説明

レンチウイルスベクターの作製

本発明は、レンチウイルストランスファー構築体、gag、pol、エンベロープタンパク質およびrevの各々を、それぞれ、同じであるか、または異なるバキュロウイルス中でクローン化し、産生細胞に、バキュロウイルスまたは各バキュロウイルスを形質導入することを含む、レンチウイルスベクターの作製法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、レンチウイルスベクターの作製法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
レンチウイルス、例えば、ヒト免疫不全ウイルスIは、形質導入され、分裂および非分裂細胞の両方のゲノムに組み込まれるそれらの能力のために、遺伝子治療の有望なツールである。しかしながら、大規模な臨床使用のために、複製欠損レンチウイルスベクターの作製が必要とされている。レンチウイルスベクターは、通常、いくつかの異なるプラスミド構築体と共に、293Tヒト胚性腎細胞に共トランスフェクションすることにより作製される。最初の臨床的なレンチウイルスベクター作製は、2プラスミド系に基づいた(Lu et al., 2004)。さらに、系の安全性を改良するために、レンチウイルスゲノムを、4つのプラスミドに分離し得る。該プラスミドは、自己不活性トランスファーベクター; gag-polを含むパッケージングプラスミド; revプラスミド; および、通常、水疱性口内炎ウイルスの糖タンパク質G (VSV-G)をコードするエンベロープ糖タンパク質プラスミドである。レンチウイルス作製をさらに改良するために、接着細胞の増殖を、細胞工場に変化させている。レンチウイルスベクターはまた、無血清条件下、3-Lバイオリアクターを用いて、懸濁培養で一過的に作製されている。
【0003】
ウイルス産生のための一過的なトランスフェクション系は、問題があり、時間を消費するので、安定な大規模産生系を開発する試みが為されていた。しかしながら、レンチウイルスプロテアーゼおよび融合エンベロープタンパク質(VSV-G)の毒性が、構成的なベクター作製を妨げた。1つの作製法は、テトラサイクリンもしくはエクジソン誘導可能プロモーター系により制御された、誘導化のパッケージング細胞株を用いることである。他の作製法は、毒性のあるVSV-Gタンパク質を毒性の少ない糖タンパク質と置換することを含む。
【0004】
レンチウイルスベクターはまた、さまざまなウイルス表面タンパク質による偽型であり得る。最も一般的に使用されるのは、水疱性口内炎ウイルスのエンベロープ糖タンパク質G(VSV-G)である。さらに、さまざまな異なるエンベロープ糖タンパク質、例えば、γ-レトロウイルス(例えば、ネコ内在性レトロウイルス RD114 env、修飾テナガザル白血病ウイルス GalV、モロニーマウス白血病ウイルス MLV)、α-ウイルス、リッサウイルスもしくはバキュロウイルス由来のものが、また、偽型レンチウイルスベクターに示されている。
【0005】
偽型は、レンチウイルスの形質導入範囲を広げ、長期間のトランスジーン発現が、多くの異なる細胞および組織で得られた(Delenda, 2004)。偽型はまた、脆弱なレンチウイルスを強化し、超遠心分離法による高力価での濃縮を可能にする。
【0006】
バキュロウイルスは、遺伝子送達適用に関して、いくつかの利点を有する。それらは、巨大な挿入能力を有し(> 100 kb)、無血清条件下での大規模懸濁細胞培養においてさえ、大抵のほ乳類細胞株に形質導入することができる(Scott et al., 2007)。さらに、バキュロウイルスは、大規模かつ高力価で、容易に作製でき、それらがほ乳類細胞で複製できないため、安全性に関する問題は、ほとんど存在しない。細胞毒性は、高い感染多重度(MOI)を用いたときでさえ、滅多に検出されない。
【0007】
バキュロウイルスは、昆虫細胞での大規模タンパク質産生のために、およびウイルス様粒子(VLP)、例えば、肝炎VLPの産生のために使用されている。インタクトウイルスはまた、ハイブリッドバキュロウイルスを用いて産生される。ほ乳類細胞での組み換えインフルエンザウイルス、アデノウイルス(Cheshenko et al, 2001)およびAAV (Auang et al, 2007)のバキュロウイルス仲介産生は、また、記載されている。
【発明の概要】
【0008】
発明の要約
本発明によると、レトロウイルスベクターの作製法は、レンチウイルストランスファー構築体、gag、pol、エンベロープタンパク質およびrevの各々を、それぞれ、同じであるか、または異なるバキュロウイルス中でクローン化し、産生細胞に、バキュロウイルスまたは各バキュロウイルスを形質導入することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図面の説明
下記の図面は、本発明の態様を例示する。
【図1】図1は、概略図であり、クローン化バキュロウイルスドナープラスミドである、BAC-transfer、BAC-gag-pol、BAC-VSVgおよびBAC-revを示す。
【図2】図2は、バキュロウイルス仲介レンチウイルス産生の概略図である。
【0010】
好ましい態様の説明
本発明の方法を実施するために、バキュロウイルスは、レンチウイルストランスファー構築体、gag、pol、適当なエンベロープタンパク質およびrevを含まなければならない。
【0011】
“レンチウイルストランスファー構築体”なる用語は、当業者に既知である。レンチウイルストランスファー構築体は、レンチウイルスRNAゲノム/レンチウイルスベクターRNAおよびトランスジーンカセットに由来する。レンチウイルストランスファー構築体の1つの例は、LV1-GFPである。レンチウイルストランスファー構築体を作製する方法は、また、当業者に既知である。
【0012】
“エンベロープタンパク質”なる用語は、当業者に既知である。エンベロープタンパク質は、ウイルスの核酸を保護するタンパク質である。本発明において、使用のために適当なエンベロープタンパク質の例は、VSV-Gである。
【0013】
“産生細胞”なる用語は、当業者に既知である。本発明において、使用のために適当な産生細胞の例は、293T、HepG2、CHO、BHK、Sf9、Sf21、293、BTI-Tn 5 B 1-4、COS、NIH/3T3、Vero、NSOもしくはPerC6細胞である。産生細胞は、次いで、接着または懸濁で、培養され得る。
【0014】
好ましくは、本発明による機能的レンチウイルスの作製のために必要とされるすべての要素は、3つの異なるバキュロウイルス中で、クローン化される。より好ましくは、それらは、2つの異なるバキュロウイルス中で、クローン化され、最も好ましくは、それらは、単一のバキュロウイルス中で、クローン化される。これは、単一のバキュロウイルス中で、BAC-transfer、BAC-gag-pol、BAC-VSVgおよびBAC-revの特徴を結合させることにより、達成され得る。
【0015】
Autographa californicaマルチカプシド核多角体病ウイルス(AcMNPV)に由来する4つの組み換えバキュロウイルス、BAC-transfer、BAC-gag-pol、BAC-VSVgおよびBAC-revを構築した。それらは、ほ乳類細胞で、レンチウイルスベクター作製のために必要とされるすべての要素をコードする。これらのバキュロウイルスを293T細胞に形質導入することにより、機能的レンチウイルスを作製した。
【0016】
バキュロウイルス技術は、作製の容易さ、バキュロウイルス濃度、無血清条件下での懸濁ほ乳類細胞への効率的な形質導入および安全性のために、拡張可能なウイルス作製のための魅力的な選択肢である。レンチウイルスベクターはまた、例えば、ウイルスタンパク質をバキュロウイルスタンパク質と融合させることにより、ウイルスタンパク質rev、tat、net、vitもしくはvpuをコードするか、または示す、バキュロウイルスを用いて作製し得る。バキュロウイルスタンパク質は、主要なエンベロープタンパク質gp64またはカプシドタンパク質vp39およびp24であり得る。
【0017】
生じたレンチウイルスは、異種タンパク質または他のリガンド、例えば、VSV-g、gp64、アビジン、ストレプトアビジンまたはビオチンを用いた偽型であり得る。
【0018】
下記の実施例は、本発明を例示する。
【実施例】
【0019】
材料および方法
バキュロウイルスの作製のためのプラスミドのクローン化
ほ乳類細胞で、第3世代レンチウイルスベクターの作製のために必要なすべての要素を、バキュロウイルスドナーベクターpFastBac1にサブクローン化し、Autographa californicaマルチカプシド核多角体病ウイルス(AcMNPV)に由来する4つの組み換えバキュロウイルス、BAC-transfer、BAC-gag-pol、BAC-VSVgおよびBAC-revを構築した(図1)。最初に、多重クローニングサイト(PmlI/NheI/PstI/SalI/AflII/PacI/SpeI/MluI/PmeI/EcoRI/ApaI/SwaI/AscI)を含むポリリンカーを、pFastBac1の特有なAvrIIサイトにクローン化した。ポリリンカーの配列は、
【表1】

であった。ドナーベクターはまた、簡便なバキュロウイルス力価決定のために、ポリヘドリンプロモーターの制御下、赤色蛍光タンパク質マーカー遺伝子(DsRed)を含んでいた。
【0020】
第3世代の自己不活性化レンチウイルストランスファー構築体を作製するために、プラスミドLV-hPGK-ΔNGFP-WPRE-SIN (Makinen, 2006)由来の(LV1-GFP) ΔNGFPを、GFPで置換した。この構築体では、GFPマーカー遺伝子は、ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)プロモーターにより誘導される。pBAC-transferベクターは、2段階で、LV1-GFPからの関連する配列をpFastBac1ドナーベクターポリリンカー中にサブクローン化することにより、構築した。配列の第1部分をクローン化するために、LV1-GFPを、BsrBIおよびAscIで消化し、ドナーベクターポリリンカーのSwaI/AscIサイト中に、サブクローン化した。配列の第2部分は、LV1-GFPを、AscIおよびAvrIIで消化し、該断片を修飾pFastBac1プラスミドのAscIおよびAvrIIサイトに挿入することにより、クローン化した。
【0021】
CMVプロモーターにより誘導されるgagおよびpolを発現するパッケージング構築体(pBAC-gag-pol)を、ApaLI消化により、プラスミドpMDLg/pRRE (Follenzi and Naldini, 2002)から導き、ドナーベクターのSmiIサイト中にサブクローン化した。ライゲーション前に、ApaLI末端を、T4 DNAポリメラーゼで平滑にした(Finnzymes, Helsinki, Finland)。
【0022】
pCMV-VSVG由来のVSV-Gエンベロープ構築体は、2段階で、pFastBac1ベクターにサブクローン化した。最初に、pCMV-VSVGをNotIで消化し、EcoRIでの消化前に、T4 DNAポリメラーゼを用いて、平滑にした。この断片を、ポリリンカーのSmiI/EcoRIサイト中にサブクローン化した。配列の第2部分は、EcoRIを用いて、pCMV-VSVGから消化し、ポリリンカーEcoRIサイト中にサブクローン化した。
【0023】
Rev cDNAは、フォワードおよびリバースプライマーを用いて、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により、プラスミドpRSV-REV (Dull et al, 1998)から得た。フォワードプライマーは、
【表2】

である。rev遺伝子のヌクレオチド1-18の配列は、太字であり、Kozakコンセンサス配列は、イタリック体であり、EcoRIサイトは、下線部分である。リバースプライマーは、
【表3】

である。rev遺伝子のヌクレオチド349-325の配列は、太字であり、NheIサイトは、下線部分である。増幅したPCR産物を、EcoRIおよびNheIで消化し、Wizard Clean up kit (Promega, Madison, WI, USA)を用いて精製し、pFastBac1ポリリンカーのEcoRI/NheIサイト中にサブクローン化し、pBAC-revを形成する。Rev cDNAは、以前、pFastBac1ポリリンカーのSwaI/EcoRIサイト中に、pcDNA3ベクター(Invitrogen)由来のNruI/EcoRI断片としてサブクローン化したCMVプロモーターの制御下に存在した。
【0024】
レンチウイルスの作製
293T細胞を、形質導入の24時間前に、播種した。細胞を、10%ウシ胎仔血清(FBS)を補充したダルベッコ修飾イーグル培地(DMEM)またはRPMI 1640で培養した。形質導入は、無血清または血清補充DMEMもしくはRPMIで、細胞あたり50から1000 pfuの間のさまざまな感染の多重度(MOI)で行った。37℃で、無血清培地で4時間、または血清補充DMEMもしくはRPMIで18時間のインキュベーション後、細胞を洗浄し、培地を交換した。レンチウイルスを含む細胞上清を、形質導入の48時間後に収集し、室温で10分間、1500 rpmで遠心分離した。
【0025】
コントロールとして、3つのバキュロウイルスの各々が存在しないバッチを作製した(BAC-gag-pol、BAC-RevまたはBAC-VSVg)。レンチウイルスはまた、293T細胞で、慣用的な4プラスミド一過性トランスフェクション法(four plasmid transient transfection method)により作製した(Follenzi and Naldini, 2002)。プレートの底への細胞の接着を改良するために、プレートを、製造者の指示にしたがって、ポリ-L-リジンで覆った。
【0026】
レンチウイルスのタイタリング
レンチウイルスの形質転換ユニット(TU/ml)は、HeLa細胞への形質導入を可能にするウイルス粒子の数を解析することにより決定した。1日目に、Hela細胞を、ウェルあたり、6ウェルプレートに1 x 105細胞で、または96ウェルプレートに5 x 103細胞で播種した。レンチウイルス形質導入は、連続希釈を用いて、2日目に行った。5日目に、細胞を、蛍光顕微鏡で視覚化し、フローサイトメトリーで解析し、GFP発現レンチウイルスにより形質導入された細胞の割合を明らかにした。力価を、Follenzi and Naldini, 2002に記載されたとおり、計算した。
【0027】
トランスジーンの長期発現
HeLa細胞(5 x 103)を、96ウェルプレート上に播種し、翌日、バキュロウイルス産生レンチウイルスで形質導入し、細胞を、6週間、培養した。GFP発現を、毎週、フローサイトメトリーでモニターした。さらなるコントロールとして、Helaをまた、バキュロウイルスBAC-transfer発現GFPで形質導入し、発現を、同様の方法で、モニターした。
【0028】
p24濃度の決定
レンチウイルスカプシドタンパク質p24の量(pg/ml)を、p24 ELISAキット(NENTM Life Science Products HIV-1 p24 ELISA)により決定した。複製能を有するレンチウイルス(RCL)の試験は、細胞培養上清からのp24 ELISA決定により行った。HeLa細胞を、レンチウイルスで形質導入し、形質導入効率を、フローサイトメトリーでモニターした。細胞を4週間培養し、上清を集め、上清中のp24の濃度を、RCLのマーカーとして繰り返し測定した。これは、さらに、ナイーブHeLa細胞を集めた上清で形質導入することにより確認し、GFP発現を、蛍光顕微鏡およびフローサイトメトリーでモニターした。
【0029】
統計解析
統計解析は、GraphPadPrism 4 (GraphPad Software Inc., San Diego, CA, USA)により行った。
【0030】
結果
バキュロウイルスの構築
重要な第3世代要素を、4つのバキュロウイルス中に、クローン化した。バキュロウイルスプラスミド構築体を、制限解析により検証し、4つのバキュロウイルスを、昆虫細胞で産生した。バキュロウイルス産生の濃度をモニターするために、イムノブロット解析を、バキュロウイルスの主要なエンベロープタンパク質に対する抗gp64を用いて、各バッチで行った。濃縮したバキュロウイルスに関するエンドポイント力価決定(IU/ml)は、昆虫細胞で行った。高力価(>1010 IU/ml)は、すべての産生したウイルスに関して測定し、レンチウイルスの作製で、MOIを制御するために使用した。
【0031】
レンチウイルスの作製
レンチウイルスを、4つのバキュロウイルスを用いた293T細胞の形質導入により作製した。形質導入は、異なる培地およびインキュベーション時間を用いて行った。形質導入効率を、形質導入の20時間後、蛍光顕微鏡によりモニターした。上清を含むレンチウイルスを、形質導入の48時間後に集め、力価を、形質導入ユニット(TU/ml)として、HeLa細胞で決定した。
【0032】
各々MOI 500での4つのバキュロウイルスは、無血清条件下で4時間、形質導入を行ったとき、平均6.0 x 105 TU/mlのレンチウイルス力価を産生した。MOI 750でのバキュロウイルス濃度は、平均1.2 x 106 TU/mlのより高いレンチウイルス力価を産生した。力価の減少は、より高いバキュロウイルス濃度(各々MOI 1000での4つのバキュロウイルス)が使用されたとき、検出された。MOI 250での4つのバキュロウイルスは、バキュロウイルス形質導入が一晩行われたとき、平均2.5 x 106 TU/mlの最も高い力価を産生した。RPMI培地を形質導入で使用したとき、最も高い力価は、すでに、MOI 50で、平均5.9 x 105 TU/mlであった。力価は、慣用的な4プラスミド形質導入法(Follenzi and Naldini, 2002)で産生されたものと比較可能である。
【0033】
プラスミドの異なる割合は、プラスミド形質導入の力価に影響し得る。プラスミドと共に通常使用されるのと同じ割合のバキュロウイルスを用いるとき、レンチウイルス力価は、予期されたものよりも0.64倍低かった。より高いレンチウイルス力価を得ることが可能か否かを確かめるために、BAC-transferウイルスを、また、2倍にした。しかしながら、同様の量のバキュロウイルスを用いた産生と比較して、力価において、有意な差は見られなかった。2倍量のBAC-transferで得られた力価は、平均1.4 x 106 TU/mlであった。
【0034】
ネガティブコントロールとして、レンチウイルス産生を、同時に、バキュロウイルス(BAC-gag-pol、BAC-RevまたはBAC-VSVg)の1つを脱落させて行った。集めた培地を、HeLa細胞に形質導入するために使用し、GFPポジティブ細胞の数(%)を、形質導入の4日後、フローサイトメトリーにより解析した。GFPポジティブ細胞は、これらの実験で、決定されなかった。
【0035】
レンチウイルスの生物学的力価(TU/ml)と共に、頻繁に使用されるタイトレーション法は、ELISAにより、p24濃度(pg/ml)を測定する。培地中のp24濃度は、191 ± 105 ng/mlであり、これは、代表的なウイルス調製物の値に相当する。しかしながら、p24濃度は、生物学的に活性な粒子を分離しない。感染粒子とp24割合を比較するために、これらのパラメーターの両方を、異なる量もしくは割合のバキュロウイルスを用いて産生したいくつかの調製物から測定した。結果は、十分なTU/p24割合を示した。
【0036】
トランスジーン発現の特徴づけ
集められたレンチウイルス培地中に残ったバキュロウイルスを、エンドポイントタイタリングにより評価し、力価は、293T細胞形質導入のために使用された量の0.1-0.5%であった。トランスジーン発現が、残ったバキュロウイルスではなく、産生したレンチウイルスに由来することを確認するために、293T細胞に、BAC-transferバキュロウイルスのみを形質導入した。次いで、HeLa細胞に、レンチウイルス調製物のときと同様の方法で集めた培地を形質導入し、GFPポジティブ細胞を、形質導入の4日後、フローサイトメトリーで解析した。GFPポジティブ細胞は、検出されなかった。
【0037】
バキュロウイルスベクターは、脊椎動物細胞内で複製せず、それらは、宿主ゲノムに組み込まれない。これらのベクターからの遺伝子発現は、一過的であり、通常、2週間で失われる。しかしながら、組み込まれたレンチウイルスからのトランスジーン発現は、トランスジーン発現のサイレンシングが生じないとすると、相対的に安定である。バキュロウイルス産生レンチウイルス形質導入は、効率的なGFP発現を生じ、それは、まだ、形質導入の43日後にも観察され得る(図5A)。発現はまた、MOI 100および1000でのバキュロウイルス仲介GFP発現の3日目のHeLa細胞で、蛍光顕微鏡により検出され(3日目で、それぞれ、18.7±1.9%および11.5±0.4 %)、形質導入の17日後に失われた。
【0038】
複製能を有するレンチウイルス
複製能を有するレンチウイルス(RCL)を、p24 ELISAアッセイにより試験した。HeLa細胞に、レンチウイルス含有培地を形質導入した。形質導入効率は、フローサイトメトリーにより検証した。細胞を、4週間培養し、上清中のp24の濃度を、繰り返し測定した。p24の増加した濃度は、進行中のウイルス複製を示すが、そのような増加は、検出されなかった。2.5週間後、形質導入したHeLa細胞から集めた培地を、さらに、ナイーブHeLa細胞に形質導入するために使用したが、GFP発現は、蛍光顕微鏡でも、フローサイトメトリーでも検出されなかった。
【0039】
要約すると、ハイブリッドバキュロウイルスを用いた機能的レンチウイルスの作製の成功が証明された。バキュロウイルスにより産生されたレンチウイルス力価は、慣用的な4プラスミドトランスフェクション法を用いて産生されたものと、比較可能である。十分なレンチウイルス力価は、最適な量のバキュロウイルスおよび延長した形質導入時間を使用したとき、達成された。レンチウイルス力価および細胞死の減少は、高量のバキュロウイルスを使用したとき、観察された。これは、産生細胞に対するVSV-G毒性のためであり得る。バキュロウイルス粒子の総数を一定に保ちながら、VSV-G発現バキュロウイルスを脱落させると、問題は観察されなかった。DMEM培地をRPMI1640で置換することにより、最少のバキュロウイルス量(MOI 50)が、最大のレンチウイルス力価を生じた。これは、形質導入培地が、脊椎動物細胞で、バキュロウイルス仲介遺伝子発現に影響を与えるという事実と一致する。作製したレンチウイルスの機能性を確認するために、HeLa細胞に形質導入し、持続したGFP発現が、6週間、観察された。しかしながら、コントロールバキュロウイルスで、GFP発現は、17日で失われた。レンチウイルス作製を、BAC-gag-pol、BAC-RevまたはBAC-VSVgを脱落させて行うと、レンチウイルスは産生されなかった。
【0040】
バキュロウイルスは安全であるが、レンチウイルス調製物へのバキュロウイルスの混入は、望ましくない。レンチウイルス調製物中に残ったバキュロウイルスの量は、単純なレンチウイルス産生プロトコール(そこでは、293T細胞は、バキュロウイルス形質導入後、1回だけ洗浄された)で使用されるバキュロウイルス量のわずか0.1-0.5%であった。残ったバキュロウイルスは、さらに、単に、追加の洗浄工程を加えるか、または十分な下流の精製操作を用いることにより減少させ得る。
【0041】
レンチウイルスベクターの使用と関連する主要な関心事の1つは、病原性ヒトウイルスの産生の可能性である。これを避けるために、レンチウイルスゲノムを、組み換えによるRCL形成のリスクを最小化するために、4つの異なる産生プラスミドに分離した。RCLは、バキュロウイルス産生レンチウイルス調製物で、検出されなかった。p24レベルは、延長した培養後、増加せず、GFP発現は、形質導入の2.5週間後、検出されなかった。
【0042】
臨床研究のためのウイルス作製の拡張性は、接着細胞ではまだ困難である。したがって、レンチウイルス作製の懸濁細胞培養への適用は、有利であり得る。無血清条件下、懸濁適用HEK293細胞での予備的な結果は、非常に効率的なバキュロウイルス形質導入率(95.1% GFPポジティブ細胞)を示した。
【0043】
参照
Delenda, 2004. J. Gene Med. 6 Suppl 1: S125-S138.
Lu, et al. J. Gene Med. 6, 963-973 (2004).
Follenzi, & Naldini Methods Enzymol. 346, 454-465 (2002).
Ni, et al. J. Gene Med. 7, 818-834 (2005).
Cheshenko, et al, Gene Ther. 8, 846-854 (2001).
Makinen, et al. J. Gene Med. 8, 433-441 (2006).
Dull, et al. J. Virol. 72, 8463-8471 (1998).

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンチウイルストランスファー構築体、gag、pol、エンベロープタンパク質およびrevの各々を、それぞれ、同じであるか、または異なるバキュロウイルス中でクローン化し、産生細胞に、バキュロウイルスまたは各バキュロウイルスを形質導入することを含む、レンチウイルスベクターの作製法。
【請求項2】
該エンベロープタンパク質が、VSV-Gである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該レンチウイルストランスファー構築体、gag、pol、VSV-Gおよびrevが、それぞれ、BAC-transfer、BAC-gag-pol、BAC-VSVgおよびBAC-rev中でクローン化される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
該レンチウイルストランスファー構築体、gag、pol、エンベロープタンパク質およびrevが、それぞれ、同じバキュロウイルス中でクローン化される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
該産生細胞が、293T、HepG2、CHO、BHK、Sf9、Sf21、293、BTI-Tn 5 B 1-4、COS、NIH/3T3、Vero、NSOまたはPerC6細胞である、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
該レンチウイルストランスファー構築体が、第3世代レンチウイルストランスファー構築体である、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−517554(P2010−517554A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−548742(P2009−548742)
【出願日】平成20年2月11日(2008.2.11)
【国際出願番号】PCT/GB2008/000464
【国際公開番号】WO2008/099148
【国際公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(500175668)アーク・セラピューティックス・リミテッド (13)
【氏名又は名称原語表記】Ark Therapeutics Limited
【Fターム(参考)】