説明

レーザー彫刻によるフレキソおよび活版印刷のための印刷用ブランケットまたは印刷版の形態の多層平坦構造

本発明は、− ポリマー材料でできた、レーザー彫刻により提供された印刷層(2)と、− 少なくとも1つの圧縮性層(3)と、− 少なくとも1つの補強層(4)とを備え、個々の層が接着複合体を相互に形成する、フレキソ印刷および活版印刷のための印刷用ブランケットまたは印刷版の形態の多層平坦構造(1)に関する。本発明による多層平坦構造(1)は、印刷層(2)のポリマー材料が加硫物であるという事実により区別される。これに関して、有利な材料が提案される。印刷層(2)は、便宜上、圧縮性層(3)上に直接配置される。圧縮性層(3)は、次に、強度支持層(4)と直接接触している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
− ポリマー材料でできた、レーザー彫刻により提供された印刷層と、
− 少なくとも1つの圧縮性層と、また、
− 少なくとも1つの補強層と
を備え、個々の層が接着複合体を相互に形成する、フレキソ印刷および活版印刷のための印刷用ブランケットまたは印刷版の形態の多層シートに関する。
【背景技術】
【0002】
このタイプのシートは、例示として以下の文献に開示されている。
欧州特許第0 844 100 B1号明細書
欧州特許第1 315 617 B1号明細書
欧州特許出願公開第2 070 717 A1号明細書
国際公開第02/096648 A1号パンフレット
米国特許第5 798 202号明細書
米国特許第5 804 353号明細書
Technik des Flexodruckes[Flexographic printing technology]、pp.173ff.,4th edition,1999,Coating Verlag,St.Gallen(CH)
【0003】
利用可能な先行技術において、フレキソおよび活版印刷においては、レーザー彫刻によるこの一般的なタイプのシートの印刷層は、主に、フォトポリマーで構成されている。例を挙げると、欧州特許第1 315 617 B1号明細書の印刷層は、エラストマーバインダー、重合可能な化合物、光開始剤または光開始剤系、および、さらに微粒子フィラー、例えば、ヒュームド酸化物(酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム)で構成されている。ここでは、前記印刷層の全領域の架橋は、光、例えば、化学光の照射によりなされる。最終的に、印刷レリーフは、レーザーにより架橋印刷層に彫刻される。レーザー処理後、印刷層は、レリーフ層または印刷版とも呼ばれる。
【0004】
しかしながら、レーザー彫刻によるフォトポリマーでできた印刷層は、以下の付随する欠点を有する。
− 複数の操作を含む印刷版の製造は極めて複雑である。
− 材料の動剛性のために、たいていは、様々な速度で印刷するのに圧力調整が繰り返し必要である。
− フォトポリマー印刷層または印刷版の特徴は、低レベルのインク転写である。
− 照射フォトポリマーシートの装着により、欠陥が生じ得る。
− ロール製品の形態において設計に制限がある。エンドユーザーは、たいていは、様々な形式を在庫に持つ必要がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した欠点を排除するための本発明のシートの特徴は、印刷層のポリマー材料が加硫物であることである。
【0006】
加硫物とは、加硫可能なポリマー混合物の加硫により生成された生成物または生成物成分−この場合は、印刷層−に用いる用語である。ポリマー混合物は、ここでは、1つ以上のゴム成分を含む。加硫物は、弾性があるのが特徴である。架橋プロセスでは、用いるゴムの種類に応じて、硫黄(例えば、NRの場合には)または過酸化物(例えば、EPDMの場合には)を用いる。特に重要なプロセスは、130〜200℃の温度での熱加硫である。冷加硫または放射線加硫を用いることも可能である。
【0007】
加硫物に関して、用いられる2つの特定の変形は以下のとおりである。
【0008】
変形A
加硫物は、少なくとも1つのゴム成分と、また、混合成分とを含む加硫した熱可塑材を含まないゴム混合物である。言及できる特定のゴム成分は次のとおりである。
エチレン−プロピレンゴム(EPM)
エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)
ニトリルゴム(NBR)
(部分)水素化ニトリルゴム(HNBR)
フルオロゴム(FKM)
クロロプレンゴム(CR)
天然ゴム(NR)
スチレン−ブタジエンゴム(SBR)
イソプレンゴム(IR)
ブチルゴム(IIR)
ブロモブチルゴム(BIIR)
クロロブチルゴム(CIIR)
ブタジエンゴム(BR)
塩素化ポリエチレン(CM)
クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)
ポリエピクロロヒドリン(ECO)
エチレン−酢酸ビニルゴム(EVA)
アクリレートゴム(ACM)
エチレン−アクリレートゴム(AEM)
シリコーンゴム(VMQ)
フッ素化メチルシリコーンゴム(MFQ)
過フッ素化プロピレンゴム(FFPM)
パーフルオロカーボンゴム(FFKM)
ポリウレタン(PU)
【0009】
上述したタイプのゴムは、ブレンドしていないタイプとすることができる。ブレンド、特に、上述したタイプのゴムの1つと併せたもの、例えば、NR/BRブレンドまたはBR/SBRブレンドを用いることも可能である。
【0010】
以下は特に重要である。EPM、EPDM、SBR、BR、CR、NRまたはNBR。
【0011】
通常の混合成分は、少なくとも1つの架橋剤または1つの架橋剤系(架橋剤および促進剤)を含む。その他混合成分はまた、たいてい、フィラーおよび/または処理助剤、および/または可塑剤および/または酸化防止剤、さらに任意選択によりさらなる追加の材料(例えば、着色顔料)である。これに関しては、ゴム混合技術の一般的な先行技術を参照のこと。
【0012】
変形B
加硫物は、少なくとも1つの熱可塑性成分、少なくとも部分的に架橋された少なくとも1つのゴム成分、および、さらに混合成分を含む熱可塑性加硫物である。
【0013】
好ましい熱可塑性成分は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン、ポリアミド(PA)またはポリエステル(PES)である。
【0014】
上述した特定のゴム成分は、EPM、EPDM、SBR、BR、CR、NRまたはNBR、特に、ブレンドしていない形である。
【0015】
混合成分に関しては、上述した混合技術、特に、独国特許出願公開第100 04 632A1号明細書の教示を参照のこと。
【0016】
印刷層についての新規な材料と組み合わせて、印刷層が補強層と直接接触している欧州特許第0 844 100B1号明細書の設計とは対照的に、印刷層は圧縮性層と直接接触していると有利である。
【0017】
ある好ましい層構造において、印刷層と直接接触している圧縮性層は、補強層と直接接触していて、下にある構造は、層の数からは独立して、次のとおりである。
− 印刷層
− 圧縮性層
− 補強層
【0018】
この下にある構造に、層、特に、圧縮層および補強層をさらに追加することができる。
【0019】
圧縮性層−圧縮層とも呼ばれる−は、印刷ゾーンにおける減容によるあらゆる屈曲を排除し、印象差を補う役割を果たす。圧縮性層の決定的因子は、圧縮中に膨張しない、すなわち、圧縮中、その容積が実際に小さくなって、側方のあらゆるずれの広がりを排除することである。例を挙げると、プラスチックでできたマイクロビーズを、ここでは、ゴム混合物中に用いることができ、または、ガスを含んだ微細孔細胞状構造(発泡体)を用いることができる。ここで、関連する材料は、特に、ポリウレタン、架橋ポリエチレン、ポリプロピレン、NBR、ネオプレンおよびEPMである。弾性率は、たいていは、1MPa〜1000MPaの範囲である。圧縮性層に関するさらなる詳細については、背景に挙げた文献、特に、欧州特許第0 844 100 B1号明細書および欧州特許出願公開第2 070 717 A1号明細書を参照のこと。
【0020】
用いる補強層は、テキスタイル構造、例えば、織材料、あるいはホイル、例えば、ポリマーホイル(例えば、ポリアミドホイル)または金属ホイルを含むことができる。多くの層と、少なくとも2つの補強層とを備えたシートの場合には、テキスタイル構造とホイルまたはホイル複合体の組み合わせを用いることもできる。例を挙げると、欧州特許第0 844 100 B1号明細書には、3つの織層と、1つのホイル層(ポリマーホイルまたは金属ホイル)を備えた6層シートが記載されている。
【0021】
印刷用ブランケットまたは印刷版の形態の新規な多層シートは、ロール製品の形態で顧客に分配される。ロール製品はスリーブ(アダプタ、印刷シリンダ)に装着されて、印刷層はレーザーに露光され、後にクリーニングプロセスがなされる。最新のレーザー技術を用いることにより、グリッド内の様々な深さおよび形状のポイントを用いた彫刻パターンを、加硫物でできた新規な印刷層に導入することができる。彫刻パターンは、即時にクリーンに、かつ溶剤なしで形成される。100%位置合わせ精度および再現性がここで確保される。経済上重要な事実は、顧客が印刷版を製造するプロセスにおいて著しく少ない工程を求めることである。
【0022】
多層シートはまた、自己接着複合体の形態で供給することもできる。
【0023】
比較実験およびその結果を以下の表に示す。いずれの場合も、比較は、それぞれ、印刷層、圧縮性層および補強層の層順序の3層印刷版に関連する。印刷層は、第1に、先行技術どおり、フォトポリマー、第2に、本発明の教示どおり、過酸化物によって架橋されたEPDMをベースとする、熱可塑材を含まない加硫剤である。いずれの場合も、ここで、試験基準は、最も重要な技術的印刷データ、すなわち、階調値範囲、色の強度および動的位置調整についてのデータである。
【0024】
【表1】

【0025】
試験基準の評価に関連する定義は以下のとおりである。
+ 標準
++ 標準より上
+++ 標準よりはるかに上
【0026】
以下のさらなる意見は、この比較実験、さらに追加検査に関する。
− 加硫物でできた新規な印刷層は、印刷性能を大幅に改善する。
− これに関連して、印刷層は、圧縮性層と直接接触させると有利である。前記圧縮性層は、次に、補強層と直接接触する。
− 最良の結果は、EPM、EPDM、SBR、BR、CR、NRまたはNBRをベースとする、熱可塑材を含まない加硫物で得られる。上述したゴム成分は、ブレンドしていない成分とするか、または、ブレンド、例えば、BR/SBRブレンドを形成することができる。
− 新規な概念は、圧縮性層および補強層の材料から本質的に独立している。
− ロール製品の形態での分配に関して、様々な層構造を実現することが可能であり、請求項10または12の層システムは、有利な設計変形であり、図面の説明と共に、さらにいくらかの詳細を説明する。
− 加硫物から作製され、レーザーに露光された印刷層から印刷版を作製するプロセスに含まれる工程は、フォトポリマーを用いる場合よりも少ない。
【0027】
本発明の実施例を用いて、図を参照して、本発明を例示していく。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】加硫物でできた印刷層を備えた3層シートの断面図を示す。
【図2】加硫物でできた印刷層を備えた5層シートの断面図を示す。
【図3】レーザー彫刻により加硫物でできた印刷層の平面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1に、例えば、EPDMをベースとした、加硫物でできた印刷層2を備えた印刷用ブランケットまたは印刷版の形態の3層シート1を示す。印刷層は、例えば、ゴム混合物中プラスチックでできたマイクロビーズの形態にある圧縮性層3と直接接触している。前記圧縮性層が、次に、例えば、織材料でできた補強層4と直接接触する。
【0030】
図2に、以下の層順序の5層シート5を示す。
− 加硫物でできた印刷層6
− 例えば、ゴム混合物中プラスチックでできたマイクロビーズの形態にある第1の圧縮性層7
− 例えば、織材料でできた第1の補強層、
− 例えば、これも、ゴム混合物中プラスチックでできたマイクロビーズの形態にある第2の圧縮性層9
− 例えば、これも、織材料でできた第2の補強層10
【0031】
図2のシートの場合には、異なる補強層を用いる、例えば、第1の補強層は、織材料で構成されていて、第2の補強層は、ホイル、例えば、ポリマーホイル(例えば、ポリアミドホイル)、または金属ホイル、またはホイル複合体、例えば、ポリアミド−ポリエステルホイル複合体で構成されていることも可能である。
【0032】
図1および図2の本発明の実施例の多層シートは、ロール製品の形態で供給することができる。顧客は、適宜、必要なレーザー彫刻を行う。
【0033】
図3に、レーザー彫刻12のある、具体的には、ここでは、2005年の形の印刷層11を示す。印刷層は、加硫物であるため、印刷版を製造するとき、様々な深さおよび形状のポイントを用いた彫刻パターンをグリッド内に作製することができる。
【符号の説明】
【0034】
1 多層シート(印刷用ブランケット、印刷版)
2 印刷層
3 圧縮性層
4 補強層
5 多層シート(印刷用ブランケット、印刷版)
6 印刷層
7 第1の圧縮性層
8 第1の補強層
9 第2の圧縮性層
10 第2の補強層
11 印刷層
12 レーザー彫刻

【特許請求の範囲】
【請求項1】
− ポリマー材料でできた、レーザー彫刻(12)により提供された印刷層(2、6、11)と、
− 少なくとも1つの圧縮性層(3、7、9)と、
− 少なくとも1つの補強層(4、8、10)と
を備え、個々の層が接着複合体を相互に形成する、フレキソ印刷および活版印刷のための印刷用ブランケットまたは印刷版の形態の多層シート(1、5)であって、前記印刷層(2、6、11)の前記ポリマー材料が加硫物であることを特徴とする、多層シート(1、5)。
【請求項2】
前記加硫物が、少なくとも1つのゴム成分と混合成分とを含む、加硫した熱可塑材を含まないゴム混合物であることを特徴とする、請求項1に記載の多層シート。
【請求項3】
前記ゴム成分が、エチレン−プロピレンゴム(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、ニトリルゴム(NBR)、(部分)水素化ニトリルゴム(HNBR)、フルオロゴム(FKM)、クロロプレンゴム(CR)、天然ゴム(NR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(IIR)、ブロモブチルゴム(BIIR)、クロロブチルゴム(CIIR)、ブタジエンゴム(BR)、塩素化ポリエチレン(CM)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、ポリエピクロロヒドリン(ECO)、エチレン−酢酸ビニルゴム(EVA)、アクリレートゴム(ACM)、エチレン−アクリレートゴム(AEM)、シリコーンゴム(VMQ)、フッ素化メチルシリコーンゴム(MFQ)、過フッ素化プロピレンゴム(FFPM)、パーフルオロカーボンゴム(FFKM)またはポリウレタン(PU)であり、上述したタイプのゴムは、ブレンドせずに、または、特に、上述したタイプのゴムの1つと併せてブレンド中で用いられることを特徴とする、請求項2に記載の多層シート。
【請求項4】
前記ゴム成分が、EPM、EPDM、SBR、BR、CR、NRまたはNBRであることを特徴とする、請求項3に記載の多層シート。
【請求項5】
前記加硫物が、少なくとも1つの熱可塑性成分と、少なくとも部分的に架橋された少なくとも1つのゴム成分と、混合成分とを含む熱可塑性加硫物であることを特徴とする、請求項1に記載の多層シート。
【請求項6】
前記熱可塑性成分が、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン、ポリアミド(PA)またはポリエステル(PES)であることを特徴とする、請求項5に記載の多層シート。
【請求項7】
前記ゴム成分が、EPM、EPDM、SBR、BR、CR、NRまたはNBRであることを特徴とする、請求項5または6に記載の多層シート。
【請求項8】
前記印刷層(2、6、11)が、圧縮性層(3、7)と直接接触していることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の多層シート。
【請求項9】
前記印刷層(2、6、11)と直接接触している前記圧縮性層(3、7)が、補強層(4、8)と直接接触していることを特徴とする、請求項8に記載の多層シート。
【請求項10】
前記シート(1)が、3層を、特に以下の層順序、
− 印刷層(2)、
− 圧縮性層(3)、
− 補強層(4)
で有することを特徴とする、請求項9に記載の多層シート。
【請求項11】
前記シート(5)が、少なくとも4つの層を有することを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の多層シート。
【請求項12】
前記シート(5)が、5層を、特に以下の層順序、
− 印刷層(6)、
− 第1の圧縮性層(7)、
− 第1の補強層(8)、
− 第2の圧縮性層(9)、
− 第2の補強層(10)
で有することを特徴とする、請求項9と組み合わせた請求項11に記載の多層シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−524676(P2012−524676A)
【公表日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−506427(P2012−506427)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【国際出願番号】PCT/EP2010/054168
【国際公開番号】WO2010/121887
【国際公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(501158848)コンテイテヒ・エラストマー−ベシヒトウンゲン・ゲゼルシヤフト・ミト・ベシユレンクテル・ハフツング (4)
【Fターム(参考)】