説明

レンチキュラーレンズシート及び印刷媒体

【課題】表現力のある面白い立体的な画像を簡単に生成することができるレンチキュラーレンズシート、及び表現力のある面白い立体的な画像を簡単に葉書などにして他の人に送付することができる印刷媒体を提供する。
【解決手段】視差画像を鑑賞するためのレンチキュラーレンズシートであって、前記レンチキュラーレンズシートを区分けした複数の区画であって、各区画の表面に所定のレンズ形状をした細長い単位レンズを多数並列に配置した当該複数の区画を有し、前記複数の区画のうち少なくとも2つの区画に配置された前記単位レンズの長手方向が異なっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面が所定のレンズ形状に形成されたレンチキュラーレンズシート、及びレンチキュラーレンズシートを有する印刷媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷された画像を立体的に見せたり、これに動きを与えたりする立体的な画像を印刷する技術の一つに、円筒形状の凸レンズを多数並列配置したレンチキュラーレンズを用いた方法がある。レンチキュラーレンズを用いた方法では、複数の凸レンズの各々に対応する位置に、右目用と左目用の画像つまり視差画像を配置し、配置された視差画像を観賞することで立体的な画像が得られるようになっている。近年では、このようなレンチキュラーレンズのコスト低下やプリンタの普及などにより、面白い立体的な画像を印刷して他の人に葉書として送付することが望まれてきている。
【0003】
特許文献1では、複数種類のレンチキュラーレンズと対応する視差画像を専用のオフセット印刷機を用いて印刷することにより、複数種類のレンチキュラーレンズの効果を生かした表現力のある面白い立体的な画像を印刷する技術が開示されている。
【0004】
また、レンチキュラーレンズと視差画像が印刷してある印刷媒体を貼り合わせる技術が開示されている(例えば、特許文献2)。特許文献1の技術によれば、葉書の表面に宛名を印刷し、裏面に視差画像を印刷しておき、レンチキュラーレンズが形成されたシート(以降、レンチキュラーレンズシートと呼ぶ。)とこの葉書を貼り合わせることで、立体的な画像を葉書として送付することが可能になる。
【0005】
【特許文献1】特開2006−1153号公報
【特許文献2】特開2001−42462号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術は、専用のオフセット印刷機を必要とするため、手軽に立体的な画像を印刷することが難しいという課題がある。また、特許文献2の技術では、レンチキュラーレンズシートと視差画像を印刷した用紙とを張り合わせるため、レンチキュラーレンズシートの中の各凸レンズと視差画像の位置をあわせることが難しいという課題がある。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたもので、表現力のある面白い立体的な画像を簡単に生成することができるレンチキュラーレンズシート、及び表現力のある面白い立体的な画像を簡単に葉書などにして他の人に送付することができる印刷媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るレンチキュラーレンズシートは、上記課題を解決すべく、基本的に、視差画像を鑑賞するためのレンチキュラーレンズシートであって、前記レンチキュラーレンズシートを区分けした複数の区画であって、各区画の表面に所定のレンズ形状をした細長い単位レンズを多数並列に配置した当該複数の区画を有し、前記複数の区画のうち少なくとも2つの区画に配置された前記単位レンズの長手方向が異なっていることを要旨とする。
【0009】
本発明に係るレンチキュラーレンズシートによれば、レンチキュラーレンズシートは単位レンズの長手方向の異なっている複数の区画を有することができる。そのため、本発明のレンチキュラーレンズシートを用いるだけで、単位レンズの長手方向の異なっている複数のレンチキュラーレンズによる表現力のある面白い立体的な画像を作成することができる。また、レンチキュラーレンズシートの中に複数の単位レンズの長手方向の異なっているレンチキュラーレンズが含まれるので、単位レンズの長手方向の異なっている複数枚のレンチキュラーレンズシートを用いる場合に比べて、取り扱いが簡単になる。
【0010】
また、上記した本発明に係るレンチキュラーレンズシートでは、前記レンチキュラーレンズシートは、少なくとも、前記単位レンズの長手方向が略水平方向である第1の区画と、長手方向が垂直方向又は斜め方向である第2の区画を有し、前記第1の区画の表面に配置された前記単位レンズの間隔よりも、前記第2の区画の表面に配置された前記単位レンズの間隔を短くする。
【0011】
こうすれば、前記単位レンズの長手方向が略水平方向である第1の区画を用いることによって、見る角度によって違う画像を見せることができる動きのある画像と、長手方向が垂直方向又は斜め方向である第2の区画を用いた観察者の左目と右目の視差を利用した立体的な画像とを、観察者に見せることができる立体的な画像を生成することができる。また、長手方向が略水平方向の単位レンズの間隔よりも、長手方向が垂直方向又は斜め方向の単位レンズの間隔を短くするので、画像クロストークの影響を受けにくい良質な画像を作成することができる。
【0012】
本発明に係る印刷媒体は、上記課題を解決すべく、基本的に、表面に所定のレンズ形状をした細長い複数の第1の単位レンズを並列に配置した第1のレンチキュラーレンズシートと、表面に所定のレンズ形状をした細長い複数の第2の単位レンズを前記複数の第1の単位レンズとは異なる方向で並列に配置した第2のレンチキュラーレンズシートと、前記第1のレンチキュラーレンズシートと前記第2のレンチキュラーレンズシートの裏面に固着された薄板上の基材であって、前記第1のレンチキュラーレンズシートが固着されている面を含む第1の区画、前記第2のレンチキュラーレンズシートが固着されている面を含む第2の区画、及び第3の区画の3つの区画に区分けされる前記基材と、前記第1のレンチキュラーレンズシートを透して鑑賞されるべき第1の視差画像が印刷される前記基材に形成された第1の印刷面と、前記第2のレンチキュラーレンズシートを透して鑑賞されるべき第2の視差画像が印刷される前記基材に形成された第2の印刷面と、前記第1のレンチキュラーレンズシート及び前記第2のレンチキュラーレンズシートを透さずに鑑賞されるべき画像である平面画像が印刷される前記基材に形成された第3の印刷面と、を備え、前記3つの区画を区分けしている複数の境界線のうちの一つ以上の境界線で前記基材を折り曲げることにより、前記第1のレンチキュラーレンズシートと前記第2のレンチキュラーレンズシートを前記第3の区画の上に配置されるようにすることを要旨とする。
【0013】
本発明に係る印刷媒体によれば、基材を3つの区画に区分けし、第1の区画に複数の第1の単位レンズを並列に配置した第1のレンチキュラーレンズシートを固着し、第2の区画に第1の単位レンズとは異なる方向に複数の第2の単位レンズを並列に配置した第2のレンチキュラーレンズシートを固着する。また、3つの区画への区分けは、3つの区画を区分けしている複数の境界線のうちの一つ以上の境界線で基材を折り曲げることにより、第1のレンチキュラーレンズシートと第2のレンチキュラーレンズシートを第3の区画の上に配置されるように区分けする。そして、基材には、第1のレンチキュラーレンズシートを透して鑑賞されるべき第1の視差画像が印刷される第1の印刷面と、第2のレンチキュラーレンズシートを透して鑑賞されるべき第2の視差画像が印刷される第2の印刷面と、平面画像が印刷される第3の印刷面とを形成する。
【0014】
こうすれば、第1のレンチキュラーレンズシートと第2のレンチキュラーレンズシートの異なる2つのレンチキュラーレンズシートを用いた、表現力のある面白い立体的な画像を生成することができる。
【0015】
また、第1のレンチキュラーレンズシートを透して第1の視差画像を鑑賞できるようにするためには、第1の区画の第1のレンチキュラーレンズシートが固着されていない面に第1の印刷面を形成するか、又は、基材を区画の境界で折り曲げたときに第1のレンチキュラーレンズシートと重なる第3の区画の部分に第1の印刷面を形成する必要がある。
【0016】
第1の区画の第1のレンチキュラーレンズシートが固着されていない方の面に第1の印刷面を形成すれば、レンチキュラーレンズシートと印刷媒体を貼り合わせることによる第1の単位レンズと第1の視差画像の位置のずれが発生しにくくなるので、簡単に立体的な画像を生成することができる。基材を区画の境界で折り曲げたときに第1のレンチキュラーレンズシートと重なる第3の区画の部分に第1の印刷面を形成すれば、折り曲げる箇所で第1の単位レンズと第1の視差画像の位置合わせができ、第1の単位レンズと第1の視差画像の位置のずれが発生しにくくなり、立体的な画像の生成が簡単である。また、第2のレンチキュラーレンズシートを用いた立体的な画像も同様に簡単に生成することができる。
【0017】
また、折り曲げたときに、第3の区画が第1のレンチキュラーレンズシート及び第2のレンチキュラーレンズシートに重なるので、第1のレンチキュラーレンズシート及び第2のレンチキュラーレンズシートの裏側を第3の区画で隠すことができる。そのため、印刷された第1の視差画像及び第2の視差画像が裏側から見えるようなことがない。そして、第3の印刷面に宛名などを書けば、面白い立体的な画像が印刷された印刷物を葉書などのように他人に送付することができる。
【0018】
また、上記した本発明に係る印刷媒体では、前記基材は、矩形の前記第3の区画と、矩形の領域を2つに区分けした前記第1の区画と前記第2の区画とからなる矩形形状をしている。
【0019】
こうすれば、印刷媒体は第1の区画と第2の区画を合わせた矩形形状と、第3の区画からなる矩形形状を有することになる。この結果、第1のレンチキュラーレンズシートと第2のレンチキュラーレンズシートを第3の区画の上に配置されるよう折り曲げることができる境界線は、第1の区画と第2の区画を合わせた矩形形状の領域と第3の区画との間の境界線だけになり、したがって折り曲げる回数は一回だけですむ。
【0020】
また、上記した本発明に係る印刷媒体では、前記第1の区画と前記第2の区画は接しておらず、前記基材を前記第1の区画と前記第3の区画との境界線、及び前記第2の区画と前記第3の区画との境界線で折り曲げたときに、前記第1の区画と前記第2の区画は重ならない。
【0021】
第1のレンチキュラーレンズシートと第2のレンチキュラーレンズシートが接していると、製造する際に接している部分の精度をあげることが難しくなる。しかし、上記した本発明の印刷媒体では、第1の区画と第2の区画は接しないので、第1のレンチキュラーレンズシートと第2のレンチキュラーレンズシートも接しない。そのため、製造が簡単になる。
【0022】
また、上記した本発明に係る印刷媒体では、前記基材は、前記第1の区画と前記第2の区画はお互いに接しないように区分けされ、前記第1の区画は、前記第1の区画の一部を切り離すことができる1つ以上の第1の切り取り線を有し、前記第2の区画は、前記第2の区画の一部を切り離すことができる1つ以上の第2の切り取り線を有し、前記基材を前記第1の区画と前記第3の区画との境界線、及び前記第2の区画と前記第3の区画との境界線で折り曲げたときに、前記第1の区画と前記第2の区画が重ならないように、前記1つ以上の第1の切り取り線と前記1つ以上の第2の切り取り線を用いて前記第1の区画の一部と前記第2の区画の一部を切り離すことができる位置に前記1つ以上の第1の切り取り線と前記1つ以上の第2の切り取り線が配置されている。
【0023】
こうすれば、第1の区画と第2の区画は、切り取り線で切り離してから第3の区画に折り曲げることができる。すなわち、切り離す位置によって、第1のレンチキュラーレンズシートと第2のレンチキュラーレンズシートの形状を調整することができるので、生成される立体的な画像の自由度を高めることができる。
【0024】
また、上記した本発明に係る印刷媒体では、前記第1の印刷面は、前記第1の区画のなかの、前記第1のレンチキュラーレンズシートが固着されている面の反対側の面に形成され、前記第2の印刷面は、前記基材の前記第2の区画のなかの、前記第2のレンチキュラーレンズシートが固着されている面の反対側の面に形成され、前記第3の印刷面は、前記基材を折り曲げたときに、前記第1の区画又は前記第2の区画と接しない方の第3の区画の面に形成される。
【0025】
こうすれば、第1の印刷面は第1の区画の第1のレンチキュラーレンズシートが固着されていない方の面に形成されるので、レンチキュラーレンズシートと印刷媒体を貼り合わせることによる第1の単位レンズと第1の視差画像の位置のずれが発生しにくくなる。また、第2の印刷面も同様に第2の区画の第2のレンチキュラーレンズシートが固着されていない方の面に形成されるので、第2の単位レンズと第2の視差画像の位置のずれが発生しにくくなる。また、第3の印刷面は、基材を折り曲げたときに、第1の区画又は第2の区画と接しない方の第3の区画の面に形成されるので、第3の印刷面に宛名などを書くことができる。
【0026】
また、上記した本発明に係る印刷媒体では、前記第1の印刷面及び前記第2の印刷面は、前記第3の区画のなかの、前記基材を前記第1の境界線又は前記第2の境界線により折り曲げたときに、前記第1の区画又は前記第2の区画と接する方の面に形成され、前記第3の印刷面は、前記基材を折り曲げたときに、前記第1の区画又は前記第2の区画と接しない方の第3の区画の面に形成される。
【0027】
こうすれば、基材を区画の境界で折り曲げたときに第1のレンチキュラーレンズシートと重なる第3の区画の部分に第1の印刷面が形成されるので、折り曲げる箇所で第1の単位レンズと第1の視差画像の位置合わせができ、第1の単位レンズと第1の視差画像の位置のずれが発生しにくくなる。第2に印刷面も同様に折り曲げたときに第2のレンチキュラーレンズシートと重なる第3の区画の部分に形成されるので、折り曲げる箇所で第2の単位レンズと第2の視差画像の位置合わせができ、第2の単位レンズと第2の視差画像の位置のずれが発生しにくくなる。また、第3の印刷面は、基材を折り曲げたときに、第1の区画又は第2の区画と接しない方の第3の区画の面に形成されるので、第3の印刷面に宛名などを書くことができる。
【0028】
また、上記した本発明に係る印刷媒体では、前記基材には、前記第1の印刷面と前記第2の印刷面とが形成されていない領域について、前記第1のレンチキュラーレンズシート及び前記第2のレンチキュラーレンズシートとの固着側と同じ側の面または反対側の面のうち、少なくともいずれか一つの面に、接着層が形成されている。
【0029】
こうすれば、基材を折り曲げた後で簡単に接着することができる。
【0030】
また、上記した本発明に係る印刷媒体では、前記第1の印刷面または前記第2の印刷面には、少なくとも印刷用インクを吸収するインク吸収層または所定の印刷用紙が設けられている。
【0031】
こうすれば、第1の視差画像及び第2の視差画像が所定のインクを用いて印刷された場合、インクを安定して印刷面に保持することができるので、インクによって形成された視差画像の劣化を抑制することができる。
【0032】
また、上記した本発明に係る印刷媒体では、前記基材には、当該基材を折り畳むための基準となる折り目が、前記第1の区画又は前記第2の区画と前記第3の区画との境界に設けられている。
【0033】
こうすれば、簡単に精度良く基材を折り曲げることができる。
【0034】
また、上記した本発明に係る印刷媒体では、前記第1のレンチキュラーレンズシートには、長手方向が略水平方向の前記複数の第1の単位レンズが並列に配置され、前記第2のレンチキュラーレンズシートには、長手方向が略垂直方向又は斜め方向の前記複数の第2の単位レンズが前記複数の第1の単位レンズを配置した間隔よりも狭い間隔で並列に配置される。
【0035】
こうすれば、長手方向が略水平方向の単位レンズの間隔よりも、長手方向が垂直方向又は斜め方向の単位レンズの間隔を短くするので、画像クロストークの影響を受けにくい良質な画像を作成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明を具体化した実施例について図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0037】
本発明の一実施例となる印刷媒体10について、図1を用いて説明する。図1は、印刷媒体10の構成要素を模式的に示した説明図である。印刷媒体10は、複数の円筒状の凸レンズ20a(第1の単位レンズ)が並列に配置された矩形形状を有するレンチキュラーレンズシート12a、複数の円筒状の凸レンズ20b(第2の単位レンズ)が並列に配置された矩形形状を有するレンチキュラーレンズシート12b、基材30、インク吸収層40、インク透過層50、接着層70、剥離シート80、印刷用紙60、及び折り目90から構成されている。
【0038】
また、印刷媒体10は、レンチキュラーレンズシート12aが存在する範囲を示す第1の区画11a、レンチキュラーレンズシート12bが存在する範囲を示す第2の区画11b、レンチキュラーレンズシート12a及び12bが存在しない範囲を示す第3の区画11cの3つの矩形に区分けされる。本実施例は、第1の区画11aとレンチキュラーレンズシート12a、第2の区画11bとレンチキュラーレンズシート12bがそれぞれ同じ形状をしている場合の例である。もとより、第1の区画11aの中に第1の区画11aよりも小さい面積のレンチキュラーレンズシート12aを配置しても良い。同様に第2の区画11bの中に第2の区画11bよりも小さい面積のレンチキュラーレンズシート12bを配置しても良い。レンチキュラーレンズシート12a,12bの面積が小さくなっても鑑賞できる立体的な画像の面積が小さくなるだけであり、本発明と同様の効果が得ることができる。
【0039】
なお、本実施例では、レンチキュラーレンズシート12aに配置された複数の凸レンズ20aの円筒軸方向は図1において水平方向であり、レンチキュラーレンズシート12bに配置された複数の凸レンズ20bの円筒軸方向は垂直方向であるものとする。また、説明の簡略化のためレンチキュラーレンズシート12aは8個の円筒状の凸レンズ20aから構成され、レンチキュラーレンズシート12bは12個の円筒状の凸レンズ20bから構成されているものとして以降説明する。もとより、レンチキュラーレンズシート12a,12bは、凸レンズ20a,20bのピッチが30〜180LPI(Lens Per Inch)であるものが通常多く用いられ、実際にはこれらに相当する本数の凸レンズが存在したものである。
【0040】
レンチキュラーレンズシート12a,12bは、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PETG(グリコール変性ポリエチレンテレフタレート)、APET、PP、PS、PVC、アクリル、UV、PC(ポリカーボネイト)樹脂やPMMA(メタクリル)樹脂など、レンズとして用いることができる透明な樹脂材料から形成され、その裏面部分全体が基材30と固着されている。固着方法は、基材30の材料に応じて溶着や接着など、周知の材料や方法を用いて行われるが、レンチキュラーレンズシート12a,12bと基材30が透明性を保って固着できる方法であれば何でもよい。
【0041】
なお、以下の説明では、レンチキュラーレンズシート12a.12bが固着されている方の印刷媒体10の面を表とし、レンチキュラーレンズシート12a.12bが固着されていない方の印刷媒体10の面を裏とする。
【0042】
基材30は、透明性を有する材料から形成され、例えばPETG樹脂などが用いられる。もとより、通常のPET樹脂なども用いてもよく、後述するインク吸収層40に形成される視差画像を、レンチキュラーレンズシート12a,12b側から観賞できるような透過性を有し、折り目90から折り曲げが可能な材料であれば何でも良い。
【0043】
基材30には、レンチキュラーレンズシート12a,12bとの固着側と反対側で、第1の区画11a、第2の区画11bの裏面範囲に相当する部分にインク吸収層40が構成されている。インク吸収層40は、視差画像の印刷がインクの吐出によって行われたとき、吐出されたインクを吸収し、吐出された位置にインクを固着させるための構成要素であり、例えば、PVA(ポリビニルアルコール)等の親水性ポリマー樹脂、カチオン化合物、シリカ等の微粒子などを材料として形成されている。このインク吸収層40によって、各凸レンズに対応する位置に視差画像を固着させることで、視差画像を適切に形成することができるのである。
【0044】
さらに、本実施例では、インク吸収層40の裏面にインク透過層50が構成されている。インク透過層50は、吐出されたインクが最初に付着し、その後付着したインクが透過していくように構成されている。つまり、インクを適切にインク吸収層40に移すとともに、インクを残さないようにすることで、インク透過層50が視差画像に対する下地として機能するようにしているのである。
【0045】
このインク透過層50は、例えば、酸化チタン、シリカゲル、PMMA(メタクリル樹脂)等を材料として形成され、下地として好適な白色を呈するようになっている。もとより、前述の印刷媒体60の裏面側もしくは接着層70が、視差画像に対して下地として機能できる程度に不透明(例えば白色)であれば、インク透過層が必ずしも構成される必要はない。
【0046】
図2は、印刷媒体10の裏面を説明するための説明図である。印刷媒体10の裏面には、第1の印刷面100a、第2の印刷面100bが存在する。第1の印刷面100aは、印刷媒体10の第1の区画11aの裏面に相当する部分であり、ここに、レンチキュラーレンズシート12aを透して鑑賞されるべき視差画像が印刷される。また、第2の印刷面100bは、印刷媒体10の第2の区画11bの裏面に相当する部分であり、ここに、レンチキュラーレンズシート12bを透して鑑賞されるべき視差画像が印刷される。
【0047】
一方、基材30は、図1に示したように、レンチキュラーレンズシート12a,12bとの固着部から、更に図面右側方向に第3の区画11cにまで伸びている。第3の区画11cは、レンチキュラーレンズシート12a,12bの右側長辺を基準にして折り曲げたとき、レンチキュラーレンズシート12a,12bの裏面全体と重なる形状を有している。つまり、レンチキュラーレンズシート11a、12bを合成した矩形と略一致する矩形形状を有しているのである。
【0048】
この基材30が延びて形成されている第3の区画11cの表側である第3の印刷面100cには印刷用紙60が接着などによって貼り付けられている。印刷用紙60は、その表面に、宛名などを作成者が直筆したり、プリンタなどを用いて印刷したりして書き込むためのもので、特に印刷する場合は、例えばインクジェット記録紙のような印刷に好適な用紙を用いるとよい。
【0049】
また、第3の区画11cにおける基材30の裏面には、接着層70が形成され、さらに接着層70の裏面に剥離シート80が貼り付けられている。接着層70は、第3の区画11cを第1の区画11a、第2の区画11bの裏面方向に折り曲げたとき、第3の区画11cにおける基材30を、インク透過層50の裏面に接着するためのものである。接着層70は、例えば、エポキシ系やシアノアクリレート系の接着剤などを材料として形成してもよい。もとより、インク透過層50と基材30との接着ができる材料であれば何でもよい。
【0050】
剥離シート80は、接着層70が汚れるなどによって接着性が劣化しないように保護するためのもので、第3の区画11cを折り曲げて第1の区画11a,第2の区画11bの裏面に接着する際に、接着に先んじて接着層70から剥離される。従って、接着層70から剥離できる材料であれば、樹脂材料でも紙でも何でもよい。
【0051】
第3の区画11cを折り曲げて第1の区画11a、第2の区画11bの裏側に接着する様子を、図3を用いて説明する。図3は、本実施例における印刷媒体10を厚み方向から見た模式図である。なお、基材30や前述した各層など印刷媒体10を構成する各構成要素は、厚さが数十ミクロンから数百ミクロンのシート状に形成されることから、図3では説明の簡略化のため、各構成要素を省略し、一枚のシートとして図示した。また、図3は、レンチキュラーレンズシート12bの方から見た図であるのでレンチキュラーレンズシート12aは図示していない。
【0052】
図3(a)に示したように、印刷媒体10には、第1の区画11a(図示せず)、第2の区画11bの裏側(図面下側)全体に相当する部分に視差画像が印刷され、第3の区画11cの表側(図面上側)に相当する部分に「宛名書き」が行われている。また、印刷媒体10の裏面には、第3の区画11cを第1の区画11aと第2の区画11bの方に折り曲げるための折り目90が設けられている。
【0053】
そして、図3(b)に示したように、折り目90を基準として、第3の区画11cを折り曲げ、剥離シート80を接着層70から剥離した後、図中矢印で示した方向に第3の区画11cを曲げ込むことで、接着層70の面と、インク透過層50の面とを貼り合わせる。
【0054】
そして、接着層70の面と、インク透過層50の面とが貼り合わされると、図3(c)に示したように、レンチキュラーレンズシート12a,12bの表面からはそれぞれのレンチキュラーレンズシートを透して立体的な画像を観賞することができ、第3の区画11cからは宛名が確認できる状態となる。つまり、印刷媒体10は、立体的な画像が観賞できる「葉書」となるのである。また、レンチキュラーレンズシート12a,12bが用いられるので、一つのレンチキュラーレンズシートを用いる場合に比べて、表現力のある面白い立体的な画像とすることができる。例えば、水平方向の凸レンズ20aによる角度により画像の変わる動きのある画像と、垂直方向の凸レンズ20bによる左右の視差を利用した3D画像を提供することができる。
【0055】
図3で説明したように、本実施例における印刷媒体10は、折り目90を基準にして折り曲げることによって、容易にレンチキュラーレンズシート12a,12bの部分と、第3の区画11cの部分とを貼り合わせることができる。従って、レンチキュラーレンズシートとの位置合わせを行いながら、接着剤を用いて視差画像の上から宛名書き用紙を貼り付けるというような面倒な作業を行うことなく、作成者は、容易に立体的な画像が観賞できる葉書を作成することが可能となる。
【0056】
本実施例では、まず宛名を印刷するものとし、図4にその様子を示した。図4(a)は印刷媒体10を厚み方向から見た模式図であり、図4(b)はそれを上面から見た模式図である。
【0057】
図4(a)に示したように、プリンタ(図示せず)のキャリッジ190には、反射光191aを利用してレンチキュラーレンズシート12bの各凸レンズ20bのピッチを検出するための検出装置191が備えられ、キャリッジ走査(図中矢印)に合わせて凸レンズ20bのピッチを検出する。検出範囲は、図4(b)の網掛け部分で示したように、レンチキュラーレンズシート12bが存在する範囲であり、この範囲について、図4(b)内の矢印で示したように、キャリッジ190の走査に伴ってピッチ検出走査を行う。また、図示はしていないが印刷媒体を紙送りするときに図4における水平方向の凸レンズ20aのピッチも検出する。このように、検出装置191により、凸レンズ20aと凸レンズ20bのピッチを検出する。そして、検出した結果を、所定の処理を行い、例えばプリンタに内蔵された記憶手段に記憶することで、レンチキュラーレンズシートの各凸レンズのピッチ情報を記憶することができる。
【0058】
その後、キャリッジ190が印刷用紙60の範囲に来ると、所定の位置にインク95をキャリッジ190に備えられた印刷ヘッド(図示せず)から吐出して、印刷用紙60の表面に所定の宛名を印刷するのである。
【0059】
次に、視差画像の印刷について説明する。レンチキュラーレンズシート12bにあるインク透過層50の範囲、すなわちレンチキュラーレンズシート12bを透して鑑賞するべき視差画像を印刷する第2の印刷面100b(図2)において、前述した記憶されている各凸レンズ20bのピッチ情報を読み出し、読み出したピッチ情報に基づいて、各凸レンズ20bに対応する所定の位置に、キャリッジ190に備えられた印刷ヘッド(図示せず)からインク95を吐出して、インク透過層50の表面にインクを付着させ、視差画像を印刷する。その後、図1で説明したように、付着したインクがインク吸収層40に移ることによって、レンチキュラーレンズシート12bを透して鑑賞するべき視差画像は基材30の裏面に形成されるのである。
【0060】
また、レンチキュラーレンズシート12aにあるインク透過層50の範囲、すなわちレンチキュラーレンズシート12aを透して鑑賞するべき視差画像を印刷する第1の印刷面100a(図2)においても、同様に、前述した記憶されている各凸レンズ20aのピッチ情報を読み出し、読み出したピッチ情報に基づいて、各凸レンズ20aに対応する所定の位置に、キャリッジ190に備えられた印刷ヘッド(図示せず)からインク95を吐出して、インク透過層50の表面にインクを付着させ、視差画像を印刷する。その後、図1で説明したように、付着したインクがインク吸収層40に移ることによって、レンチキュラーレンズシート12aを透して鑑賞するべき視差画像は基材30の裏面に形成されるのである。
【0061】
以上説明したように、本実施例における印刷媒体10によれば、印刷媒体10に設けられたインク透過層50にレンチキュラーレンズシート12a,12bを通して鑑賞するべき2種類の視差画像を、印刷用紙60に宛名をそれぞれ印刷することができる。そして、宛名の印刷時に凸レンズ20a,20bのピッチ情報を検出することが可能であり、検出されたピッチ情報に基づいて、レンチキュラーレンズシート12a,12bを通して鑑賞するべき2種類の視差画像を印刷することによって、各凸レンズ位置に合わせた位置に視差画像を印刷することができる。また、折り目90を基準として折り曲げることで、宛名書きされた印刷部分をレンチキュラーレンズシート12a,12bの裏面側に容易に貼り合わせることが可能となる。
【0062】
また、図1に示したように凸レンズ20aのピッチを凸レンズ20bのピッチよりも広くすることで画像クロストークの影響を少なくした良質な画像を鑑賞することができる。
【0063】
以上、本発明を具体化した実施例について説明したが、本発明はこうした実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において様々な形態で実施し得ることは勿論である。
【0064】
(変形例1)
図5は、変形例1の印刷媒体10を説明するための説明図である。図5(a)は、印刷媒体10を表側(レンチキュラーレンズシートが固着してある面)から見た図である。図5(b)は、印刷媒体10を裏側(レンチキュラーレンズシートが固着していない面)から見た図である。図5(c)は、印刷媒体10をレンチキュラーレンズシート12bのある方から見た断面図である。
【0065】
図5(a)に示したように、変形例1の印刷媒体10は、実施例1と同じように第1の区画11a、第2の区画11b、及び第3の区画11cに区分けされる。そして、第1の区画11aには水平方向の凸レンズ20aを複数並列に配置したレンチキュラーレンズシート12aが配置され、第2の区画11bには垂直方向の凸レンズ20bを複数並列に配置したレンチキュラーレンズシート12bが配置される。また、図5(b)に示したように、第3の区画11cの裏側には、第1の印刷面100aと第2の印刷面100bが形成される。
【0066】
ここで、図5(c)を用いて、変形例1の印刷媒体の構造を更に詳しく説明する。印刷媒体10の第3の区画11cには、宛名などを印刷するための第3の印刷面100cとしての印刷用紙60と、第1の印刷面100a及び第2の印刷面100bとしての印刷用紙60とが基材30に接着などで貼り付けられる。また、第1の区画11a及び第2の区画11bには、レンチキュラーレンズシート12a及び12bが基材30に固着され、基材30の裏側に接着層70と剥離シート80が備えられる。
【0067】
変形例1の印刷媒体10を用いて、立体的な画像を生成する場合は、まず、実施例1と同じように凸レンズ20a,20bのピッチを検出しつつ、第3の印刷面100cすなわち表側にある印刷用紙60に宛名を印刷する。そして、検出した凸レンズ20a,20bのピッチを参照して、レンチキュラーレンズシート12aを透して鑑賞するべき視差画像を第1の印刷面100aに、レンチキュラーレンズシート12bを透して鑑賞するべき視差画像を第2の印刷面100bに印刷する。その後、剥離シート80を除去し、図5(c)の矢印のように印刷媒体を折り曲げて印刷用紙60と接着層70を接着することで立体的な画像を持つ葉書が作成される。こうすれば、折り目90で折り曲げるだけでレンチキュラーレンズシートと視差画像の位置あわせができるので、位置のずれが発生しにくくなる。
【0068】
(変形例2)
図6は、変形例2の印刷媒体10を説明するための説明図である。図6(a)は、印刷媒体10を表側(レンチキュラーレンズシートが固着してある面)から見た図である。図6(b)は、印刷媒体10を裏側(レンチキュラーレンズシートが固着していない面)から見た図である。図6(c)は、印刷媒体10の断面図である。
【0069】
図6(a)に示したように、変形例2の印刷媒体10は、第3の区画11cと、第3の区画を半分に分割した形状の第1の区画11aと第2の区画11bに区分けされる。また、第1の区画11aと第2の区画11bは、お互いに接しないように第3の区画11cをはさんで反対側の位置になるように配置される。なお、第1の区画11aと第2の区画11bを第3の区画11cの方に折り曲げたときに、第1の区画11aと第2の区画11bは重ならないように配置される。そして、第1の区画11aには水平方向の凸レンズ20aを複数並列に配置したレンチキュラーレンズシート12aが配置され、第2の区画11bには垂直方向の凸レンズ20bを複数並列に配置したレンチキュラーレンズシート12bが配置される。また、図6(b)に示したように、第1の区画11aの裏側には第1の印刷面100aが形成され、第2の区画11bの裏側には第2の印刷面100bが形成される。
【0070】
ここで、図6(c)を用いて、変形例2の印刷媒体の構造を更に詳しく説明する。第3の区画11cには、宛名などを印刷するための第3の印刷面100cとしての印刷用紙60、基材30、接着層70、剥離シート80が備えられる。第1の区画11aには、レンチキュラーレンズシート12a、レンチキュラーレンズシート12aに固着された基材30、インク吸収層40、インク透過層50を備える。第2の区画11bには、レンチキュラーレンズシート12b、レンチキュラーレンズシート12bに固着された基材30、インク吸収層40、インク透過層50を備える。なお、インク透過層50は前述したように視差画像の下地として機能するものであることから、印刷媒体60の裏面側もしくは接着層70が、視差画像に対して下地として機能できる程度に不透明(例えば白色)であれば、インク透過層を必ずしも構成する必要はない。
【0071】
変形例2の印刷媒体10を用いて、立体的な画像を生成する場合は、まず、実施例1と同じように凸レンズ20a,20bのピッチを検出しつつ、第3の印刷面100cすなわち表側にある印刷用紙60に宛名を印刷する。そして、検出した凸レンズ20a,20bのピッチを参照して、レンチキュラーレンズシート12aを透して鑑賞するべき視差画像を第1の印刷面100aに、レンチキュラーレンズシート12bを透して鑑賞するべき視差画像を第2の印刷面100bに印刷する。その後、剥離シート80を除去し、図6(c)の矢印のように第1の区画11aと第2の区画11bを第3の区画11cの方に折り曲げて接着層70で接着することで立体的な画像を持つ葉書が作成される。こうすれば、折り目90で折り曲げるだけで葉書として用いることができ、また視差画像はレンチキュラーレンズシートの裏に直接印刷できるので、位置のずれが発生しにくくなる。
【0072】
(変形例3)
図7は、変形例3の印刷媒体10を説明するための説明図である。図7(a)は、印刷媒体10を表側(レンチキュラーレンズシートが固着してある面)から見た図である。図7(b)は、印刷媒体10を裏側(レンチキュラーレンズシートが固着していない面)から見た図である。図7(c)は、印刷媒体10の断面図である。
【0073】
図7(a)に示したように、変形例3の印刷媒体10は、第3の区画11cと、第3の区画を半分に分割した形状の第1の区画11aと第2の区画11bに区分けされる。また、第1の区画11aと第2の区画11bは、お互いに接しないように第3の区画11cをはさんで反対側の位置になるように配置される。なお、第1の区画11aと第2の区画11bを第3の区画11cの方に折り曲げたときに、第1の区画11aと第2の区画11bは重ならないように配置される。そして、第1の区画11aには水平方向の凸レンズ20aを複数並列に配置したレンチキュラーレンズシート12aが配置され、第2の区画11bには垂直方向の凸レンズ20bを複数並列に配置したレンチキュラーレンズシート12bが配置される。また、図7(b)に示したように、第3の区画11cの裏側には、第1の印刷面100aと第2の印刷面100bが形成される。
【0074】
ここで、図7(c)を用いて、変形例3の印刷媒体10の構造を更に詳しく説明する。印刷媒体10の第3の区画11cには、宛名などを印刷するための第3の印刷面100cとしての印刷用紙60と、第1の印刷面100a及び第2の印刷面100bとしての印刷用紙60とが基材30に接着などで貼り付けられる。また、第1の区画11aには、レンチキュラーレンズシート12aが基材30に固着され、基材30の裏側に接着層70と剥離シート80が備えられる。同様に、第2の区画11bには、レンチキュラーレンズシート12bが基材30に固着され、基材30の裏側に接着層70と剥離シート80が備えられる。
【0075】
変形例3の印刷媒体10を用いて、立体的な画像を生成する場合は、まず、実施例1と同じように凸レンズ20a,20bのピッチを検出しつつ、第3の印刷面100cすなわち表側にある印刷用紙60に宛名を印刷する。そして、検出した凸レンズ20a,20bのピッチを参照して、レンチキュラーレンズシート12aを透して鑑賞するべき視差画像を第1の印刷面100aに、レンチキュラーレンズシート12bを透して鑑賞するべき視差画像を第2の印刷面100bに印刷する。その後、剥離シート80を除去し、図7(c)の矢印のように印刷媒体を折り曲げて印刷用紙60と接着層70を接着することで立体的な画像を持つ葉書が作成される。こうすれば、折り目90で折り曲げるだけでレンチキュラーレンズシートと視差画像の位置あわせができるので、位置のずれが発生しにくくなる。
【0076】
(変形例4)
図8は、変形例4の印刷媒体10を説明するための説明図である。図8(a)は、印刷媒体10を表側(レンチキュラーレンズシートが固着してある面)から見た図である。図8(b)は、印刷媒体10を裏側(レンチキュラーレンズシートが固着していない面)から見た図である。図8(c)は、印刷媒体10の断面図である。
【0077】
図8(a)に示したように、変形例4の印刷媒体10は、第3の区画11cと、第3の区画11cと同じ形状の第1の区画11aおよび第2の区画11bとに区分けされる。また、第1の区画11aと第2の区画11bは互いに接しないように第3の区画11cをはさんで反対側の位置になるように配置される。また、第1の区画11aと第2の区画11bには、印刷媒体10の一部を切り離すことができる切り取り線110が、備えられる。また、この切り取り線110の位置は、第1の区画11aと第2の区画11bで同じ位置になるように配置される。また、図8(b)に示したように、第1の区画11aの裏側には第1の印刷面100aが形成され、第2の区画11bの裏側には第2の印刷面100bが形成される。
【0078】
ここで、図8(c)を用いて、変形例4の印刷媒体の構造を更に詳しく説明する。印刷媒体10の第3の区画11cには、宛名などを印刷するための第3の印刷面100cとしての印刷用紙60、基材30、接着層70、剥離シート80が備えられる。第1の区画11aには、レンチキュラーレンズシート12a、レンチキュラーレンズシート12aに固着された基材30、インク吸収層40、インク透過層50を備える。第2の区画11bには、レンチキュラーレンズシート12b、レンチキュラーレンズシート12bに固着された基材30、インク吸収層40、インク透過層50を備える。なお、インク透過層50は前述したように視差画像の下地として機能するものであることから、変形例2と同様、印刷媒体60の裏面側もしくは接着層70が、視差画像に対して下地として機能できる程度に不透明(例えば白色)であれば、インク透過層を必ずしも構成する必要はない。
【0079】
変形例4の印刷媒体10を用いて、立体的な画像を生成する場合は、まず、実施例1と同じように凸レンズ20a,20bのピッチを検出しつつ、第3の印刷面100cすなわち表側にある印刷用紙60に宛名を印刷する。そして、検出した凸レンズ20a,20bのピッチを参照して、レンチキュラーレンズシート12aを透して鑑賞するべき視差画像を第1の印刷面100aに、レンチキュラーレンズシート12bを透して鑑賞するべき視差画像を第2の印刷面100bに印刷する。そして、切り取り線110により、第1の区画11aと第2の区画11bの一部を、印刷媒体10を図8(c)の矢印のように折り曲げたときに重ならないように切り離す。例えば、図8(a)において、第1の区画11aを水平方向の切り取り線110で図の上側半分を切り離した場合は、第2の区画11bを水平方向の切り取り線110で図の下側半分を切り離す。
【0080】
その後、剥離シート80を除去し、第1の区画11aと第2の区画11bを第3の区画11cの方に折り曲げて接着層70で接着することで立体的な画像を持つ葉書が作成される。こうすれば、切り離す位置によって、レンチキュラーレンズシート11aとレンチキュラーレンズシート11bの形状を調整することができるので、生成される立体的な画像の自由度を高めることができる
【0081】
(変形例5)
図9は、変形例5の印刷媒体10を説明するための説明図である。図9(a)は、印刷媒体10を表側(レンチキュラーレンズシートが固着してある面)から見た図である。図9(b)は、印刷媒体10を裏側(レンチキュラーレンズシートが固着していない面)から見た図である。図9(c)は、印刷媒体10の断面図である。
【0082】
図9(a)に示したように、変形例5の印刷媒体10は、第3の区画11cと、第3の区画を同じ形状の第1の区画11aと第2の区画11bに区分けされる。また、第1の区画11aと第2の区画11bは接しないように第3の区画11cをはさんで反対側の位置になるように配置される。また、第1の区画11aと第2の区画11bには、印刷媒体10の一部を切り離すことができる切り取り線110が、備えられる。また、この切り取り線110の位置は、第1の区画11aと第2の区画11bで同じ位置になるように配置される。また、図9(b)に示したように、第1の区画11aの裏側には第1の印刷面100aが形成され、第2の区画11bの裏側には第2の印刷面100bが形成される。
【0083】
ここで、図9(c)を用いて、変形例5の印刷媒体の構造を更に詳しく説明する。印刷媒体10の第3の区画11cには、宛名などを印刷するための第3の印刷面100cとしての印刷用紙60と、第1の印刷面100a及び第2の印刷面100bとしての印刷用紙60とが基材30に接着などで貼り付けられる。また、第1の区画11aには、レンチキュラーレンズシート12aが基材30に固着され、基材30の裏側に接着層70と剥離シート80が備えられる。同様に、第2の区画11bには、レンチキュラーレンズシート12bが基材30に固着され、基材30の裏側に接着層70と剥離シート80が備えられる。
【0084】
変形例5の印刷媒体10を用いて、立体的な画像を生成する場合は、まず、実施例1と同じように凸レンズ20a,20bのピッチを検出しつつ、第3の印刷面100cすなわち表側にある印刷用紙60に宛名を印刷する。そして、検出した凸レンズ20a,20bのピッチを参照して、レンチキュラーレンズシート12aを透して鑑賞するべき視差画像を第1の印刷面100aに、レンチキュラーレンズシート12bを透して鑑賞するべき視差画像を第2の印刷面100bに印刷する。そして、切り取り線110により、第1の区画11aと第2の区画11bの一部を、印刷媒体10を図9(c)の矢印のように折り曲げたときに重ならないように切り離す。例えば、図9(a)において、第1の区画11aを水平方向の切り取り線110で図の上側半分を切り離した場合は、第2の区画11bを水平方向の切り取り線110で図の下側半分を切り離す。
【0085】
その後、剥離シート80を除去し、第1の区画11aと第2の区画11bを第3の区画11cの方に折り曲げて接着層70で接着することで立体的な画像を持つ葉書が作成される。こうすれば、切り離す位置によって、レンチキュラーレンズシート11aとレンチキュラーレンズシート11bの形状を調整することができるので、生成される立体的な画像の自由度を高めることができる
【0086】
(変形例6)
また、実施例1の印刷媒体10のレンチキュラーレンズシート12a,12bは、単体のレンチキュラーレンズシートとして用いても良い。すなわち、一枚の矩形のシートの上に凸レンズの方向の異なる2枚のレンチキュラーレンズが配置されたレンチキュラーレンズシートとして用いる事ができる。こうすれば、複数のレンチキュラーレンズを用いた、表現力のある面白い立体的な画像を生成することができる。
【0087】
(変形例7)
実施例1及び変形例1〜6において、2つの異なる方向のレンチキュラーレンズを用いる方法を説明したが、第1の区画11a又は第2の区画11bを更に区分けして、新しい区画を作成し、この新しい区画にレンチキュラーレンズシート12a、12bと異なる方向のレンチキュラーレンズを配置して、3つ以上異なる方向のレンチキュラーレンズを用いても良い。こうすれば、更に表現力のある面白い立体的な画像を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】印刷媒体10の構成要素を模式的に示した説明図。
【図2】印刷媒体10の裏面を説明するための説明図。
【図3】印刷媒体10を厚み方向から見た模式図。
【図4】凸レンズのピッチの検出方法を説明するための説明図。
【図5】変形例1の印刷媒体を説明するための説明図。
【図6】変形例2の印刷媒体を説明するための説明図。
【図7】変形例3の印刷媒体を説明するための説明図。
【図8】変形例4の印刷媒体を説明するための説明図。
【図9】変形例5の印刷媒体を説明するための説明図。
【符号の説明】
【0089】
10…印刷媒体、11a…第1の区画、11b…第2の区画、11c…第3の区画、12a…レンチキュラーシート、12b…レンチキュラーシート、20a…凸レンズ、20b…凸レンズ、30…基材、40…インク吸収層、50…インク透過層、60…印刷用紙、70…接着層、80…剥離シート、90…折り目、100a…第1の印刷面、100b…第2の印刷面、100c…第3の印刷面、110…切り取り線、190…キャリッジ、191…検出装置、191a…反射光、95…インク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
視差画像を鑑賞するためのレンチキュラーレンズシートであって、
前記レンチキュラーレンズシートを区分けした複数の区画であって、各区画の表面に所定のレンズ形状をした細長い単位レンズを多数並列に配置した当該複数の区画を有し、
前記複数の区画のうち少なくとも2つの区画に配置された前記単位レンズの長手方向が異なっていることを特徴とするレンチキュラーレンズシート。
【請求項2】
請求項1に記載のレンチキュラーレンズシートであって、
前記レンチキュラーレンズシートは、少なくとも、前記単位レンズの長手方向が略水平方向である第1の区画と、長手方向が垂直方向又は斜め方向である第2の区画を有し、
前記第1の区画の表面に配置された前記単位レンズの間隔よりも、前記第2の区画の表面に配置された前記単位レンズの間隔を短くすることを特徴とするレンチキュラーレンズシート。
【請求項3】
表面に所定のレンズ形状をした細長い複数の第1の単位レンズを並列に配置した第1のレンチキュラーレンズシートと、
表面に所定のレンズ形状をした細長い複数の第2の単位レンズを前記複数の第1の単位レンズとは異なる方向で並列に配置した第2のレンチキュラーレンズシートと、
前記第1のレンチキュラーレンズシートと前記第2のレンチキュラーレンズシートの裏面に固着された薄板上の基材であって、前記第1のレンチキュラーレンズシートが固着されている面を含む第1の区画、前記第2のレンチキュラーレンズシートが固着されている面を含む第2の区画、及び第3の区画の3つの区画に区分けされる前記基材と、
前記第1のレンチキュラーレンズシートを透して鑑賞されるべき第1の視差画像が印刷される前記基材に形成された第1の印刷面と、
前記第2のレンチキュラーレンズシートを透して鑑賞されるべき第2の視差画像が印刷される前記基材に形成された第2の印刷面と、
前記第1のレンチキュラーレンズシート及び前記第2のレンチキュラーレンズシートを透さずに鑑賞されるべき画像である平面画像が印刷される前記基材に形成された第3の印刷面と、を備え、
前記3つの区画を区分けしている複数の境界線のうちの一つ以上の境界線で前記基材を折り曲げることにより、前記第1のレンチキュラーレンズシートと前記第2のレンチキュラーレンズシートを前記第3の区画の上に配置されるようにすることができることを特徴とする印刷媒体。
【請求項4】
請求項3に記載の印刷媒体であって、
前記基材は、矩形の前記第3の区画と、矩形の領域を2つに区分けした前記第1の区画と前記第2の区画とからなる矩形形状をしていることを特徴とする印刷媒体。
【請求項5】
請求項3に記載の印刷媒体であって、
前記第1の区画と前記第2の区画は接しておらず、
前記基材を前記第1の区画と前記第3の区画との境界線、及び前記第2の区画と前記第3の区画との境界線で折り曲げたときに、前記第1の区画と前記第2の区画は重ならないことを特徴とする印刷媒体。
【請求項6】
請求項3に記載の印刷媒体であって、
前記基材は、前記第1の区画と前記第2の区画はお互いに接しないように区分けされ、
前記第1の区画は、前記第1の区画の一部を切り離すことができる1つ以上の第1の切り取り線を有し、
前記第2の区画は、前記第2の区画の一部を切り離すことができる1つ以上の第2の切り取り線を有し、
前記基材を前記第1の区画と前記第3の区画との境界線、及び前記第2の区画と前記第3の区画との境界線で折り曲げたときに、前記第1の区画と前記第2の区画が重ならないように、前記1つ以上の第1の切り取り線と前記1つ以上の第2の切り取り線を用いて前記第1の区画の一部と前記第2の区画の一部を切り離すことができる位置に前記1つ以上の第1の切り取り線と前記1つ以上の第2の切り取り線が配置されていることを特徴とする印刷媒体。
【請求項7】
請求項3に記載の印刷媒体であって、
前記第1の印刷面は、前記第1の区画のなかの、前記第1のレンチキュラーレンズシートが固着されている面の反対側の面に形成され、
前記第2の印刷面は、前記基材の前記第2の区画のなかの、前記第2のレンチキュラーレンズシートが固着されている面の反対側の面に形成され、
前記第3の印刷面は、前記基材を折り曲げたときに、前記第1の区画又は前記第2の区画と接しない方の第3の区画の面に形成されることを特徴とする印刷媒体。
【請求項8】
請求項3に記載の印刷媒体であって、
前記第1の印刷面及び前記第2の印刷面は、前記第3の区画のなかの、前記基材を前記第1の境界線又は前記第2の境界線により折り曲げたときに、前記第1の区画又は前記第2の区画と接する方の面に形成され、
前記第3の印刷面は、前記基材を折り曲げたときに、前記第1の区画又は前記第2の区画と接しない方の第3の区画の面に形成されることを特徴とする印刷媒体。
【請求項9】
請求項3に記載の印刷媒体であって、
前記基材には、前記第1の印刷面と前記第2の印刷面とが形成されていない領域について、前記第1のレンチキュラーレンズシート及び前記第2のレンチキュラーレンズシートレンズシートとの固着側と同じ側の面または反対側の面のうち、少なくともいずれか一つの面に、接着層が形成されていることを特徴とする印刷媒体。
【請求項10】
請求項3に記載の印刷媒体であって、
前記第1の印刷面または前記第2の印刷面には、少なくとも印刷用インクを吸収するインク吸収層または所定の印刷用紙が設けられていることを特徴とする印刷媒体。
【請求項11】
請求項3に記載の印刷媒体であって、
前記基材には、当該基材を折り畳むための基準となる折り目が、前記第1の区画又は前記第2の区画と前記第3の区画との境界に設けられていることを特徴とする印刷媒体。
【請求項12】
請求項3に記載の印刷媒体であって、
前記第1のレンチキュラーレンズシートには、長手方向が略水平方向の前記複数の第1の単位レンズが並列に配置され、
前記第2のレンチキュラーレンズシートには、長手方向が略垂直方向又は斜め方向の前記複数の第2の単位レンズが前記複数の第1の単位レンズを配置した間隔よりも狭い間隔で並列に配置されることを特徴とする印刷媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−40126(P2008−40126A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−214187(P2006−214187)
【出願日】平成18年8月7日(2006.8.7)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】