説明

レーザー彫刻型フレキソ印刷版原版の製造方法

【課題】ラジカル重合性化合物の残留量が少なく、十分に硬化したレリーフ形成層(記録層)を有するレーザー彫刻型フレキソ印刷版原版の製造方法を提供すること。
【解決手段】(成分A)ラジカル重合性化合物、及び、(成分B)熱ラジカル重合開始剤、を含有する組成物を支持体上に塗設する塗設工程(1)、並びに、0.0001気圧以上0.1気圧以下の雰囲気下において熱硬化する硬化工程(2)、を含むことを特徴とするレーザー彫刻版フレキソ印刷版原版の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー彫刻型フレキソ印刷版原版の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザー彫刻型印刷版原版のレリーフ形成層をレーザーにより直接彫刻し製版する、いわゆる「直彫りCTP方式」が多く提案されている。
この方式では、印刷版原版に直接レーザー光を走査露光して凹部を形成し、光熱変換によりレリーフ形成層を画像状に熱分解し、印刷に必要なレリーフ層を形成する。直彫りCTP方式では、原画フィルムを用いたアナログ方式のレリーフ形成方式とは異なり、レリーフ形状を自由に制御することができる。このため、抜き文字の如き画像を形成する場合、その領域を他の領域よりも深く彫刻したり、又は、微細網点画像では、印圧に対する抵抗を考慮し、ショルダーをつけた彫刻をする、などの操作も可能である。
【0003】
レーザー彫刻型印刷版原版の製造方法についてもいろいろな提案がなされている。
例えば、特許文献1は、熱硬化性組成物を導電性支持体の表面上に配置する工程と、前記導電性支持体を高周波誘導加熱することにより、前記組成物を前記導電性支持体と接する面側から加熱し硬化させて、前記導電性支持体上に前記熱硬化性組成物が硬化されてなる樹脂層を形成する工程と、を含む印刷原版の製造方法を開示する。特許文献1には、厚膜の熱硬化性組成物を加熱する場合、組成物の内部は酸素阻害の影響は受けずに硬化が進むが、大気と接している組成物の表面は酸素阻害の影響のため硬化が進まない、と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−20363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、フレキソ印刷版のレリーフ形成層のような室温でも柔軟な膜を熱硬化させる場合には、雰囲気中の酸素による重合阻害が著しく大きいことを見出した。
本発明が解決しようとする課題は、ラジカル重合性化合物の残留量が少なく、十分に硬化したレリーフ形成層(記録層)を有するレーザー彫刻型フレキソ印刷版原版の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記課題は、以下の手段<1>、<14>及び<15>により解決された。好ましい実施態様である<2>〜<13>と共に列記する。
<1>(成分A)ラジカル重合性化合物、及び、(成分B)熱ラジカル重合開始剤、を含有する組成物を支持体上に塗設する塗設工程(1)、並びに、前記組成物を酸素分圧が0.0001気圧以上0.1気圧以下の雰囲気下において熱硬化する硬化工程(2)、を含むことを特徴とするレーザー彫刻型フレキソ印刷版原版の製造方法、
<2>前記硬化工程(2)が、塗設して得られた組成物層の少なくとも一部を熱硬化する第一熱硬化工程、及び、必要に応じて、前記組成物層の全体をさらに硬化する第二熱硬化工程を含有する、<1>に記載のレーザー彫刻型フレキソ印刷版原版の製造方法、
<3>硬化工程(2)における前記雰囲気の換気効率が1〜500体積%/分である、<1>又は<2>に記載のレーザー彫刻型フレキソ印刷版原版の製造方法、
<4>硬化工程(2)における加熱温度が60℃以上200℃以下である、<1>〜<3>のいずれか1つに記載のレーザー彫刻型フレキソ印刷版原版の製造方法、
<5>前記組成物がさらに(成分C)光熱変換剤を含有する、<1>〜<4>のいずれか1つに記載のレーザー彫刻型フレキソ印刷版原版の製造方法、
<6>前記組成物がさらに(成分D)バインダーポリマーを含有する、<1>〜<5>のいずれか1つに記載のレーザー彫刻型フレキソ印刷版原版の製造方法、
<7>前記組成物がさらに(成分E)架橋剤を含有する、<1>〜<6>のいずれか1つに記載のレーザー彫刻型フレキソ印刷版原版の製造方法、
<8>前記組成物が成分Aとして(成分A1)多官能エチレン性不飽和化合物を含有する、<1>〜<7>のいずれか1つに記載のレーザー彫刻型フレキソ印刷版原版の製造方法、
<9>成分Eが、(成分E1)多官能イソシアネート化合物、(成分E2)多官能酸無水物、及び(成分E3)ポリアルコキシシラン化合物、よりなる群から選ばれた少なくとも1種である<7>又は<8>に記載のレーザー彫刻型フレキソ印刷版原版の製造方法、
<10>熱硬化した組成物の表面に光硬化性組成物層を設ける工程、前記光硬化性組成物層上に光透過性の別の支持体を貼り付ける工程、及び、前記光硬化性組成物層を光硬化する工程、をさらに含む、<1>〜<9>のいずれか1つに記載のレーザー彫刻型フレキソ印刷版原版の製造方法、
(11>前記組成物が、さらに(成分G)溶媒を含有し、(1)塗設工程において、前記組成物を前記支持体に塗布する工程、及び、引き続いて、前記溶媒を前記組成物から95重量%以上除去する工程を含む、<1>〜<10>のいずれか1項に記載のレーザー彫刻型フレキソ印刷版原版の製造方法、
<12>熱硬化する硬化工程(2)として、酸素分圧が0.001気圧以上0.05気圧以下の雰囲気下で、80〜140℃において熱硬化する第一熱硬化工程、及び、引き続いて、1気圧の空気雰囲気下で、70〜110℃において熱硬化する第二熱硬化工程を含む、<2>〜<11>のいずれか1項に記載のレーザー彫刻型フレキソ印刷版原版の製造方法、
<13>前記光硬化性組成物層が、水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物、水酸基を有しない(メタ)アクリレート化合物、及び、光重合開始剤を含有し、エチレン性不飽和基を有しない揮発性有機化合物(VOC)を含有しない、<10>〜<12>のいずれか1項に記載のレーザー彫刻型フレキソ印刷版原版の製造方法、
<14><1>〜<13>のいずれか1つに記載の製造方法で製造されたレーザー彫刻型フレキソ印刷版原版、
<15><14>に記載のフレキソ印刷版原版をレーザー彫刻する工程、及び、レーザー彫刻した印刷版を水又は水溶液で洗浄する工程、を含むことを特徴とする、フレキソ印刷版の製版方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ラジカル重合性化合物の残留量が少なく、十分に硬化したレリーフ形成層を有するレーザー彫刻型フレキソ印刷版原版の製造方法を提供することができた。
また熱硬化させたレリーフ形成層(記録層)に光硬化性組成物により別の支持体を貼り付ける工程を付加する場合にも、大きな接着力により別の支持体を貼り付けることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のレーザー彫刻型フレキソ印刷版原版の製造方法は、(成分A)ラジカル重合性化合物、及び、(成分B)熱ラジカル重合開始剤、を含有する組成物を支持体上に塗設する塗設工程(1)、並びに、前記組成物を酸素分圧が0.0001気圧以上0.1気圧以下の雰囲気下において熱硬化する硬化工程(2)、を必須の工程として含むことを特徴とする。以下にこれらの工程を順次説明する。
【0009】
<塗設工程(1)>
本発明のレーザー彫刻型フレキソ印刷版原版の製造方法における最初の必須工程は、(成分A)ラジカル重合性化合物、及び、(成分B)熱ラジカル重合開始剤、を含有する組成物を支持体上に塗設する塗設工程(1)である。ここで、「塗設」とは、溶剤を含む組成物を支持体上に塗布し、引き続いて前記溶剤を除去(乾燥)することを意味する。言い換えると、塗設工程(1)は、レーザー彫刻型組成物からなるレリーフ形成層を支持体上に形成する層形成工程である。
なお、溶剤を含まないレーザー彫刻型組成物である場合には、必要に応じて加熱しながらスリットより前記組成物を押し出し、支持体上に流延することもできる。この場合も、「塗設」に含まれるものとする。
組成物が溶剤を含有する場合は、乾燥において組成物調製に使用された溶剤の95重量%以上を除去することが好ましく、99重量%以上を除去することがより好ましい。
【0010】
本発明の製造方法に使用する支持体について説明する。
<支持体>
レーザー彫刻型レリーフ印刷版原版の製造に使用する支持体の素材は特に限定されない。この支持体としては、寸法安定性の高いものが好ましく使用され、例えば、スチール、ステンレススチール、アルミニウムなどの金属、ポリエステル(例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PAN(ポリアクリロニトリル))やポリ塩化ビニルなどのプラスチック樹脂、スチレン−ブタジエンゴムなどの合成ゴム、ガラスファイバーで補強されたプラスチック樹脂(エポキシ樹脂やフェノール樹脂など)が例示できる。支持体としては、PETフィルムやスチール基板が好ましく用いられる。支持体の形態は、レリーフ形成層がシート状であるかスリーブ状であるかによって決定され、シート状でもスリーブ状であってもよい。
【0011】
レーザー彫刻型レリーフ印刷版原版の製造に使用するレーザー彫刻型組成物は、必須成分である、(成分A)ラジカル重合性化合物、及び、(成分B)熱ラジカル重合開始剤の他に、任意成分である成分C(光熱変換剤)、成分D(バインダーポリマー)、又は成分E(架橋剤)の1種以上を、これらを溶解又は分散する適当な溶媒と混合し溶解・分散させることにより調製することができる。各成分の添加順序は、適宜選択できる。なお、上記の必須成分及び任意成分は後に詳しく説明する。
塗設工程(1)は、レーザー彫刻型組成物からなるレリーフ形成層を支持体上に形成する層形成工程である。
レリーフ形成層の形成方法としては、レーザー彫刻型組成物を調製し、この組成物を支持体上に公知の方法により流延し、これをオーブン中で乾燥して溶媒を除去する方法が好ましく例示できる。流延する方法としては、スリット塗布、カーテン塗布、ギーサー塗布などが例示できる。
レリーフ形成層の乾燥厚みは、好ましくは0.05〜10mmであることが好ましく、0.1〜7mmであることがより好ましく、0.5〜3mmであることが特に好ましい。
【0012】
<硬化工程(2)>
本発明のレーザー彫刻型フレキソ印刷版原版の製造方法において、塗設工程(1)に続く必須の工程は、前記組成物を酸素分圧が0.0001気圧以上0.1気圧以下の雰囲気下において熱硬化する硬化工程(2)である。硬化工程(2)について説明する。
硬化工程(2)における加熱温度は、60℃以上200℃以下であることが好ましく、60℃以上150℃以下であることがより好ましく、75℃以上130℃以下であることが特に好ましい。
【0013】
上記の「酸素分圧」とは熱硬化工程の雰囲気中において酸素が示す分圧のことであり、酸素及び他の気体の全体からなる雰囲気が示す圧力と雰囲気中の酸素の濃度(容量%)の積で定義される。すなわち、以下の関係式が成立する。
酸素分圧=雰囲気圧力×酸素濃度(容量%)
【0014】
雰囲気圧力は、一般的な圧力計を用いて測定することができる。基準となる大気圧は、1気圧=0.101MPaである。
酸素濃度は、熱硬化工程の雰囲気をサンプリングし、常温(25℃)常圧(1atm)に戻した上で、酸素濃度計にて測定して求めることができる。酸素濃度計の測定原理は、磁気式、限界電流方式、ジルコニア方式、ガルバニ電池方式などが知られており、いかなる方式で測定しても良い。
【0015】
酸素分圧の調整は、熱硬化性組成物を加熱硬化する容器の内部を減圧脱気する方法、容器内部へ供給する気体に窒素等の不活性ガスを追加して酸素濃度を相対的に下げる方法、及びこれらの組み合わせにより行うことができる。
加熱工程に使用する容器内の酸素分圧は、0.0001〜0.1気圧であり、好ましくは0.0001〜0.05気圧であり、より好ましくは0.001〜0.01気圧である。
なお、塗設工程(1)において残留した溶媒は、硬化工程(2)において、除去することが好ましい。特に減圧した雰囲気において、また、この雰囲気の換気を行うことにより残留溶媒を効率よく低減することができる。
硬化工程(2)が、塗設して得られた前記組成物層の少なくとも一部を、熱硬化する第一熱硬化工程、及び、前記組成物層の全体をさらに熱硬化する第二熱硬化工程を含有することが好ましい。これら2つの熱硬化工程については、後に詳しく説明する。前記組成物層の全体を熱硬化する第一熱硬化工程のみの1段階硬化でも問題はない。
【0016】
本発明のレーザー彫刻型フレキソ印刷版原版の製造方法において、換気効率とは、硬化工程に使用する密閉容器内において、雰囲気の気体が1分間当たり換気される割合で示される。すなわち、硬化工程に使用される容器(オーブン等)の内部容量をV0リットルとして、1分当たり容器内に供給及び排出される気体容量をV1とするとき、換気効率はV1/V0で表される。
好ましい換気効率は、1〜500体積%/分であり、より好ましい換気効率は10〜200体積%/分であり、特に好ましい換気効率は、20〜100体積%/分である。
換気の操作は好ましくは1気圧の下で行う。
【0017】
本発明者は、フレキソ印刷版のレリーフ形成層のような室温でも柔軟な膜の場合、ガラス転移温度より大幅に高温で熱硬化されると、雰囲気中の酸素による重合阻害が著しく大きいことを見出した。これはガラス転移温度より大幅に高温になると膜中の物質移動が促進されるため酸素が膜中に浸透してしまい、ラジカル重合性化合物の酸素による重合阻害の影響が表面だけに限定されなくなることが原因と推定される。
【0018】
本発明のレーザー彫刻型フレキソ印刷版原版の製造方法において、前記の塗設工程及び硬化工程以外に、任意の工程を含むことができる。好ましい任意工程としては、熱硬化した組成物上に光硬化性組成物層を設ける工程、前記光硬化性組成物層上に光透過性の別の支持体を貼り付ける工程、及び、前記光硬化性組成物を光硬化する工程、が例示できる。
この任意工程の詳細は、レリーフ形成用組成物の成分について説明した後に記載する。
【0019】
引き続いて、支持体上に塗設する組成物について説明する。この組成物は、レリーフ形成層を作製するためのものである。
この組成物は、(成分A)ラジカル重合性化合物、及び、(成分B)熱ラジカル重合開始剤、を必須成分として含有する。以下、成分A及び成分Bについて説明した後、任意成分である、(成分C)光熱変換剤、(成分D)バインダーポリマー、(成分E)架橋剤、の順に説明する。
【0020】
<(成分A)ラジカル重合性化合物>
本発明の製造方法においては、レリーフ形成層を自己支持性とするため、また、必要に応じてレリーフ形成層中に架橋構造を形成する観点から、レリーフ形成層用組成物(本発明において「本発明の組成物」ともいう。)は、(成分A)ラジカル重合性化合物を含有する。
本発明に用いることができる(成分A)ラジカル重合性化合物として、エチレン性不飽和結合を分子内に少なくとも1個、好ましくは2個以上、より好ましくは2〜6個有する化合物の中から1種類以上を任意に選択することができる。
また、本発明に使用する組成物において、(成分A)ラジカル重合性化合物として、1分子中に2以上のエチレン性不飽和基を有する多官能エチレン性不飽和化合物を含有することが好ましい。多官能エチレン性不飽和化合物としては、2以上の(メタ)アクリル基を有することが好ましく、2以上の(メタ)アクリロキシ基を有する化合物であることがより好ましい。
【0021】
以下、ラジカル重合性化合物として用いられる、エチレン性不飽和結合を分子内に1つ有する単官能モノマー、及び、エチレン性不飽和結合を分子内に2個以上有する多官能モノマーについて説明する。
支持体上に塗設する組成物は、塗膜中に架橋構造を形成するため、少なくとも多官能モノマーを併用することが好ましい。多官能モノマーの分子量としては、200〜2,000であることが好ましい。
【0022】
単官能モノマーとしては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等)と一価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と一価アミン化合物とのアミド等が挙げられる。また、多官能モノマーとしては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等)と多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と多価アミン化合物とのアミド等が挙げられる。
また、ヒドロキシル基やアミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル又はアミド類と単官能若しくは多官能イソシアネート類又はエポキシ類との付加反応物、及び、単官能若しくは多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。
【0023】
多官能モノマーとしては、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステルが例示できる。
その具体例としては、アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ソルビトールペンタアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー等が例示できる。
【0024】
メタクリル酸エステルとして、テトラメチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ソルビトールトリメタクリレート、ソルビトールテトラメタクリレート、ビス〔p−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕ジメチルメタン、ビス−〔p−(メタクリルオキシエトキシ)フェニル〕ジメチルメタン等が例示できる。
【0025】
イタコン酸エステルとしては、エチレングリコールジイタコネート、プロピレングリコールジイタコネート、1,3−ブタンジオールジイタコネート、1,4−ブタンジオールジイタコネート、テトラメチレングリコールジイタコネート、ペンタエリスリトールジイタコネート、ソルビトールテトライタコネート等が例示できる。
【0026】
クロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジクロトネート、テトラメチレングリコールジクロトネート、ペンタエリスリトールジクロトネート、ソルビトールテトラクロトネート等が例示できる。
【0027】
イソクロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジイソクロトネート、ペンタエリスリトールジイソクロトネート、ソルビトールテトライソクロトネート等が例示できる。
【0028】
マレイン酸エステルとしては、エチレングリコールジマレート、トリエチレングリコールジマレート、ペンタエリスリトールジマレート、ソルビトールテトラマレート等が例示できる。
【0029】
その他のエステルの例として、例えば、特公昭46−27926号、特公昭51−47334号、特開昭57−196231号の各公報記載の脂肪族アルコール系エステル類や、特開昭59−5240号、特開昭59−5241号、特開平2−226149号の各公報記載の芳香族系骨格を有するもの、特開平1−165613号公報記載のアミノ基を含有するもの等も好適に用いられる。
【0030】
また、脂肪族多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビスアクリルアミド、メチレンビスメタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビスアクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビスメタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド等がある。
その他の好ましいアミド系の多官能エチレン性不飽和化合物の例としては、特公昭54−21726号公報記載のシクロへキシレン構造を有すものを挙げることができる。
【0031】
また、イソシアネートと水酸基の付加反応を用いて製造されるウレタン系付加多官能モノマーも多官能エチレン性不飽和化合物として好適であり、そのような具体例としては、例えば、特公昭48−41708号公報中に記載されている1分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物と、下記式(A)で示される水酸基を含有するエチレン性不飽和化合物を付加させた1分子中に2個以上のエチレン性不飽和基を含有するウレタン系の多官能エチレン性不飽和化合物等が挙げられる。
CH2=C(R)COOCH2CH(R’)OH (A)
(ただし、R及びR’は、H又はCH3を示す。)
【0032】
また、特開昭51−37193号、特公平2−32293号、特公平2−16765号の各公報に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58−49860号、特公昭56−17654号、特公昭62−39417号、特公昭62−39418号の各公報記載のエチレンオキサイド鎖を有するウレタン系の多官能エチレン性不飽和化合物も好適である。
【0033】
さらに、特開昭63−277653号、特開昭63−260909号、特開平1−105238号の各公報に記載される、分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有する多官能エチレン性不飽和化合物類を用いることにより、短時間で架橋した組成物を得ることができる。
【0034】
その他の多官能エチレン性不飽和化合物の例としては、特開昭48−64183号、特公昭49−43191号、特公昭52−30490号各公報に記載されているようなポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタクリレートを挙げることができる。また、特公昭46−43946号、特公平1−40337号、特公平1−40336号の各公報記載の特定の不飽和化合物や、特開平2−25493号公報記載のビニルホスホン酸系化合物等も挙げることができる。また、ある場合には、特開昭61−22048号公報記載のペルフルオロアルキル基を含有する構造が好適に使用される。さらに日本接着協会誌vol.20、No.7、300〜308ページ(1984年)に光硬化性モノマー及びオリゴマーとして紹介されているものも使用することができる。
【0035】
本発明に用いることができるラジカル重合性化合物としては、飽和橋かけ環式多官能モノマーも例示できる。
飽和橋かけ環式多官能モノマーとしては、メタクリロイルオキシ基又はアクリロイルオキシ基を2つ有するビシクロ環、トリシクロ環構造を有する化合物等の縮環構造を有する脂環式多官能モノマーを用いることが物性を制御する観点から好ましい。
ビシクロ環、トリシクロ環構造としては、ノルボルネン骨格(ビシクロ[2.2.1]ヘプタン)、ジシクロペンタジエン骨格(トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン)、アダマンタン骨格(トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン)等の縮環構造の脂環式炭化水素構造が挙げられる。
飽和橋かけ環式多官能モノマーとしては、ビシクロ環、トリシクロ環部分にアミノ基が直接結合していてもよく、また、メチレン、エチレン等のアルキレン等の脂肪族部分を介して結合していてもよい。さらに、これら縮環構造の脂環族炭化水素基の水素原子が、アルキル基等で置換されていてもよい。
本発明において、飽和橋かけ環式多官能モノマーとしては、下記より選択される脂環式多官能モノマーであることが好ましい。
【0036】
【化1】

【0037】
また、ラジカル重合性化合物としては、イソシアネート基や、エポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル又はアミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類又はチオール類との付加反応物、さらにハロゲノ基や、トシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル又はアミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類又はチオール類との置換反応物も好適である。
また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン、ビニルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
重合性化合物としては、特に制限はなく、前記例示した化合物の他、公知の種々の化合物を用いることができ、例えば、特開2009−204962号公報の段落0098〜0124に記載の化合物などを使用してもよい。
【0038】
本発明においては、ラジカル重合性化合物として、彫刻感度向上の観点から、分子内に硫黄原子を有する化合物を用いることが好ましい。
このように分子内に硫黄原子を有するラジカル重合性化合物としては、彫刻感度向上の観点から、特に、2つ以上のエチレン性不飽和結合を有し、そのうち2つのエチレン性不飽和結合間を連結する部位に炭素−硫黄結合を有するラジカル重合性化合物(以下、適宜、「含硫黄多官能モノマー」と称する。)を用いることが好ましい。
【0039】
本発明における含硫黄多官能モノマー中の炭素−硫黄結合を含んだ官能基としては、スルフィド、ジスルフィド、スルホキシド、スルホニル、スルホンアミド、チオカルボニル、チオカルボン酸、ジチオカルボン酸、スルファミン酸、チオアミド、チオカルバメート、ジチオカルバメート、又は、チオ尿素を含む官能基が挙げられる。
また、含硫黄多官能モノマーにおける2つのエチレン性不飽和結合間を連結する炭素−硫黄結合を含有する連結基としては、−C−S−、−C−SS−、−NH(C=S)O−、−NH(C=O)S−、−NH(C=S)S−、及び、−C−SO2−から選択される少なくとも1つのユニットを含む連結基であることが好ましい。
【0040】
また、含硫黄多官能モノマーの分子内に含まれる硫黄原子の数は1つ以上であれば特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができるが、彫刻感度と塗布溶剤に対する溶解性のバランスの観点から、1〜10個が好ましく、1〜5個がより好ましく、1又は2個がさらに好ましい。
一方、分子内に含まれるエチレン性不飽和部位の数は2つ以上であれば特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができるが、架橋膜の柔軟性の観点で、2〜10個が好ましく、2〜6個がより好ましく、2〜4個がさらに好ましい。
【0041】
本発明における含硫黄多官能モノマーの分子量としては、形成される膜の柔軟性の観点から、120〜3,000であることが好ましく、120〜1,500であることがより好ましい。
また、本発明における含硫黄多官能モノマーは単独で用いてもよいが、分子内に硫黄原子を持たない多官能重合性化合物や単官能重合性化合物との混合物として用いてもよい。
分子内に硫黄原子を有する重合性化合物の具体例としては、例えば、特開2009−255510号公報の段落0032〜0037に記載のものを例示でき、ここに記載の化合物を本発明に使用してもよい。
【0042】
本発明の組成物における成分Aは、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の組成物中に含まれる成分Aの含有量は、全固形分量に対して、2〜50重量%が好ましく、5〜30重量%がより好ましく、10〜20重量%が特に好ましい。
【0043】
<(成分B)熱ラジカル重合開始剤>
本発明において塗設に使用する組成物は、必須成分として(成分B)熱ラジカル重合開始剤を含有する。
熱ラジカル重合開始剤は、当業者間で公知のものを制限なく使用することができる。以下、好ましい熱ラジカル重合開始剤について詳述するが、本発明はこれらの記述により制限を受けるものではない。
【0044】
本発明において、好ましいラジカル重合開始剤としては、(a)芳香族ケトン類、(b)オニウム塩化合物、(c)有機過酸化物、(d)チオ化合物、(e)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(f)ケトオキシムエステル化合物、(g)ボレート化合物、(h)アジニウム化合物、(i)メタロセン化合物、(j)活性エステル化合物、(k)炭素ハロゲン結合を有する化合物、(l)アゾ系化合物等が挙げられる。以下に、上記(c)及び(i)の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0045】
本発明においては、塗設した組成物の硬化性の観点から、熱ラジカル重合開始剤として、(c)有機過酸化物及び(l)アゾ系化合物がより好ましく、(c)有機過酸化物が特に好ましい。これらの開始剤を以下に説明する。
【0046】
(c)有機過酸化物
本発明に用いることができる熱ラジカル重合開始剤として好ましい(c)有機過酸化物としては、3,3’,4,4’−テトラ(ターシャリーブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(ターシャリーアミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(ターシャリーヘキシルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(ターシャリーオクチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(クミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(p−イソプロピルクミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、ジ−ターシャリーブチルジパーオキシイソフタレート、ターシャリーブチルパーオキシベンゾエートなどの過酸化エステル系が好ましい。
【0047】
(l)アゾ系化合物
本発明に用いることができる熱ラジカル重合開始剤として好ましい(l)アゾ系化合物としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビスプロピオニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミドオキシム)、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)等を挙げることができる。
【0048】
なお、本発明においては、前記(c)有機過酸化物が、レリーフ形成層である硬化膜の彫刻感度向上の観点からも好ましい。
【0049】
彫刻感度の観点からは、この(c)有機過酸化物と、後記の(成分D)バインダーポリマーとしてガラス転移温度が常温(20℃)以上のバインダーポリマーとを組み合わせた態様が特に好ましい。
これは、有機過酸化物を用いてレリーフ形成層を熱架橋により硬化させる際、ラジカル発生に関与しない未反応の有機過酸化物が残存するが、残存した有機過酸化物は、自己反応性の添加剤として働き、レーザー彫刻時に発熱的に分解する。その結果、照射されたレーザーエネルギーに発熱分が加算されるので彫刻感度が高くなると推定される。
特にバインダーポリマーのガラス転移温度が常温(20℃)以上の場合、有機過酸化物の分解に由来して発生した熱が、バインダーポリマーに効率よく伝達され、かつバインダーポリマー自体の熱分解に有効に利用されるためより高感度化されるものと推定している。
なお、後記の(成分C)光熱変換剤に関する説明においても述べるが、この効果は、光熱変換剤としてカーボンブラックを用いる場合に著しい。これは、カーボンブラックから発生した熱が(c)有機過酸化物にも伝達される結果、カーボンブラックだけでなく有機過酸化物からも発熱するため、バインダーポリマー等の分解に使用されるべき熱エネルギーの発生が相乗的に生じるためと考えている。
【0050】
また、有機過酸化物と後述する光熱変換剤とを併用することで、彫刻感度が極めて高くなるのでより好ましく、有機過酸化物と光熱変換剤であるカーボンブラックとを組み合わせて用いた態様が最も好ましい。
これは、有機過酸化物を用いてレリーフ形成層を熱架橋により硬化させる際、ラジカル発生に関与しない未反応の有機過酸化物が残存するが、残存した有機過酸化物は、自己反応性の添加剤として働き、レーザー彫刻時に発熱的に分解する。その結果、照射されたレーザーエネルギーに発熱分が加算されるので彫刻感度が高くなると推定される。
なお、光熱変換剤の説明において記述したが、この効果は、光熱変換剤としてカーボンブラックを用いる場合に著しい。これは、カーボンブラックから発生した熱が有機過酸化物にも伝達される結果、カーボンブラックだけでなく有機過酸化物からも発熱し、成分B等の分解に使用されるべき熱エネルギーの発生が相乗的に生じるためと考えている。
【0051】
本発明の組成物における成分Bは、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の組成物中に含まれる成分Bの含有量は、塗布組成物の全固形分量に対して、0.1〜5重量%が好ましく、0.3〜3重量%がより好ましく、0.5〜1.5重量%が特に好ましい。
【0052】
本発明に使用する組成物は、任意成分として、(成分C)光熱変換剤、(成分D)バインダーポリマー、(成分E)架橋剤の少なくとも1成分を含有することができ、また、これらの任意成分を2種以上含有することが好ましく、これら3成分をすべて含有することがより好ましい。
【0053】
<(成分C)光熱変換剤>
本発明の組成物は、さらに、(成分C)光熱変換剤を含有することが好ましい。すなわち、本発明における光熱変換剤は、レーザーの光を吸収し発熱することで、レーザー彫刻時の硬化物の熱分解を促進すると考えられる。このため、彫刻に用いるレーザー波長の光を吸収する光熱変換剤を選択することが好ましい。
【0054】
本発明の組成物を用いて製造したレーザー彫刻型レリーフ印刷版原版を、700〜1,300nmの赤外線を発するレーザー(YAGレーザー、半導体レーザー、ファイバーレーザー、面発光レーザー等)を光源としてレーザー彫刻に用いる場合に、光熱変換剤としては、700〜1,300nmに極大吸収波長を有する化合物を用いることが好ましい。
本発明における光熱変換剤としては、種々の染料又は顔料が用いられる。
【0055】
光熱変換剤のうち、染料としては、市販の染料及び例えば「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)等の文献に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、700〜1,300nmに極大吸収波長を有するものが挙げられ、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、ジインモニウム化合物、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体等の染料が好ましく挙げられる。本発明において好ましく用いられる染料としては、ヘプタメチンシアニン色素等のシアニン系色素、ペンタメチンオキソノール色素等のオキソノール系色素、フタロシアニン系色素及び特開2008−63554号公報の段落0124〜0137に記載の染料を挙げることができる。
【0056】
本発明において使用される光熱変換剤のうち、顔料としては、市販の顔料及びカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」CMC出版、1984年刊)に記載されている顔料が利用できる。また、顔料としては、特開2009−178869号公報の段落0122〜0125に記載の顔料が例示できる。
これらの顔料のうち、好ましいものはカーボンブラックである。
【0057】
カーボンブラックは、組成物中における分散性などが安定である限り、ASTMによる分類のほか、用途(例えば、カラー用、ゴム用、乾電池用など)の如何に拘らずいずれも使用可能である。カーボンブラックには、例えば、ファーネスブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、ランプブラック、アセチレンブラックなどが含まれる。なお、カーボンブラックなどの黒色着色剤は、分散を容易にするため、必要に応じて分散剤を用い、予めニトロセルロースやバインダーなどに分散させたカラーチップやカラーペーストとして使用することができ、このようなチップやペーストは市販品として容易に入手できる。また、カーボンブラックとしては、特開2009−178869号公報の段落0130〜0134に記載されたものが例示できる。
【0058】
本発明の組成物における成分Cは、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
レーザー彫刻型組成物中おける光熱変換剤の含有量は、その分子固有の分子吸光係数の大きさにより大きく異なるが、該組成物の固形分全重量の0.01〜30重量%の範囲が好ましく、0.05〜20重量%がより好ましく、0.1〜10重量%が特に好ましい。
【0059】
<(成分D)バインダーポリマー>
本発明の組成物は、(成分D)バインダーポリマー(以下、単に「バインダー」ともいう。)を含有する。
バインダーポリマーは、レーザー彫刻型組成物に含有される高分子成分である。
バインダーポリマーの数平均分子量(Mn)としては、500〜50万であることが好ましい。
また、バインダーポリマーの重量平均分子量(GPC測定によるポリスチレン換算)は、1,000以上が好ましく、0.5万〜50万がより好ましく、1万〜40万がさらに好ましく、1.5万〜30万が特に好ましい。
バインダーとしては、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレア樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ヒドロキシエチレン単位を含む親水性ポリマー、アクリル樹脂、アセタール樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ゴム、熱可塑性エラストマーなどが例示できる。
【0060】
本発明に用いることができるバインダーポリマーは、膜形成性であることが好ましい。
さらにバインダポリマーは、架橋可能であることが好ましく、架橋反応に寄与する官能基を有していることがより好ましく、このような活性基としては、ヒドロキシル基が例示でき、アルコキシ基、加水分解性シリル基及びシラノール基との架橋ができる。
これらの官能基は、ポリマー分子中のいずれかに存在すればよいが、特にポリマー鎖の側鎖に存在することが好ましい。このようなポリマーとしては、ビニル共重合体(ポリビニルアルコールやポリビニルアセタールなどのビニルモノマーの共重合体及びその誘導体)やアクリル樹脂(ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどのアクリル系モノマーの共重合体及びその誘導体)が好ましく用いられる。ここで、ビニルモノマーの共重合体の誘導体とは、具体的には、ビニルアルコール単位の水酸基あるいは水酸基のα位を化学修飾して側鎖を延長した形態とし、その末端に水酸基やカルボキシル基といった官能基を導入したバインダーポリマーのことを指す。また、アクリル系モノマーの共重合体の誘導体としては、水酸基やカルボキシル基といった官能基を導入した樹脂が挙げられる。
本発明に用いることができるバインダーポリマーの製造方法は、特に限定されないが、重合性モノマーを重合又は共重合して製造する方法などが挙げられる。
本発明に用いることができるバインダーポリマーとしては、ヒドロキシル基を有するバインダーポリマーが特に好ましく用いられ、ポリビニルブチラールが例示できる。
成分Dの添加範囲は、本発明の組成物の全固形分量に対して、20〜90重量%であることが好ましく、30〜85重量%であることがより好ましい。
【0061】
<(成分E)架橋剤>
レリーフ形成層に使用する組成物はさらに(成分E)架橋剤を含有することが好ましい。
(成分E)架橋剤は、成分A以外の成分であり、好ましくは逐次的反応で架橋する化合物である。(成分E)架橋剤には、重付加性又は重縮合性の成分であることが好ましい。
具体的には、(成分E)架橋剤は、(成分E1)多官能イソシアネート化合物、(成分E2)多官能酸無水物、及び(成分E3)ポリアルコキシシラン化合物、よりなる群から選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。
上記の成分E1、E2、及びE3について、順に以下に説明する。これらの架橋剤の中で、成分E3が好ましい。
【0062】
<(成分E1)多官能イソシアネート化合物>
「多官能イソシアネート化合物」とは、分子内に少なくとも2個以上のイソシアネート基を有する化合物をいう。
本発明で用いる(成分E1)多官能イソシアネート化合物が、その分子内に有するイソシアナト基の数は2個以上であり、三次元架橋構造を形成する観点から、2〜10個が好ましく、2〜6個がより好ましく、2〜4個が特に好ましい。
【0063】
以下、(成分E1)多官能イソシアネート化合物について説明する。
分子内に2個のイソシアネート基を有する化合物としては、例えば、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、ナフタレン−1,4−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ−ビフェニルジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、キシリレン−1,4−ジイソシアネート、キシリレン−1,3−ジイソシアネート、4−クロロキシリレン−1,3−ジイソシアネート、2−メチルキシリレン−1,3−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルプロパンジイソシアネート、
【0064】
4,4’−ジフェニルヘキサフルオロプロパンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、プロピレン−1,2−ジイソシアネート、ブチレン−1,2−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,2−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,4−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等が挙げられる。さらにこれらの2官能イソシアネート化合物とエチレングリコール類、ビスフェノール類等の2官能アルコール、フェノール類との付加反応物も利用できる。
【0065】
さらに別の多官能のイソシアネート化合物も利用することができる。このような化合物の例としては前述の2官能イソシアネート化合物を主原料とし、これらの3量体(ビューレットあるいはイソシアヌレート)、トリメチロールプロパンなどのポリオールと2官能イソシアネート化合物の付加体として多官能としたもの、ベンゼンイソシアネートのホルマリン縮合物、メタクリロイルオキシエチルイソシアネート等の重合性基を有するイソシアネート化合物の重合体、又はリジントリイソシアネートなどが挙げられる。
【0066】
特に、キシレンジイソシアネート及びその水添物、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート及びその水添物を主原料としこれらの3量体(ビューレットあるいはイソシヌレート)の他、トリメチロールプロパンとのアダクト体として多官能としたものが好ましい。これらの化合物については「ポリウレタン樹脂ハンドブック」(岩田敬治編、(株)日刊工業新聞社発行(1987))に記載されている。
【0067】
またこれらの中で、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、キシリレン−1,4−ジイソシアネート、キシリレン−1,3−ジイソシアネート、トリメチロールプロパンとキシリレン−1,4−ジイソシアネート又はキシリレン−1,3−ジイソシアネートとの付加物が好ましく、特にキシリレン−1,4−ジイソシアネート及びキシリレン−1,3−ジイソシアネート、トリメチロールプロパンとキシリレン−1,4−ジイソシアネート又はキシリレン−1,3−ジイソシアネートとの付加物が好ましい。
【0068】
また(成分E1)多官能イソシアネート化合物は、2個のイソシアナート基を連結する連結部に、彫刻感度の観点から、窒素、酸素、又は硫黄等のヘテロ原子を有することが好ましく、炭素−硫黄結合を有することがより好ましい。
【0069】
このような炭素−硫黄結合を有する連結基として、より具体的には、−CH2−S−、−CH2−SS−、−NHC(=S)O−、−NH(C=O)S−、−NH(C=S)S−、及び−CH2−SO2−から選択される少なくとも1つのユニット(原子団)であることが好ましく、中でも、彫刻感度をより高めるといった観点から、−CH2−SS−、−NH(C=S)O−、−NH(C=O)S−、−NH(C=S)S−が好ましく、−CH2−SS−、−NH(C=O)S−が最も好ましい。
【0070】
(成分E1)多官能イソシアネート化合物は、2個のイソシアネート基を連結する部位に炭素−硫黄結合を有することが好ましく、分子内に含まれる硫黄原子の数は1つ以上であれば特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができるが、彫刻感度と塗布溶剤に対する溶解性のバランスの観点から、1個〜10個が好ましく、1個〜5個がより好ましく、1個〜2個が特に好ましい。
【0071】
このような分子内に硫黄原子を含む含硫黄イソシアネートは、含硫黄多官能アルコール、含硫黄多官能アミン、又は多官能チオールと多官能イソシアネートとの付加反応により合成することができる。
【0072】
(成分E1)多官能イソシアネート化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0073】
【化2】

【0074】
【化3】

【0075】
【化4】

【0076】
上記の(成分E1)多官能イソシアネート化合物の具体例の中でも、彫刻感度向上の観点から、化合物I−7〜I−15が好ましく、化合物I−7、I−8、I−10、I−11、I−12、及びI−13がより好ましく、化合物I−7、I−10、及びI−11が特に好ましい。
【0077】
(成分E1)多官能イソシアネート化合物の分子量は、形成される架橋レリーフ形成層の柔軟性の観点から、好ましくは100〜5,000であり、より好ましくは150〜3,000である。
【0078】
(成分E1)多官能イソシアネート化合物の添加量は、レリーフ層形成用組成物全固形分中、0.1〜80重量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは1〜40重量%の範囲であり、さらに好ましくは5〜30重量%の範囲である。
【0079】
<(成分E2)多官能酸無水物>
多官能酸無水物とは、分子内に二塩基酸無水物構造を2つ以上含有する化合物をいう。
(成分E2)多官能酸無水物としては、分子内にカルボン酸無水物残基などの酸無水物構造を2以上有する化合物であれば、いずれも用いることができる。すなわち、分子内に当該化学構造を2つ以上有するものであれば、水酸基などの官能基と良好な架橋構造を形成する。
(成分E2)多官能酸無水物における二塩基酸無水物構造とは、同一分子内に存在する2つのカルボン酸の脱水縮合にて生成する無水物構造のことを指す。
分子内に存在するカルボン酸無水物構造の数は、リンス性の観点から2つ以上4つ以下であることが好ましく、2つ以上3つ以下であることがより好ましく、2つ有するものが最も好ましい。
【0080】
本発明に好適に用いられるカルボン酸無水物構造を2つ有する化合物としては、四塩基酸二無水物が挙げられる。四塩基酸二無水物の具体例としては、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ピリジンテトラカルボン酸二無水物等の脂肪族あるいは芳香族四カルボン酸二無水物等が挙げられる。また、カルボン酸無水物構造を3つ有する化合物としては、メリット酸三無水物等が挙げられる。
(成分E2)多官能酸無水物の分子量としては、80以上500未満であることが好ましい。
以下に、本発明に好適に用いられる(成分E2)多官能酸無水物の具体例を特定化合物A−1〜A−7として例示するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0081】
【化5】

【0082】
本発明においては(成分E2)多官能酸無水物は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
架橋レリーフ形成層を形成するためのレリーフ形成層用組成物における(成分E2)多官能酸無水物の含有量は、固形分換算で、1〜30重量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは3〜30重量%の範囲であり、特に好ましくは5〜30重量%である。
【0083】
<(成分E3)ポリアルコキシシラン化合物>
「ポリアルコキシシラン化合物」とは、1分子中に少なくとも2つのアルコキシシリル基を有する化合物をいう。
本発明のレリーフ形成層用組成物に配合できる(成分E3)ポリアルコキシシラン化合物は、加水分解性を有するシリル基を1分子中に複数有する。
加水分解性基としては、アルコキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、アミド基、アセトキシ基、アミノ基、イソプロペノキシ基等を挙げることができる。シリル基は加水分解してシラノール基となり、シラノール基は脱水縮合してシロキサン結合が生成する。このような加水分解性シリル基又はシラノール基を有する化合物(以下、「アルコキシシリル化合物」ともいう。)は下記式(1)で表される残基を有する化合物であることが好ましい。
【0084】
【化6】

【0085】
前記式(1)中、R1〜R3の少なくともいずれか1つは、アルコキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、アミド基、アセトキシ基、アミノ基、及び、イソプロペノキシ基よりなる群から選択される加水分解性基、又は、ヒドロキシル基を表す。残りのR1〜R3はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、又は、1価の有機置換基(例えば、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基を挙げることができる。)を表す。
【0086】
前記式(1)中、ケイ素原子に結合する加水分解性基としては、特にアルコキシ基、ハロゲン原子が好ましく、アルコキシ基がより好ましい。
アルコキシ基としては、リンス性と耐刷性の観点から、炭素数1〜30のアルコキシ基が好ましい。より好ましくは炭素数1〜15のアルコキシ基、さらに好ましくは炭素数1〜5のアルコキシ基、特に好ましくは炭素数1〜3のアルコキシ基、最も好ましくはメトキシ基又はエトキシ基である。
また、ハロゲン原子としては、F原子、Cl原子、Br原子、I原子が挙げられ、合成のしやすさ及び安定性の観点で、好ましくはCl原子及びBr原子であり、より好ましくはCl原子である。
【0087】
本発明における成分E3は、前記式(1)で表される残基を1つ以上有する化合物であることが好ましく、2つ以上有する化合物であることがより好ましい。特に加水分解性シリル基を2つ以上有するポリアルコキシシリル化合物が好ましく用いられる。すなわち、分子内に加水分解性基が結合したケイ素原子を2つ以上有する化合物が好ましく用いられる。成分E3中に含まれる加水分解性基が結合したケイ素原子の数は、2以上6以下が好ましく、2又は3が最も好ましい。
前記加水分解性基は1個のケイ素原子に1〜4個の範囲で結合することができ、式(1)中における加水分解性基の総個数は2又は3の範囲であることが好ましい。特に3つの加水分解性基がケイ素原子に結合していることが好ましい。加水分解性基がケイ素原子に2個以上結合するときは、それらは互いに同一であっても、異なっていてもよい。
【0088】
好ましい前記アルコキシ基として、具体的には、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、tert−ブトキシ基、フェノキシ基、ベンジルオキシ基などを挙げることができる。これらの各アルコキシ基を複数個組み合わせて用いてもよいし、異なるアルコキシ基を複数個組み合わせて用いてもよい。
アルコキシ基の結合したアルコキシシリル基としては、例えば、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリイソプロポキシシリル基、トリフェノキシシリル基などのトリアルコキシシリル基;ジメトキシメチルシリル基、ジエトキシメチルシリル基などのジアルコキシモノアルキルシリル基;メトキシジメチルシリル基、エトキシジメチルシリル基などのモノアルコキシジアルキルシリル基を挙げることができる。
【0089】
成分E3は、硫黄原子、エステル結合、ウレタン結合、エーテル結合、ウレア結合、又は、イミノ基を少なくとも有することが好ましい。
中でも、成分E3は、架橋性の観点から、硫黄原子を含有することが好ましく、また、彫刻カスの除去性(リンス性)の観点から、アルカリ水で分解しやすいエステル結合、ウレタン結合、又は、エーテル結合(特にオキシアルキレン基に含まれるエーテル結合)を含有することが好ましい。硫黄原子を含有する成分E3は、加硫剤や加硫促進剤として機能し、(成分D)バインダーポリマーとして使用される共役ジエン単量体単位を含有する重合体の反応(架橋)を促進する。その結果、フレキソ印刷版として必要なゴム弾性を発現させる。また、フレキソ印刷版原版における架橋レリーフ形成層及びフレキソ印刷版におけるレリーフ層の強度を向上させる。
また、本発明における成分E3は、エチレン性不飽和結合を有していない化合物であることが好ましい。
【0090】
本発明における成分E3は公知であり、以下の化合物が含まれる。
具体的には、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、メルカプトメチルトリメトキシシラン、ジメトキシ−3−メルカプトプロピルメチルシラン、2−(2−アミノエチルチオエチル)ジエトキシメチルシラン、3−(2−アセトキシエチルチオプロピル)ジメトキシメチルシラン、2−(2−アミノエチルチオエチル)トリエトキシシラン、ジメトキシメチル−3−(3−フェノキシプロピルチオプロピル)シラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、トリメチルシラノール、ジフェニルシランジオール、トリフェニルシラノール、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等が例示できる。
成分E3の合成方法としては、特に制限はなく、公知の方法により合成することができる。また、市販品として入手することができる。
【0091】
成分E3の添加量は、レリーフ層形成用組成物の全固形分中、0.1〜30重量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは1〜20重量%の範囲であり、さらに好ましくは5〜15重量%の範囲である。
【0092】
前記の任意成分C〜成分E以外に本発明の組成物に使用できる他の任意成分について以下に説明する。
<(成分F)可塑剤>
本発明の組成物は、可塑剤を含有することが好ましい。
可塑剤は、レーザー彫刻型組成物により形成された膜を柔軟化する作用を有するものであり、バインダーポリマーに対して相溶性のよいものである必要がある。
可塑剤としては、例えばジオクチルフタレート、ジドデシルフタレート、アジピン酸ビスブトキシエチル等や、ポリエチレングリコール類(モノオール型やジオール型)、ポリプロピレングリコール類(モノオール型やジオール型)等を好ましく用いられる。
これらの中でも、アジピン酸ビスブトキシエチルが特に好ましい。
本発明の組成物における成分Fは、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
柔軟な膜物性を保つ観点から、本発明のレーザー彫刻型組成物中の可塑剤の含有量は、全固形分濃度の1〜50重量%が好ましく、5〜40重量%がより好ましく、10〜30重量%が特に好ましい。
【0093】
<(成分G)溶媒>
本発明の製造方法において、塗設用の組成物を調製する際に、溶媒を用いることが好ましい。
溶媒としては、有機溶媒を用いることが好ましい。
非プロトン性有機溶媒の好ましい具体例は、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシドが挙げられる。
プロトン性有機溶媒の好ましい具体例は、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオールが挙げられる。
これらの中でも、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが特に好ましく例示できる。
成分Gの添加量は、適宜選択することができ、塗設する際に組成物が適当な粘度となるように設定できる。成分Gは不必要に多くない方が、塗布後の乾燥の負荷を少なくすることができる。本発明の組成物において、全固形分濃度は、50〜90重量%であることが好ましく、55〜80重量%であることがより好ましい。
【0094】
<その他の添加剤>
本発明の組成物には、公知の各種添加剤を、本発明の効果を阻害しない範囲で適宜配合することができる。例えば、充填剤、ワックス、プロセス油、金属酸化物、オゾン分解防止剤、老化防止剤、重合禁止剤、着色剤等が挙げられ、これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0095】
本発明のレーザー彫刻型フレキソ印刷版原版の製造方法は、既述の通り、前記硬化工程(2)が、塗設して得られた前記組成物の層の少なくとも一部を熱硬化させる第一熱硬化工程、及び、前記組成物層の全体をさらに熱硬化する第二熱硬化工程を含有することが好ましい。ただし、第一熱硬化工程において、前記組成物の層の全部を熱硬化することを排除するものではない。
第一熱硬化工程及び第二熱硬化工程の加熱温度は、いずれも、60〜200℃であることが好ましく、60〜150℃であることがより好ましく、75〜130℃であることがさらに好ましい。
第一熱硬化工程においては、雰囲気の酸素分圧を0.1気圧以下にすることが好ましく、0.05気圧以下にすることが好ましく、0.001〜0.05気圧にすることがより好ましい。好ましい加熱温度は、80〜140℃であることがより好ましく、85〜130℃であることがさらに好ましい。
第一熱硬化工程における保持時間は、10〜600分であることが好ましく、15〜150分であることがより好ましく、20〜90分であることがさらに好ましい。
第二熱硬化工程における保持時間は、20〜1,000分であることが好ましく、30〜500分であることがより好ましく、40〜250分であることがさらに好ましい。
大気圧下で組成物の層を塗設した後、第一熱硬化工程において減圧した雰囲気に置かれる組成物は、依然として表面層から酸素が組成物内に拡散するために、前記組成物の層の表面側(雰囲気側)に完全に熱硬化しない領域(軟膜領域)を生じると推定される。この熱硬化は、支持体側の少なくとも一部が進行していればよく、層の深さ方向全体にわたって硬化が進行している場合も含まれる。第一熱硬化工程において、硬化雰囲気の換気を行うことが好ましい。
第二熱硬化工程について説明する。第二熱硬化工程においては、コストの観点で大気圧(1気圧)の雰囲気における(酸素分圧は0.21気圧である)硬化工程であることが好ましい。ただし、この第二熱硬化工程において、第一熱硬化工程と同じく、硬化雰囲気の換気を行うことが好ましく、換気の好ましい条件も同様である。好ましい加熱温度は、70〜140℃であることがより好ましく、70〜110℃であることがさらに好ましい。
組成物の層について深さ(厚さ)方向の熱硬化の程度は、記録層の断面について厚さ方向に微小硬度計(HMV−1、(株)島津製作所製)により局所測定して、その硬度の断面分布から測定できる。
【0096】
また、本発明のレーザー彫刻型フレキソ印刷版原版の製造方法は、前記記録層の支持体とは反対側の面に光硬化性組成物(「光硬化性接着剤」ともいう。)を層状に付与し、別の支持体と貼り合わせる貼合工程(以下、単に「貼合工程」ともいう。)を含むことが好ましい。具体的には、前記の塗設工程(1)及び硬化工程(2)の必須2工程に加えて、熱硬化した組成物の表面に光硬化性組成物層を設ける工程、前記光硬化性組成物層上に光透過性の別の支持体を貼り付ける工程、及び、前記光硬化性組成物を光硬化する工程、をさらにこの順で含むことが好ましい。
【0097】
<貼合工程>
本発明のレーザー彫刻型レリーフ印刷版原版の製造方法は、塗設工程(1)及び硬化工程(2)に加えて、熱硬化した組成物の表面に光硬化性組成物層を設ける工程、前記光硬化性組成物層上に光透過性の別の支持体を貼り付ける工程、並びに、前記光硬化性組成物層を光硬化する工程、をさらに含むことが好ましい。
言い換えると、前記レーザー彫刻型記録層の前記層形成工程における支持体側に対向する面に光硬化性接着剤層を付与し別の支持体と貼り合わせる貼合工程を含む。
ここで、「光硬化性組成物」とは、紫外線を照射することにより硬化する性質を有する組成物であり、付加重合性のエチレン性不飽和化合物及び光重合開始剤を必須成分として含むことが好ましい。光硬化性組成物層の平均厚みは、0.05〜0.2mmであることが好ましく、0.08〜0.15mmであることが好ましい。
また、前記光硬化性接着剤は、水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物、水酸基を有しない(メタ)アクリレート化合物、及び、光重合開始剤を含有することがより好ましい。
前記光硬化性接着剤は、上記以外の公知の添加剤を含有していてもよいが、有機溶剤などのエチレン性不飽和基を有しない揮発性有機化合物(VOC)を含有しないことが好ましく、水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物、水酸基を有しない(メタ)アクリレート化合物、及び、光重合開始剤のみからなることがより好ましい。
前記貼合工程においては、前記記録層の前記層形成工程における支持体側の面と対向する面、いわゆる空気面に特定の光硬化性接着剤を付与することが重要である。上記態様をとることにより、接着性及び膜厚均一性に優れたレリーフ印刷版原版が得られる。
前記貼合工程における前記記録層に光硬化性接着剤を付与する方法としては、特に制限はなく、公知の方法により行うことができる。
【0098】
〔支持体〕
この支持体は、塗設工程(1)において使用される支持体とは別の支持体である。
ただし、材料的には、塗設工程(1)において使用した素材から選択でき、重複する記載は割愛する。
貼合工程において使用する支持体は、透明支持体であることが好ましく、PETフィルムであることがより好ましい。フィルムの厚さは任意選択できるが、0.1〜0.5mmであることが好ましい。
【0099】
〔水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物〕
前記光硬化性接着剤は、水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物を含有することが好ましい。
水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物としては、水酸基(ヒドロキシ基)と(メタ)アクリロイル基を少なくとも有するものであれば、特に制限はないが、1つの水酸基を有する単官能(メタ)アクリレート化合物であることが好ましく、下記式(A)で表される化合物であることがより好ましい。なお、本発明において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び「メタクリル」のいずれか一方、又は、その両方を含む語であり、また、「(メタ)アクリレート」、「(メタ)アクリロイル」についても同様である。
【0100】
【化7】

【0101】
式(A)中、R1はアルキレン基を表し、炭素数2〜20のアルキレン基であることが好ましく、炭素数2〜10のアルキレン基であることがより好ましい。
また、R1におけるアルキレン基は、直鎖状であっても、分岐を有していても、環構造を有していてもよい。また、R1におけるアルキレン基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリール基、及び、アリールオキシ基が好ましく例示できる。
また、式(A)中、R2は水素原子又はメチル基を表す。
水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物の具体例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート及び2−ヒドロキシ−3−クロロプロピル(メタ)アクリレート、ジグリセロールジ(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシ−2−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキサノキシ−β−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフロキシ−β−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ノニルオキシ−β−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどが例示できる。
水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
前記光硬化性接着剤中の水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物の含有量は、光硬化性接着剤100重量部に対し、10〜80重量部であることが好ましく、20〜65重量部であることがより好ましい。
【0102】
〔水酸基を有しない(メタ)アクリレート化合物〕
前記光硬化性接着剤は、前記水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物以外に、水酸基を有しない(メタ)アクリレート化合物を含有する。
水酸基を有しない(メタ)アクリレート化合物としては、水酸基を有していなければ特に制限はないが、光硬化性接着剤として、水酸基を有しない多官能(メタ)アクリレート化合物を少なくとも含むことが好ましい。
水酸基を有しない(メタ)アクリレート化合物としては、以下の式(B−1)〜式(B−7)で表される化合物が好ましく例示できる。
【0103】
【化8】

【0104】
式(B−1)中、R3は水素原子又は−CH3を表し、R4はそれぞれ独立に、水素原子、−CH3、−C25又は式(B’)で表される基を表し、R5はそれぞれ独立に、水素原子、塩素原子、−CH3又は−C25を表し、R6はそれぞれ独立に、水素原子又は式(B’)で表される基を表し、mはそれぞれ独立に、1〜8の整数を表し、nは1〜20の整数を表し、pはそれぞれ独立に、0又は1を表す。
式(B−1)で表される化合物として具体的には、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,2−プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジグリセロールテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0105】
【化9】

【0106】
式(B−2)中、R7はそれぞれ独立に、水素原子又は−CH3を表し、R8はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜4の直鎖若しくは分岐アルキル基を表し、R9はそれぞれ独立に、炭素数2〜4の直鎖又は分岐アルキレン基を示し、mはそれぞれ独立に、1〜10の整数を表す。
式(B−2)で表される化合物としては具体的には、2,2−ビス(4−メタクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロキシトリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アクリロキシペンタエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロキシヘキサエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アクリロキシヘプタエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロキシオクタエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アクリロキシジプロポキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロキシトリプロポキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アクリロキシジプトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロキシオクタブトジキシフェニル)プロパン、2−(4−メタクリロキシジエトキシフェニル)−2−(4−メタクリロキシトリエトキシフェニル)プロパン、2−(4−アクリロキシジプロポキシフェニル)−2−(4−アクリロキシトリエトキシフェニル)プロパン等が例示できる。
【0107】
【化10】

【0108】
式(B−3)中、R10は水素原子又は−CH3を表し、R11はそれぞれ独立に、炭素数1〜4の直鎖若しくは分岐アルキル基を表し、nは0〜10の整数を表す。
式(B−3)で表される化合物としては具体的には、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシプロピル(メタ)アクリレート等が例示できる。
【0109】
【化11】

【0110】
式(B−4)中、R12は水素原子又は−CH3を表し、R13は水素原子、炭素数1〜18の直鎖若しくは分岐アルキル基、炭素数5〜20の環状アルキル基、フェニル基、テトラヒドロフルフリル基、又は、これらの基を有する炭素数5〜20の直鎖若しくは分枝アルキル基を示す。
式(B−4)で表される化合物としては具体的には、メタクリル酸、アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等が例示できる。
【0111】
【化12】

【0112】
式(B−5)中、R14は水素原子又は−CH3を表し、R15は炭素数1〜20の直鎖若しくは分岐アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基又は直鎖若しくは分岐アルコキシアルキル基を表す。
式(B−5)で表される化合物としては具体的には、メトキシカルボニルメチル(メタ)アクリレート、エトキシカルボニルメチル(メタ)アクリレート、ヘプトキシカルボニルメチル(メタ)アクリレート、イソプロポキシカルボニルメチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0113】
【化13】

【0114】
式(B−6)中、R16はそれぞれ独立に、水素原子又は−CH3を表し、R17はそれぞれ独立に、炭素数2〜4の直鎖又は分枝アルキレン基を表し、mはそれぞれ独立に、1〜10の整数を表し、nは1又は2を表す。
【0115】
【化14】

【0116】
式(B−7)中、R18はそれぞれ独立に、水素原子又は−CH3を表し、mはそれぞれ独立に、1〜10の整数を表し、nは1又は2を表す。
式(B−6)又は式(B−7)で表される化合物としては具体的には、(メタ)アクリロキシエチルリン酸、1−クロロ−3−(メタ)アクリロキシプロピル−2−リン酸、(メタ)アクリロキシプロピルリン酸等が例示できる。
【0117】
また、水酸基を有しない(メタ)アクリレート化合物としては、ウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物を用いることができる。
ウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物と有機ポリイソシアネート化合物との反応生成物や、水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物と有機ポリイソシアネート化合物と三価以上のポリオール化合物及び/又はジオール化合物との反応生成物が挙げられる。
具体例としては、ビス(グリセリルウレタン)イソホロンテトラメタクリレート(下記化合物)が好ましく例示できる。
【0118】
【化15】

【0119】
これらの中でも、水酸基を有しない(メタ)アクリレート化合物としては、式(B−1)で表される化合物、又は、ウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物を含むことが好ましく、式(B−1)で表される化合物を含むことがより好ましく、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートを含むことがさらに好ましい。
水酸基を有しない(メタ)アクリレート化合物は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
前記光硬化性接着剤中の水酸基を有しない(メタ)アクリレート化合物の含有量は、光硬化性接着剤100重量部に対し、20〜90重量部であることが好ましく、35〜80重量部であることがより好ましい。
【0120】
〔光重合開始剤〕
前記光硬化性接着剤は、光重合開始剤を含有することが好ましい。
光重合開始剤としては、特に制限はなく、公知の開始剤を用いることができる。
前記光重合開始剤としては、(a)芳香族ケトン類、(b)オニウム塩化合物、(d)チオ化合物、(e)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(f)ケトオキシムエステル化合物、(g)ボレート化合物、(h)アジニウム化合物、(i)メタロセン化合物、(j)活性エステル化合物、及び、(k)炭素ハロゲン結合を有する化合物が挙げられる。また、これらのラジカル重合開始剤は、特開2008−19408号公報に記載されたものが挙げられる。
また、光重合開始剤の具体例は、例えば、Bruce M. Monroeら著、Chemical Reviews, 93, 435 (1993)や、R. S. Davidson著、Journal of Photochemistry and Biology A: Chemistry, 73, 81 (1993)や、J. P. Faussier "Photoinitiated Polymerization - Theory and Applications": Rapra Review, vol.9, Report, Rapra Technology (1998)や、M. Tsunooka et al., Prog. Polym. Sci., 21, 1 (1996)に多く記載されている。また、有機エレクトロニクス材料研究会編、「イメージング用有機材料」、ぶんしん出版(1993年)、187〜192ページ参照、に化学増幅型フォトレジストに利用される化合物が光重合開始剤として多く記載されている。さらには、F. D. Saeva, Topics in Current Chemistry, 156, 59 (1990)、G. G. Maslak, Topics in Current Chemistry, 168, 1 (1993)、H. B. Shuster et al, J. Am. Chem. Soc., 112, 6329 (1990)、I. D. F. Eaton et al, J. Am. Chem. Soc., 102, 3298 (1980)等に記載されているような、増感剤の電子励起状態との相互作用を経て、酸化的又は還元的に結合解裂を生じる化合物群も、光重合開始剤として知られている。
【0121】
また、光重合開始剤として具体的には、ベンジル、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、2−クロロチオキシサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインオクチルエーテル、ジエトキシアセトフェノン、ベンジルメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ジアセチル、メチルアントラキノン、アセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、アントラキノン、及び、3,3’,4,4’−テトラ(ターシャリーブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン等が例示できる。
前記光重合開始剤は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
前記光硬化性接着剤中の光重合開始剤の含有量は、光硬化性接着剤100重量部に対し、0.1〜20重量部であることが好ましく、0.1〜10重量部であることがより好ましい。
【0122】
本発明のレーザー彫刻型フレキソ印刷版(レリーフ印刷版)原版の製造方法は、前記光硬化性組成物の層に活性放射線を照射して硬化する工程を含むことが好ましい。この場合に、活性放射としては、可視光、紫外光又は電子線が挙げられるが、紫外光が最も好ましい。また、光の照射は、光硬化性組成物層の全面に行うことが好ましい。光による架橋において、記録層の支持体側を裏面とすれば、表面に光を照射するだけでもよいが、支持体が光を透過する透明なフィルムである場合、さらに裏面側からも光を照射することが好ましい。表面側からの照射は、別の支持体を設けたまま行ってもよいし、この別の支持体を剥離した後に行ってもよい。また、光の照射は、公知の光源を用いることができる。
【0123】
(フレキソ印刷版及びその製版方法)
本発明のフレキソ印刷版(レリーフ印刷版)の製版方法は、本発明のレーザー彫刻型レリーフ印刷版原版の製造方法により得られたレーザー彫刻型レリーフ印刷版原版の前記記録層をレーザー彫刻して、レリーフ層を形成する彫刻工程、を含む。
本発明のレリーフ印刷版は、本発明のレーザー彫刻型レリーフ印刷版原版の製造方法により得られたレーザー彫刻型レリーフ印刷版原版の記録層をレーザー彫刻して得られたレリーフ層を有するレリーフ印刷版である。
本発明のレリーフ印刷版は、水性インキを印刷時に好適に使用することができる。
【0124】
<彫刻工程>
本発明のレリーフ印刷版の製版方法は、本発明のレーザー彫刻型レリーフ印刷版原版の製造方法により得られたレーザー彫刻型レリーフ印刷版原版の前記記録層をレーザー彫刻しレリーフ層を形成する彫刻工程を含む。
彫刻工程は、前記記録層をレーザー彫刻してレリーフ層を形成する工程である。具体的には、記録層に対して、所望の画像に対応したレーザー光を照射して彫刻を行うことによりレリーフ層を形成することが好ましい。また、所望の画像のデジタルデータを元にコンピューターでレーザーヘッドを制御し、記録層に対して走査照射する工程が好ましく挙げられる。
この彫刻工程には、赤外線レーザーが好ましく用いられる。赤外線レーザーが照射されると、記録層中の分子が分子振動し、熱が発生する。赤外線レーザーとして炭酸ガスレーザーやYAGレーザーのような高出力のレーザーを用いると、レーザー照射部分に大量の熱が発生し、記録層中の分子は分子切断又はイオン化されて選択的な除去、すなわち、彫刻がなされる。レーザー彫刻の利点は、彫刻深さを任意に設定できるため、構造を3次元的に制御することができる点である。例えば、微細な網点を印刷する部分は、浅く又はショルダーをつけて彫刻することにより、印圧でレリーフが転倒しないようにすることができ、細かい抜き文字を印刷する溝の部分は深く彫刻することにより、溝にインキが埋まりにくくなり、抜き文字つぶれを抑制することが可能となる。
中でも、光熱変換剤の吸収波長に対応した赤外線レーザーで彫刻する場合には、より高感度で記録層の選択的な除去が可能となり、シャープな画像を有するレリーフ層が得られる。
【0125】
彫刻工程に用いられる赤外線レーザーとしては、生産性、コスト等の面から、炭酸ガスレーザー(CO2レーザー)又は半導体レーザーが好ましく、ファイバー付き半導体赤外線レーザー(FC−LD)が特に好ましい。一般に、半導体レーザーは、CO2レーザーに比べレーザー発振が高効率且つ安価で小型化が可能である。また、小型であるためアレイ化が容易である。さらに、ファイバーの処理によりビーム形状を制御できる。
半導体レーザーとしては、波長が700〜1,300nmのものが好ましく、800〜1,200nmのものがより好ましく、860〜1,200nmのものがさらに好ましく、900〜1,100nmのものが特に好ましい。
また、ファイバー付き半導体レーザーは、さらに光ファイバーを取り付けることで効率よくレーザー光を出力できるため、本発明における彫刻工程には有効である。さらに、ファイバーの処理によりビーム形状を制御できる。例えば、ビームプロファイルはトップハット形状とすることができ、安定に版面にエネルギーを与えることができる。半導体レーザーの詳細は、「レーザーハンドブック第2版」レーザー学会編、実用レーザー技術 電子通信学会 等に記載されている。
また、本発明のレリーフ印刷版原版を用いたレリーフ印刷版の製版方法に好適に使用し得るファイバー付き半導体レーザーを備えた製版装置は、特開2009−172658号公報及び特開2009−214334号公報に詳細に記載され、これを本発明に係るレリーフ印刷版の製版に使用することができる。
【0126】
本発明のレリーフ印刷版の製版方法では、彫刻工程に次いで、さらに、必要に応じて下記リンス工程、乾燥工程、及び/又は、後架橋工程を含んでもよい。
リンス工程:彫刻後のレリーフ層表面を、水又は水を主成分とする液体で彫刻表面の彫刻カスをリンスする工程。
乾燥工程:リンスされたレリーフ層を乾燥する工程。
後架橋工程:彫刻後のレリーフ層にエネルギーを付与し、レリーフ層をさらに架橋する工程。
リンスの手段として、水道水で水洗する方法、高圧水をスプレー噴射する方法、感光性樹脂凸版の現像機として公知のバッチ式又は搬送式のブラシ式洗い出し機で、彫刻表面を主に水の存在下でブラシ擦りする方法などが挙げられ、彫刻カスのヌメリがとれない場合は、石鹸や界面活性剤を添加したリンス液を用いてもよい。
彫刻表面をリンスするリンス工程を行った場合、彫刻された記録層を乾燥してリンス液を揮発させる乾燥工程を追加することが好ましい。
上記の後架橋工程を行うことにより、彫刻によって形成されたレリーフをより強固にすることができる。
【0127】
本発明に用いることができるリンス液のpHは9以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましく、11以上であることがさらに好ましい。また、リンス液のpHは14以下であることが好ましく、13以下であることがより好ましく、12.5以下であることがさらに好ましい。上記範囲であると、取り扱いが容易である。
リンス液を上記のpH範囲とするために、適宜、酸及び/又は塩基を用いてpHを調整すればよく、使用する酸及び塩基は特に限定されない。
本発明に用いることができるリンス液は、主成分として水を含有することが好ましい。
また、リンス液は、水以外の溶媒として、アルコール類、アセトン、テトラヒドロフラン等などの水混和性溶媒を含有していてもよい。
【0128】
リンス液は、界面活性剤を含有することが好ましい。
本発明に用いることができる界面活性剤としては、彫刻カスの除去性、及び、レリーフ印刷版への影響を少なくする観点から、カルボキシベタイン化合物、スルホベタイン化合物、ホスホベタイン化合物、アミンオキシド化合物、又は、ホスフィンオキシド化合物等のベタイン化合物(両性界面活性剤)が好ましく挙げられる。なお、本発明において、アミンオキシド化合物のN=O、及び、ホスフィンオキシド化合物のP=Oの構造はそれぞれ、N+−O-、P+−O-と見なすものとする。
また、界面活性剤としては、公知のアニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤等も挙げられる。さらに、フッ素系、シリコーン系のノニオン界面活性剤も同様に使用することができる。
界面活性剤は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
界面活性剤の使用量は、特に限定する必要はないが、リンス液の全重量に対し、0.01〜20重量%であることが好ましく、0.05〜10重量%であることがより好ましい。
【0129】
以上のようにして、レリーフ層を有するレリーフ印刷版が得られる。
レリーフ印刷版が有するレリーフ層の厚さは、耐磨耗性やインキ転移性のような種々の印刷適性を満たす観点からは、0.05mm以上10mm以下が好ましく、より好ましくは0.05mm以上7mm以下、特に好ましくは0.05mm以上3mm以下である。
【0130】
また、レリーフ印刷版が有するレリーフ層のショアA硬度は、50°以上90°以下であることが好ましい。レリーフ層のショアA硬度が50°以上であると、彫刻により形成された微細な網点が凸版印刷機の強い印圧を受けても倒れてつぶれることがなく、正常な印刷ができる。また、レリーフ層のショアA硬度が90°以下であると、印圧がキスタッチのフレキソ印刷でもベタ部での印刷かすれを防止することができる。なお、レリーフ印刷版原版の記録層も上記のショアA硬度を有する。
なお、本明細書におけるショアA硬度は、測定対象の表面に圧子(押針又はインデンタと呼ばれる)を押し込み変形させ、その変形量(押込み深さ)を測定して、数値化するデュロメータ(スプリング式ゴム硬度計)により測定した値である。
本発明のレリーフ印刷版は、フレキソ印刷機による水性インキでの印刷に特に好適であるが、凸版用印刷機による水性インキ、油性インキ及びUVインキ、いずれのインキを用いた場合でも、印刷が可能であり、また、フレキソ印刷機によるUVインキでの印刷も可能である。
【実施例】
【0131】
以下に実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0132】
(実施例1)
熱硬化性組成物の調製及び塗設は以下のようにして実施した。
表1に記載した各成分をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに溶解して固形分濃度が60重量%の熱硬化性組成物A及びBを調製した。
次いでPET基板上に3mm厚のスペーサー(枠)を設置し、水平な状態でこの枠の厚さになるように70℃に保持した上記組成物を流延した。なお、乾燥後の仕上がり膜厚は、1.5mmであった。
表2の第一硬化条件の項に示す酸素濃度及び圧力条件に設定した雰囲気中で、室温(25℃)において保持した後、オーブンの温度を1分あたり5℃の速度で保持温度の100℃まで昇温した後、保持温度の100℃で30分保持した。
その後、表2の第二硬化条件の項に示す酸素濃度及び圧力条件に設定した雰囲気下で、室温(25℃)において保持した後、オーブンの温度を1分あたり5℃の速度で表示した保持温度の100℃まで昇温した後、この保持温度で30分保持した。
【0133】
表1の熱硬化性組成物A及びBの調製に使用した素材の内容は以下の通りである。
・DCP:トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート(成分A1 新中村化学工業(株)製)
・PBZ:パーブチルZ(成分B 日油(株)製)
・カーボンブラック(成分C 一次粒径 20nm)
・PVB:ポリビニルブチラール(成分D デンカブチラール#3000−2、電気化学工業(株)製、Mw=9万)
・SI:スチレンイソプレンブロックコポリマー(成分D Quintac 3421、日本ゼオン(株)製)
・クエン酸トリブチル(可塑剤)(成分F メルク(株))
・TEOS:テトラエトキシシラン(架橋剤)(成分E3 (株)高純度化学研究所)
・DBU:1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(縮合反応触媒)
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(溶媒)
【0134】
(実施例2〜15及び比較例1、2)
実施例1に使用した熱硬化性組成物を、Aのまま、又は必要に応じてBに変更した。さらに、使用オーブン、酸素濃度(容量%)、雰囲気圧力、換気効率及び保持温度のうち少なくとも一つを表2に記載したように変更する以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜15及び比較例1、2を実施した。
また、実施例10及び11は使用オーブン、酸素濃度(容量%)、雰囲気圧力、及び換気効率を表2に記載したように変更し、さらに100℃で保持する時間を1時間に変更し実施した。第二硬化は省略した。
【0135】
熱硬化用オーブンは、イナートガスオーブンINL−45L1(オーブン内径は、450(W)×450(H)×450(D)、光洋サーモシステム(株)製)又は真空乾燥炉CLB−DP(オーブン内径は、450(W)×450(H)×450(D)、(株)ノリタケカンパニーリミテド製)を使用した。
【0136】
酸素濃度及び換気効率の調整は以下の方法で行った。ガスオーブンの給気口に窒素ガスと乾燥空気のラインをつなぎ、それぞれ流量を独立に制御できるようにして、その比率を変化させて酸素濃度を調節した。常温常圧下で所望の酸素濃度になる窒素及び空気比率(ガス流量)に設定した。引き続き、この雰囲気で加熱及び減圧した。このときの酸素濃度はジルコニア方式酸素濃度計LC−450(東レエンジニアリング(株)製)を用いて測定した。また、雰囲気圧力の測定は、ピラニ真空計PG−D5A(佐藤真空(株)製)を用いた。
換気効率は、オーブンの内部容量はいずれも91リットルであるため、常圧においては給気ガスの流量を1分当たり91リットルとすれば換気効率は100%と算出される。所望の換気効率となるよう、給気ガスの流量を調整した。
【0137】
(軟膜層厚みの測定)
得られた熱硬化膜をミクロトームで切り出し、断面を微小硬度計(HMV−1、(株)島津製作所製)にて百μm間隔で、最大荷重30mN、最大押し込み深さ20μmで測定した。熱硬化時に表面(空気)側であった面から50μmを起点に、測定点を100μmずつ深さ方向にずらして硬度測定を行った。軟膜層厚みが150μm以下を実用範囲とみなす。結果を表2に示した。ここで、「軟膜層厚み」とは、測定された硬度が支持体側方向で測定された硬度以下である、表面側からの厚みをいう。即ち、表面側から測定された硬度が、支持体側方向に向かうにつれて上昇して、略一定値に落ち着くまでの、硬度の傾きを持って存在する区間の厚みのことを指す。
【0138】
(PET支持体との接着力)
以下の組成の紫外線(UV)硬化性接着剤を用いた。
2−ヒドロキシプロピルメタクリレート 30重量部
トリメチロールプロパントリメタクリレート 62重量部
1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン 8重量部
【0139】
UV硬化性接着剤層の平均厚みが0.1mmとなるように、厚さ0.25mmのPET支持体をニップローラにて張り合わせ、20秒後にPET支持体側からUV露光機(アイグラフィック社製UV露光機ECS−151U メタルハライドランプ 1,500mJ/cm2 14sec露光)にて上記接着剤を硬化させ、レリーフ印刷版原版をそれぞれ作製した。作製した各レリーフ印刷版原版シートの接着力を以下のように測定した。
得られたレリーフ印刷版原版を3cm幅にカットした後、PET支持体と接着剤層又は接着剤層と熱硬化層との間の一部を剥がした後、テンシロン測定機にて50mm/minの剥離速度で、支持体に対し180°の方向に剥離し、剥離力を測定した。剥離力の最大値を接着力(単位:N/cm)とした。
【0140】
(接着層界面の泣き出し測定)
接着層界面の泣き出しの評価は以下のようにして行った。
泣き出しの少ないことは、残留するラジカル重合性化合物が少ないことを意味する。
硬化膜を2cmの長さに切り出し、断面を光学顕微鏡で50倍の倍率にて観察した。接着層と熱硬化層の界面を2cmにわたって観察し、油滴状の泣き出し物の有無を観察した。観察結果を次のように評価した。
E(Excellent):油滴状の泣き出し物が観察されない
P(Poor):油滴状の泣き出し物が観察される
表2に実施例及び比較例の硬化条件と得られた評価結果をまとめて示した。
【0141】
【表1】

【0142】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(成分A)ラジカル重合性化合物、及び、(成分B)熱ラジカル重合開始剤、を含有する組成物を支持体上に塗設する塗設工程(1)、並びに、
前記組成物を酸素分圧が0.0001気圧以上0.1気圧以下の雰囲気下において熱硬化する硬化工程(2)、を含むことを特徴とする
レーザー彫刻型フレキソ印刷版原版の製造方法。
【請求項2】
前記硬化工程(2)が、塗設して得られた組成物層の少なくとも一部を熱硬化する第一熱硬化工程、及び、前記組成物層の全体をさらに熱硬化する第二熱硬化工程を含有する、請求項1に記載のレーザー彫刻型フレキソ印刷版原版の製造方法。
【請求項3】
硬化工程(2)における前記雰囲気の換気効率が1〜500体積%/分である、請求項1又は2に記載のレーザー彫刻型フレキソ印刷版原版の製造方法。
【請求項4】
硬化工程(2)における加熱温度が60℃以上200℃以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のレーザー彫刻型フレキソ印刷版原版の製造方法。
【請求項5】
前記組成物がさらに(成分C)光熱変換剤を含有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載のレーザー彫刻型フレキソ印刷版原版の製造方法。
【請求項6】
前記組成物がさらに(成分D)バインダーポリマーを含有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載のレーザー彫刻型フレキソ印刷版原版の製造方法。
【請求項7】
前記組成物がさらに(成分E)架橋剤を含有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載のレーザー彫刻型フレキソ印刷版原版の製造方法。
【請求項8】
前記組成物が成分Aとして(成分A1)多官能エチレン性不飽和化合物を含有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載のレーザー彫刻型フレキソ印刷版原版の製造方法。
【請求項9】
成分Eが、(成分E1)多官能イソシアネート化合物、(成分E2)多官能酸無水物、及び(成分E3)ポリアルコキシシラン化合物、よりなる群から選ばれた少なくとも1種である請求項7に記載のレーザー彫刻型フレキソ印刷版原版の製造方法。
【請求項10】
熱硬化した組成物の表面に光硬化性組成物層を設ける工程、
前記光硬化性組成物層上に光透過性の別の支持体を貼り付ける工程、及び、
前記光硬化性組成物層を光硬化する工程、をさらに含む、
請求項1〜9のいずれか1項に記載のレーザー彫刻型フレキソ印刷版原版の製造方法。
【請求項11】
前記組成物が、さらに(成分G)溶媒を含有し、塗設工程(1)において、前記組成物を前記支持体上に塗布する工程、及び、引き続いて、前記溶媒を前記組成物から95重量%以上除去する工程を含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載のレーザー彫刻型フレキソ印刷版原版の製造方法。
【請求項12】
熱硬化する硬化工程(2)として、酸素分圧が0.001気圧以上0.05気圧以下の雰囲気下で、80〜140℃において熱硬化する第一熱硬化工程、及び、引き続いて、1気圧の空気雰囲気下で、70〜110℃において熱硬化する第二熱硬化工程を含む、請求項2〜11のいずれか1項に記載のレーザー彫刻型フレキソ印刷版原版の製造方法。
【請求項13】
前記光硬化性組成物層が、水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物、水酸基を有しない(メタ)アクリレート化合物、及び、光重合開始剤を含有し、エチレン性不飽和基を有しない揮発性有機化合物(VOC)を含有しない、請求項10〜12のいずれか1項に記載のレーザー彫刻型フレキソ印刷版原版の製造方法。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の製造方法で製造されたレーザー彫刻型フレキソ印刷版原版。
【請求項15】
請求項14に記載のフレキソ印刷版原版をレーザー彫刻する工程、及び、
レーザー彫刻した印刷版を水又は水溶液で洗浄する工程、を含むことを特徴とする、
フレキソ印刷版の製版方法。

【公開番号】特開2013−63651(P2013−63651A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−192609(P2012−192609)
【出願日】平成24年8月31日(2012.8.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】