説明

レーザーマーキング用樹脂組成物、成形体及びレーザーマーキング方法

【課題】地色が黒色のときに白文字、白色記号、白色図柄等がコントラスト良好にマーキングされ、特にQRコード等を解像度よくマーキングするのに適し、しかも柔軟性に富んだレーザーマーキング用樹脂組成物と成形体及びそれに対するレーザーマーキング方法を提供する。
【解決手段】(A)デュロDが60以下の柔軟性を有する熱可塑性樹脂100質量部に対して、(B)カーボンブラック及び低次酸化チタン、(C)珪素含有化合物を合計で0.01〜10質量部含有してなる、レーザーマーキング用樹脂組成物と、その樹脂組成物を成形した成形体である。上記成形体又は二色成形体に、ビーム径が20〜40μm、レーザー媒質がイットリウム−四酸化バナジウムであるレーザー光線を照射して印字するレーザーマーキング方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー光線照射により成形体表面や、二色成形体の界面部にマーキングされ、黒色の生地色とマーキング部のコントラストが高く、鮮明な文字、記号、図柄等が得られ、特にQRコード等を解像度よくマーキングするのに適し、しかも柔軟性に富み、医療用として好ましく利用できるレーザーマーキング用樹脂組成物と成形体及び成形体に対するレーザーマーキング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野においては、消化管等の検査や診断に内視鏡が使用されており、このような内視鏡は、体腔内に挿入される挿入部と、その挿入部の操作を行う操作部を有し、また操作部には、挿入部の先端部の湾曲操作を行う操作ノブが設けられている。
【0003】
内視鏡には、術者が挿入部を体腔内に挿入したり、操作部での操作等を行う場合のマーカーとして、例えば、挿入部の外表面には、挿入部の挿入深さを示す目盛りが付されており、また、操作ノブには、操作した際の挿入部の先端部が湾曲する方向を示す記号や文字等が付されている。
【0004】
従来、このようなマーカーは、インクを用いた印刷やレーザーマーキング法により形成されているが、インクを用いるマーキング方法では、曲面へのマーカーの形成が困難であること、インクの乾燥に時間を要することという問題のほか、使用中にインク層が剥離して体腔内に流入してしまうおそれがあるといった欠点があった。一方、レーザーマーキング法(例えば、特許文献1、特許文献2及び特許文献3を参照)は、例えば、熱可塑性樹脂にカーボンブラックや低次酸化チタンなどの添加剤を混練りして成形したプラスチック成形品にレーザー光線を照射し、地色が黒色のプラスチック成形品表面に白文字、白色記号及び白色図柄等を発現するものであるが、このような従来のレーザーマーキング法は、いまだ視認性が高く、鮮明でコントラストが十分なものが得られていない。
【特許文献1】特開平8−120133号公報
【特許文献2】特開平8−127175号公報
【特許文献3】特開2004−195030号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明は、上記した従来の医療分野のレーザーマーキング法における問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、地色が黒色のときに白文字、白色記号、白色図柄等がコントラスト良好にマーキングされ、特にQRコード等を解像度よくマーキングするのに適し、しかも柔軟性に富んだ医療用のレーザーマーキング用樹脂組成物と成形体及びそれに対するレーザーマーキング方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、(A)デュロDが60以下の柔軟性を有する熱可塑性樹脂100質量部に対して、(B)カーボンブラック及び低次酸化チタン、(C)珪素含有化合物を合計で0.01〜10質量部含有してなる、レーザーマーキング用樹脂組成物が提供される。
【0007】
本発明の樹脂組成物においては、上記(B)成分以外の着色剤0.001〜15質量部を含有してもよい。
【0008】
また、本発明の樹脂組成物において用いる(A)柔軟性を有する熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリエーテルウレタン系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、及びポリニトリル系エラストマーからなる群より選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。
【0009】
さらに、本発明によれば、上記樹脂組成物を成形してなる成形体が提供される。
【0010】
また、本発明によれば、少なくとも支持体と、該支持体を被覆する被覆体とからなる二色成形体であって、前記支持体は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂組成物から構成され、前記被覆体は、(D)デュロDが60以下の柔軟性を有する透明な熱可塑性樹脂から構成されている、レーザーマーキング用二色成形体が提供される。
上記の成形体及び二色成形体は、医療用として好ましく利用することができる。
【0011】
さらにまた、本発明によれば、上記成形体又は二色成形体に、ビーム径が20〜40μm、レーザー媒質がイットリウム−四酸化バナジウムであるレーザー光線を照射して印字するレーザーマーキング方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明のレーザーマーキング用樹脂組成物とその成形体(及び二色成形体)とレーザーマーキング方法によれば、地色が黒色の成形体表面又は二色成形体の界面部に、白文字、白色記号、白色図柄等がコントラスト良好に鮮明にマーキングされ、特にQRコード等の情報コードを解像度よくマーキングすることが可能であり、しかもその成形体及び二色成形体は柔軟性に富むため、内視鏡やその関連部材などの医療用途として極めて好適であるという優れた効果を奏する。
また、本発明の二色成形体によれば、半永久的な耐摩耗性を有し、例えば、内視鏡の消毒、滅菌処理に際しても、マーカーの劣化が発生しないという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
本発明の樹脂組成物は、(A)デュロDが60以下の柔軟性を有する熱可塑性樹脂に対して、(B)カーボンブラック及び低次酸化チタン、(C)珪素含有化合物を含有してなるものである。
以下、各成分について説明する。
【0014】
(A)デュロDが60以下の柔軟性を有する熱可塑性樹脂:
本発明において用いる熱可塑性樹脂は、樹脂単体であっても、樹脂に適当な他成分を含む樹脂組成物であってもよい。ここで、「柔軟性を有する」とは、表面硬度を示すデュロDが60以下のものを意味するものであり、デュロDはJIS K 6253のD型により測定されるものである。
上記(A)柔軟性を有する熱可塑性樹脂としては、デュロDが60以下の柔軟性を有するものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、ポリオレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリエーテルウレタン系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、及びポリニトリル系エラストマーからなる群より選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。これらの中で、特に好ましくは、ポリオレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリエーテルウレタン系エラストマーである。具体的には、ポリオレフィン系エラストマーとしては、エーイーエス・ジャパン社製の商品名:サントプレーン201−55、住友化学工業社製の商品名:住友TPE3885、三菱化学社製の商品名:サーモランTT744Nが挙げられ、ポリエステル系エラストマーとしては、東洋紡社製の商品名:ペルプレンP−280B、東レ・デュポン社製、商品名:ハイトレル3046が挙げられ、ポリエーテルウレタン系エラストマーとしては、大日精化工業社製、商品名:レザミンP P−2288、日本ミラクトラン社製、商品名:ミラクトラン E180が挙げられる。
【0015】
(B)成分:
次に、本発明の樹脂組成物に用いられる(B)成分は、カーボンブラック及び低次酸化チタンの2成分を含むものである。
上記した(A)熱可塑性樹脂に対して、黒色を下地色として白文字、白色記号、白色図柄等をレーザーマーキングにて鮮明に発色させることは、これらの熱可塑性樹脂では分子側鎖の乖離、発泡が生じないため、困難である。
【0016】
そこで、本発明者がいろいろな角度から検討した結果、上記のごとき熱可塑性樹脂に、カーボンブラック及び低次酸化チタンを含む特定の添加剤を含有させた樹脂組成物を構成し、この樹脂組成物を成形した成形体にレーザー光線を照射すると、黒下地に白文字、白色記号、白色図柄等が鮮明に発色することを見出し、本発明に至ったものである。
【0017】
すなわち、本発明において、カーボンブラック及び低次酸化チタンを含む特定の添加剤の作用機構を推測するに、カーボンブラックにより成形体の地色を黒色に着色する作用を奏するとともに、レーザー光線を照射した際には、カーボンブラックの脱色と低次酸化チタンの酸化反応により、白の色材であるTiO2の形成が起こり、より白く発色するものであると考えられる。そして、本発明では、後述するように、(C)成分としてさらに珪素含有化合物を含有することにより、上記白発色をより促進させる作用を有するものである。なお、珪素含有化合物は摺動性の向上にも有効である。
【0018】
カーボンブラックとしては、その製法によりファーネスブラック、チャネルブラック、サーマルブラック等に、また原料の違いによりアセチレンブラック、ケッチェンブラック、オイルブラック、」ガスブラック等に分類されるが、本発明では、これらのいずれも使用することができる。
【0019】
低次酸化チタンとしては、一酸化チタン、二・三酸化チタン、三・五酸化チタンなどの、一般にTinO2n-1(n=1,2,3)で表されるものや、一般にTiOm(m=1〜1.99)で表されるものが挙げられる。なお、チタンブラックと称されるものは、TiOn(n=0.1〜1.9)である。
【0020】
(C)成分:
また、(C)成分の珪素含有化合物としては、ジメチルポリシロキサン、テトラメトキシシラン、珪素エーテル、珪素エステルなどの有機系の珪素含有化合物や、二酸化珪素、群青、炭化珪素、窒化珪素などの無機系の珪素含有化合物を用いることができ、また、ジメチルポリシロキサンと二酸化珪素の混合物など、2種以上の珪素含有化合物を混合した混合物を用いることもできる。
【0021】
本発明に用いられる(B)成分及び(C)成分の全添加量は、上記(A)熱可塑性樹脂100質量部に対し、0.01〜10質量部、好ましくは0.03〜7質量部、さらに好ましくは0.05〜5質量部である。0.01質量部未満では充分なコントラストが得られず、一方、10質量部を超えるとエネルギー吸収機能が過剰となり同様にコントラストが低下する。
また、上記(B)成分及び(C)成分の全添加量のうち、カーボンブラックの添加量は、(A)熱可塑性樹脂100質量部に対し、0.01〜0.5質量部、好ましくは0.02〜0.2質量部、さらに好ましくは0.03〜0.1質量部である。またカーボンブラック[CB]に対する低次酸化チタン[TB]の配合比率は、CB:TBが1:5〜20:1、好ましくは1:2〜10:1、さらに好ましくは1:1〜5:1である。
さらに、(C)成分の珪素含有化合物の添加量は、(A)熱可塑性樹脂100質量部に対し、0.001〜6質量部、好ましくは0.005〜5質量部、さらに好ましくは0.04〜4質量部である。
【0022】
本発明の樹脂組成物には、上記の(A)成分、(B)成分及び(C)成分のほかに、着色剤を添加することもできる。着色剤の添加により、白色に対して所望の色合を出すことができる。なお、この着色剤は、上記した(B)成分以外のものである。
着色剤としては、無機顔料、有機顔料、染料などが挙げられる。このうち、無機顔料としては、白色顔料として酸化チタン、硫酸バリウム、硫化亜鉛、酸化亜鉛、黄色顔料として酸化鉄、チタンイエロー、赤色顔料として酸化鉄、青色顔料としてコバルトブルー、群青などが挙げられる。また、有機顔料としては、黄色はモノアゾ、縮合アゾ、アンスラキノン、ジスアゾ、複素環、赤色はキナクリドン、アンスラキノン、ペリレン、モノアゾ、青色はフタロシアニン、緑色はフタロシアニンなどが挙げられる。さらに、染料としては、黄色はモノアゾ、アンスラキノン、ジスアゾ、複素環、赤色はアンスラキノン、ペリノン、チオインヂゴ、ジスアゾ、青色はアンスラキノンなどが挙げられる。
【0023】
上記着色剤の使用量は、好ましくは(A)熱可塑性樹脂100質量部に対し、0.001〜15質量部、より好ましくは0.01〜10質量部、特に好ましくは0.05〜8質量部である。着色剤が15質量部を超えると、成形体としての物性低下が起こる可能性があり、好ましくない。
【0024】
次に、本発明の別の実施形態として、支持体と、該支持体を被覆する被覆体とからなる二色成形体が挙げられる。この二色成形体によれば、前記支持体は、上記した(A)成分の熱可塑性樹脂と(B)成分のカーボンブラック及び低次酸化チタン、並びに(C)成分の珪素含有化合物を含有してなる樹脂組成物から構成され、前記被覆体は、(D)柔軟性を有する透明な熱可塑性樹脂から構成されているものである。
【0025】
上記二色成形体において、被覆体を形成する(D)デュロDが60以下の柔軟性を有する透明な熱可塑性樹脂としては、例えば、メタクリルスチレン樹脂(MS樹脂)、AS樹脂、メチルメタアクリレート樹脂(PMMA樹脂)、軟質メチルメタアクリレート樹脂(軟質PMMA樹脂)、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリシクロヘキサン1,4−ジメチルフタレート樹脂、ポリスチレン樹脂、透明ABS樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂などが挙げられる。これらの透明熱可塑性樹脂の中で、特に表面硬度特性から、メチルメタアクリレート樹脂、軟質メチルメタアクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂が好ましい。さらに好ましくは、メチルメタアクリレート樹脂、軟質メチルメタアクリレート樹脂である。なお、被覆体の厚さは0.1〜5mmが好ましく、0.3〜4mmがさらに好ましい。
【0026】
本発明において、(A)、(B)及び(C)の3成分又は着色剤を加えた4成分からなる樹脂組成物を調製するには、例えば、これらの各成分を、ヘンシェルミキサーなどで混合し、一般の押出機などで溶融混合してペレット化するなどの手段により得られるが、これに限定されるものではない。
【0027】
なお、上記樹脂組成物には、必要に応じて、その特性を損なわない範囲で、他の添加剤、例えば離型剤、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、強化剤などを添加することができる。
【0028】
本発明の二色成形体は、前記支持体と前記被覆体を、射出成形にて共成形することにより形成することが好ましい。
射出成形による共成形方法としては、コアバック法、ダイスライド法、ロータリー法などのような二色(二種類)の樹脂をそれぞれ別々の射出シリンダーから金型内部に順次、射出充填して異種材料あるいは異色材料の成形品を作る成形法が挙げられる。
【0029】
この二色成形体において、前記被覆体と前記支持体は、被覆体/支持体=1/9〜9/1の厚み構成比であることが好ましく、被覆体/支持体=3/7〜7/3の厚み構成比であることがさらに好ましい。この厚みの構成比であると、場合によっては更なるコントラストを出す際、2回レーザーマーキングを実施することがあるが、このようなケースであっても被覆体のクラック、破損が起こらず、レーザーマーキング条件巾の広いシート厚み構成であり、好ましいものである。
【0030】
また、二色成形体の全体の厚みは、通常0.3〜10mm、好ましくは0.5〜8mmである。
【0031】
なお、上記二色成形体を構成する支持体と被覆体には、必要に応じて、その特性を損なわない範囲で、他の添加剤、例えば離型剤、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、強化剤などを添加することができる。
【0032】
本発明の樹脂組成物を成形してなる成形体又は二色成形体に対してレーザーマーキングするには、例えば、これらの成形体に、ビーム径が20〜40μm、レーザー媒質がイットリウム−四酸化バナジウム(YVO4)であるレーザー光線を照射して印字する、レーザーマーキング方法を採用することが好ましい。
【0033】
本発明のレーザーマーキング方法において、レーザー光線としては、レーザービームはシングルモードでもマルチモードでもよく、またビーム径が20〜40μmのように絞ったもののほか、ビーム径が80〜100μmのごとく広いものについても用いることができるが、シングルモードで、ビーム径が20〜40μmの方が、印字発色部と下地部のコントラストを3以上とし、コントラストが良好な印字品質を得る点で好ましい。
【0034】
本発明のレーザーマーキング用樹脂組成物を用いて成形してなる成形体(及び二色成形体)は、レーザーマーク性に優れ、その表面、又は支持体と被覆体の界面部にレーザー光線で黒下地に白文字、白色記号及び白色図柄などを、容易かつ鮮明に描くことができ、特にQRコード等の情報コードを解像度よくマーキングすることが可能である。しかも本発明の成形体及び二色成形体は柔軟性に富むため、内視鏡やその関連部材などの医療用途として極めて効果的に使用することができる。
【実施例】
【0035】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例および比較例における「部」および「%」は特に断りのない限り質量部および質量%を意味する。また、実施例における各種の評価、測定は、下記方法により実施した。
【0036】
レーザー照射条件:
レーザー機器:ロフィン−バーゼル社 RSM10E(YVO4
シングルモードビーム径:20〜40μm
走査速度:400mm/s
波長:1064nm
周波数:5,500Hz
電流値:22A
【0037】
発色性評価:
測色計(グレタグマクベス社製 7000A)を用いて、WI:白色度、YI:黄味度、を測定した。
コントラスト評価:
コニカミノルタ社製の輝度計(LS100)を用いて測定した。数値の大きいほどコントラストが高く、視認性が高い。本発明では、コントラストが3以上のときに○、コントラストが2以上、3未満のときに△、コントラストが2未満のときに×とした。
【0038】
(実施例1)
デュロDが15のポリオレフィン系エラストマー(エーイーエス・ジャパン社製、商品名:サントプレーン201−55)100質量部に対し、カーボンブラック(三菱化学社製、商品グレード:#20)0.06質量部、低次酸化チタンであるチタンブラック(赤穂化成社製、商品名:ティラックD)0.02質量部、ジメチルポリシロキサン/二酸化珪素混合物(東レダウコーニングシリコーン社製、商品グレード:125M)1.5質量部を添加し、高速ミキサーで均一混合し、押出機、ペレタイザーにて造粒してコンパウンドを調製した。
そして、まず射出成形機にて厚み3.0mmの平板プレートを作製し、YVOレーザーを使用してマーキングされた箇所の発色性及びコントラストを測定した。その結果を表1に示す。
【0039】
(実施例2)
ポリオレフィン系エラストマーの代わりに、デュロDが27のポリエステル系エラストマー(東レ・デュポン社製、商品名:ハイトレル3046)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、平板プレートの発色性及びコントラストを測定した。結果を表1に示す。
【0040】
(実施例3)
ポリオレフィン系エラストマーの代わりに、デュロDが40のポリエーテルウレタン系エラストマー(大日精化工業社製、商品名:レザミンP P−2288)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、平板プレートの発色性及びコントラストを測定した。結果を表1に示す。
【0041】
(実施例4)
着色剤として酸化チタン、群青、チタンイエロー及び酸化鉄を総計で0.5質量部さらに添加したこと以外は実施例1と同様にして、平板プレートの発色性及びコントラストを測定した。結果を表1に示す。
【0042】
(実施例5)
着色剤として酸化チタン、群青、チタンイエロー及び酸化鉄を総計で10質量部さらに添加したこと以外は実施例1と同様にして、平板プレートの発色性及びコントラストを測定した。結果を表1に示す。
【0043】
(実施例6)
着色剤として酸化チタン、群青、チタンイエロー及び酸化鉄を総計で15質量部さらに添加したこと以外は実施例1と同様にして、平板プレートの発色性及びコントラストを測定した。結果を表1に示す。
【0044】
(比較例1)
ジメチルポリシロキサン/二酸化珪素混合物を用いないこと以外は、実施例1と同様にして、平板プレートの発色性及びコントラストを測定した。結果を表1に示す。
【0045】
(比較例2)
チタンブラックを用いないこと以外は、実施例1と同様にして、平板プレートの発色性及びコントラストを測定した。結果を表1に示す。
【0046】
(比較例3)
チタンブラックとジメチルポリシロキサン/二酸化珪素混合物を用いないこと以外は、実施例1と同様にして、平板プレートの発色性及びコントラストを測定した。結果を表1に示す。
【0047】
(比較例4)
チタンブラックとジメチルポリシロキサン/二酸化珪素混合物を用いないこと以外は、実施例2と同様にして、平板プレートの発色性及びコントラストを測定した。結果を表1に示す。
【0048】
(比較例5)
チタンブラックとジメチルポリシロキサン/二酸化珪素混合物を用いないこと以外は、実施例3と同様にして、平板プレートの発色性及びコントラストを測定した。結果を表1に示す。
【0049】
【表1】

【0050】
表1の結果から、実施例1〜6のように、カーボンブラック、チタンブラック及びジメチルポリシロキサン/二酸化珪素混合物のすべてを用いる場合には、レーザー光線照射によって白文字等が明瞭に発現しているが、比較例1〜5のように、カーボンブラック、チタンブラック及びジメチルポリシロキサン/二酸化珪素混合物のうちのいずれかのみを用いている場合には、白文字等の発色性が極めて低く、また、カーボンブラックとチタンブラック又はジメチルポリシロキサン/二酸化珪素混合物の2種類を用いている場合には、白文字等の発色性は多少よいものの、いまだ満足できる程度ではないことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明に係るレーザーマーキング用樹脂組成物は、地色が黒色のときに白文字、白色記号、白色図柄等がコントラスト良好にマーキングされ、特にQRコード等の情報コードを解像度よくマーキングするのに適しており、しかも上記樹脂組成物を成形してなる本発明の成形体及び二色成形体は柔軟性に富むため、内視鏡やその関連部材などの医療用途として極めて効果的に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)デュロDが60以下の柔軟性を有する熱可塑性樹脂100質量部に対して、(B)カーボンブラック及び低次酸化チタン、(C)珪素含有化合物を合計で0.01〜10質量部含有してなる、レーザーマーキング用樹脂組成物。
【請求項2】
さらに、上記(B)成分以外の着色剤0.001〜15質量部を含有する請求項1記載のレーザーマーキング用樹脂組成物。
【請求項3】
前記(A)柔軟性を有する熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリエーテルウレタン系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、及びポリニトリル系エラストマーからなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項1又は2に記載のレーザーマーキング用樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂組成物を成形してなる成形体。
【請求項5】
医療用として用いる請求項4記載の成形体。
【請求項6】
少なくとも支持体と、該支持体を被覆する被覆体とからなる二色成形体であって、
前記支持体は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂組成物から構成され、
前記被覆体は、(D)デュロDが60以下の柔軟性を有する透明な熱可塑性樹脂から構成されている、
レーザーマーキング用二色成形体。
【請求項7】
医療用として用いる請求項6記載の二色成形体。
【請求項8】
請求項4〜7のいずれか1項に記載の成形体に、ビーム径が20〜40μm、レーザー媒質がイットリウム−四酸化バナジウムであるレーザー光線を照射して印字する、レーザーマーキング方法。

【公開番号】特開2007−106840(P2007−106840A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−297855(P2005−297855)
【出願日】平成17年10月12日(2005.10.12)
【出願人】(591258587)日本カラリング株式会社 (36)
【Fターム(参考)】