説明

レンズ駆動装置

【課題】専用の冶具を必要とせず、組み付けた後においてもレンズ保持体を支持するばね部材の変形を防止すること。
【解決手段】レンズ体を保持すると共に外周面から外側に突出する突出部33a〜33dが設けられたレンズホルダ3と、装置本体の筐体に取り付けられ、レンズホルダ3を支持する下側板ばね7、上側板ばね8と、筐体に設けられ、突出片33a〜33dと係合してレンズホルダ3の回転を規制する回転規制手段とを具備することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ駆動装置に関し、特に、デジタルカメラにおけるオートフォーカス機構等に好適なレンズ駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、デジタルカメラにおけるオートフォーカス機構等に用いられるレンズ駆動装置において、レンズ保持体にレンズ体を組み付ける際に、レンズ保持体を筐体に連結する円環形状のばね部材の変形を防止するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このレンズ駆動装置においては、レンズ体とばね部材とを筐体に組み込んだ後、治具のピンをレンズ支持体及びばね部材に設けた挿通部に嵌合させて筐体に対するレンズ支持体の回転を規制した状態でレンズ保持体にレンズ体を組み付けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−284652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したレンズ駆動装置においては、筐体に対するレンズ保持体の回転を規制するための専用の治具が必要となる。また、レンズ保持体にレンズ体を組み付けた後においては、レンズ保持体は円環形状のばね部材のみによって筐体に支持されることから、装置に落下等で衝撃が加わった場合に板ばねが変形してしまう恐れがある。
【0005】
本発明は、かかる実情に鑑みてなされたものであり、組み付ける際に専用の冶具を必要とせず、組み付けた後においてもレンズ保持体を支持するばね部材の変形を防止することができるレンズ駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のレンズ駆動装置は、レンズ体を保持すると共に外周面から外側に突出する突出部が設けられたレンズ保持体と、装置本体の筐体に取り付けられ、前記レンズ保持体を支持するばね部材と、前記筐体に設けられ、前記突出部と係合して前記レンズ保持体の回転を規制する回転規制手段とを具備することを特徴とする。
【0007】
上記レンズ駆動装置によれば、装置本体の筐体に設けられた回転規制手段により、レンズ体を保持するレンズ保持体の回転が規制されることから、レンズ保持体にレンズ体を組み付ける際、或いは、組み付けた後においてレンズ保持体が回転するのを装置本体の筐体で規制することができるので、組み付ける際に専用の冶具を必要とせず、組み付けた後においてもレンズ保持体を支持するばね部材の変形を防止することが可能となる。
【0008】
上記レンズ駆動装置において、前記回転規制手段は、前記突出部を収容可能な凹部で構成され、前記レンズ保持体の回転に応じて前記突出部を前記凹部の内壁に当接させて当該レンズ保持体の回転を規制することが好ましい。この場合には、レンズ保持体に設けられた突出部を収容する凹部を筐体に設けるだけで簡単にレンズ保持体の回転を規制することが可能となる。
【0009】
上記レンズ駆動装置においては、磁石、コイル及びヨークを有し、前記レンズ保持体を光軸方向に沿って移動させる移動機構を具備し、前記ヨークで前記筐体の一部を構成すると共に当該ヨークに前記回転規制手段を設けることが好ましい。この場合には、移動機構のヨークで筐体の一部を構成し、このヨークに回転規制手段が設けられることから、移動機構のヨークに複数の機能を持たせることができ、装置本体の構成を簡素化すると共に、装置本体を小型化することが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、装置本体の筐体に設けられた回転規制手段により、レンズ体を保持するレンズ保持体の回転を規制するようにしたことから、レンズ保持体にレンズ体を組み付ける際、或いは、組み付けた後においてレンズ保持体が回転するのを装置本体の筐体で規制することができるので、組み付ける際に専用の冶具を必要とせず、組み付けた後においてもレンズ保持体を支持するばね部材の変形を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施の形態に係るレンズ駆動装置の分解斜視図である。
【図2】上記実施の形態に係るレンズ駆動装置が有するベース部材の斜視図である。
【図3】上記実施の形態に係るレンズ駆動装置の斜視図である。
【図4】上記実施の形態に係るレンズ駆動装置の側面図である。
【図5】図3に示す状態からカバー部材を取り外したレンズ駆動装置の斜視図である。
【図6】図5に示す状態のレンズ駆動装置の上面図である。
【図7】図6に示す状態から上側板ばね及び調整板を取り外した状態のレンズ駆動装置の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の一実施の形態に係るレンズ駆動装置の分解斜視図である。図1に示すように、本実施の形態に係るレンズ駆動装置1は、装置の底面部を構成するベース部材2と、不図示のレンズ体を保持するレンズ保持体としてのレンズホルダ3と、このレンズホルダ3を光軸方向に移動させる移動機構を構成する磁石4a〜4d、コイル5及びヨーク6と、レンズホルダ3をベース部材2及びヨーク6に弾性的に固定する一対のばね部材としての板ばね(下側板ばね7、上側板ばね8)と、調整板9を挟んで上側板ばね8をヨーク6に固定するカバー部材10とを含んで構成される。
【0013】
ベース部材2は、例えば、絶縁性の樹脂材料で形成され、矩形状に設けられている。詳細について後述するように、ベース部材2には、後述する金属板材11がその一部を露出した状態でインサート成型されている。ベース部材2の中央近傍には、不図示のイメージセンサに対応する位置に円形状の開口部21が形成されている。また、ベース部材2の四隅部には、ヨーク6の内壁に嵌合する嵌合片22a〜22dが立設されている。これらの嵌合片22a〜22dの下方部分からは、後述する金属板材11の固定部111a〜111dが突出して設けられている(図1において、固定部111dは不図示)。また、これらの嵌合片22a〜22dの近傍には、ヨーク6及び下側板ばね7の位置決めを行う位置決め片23a〜23dが立設されている。なお、このベース部材2は、レンズ駆動装置1の筐体の一部を構成する。
【0014】
レンズホルダ3は、例えば、絶縁性の樹脂材料で形成され、概して円筒形状に設けられている。レンズホルダ3の内周には、ねじ溝が設けられ、不図示のレンズ体をねじ込み可能に設けられている。レンズホルダ3の外周には、コイル5の内周部に嵌合し、コイル5を保持する4つの保持片31a〜31dが設けられている(図1において、保持片31c、31dは不図示)。これらの保持片31a〜31dの上端には、コイル5の上方側への移動を規制し、その位置決めを行う位置決め片32a〜32dが設けられている。また、これらの位置決め片32a〜32dの上方には、レンズホルダ3の外周面から径方向に突出する突出片33a〜33dが設けられている。さらに、これらの突出片33a〜33dの上端には、上側板ばね8の位置決めを行う位置決め片34a〜34dが設けられている。これらの位置決め片34a〜34dは、突出片33a〜33dから上方側に向けて立設され、後述する上側板ばね8の切り欠き部82aと係合可能に構成されている。
【0015】
磁石4a〜4dは、それぞれ直交する一対の側面部41、42と、円弧形状を有する内周面部43とを有しており、ヨーク6の四隅部分に固定される。この場合、磁石4a〜4dは、側面部41、42をヨーク6の四隅の内壁面に対向させると共に、内周面部43を後述するヨーク6の垂下壁面63a〜63dの内壁面に一定距離を挟んで対向させた状態で固定される。例えば、磁石4a〜4dは、側面部41、42を接着剤等により接着することによって、ヨーク6の四隅部分に固定される。
【0016】
コイル5は、円環形状に束ねられ、上述したレンズホルダ3の保持片31a〜31dによりその内周部が保持される。保持片31a〜31dは、レンズホルダ3の外周面よりも僅かに径方向に突出形成されているため、これらの保持片31a〜31dが存在しない部分において、コイル5は、レンズホルダ3の外周面と一定距離だけ離間した状態で配置されている。このようにレンズホルダ3に保持された状態において、コイル5の外周面は、磁石4a〜4dの内周面部43に対向配置される一方、その内周面は、ヨーク6の垂下壁面63a〜63dの内壁面に対向配置されている。
【0017】
ヨーク6は、金属材料を機械加工することで形成され、図1に示す下方側に開口した箱形状を有している。また、ヨーク6は、概して矩形状に設けられ、その中央に円形状の開口部61が設けられている。ヨーク6の四隅における下端部分には、僅かに側方側に突出する固定片62a〜62dが設けられている(図1において、固定片62dは不図示)。これらの固定片62a〜62dの外形寸法は、ベース部材2の四隅部分から突出する金属板材11の固定部111a〜111dの外形寸法と一致するように設けられている。また、開口部61の周縁部におけるヨーク6の四隅部分に対応する位置には、垂下壁面63a〜63dが垂下して設けられている(図1において、垂下壁面63bは不図示)。これらの垂下壁面63a〜63dは、レンズホルダ3を収容した状態において、レンズホルダ3の外周面とコイル5の内周面との間に配置される。さらに、開口部61の周縁部における垂下壁面63a〜63dの間の位置には、レンズホルダ3の突出片33a〜33dを収容可能な凹部64a〜64dが設けられている。そして、これらの凹部64a〜64dの側方には、僅かに開口部61の内側に向けて突出する一対の当接片65a〜65dが設けられている。さらに、ヨーク6の上面における四隅部分の近傍には、後述するカバー部材10の固定ピン102が挿入される孔66a〜66dが設けられている。なお、このヨーク6は、レンズ駆動装置1の筐体の一部を構成する。
【0018】
下側板ばね7は、例えば、リン青銅等の導電性材料で構成され、ベース部材2に固定される一対の外側固定部71と、レンズホルダ3の下面に固定される一対の内側固定部72と、これらの外側固定部71と内側固定部72とを連結する4本の腕部73とを有している。外側固定部71の所定位置には複数の孔71aが設けられ、これらの孔71aにベース部材2の位置決め片23a〜23dが挿通された状態で下側板ばね7がベース部材2に固定されている。また、内側固定部72の所定位置には複数の孔72aが設けられ、これらの孔72aにレンズホルダ3の下面に設けられた固定片が挿通された状態で下側板ばね7がレンズホルダ3に固定されている。腕部73は、ベース部材2の四隅部分に対応する外側固定部71の位置から複数回折り返して内側固定部72に連結されている。
【0019】
上側板ばね8は、下側板ばね7と同様に、例えば、リン青銅等の導電性材料で構成され、ヨーク6の上面に固定される環形状を有する外側固定部81と、レンズホルダ3の上面に固定される円環形状を有する内側固定部82と、これらの外側固定部81と内側固定部82とを連結する4本の腕部83とを有している。外側固定部81の所定位置には4つの孔81aが設けられ、これらの孔81aに後述するカバー部材10の固定ピン102が挿通された状態で上側板ばね8がヨーク6に固定されている。また、内側固定部82の所定位置には4つの切り欠き部82aが設けられ、これらの切り欠き部82aにレンズホルダ3の位置決め片34a〜34dを収容した状態で上側板ばね8がレンズホルダ3に固定されている。腕部83は、ヨーク6の四隅部分に対応する外側固定部81の位置から複数回折り返して内側固定部82に連結されている。
【0020】
調整板9は、例えば、金属製の薄板材料で形成され、上側板ばね8の外側固定部81と略同一の環形状を有している。調整板9におけるヨーク6の四隅部分に対応する位置には4つの孔91が設けられ、これらの孔91に後述するカバー部材10の固定ピン102が挿通された状態で、調整板9は、上側板ばね8に重ねてヨーク6に固定される。
【0021】
カバー部材10は、金属材料を機械加工することで形成されている。カバー部材10は、概して矩形状に設けられ、その中央に円形状の開口部101が設けられている。カバー部材10は、ヨーク6の上面の外形と略同一の形状を有しており、開口部101がヨーク6の開口部61に臨むように構成されている。カバー部材10の下面であって、その四隅部分に対応する位置には、上側板ばね8及び調整板9をヨーク6の上面に固定する4本の固定ピン102が設けられている。
【0022】
ここで、本実施の形態に係るレンズ駆動装置1が有するベース部材2にインサート成型される金属板材11の構成について説明する。図2は、本実施の形態に係るレンズ駆動装置1が有するベース部材2の斜視図である。なお、図2においては、説明の便宜上、ベース部材2にインサート成型される金属板材11を抜き出して示している。
【0023】
図2に示すように、ベース部材2にインサート成型される金属板材11は、例えば、洋白、りん青銅、下地としてニッケルめっきを施した上に金めっきを施したステンレス等の半田濡れ性に優れた金属材料で構成され、上面視にて概してコ字形状を有する第1板状部材111と、この第1板状部材111の両端部の下方領域に配置される一対の第2板状部材112とから構成されている。第1板状部材111においては、ベース部材2の四隅部分に対応する位置に固定部111a〜111dが設けられている。これらの固定部111a〜111dは、ベース部材2の嵌合片22a〜22dの下方部分から側方側に突出するものとなっている。また、固定部111a、111bの近傍には、接地片111e、111fが設けられている。これらの接地片111e、111fは、ベース部材2の嵌合片22aと嵌合片22bとの間に配置される側面部から側方側に突出すると共に、下方側に折曲して延出するものとなっている。
【0024】
一対の第2板状部材112は、それぞれ下側板ばね7を介してコイル5と電気的に接続するための接続片112aと、レンズ駆動装置1が実装される基板等との外部端子として機能する接続片112bとを有している。接続片112aは、ベース部材2の嵌合片22aと嵌合片22bとの間の位置で、ベース部材2の上面から露出するものとなっている(図1参照)。接続片112は、それぞれ固定部111c、111dの下方側の位置に配置され、ベース部材2の嵌合片22cと嵌合片22dとの間に配置される側面部から側方側に突出すると共に、下方側に折曲して延出するものとなっている。
【0025】
このような構成を有するレンズ駆動装置1を組み立てる際には、コイル5を保持させた状態のレンズホルダ3を下側板ばね7を介してベース部材2に固定し、レンズホルダ3が開口部61の内側に配置されるように、四隅部分の内壁に磁石4a〜4dが固定されたヨーク6をベース部材2に固定する。そして、切り欠き部82aでレンズホルダ3の位置決め片34a〜34dを収容するようにレンズホルダ3及びヨーク6の上面に上側板ばね8を載置すると共に、この上側板ばね8に合わせて調整板9を載置する。その後、上側板ばね8、調整板9の孔81a、91を介して固定ピン102がヨーク6の孔66a〜66dに挿入されるようにカバー部材10を固定する。これにより、レンズ駆動装置1の組立作業が完了し、図3及び図4に示した状態のレンズ駆動装置1が完成する。
【0026】
ベース部材2に固定する際、ヨーク6は、その嵌合片22a〜22dがヨーク6の四隅部分の内壁にそれぞれ嵌合するように被せられる。このとき、ヨーク6の固定片62a〜62dは、図3及び図4に示すように、ベース部材2の四隅部分から突出した金属板材11の固定部111a〜111dの上に重ねられた状態とされる。そして、これらの固定片62a〜62dと、固定部111a〜111dとを溶接により接合させることでベース部材2にヨーク6が固定される。この場合において、金属板材11は、上述したように、半田濡れ性に優れた金属材料で構成されていることから、金属板材11とヨーク6との良好な接合状態を確保することができ、確実にヨーク6をベース部材2に固定することが可能となっている。
【0027】
このように本実施の形態に係るレンズ駆動装置1においては、ベース部材2にインサート成型した金属板材11の一部を露出させ、その露出した部分にヨーク6の一部を溶接接合することにより、ベース部材の樹脂部分を基準にヨークの位置決めが行われる従来のレンズ駆動装置に比べて、ヨーク6が固定される基準面の平坦度を確保することができるので、レンズホルダ3に保持されるレンズ体の位置を高精度に設定することが可能となっている。また、ヨークを固定したシールドケースをベース部材に対して接着固定する従来のレンズ駆動装置に比べて、ヨーク6の固定に要する時間を短縮でき、レンズ駆動装置1の製造に要する時間を短縮化することが可能となっている。
【0028】
また、ベース部材2の四隅部から金属板材11の固定部111a〜111dを露出させ、これらの固定部111a〜111dにヨーク6の固定片62a〜62dを固定することから、デッドスペースを利用してベース部材2にヨーク6を固定することができるので、金属板材11を用いて固定する場合においても装置本体が大型化するのを防止することが可能となっている。
【0029】
さらに、金属板材11に接地片111e、111fを設け、ベース部材2とヨーク6とを接合した後に、金属板材11を介してヨーク6を接地させていることから、ベース部材2にインサート成型した金属板材11を介してヨーク6を接地させることができるので、別途、ヨーク6を接地させるための構成を設ける必要がなく、装置本体の構成を簡素化することが可能となっている。
【0030】
そして、組み立てられた状態において、レンズ駆動装置1は、図3に示すように、カバー部材10の開口部101の内部にレンズホルダ3が配置されている。レンズホルダ3は、下側板ばね7によりベース部材5に固定される一方、上側板ばね8によりヨーク6に固定され、これらの上側板ばね8及び下側板ばね7の付勢力によって初期位置に保持された状態となっている。不図示のレンズ体は、このレンズホルダ3に図3に示す上方側からねじ込むことで組み付けられ、このレンズホルダ3と一体的に移動可能に構成される。
【0031】
レンズホルダ3の外周面に保持されたコイル5に電流を流すと、コイル5に流れる電流が磁石4a〜4dから発生する磁界と作用することにより、コイル5を図3に示す上下方向に移動させる推力が発生する。本実施の形態に係るレンズ駆動装置1においては、例えば、装置本体を搭載する携帯電話やデジタルカメラの制御部からの駆動指示に応じてコイル5に流す電流量を制御することによってこの推力を制御し、コイル5を上下移動させ、その位置決めを行う。これにより、コイル5が保持されるレンズホルダ3の位置決めを行うと共に、レンズホルダ3に組み付けられたレンズ体の位置決めを行うことが可能となっている。
【0032】
本実施の形態に係るレンズ駆動装置1において、レンズホルダ3に対するレンズ体の組み付け作業は、レンズホルダ3の外周面に設けられた複数の突出片33a〜33dを、ヨーク6の開口部61の周縁部に設けられた当接片65a〜65dと係合させ、レンズホルダ3の回転を規制した状態で行われる。このようにレンズホルダ3の突出片33a〜33dを、ヨーク6の当接片65a〜65dと係合させることにより専用の治具などを必要とせずに簡単にレンズホルダ3にレンズ体を組み付けることが可能となっている。
【0033】
ここで、レンズホルダ3の突出片33a〜33dと、ヨーク6の当接片65a〜65dとの関係について図5〜図7を参照しながら説明する。図5は、図3に示す状態からカバー部材10を取り外したレンズ駆動装置1の斜視図である。図6は、図5に示す状態のレンズ駆動装置1の上面図である。図7は、図6に示す状態から上側板ばね8及び調整板9を取り外した状態のレンズ駆動装置1の上面図である。
【0034】
図5及び図6に示すように、上側板ばね8は、レンズホルダ3の上面に設けられた位置決め片34a〜34dを切り欠き部82aで収容した状態でヨーク6の上面に保持されている。調整板9は、概して上側板ばね8の外側固定部81の上方に重ねられている。位置決め片34a〜34dの下方に配置される突出片33a〜33dは、図7に示すように、ヨーク6の開口部61の周縁部に設けられた凹部64a〜64dに収容されている。そして、これらの凹部64a〜64dの側方に形成された一対の当接片65a〜65dが、突出片33a〜33dにおける径方向に延出する側面(以下、「突出片33a〜33dの側面」という)と若干の間隙を挟んで対向して配置されている。
【0035】
レンズホルダ3に対してレンズ体を組み付ける際には、レンズ体の回転動作に応じてレンズホルダ3も一緒に回転しようとする。この場合において、レンズホルダ3の突出片33a〜33dは、凹部64a〜64dに収容されていることから、レンズホルダ3が回転すると、当接片65a〜65dが突出片33a〜33dの側面と係合(当接)し、レンズホルダ3の回転を規制する。すなわち、これらの当接片65a〜65dは、レンズホルダ3にレンズ体を組み付ける際にレンズホルダ3の回転を規制する回転規制手段として機能する。そして、このようにレンズホルダ3の回転が規制された状態において、レンズホルダ3にレンズ体が組み付けられる。これにより、専用の治具等によりレンズホルダ3の回転を規制することなく、簡単にレンズ体をレンズホルダ3に組み付けることが可能となる。
【0036】
レンズ体をレンズホルダ3に組み付けた後、これを回転させる力から解放されると、レンズホルダ3は、下側板ばね7及び上側板ばね8の付勢力により初期位置(図7に示す状態)に復帰することとなる。そして、上述したように、コイル5に対して流す電流を制御することにより、レンズホルダ3(に組み付けられたレンズ体)を光軸方向(図7に示す紙面前後方向)に移動させることが可能となる。
【0037】
このように光軸方向にレンズホルダ3を移動させる過程、或いは、移動させた後において、仮に、落下等によりレンズホルダ3に衝撃が加わった場合、ヨーク6の当接片65a〜65dは、突出片33a〜33cと当接してレンズホルダ3の回転を規制する。これにより、レンズホルダ3が制限なく回転してしまう場合と比べて、レンズホルダ3に固定された下側板ばね7、上側板ばね8に加わる負荷を軽減でき、これらが変形する事態を防止することが可能となっている。
【0038】
このように本実施の形態に係るレンズ駆動装置1においては、装置本体の筐体の一部を構成するヨーク6に回転規制手段としての凹部64a〜64dを設け、これらの凹部64a〜64dにより、レンズホルダ3の回転が規制されることから、レンズホルダ3にレンズ体を組み付ける際、或いは、組み付けた後においてレンズホルダ3が回転するのをヨーク6で規制することができるので、組み付ける際に専用の冶具を必要とせず、組み付けた後においてもレンズホルダ3を支持するばね部材(下側板ばね7、上側板ばね8)の変形を防止することが可能となる。
【0039】
特に、レンズホルダ3の回転を規制する回転規制手段を、突出片33a〜33dを収容可能な凹部64a〜64dで構成し、レンズホルダ3の回転に応じて突出片33a〜33dを凹部64a〜64dの内壁(すなわち、当接部65a〜65dの凹部64a〜64d側の内壁)に当接させてレンズホルダ3の回転を規制していることから、突出部33a〜33dを収容する凹部64a〜64dをヨーク6に設けるだけで簡単にレンズホルダ3の回転を規制することが可能となる。
【0040】
また、レンズホルダ3を光軸方向に移動させる移動機構を構成するヨーク6で筐体の一部を構成し、このヨーク6に上述した回転規制手段を設けるようしていることから、このヨーク6に複数の機能を持たせることができ、装置本体の構成を簡素化すると共に、装置本体を小型化することが可能となる。
【0041】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0042】
例えば、上記実施の形態においては、レンズ駆動装置1の筐体の一部をヨーク6で構成する場合について説明しているが、筐体の構成についてはこれに限定されるものではない。例えば、ヨーク6とは別に筐体としてのケース等を具備するようにしても良い。この場合には、ヨーク6に持たせていたレンズホルダ3の回転規制機能をそのケース等に移すことも可能である。
【符号の説明】
【0043】
1 レンズ駆動装置
2 ベース部材
21 開口部
22a〜22d 嵌合片
23a〜23d 位置決め片
3 レンズホルダ
31a〜31d 保持片
32a〜32d 位置決め片
33a〜33d 突出片
34a〜34d 位置決め片
4a〜4d 磁石
41、42 側面部
43 内周面部
5 コイル
6 ヨーク
61 開口部
62a〜62d 固定片
63a〜63d 垂下壁面
64a〜64d 凹部
65a〜65d 当接片
66a〜66d 孔
7 下側板ばね
71 外側固定部
71a 孔
72 内側固定部
72a 孔
73 腕部
8 上側板ばね
81 外側固定部
81a 孔
82 内側固定部
82a 切り欠き部
83 腕部
9 調整板
91 孔
10 カバー部材
101 開口部
102 固定ピン
11 金属板材
111 第1板状部材
111a〜111d 固定部
111e、111f 接地片
112 第2板状部材
112a、112b 接続片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズ体を保持すると共に外周面から外側に突出する突出部が設けられたレンズ保持体と、装置本体の筐体に取り付けられ、前記レンズ保持体を支持するばね部材と、前記筐体に設けられ、前記突出部と係合して前記レンズ保持体の回転を規制する回転規制手段とを具備することを特徴とするレンズ駆動装置。
【請求項2】
前記回転規制手段は、前記突出部を収容可能な凹部で構成され、前記レンズ保持体の回転に応じて前記突出部を前記凹部の内壁に当接させて当該レンズ保持体の回転を規制することを特徴とする請求項1記載のレンズ駆動装置。
【請求項3】
磁石、コイル及びヨークを有し、前記レンズ保持体を光軸方向に沿って移動させる移動機構を具備し、前記ヨークで前記筐体の一部を構成すると共に当該ヨークに前記回転規制手段を設けたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のレンズ駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−217576(P2010−217576A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−65002(P2009−65002)
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】