径外周面1c及び大径外周面1dの円周上には、摺動部1eとして光軸方向に延びる複数の凸部を、上記ヨーク4の内側円筒部4aの内周面4c及び外側円筒部4bの内周面4dに向けて突出形成している。
尚、小径外周面1c及び大径外周面1dの円周上には、複数の摺動部1eとして、少なくとも3箇所ずつの凸部を形成すると、これら凸部のみを上記ヨーク4の内側円筒部4aの内周面4c及び外側円筒部4bの内周面4dに摺接させることができる。
【0024】
それ以外の例として図示しないが、ヨーク4の内側円筒部4aの内周面4c及び外側円筒部4bの内周面4dの一部に摺動部として、光軸方向へ延びる凸部を突出形成することにより、上記レンズ枠1の小径外周面1c及び大径外周面1dとそれぞれ部分的に摺接させることも可能である。
さらに、上記凸部は、摺接する頂点が点接触であっても良い。
この場合には、ヨーク4の内側内周面4c及び外側内周面4dとレンズ枠1の小径外周面1c及び大径外周面1dとの接触面積が減少するため、それらの間に発生する摩擦抵抗を更に小さくすることができる。
【0025】
上記構成においては、上記磁石3が設けられたヨーク4を光軸方向に延在させてレンズ枠1の移動ガイドとしたため、ボイスコイル型モータのヨーク4がレンズGのガイド部と同一部品化され、その分だけ部品点数を軽減でき、組立て時間の短縮化が図れると共に、光軸Lに垂直な径方向の小型化も図れる。
また、これら同一部品化により、部品(公差)の積み上げ誤差や組立時の誤差が略無くなり、ボイスコイル型モータとしてのヨーク4自体や、レンズ枠1の移動ガイドとしてのガイド部について、光軸Lに対して平行度を容易に保つことができ、レンズ移動の際の微細なブレを無くすことができる。
さらに、図1〜図4に示すように、上記ヨーク4を断面コ字状の二重円筒状に形成して、その光軸Lに平行な二つの内周ガイド面に対し前記レンズ枠1の外周ガイド面を部分的に摺接させた場合には、レンズ枠1の光軸方向への移動に伴う倒れやブレが更に抑制されるため、より好適である。
【0026】
一方、上記弾性体5は、コイルばねなどからなり、レンズ枠1と磁石3又はヨーク4と間に配置している。
図示例の場合には、レンズ枠1の円筒大径部1bの前面に形成される段差部1fから、磁石3の後端面3a又はヨーク4の内周面4dに形成される段差部に亘ってコイルばね5を配置し、その弾性変形によりレンズ枠1を常時光軸方向の後方へ向け付勢している。
【0027】
さらに、上記フレーム6には、アタッチメント7を介して例えばCCDなどの撮像素子8が固定された外部接続用基板9を固着している。
【0028】
次に、このレンズ駆動装置の動作について図1〜図3を参照して説明すると、図1に示すように、レンズ駆動装置のレンズ枠1がオートフォーカス駆動により通常撮影位置にある状態では、ボイスコイル型モータが撮影距離に応じて、適切な通電をコイル2に行い、レンズ枠1を定位置に保持している。
【0029】
さらに、図2に示すように、レンズ枠1が無限遠撮影位置にある状態では、ボイスコイル型モータのコイル2に通電されておらず、レンズ枠1は弾性体5の付勢力によって光軸方向の後方に押圧され、レンズ枠1の後端部1gがフレーム6に当接している。
【0030】
また、図3に示すように、レンズ枠1が近接撮影位置にある状態では、ボイスコイル型モータのコイル2への通電によりレンズ枠1が光軸方向の前方に移動する力が、弾性体5の付勢力よりも勝っており、レンズ枠1の係合部1hがヨーク4の内側円筒部4aの末端に突き当たって、それ以上、前方に移動することを制限している。
【0031】
図5は、本発明に係るレンズ駆動装置の他の実施形態を示す光軸方向の断面図である。
この実施形態においては、前記ヨーク4を前述の図1〜図4に示した実施形態の断面コ字状の二重円筒状に代えて一重の円筒状に形成し、その平滑な内周面4eに前記レンズ枠1の外周面を部分的に摺接させた以外は、前述の図1〜図4に示した実施形態と同一であるため、同一の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
すなわち、この装置においては、図5に示すように、上記ヨーク4の平滑な内周面4eと前記レンズ枠1の外周面を平行に配置し、該レンズ枠1の光軸方向2箇所以上の外周面として、光軸方向両端部のみを、上記ヨーク4の平滑な内周面4eにそれぞれ部分的に摺接させている。
【0032】
上記レンズ枠1の光軸方向両端には、前記コイル2及び上記ヨーク4の平滑な内周面4eに固着された前記磁石3を挟むように、一対の円筒凸部1iが該ヨーク4の平滑な内周面4eへ向けて突出形成され、これら円筒凸部1iの外周面1jをそれぞれ光軸Lと平行に形成して、ヨーク4の平滑な内周面4eと部分的に摺接させている。
【0033】
これら部分的な摺接箇所は、上記円筒凸部1iの外周面1jの一部に摺動部1eとして、光軸方向に延びる複数の凸部を、ヨーク4の内周面4eに向けて突出形成することにより、該凸部のみをヨーク4の内周面4eにそれぞれ部分的に摺接させることが好ましい。
それ以外の例として図示しないが、ヨーク4の内周面4eの一部に摺動部として、光軸方向へ延びる凸部を突出形成して、上記円筒凸部1iの外周面1jとそれぞれ部分的に摺接させることも可能である。
【0034】
したがって、図5に示す実施形態も、前述の図1〜図4に示した実施形態と同様な作用効果が得られ、更に加えて上記ヨーク4の断面形状を簡素化できて軽量化が達成できる。
【0035】
以上、本発明を実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定して解釈されるべきではなく、適宜変更・改良が可能であることはもちろんである。
例えば、前記レンズGは図示された3枚に限定されず、1枚以上であれば良い。
【0036】
図6〜図10は、本発明に係るレンズ駆動装置の他の実施形態を示す光軸方向の断面図であり、図6はオートフォーカス(AF)駆動によりレンズ枠が通常撮影位置にある装置の光軸方向の断面図、図7は装置を光軸方向の前方から見た正面図、図8はレンズ枠が無限遠撮影位置にある装置の光軸方向の断面図、図9はレンズ枠が近接撮影位置にある装置の光軸方向の断面図、図10は装置の分解斜視図である。
【0037】
この実施形態においては、前記弾性体5の付勢力でレンズ枠1の外周面1dを、ヨーク4の内周面4dの光軸方向と交差する方向へ片寄って押圧するように配置した以外は、前述の図1〜図4に示した実施形態と同一であるため、同一の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
すなわち、この装置においては、弾性体5がコイルばねであり、図8に示す無限遠撮影位置にある状態では、ボイスコイル型モータのコイル2に通電されていないため、該コイルばね5の伸長変形によってレンズ枠1を単に光軸方向へ押圧するだけでなく、該光軸方向と交差する方向へ片寄って押圧し、それにより、複数配置された摺動部1eのうち一部のみを、ヨーク4の内周面4dの周方向一部と摺接させながら光軸方向の後方へ移動するようにしている。
【0038】
したがって、図6〜図10に示す実施形態も、前述の図1〜図4に示した実施形態と同様な作用効果が得られ、更に加えてヨーク4の内周面4dに対してレンズ枠1の外周面1dの周方向一部である摺動部1eを光軸方向へスムーズに往復動させるため、両者間に僅かな隙間があっても、AF駆動時のレンズ枠1のどの位置においてもガタを除去できるため、安定して撮影することができる。
【0039】
さらに、コイルばね5の巻端位置を周方向への移動を制限する位置決め部1kをレンズ枠1に設けている。
図示例では位置決め部1kは、図6及び図10に示すように、コイルばね5の巻端位置を折り曲げて形成した突出部5aが挿入される、レンズ枠1の円筒大径部1b前面の段差部1fに開設された孔からなり、この孔にコイルばね5の巻端の突出部5aを嵌挿することで固定している。
【0040】
それにより、レンズ枠1に対してコイルばね5が周方向へ位置決めされるため、レンズ枠1の往復動に伴ってコイルばね5が周方向へ位置ズレせず、レンズ枠1の外周面1dの周方向一部である摺動部1eが必ずヨーク4の内周面4dに接触しながら光軸方向へ移動して、レンズ枠1の片寄り方向を固定させることができる。
【0041】
図11は、本発明に係るレンズ駆動装置の他の実施形態を示す光軸方向の断面図である。
この実施形態においては、前述の図6〜図10に示した実施形態の位置決め部1kに代えて、レンズ枠1の円筒大径部1bの前面に形成される段差部1f形成される、コイルばね5の巻端部5bが当接するばね受け面1mを、光軸方向に対し所定角度で傾斜させた以外は、前述の図6〜図10に示した実施形態と同一であるため、同一の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
すなわち、この装置においては、図11に示すように、光軸Lと傾斜したばね受け面1mにより、磁石3又はヨーク4との間でコイルばね5の軸線方向が光軸Lと斜めに配置されるため、レンズ枠1の往復動に伴ってレンズ枠1の外周面1dの周方向一部である摺動部1eが必ずヨーク4の内周面4dに接触しながら光軸方向へ移動して、レンズ枠1の片寄り方向を固定させることができる。
【0042】
したがって、図11に示す実施形態も、前述の図6〜図10に示した実施形態と同様な作用効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
以上述べたように、本発明のレンズ駆動装置は、構造の簡素化、部品の集約化、光軸に垂直な径方向の小型化(小径化)などを達成しつつ、レンズを光軸方向に円滑にまた高精度に駆動することができるため、小型化が要求される携帯電話機、携帯型パーソナルコンピュータ、携帯型音楽プレーヤ、PDAなどの携帯情報端末機などからなる撮像装置のレンズ駆動装置として適用できるのは勿論のこと、特に小型化が要求されるレンズ光学系の駆動装置としても有用である。
【符号の説明】
【0044】
G レンズ 1 レンズ枠
1c,1d 外周面 1e 周方向一部
1k 位置決め部 1m ばね受け面
2 コイル 3 磁石
4 ヨーク 4c,4d 内周面
5 弾性体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズを保持するレンズ枠と、このレンズ枠に固定されるコイルと、このコイルに近接して配置される磁石と、この磁石が固定されるヨークとを備え、これらコイル、磁石及びヨークにより該レンズ枠を光軸方向に移動させるレンズ駆動装置において、
前記ヨークを光軸方向に延在させ、延在した前記ヨークの内周面と前記レンズ枠の外周面とを部分的に摺接して、該レンズ枠を光軸方向へ往復動自在に支持し、前記レンズ枠と磁石又はヨークとの間に、前記レンズ枠を光軸方向へ付勢する弾性体を備え、該弾性体の付勢力で前記レンズ枠の外周面を、前記ヨークの内周面の光軸方向と交差する方向へ片寄って押圧するように配置したことを特徴とするレンズ駆動装置。
【請求項2】
前記弾性体がコイルばねであり、該コイルばねの巻端位置を周方向への移動を制限する位置決め部を前記レンズ枠に設けた請求項1に記載のレンズ駆動装置。
【請求項3】
前記弾性体がコイルばねであり、前記レンズ枠に該コイルばねのばね受け面を光軸方向に対し所定角度で傾斜するように設けた請求項1に記載のレンズ駆動装置。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか一つに記載のレンズ駆動装置を含むことを特徴とする撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−197719(P2010−197719A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−42480(P2009−42480)
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【出願人】(000001225)日本電産コパル株式会社 (755)
【Fターム(参考)】