レンズ駆動装置
【課題】レンズホルダが螺合状態で移動される場合であっても簡単な構成で光軸精度を高く維持することができるレンズ駆動装置を提供すること。
【解決手段】本発明では、ロータ18とレンズホルダ2との間にガイド部材32,35が設けられ、このガイド部材32,35の第1のガイド面32a,35aによってレンズホルダ2の光軸方向に沿う移動がガイドされるとともに、ガイド部材32,35の第2のガイド面32b,35bによってロータ18の回転がガイドされるため、レンズホルダ2が螺合状態で移動される場合であっても、光軸精度を高く維持することができ、レンズホルダ2の滑らかな移動を確保することができる。
【解決手段】本発明では、ロータ18とレンズホルダ2との間にガイド部材32,35が設けられ、このガイド部材32,35の第1のガイド面32a,35aによってレンズホルダ2の光軸方向に沿う移動がガイドされるとともに、ガイド部材32,35の第2のガイド面32b,35bによってロータ18の回転がガイドされるため、レンズホルダ2が螺合状態で移動される場合であっても、光軸精度を高く維持することができ、レンズホルダ2の滑らかな移動を確保することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズを光軸方向に沿って移動させるためのレンズ駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レンズを光軸方向に沿って移動させるためのレンズ駆動装置は従来から様々な形態のものが知られている。例えば、特許文献1には、中空状のステッピングモータを利用したレンズ駆動装置が開示されている。このレンズ駆動装置では、レンズを保持するレンズホルダがステッピングモータのステータ側のネジ部に螺合されており、ステッピングモータのロータの回転に伴って前記レンズホルダが光軸方向に沿って螺合状態で移動するようになっている。
【特許文献1】特開2002−51526号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、レンズホルダが螺合状態で移動される場合には、ネジ部のガタにより滑らかな移動を確保することが難しく、光軸精度を高く維持することができないといった問題がある。
【0004】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、レンズホルダが螺合状態で移動される場合であっても簡単な構成で光軸精度を高く維持することができるレンズ駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のレンズ駆動装置は、レンズを保持するレンズホルダと、前記レンズホルダの外側に配されたステータ及びロータを有する中空状のモータとを備え、前記ロータを前記レンズホルダに係合させて前記ロータを回転させることにより前記レンズホルダが光軸方向に沿って移動するレンズ駆動装置であって、前記ロータと前記レンズホルダとの間にガイド部材が設けられ、前記ガイド部材は、前記レンズホルダと対向し、前記レンズホルダの光軸方向に沿う移動をガイドする第1のガイド面と、前記ロータと対向し、前記ロータの回転をガイドする第2のガイド面とを有していることを特徴とする。
【0006】
この構成によれば、レンズホルダが螺合状態で移動される場合であっても、光軸精度を高く維持することができ、レンズホルダの滑らかな移動を確保することができる。また、ガイド部材は、その両面でロータ及びレンズホルダの両者を同時にガイドするため、すなわち、1つのガイド部材で2つの部材のガイドを行なうことができるため、部品点数を削減して構造を簡略化することができる。
【0007】
本発明のレンズ駆動装置においては、前記ガイド部材が光軸方向に沿って上下に一対設けられ、上側に配置された上側ガイド部材が前記レンズホルダ及び前記ロータの上部をガイドし、下側に配置された下側ガイド部材が前記レンズホルダ及び前記ロータの下部をガイドすることが好ましい。
【0008】
本発明のレンズ駆動装置においては、前記下側ガイド部材の上端面は、前記ロータに当接して前記ロータの下側方向への変位を規制することが好ましい。
【0009】
本発明のレンズ駆動装置においては、前記レンズホルダ及び前記モータを収容するケースが設けられ、前記ガイド部材が前記ケースと一体に形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ロータとレンズホルダとの間にガイド部材が設けられ、このガイド部材の第1のガイド面によってレンズホルダの光軸方向に沿う移動がガイドされるとともに、ガイド部材の第2のガイド面によってロータの回転がガイドされるため、レンズホルダが螺合状態で移動される場合であっても、光軸精度を高く維持することができ、レンズホルダの滑らかな移動を確保することができる。また、ガイド部材は、その両面でロータ及びレンズホルダの両者を同時にガイドするため、すなわち、1つのガイド部材で2つの部材のガイドを行なうことができるため、部品点数を削減して構造を簡略化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1〜図3は、本発明の一実施の形態に係るレンズ駆動装置1の全体構成を示す図である。なお、図1はレンズ駆動装置1の斜視図であり、図2はレンズ駆動装置1の縦断面図であり、図3はレンズ駆動装置1の分解斜視図である。
【0012】
これらの図に示されるように、レンズ駆動装置1は、レンズホルダ2と、レンズホルダ2を光軸O方向に沿って移動可能に保持する中空のモータ4と、レンズホルダ2と共にモータ4を保持して収容する磁性金属から成るケース6とを備えてなる。なお、本実施の形態において、モータ4は、後述するように、いわゆるPM型2相クローポール式のステッピングモータを構成している。
【0013】
レンズホルダ2は、所要のレンズ10を光軸方向に沿って配列してなる鏡筒10Aを保持するレンズバレル3と、レンズバレル3を収容し、レンズバレル3と一体で光軸方向に移動する円筒状のキャリア5とを有する。この場合、キャリア5は、レンズバレル3に対して螺合により一体的に固定されている。具体的には、キャリア5の内周面に形成された雌ネジ5aとレンズバレル3の外周面に形成された雄ネジ3aとが螺合することにより1つのレンズホルダ2が形成されるようになっている。
【0014】
モータ4は、光軸Oを中心に回転可能な円筒状のロータ(回転子)18と、このロータ4の外周に同心的に配置されるステータ(固定子)17とを有する。
【0015】
ロータ18は、円筒状の永久磁石9と、永久磁石9の内側に同心的に配置された円筒状のカム部材7とを有する。カム部材7は、永久磁石9の内周面に接着固定されるとともに、その内周面に形成された雌ネジ7aがキャリア5の外周面に形成された雄ネジ5bと螺合している。また、永久磁石9の外周には、N極とS極とが交互に所定数の対だけ等ピッチで着磁されている。
【0016】
一方、ステータ17は、永久磁石9の周囲に同心的に配置されるとともに、スペーサ19を挟んで互いに上下に積層された第1のステータ部(1相側固定子)17a及び第2のステータ部(2相側固定子)17bとを有する。
【0017】
第1のステータ部17aは、リング状の上側クロー部材11と、リング状の下側クロー部材12と、これらのクロー部材11,12を上下に対向させることによって形成されるボビンの周囲に巻回された環状のマグネットコイル20とを有する。
【0018】
上側及び下側クロー部材11,12は、円環状の磁性金属で構成され、その内周に沿って等ピッチで配置された複数(本実施の形態では10個)のクロー(歯部)11a,12aを有している。また、これらのクロー11a,11bは、クロー部材11,12の円環状の主面に対して略垂直に延びており、例えば前記主面から90°曲げ起こすことによって形成されるとともに、N極とS極とが交互に着磁された永久磁石9の外周面と所定の空隙を介して対向している。また、上側クロー部材11のクロー11a(10個のクロー11aで構成されたクロー群)は、図4に明確に示されるように、下側クロー部材12のクロー12a(10個のクロー12aで構成されたクロー群)に対し、これらのクロー12aと交互に噛み合うように周方向に1/2ピッチずれて配置されている。
【0019】
また、上側及び下側クロー部材11,12によって形成されるボビンの周囲に巻回されるマグネットコイル20は、導電ワイヤを円環状に束ねて形成されており、互いに噛み合わされたクロー部材11,12のクロー群11a,12aの外周に配置されている。
【0020】
一方、第1のステータ部17aと同様に、第2のステータ部17bも、リング状の上側クロー部材13と、リング状の下側クロー部材14と、これらのクロー部材13,14によって形成されるボビンの周囲に巻回された環状のマグネットコイル22とを有する。
【0021】
上側及び下側クロー部材13,14は、円環状の磁性体で構成され、その内周に沿って等ピッチで配置された複数(本実施の形態では10個)のクロー(歯部)13a,14aを有している。また、これらのクロー13a,14bは、クロー部材13,14の円環状の主面に対して略垂直に延びており、例えば前記主面から90°曲げ起こすことによって形成されるとともに、N極とS極とが交互に着磁された永久磁石9の外周面と所定の空隙を介して対向している。また、上側クロー部材13のクロー13a(10個のクロー13aで構成されたクロー群)も、図5に示されるように、下側クロー部材14のクロー14a(10個のクロー14aで構成されたクロー群)に対し、これらのクロー14aと交互に噛み合うように周方向に1/2ピッチずれて配置されており、これらのクロー群13a,14aの外周にマグネットコイル22が配置されている。なお、図5に明確に示されるように、2相側であるこの第2のステータ部17bのクロー群13a,14aは、1相側である第1のステータ部17aのクロー群11a,12aに対して周方向に1/4ピッチずれて配置されている。
【0022】
また、上記構成のレンズホルダ2及びモータ4を保持して収容するケース6は、上側ケース6aと下側ケース6bとを有する。これらの上側及び下側ケース6aは、断面が略コの字状に形成されており、その開口同士を対向させて互いに上下に重ね合わせることにより、ステータ17及びロータ18を密閉状態で収容するための収容空間(収納部)Sをレンズホルダ2と協働して形成するようになっている。
【0023】
具体的には、図2に示されるように、上側ケース6aは、第1のステータ部17aの外側を全周にわたって取り囲む外側壁部30と、第1のステータ部17a及びロータ2を上側から覆う上壁部31と、ロータ2の内側上部を全周にわたって取り囲むとともにキャリア5とカム部材7との間に介挿される内側壁部32とを有しており、これらの壁部30,31,32により第1のステータ部17a及びロータ18の一部(上側半分)を直接に支持して収容するための第1の収容部S1を形成している。この場合、キャリア5と対向する内側壁部32の一方側の面32aは、レンズホルダ2(キャリア5)の光軸Oに沿う移動(後述する)を上側でガイドする第1のガイド面として機能するとともに、カム部材7と対向する内側壁部32の他方側の面32bは、ロータ18(カム部材7)の回転(後述する)を上側でガイドする第2のガイド面として機能するようになっている。すなわち、内側壁部32は、ケース6aと一体を成してレンズホルダ2の上側外周面とロータ18の上側内周面とをガイドするガイド部材として機能している。また、外側壁部30及び上壁部31は、クロー部材11,12を直接に支持する支持面として機能する。
【0024】
一方、下側ケース6bは、第2のステータ部17bの外側を全周にわたって取り囲む外側壁部33と、第2のステータ部17a及びロータ2を下側から覆う底壁部34と、ロータ2の内側下部を全周にわたって取り囲むとともにキャリア5とカム部材7との間に介挿される内側壁部35とを有しており、これらの壁部33,34,35により第2のステータ部17b及びロータ18の一部(下側半分)を直接に支持して収容するための第2の収容部S2を形成している。この場合、キャリア5と対向する内側壁部35の一方側の面35aは、レンズホルダ2(キャリア5)の光軸Oに沿う移動を下側でガイドする第1のガイド面として機能するとともに、カム部材7と対向する内側壁部35の他方側の面35bは、ロータ18(カム部材7)の回転(後述する)を下側でガイドする第2のガイド面として機能するようになっている。すなわち、内側壁部35は、ケース6bと一体を成してレンズホルダ2の下側外周面とロータ18の下側内周面とをガイドするガイド部材として機能している。また、外側壁部33及び底壁部34は、クロー部材13,14を直接に支持する支持面として機能する。
【0025】
なお、内側壁部35の上端面35cは、レンズホルダ2を介して後述するリーフスプリング30の下側方向への付勢力を受けるロータ18のカム部材7の下端面と当接することにより、ロータ18の下側方向への変位を規制している。
【0026】
また、上側ケース6aの開口端部すなわち外側壁部30の下端部位は、径方向外側に張り出す張り出し部39を形成しており、それにより下側ケース6bの開口端部、すなわち外側壁部33の上端部位を嵌合状態で受けられるようになっている。すなわち、張り出し部39は、下側ケース6bの開口端部を内側に重ね合わせて連結する重合部を形成している。なお、この張り出し部39が図示しない取付部材(例えばレンズ駆動装置1が取り付けられる部材の一部であっても良い)に係止することにより、上側ケース6aと下側ケース6bとの嵌合状態が保持され、上側ケース6aと下側ケース6bとが互いに一体に固定されるようになっている。
【0027】
また、図1〜図3及び図5などに示されるように、上側ケース6a及び下側ケース6bには、後述するコネクタ60が対向し、マグネットコイル20,22の導電ワイヤの端部を導出させるための導出口部36,37がそれぞれの外側壁部30,33に形成されている。これらの導出口部36,37は、クロー部材12,13の外周縁に突出形成された突出部12b、13bと係合するようになっており、クロー部材12,13及びこれらに組み合わされるクロー部材11,14をケース6に対して位置決めするための位置決め部としての機能も果たすようになっている。
【0028】
図1及び図2に明確に示されるように、上側ケース6aの上壁部31上には、レンズホルダ2を光軸O方向に沿って付勢するリーフスプリング(板バネ)30が配設されている。具体的に、リーフスプリング30は、図6に示されるように、上側ケース6aの上壁部31に取付固定される外側リング部30aと、レンズホルダ2のキャリア5に取付固定される内側リング部30bと、外側リング部30aと内側リング部30bとを接続する複数の弾性アーム部30cとを有する。本実施の形態において、弾性アーム部30cは、外側リング部30aと内側リング部30bとの間に3つ設けられており、それぞれが周方向に沿って延びるとともに、互いに周方向に等しい角度間隔をもって配置されている。そして、これらの弾性アーム部30cは、レンズホルダ2がケース6内にほぼ完全に収納された図1の状態では、外力を受けることなく図7の(a)に明確に示されるように外側リング部30a及び内側リング部30bと面一に位置されるが、ケース6aに対してレンズホルダ2が光軸方向に沿って移動し(図2の状態)、それに伴ってケース6a及びレンズホルダ2に固定された外側リング部30aと内側リング部30bとが光軸方向で互い離間すると、図7の(b)に示されるように内側リング部30bから引張り力を受けて外側リング部30aの表面から上方に立ち上がり、それによって生起される弾性復元力によりレンズホルダ2に対しこれを下側ケース6bに向けて付勢する付勢力を作用させ、結果的に、カム部材7の雌ネジ7aとキャリア5の雄ネジ5bとの間のバックラッシュに伴うガタ付きを防止する。
【0029】
また、リーフスプリング30の内側リング部30bの内周縁には、径方向内側に突出する4つの突起59が設けられている。これらの突起59は、周方向に等しい角度間隔をもって離間されており、キャリア5の上端縁に対応して形成された4つの凹溝5cと係合することにより、ロータ18の回転に伴うレンズホルダ2の回転を規制するようになっている。
【0030】
図8及び図9に示されるように、上側ケース6a及び下側ケース6bの導出口部36,37に対向して位置される前述したコネクタ60は端子台50を有している。端子台50は水平台部50aと垂直台部50bとを有し、水平台部50aは下側ケース6bの下側で底壁部34と略平行に延びるように配置されるとともに、垂直台部50bは導出口部36,37に対向して配置されるようになっている。
【0031】
垂直台部50bには、4つのコイル用端子52が固定されている。この場合、各コイル用端子52の一端側52aは、垂直台部50bに対して垂直に延び(したがって水平方向に延び)て側方に突出しており、対応するマグネットコイル20,22の導電ワイヤの端部が巻き付けられて半田付けされる(電気的に接続される)ようになっている。また、各コイル用端子52の他端側52bは、垂直台部50bと平行に延び(したがって鉛直方向に延び)て水平台部50aの下側に突出しており、コイル20,22に電流を供給するための部品(図示せず)に対して電気的に接続されるようになっている。
【0032】
一方、水平台部50aには3つのセンサ用端子54が立設されている。この場合、各センサ用端子54の一端側54aは、水平台部50aの上面から上方に突出しており、水平台部50a上に配置された光センサチップ44から延びるフレキシブルプリント配線板(FPC)65と電気的に接続されるようになっている。また、各センサ用端子54の他端側54bは、光センサチップ44からの検知信号を受ける図示しない検知側部品に対して電気的に接続されるようになっている。なお、水平台部50aをプリント回路基板(PCB)として形成し、フレキシブルプリント配線板65の代わりにプリント回路基板上のプリント配線によって光センサチップ44と各センサ用端子54の一端側54aとを電気的に接続しても良い。
【0033】
図2又は図9に示されるように、水平台部50a上に設けられた光センサチップ44は、下側ケース6bの底壁部34に形成された開口部38に配置されており、その発光部44a及び受光部44bが永久磁石9の下側周端面72と対向するようになっている。
【0034】
また、本実施の形態においては、レンズホルダ2の光軸O方向に沿う移動量を所定の範囲に規定するため、永久磁石9の回転を1回転未満に規制している。具体的には、図10に明確に示されるように、永久磁石9の下側周端面72に所定の周方向間隔をもって一対の凹部9b,9cが設けられ、これらの凹部9b,9c間に設けられた凸部9aを水平台部50a上に突設されたストッパ62,64に当接させることにより永久磁石9の回転を1回転未満の所定の範囲に規制するようにしている。
【0035】
また、本実施の形態では、永久磁石9の下側周端面72のうち凹部9b,9cの底面が、光センサチップ44の発光部44aからの光を受光部44bに対して反射可能な反射面69,70として形成されている。そのため、光センサチップ44は、永久磁石9(ロータ18)の回転に伴って凹部9b,9cと対向した時だけ永久磁石9を検知して検知信号を生成することができる。したがって、凹部9b,9cを所定の位置に規定し、それに伴ってストッパ62,64と当接する凸部9aの周方向長さを調整することにより、ロータ18の回転範囲を所望の範囲に設定できるとともに、ロータ18の回転位置(回転量)を凹部9b,9cから光センサチップ44により検知してロータ18の回転制御を行なうことができる。
【0036】
次に、上記構成のレンズ駆動装置1の動作を簡単に説明する。
まず、図1の状態から、コネクタ60のコイル用端子52を通じて、マグネットコイル20,22の導電ワイヤに対し所定の態様(ステッピングモータにおいて周知の態様)で交互に電流Iを供給して励磁すると、クロー部材11,12,13,14のクロー11a,12a,13a,14aが交互に磁化され、図11に示されるように、密閉されたケース6内で磁束の漏れを生じることなく2つの磁気回路A,Bが形成される(クロー11a,12a又は13a,14aにヘテロポーラ磁界が現われる)。そのため、永久磁石9を有するロータ18が図12の状態から所定の方向(この例では、図12に矢印で示される時計周り)に回転する。この場合、ケース6a,6bの外側壁部30,33とクロー部材11,12,13,14のクロー11a,12a,13a,14aとの間で第1の磁気回路Aが形成されるとともに、ケース6a,6bの外側壁部30,33と内側壁部32,35との間で第2の磁気回路Bが形成される(図11には、このような励磁下における磁力線の方向が矢印で示されている)。
【0037】
このようにしてロータ18が回転すると、ロータ18とネジ5b,7aを介して螺合するレンズホルダ2が、図1の状態から図2及び図9の状態へと光軸に沿って移動する。この時、ロータ18の回転及びレンズホルダ2の移動は、上側ケース6aの内側壁部32の両側のガイド面32a,32b及び下側ケース6bの内側壁部35の両側のガイド面35a,35bによってガイドされる。したがって、レンズホルダ2はガタ付くことなく滑らかに移動される。
【0038】
また、このようにしてレンズホルダ2が光軸O方向に移動するにつれて、レンズホルダ2を光軸O方向に沿って付勢するリーフスプリング30は、前述したようにその弾性アーム部30cが外側リング部30aの表面から上方に立ち上がり、それによって生起される弾性復元力によりレンズホルダ2に対しこれを下側ケース6bに向けて付勢する付勢力を作用させるようになる。そのため、カム部材7の雌ネジ7aとキャリア5の雄ネジ5bとの間のバックラッシュに伴うガタ付きが防止される。
【0039】
また、図12の状態(ロータ18の回転開始位置)から回転し続けるロータ18は、その凸部9aがコネクタ60の端子台50に設けられた第2のストッパ64に当接することにより、回転が停止される。すなわち、ロータ18は、その凸部9aが端子台50に設けられた第1のストッパ62に当接する図12の状態から図13の状態を経て図14の状態に至ると、その凸部9aが第2のストッパ64に当接し、それ以上回転できなくなる。また、この状態(ロータ18の回転終端位置)は、ロータ18を構成する永久磁石9の第2の反射面70が光センサチップ44と対向することにより検出され、それにより、マグネットコイル20,22の導電ワイヤに対する電流Iの供給が停止される。
【0040】
なお、電流Iの供給方向を逆にしてロータ18を逆方向に回転させる(したがって、レンズホルダ2が先と逆の方向(ケース6内に引き込まれる方向)に移動される)場合も原理は同じである。すなわち、図14の状態(ロータ18の回転開始位置)から回転し続けるロータ18は、その凸部9aがコネクタ60の端子台50に設けられた第1のストッパ62に当接する(図12の状態)ことにより、回転が停止される。また、この状態(ロータ18の回転終端位置)は、ロータ18を構成する永久磁石9の第1の反射面69が光センサチップ44と対向することにより検出され、それにより、マグネットコイル20,22の導電ワイヤに対する電流Iの供給が停止される。
【0041】
以上説明したように、本実施の形態によれば、ロータ18とレンズホルダ2との間(より正確には、キャリア5とカム部材7との間)にガイド部材32,35が設けられ、これらのガイド部材32,35の第1のガイド面32a,35aによってレンズホルダ2の光軸方向に沿う移動がガイドされ、ガイド部材32,35の第2のガイド面32b,35bによってロータ18の回転がガイドされるため、光軸精度を高く維持することができ、螺合状態で移動されるレンズホルダ2の滑らかな移動を確保することができる。また、ガイド部材32,35は、その両面でロータ18及びレンズホルダ2の両者を同時にガイドするため、すなわち、1つのガイド部材で2つの部材のガイドを行なうことができるため、部品点数を削減して構造を簡略化することができる。
【0042】
また、本実施の形態では、光軸方向に沿って上下に一対のガイド部材32,35が設けられ、上側に配置された上側ガイド部材32がレンズホルダ2及びロータ18の上部をガイドし、下側に配置された下側ガイド部材35がレンズホルダ2及びロータ18の下部をガイドするようになっている。そのため、螺合に伴うレンズホルダ2のガタ付きをレンズホルダ2の移動経路の全長にわたって確実に防止でき、光軸精度の更なる向上を図ることが可能になる。
【0043】
また、本実施の形態において、下側ガイド部材35の上端面35cは、ロータ18(カム部材7)に当接してロータ18の下側方向への変位を規制するようになっている。すなわち、下側ガイド部材35は、ロータ18及びレンズホルダ2をガイドするガイド機能と、リーフスプリング30によって付勢されるロータ18を位置決めしてその変位を規制する位置決め機能とを兼用している。そのため、部品点数を削減して、レンズ駆動装置の構造を簡略化することができる。
【0044】
また、本実施の形態においては、ガイド部材32,35がケース6と一体に形成されている。すなわち、ロータ18及びレンズホルダ2を収容保持するためのケース6がロータ18及びレンズホルダ2をガイドするガイド機能を兼ねている。そのため、部品点数を削減して、レンズ駆動装置の構造を簡略化することができる。
【0045】
本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。例えば、本実施の形態における各部材の形状や数などは例示であり、それに限定されず、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一実施の形態に係るレンズ駆動装置の斜視図である。
【図2】図1のレンズ駆動装置の縦断面図である。
【図3】図1のレンズ駆動装置の分解斜視図である。
【図4】マグネットコイル及びクロー部材が配置された上側ケースの内部を示す部分斜視図である。
【図5】図2の状態からレンズホルダ及びロータを除去した状態を示す縦断面図である。
【図6】図1のレンズ駆動装置に設けられるリーフスプリングの平面図である。
【図7】(a)はレンズホルダがケース内にほぼ完全に収納された状態における図6のリーフスプリングの形態を示す斜視図、(b)はケースに対してレンズホルダが光軸方向に沿って移動された状態における図6のリーフスプリングの形態を示す斜視図である。
【図8】図1のレンズ駆動装置に設けられるコネクタの斜視図である。
【図9】コネクタ付近のレンズ駆動装置の切断状態の斜視図である。
【図10】図1のレンズ駆動装置に設けられるロータの斜視図である。
【図11】(a)はマグネットコイルに電流を供給して励磁した状態における磁束の方向を示す部分斜視図、(b)は(a)と同じ励磁状態における平面図である。
【図12】回転開始位置に配置されたロータ及びコネクタの斜視図である。
【図13】図12の状態から所定の角度だけ回転した状態におけるロータ及びコネクタの斜視図である。
【図14】回転終端位置に配置されたロータ及びコネクタの斜視図である。
【符号の説明】
【0047】
1 レンズ駆動装置
2 レンズホルダ
6 ケース
10レンズ
17 ステータ
18 ロータ
32 内側壁部(ガイド部材;上側ガイド部材)
32a,35a 第1のガイド面
32b,35b 第2のガイド面
35 内側壁部(ガイド部材;下側ガイド部材)
35c 上端面
O 光軸
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズを光軸方向に沿って移動させるためのレンズ駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レンズを光軸方向に沿って移動させるためのレンズ駆動装置は従来から様々な形態のものが知られている。例えば、特許文献1には、中空状のステッピングモータを利用したレンズ駆動装置が開示されている。このレンズ駆動装置では、レンズを保持するレンズホルダがステッピングモータのステータ側のネジ部に螺合されており、ステッピングモータのロータの回転に伴って前記レンズホルダが光軸方向に沿って螺合状態で移動するようになっている。
【特許文献1】特開2002−51526号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、レンズホルダが螺合状態で移動される場合には、ネジ部のガタにより滑らかな移動を確保することが難しく、光軸精度を高く維持することができないといった問題がある。
【0004】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、レンズホルダが螺合状態で移動される場合であっても簡単な構成で光軸精度を高く維持することができるレンズ駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のレンズ駆動装置は、レンズを保持するレンズホルダと、前記レンズホルダの外側に配されたステータ及びロータを有する中空状のモータとを備え、前記ロータを前記レンズホルダに係合させて前記ロータを回転させることにより前記レンズホルダが光軸方向に沿って移動するレンズ駆動装置であって、前記ロータと前記レンズホルダとの間にガイド部材が設けられ、前記ガイド部材は、前記レンズホルダと対向し、前記レンズホルダの光軸方向に沿う移動をガイドする第1のガイド面と、前記ロータと対向し、前記ロータの回転をガイドする第2のガイド面とを有していることを特徴とする。
【0006】
この構成によれば、レンズホルダが螺合状態で移動される場合であっても、光軸精度を高く維持することができ、レンズホルダの滑らかな移動を確保することができる。また、ガイド部材は、その両面でロータ及びレンズホルダの両者を同時にガイドするため、すなわち、1つのガイド部材で2つの部材のガイドを行なうことができるため、部品点数を削減して構造を簡略化することができる。
【0007】
本発明のレンズ駆動装置においては、前記ガイド部材が光軸方向に沿って上下に一対設けられ、上側に配置された上側ガイド部材が前記レンズホルダ及び前記ロータの上部をガイドし、下側に配置された下側ガイド部材が前記レンズホルダ及び前記ロータの下部をガイドすることが好ましい。
【0008】
本発明のレンズ駆動装置においては、前記下側ガイド部材の上端面は、前記ロータに当接して前記ロータの下側方向への変位を規制することが好ましい。
【0009】
本発明のレンズ駆動装置においては、前記レンズホルダ及び前記モータを収容するケースが設けられ、前記ガイド部材が前記ケースと一体に形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ロータとレンズホルダとの間にガイド部材が設けられ、このガイド部材の第1のガイド面によってレンズホルダの光軸方向に沿う移動がガイドされるとともに、ガイド部材の第2のガイド面によってロータの回転がガイドされるため、レンズホルダが螺合状態で移動される場合であっても、光軸精度を高く維持することができ、レンズホルダの滑らかな移動を確保することができる。また、ガイド部材は、その両面でロータ及びレンズホルダの両者を同時にガイドするため、すなわち、1つのガイド部材で2つの部材のガイドを行なうことができるため、部品点数を削減して構造を簡略化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1〜図3は、本発明の一実施の形態に係るレンズ駆動装置1の全体構成を示す図である。なお、図1はレンズ駆動装置1の斜視図であり、図2はレンズ駆動装置1の縦断面図であり、図3はレンズ駆動装置1の分解斜視図である。
【0012】
これらの図に示されるように、レンズ駆動装置1は、レンズホルダ2と、レンズホルダ2を光軸O方向に沿って移動可能に保持する中空のモータ4と、レンズホルダ2と共にモータ4を保持して収容する磁性金属から成るケース6とを備えてなる。なお、本実施の形態において、モータ4は、後述するように、いわゆるPM型2相クローポール式のステッピングモータを構成している。
【0013】
レンズホルダ2は、所要のレンズ10を光軸方向に沿って配列してなる鏡筒10Aを保持するレンズバレル3と、レンズバレル3を収容し、レンズバレル3と一体で光軸方向に移動する円筒状のキャリア5とを有する。この場合、キャリア5は、レンズバレル3に対して螺合により一体的に固定されている。具体的には、キャリア5の内周面に形成された雌ネジ5aとレンズバレル3の外周面に形成された雄ネジ3aとが螺合することにより1つのレンズホルダ2が形成されるようになっている。
【0014】
モータ4は、光軸Oを中心に回転可能な円筒状のロータ(回転子)18と、このロータ4の外周に同心的に配置されるステータ(固定子)17とを有する。
【0015】
ロータ18は、円筒状の永久磁石9と、永久磁石9の内側に同心的に配置された円筒状のカム部材7とを有する。カム部材7は、永久磁石9の内周面に接着固定されるとともに、その内周面に形成された雌ネジ7aがキャリア5の外周面に形成された雄ネジ5bと螺合している。また、永久磁石9の外周には、N極とS極とが交互に所定数の対だけ等ピッチで着磁されている。
【0016】
一方、ステータ17は、永久磁石9の周囲に同心的に配置されるとともに、スペーサ19を挟んで互いに上下に積層された第1のステータ部(1相側固定子)17a及び第2のステータ部(2相側固定子)17bとを有する。
【0017】
第1のステータ部17aは、リング状の上側クロー部材11と、リング状の下側クロー部材12と、これらのクロー部材11,12を上下に対向させることによって形成されるボビンの周囲に巻回された環状のマグネットコイル20とを有する。
【0018】
上側及び下側クロー部材11,12は、円環状の磁性金属で構成され、その内周に沿って等ピッチで配置された複数(本実施の形態では10個)のクロー(歯部)11a,12aを有している。また、これらのクロー11a,11bは、クロー部材11,12の円環状の主面に対して略垂直に延びており、例えば前記主面から90°曲げ起こすことによって形成されるとともに、N極とS極とが交互に着磁された永久磁石9の外周面と所定の空隙を介して対向している。また、上側クロー部材11のクロー11a(10個のクロー11aで構成されたクロー群)は、図4に明確に示されるように、下側クロー部材12のクロー12a(10個のクロー12aで構成されたクロー群)に対し、これらのクロー12aと交互に噛み合うように周方向に1/2ピッチずれて配置されている。
【0019】
また、上側及び下側クロー部材11,12によって形成されるボビンの周囲に巻回されるマグネットコイル20は、導電ワイヤを円環状に束ねて形成されており、互いに噛み合わされたクロー部材11,12のクロー群11a,12aの外周に配置されている。
【0020】
一方、第1のステータ部17aと同様に、第2のステータ部17bも、リング状の上側クロー部材13と、リング状の下側クロー部材14と、これらのクロー部材13,14によって形成されるボビンの周囲に巻回された環状のマグネットコイル22とを有する。
【0021】
上側及び下側クロー部材13,14は、円環状の磁性体で構成され、その内周に沿って等ピッチで配置された複数(本実施の形態では10個)のクロー(歯部)13a,14aを有している。また、これらのクロー13a,14bは、クロー部材13,14の円環状の主面に対して略垂直に延びており、例えば前記主面から90°曲げ起こすことによって形成されるとともに、N極とS極とが交互に着磁された永久磁石9の外周面と所定の空隙を介して対向している。また、上側クロー部材13のクロー13a(10個のクロー13aで構成されたクロー群)も、図5に示されるように、下側クロー部材14のクロー14a(10個のクロー14aで構成されたクロー群)に対し、これらのクロー14aと交互に噛み合うように周方向に1/2ピッチずれて配置されており、これらのクロー群13a,14aの外周にマグネットコイル22が配置されている。なお、図5に明確に示されるように、2相側であるこの第2のステータ部17bのクロー群13a,14aは、1相側である第1のステータ部17aのクロー群11a,12aに対して周方向に1/4ピッチずれて配置されている。
【0022】
また、上記構成のレンズホルダ2及びモータ4を保持して収容するケース6は、上側ケース6aと下側ケース6bとを有する。これらの上側及び下側ケース6aは、断面が略コの字状に形成されており、その開口同士を対向させて互いに上下に重ね合わせることにより、ステータ17及びロータ18を密閉状態で収容するための収容空間(収納部)Sをレンズホルダ2と協働して形成するようになっている。
【0023】
具体的には、図2に示されるように、上側ケース6aは、第1のステータ部17aの外側を全周にわたって取り囲む外側壁部30と、第1のステータ部17a及びロータ2を上側から覆う上壁部31と、ロータ2の内側上部を全周にわたって取り囲むとともにキャリア5とカム部材7との間に介挿される内側壁部32とを有しており、これらの壁部30,31,32により第1のステータ部17a及びロータ18の一部(上側半分)を直接に支持して収容するための第1の収容部S1を形成している。この場合、キャリア5と対向する内側壁部32の一方側の面32aは、レンズホルダ2(キャリア5)の光軸Oに沿う移動(後述する)を上側でガイドする第1のガイド面として機能するとともに、カム部材7と対向する内側壁部32の他方側の面32bは、ロータ18(カム部材7)の回転(後述する)を上側でガイドする第2のガイド面として機能するようになっている。すなわち、内側壁部32は、ケース6aと一体を成してレンズホルダ2の上側外周面とロータ18の上側内周面とをガイドするガイド部材として機能している。また、外側壁部30及び上壁部31は、クロー部材11,12を直接に支持する支持面として機能する。
【0024】
一方、下側ケース6bは、第2のステータ部17bの外側を全周にわたって取り囲む外側壁部33と、第2のステータ部17a及びロータ2を下側から覆う底壁部34と、ロータ2の内側下部を全周にわたって取り囲むとともにキャリア5とカム部材7との間に介挿される内側壁部35とを有しており、これらの壁部33,34,35により第2のステータ部17b及びロータ18の一部(下側半分)を直接に支持して収容するための第2の収容部S2を形成している。この場合、キャリア5と対向する内側壁部35の一方側の面35aは、レンズホルダ2(キャリア5)の光軸Oに沿う移動を下側でガイドする第1のガイド面として機能するとともに、カム部材7と対向する内側壁部35の他方側の面35bは、ロータ18(カム部材7)の回転(後述する)を下側でガイドする第2のガイド面として機能するようになっている。すなわち、内側壁部35は、ケース6bと一体を成してレンズホルダ2の下側外周面とロータ18の下側内周面とをガイドするガイド部材として機能している。また、外側壁部33及び底壁部34は、クロー部材13,14を直接に支持する支持面として機能する。
【0025】
なお、内側壁部35の上端面35cは、レンズホルダ2を介して後述するリーフスプリング30の下側方向への付勢力を受けるロータ18のカム部材7の下端面と当接することにより、ロータ18の下側方向への変位を規制している。
【0026】
また、上側ケース6aの開口端部すなわち外側壁部30の下端部位は、径方向外側に張り出す張り出し部39を形成しており、それにより下側ケース6bの開口端部、すなわち外側壁部33の上端部位を嵌合状態で受けられるようになっている。すなわち、張り出し部39は、下側ケース6bの開口端部を内側に重ね合わせて連結する重合部を形成している。なお、この張り出し部39が図示しない取付部材(例えばレンズ駆動装置1が取り付けられる部材の一部であっても良い)に係止することにより、上側ケース6aと下側ケース6bとの嵌合状態が保持され、上側ケース6aと下側ケース6bとが互いに一体に固定されるようになっている。
【0027】
また、図1〜図3及び図5などに示されるように、上側ケース6a及び下側ケース6bには、後述するコネクタ60が対向し、マグネットコイル20,22の導電ワイヤの端部を導出させるための導出口部36,37がそれぞれの外側壁部30,33に形成されている。これらの導出口部36,37は、クロー部材12,13の外周縁に突出形成された突出部12b、13bと係合するようになっており、クロー部材12,13及びこれらに組み合わされるクロー部材11,14をケース6に対して位置決めするための位置決め部としての機能も果たすようになっている。
【0028】
図1及び図2に明確に示されるように、上側ケース6aの上壁部31上には、レンズホルダ2を光軸O方向に沿って付勢するリーフスプリング(板バネ)30が配設されている。具体的に、リーフスプリング30は、図6に示されるように、上側ケース6aの上壁部31に取付固定される外側リング部30aと、レンズホルダ2のキャリア5に取付固定される内側リング部30bと、外側リング部30aと内側リング部30bとを接続する複数の弾性アーム部30cとを有する。本実施の形態において、弾性アーム部30cは、外側リング部30aと内側リング部30bとの間に3つ設けられており、それぞれが周方向に沿って延びるとともに、互いに周方向に等しい角度間隔をもって配置されている。そして、これらの弾性アーム部30cは、レンズホルダ2がケース6内にほぼ完全に収納された図1の状態では、外力を受けることなく図7の(a)に明確に示されるように外側リング部30a及び内側リング部30bと面一に位置されるが、ケース6aに対してレンズホルダ2が光軸方向に沿って移動し(図2の状態)、それに伴ってケース6a及びレンズホルダ2に固定された外側リング部30aと内側リング部30bとが光軸方向で互い離間すると、図7の(b)に示されるように内側リング部30bから引張り力を受けて外側リング部30aの表面から上方に立ち上がり、それによって生起される弾性復元力によりレンズホルダ2に対しこれを下側ケース6bに向けて付勢する付勢力を作用させ、結果的に、カム部材7の雌ネジ7aとキャリア5の雄ネジ5bとの間のバックラッシュに伴うガタ付きを防止する。
【0029】
また、リーフスプリング30の内側リング部30bの内周縁には、径方向内側に突出する4つの突起59が設けられている。これらの突起59は、周方向に等しい角度間隔をもって離間されており、キャリア5の上端縁に対応して形成された4つの凹溝5cと係合することにより、ロータ18の回転に伴うレンズホルダ2の回転を規制するようになっている。
【0030】
図8及び図9に示されるように、上側ケース6a及び下側ケース6bの導出口部36,37に対向して位置される前述したコネクタ60は端子台50を有している。端子台50は水平台部50aと垂直台部50bとを有し、水平台部50aは下側ケース6bの下側で底壁部34と略平行に延びるように配置されるとともに、垂直台部50bは導出口部36,37に対向して配置されるようになっている。
【0031】
垂直台部50bには、4つのコイル用端子52が固定されている。この場合、各コイル用端子52の一端側52aは、垂直台部50bに対して垂直に延び(したがって水平方向に延び)て側方に突出しており、対応するマグネットコイル20,22の導電ワイヤの端部が巻き付けられて半田付けされる(電気的に接続される)ようになっている。また、各コイル用端子52の他端側52bは、垂直台部50bと平行に延び(したがって鉛直方向に延び)て水平台部50aの下側に突出しており、コイル20,22に電流を供給するための部品(図示せず)に対して電気的に接続されるようになっている。
【0032】
一方、水平台部50aには3つのセンサ用端子54が立設されている。この場合、各センサ用端子54の一端側54aは、水平台部50aの上面から上方に突出しており、水平台部50a上に配置された光センサチップ44から延びるフレキシブルプリント配線板(FPC)65と電気的に接続されるようになっている。また、各センサ用端子54の他端側54bは、光センサチップ44からの検知信号を受ける図示しない検知側部品に対して電気的に接続されるようになっている。なお、水平台部50aをプリント回路基板(PCB)として形成し、フレキシブルプリント配線板65の代わりにプリント回路基板上のプリント配線によって光センサチップ44と各センサ用端子54の一端側54aとを電気的に接続しても良い。
【0033】
図2又は図9に示されるように、水平台部50a上に設けられた光センサチップ44は、下側ケース6bの底壁部34に形成された開口部38に配置されており、その発光部44a及び受光部44bが永久磁石9の下側周端面72と対向するようになっている。
【0034】
また、本実施の形態においては、レンズホルダ2の光軸O方向に沿う移動量を所定の範囲に規定するため、永久磁石9の回転を1回転未満に規制している。具体的には、図10に明確に示されるように、永久磁石9の下側周端面72に所定の周方向間隔をもって一対の凹部9b,9cが設けられ、これらの凹部9b,9c間に設けられた凸部9aを水平台部50a上に突設されたストッパ62,64に当接させることにより永久磁石9の回転を1回転未満の所定の範囲に規制するようにしている。
【0035】
また、本実施の形態では、永久磁石9の下側周端面72のうち凹部9b,9cの底面が、光センサチップ44の発光部44aからの光を受光部44bに対して反射可能な反射面69,70として形成されている。そのため、光センサチップ44は、永久磁石9(ロータ18)の回転に伴って凹部9b,9cと対向した時だけ永久磁石9を検知して検知信号を生成することができる。したがって、凹部9b,9cを所定の位置に規定し、それに伴ってストッパ62,64と当接する凸部9aの周方向長さを調整することにより、ロータ18の回転範囲を所望の範囲に設定できるとともに、ロータ18の回転位置(回転量)を凹部9b,9cから光センサチップ44により検知してロータ18の回転制御を行なうことができる。
【0036】
次に、上記構成のレンズ駆動装置1の動作を簡単に説明する。
まず、図1の状態から、コネクタ60のコイル用端子52を通じて、マグネットコイル20,22の導電ワイヤに対し所定の態様(ステッピングモータにおいて周知の態様)で交互に電流Iを供給して励磁すると、クロー部材11,12,13,14のクロー11a,12a,13a,14aが交互に磁化され、図11に示されるように、密閉されたケース6内で磁束の漏れを生じることなく2つの磁気回路A,Bが形成される(クロー11a,12a又は13a,14aにヘテロポーラ磁界が現われる)。そのため、永久磁石9を有するロータ18が図12の状態から所定の方向(この例では、図12に矢印で示される時計周り)に回転する。この場合、ケース6a,6bの外側壁部30,33とクロー部材11,12,13,14のクロー11a,12a,13a,14aとの間で第1の磁気回路Aが形成されるとともに、ケース6a,6bの外側壁部30,33と内側壁部32,35との間で第2の磁気回路Bが形成される(図11には、このような励磁下における磁力線の方向が矢印で示されている)。
【0037】
このようにしてロータ18が回転すると、ロータ18とネジ5b,7aを介して螺合するレンズホルダ2が、図1の状態から図2及び図9の状態へと光軸に沿って移動する。この時、ロータ18の回転及びレンズホルダ2の移動は、上側ケース6aの内側壁部32の両側のガイド面32a,32b及び下側ケース6bの内側壁部35の両側のガイド面35a,35bによってガイドされる。したがって、レンズホルダ2はガタ付くことなく滑らかに移動される。
【0038】
また、このようにしてレンズホルダ2が光軸O方向に移動するにつれて、レンズホルダ2を光軸O方向に沿って付勢するリーフスプリング30は、前述したようにその弾性アーム部30cが外側リング部30aの表面から上方に立ち上がり、それによって生起される弾性復元力によりレンズホルダ2に対しこれを下側ケース6bに向けて付勢する付勢力を作用させるようになる。そのため、カム部材7の雌ネジ7aとキャリア5の雄ネジ5bとの間のバックラッシュに伴うガタ付きが防止される。
【0039】
また、図12の状態(ロータ18の回転開始位置)から回転し続けるロータ18は、その凸部9aがコネクタ60の端子台50に設けられた第2のストッパ64に当接することにより、回転が停止される。すなわち、ロータ18は、その凸部9aが端子台50に設けられた第1のストッパ62に当接する図12の状態から図13の状態を経て図14の状態に至ると、その凸部9aが第2のストッパ64に当接し、それ以上回転できなくなる。また、この状態(ロータ18の回転終端位置)は、ロータ18を構成する永久磁石9の第2の反射面70が光センサチップ44と対向することにより検出され、それにより、マグネットコイル20,22の導電ワイヤに対する電流Iの供給が停止される。
【0040】
なお、電流Iの供給方向を逆にしてロータ18を逆方向に回転させる(したがって、レンズホルダ2が先と逆の方向(ケース6内に引き込まれる方向)に移動される)場合も原理は同じである。すなわち、図14の状態(ロータ18の回転開始位置)から回転し続けるロータ18は、その凸部9aがコネクタ60の端子台50に設けられた第1のストッパ62に当接する(図12の状態)ことにより、回転が停止される。また、この状態(ロータ18の回転終端位置)は、ロータ18を構成する永久磁石9の第1の反射面69が光センサチップ44と対向することにより検出され、それにより、マグネットコイル20,22の導電ワイヤに対する電流Iの供給が停止される。
【0041】
以上説明したように、本実施の形態によれば、ロータ18とレンズホルダ2との間(より正確には、キャリア5とカム部材7との間)にガイド部材32,35が設けられ、これらのガイド部材32,35の第1のガイド面32a,35aによってレンズホルダ2の光軸方向に沿う移動がガイドされ、ガイド部材32,35の第2のガイド面32b,35bによってロータ18の回転がガイドされるため、光軸精度を高く維持することができ、螺合状態で移動されるレンズホルダ2の滑らかな移動を確保することができる。また、ガイド部材32,35は、その両面でロータ18及びレンズホルダ2の両者を同時にガイドするため、すなわち、1つのガイド部材で2つの部材のガイドを行なうことができるため、部品点数を削減して構造を簡略化することができる。
【0042】
また、本実施の形態では、光軸方向に沿って上下に一対のガイド部材32,35が設けられ、上側に配置された上側ガイド部材32がレンズホルダ2及びロータ18の上部をガイドし、下側に配置された下側ガイド部材35がレンズホルダ2及びロータ18の下部をガイドするようになっている。そのため、螺合に伴うレンズホルダ2のガタ付きをレンズホルダ2の移動経路の全長にわたって確実に防止でき、光軸精度の更なる向上を図ることが可能になる。
【0043】
また、本実施の形態において、下側ガイド部材35の上端面35cは、ロータ18(カム部材7)に当接してロータ18の下側方向への変位を規制するようになっている。すなわち、下側ガイド部材35は、ロータ18及びレンズホルダ2をガイドするガイド機能と、リーフスプリング30によって付勢されるロータ18を位置決めしてその変位を規制する位置決め機能とを兼用している。そのため、部品点数を削減して、レンズ駆動装置の構造を簡略化することができる。
【0044】
また、本実施の形態においては、ガイド部材32,35がケース6と一体に形成されている。すなわち、ロータ18及びレンズホルダ2を収容保持するためのケース6がロータ18及びレンズホルダ2をガイドするガイド機能を兼ねている。そのため、部品点数を削減して、レンズ駆動装置の構造を簡略化することができる。
【0045】
本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。例えば、本実施の形態における各部材の形状や数などは例示であり、それに限定されず、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一実施の形態に係るレンズ駆動装置の斜視図である。
【図2】図1のレンズ駆動装置の縦断面図である。
【図3】図1のレンズ駆動装置の分解斜視図である。
【図4】マグネットコイル及びクロー部材が配置された上側ケースの内部を示す部分斜視図である。
【図5】図2の状態からレンズホルダ及びロータを除去した状態を示す縦断面図である。
【図6】図1のレンズ駆動装置に設けられるリーフスプリングの平面図である。
【図7】(a)はレンズホルダがケース内にほぼ完全に収納された状態における図6のリーフスプリングの形態を示す斜視図、(b)はケースに対してレンズホルダが光軸方向に沿って移動された状態における図6のリーフスプリングの形態を示す斜視図である。
【図8】図1のレンズ駆動装置に設けられるコネクタの斜視図である。
【図9】コネクタ付近のレンズ駆動装置の切断状態の斜視図である。
【図10】図1のレンズ駆動装置に設けられるロータの斜視図である。
【図11】(a)はマグネットコイルに電流を供給して励磁した状態における磁束の方向を示す部分斜視図、(b)は(a)と同じ励磁状態における平面図である。
【図12】回転開始位置に配置されたロータ及びコネクタの斜視図である。
【図13】図12の状態から所定の角度だけ回転した状態におけるロータ及びコネクタの斜視図である。
【図14】回転終端位置に配置されたロータ及びコネクタの斜視図である。
【符号の説明】
【0047】
1 レンズ駆動装置
2 レンズホルダ
6 ケース
10レンズ
17 ステータ
18 ロータ
32 内側壁部(ガイド部材;上側ガイド部材)
32a,35a 第1のガイド面
32b,35b 第2のガイド面
35 内側壁部(ガイド部材;下側ガイド部材)
35c 上端面
O 光軸
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズを保持するレンズホルダと、前記レンズホルダの外側に配されたステータ及びロータを有する中空状のモータとを備え、前記ロータを前記レンズホルダに係合させて前記ロータを回転させることにより前記レンズホルダが光軸方向に沿って移動するレンズ駆動装置において、前記ロータと前記レンズホルダとの間にガイド部材が設けられ、
前記ガイド部材は、前記レンズホルダと対向し、前記レンズホルダの光軸方向に沿う移動をガイドする第1のガイド面と、前記ロータと対向し、前記ロータの回転をガイドする第2のガイド面とを有していることを特徴とするレンズ駆動装置。
【請求項2】
前記ガイド部材が光軸方向に沿って上下に一対設けられ、上側に配置された上側ガイド部材が前記レンズホルダ及び前記ロータの上部をガイドし、下側に配置された下側ガイド部材が前記レンズホルダ及び前記ロータの下部をガイドすることを特徴とする請求項1記載のレンズ駆動装置。
【請求項3】
前記下側ガイド部材の上端面は、前記ロータに当接して前記ロータの下側方向への変位を規制することを特徴とする請求項2記載のレンズ駆動装置。
【請求項4】
前記レンズホルダ及び前記モータを収容するケースを更に備え、前記ガイド部材が前記ケースと一体に形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のレンズ駆動装置。
【請求項1】
レンズを保持するレンズホルダと、前記レンズホルダの外側に配されたステータ及びロータを有する中空状のモータとを備え、前記ロータを前記レンズホルダに係合させて前記ロータを回転させることにより前記レンズホルダが光軸方向に沿って移動するレンズ駆動装置において、前記ロータと前記レンズホルダとの間にガイド部材が設けられ、
前記ガイド部材は、前記レンズホルダと対向し、前記レンズホルダの光軸方向に沿う移動をガイドする第1のガイド面と、前記ロータと対向し、前記ロータの回転をガイドする第2のガイド面とを有していることを特徴とするレンズ駆動装置。
【請求項2】
前記ガイド部材が光軸方向に沿って上下に一対設けられ、上側に配置された上側ガイド部材が前記レンズホルダ及び前記ロータの上部をガイドし、下側に配置された下側ガイド部材が前記レンズホルダ及び前記ロータの下部をガイドすることを特徴とする請求項1記載のレンズ駆動装置。
【請求項3】
前記下側ガイド部材の上端面は、前記ロータに当接して前記ロータの下側方向への変位を規制することを特徴とする請求項2記載のレンズ駆動装置。
【請求項4】
前記レンズホルダ及び前記モータを収容するケースを更に備え、前記ガイド部材が前記ケースと一体に形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のレンズ駆動装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2006−337920(P2006−337920A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−165483(P2005−165483)
【出願日】平成17年6月6日(2005.6.6)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年6月6日(2005.6.6)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】
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