説明

レーザー彫刻用樹脂組成物、レーザー彫刻用フレキソ印刷版原版及びその製造方法、並びに、フレキソ印刷版及びその製版方法

【課題】レリーフ層の強度及び耐刷性に優れたフレキソ印刷版が得られるレーザー彫刻用樹脂組成物、前記フレキソ印刷版用樹脂組成物を用いたフレキソ印刷版原版及びその製造方法、並びに、フレキソ印刷版及びその製版方法を提供すること。
【解決手段】(成分A)エチレン性不飽和モノマー由来の構成単位を有し、エチレン性不飽和基、水酸基及びアルコキシシリル基よりなる群から選ばれる官能基を少なくとも2つ主鎖末端に有する重合体を含有することを特徴とするレーザー彫刻用樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー彫刻用樹脂組成物、レーザー彫刻用フレキソ印刷版原版及びその製造方法、並びに、フレキソ印刷版及びその製版方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レリーフ形成層をレーザーにより直接彫刻し製版する、いわゆる「直彫りCTP方式」が多く提案されている。この方式では、フレキソ原版に直接レーザーを照射し、光熱変換によりレリーフ形成層に熱分解及び揮発を生じさせ、凹部を形成する。直彫りCTP方式は、原画フィルムを用いたレリーフ形成と異なり、自由にレリーフ形状を制御することができる。このため、抜き文字の如き画像を形成する場合、その領域を他の領域よりも深く彫刻する、又は、微細網点画像では、印圧に対する抵抗を考慮し、ショルダーをつけた彫刻をすることなども可能である。この方式に用いられるレーザーは高出力の炭酸ガスレーザーが用いられることが一般的である。炭酸ガスレーザーの場合、全ての有機化合物が照射エネルギーを吸収して熱に変換できる。一方、安価で小型の半導体レーザーが開発されてきているが、これらは可視及び近赤外光であるため、該レーザー光を吸収して熱に変換することが必要となる。
また、引用文献1〜3には、特定の構造を有する樹脂の製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3639859号公報
【特許文献2】特開2008−81738号公報
【特許文献3】特開2005−226051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、レリーフ層の強度及び耐刷性に優れたフレキソ印刷版が得られるレーザー彫刻用樹脂組成物、前記フレキソ印刷版用樹脂組成物を用いたフレキソ印刷版原版及びその製造方法、並びに、フレキソ印刷版及びその製版方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の上記課題は、以下の解決手段<1>、<6>〜<8>、<10>及び<11>により解決された。好ましい実施形態である<2>〜<5>、<9>、<12>及び<13>と共に以下に記載する。
<1>(成分A)エチレン性不飽和モノマー由来の構成単位を有し、エチレン性不飽和基、水酸基及びアルコキシシリル基よりなる群から選ばれる官能基を少なくとも2つ主鎖末端に有する重合体を含有することを特徴とするレーザー彫刻用樹脂組成物、
<2>成分Aが、式(I)で表される重合体である、上記<1>に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物、
【0006】
【化1】

(式(I)中、Qは2価の有機連結基を表し、R1及びR3はそれぞれ独立に、アルキル基を表し、R2及びR4はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、X1及びX2はそれぞれ主鎖末端に位置し、それぞれ独立に、エチレン性不飽和基、水酸基及びアルコキシシリル基よりなる群から選ばれた基を末端に有する有機残基を表し、m及びnはそれぞれ独立に、4〜1,000の整数を表し、波線部分は結合位置を表す。)
【0007】
<3>成分Aが、式(II)で表される重合体である、上記<1>又は<2>に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物、
【0008】
【化2】

(式(II)中、R1及びR3はそれぞれ独立に、アルキル基を表し、R2及びR4はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、Y1及びY2はそれぞれ独立に、エチレン性不飽和基、水酸基及びアルコキシシリル基よりなる群から選ばれた基を末端に有する有機残基を表し、m及びnはそれぞれ独立に、4〜1,000の整数を表し、波線部分は結合位置を表す。)
【0009】
<4>(成分B)架橋剤を更に含有する、上記<1>〜<3>のいずれか1つに記載のレーザー彫刻用樹脂組成物、
<5>(成分C)光熱変換剤を更に含有する、上記<1>〜<4>のいずれか1つに記載のレーザー彫刻用樹脂組成物、
<6>上記<1>〜<5>のいずれか1つに記載のレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を有するレーザー彫刻用フレキソ印刷版原版、
<7>上記<1>〜<5>のいずれか1つに記載のレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を光及び/又は熱により架橋した架橋レリーフ形成層を有するレーザー彫刻用フレキソ印刷版原版、
<8>上記<1>〜<5>のいずれか1つに記載のレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を形成する層形成工程、並びに、前記レリーフ形成層を光及び/又は熱により架橋し、架橋レリーフ形成層を有するフレキソ印刷版原版を得る架橋工程、を含むレーザー彫刻用フレキソ印刷版原版の製造方法、
<9>前記架橋工程が、前記レリーフ形成層を熱により架橋し、架橋レリーフ形成層を有するフレキソ印刷版原版を得る工程である、上記<8>に記載のレーザー彫刻用フレキソ印刷版原版の製造方法、
<10>上記<7>に記載のレーザー彫刻用フレキソ印刷版原版における架橋レリーフ形成層をレーザー彫刻してレリーフ層を形成する彫刻工程、を含むことを特徴とするフレキソ印刷版の製版方法、
<11>上記<10>に記載のフレキソ印刷版の製版方法により製造されたレリーフ層を有するフレキソ印刷版、
<12>前記レリーフ層の厚さが、0.05mm以上10mm以下である、上記<11>に記載のフレキソ印刷版、
<13>前記レリーフ層のショアA硬度が、50°以上90°以下である、上記<11>又は<12>に記載のフレキソ印刷版。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、レリーフ層の強度及び耐刷性に優れたフレキソ印刷版が得られるレーザー彫刻用樹脂組成物、前記フレキソ印刷版用樹脂組成物を用いたフレキソ印刷版原版及びその製造方法、並びに、フレキソ印刷版及びその製版方法を提供することができた。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
なお、本発明において、数値範囲を表す「下限〜上限」の記載は、「下限以上、上限以下」を表し、「上限〜下限」の記載は、「上限以下、下限以上」を表す。すなわち、上限及び下限を含む数値範囲を表す。また、「(成分A)エチレン性不飽和モノマー由来の構成単位を有し、ラジカル重合性基、水酸基、及びアルコキシシリル基よりなる群から選ばれる官能基を少なくとも2つ主鎖末端に有する重合体」等を単に「成分A」等ともいう。
【0012】
(レーザー彫刻用樹脂組成物)
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」ともいう。)は、(成分A)エチレン性不飽和モノマー由来の構成単位を有し、ラジカル重合性基、水酸基及びアルコキシシリル基よりなる群から選ばれる官能基を少なくとも2つ主鎖末端に有する重合体を含有することを特徴とする。
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物は、レーザー彫刻が施されるフレキソ印刷版原版のレリーフ形成層用途以外にも、特に限定なく、他の用途にも広範囲に適用することができる。例えば、以下に詳述する凸状のレリーフ形成をレーザー彫刻により行う印刷版原版のレリーフ形成層のみならず、表面に凹凸や開口部を形成する他の材形、例えば、凹版、孔版、スタンプ等、レーザー彫刻により画像形成される各種印刷版や各種成形体の形成に適用することができる。
中でも、適切な支持体上に設けられるレリーフ形成層の形成に適用することが好ましい態様である。
【0013】
なお、本明細書では、フレキソ印刷版原版の説明に関し、成分Aを含有し、レーザー彫刻に供する画像形成層としての、表面が平坦な層であり、かつ未架橋の架橋性層をレリーフ形成層と称し、前記レリーフ形成層を架橋した層を架橋レリーフ形成層と称し、これをレーザー彫刻して表面に凹凸を形成した層をレリーフ層と称する。
以下、レーザー彫刻用樹脂組成物の構成成分について説明する。
【0014】
(成分A)エチレン性不飽和モノマー由来の構成単位を有し、エチレン性不飽和基、水酸基及びアルコキシシリル基よりなる群から選ばれる官能基を少なくとも2つ主鎖末端に有する重合体
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物は、(成分A)エチレン性不飽和モノマー由来の構成単位を有し、エチレン性不飽和基、水酸基及びアルコキシシリル基よりなる群から選ばれる官能基を少なくとも2つ主鎖末端に有する重合体を含有する。
前記エチレン性不飽和基を有する基としては、好ましくは、エチレン性不飽和結合を有する、炭素数1〜20、より好ましくは、炭素数2〜10の有機基であり、例えば、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド、アリル、ビニル、ビニルエーテル、ビニルエステル等の付加重合性のエチレン性不飽和結合を有する基(「エチレン性不飽和基」とも言う。)を挙げることができる。中でも、好ましくは、(メタ)アクリルオキシ基、(メタ)アクリルアミド基、アリル基、ビニル基、ビニルオキシカルボニル基であり、更に好ましくはアクリルオキシ基、メタクリルオキシ基、アリル基、ビニル基であり、これらの基を選択することによって高弾性率の膜が得られる。
【0015】
前記アルコキシシリル基は、モノアルコキシシリル基であっても、ジアルコキシシリル基であっても、トリアルコキシシリル基であってもよいが、下記式(1)で表される基であることが好ましい。
【0016】
【化3】

(式(1)中、R1〜R3は、それぞれ独立して水素原子、水酸基、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基を表し、少なくとも1つはアルコキシ基である。)
【0017】
式(1)中、R1〜R3は、それぞれ独立して水素原子、水酸基、フッ素原子、塩素原子臭素原子、又はヨー素原子などのハロゲン原子、炭素数1〜30の直鎖構造でも分岐構造でもよいアルキル基、又は、炭素数1〜15の直鎖構造でも分岐構造でもよいアルコキシ基を表し、少なくとも1つはアルコキシ基である。
1〜R3のうちの少なくとも1つは、アルコキシ基である。アルコキシ基としては、炭素数1〜15のアルコキシ基であることが好ましく、炭素数1〜8のアルコキシ基であることがより好ましく、炭素数1〜4のアルコキシ基であることが更に好ましく、エトキシ基又はメトキシ基であることが特に好ましい。
1〜R3のいずれかがハロゲン原子である場合、ハロゲン原子としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が例示されるが、塩素原子又は臭素原子であることが好ましく、塩素原子であることがより好ましい。
1〜R3のいずれかがアルキル基である場合、アルキル基としては炭素数1〜30のアルキル基が好ましく、炭素数1〜12のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜8のアルキル基が更に好ましく、炭素数1〜3のアルキル基であることが特に好ましい。
本発明においては、R1〜R3は、2つがアルコキシ基及び1つがアルキル基である場合、又は、3つがアルコキシ基である場合が好ましい。中でも、3つがアルコキシ基であるトリアルコキシシリル基であることがより好ましい。
【0018】
前記エチレン性不飽和モノマーとは、付加重合性のエチレン性不飽和結合を有する化合物(以下、「重合性化合物」とも言う。)を表す。例えば、置換又は無置換のアルキル(メタ)アクリレート、α,β−不飽和カルボン酸類、スルホンアミド基を有するモノマー、(メタ)アクリルアミド類、アミノスルホニル基を有するモノマー、フッ化アルキル基を含有するモノマー、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、スチレン類、ビニルケトン類、オレフィン類、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール、4−ビニルピリジン等、シアノ基を有するモノマー、アミノ基を有するモノマーなどエチレン性不飽和基とその他の官能基を有する種々の重合性化合物が挙げられる。
以下に、本発明に好適に用いることができるエチレン性不飽和モノマーの具体例を示すが、これらに限定されるものではない。
【0019】
置換又は無置換のアルキルアクリレート:例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸ヘプチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ウンデシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸−2−クロロエチル、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、グリシジルアクリレート等。
【0020】
置換又は無置換のアルキルメタクリレート:例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸ヘプチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ノニル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ウンデシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸−2−クロロエチル、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート等。
【0021】
α,β−不飽和カルボン酸類:例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸等。
スルホンアミド基を有するモノマー:例えば、N−(p−トルエンスルホニル)アクリルアミド、N−(p−トルエンスルホニル)メタクリルアミド等。
(メタ)アクリルアミド類:例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−ヘキシルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−ニトロフェニルアクリルアミド、N−エチル−N−フェニルアクリルアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド等。
【0022】
アミノスルホニル基を有するモノマー:例えば、m−アミノスルホニルフェニルメタクリレート、p−アミノスルホニルフェニルメタクリレート、m−アミノスルホニルフェニルアクリレート、p−アミノフェニルアクリレート、N−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(p−アミノスルホニルフェニル)アクリルアミド等。
フッ化アルキル基を含有するモノマー:例えば、トリフルオロエチルアクリレート、トリフルオロエチルメタクリレート、テトラフルオロプロピルメタクリレート、ヘキサフルオロプロピルメタクリレート、オクタフルオロペンチルアクリレート、オクタフルオロペンチルメタクリレート、ヘプタデカフルオロデシルメタクリレート、N−ブチル−N−(2−アクリロキシエチル)ヘプタデカフルオロオクチルスルホンアミド等。
ビニルエーテル類:例えば、エチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル類。
【0023】
ビニルエステル類:例えば、ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルブチレート、安息香酸ビニル等。
スチレン類:例えば、スチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレン等。
ビニルケトン類:例えば、メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、プロピルビニルケトン、フェニルビニルケトン等。
オレフィン類:例えば、エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレン等。
N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール、4−ビニルピリジン等。
シアノ基を有するモノマー:例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、2−ペンテンニトリル、2−メチル−3−ブテンニトリル、2−シアノエチルアクリレート、o−シアノスチレン、m−シアノスチレン、p−シアノスチレン等。
アミノ基を有するモノマー:例えば、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、ポリブタジエンウレタンアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド等。
【0024】
前記エチレン性不飽和モノマーとしては、置換又は無置換のアルキルアクリレート、置換又は無置換のアルキルメタクリレート、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、スチレン類、オレフィン類が好ましく、無置換のアルキルアクリレート、置換又は無置換のアルキルメタクリレートがより好ましい。上記態様であると、彫刻感度が向上する。
【0025】
成分Aは、分子量分散度(Mw/Mn)が1.6以下であることが好ましく、1.0以上1.6以下であることがより好ましく、1.0以上1.5以下であることが更に好ましい。このように分子量分散度を狭分散範囲とすることで、成分Aの架橋膜は、有効網目のサイズ分布が狭分散化し、外部応力が局所的に集中することなく、良好な破断伸びを示す。
【0026】
このような分散度の小さい樹脂は、例えば、リビングラジカル重合で合成することができる。
リビングラジカル重合開始剤を用いるリビングラジカル重合とは、重合末端の活性が失われることなく維持されるラジカル重合であり、末端が不活性化されたものと活性化されたものが平衡状態にある擬リビング重合も含まれる。リビングラジカル重合の例としては、ポリスルフィドなどの連鎖移動剤を用いるもの、コバルトポルフィリン錯体(J.Am.Chem.Soc.、1994、116、7943)やニトロキシド化合物などのラジカル捕捉剤を用いるもの(Macromolecules、1994、27、7228)、有機ハロゲン化物などを開始剤とし遷移金属錯体を触媒とする原子移動ラジカル重合(特開2002−145972号公報、特開2002−80523号公報、特開2001−261733、特開2000−264914号公報)、チオカルボニルチオ部(RCSS)を成長末端に有するもの(特許第3639859号公報、国際公開第98/01478号、国際公開第98/58974号、国際公開第99/35177号、国際公開第99/31144号、米国特許第6380335号明細書)などが挙げられる。
【0027】
これらのリビングラジカル重合法で得られた樹脂は、開始剤由来の残基を分子鎖末端に有する。この残基は、例えば下記文献にあるように、ラジカル重合開始剤を利用して官能基することができる。
Biomacromolecules 2011、12、247−252、Macromolecules 2005、38、8597−8602、Macromolecules 2010、43、5195−5204、Macromolecules 2011、44、2481−2488、Macromolecules 2011、44、5352−5362、Macromolecules 2011、44、5619−5630、Macromolecules 2010、43、7453−7464、Macromolecules 2011、44、2034−2049。
末端処理はリビングラジカル重合反応終了後、その重合反応終了物に対して行うか、またはいったん生成した重合体を精製した後で重合体末端処理を行うことができる。
使用できるラジカル重合開始剤は、分子鎖末端基処理の条件でラジカルが発生できるものであれば使用できる。ラジカル発生条件としては、熱、光、ガンマ線または電子ビームなどのような高エネルギー放射線が挙げられる。
ラジカル重合開始剤の具体例としては、パーオキシドやアゾ化合物などの開始剤が挙げられる。
この末端処理により、末端に新しいラジカル種、例えば末端処理反応で使用されたラジカル開始剤から由来するラジカル開始剤の断片に置換される。得られた重合体は末端に新しいグループがあり、用途に応じて使用できる。
なお、重合体末端処理は国際公開第02/090397号に記載の方法によっても重合開始剤由来の残基を除去できる。
【0028】
主鎖末端の両端に水酸基を有する重合体の合成方法について以下に説明する。
成分Aの基本骨格は、前述したエチレン性不飽和モノマーが付加重合した重合体であり、公知の重合法により得ることができる。たとえば、特許第3639859号公報の例40に記載の1,4−ビス(2−チオベンゾイルチオプロプ−2−イル)ベンゼンを可逆的付加開裂連鎖移動重合に使用する連鎖移動剤(RAFT剤)として用いたリビング重合により、末端にRAFT剤残基を有するアクリルモノマー由来の構成単位を有するポリマーが得られる。このポリマーの末端のRAFT剤残基を任意のラジカル源(例えば、アゾ系重合開始剤)により末端処理を行うことにより、ポリマーの両末端のRAFT剤残基を他の官能基に置換されたポリマーが得られる。この際、水酸基を有する置換基含有のアゾ系重合開始剤(たとえば、和光純薬工業(株)製のVA−086、VA−080など)を用いると主鎖の両末端に水酸基が置換されたポリマーを得ることができる。
【0029】
主鎖末端の両端にエチレン性不飽和基を有する重合体について以下に説明する。
主鎖末端の両端にエチレン性不飽和基を有する重合体の製造方法は、特に制限はないが、例えば、上記で得られた主鎖の両末端に水酸基を有するポリマーの水酸基と反応する官能基を有しかつエチレン性不飽和基を有する化合物(例えば、不飽和カルボン酸ハロゲン化物、不飽和基を有するイソシアネート化合物、不飽和基を有するエポキシ化合物など)を公知の方法で反応させることにより得ることができる。
【0030】
主鎖末端の両端にアルコキシシリル基を有する重合体について以下に説明する。
主鎖末端の両端にアルコキシシリル基を有する重合体の製造方法としては、特に制限はないが、例えば、特開2008−81738号公報の実施例1に記載の方法に従って、アクリル酸系重合体の両末端にアルケニル基を有する重合体を中間で得て、更にアルコキシランを反応させることにより得ることができる。
【0031】
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物に用いられる成分Aは、式(I)で表される重合体であることが好ましい。
【0032】
【化4】

(式(I)中、Qは2価の有機連結基を表し、R1及びR3はそれぞれ独立に、アルキル基を表し、R2及びR4はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、X1及びX2はそれぞれ主鎖末端に位置し、それぞれ独立に、エチレン性不飽和基、水酸基及びアルコキシシリル基よりなる群から選ばれた基を末端に有する有機残基を表し、m及びnはそれぞれ独立に、4〜1,000の整数を表し、波線部分は結合位置を表す。)
【0033】
式(I)中、Qは2価の有機連結基を表し、置換されていてもよい炭素数1〜30のアルキレン基、置換されていてもよい炭素数6〜30のアリーレン基、又は、これらを2以上組み合わせた基であることが好ましい。置換基としては、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、シアノ基、ビニル基、炭素数1〜10のアルコキシカルボニル基が好ましい。中でも、フェニレン基、フェニレン基を有するアルキレン基、炭素数4〜8のアルキレン基がより好ましい。
式(I)中、R1及びR3はそれぞれ独立に、置換されていてもよいアルキル基を表し、直鎖でも、分岐でも、脂環式でもよい。置換基としては、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、シアノ基、ビニル基、炭素数1〜10のアルコキシカルボニル基が好ましく、炭素数1〜10のアルコキシ基が特に好ましい。中でも、炭素数1〜10のアルキル基、又は、炭素数2〜10のアルコキシアルキル基が好ましく、炭素数2〜10のアルキル基がより好ましく、n−ブチル基が特に好ましい。
式(I)中、R2及びR4はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、水素原子がより好ましい。
式(I)中、X1及びX2はそれぞれ主鎖末端に位置し、それぞれ独立に、エチレン性不飽和基、水酸基及びアルコキシシリル基よりなる群から選ばれた基を末端に有する有機残基を表す。X1及びX2におけるエチレン性不飽和基及びアルコキシシリル基の好ましい態様としてはそれぞれ、前述した好ましい態様と同様である。
中でも、(メタ)アクリルオキシ基、水酸基、ジアルコキシシリル基又はトリアルコキシシリル基を末端に有する炭素数1〜20の1価の有機残基が好ましく、(メタ)アクリルオキシ基、水酸基、ジアルコキシシリル基又はトリアルコキシシリル基を末端に有する炭素数3〜20のアルキルアミノカルボニル基がより好ましい。
式(I)中、m及びnはそれぞれ独立に、4〜1,000の整数を表し、4〜300の整数であることが好ましい。
式(I)中、R1とR3とは同じ基であることが好ましく、また、R2とR4とは同じ基であることが好ましい。また、X1とX2とは同じ基であることが好ましい。
【0034】
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物に用いられる成分Aは、式(II)で表される重合体であることがより好ましい。
【0035】
【化5】

(式(II)中、R1及びR3はそれぞれ独立に、アルキル基を表し、R2及びR4はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、Y1及びY2はそれぞれ独立に、エチレン性不飽和基、水酸基及びアルコキシシリル基よりなる群から選ばれた基を末端に有する有機残基を表し、m及びnはそれぞれ独立に、4〜1,000の整数を表し、波線部分は結合位置を表す。)
【0036】
式(II)中、R1及びR3はそれぞれ独立に、置換されていてもよいアルキル基を表し、直鎖でも、分岐でも、脂環式でもよい。置換基としては、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、シアノ基、ビニル基、炭素数1〜10のアルコキシカルボニル基が好ましく、炭素数1〜10のアルコキシ基が特に好ましい。中でも、炭素数1〜10のアルキル基、又は、炭素数2〜10のアルコキシアルキル基が好ましく、炭素数2〜10のアルキル基がより好ましく、n−ブチル基が特に好ましい。
式(II)中、R2及びR4はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、水素原子がより好ましい。
式(II)中、Y1及びY2はそれぞれ独立に、エチレン性不飽和基、水酸基及びアルコキシシリル基よりなる群から選ばれた基を末端に有する有機残基を表す。X1及びX2におけるエチレン性不飽和基及びアルコキシシリル基の好ましい態様としてはそれぞれ、前述した好ましい態様と同様である。
中でも、(メタ)アクリルオキシ基、水酸基、ジアルコキシシリル基又はトリアルコキシシリル基を有する炭素数1〜20の1価の有機残基が好ましく、(メタ)アクリルオキシ基、ジアルコキシシリル基又はトリアルコキシシリル基を有する炭素数2〜20のアルキレン基がより好ましく、2−ヒドロキシエチル基、2−(メタ)アクリルオキシエチル基、トリス(2−ヒドロキシエチル)メチル基、又は、2−トリアルコキシシリルエチル基であることが好ましく、トリス(2−ヒドロキシエチル)メチル基であることが特に好ましい。
式(II)中、m及びnはそれぞれ独立に、4〜1,000の整数を表し、4〜300の整数であることが好ましい。
式(II)中、R1とR3とは同じ基であることが好ましく、また、R2とR4とは同じ基であることが好ましい。また、Y1とY2とは同じ基であることが好ましい。
【0037】
本発明の樹脂組成物における成分Aは、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
成分Aの数平均分子量Mnは、5,000以上50万以下であることが好ましく、5,000以上30万以下であることが好ましく、15,000以上20万以下であることがより好ましく、3万以上10万以下であることが更に好ましい。上記範囲であると、レリーフ印刷版原版及びレリーフ印刷版の強度に優れ、レリーフ印刷用樹脂組成物からレリーフ形成層を作製する際に粘度が適度であり、レリーフ印刷版原版及びレリーフ印刷版を容易に作製することができる。
なお、本発明における数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定し、分子量既知のポリスチレンで検量し換算した値である。
全固形分中における成分Aの含有量は、特に制限されないが、全固形分に対して、2〜80重量%の範囲であることが好ましく、5〜70重量%の範囲であることがより好ましく、10〜60重量%であることが最も好ましい。なお、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物中における全固形分とは、溶媒等の揮発性成分を除いた量を表す。
【0038】
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物は、成分A以外のバインダーポリマーを含有してもよい。成分A以外のバインダーポリマーとしては、特開2011−136455号公報に記載されている非エラストマーや、特開2010−208326号公報に記載されている不飽和基含有ポリマー等が例示される。
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物は、成分Aをバインダーポリマー(樹脂成分)の主成分として含有することが好ましく、他のバインダーポリマーを含有する場合、成分Aのバインダーポリマー全体に対する含有量は、60重量%以上であることが好ましく、70重量%以上であることがより好ましく、80重量%以上であることが更に好ましい。なお、上限は特に限定されないが、他のバインダーポリマーを含有する場合、99重量%以下であることが好ましく、97重量%以下であることがより好ましく、95重量%以下であることが更に好ましい。
【0039】
(成分B)架橋剤
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物は、(成分B)架橋剤を含有することが好ましい。
本発明において、架橋剤は、成分Aと結合し架橋構造を形成するものでもよく、また、成分B同士が結合し架橋構造を形成するものでもよく、特に限定されない。
なお、(成分B)架橋剤は、成分A以外の化合物である。
【0040】
成分Bは、低分子量化合物であることが好ましく、分子量が100〜5,000であることが好ましく、200〜4,000であることがより好ましく、300以上3,000未満であることが更に好ましく、300以上2,000未満であることが特に好ましい。分子量が上記範囲内であると、得られるレリーフ層が耐刷性に優れる。
レーザー彫刻用樹脂組成物の設計においては、分子量の比較的大きい化合物(成分A)と分子量の比較的小さい化合物(成分B)を組み合わせることは、硬化後に優れた機械的物性を示す組成物を製造するのに効果的である。低分子化合物のみで樹脂組成物を設計すると、硬化物の収縮が大きくなり、硬化に時間がかかるなどの問題が発生する。また、高分子化合物のみで樹脂組成物を設計すると、硬化が進まず、優れた物性を示す硬化物を得ることができない。したがって、本発明においては、分子量の大きな成分Aと分子量の小さな成分Bとを組み合わせて用いることが好ましい。
【0041】
成分Bとしては、(成分B−1)重量平均分子量が5,000未満の重合性不飽和基を有する化合物、(成分B−2)多官能イソシアネート化合物、(成分B−3)重量平均分子量が5,000未満の加水分解性シリル基及び/又はシラノール基を有する化合物が例示される。
以下、それぞれについて説明する。
【0042】
(成分B−1)重量平均分子量が5,000未満の重合性不飽和基を有する化合物
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物は、(成分B−1)重量平均分子量が5,000未満の重合性不飽和基を有する化合物(以下、成分B−1ともいう。)を含有することが好ましい。
成分B−1は、成分Aとの希釈のし易さから数平均分子量は2,000未満が好ましく、低揮発性など取扱いの観点から100以上が好ましい。
本実施の形態において、成分B−1の含有量は特に制限されないが、成分A100重量部に対して、好ましくは20重量部以上300重量部以下であり、より好ましくは50重量部以上250重量部以下である。成分B−1の含有量が20重量部以上であると、樹脂組成物の硬化物であるレリーフ印刷版原版及びレリーフ印刷版が十分な機械的強度が得られる傾向にあり、300重量部以下であると、樹脂組成物の硬化物であるレリーフ印刷版原版及びレリーフ印刷版の硬化収縮が低減される傾向にある。
重合性不飽和基としては、ラジカル重合性不飽和基であることが好ましく、エチレン性不飽和基であることがより好ましく、(メタ)アクリルオキシ基であることが更に好ましい。
【0043】
成分B−1の具体例としては、(メタ)アクリル酸及びその誘導体、並びに、(メタ)アクリルアミド及びその誘導体等が挙げられる。その種類の豊富さ、価格、等の観点から(メタ)アクリル酸及びその誘導体がより好ましい。
該誘導体として、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、シクロアルケン基、ビシクロアルケン基などを有する脂環族化合物、ベンジル基、フェニル基、フェノキシ基、フルオレン基などを有する芳香族化合物、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アミノアルキル基、グリシジル基等を有する化合物、アルキレングリコール、ポリオキシアルキレングリコール、ポリアルキレングリコール、トリメチロールプロパン等の多価アルコールとのエステル化合物などが挙げられる。
【0044】
成分B−1は、1分子中に、少なくとも1つの重合性不飽和基を有し、2〜6個の重合性不飽和結合基を有することがより好ましく、2〜4個の重合性不飽和結合基を有することが更に好ましい。
1分子中の重合性不飽和基の数が上記範囲内であると、成分Aとの架橋性に優れる。
【0045】
成分B−1は、分子内に(メタ)アクリルオキシ基を1つ以上有する化合物であれば特に限定されないが、反応速度と硬化均一性の観点から、1〜10であることが好ましく、1〜8であることがより好ましく、1〜6であることが更に好ましく、2〜4であることが特に好ましい。
【0046】
成分B−1の具体例としては例えば(メタ)アクリル酸及びその誘導体が挙げられる。
前記化合物の誘導体の例としては、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基などの脂環式の骨格を有する(メタ)アクリル酸エステル化合物;ベンジル基、フェニル基、フェノキシ基、フルオレニル基などの芳香族の骨格を有する(メタ)アクリル酸エステル化合物;アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アミノアルキル基、テトラヒドロフルフリル基、アリル基、グリシジル基が結合した(メタ)アクリル酸エステル、アルキレングリコール、ポリオキシアルキレングリコール、(アルキル/アリルオキシ)ポリアルキレングリコールやトリメチロールプロパン等の多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられる。また、窒素原子、硫黄原子等をヘテロ原子として含有した複素芳香族化合物であっても構わない。例えば、印刷版用の感光性樹脂組成物においては、印刷インキの溶媒であるアルコールやエステル等の有機溶媒による膨潤を押さえるために、成分B−1が長鎖脂肪族、脂環式又は芳香族の骨格を有する化合物を含むことが好ましい。なお、前記長鎖脂肪族骨格や、脂環式骨格は、ヘテロ元素を含んでいてもよく、例えば、酸素原子、硫黄原子、窒素原子が例示できる。
【0047】
更に印刷版の反撥弾性を高めるためには、印刷版用感光性樹脂に関する公知の技術知見(例えば、特開平7−239548号公報に記載されているメタクリルモノマーなど)を利用して成分B−1を適宜選択することができる。
本発明の樹脂組成物における成分B−1は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0048】
(成分B−2)多官能イソシアネート化合物
本発明において、成分Bとして(成分B−2)多官能イソシアネート化合物を用いることができる。
多官能イソシアネート化合物としては、イソシアナト基を2以上有する化合物であれば特に制限はないが、イソシアナト基を2つ有するジイソシアネート化合物が好ましく例示できる。
【0049】
ジイソシアネート化合物としては、下記式(5)で表される化合物が好ましい。
OCN−L1−NCO (5)
前記式(5)中、L1は、置換基を有していてもよい2価の脂肪族又は芳香族炭化水素基を表す。必要に応じ、L1は、イソシアネート基と反応しない他の官能基、例えば、エステル、ウレタン、アミド、ウレイド基を有していてもよい。
【0050】
成分B−2としては、脂肪族ジイソシアネート化合物、脂環式ジイソシアネート化合物、芳香脂肪族、芳香族ジイソシアネート化合物が例示できる。
脂肪族ジイソシアネート化合物としては、1,3−トリメチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネ−ト、1,3−ペンタメチレンジイソシアネート、1,5−ペンタメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネ−ト、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、2−メチル−1,5−ペンタメチレンジイソシアネート、3−メチル−1,5−ペンタメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアネートメチルカプロエート、リジンジイソシアネ−ト等を挙げることができる。
【0051】
脂環式ジイソシアネート化合物としては、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート等を挙げることができる。
芳香脂肪族ジイソシアネート化合物としては、1,3−キシリレンジイソシアネ−ト、1,4−キシリレンジイソシアネ−ト、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼン、1,3−ビス(1−イソシアネート−1−メチルエチル)ベンゼン、1,4−ビス(1−イソシアネート−1−メチルエチル)ベンゼン、1,3−ビス(α,α−ジメチルイソシアネートメチル)ベンゼン等を挙げることができる。
【0052】
芳香族ジイソシアネート化合物としては、m−フェニレンジイソシアネ−ト、p−フェニレンジイソシアネ−ト、2,4−トリレンジイソシアネ−ト、2,6−トリレンジイソシアネ−ト、ナフチレン−1,4−ジイソシアネ−ト、1,5−ナフタレンジイソシアネ−ト、4,4’−ジフェニルジイソシアネ−ト、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネ−ト、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネ−ト、4,4’−ジフェニルエ−テルジイソシアネ−ト、2−ニトロジフェニル−4,4’−ジイソシアネ−ト、2,2’−ジフェニルプロパン−4,4’−ジイソシアネ−ト、3,3’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシネ−ト、4,4’−ジフェニルプロパンジイソシアネ−ト、3,3’−ジメトキシジフェニル−4,4’−ジイソシアネ−トなどを挙げることができる。
【0053】
成分B−2としては、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジフェニルメタンジイソシアネートダイマー化合物を含有するジフェニルメタンジイソシアネート、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートのウレトジオン環及びイソシアヌレート環含有変性体が挙げられる。
また、成分B−2は、1種単独、又は、組み合わせて使用することができる。
【0054】
(成分B−3)重量平均分子量が5,000未満の加水分解性シリル基及び/又はシラノール基を有する化合物
本発明における成分Bとしては、(B−3)重量平均分子量が5,000未満の加水分解性シリル基及び/又はシラノール基を有する化合物を用いることができる。
本発明のレリーフ彫刻用樹脂組成物は、(成分B−3)重量平均分子量が5,000未満の加水分解性シリル基及び/又はシラノール基を有する化合物を含有することが好ましい。
成分B−3における「加水分解性シリル基」とは、加水分解性基を含むシリル基のことであり、加水分解性基としては、アルコキシ基、アリールオキシ基、メルカプト基、ハロゲン基、アミド基、アセトキシ基、アミノ基、イソプロペノキシ基等を挙げることができる。シリル基は加水分解してシラノール基となり、シラノール基は脱水縮合してシロキサン結合が生成する。このような加水分解性シリル基又はシラノール基は、下記式(1)で表される基が好ましい。
【0055】
【化6】

【0056】
前記式(1)中、R1〜R3はそれぞれ独立に、アルコキシ基、アリールオキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、アミド基、アセトキシ基、アミノ基、及び、イソプロペノキシ基からなる群より選択される加水分解性基、ヒドロキシ基、水素原子、又は、一価の有機基を表す。ただし、R1〜R3の少なくともいずれか1つは、アルコキシ基、アリールオキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、アミド基、アセトキシ基、アミノ基、及び、イソプロペノキシ基からなる群より選択される加水分解性基、又は、ヒドロキシ基を表す。
1〜R3が一価の有機基を表す場合の好ましい有機基としては、種々の有機溶媒への溶解性を付与できる観点から、炭素数1〜30のアルキル基が挙げられる。
上記式(1)中、ケイ素原子に結合する加水分解性基としては、特にアルコキシ基、ハロゲン原子が好ましい。
アルコキシ基としては、リンス性と耐刷性の観点から炭素数1〜30のアルコキシ基が好ましい。より好ましくは炭素数1〜15のアルコキシ基であり、更に好ましくは炭素数1〜5のアルコキシ基であり、特に好ましくは炭素数1〜3のアルコキシ基である。
また、ハロゲン原子として、F原子、Cl原子、Br原子、I原子が挙げられ、合成のしやすさ及び安定性の観点で、好ましくはCl原子及びBr原子が挙げられ、より好ましくはCl原子である。
【0057】
本発明における成分B−3は、前記式(1)で表される基を少なくとも1つ以上有する化合物であることが好ましく、少なくとも2つ以上有する化合物であることが好ましい。特に加水分解性シリル基を少なくとも2つ以上有する化合物が好ましく用いられる。すなわち、分子内にケイ素原子を2つ以上有する化合物が好ましく用いられる。化合物中に含まれるケイ素原子の数は2以上6以下が好ましく、2又は3が最も好ましい。
上記加水分解性基は1個のケイ素原子に1〜3個の範囲で結合することができ、式(1)中における加水分解性基の総個数は2又は3の範囲であるのが好ましい。特に3つの加水分解性基がケイ素原子に結合していることが好ましい。加水分解性基がケイ素原子に2個以上結合するときは、それらは互いに同一であっても、異なっていてもよい。
【0058】
上記アルコキシ基としては、具体的には、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ベンジルオキシ基などを挙げることができる。アルコキシ基の結合したアルコキシシリル基としては、例えば、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリイソプロポキシシリル基などのトリアルコキシシリル基;ジメトキシメチルシリル基、ジエトキシメチルシリル基などのジメトキシシリル基;メトキシジメチルシリル基、エトキシジメチルシリル基などのモノアルコキシシリル基を挙げることができる。これらの各アルコキシ基を複数個組み合わせて用いてもよいし、異なるアルコキシ基を複数個組み合わせて用いてもよい。
上記アリールオキシ基としては、具体的には、例えば、フェノキシ基などを挙げることができる。アリールオキシ基の結合したアリールオキシシリル基としては、例えば、トリフェノキシシリル基などのトリアリールオキシシリル基を挙げることができる。
【0059】
本発明における成分B−3の好ましい例としては、複数の前記式(1)で表される基が連結基を介して結合している化合物が挙げられ、このような連結基としては、効果の観点からスルフィド基、イミノ基又はウレイレン基を含んで構成される連結基が好ましい。
上記特定構造を有する連結基を含む成分B−3の代表的な合成方法を以下に示す。
【0060】
(スルフィド基を含む連結基を有する加水分解性シリル基及びシラノール基の少なくとも1種を有する化合物の合成法)
スルフィド基を含む連結基を有する成分B−3(以下、適宜、スルフィド連結基含有成分B−3と称する。)の合成法は特には限定されないが、具体的には、例えば、ハロゲン化炭化水素基を有する成分B−3と硫化アルカリの反応、メルカプト基を有する成分B−3とハロゲン化炭化水素の反応、メルカプト基を有する成分B−3とハロゲン化炭化水素基を有する成分Fの反応、ハロゲン化炭化水素基を有する成分B−3とメルカプタン類の反応、エチレン性不飽和二重結合を有する成分B−3とメルカプタン類の反応、エチレン性不飽和二重結合を有する成分B−3とメルカプト基を有する成分B−3の反応、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物とメルカプト基を有する成分B−3の反応、ケトン類とメルカプト基を有する成分B−3の反応、ジアゾニウム塩とメルカプト基を有する成分B−3の反応、メルカプト基を有する成分B−3とオキシラン類との反応、メルカプト基を有する成分B−3とオキシラン基を有する成分B−3の反応、メルカプタン類とオキシラン基を有する成分B−3の反応、及び、メルカプト基を有する成分B−3とアジリジン類との反応等から選択される合成法のいずれかにより合成される。
【0061】
(イミノ基を含む連結基を有する加水分解性シリル基及びシラノール基の少なくとも1種を有する化合物の合成法)
イミノ基を含む連結基を有する加水分解性シリル基及びシラノール基の少なくとも1種を有する化合物(以下、適宜、イミノ連結基含有成分B−3と称する。)の合成法は特には限定されないが、具体的には、例えば、アミノ基を有する成分B−3とハロゲン化炭化水素の反応、アミノ基を有する成分B−3とハロゲン化炭化水素基を有する成分B−3の反応、ハロゲン化炭化水素基を有する成分B−3とアミン類の反応、アミノ基を有する成分B−3とオキシラン類との反応、アミノ基を有する成分B−3とオキシラン基を有する成分B−3の反応、アミン類とオキシラン基を有する成分B−3の反応、アミノ基を有する成分B−3とアジリジン類との反応、エチレン性不飽和二重結合を有する成分B−3とアミン類の反応、エチレン性不飽和二重結合を有する成分B−3とアミノ基を有する成分B−3の反応、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物とアミノ基を有する成分B−3の反応、アセチレン性不飽和三重結合を有する化合物とアミノ基を有する成分B−3の反応、イミン性不飽和二重結合を有する成分B−3と有機アルカリ金属化合物の反応、イミン性不飽和二重結合を有する成分B−3と有機アルカリ土類金属化合物の反応、及び、カルボニル化合物とアミノ基を有する成分B−3の反応等から選択される合成法のいずれかにより合成される。
【0062】
(ウレイレン基を含む連結基を有する加水分解性シリル基及びシラノール基の少なくとも1種を有する化合物の合成法)
ウレイレン基を含む連結基を有する加水分解性シリル基及びシラノール基の少なくとも1種を有する化合物(以下、適宜、ウレイレン連結基含有成分B−3と称する。)の合成法は特には限定されないが、具体的には、例えば、アミノ基を有する成分B−3とイソシアン酸エステル類の反応、アミノ基を有する成分B−3とイソシアン酸エステルを有する成分B−3の反応、及び、アミン類とイソシアン酸エステルを有する成分B−3の反応等から選択される合成法のいずれかにより合成される。
【0063】
本発明における成分B−3としては、シランカップリング剤を用いることが好ましい。
以下、本発明における成分B−3として好適なシランカップリング剤について説明する。
本発明においては、Si原子に、アルコキシ基又はハロゲン基が少なくとも1つ直接結合した官能基をシランカップリング基と呼び、このシランカップリング基を分子中に1つ以上有している化合物をシランカップリング剤と称する。シランカップリング基は、Si原子にアルコキシ基又はハロゲン原子が2つ以上直接結合したものが好ましく、3つ以上直接結合したものが特に好ましい。
本発明の樹脂組成物においては、成分B−3における加水分解性シリル基及びシラノール基の少なくとも1種、好ましくは、シランカップリング剤におけるシランカップリング基が、成分A中の反応性官能基、例えば、水酸基(−OH)であれば、この水酸基とアルコール交換反応を起こし、架橋構造を形成する。その結果、バインダーポリマーの分子同士がシランカップリング剤を介して3次元的に架橋される。
本発明における好ましい態様であるシランカップリング剤においては、Si原子に直接結合している官能基として、アルコキシ基及びハロゲン原子の少なくとも1つ以上の官能基を有することが必須であり、化合物の取り扱いやすさの観点からは、アルコキシ基を有するものが好ましい。
ここで、アルコキシ基としては、リンス性と耐刷性の観点から炭素数1〜30のアルコキシ基が好ましい。より好ましくは炭素数1〜15のアルコキシ基、特に好ましくは炭素数1〜5のアルコキシ基である。
また、ハロゲン原子として、F原子、Cl原子、Br原子、I原子が挙げられ、合成のしやすさ及び安定性の観点で、好ましくはCl原子及びBr原子が挙げられ、より好ましくはCl原子である。
【0064】
本発明におけるシランカップリング剤は、膜の架橋度と柔軟性のバランスを良好に保つ観点で、上記シランカップリング基を分子内に1個以上10個以下含むことが好ましく、より好ましくは1個以上5個以下であり、特に好ましくは2個以上4個以下である。
シランカップリング基が2つ以上ある場合には、シランカップリング基同士が連結基で連結されていることが好ましい。連結基としては、ヘテロ原子や炭化水素などの置換基を有してもよい二価以上の有機基が挙げられ、彫刻感度が高い点ではヘテロ原子(N、S、O)を含む態様が好ましく、特に好ましくはS原子を含む連結基である。
このような観点からは、本発明におけるシランカップリング剤として、アルコキシ基としてメトキシ基又はエトキシ基、中でも、メトキシ基がSi原子に結合したシランカップリング基を分子内に2個有し、かつ、これらシランカップリング基が、ヘテロ原子(特に好ましくはS原子)を含むアルキレン基を介して結合している化合物が好適である。より具体的には、スルフィド基を含む連結基を有するものが好ましい。
また、シランカップリング基同士を連結する連結基の他の好ましい態様として、オキシアルキレン基を有する連結基が挙げられる。連結基がオキシアルキレン基を含むことで、レーザー彫刻後の彫刻カスのリンス性が向上する。オキシアルキレン基としては、好ましくはオキシエチレン基であり、より好ましくは、オキシエチレン基が複数連結されたポリオキシエチレン鎖である。ポリオキシエチレン鎖におけるオキシエチレン基の総数としては、2〜50が好ましく、3〜30がより好ましく、4〜15が特に好ましい。
【0065】
本発明に適用しうるシランカップリング剤の具体例を以下に示す。本発明におけるシランカップリング剤としては、例えば、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、1,4−ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、ビス(トリエトキシシリル)エタン、1,6−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、1,8−ビス(トリエトキシシリル)オクタン、1,2−ビス(トリメトキシシリル)デカン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)アミン、ビス(トリメトキシシリルプロピル)ウレア、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等を挙げることができ、そのほかにも、以下の一般式で示す化合物が好ましいものとして挙げられるが、本発明はこれらの化合物に制限されるものではない。
【0066】
【化7】

【0067】
【化8】

【0068】
【化9】

【0069】
【化10】

【0070】
【化11】

【0071】
前記各式中、Rは以下の構造から選択される部分構造を表す。分子内に複数のR及びR1が存在する場合、これらは互いに同じでも異なっていてもよく、合成適性上は、同一であることが好ましい。なお、Meはメチル基を表し、Etはエチル基を表す。
【0072】
【化12】

【0073】
【化13】

【0074】
前記各式中、Rは以下に示す部分構造を表す。R1は前記したのと同義である。分子内に複数のR及びR1が存在する場合、これらは互いに同じでも異なっていてもよく、合成適性上は、同一であることが好ましい。
【0075】
【化14】

【0076】
成分B−3は、適宜合成して得ることも可能であるが、市販品を用いることがコストの面から好ましい。成分B−3としては、例えば、信越化学工業(株)、東レ・ダウコーニング(株)、モメンティブパフォーマンスマテリアルズ(株)、チッソ(株)等から市販されているシラン製品、シランカップリング剤などの市販品がこれに相当するため、本発明の組成物に、これら市販品を、目的に応じて適宜選択して使用してもよい。
【0077】
本発明におけるシランカップリング剤として、前記化合物の他、1種のシランを用いて得られた部分加水分解縮合物、及び2種以上のシランを用いて得られた部分共加水分解縮合物を用いることができる。以下、これらの化合物を「部分(共)加水分解縮合物」と称することがある。
【0078】
このような部分(共)加水分解縮合物の具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルトリス(メトキシエトキシ)シラン、メチルトリス(メトキシプロポキシ)シラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、へキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、トリルトリメトキシシラン、クロロメチルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、シアノエチルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、メチルエチルジメトキシシラン、メチルプロピルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン等のアルコキシシラン又はアセチルオキシシラン、エトキサリルオキシシラン等のアシロキシシランからなるシラン化合物から選択される1種以上を前駆体として用いて得られた部分(共)加水分解縮合物を挙げることができる。
【0079】
これらの部分(共)加水分解縮合物前駆体としてのシラン化合物の中でも、汎用性、コスト面、膜の相溶性の観点から、ケイ素上の置換基としてメチル基及びフェニル基から選択される置換基を有するシラン化合物であることが好ましく、具体的には、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシランが好ましい前駆体として例示される。
【0080】
この場合、部分(共)加水分解縮合物としては、上記したようなシラン化合物の2量体(シラン化合物2モルに水1モルを作用させてアルコール2モルを脱離させ、ジシロキサン単位としたもの)〜100量体、好ましくは2量体〜50量体、更に好ましくは2量体〜30量体としたものが好適に使用できるし、2種以上のシラン化合物を原料とする部分(共)加水分解縮合物を使用することも可能である。
【0081】
なお、このような部分(共)加水分解縮合物はシリコーンアルコキシオリゴマーとして市販されているものを使用してもよく(例えば、信越化学工業(株)などから市販されている。)、また、常法に基づき、加水分解性シラン化合物に対し当量未満の加水分解水を反応させた後に、アルコール、塩酸等の副生物を除去することによって製造したものを使用してもよい。製造に際しては、前駆体となる原料の加水分解性シラン化合物として、例えば、上記したようなアルコキシシラン類やアシロキシシラン類を使用する場合は、塩酸、硫酸等の酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、トリエチルアミン等のアルカリ性有機物質等を反応触媒として部分加水分解縮合すればよく、クロロシラン類から直接製造する場合には、副生する塩酸を触媒として水及びアルコールを反応させればよい。
【0082】
本発明の樹脂組成物における成分B−3は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の樹脂組成物中に含まれるB−3の含有量は、固形分換算で、0.1重量%〜80重量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは1重量%〜40重量%の範囲であり、最も好ましくは5重量%〜30重量%である。
【0083】
本発明において、成分Bは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
成分Bの樹脂組成物中の含有量は、全固形分に対し、0.1〜80重量%であることが好ましく、1〜60重量%であることがより好ましく、5〜40重量%であることが更に好ましい。成分Bの含有量が上記範囲内であると、破断性と耐刷性に優れたレリーフ形成層が得られる。
【0084】
本発明において、成分Aと成分Bとの好ましい組み合わせとしては、以下の1.〜7.の組み合わせが例示できる。
1.成分A:主鎖末端にエチレン性不飽和基を有する重合体、成分B:(メタ)アクリレート化合物
2.成分A:主鎖末端にエチレン性不飽和基を有する重合体、成分B:シランカップリング剤)
3.成分A:主鎖末端に水酸基を有する重合体、成分B:(メタ)アクリレート化合物
4.成分A:主鎖末端に水酸基を有する重合体、成分B:多官能イソシアネート化合物
5.成分A:主鎖末端に水酸基を有する重合体、成分B:シランカップリング剤
6.成分A:主鎖末端にアルコキシシリル基を有する重合体、成分B:(メタ)アクリレート化合物
7.成分A:主鎖末端にアルコキシシリル基を有する重合体、成分B:シランカップリング剤
本発明において、上記の成分Aと成分Bとの組み合わせの中で、上記1.又は5.の組み合わせが、架橋性に優れた樹脂組成物が得られるので特に好ましい。
【0085】
(メタ)アクリレート化合物及びシランカップリング剤は、架橋剤同士による架橋反応により、レリーフ形成層を硬化させることができる。従って、成分Bが(メタ)アクリレート化合物又はシランカップリング剤である場合には、成分Aと成分Bとの反応性は必ずしも必要ではない。一方、成分Bが多官能イソシアネート化合物である場合、成分Aにイソシアナト基との反応性基が必要となる。上記の4.の態様では、水酸基がイソシアナト基と反応して架橋構造を形成する。
【0086】
成分Aと成分Bの樹脂組成物における含有量の比は、成分A:成分B(重量比)が90:10〜10:90であることが好ましく、80:20〜20:80であることがより好ましく、60:40〜40:80であることが更に好ましい。
以下、成分A及び成分B以外に、本発明の樹脂組成物が含有しうる各種成分について説明する。
【0087】
(成分C)光熱変換剤
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物は、更に、光熱変換剤を含有することが好ましい。すなわち、本発明における光熱変換剤は、レーザーの光を吸収し発熱することで、レーザー彫刻時の硬化物の熱分解を促進すると考えられる。このため、彫刻に用いるレーザー波長の光を吸収する光熱変換剤を選択することが好ましい。
【0088】
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物を用いて製造したレーザー彫刻用フレキソ印刷版原版を、700〜1,300nmの赤外線を発するレーザー(YAGレーザー、半導体レーザー、ファイバーレーザー、面発光レーザー等)を光源としてレーザー彫刻に用いる場合に、光熱変換剤としては、700〜1,300nmに極大吸収波長を有する化合物を用いることが好ましい。
本発明における光熱変換剤としては、種々の染料又は顔料が用いられる。
【0089】
光熱変換剤のうち、染料としては、市販の染料及び例えば「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)等の文献に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、700〜1,300nmに極大吸収波長を有するものが挙げられ、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、ジインモニウム化合物、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体等の染料が好ましく挙げられる。本発明において好ましく用いられる染料としては、ヘプタメチンシアニン色素等のシアニン系色素、ペンタメチンオキソノール色素等のオキソノール系色素、フタロシアニン系色素及び特開2008−63554号公報の段落0124〜0137に記載の染料を挙げることができる。
【0090】
本発明において使用される光熱変換剤のうち、顔料としては、市販の顔料及びカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」CMC出版、1984年刊)に記載されている顔料が利用できる。また、顔料としては、特開2009−178869号公報の段落0122〜0125に記載の顔料が例示できる。
これらの顔料のうち、好ましいものはカーボンブラックである。
【0091】
カーボンブラックは、組成物中における分散性などが安定である限り、ASTMによる分類のほか、用途(例えば、カラー用、ゴム用、乾電池用など)の如何に拘らずいずれも使用可能である。カーボンブラックには、例えば、ファーネスブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、ランプブラック、アセチレンブラックなどが含まれる。なお、カーボンブラックなどの黒色着色剤は、分散を容易にするため、必要に応じて分散剤を用い、予めニトロセルロースやバインダーなどに分散させたカラーチップやカラーペーストとして使用することができ、このようなチップやペーストは市販品として容易に入手できる。また、カーボンブラックとしては、特開2009−178869号公報の段落0130〜0134に記載されたものが例示できる。
【0092】
本発明の樹脂組成物における成分Cは、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
レーザー彫刻用樹脂組成物中おける光熱変換剤の含有量は、その分子固有の分子吸光係数の大きさにより大きく異なるが、該樹脂組成物の固形分全重量に対し、0.01〜30重量%の範囲が好ましく、0.05〜20重量%がより好ましく、0.1〜10重量%が特に好ましい。
【0093】
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物は、無機粒子を含有していてもよい。
無機粒子としては、シリカ粒子、チタニア粒子、多孔質粒子、無孔質粒子等が挙げられる。
【0094】
<シリカ粒子>
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物は、シリカ粒子を含有することが好ましい。
本発明において、前記シリカ粒子は、数平均粒子径が、0.01μm以上10μm以下であることが好ましい。数平均粒子径が上記範囲であればべとつきを低減でき、印刷版原版の表面粗さへの影響が少なく、印刷画像に欠損が生じることなくレーザー彫刻によりパターン形成が可能である。また、シリカ粒子は、多孔質微粒子又は無孔質超微粒子であることが好ましい。
シリカ粒子の数平均粒子径は、0.01μm〜10μmであることが好ましく、0.5μm〜8μmであることがより好ましく、1μm〜5μmであることが更に好ましい。
ここで、粒子の数平均粒子径は、顕微鏡観察により測定した長径の値の平均値をいう。具体的には、顕微鏡の視野に少なくとも50個程度の粒子が入るように倍率を調整し、該粒子の長径を測長する。測長機能を有する顕微鏡を用いることが好ましいが、カメラを用いて撮影した写真を基に寸法を測ってもよい。
【0095】
<多孔質粒子>
多孔質粒子とは、粒子中に細孔容積が0.1ml/g以上の微小細孔を有する粒子、又は、微小な空隙を有する粒子と定義する。多孔質粒子を含有することでレリーフ形成層表面を所望の表面粗さにする際に加工が容易となる。該加工の例として切削、研削や研摩などが挙げられる。多孔質粒子により所望の表面粗さにする際の加工中に生じるカスなどのべとつきが低減し、レリーフ形成層表面を精密に加工することが容易となる。
【0096】
多孔質粒子は、比表面積が10m2/g以上1,500m2/g以下、平均細孔径が1nm以上1,000nm以下、細孔容積が0.1ml/g以上10ml/g以下、吸油量が10ml/100g以上2,000ml/100g以下であることが好ましい。比表面積は−196℃における窒素の吸着等温線からBET式に基づいて求められる。また細孔容積及び平均細孔径の測定には、窒素吸着法を用いる。吸油量の測定は、JIS−K5101にて行う。多孔質粒子の比表面積が上記範囲内であれば、例えば印刷原版にレーザーによる彫刻にて画像部を形成する場合に、除去した分解物を吸収するのに好適である。
多孔質粒子の数平均粒子径は、0.01μm以上10μm以下であることが好ましい。より好ましくは0.5μm以上8μm以下、更に好ましくは1μm以上5μm以下である。数平均粒子径が上記範囲であれば、切削、研削、研磨工程においてべとつきを低減でき、印刷原版の表面粗さへの影響が少なく、印刷画像に欠損が生じることなくレーザー彫刻によりパターン形成が可能である。
【0097】
多孔質粒子の形状は、特に限定するものではなく、球状、扁平状、針状、無定形、又は、表面に突起のある粒子などを使用することができる。特に耐磨耗性の観点からは、少なくとも70%の粒子の真球度が0.5〜1の範囲の球状粒子であることが好ましい。
多孔質粒子の球状度合を規定する指標として、真球度を定義する。本発明における真球度とは、多孔質粒子を投影した場合に投影図形内に完全に入る円の最大値D1の、投影図形が完全に入る円の最小値D2の比(D1/D2)で定義する。真球の場合、真球度は1.0となる。好ましい多孔質粒子の真球度は0.5以上1.0以下、より好ましくは0.7以上1.0以下である。0.5以上であれば、印刷版としての耐磨耗性が良好である。真球度1.0は、真球度の上限値である。多孔質粒子としては、好ましくは70%以上、より好ましくは90%以上の多孔質粒子の真球度が0.5以上である。真球度を測定する方法としては、走査型電子顕微鏡を用いて撮影した写真を基に測定する方法を用いることができる。その際、少なくとも100個以上の粒子がモニター画面に入る倍率において写真撮影を行うことが好ましい。また、写真を基に前記D1及びD2を測定するが、写真をスキャナー等のデジタル化する装置を用いて処理し、その後画像解析ソフトウェアを用いてデータ処理することが好ましい。
【0098】
また、粒子の内部が空洞になっている粒子やシリカスポンジ等の均一な細孔径を有する球状顆粒体などを使用することも可能である。特に限定するものではないが、例えば、多孔質シリカ、メソポーラスシリカ、シリカ−ジルコニア多孔質ゲル、ポーラスアルミナ、多孔質ガラス等を挙げることができる。また、層状粘土化合物のように、層間に数nmから数百nmの空隙が存在するものについては、細孔径を定義できないため、本実施の形態においては層間に存在する空隙の間隔を細孔径と定義する。
更に多孔質粒子の表面をシランカップリンング剤、チタンカップリング剤、その他の有機化合物で被覆し表面改質処理を行い、より親水性化又は疎水性化した粒子を用いることもできる。これらの多孔質粒子は1種類もしくは2種類以上のものを選択できる。
【0099】
<無孔質粒子>
無孔質粒子とは、細孔容積が0.1ml/g未満の粒子と定義する。無孔質粒子の数平均粒子径は、1次粒子を対象とする数平均粒子径であり、10nm以上500nm以下が好ましく、10nm以上100nm以下がより好ましい。この範囲であれば、切削、研削、研磨工程においてべとつきを低減でき、レリーフ印刷版原版の表面粗さへの影響が少なく、印刷画像に欠損が生じることなくレーザー彫刻によりパターン形成が可能である。
【0100】
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物中における無機粒子の含有量は、特に制限されないが、全固形分に対して、1〜30重量%の範囲であることが好ましく、3〜20重量%の範囲であることがより好ましく、5〜15重量%であることが最も好ましい。
無機粒子の含有量が上記範囲内であると、印刷版原版の表面粗さへの影響が少なく、印刷画像に欠損が生じることなくべとつきを低減できるので好ましい。
【0101】
<アルコール交換反応触媒>
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物は、アルコール交換反応触媒を含有することが好ましい。
アルコール交換反応触媒とは、例えば、成分Aにおけるアルコキシシリル基と、ヒドロキシ基との反応を促進しうるものを表し、酸又は塩基触媒、及び、金属錯体触媒が好ましく例示できる。
また、アルコール交換反応触媒は、アルコキシシリル基を有する成分A、及び/又は、成分B−3と併用することが好ましい。
【0102】
アルコール交換反応触媒の種類は特に限定されないが、有機酸又は無機酸類、有機塩基又は無機塩基類、及び、それらの塩が挙げられる。
具体的には、有機酸又は無機酸類としては、塩酸などのハロゲン化水素、硝酸、硫酸、亜硫酸、硫化水素、過塩素酸、過酸化水素、炭酸、蟻酸や酢酸などのカルボン酸、そのRCOOHで表される構造式のRを他元素又は置換基によって置換した置換カルボン酸、ベンゼンスルホン酸などのスルホン酸、リン酸、ヘテロポリ酸、無機固体酸などが挙げられ、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、リン酸、ホスホン酸、酢酸、が好ましく、熱架橋後の膜強度の観点から特に好ましくはメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、リン酸、である。
【0103】
有機塩基又は無機塩基類、及び、それらの塩としては、第三級アミン類及びイミダゾール類、無機塩基、第四級アンモニウム塩類、並びに、第四級ホスホニウム塩類が例示できる。
第三級アミン類及びイミダゾール類としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン類、トリブチルアミン類、トリペンチルアミン類、トリヘキシルアミン類、ジメチルエチルアミン、ジメチルプロピルアミン類、ジメチルブチルアミン類、ジメチルペンチルアミン類、ジメチルヘキシルアミン類、ジエチルプロピルアミン類、ジエチルブチルアミン類、ジエチルペンチルアミン類、ジエチルヘキシルアミン類、ジプロピルブチルアミン類、ジプロピルペンチルアミン類、ジプロピルヘキシルアミン類、ジブチルペンチルアミン類、ジブチルヘキシルアミン類、ジペンチルヘキシルアミン類、メチルジエチルアミン、メチルジプロピルアミン類、メチルジブチルアミン類、メチルジペンチルアミン類、メチルジヘキシルアミン類、エチルジプロピルアミン類、エチルジブチルアミン類、エチルジペンチルアミン類、エチルジヘキシルアミン類、プロピルジブチルアミン類、プロピルジペンチルアミン類、プロピルジヘキシルアミン類、ブチルジペンチルアミン類、ブチルジヘキシルアミン類、ペンチルジヘキシルアミン類、メチルエチルプロピルアミン類、メチルエチルブチルアミン類、メチルエチルヘキシルアミン類、メチルプロピルブチルアミン類、メチルプロピルヘキシルアミン類、エチルプロピルブチルアミン類、エチルブチルペンチルアミン類、エチルブチルヘキシルアミン類、プロピルブチルペンチルアミン類、プロピルブチルヘキシルアミン類、ブチルペンチルヘキシルアミン類、トリビニルアミン、トリアリルアミン、トリブテニルアミン類、トリペンテニルアミン類、トリヘキセニルアミン類、ジメチルビニルアミン、ジメチルアリルアミン、ジメチルブテニルアミン類、ジメチルペンテニルアミン類、ジエチルビニルアミン、ジエチルアリルアミン、ジエチルブテニルアミン類、ジエチルペンテニルアミン類、ジエチルヘキセニルアミン類、ジプロピルビニルアミン類、ジプロピルアリルアミン類、ジプロピルブテニルアミン類、メチルジビニルアミン、メチルジアリルアミン、メチルジブテニルアミン類、エチルジビニルアミン、
【0104】
エチルジアリルアミン、トリシクロペンチルアミン、トリシクロヘキシルアミン、トリシクロオクチルアミン、トリシクロペンテニルアミン、トリシクロヘキセニルアミン、トリシクロペンタジエニルアミン、トリシクロヘキサジエニルアミン類、ジメチルシクロペンチルアミン、ジエチルシクロペンチルアミン、ジプロピルシクロペンチルアミン類、ジブチルシクロペンチルアミン類、ジメチルシクロヘキシルアミン、ジエチルシクロヘキシルアミン、ジプロピルシクロヘキシルアミン類、ジメチルシクロペンテニルアミン類、ジエチルシクロペンテニルアミン類、ジプロピルシクロペンテニルアミン類、ジメチルシクロヘキセニルアミン類、ジエチルシクロヘキセニルアミン類、ジプロピルシクロヘキセニルアミン類、メチルジシクロペンチルアミン、エチルジシクロペンチルアミン、プロピルシクロペンチルアミン類、メチルジシクロヘキシルアミン、エチルジシクロヘキシルアミン、プロピルシクロヘキシルアミン類、メチルジシクロペンテニルアミン類、エチルジシクロペンテニルアミン類、プロピルジシクロペンテニルアミン類、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N,N−ジメチルトルイジン類、N,N−ジメチルナフチルアミン類、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジエチルベンジルアミン、N,N−ジエチルトルイジン類、N,N−ジエチルナフチルアミン類、N,N−ジプロピルアニリン類、N,N−ジプロピルベンジルアミン類、N,N−ジプロピルトルイジン類、N,N−ジプロピルナフチルアミン類、N,N−ジビニルアニリン、N,N−ジアリルアニリン、N,N−ジビニルトルイジン類、N,N−ジアリルアニリン、ジフェニルメチルアミン、ジフェニルエチルアミン、ジフェニルプロピルアミン類、ジベンジルメチルアミン、ジベンジルエチルアミン、ジベンジルシクロヘキシルアミン、ジベンジルビニルアミン、ジベンジルアリルアミン、ジトリルメチルアミン類、ジトリルエチルアミン類、ジトリルシクロヘキシルアミン類、ジトリルビニルアミン類、トリフェニルアミン、トリベンジルアミン、トリ(トリル)アミン類、トリナフチルアミン類、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラエチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルトリレンジアミン類、N,N,N’,N’−テトラエチルトリレンジアミン類、N−メチルピロール、N−メチルピロリジン、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾリン、N,N’−ジメチルピペラジン、N−メチルピペリジン、N−エチルピロール、N−メチルピロリジン、N−エチルイミダゾール、N,N′−ジエチルピペラジン、N−エチルピペリジン、ピリジン、ピリダジン、ピラジン、キノリン、キナゾリン、キヌクリジン、N−メチルピロリドン、N−メチルモルホリン、N−エチルピロリドン、N−エチルモルホリン、N,N−ジメチルアニソール、N,N−ジエチルアニソール、N,N−ジメチルグリシン、N,N−ジエチルグリシン、N,N−ジメチルアラニン、N,N−ジエチルアラニン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジメチルアミノチオフェン、1,1,3,3−テトラメチルグアニジン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ−7−エン、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノナ−5−エン、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、ヘキサメチレンテトラミンなどが挙げられる。
【0105】
熱架橋後の膜強度の観点から、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾリン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ−7−エン、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノナ−5−エン、1,1,3,3−テトラメチルグアニジンが好ましく、特に好ましくは、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ−7−エン、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノナ−5−エンである。
【0106】
無機塩基類としては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属アルコキシド、アルカリ土類金属酸化物が挙げられる。中でも、好ましくはナトリウム−t−ブトキシド、カリウム−t−ブトキシド、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシドであり、より好ましくはナトリウム−t−ブトキシド、カリウム−t−ブトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシドである。
【0107】
第四級アンモニウム塩類としては、テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロマイド、デシルトリメチルアンモニウムクロライド、デシルトリメチルアンモニウムブロマイドなどが挙げられる。中でも、好ましくはテトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムブロマイドであり、より好ましくはテトラエチルアンモニウムブロマイドである。
【0108】
第四級ホスホニウム塩類としては、テトラメチルホスホニウムブロマイド、テトラエチルホスホニウムブロマイド、テトラブチルホスホニウムブロマイド、テトラメチルホスホニウムブロマイド、ベンジルトリメチルホスホニウムクロライド、ベンジルトリメチルホスホニウムブロマイド、デシルトリメチルホスホニウムクロライド、デシルトリメチルホスホニウムブロマイドなどが挙げられる。中でも、好ましくはテトラメチルホスホニウムブロマイド、テトラエチルホスホニウムブロマイド、テトラブチルホスホニウムブロマイドであり、より好ましくはテトラエチルホスホニウムブロマイドである。
【0109】
塩基性化合物と酸性化合物では、塩基性化合物を用いた方が、反応が円滑に進行するので好ましい。
【0110】
アルコール交換反応触媒は、1種のみを用いてもよく、2種以上併用してもよい。含有量は、特に限定はなく、用いる加水分解性シリル基及び/又はシラノール基を有する化合物等の特性に応じて適宜選択すればよい。
【0111】
<ラジカル重合開始剤>
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物は、ラジカル重合開始剤を含有することが好ましい。
ラジカル重合開始剤は当業者間で公知のものを制限なく使用することができる。
本発明において、好ましいラジカル重合開始剤としては、(a)芳香族ケトン類、(b)オニウム塩化合物、(c)有機過酸化物、(d)チオ化合物、(e)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(f)ケトオキシムエステル化合物、(g)ボレート化合物、(h)アジニウム化合物、(i)メタロセン化合物、(j)活性エステル化合物、(k)炭素ハロゲン結合を有する化合物、(l)アゾ系化合物等が挙げられる。以下に、上記(a)〜(l)の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0112】
本発明においては、彫刻感度と、レリーフ印刷版原版のレリーフ形成層に適用した際にレリーフエッジ形状を良好とするといった観点から、(c)有機過酸化物及び(l)アゾ系化合物がより好ましく、(c)有機過酸化物が特に好ましい。
【0113】
前記(a)芳香族ケトン類、(b)オニウム塩化合物、(d)チオ化合物、(e)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(f)ケトオキシムエステル化合物、(g)ボレート化合物、(h)アジニウム化合物、(i)メタロセン化合物、(j)活性エステル化合物、及び(k)炭素ハロゲン結合を有する化合物としては、特開2008−63554号公報の段落0074〜0118に挙げられている化合物を好ましく用いることができる。
また、(c)有機過酸化物及び(l)アゾ系化合物としては、以下に示す化合物が好ましい。
【0114】
(c)有機過酸化物
本発明に用いることができるラジカル重合開始剤として好ましい(c)有機過酸化物としては、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−アミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ヘキシルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−オクチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(クミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(p−イソプロピルクミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、ジ−t−ブチルジパーオキシイソフタレートなどの過酸化エステル系が好ましい。
【0115】
(l)アゾ系化合物
本発明に用いることができるラジカル重合開始剤として好ましい(l)アゾ系化合物としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビスプロピオニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミドオキシム)、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)等を挙げることができる。
【0116】
なお、本発明においては、前記(c)有機過酸化物が本発明における重合開始剤として、膜(レリーフ形成層)の架橋性の観点から好ましく、更に、予想外の効果として、彫刻感度向上の観点で特に好ましいことを本発明者は見い出した。
【0117】
本発明におけるラジカル重合開始剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用することも可能である。
レーザー彫刻用樹脂組成物中のラジカル重合開始剤の含有量は、固形分全重量に対し0.01〜10重量%が好ましく、0.1〜3重量%がより好ましい。ラジカル重合開始剤の含有量を0.01重量%以上とすることで、これを添加した効果が得られ、架橋性レリーフ形成層の架橋が速やかに行われる。また、含有量を10重量%以下とすることで他成分が不足することがなく、レリーフ印刷版として使用するに足る耐刷性が得られるためである。
【0118】
<可塑剤>
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物は、可塑剤を含有してもよい。なお、本発明において、成分Aを含有することにより、得られるレリーフ層は柔軟性に優れるため、可塑剤を添加しなくてもよい。
可塑剤は、レーザー彫刻用樹脂組成物により形成された膜を柔軟化する作用を有するものであり、バインダーポリマーに対して相溶性のよいものである必要がある。
可塑剤としては、例えばジオクチルフタレート、ジドデシルフタレート、アジピン酸ビスブトキシエチル等や、ポリエチレングリコール類、ポリプロピレングリコール(モノオール型やジオール型)、ポリプロピレングリコール(モノオール型やジオール型)等を好ましく用いられる。
これらの中でも、アジピン酸ビスブトキシエチルが特に好ましい。
本発明の樹脂組成物における可塑剤は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
柔軟な膜物性を保つ観点から、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物中に可塑剤の含有量は、全固形分濃度の50重量%以下が好ましく、30重量%以下がより好ましく、10重量%以下が更に好ましく、添加しないことが特に好ましい。
【0119】
<溶媒>
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物を調製する際に、溶媒を用いることが好ましい。
溶媒としては、有機溶媒を用いることが好ましい。
非プロトン性有機溶媒の好ましい具体例は、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシドが挙げられる。
プロトン性有機溶媒の好ましい具体例は、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオールが挙げられる。
これらの中でも、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが特に好ましく例示できる。
【0120】
<その他の添加剤>
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物には、公知の各種添加剤を、本発明の効果を阻害しない範囲で適宜配合することができる。例えば、充填剤、ワックス、プロセス油、金属酸化物、オゾン分解防止剤、老化防止剤、重合禁止剤、着色剤等が挙げられ、これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0121】
(レーザー彫刻用フレキソ印刷版原版)
本発明のレーザー彫刻用フレキソ印刷版原版の第1の実施態様は、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を有する。
また、本発明のレーザー彫刻用フレキソ印刷版原版の第2の実施態様は、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を架橋した架橋レリーフ形成層を有する。
本発明において「レーザー彫刻用フレキソ印刷版原版」とは、レーザー彫刻用樹脂組成物からなる架橋性を有するレリーフ形成層が、架橋される前の状態、並びに、光及び/若しくは熱により硬化された状態の両方又はいずれか一方のものをいう。
本発明のレーザー彫刻用フレキソ印刷版原版は、熱架橋した架橋レリーフ形成層を有するものであることが好ましい。
本発明において「レリーフ形成層」とは、架橋される前の状態の層をいい、すなわち、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物からなる層であり、必要に応じ、乾燥が行われていてもよい。
本発明において「架橋レリーフ形成層」とは、前記レリーフ形成層を架橋した層をいう。前記架橋は、光及び/又は熱により行われることが好ましい。また、前記架橋は樹脂組成物が硬化される反応であれば特に限定されず、成分A同士の反応による架橋構造を含む概念であるが、成分Aが他の成分と反応して架橋構造を形成していてもよい。また、重合性化合物を用いる場合には、前記架橋には、重合性化合物の重合による架橋も含まれる。
架橋レリーフ形成層を有する印刷版原版をレーザー彫刻することにより「フレキソ印刷版」が作製される。
また、本発明において「レリーフ層」とは、フレキソ印刷版におけるレーザーにより彫刻された層、すなわち、レーザー彫刻後の前記架橋レリーフ形成層をいう。
【0122】
本発明のレーザー彫刻用フレキソ印刷版原版は、前記のような成分を含有するレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を有する。(架橋)レリーフ形成層は、支持体上に設けられることが好ましい。
レーザー彫刻用フレキソ印刷版原版は、必要により更に、支持体と(架橋)レリーフ形成層との間に接着層を、また、(架橋)レリーフ形成層上にスリップコート層、保護フィルムを有していてもよい。
【0123】
<レリーフ形成層>
レリーフ形成層は、前記本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物からなる層であり、架橋性の層である。
レーザー彫刻用フレキソ印刷版原版によるフレキソ印刷版の作製態様としては、レリーフ形成層を架橋させて架橋レリーフ形成層を有するフレキソ印刷版原版とした後、架橋レリーフ形成層(硬質のレリーフ形成層)をレーザー彫刻することによりレリーフ層を形成してフレキソ印刷版を作製する態様であることが好ましい。レリーフ形成層を架橋することにより、印刷時におけるレリーフ層の摩耗を防ぐことができ、また、レーザー彫刻後にシャープな形状のレリーフ層を有するフレキソ印刷版を得ることができる。
【0124】
レリーフ形成層は、レリーフ形成層用の前記の如き成分を有するレーザー彫刻用樹脂組成物を、シート状又はスリーブ状に成形することで形成することができる。レリーフ形成層は、通常、後述する支持体上に設けられるが、製版、印刷用の装置に備えられたシリンダーなどの部材表面に直接形成したり、そこに配置して固定化したりすることもでき、必ずしも支持体を必要としない。
以下、主としてレリーフ形成層をシート状にした場合を例に挙げて説明する。
【0125】
<支持体>
レーザー彫刻用フレキソ印刷版原版の支持体に使用する素材は特に限定されないが、寸法安定性の高いものが好ましく使用され、例えば、スチール、ステンレス、アルミニウムなどの金属、ポリエステル(例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PAN(ポリアクリロニトリル))やポリ塩化ビニルなどのプラスチック樹脂、スチレン−ブタジエンゴムなどの合成ゴム、ガラスファイバーで補強されたプラスチック樹脂(エポキシ樹脂やフェノール樹脂など)が挙げられる。支持体としては、PETフィルムやスチール基板が好ましく用いられる。支持体の形態は、レリーフ形成層がシート状であるかスリーブ状であるかによって決定される。
【0126】
<接着層>
レリーフ形成層を支持体上に形成する場合、両者の間には、層間の接着力を強化する目的で接着層を設けてもよい。
接着層に用いることができる材料(接着剤)としては、例えば、I.Skeist編、「Handbook of Adhesives」、第2版(1977)に記載のものを用いることができる。
【0127】
<保護フィルム、スリップコート層>
レリーフ形成層表面又は架橋レリーフ形成層表面への傷や凹み防止の目的で、レリーフ形成層表面又は架橋レリーフ形成層表面に保護フィルムを設けてもよい。保護フィルムの厚さは、25〜500μmが好ましく、50〜200μmがより好ましい。保護フィルムは、例えば、PETのようなポリエステル系フィルム、PE(ポリエチレン)やPP(ポリプロピレン)のようなポリオレフィン系フィルムを用いることができる。またフィルムの表面はマット化されていてもよい。保護フィルムは、剥離可能であることが好ましい。
【0128】
保護フィルムが剥離不可能な場合や、逆にレリーフ形成層に接着しにくい場合には、両層間にスリップコート層を設けてもよい。スリップコート層に使用される材料は、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、部分鹸化ポリビニルアルコール、ヒドロシキアルキルセルロース、アルキルセルロース、ポリアミド樹脂など、水に溶解又は分散可能で、粘着性の少ない樹脂を主成分とすることが好ましい。
【0129】
(レーザー彫刻用フレキソ印刷版原版の製造方法)
レーザー彫刻用フレキソ印刷版原版におけるレリーフ形成層の形成は、特に限定されるものではないが、例えば、レーザー彫刻用樹脂組成物を調製し、必要に応じて、このレーザー彫刻用塗布液組成物から溶媒を除去した後に、支持体上に溶融押し出しする方法が挙げられる。あるいは、レーザー彫刻用樹脂組成物を、支持体上に流延し、これをオーブン中で乾燥して樹脂組成物から溶媒を除去する方法でもよい。
中でも、本発明のレーザー彫刻用フレキソ印刷版原版の製造方法は、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を形成する層形成工程、並びに、前記レリーフ形成層を光及び/又は熱により架橋し、架橋レリーフ形成層を有するフレキソ印刷版原版を得る架橋工程、を含む製造方法であることが好ましく、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を形成する層形成工程、並びに、前記レリーフ形成層を熱架橋し、架橋レリーフ形成層を有するフレキソ印刷版原版を得る架橋工程、を含む製造方法であることがより好ましい。
【0130】
その後、必要に応じてレリーフ形成層の上に保護フィルムをラミネートしてもよい。ラミネートは、加熱したカレンダーロールなどで保護フィルムとレリーフ形成層を圧着することや、表面に少量の溶媒を含浸させたレリーフ形成層に保護フィルムを密着させることによって行うことができる。
保護フィルムを用いる場合には、先ず保護フィルム上にレリーフ形成層を積層し、次いで支持体をラミネートする方法を採ってもよい。
接着層を設ける場合は、接着層を塗布した支持体を用いることで対応できる。スリップコート層を設ける場合は、スリップコート層を塗布した保護フィルムを用いることで対応できる。
【0131】
<層形成工程>
本発明のレーザー彫刻用フレキソ印刷版原版の製造方法は、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を形成する層形成工程を含むことが好ましい。
レリーフ形成層の形成方法としては、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物を調製し、必要に応じて、このレーザー彫刻用樹脂組成物から溶媒を除去した後に、支持体上に溶融押し出しする方法や、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物を調製し、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物を支持体上に流延し、これをオーブン中で乾燥して溶媒を除去する方法が好ましく例示できる。
レーザー彫刻用樹脂組成物は、例えば、成分A及び任意成分を適当な溶媒に溶解させることによって製造することができる。
【0132】
レーザー彫刻用フレキソ印刷版原版における(架橋)レリーフ形成層の厚さは、架橋の前後において、0.05mm以上10mm以下が好ましく、0.05mm以上7mm以下がより好ましく、0.05mm以上3mm以下が更に好ましい。
【0133】
<架橋工程>
本発明のレーザー彫刻用フレキソ印刷版原版の製造方法は、前記レリーフ形成層を光及び/又は熱により架橋し、架橋レリーフ形成層を有するフレキソ印刷版原版を得る架橋工程を含む製造方法であることが好ましい。
レリーフ形成層が光重合開始剤を含有する場合には、光重合開始剤のトリガーとなる活性光線をレリーフ形成層に照射することで、レリーフ形成層を架橋することができる。
光は、レリーフ形成層全面に行うことが好ましい。光(「活性光線」ともいう。)としては可視光、紫外光、及び電子線が挙げられるが、紫外光が最も好ましい。レリーフ形成層の支持体等、レリーフ形成層を固定化するための基材側を裏面とすれば、表面に光を照射するだけでもよいが、支持体が活性光線を透過する透明なフィルムであれば、更に裏面からも光を照射することが好ましい。表面からの照射は、保護フィルムが存在する場合、これを設けたまま行ってもよいし、保護フィルムを剥離した後に行ってもよい。酸素の存在下では重合阻害が生じる恐れがあるので、レリーフ形成層に塩化ビニルシートを被せて真空引きした上で、活性光線の照射を行ってもよい。
【0134】
レリーフ形成層が熱重合開始剤を含有する場合には(上記の光重合開始剤が熱重合開始剤にもなり得る。)、レーザー彫刻用フレキソ印刷版原版を加熱することで、レリーフ形成層を架橋することができる(熱により架橋する工程)。加熱手段としては、印刷版原版を熱風オーブンや遠赤外オーブン内で所定時間加熱する方法や、加熱したロールに所定時間接する方法が挙げられる。
【0135】
レリーフ形成層の架橋方法としては、レリーフ形成層を表面から内部まで均一に硬化(架橋)可能という観点で、熱による架橋の方が好ましい。
レリーフ形成層を架橋することで、第1にレーザー彫刻後形成されるレリーフがシャープになり、第2にレーザー彫刻の際に発生する彫刻カスの粘着性が抑制されるという利点がある。未架橋のレリーフ形成層をレーザー彫刻すると、レーザー照射部の周辺に伝播した余熱により、本来意図していない部分が溶融、変形しやすく、シャープなレリーフ層が得られない場合がある。また、素材の一般的な性質として、低分子なものほど固形ではなく液状になり、すなわち粘着性が強くなる傾向がある。レリーフ形成層を彫刻する際に発生する彫刻カスは、低分子の材料を多く用いるほど粘着性が強くなる傾向がある。低分子である重合性化合物は架橋することで高分子になるため、発生する彫刻カスは粘着性が少なくなる傾向がある。
【0136】
前記架橋工程が、光により架橋する工程である場合は、活性光線を照射する装置が比較的高価であるものの、印刷版原版が高温になることがないので、印刷版原版の原材料の制約がほとんどない。
前記架橋工程が、熱により架橋する工程である場合には、特別高価な装置を必要としない利点があるが、印刷版原版が高温になるので、高温で柔軟になる熱可塑性ポリマーは加熱中に変形する可能性がある等、使用する原材料は慎重に選択する必要がある。
熱架橋の際には、熱重合開始剤を加えることが好ましい。熱重合開始剤としては、遊離基重合(free radical polymerization)用の商業的な熱重合開始剤が使用され得る。このような熱重合開始剤としては、例えば、適当な過酸化物、ヒドロペルオキシド又はアゾ基を含む化合物が挙げられる。代表的な加硫剤も架橋用に使用できる。熱架橋性(heat−curable)の樹脂、例えばエポキシ樹脂、を架橋成分として層に加えることにより熱架橋も実施され得る。
【0137】
(フレキソ印刷版及びその製版方法)
本発明のフレキソ印刷版の製版方法は、本発明のレーザー彫刻用フレキソ印刷版原版における架橋レリーフ形成層をレーザー彫刻する彫刻工程を含むことが好ましく、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を形成する層形成工程、前記レリーフ形成層を光及び/又は熱により架橋し、架橋レリーフ形成層を有するフレキソ印刷版原版を得る架橋工程、及び、前記架橋レリーフ形成層を有するフレキソ印刷版原版をレーザー彫刻する彫刻工程、を含むことがより好ましく、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を形成する層形成工程、前記レリーフ形成層を熱架橋し架橋レリーフ形成層を有するフレキソ印刷版原版を得る架橋工程、及び、前記架橋レリーフ形成層を有するフレキソ印刷版原版をレーザー彫刻する彫刻工程、を含むことが更に好ましい。
本発明のフレキソ印刷版は、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物からなる層を架橋及びレーザー彫刻して得られたレリーフ層を有するフレキソ印刷版であり、本発明のフレキソ印刷版の製版方法により製版されたフレキソ印刷版であることが好ましい。
本発明のフレキソ印刷版は、水性インキを印刷時に好適に使用することができる。
本発明のフレキソ印刷版の製版方法における層形成工程及び架橋工程は、前記レーザー彫刻用フレキソ印刷版原版の製造方法における層形成工程及び架橋工程と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0138】
<彫刻工程>
本発明のフレキソ印刷版の製版方法は、前記架橋レリーフ形成層を有するフレキソ印刷版原版をレーザー彫刻する彫刻工程を含むことが好ましい。
彫刻工程は、前記架橋工程で架橋された架橋レリーフ形成層をレーザー彫刻してレリーフ層を形成する工程である。具体的には、架橋された架橋レリーフ形成層に対して、所望の画像に対応したレーザー光を照射して彫刻を行うことによりレリーフ層を形成することが好ましい。また、所望の画像のデジタルデータを元にコンピューターでレーザーヘッドを制御し、架橋レリーフ形成層に対して走査照射する工程が好ましく挙げられる。
この彫刻工程には、赤外線レーザーが好ましく用いられる。赤外線レーザーが照射されると、架橋レリーフ形成層中の分子が分子振動し、熱が発生する。赤外線レーザーとして炭酸ガスレーザーやYAGレーザーのような高出力のレーザーを用いると、レーザー照射部分に大量の熱が発生し、架橋レリーフ形成層中の分子は分子切断又はイオン化されて選択的な除去、すなわち、彫刻がなされる。レーザー彫刻の利点は、彫刻深さを任意に設定できるため、構造を3次元的に制御することができる点である。例えば、微細な網点を印刷する部分は、浅く又はショルダーをつけて彫刻することで、印圧でレリーフが転倒しないようにすることができ、細かい抜き文字を印刷する溝の部分は深く彫刻することで、溝にインキが埋まりにくくなり、抜き文字つぶれを抑制することが可能となる。
中でも、光熱変換剤の吸収波長に対応した赤外線レーザーで彫刻する場合には、より高感度で架橋レリーフ形成層の選択的な除去が可能となり、シャープな画像を有するレリーフ層が得られる。
【0139】
彫刻工程に用いられる赤外線レーザーとしては、生産性、コスト等の面から、炭酸ガスレーザー(CO2レーザー)又は半導体レーザーが好ましい。特に、ファイバー付き半導体赤外線レーザー(FC−LD)が好ましく用いられる。一般に、半導体レーザーは、CO2レーザーに比べレーザー発振が高効率かつ安価で小型化が可能である。また、小型であるためアレイ化が容易である。更に、ファイバーの処理によりビーム形状を制御できる。
半導体レーザーとしては、波長が700〜1,300nmのものが好ましく、800〜1,200nmのものがより好ましく、860〜1,200nmのものが更に好ましく、900〜1,100nmのものが特に好ましい。
【0140】
また、ファイバー付き半導体レーザーは、更に光ファイバーを取り付けることで効率よくレーザー光を出力できるため、本発明における彫刻工程には有効である。更に、ファイバーの処理によりビーム形状を制御できる。例えば、ビームプロファイルはトップハット形状とすることができ、安定に版面にエネルギーを与えることができる。半導体レーザーの詳細は、「レーザーハンドブック第2版」レーザー学会編、実用レーザー技術 電子通信学会等に記載されている。
また、本発明のフレキソ印刷版原版を用いたフレキソ印刷版の製版方法に好適に用いることができるファイバー付き半導体レーザーを備えた製版装置は、特開2009−172658号公報及び特開2009−214334号公報に詳細に記載され、これを本発明に係るフレキソ印刷版の製版に使用することができる。
【0141】
本発明のフレキソ印刷版の製版方法では、彫刻工程に次いで、更に、必要に応じて下記リンス工程、乾燥工程、及び/又は、後架橋工程を含んでもよい。
リンス工程:彫刻後のレリーフ層表面を、水又は水を主成分とする液体で彫刻表面をリンスする工程。
乾燥工程:彫刻されたレリーフ層を乾燥する工程。
後架橋工程:彫刻後のレリーフ層にエネルギーを付与し、レリーフ層を更に架橋する工程。
前記工程を経た後、彫刻表面に彫刻カスが付着しているため、水又は水を主成分とする液体で彫刻表面をリンスして、彫刻カスを洗い流すリンス工程を追加してもよい。リンスの手段として、水道水で水洗する方法、高圧水をスプレー噴射する方法、感光性樹脂凸版の現像機として公知のバッチ式又は搬送式のブラシ式洗い出し機で、彫刻表面を主に水の存在下でブラシ擦りする方法などが挙げられ、彫刻カスのヌメリがとれない場合は、石鹸や界面活性剤を添加したリンス液を用いてもよい。
彫刻表面をリンスするリンス工程を行った場合、彫刻されたレリーフ形成層を乾燥してリンス液を揮発させる乾燥工程を追加することが好ましい。
更に、必要に応じてレリーフ形成層を更に架橋させる後架橋工程を追加してもよい。追加の架橋工程である後架橋工程を行うことにより、彫刻によって形成されたレリーフをより強固にすることができる。
【0142】
本発明に用いることができるリンス液のpHは、9以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましく、11以上であることが更に好ましい。また、リンス液のpHは14以下であることが好ましく、13.5以下であることがより好ましく、13.2以下であることが更に好ましい。上記範囲であると、取り扱いが容易である。
リンス液を上記のpH範囲とするために、適宜、酸及び/又は塩基を用いてpHを調整すればよく、使用する酸及び塩基は特に限定されない。
本発明に用いることができるリンス液は、主成分として水を含有することが好ましい。
また、リンス液は、水以外の溶媒として、アルコール類、アセトン、テトラヒドロフラン等などの水混和性溶媒を含有していてもよい。
【0143】
リンス液は、界面活性剤を含有することが好ましい。
本発明に用いることができる界面活性剤としては、彫刻カスの除去性、及び、フレキソ印刷版への影響を少なくする観点から、カルボキシベタイン化合物、スルホベタイン化合物、ホスホベタイン化合物、アミンオキシド化合物、又は、ホスフィンオキシド化合物等のベタイン化合物(両性界面活性剤)が好ましく挙げられる。
【0144】
また、界面活性剤としては、公知のアニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤等も挙げられる。更に、フッ素系、シリコーン系のノニオン界面活性剤も同様に使用することができる。
界面活性剤は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
界面活性剤の使用量は特に限定する必要はないが、リンス液の全重量に対し、0.01〜20重量%であることが好ましく、0.05〜10重量%であることがより好ましい。
【0145】
以上のようにして、支持体等の任意の基材表面にレリーフ層を有するフレキソ印刷版が得られる。
フレキソ印刷版が有するレリーフ層の厚さは、耐磨耗性やインキ転移性のような種々の印刷適性を満たす観点からは、0.05mm以上10mm以下が好ましく、より好ましくは0.05mm以上7mm以下、特に好ましくは0.05mm以上3mm以下である。
【0146】
また、フレキソ印刷版が有するレリーフ層のショアA硬度は、50°以上90°以下であることが好ましい。レリーフ層のショアA硬度が50°以上であると、彫刻により形成された微細な網点が凸版印刷機の強い印圧を受けても倒れてつぶれることがなく、正常な印刷ができる。また、レリーフ層のショアA硬度が90°以下であると、印圧がキスタッチのフレキソ印刷でもベタ部での印刷かすれを防止することができる。
なお、本明細書におけるショアA硬度は、25℃において、測定対象の表面に圧子(押針又はインデンタと呼ばれる)を押し込み変形させ、その変形量(押込み深さ)を測定して、数値化するデュロメータ(スプリング式ゴム硬度計)により測定した値である。
【0147】
本発明のフレキソ印刷版は、フレキソ印刷機による水性インキでの印刷に特に好適であるが、凸版用印刷機による水性インキ、油性インキ及びUVインキ、いずれのインキを用いた場合でも、印刷が可能であり、また、フレキソ印刷機によるUVインキでの印刷も可能である。本発明のフレキソ印刷版は、リンス性に優れており彫刻カスの残存がなく、かつ、得られたレリーフ層が弾性に優れるため、水性インキ転移性及び耐刷性に優れ、長期間にわたりレリーフ層の塑性変形や耐刷性低下の懸念がなく、印刷が実施できる。
【実施例】
【0148】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、以下の記載における「部」とは、特に断りのない限り「重量部」を示し、「%」は「重量%」を示すものとする。
なお、実施例におけるポリマーの数平均分子量(Mn)は、特に断りのない限りにおいて、GPC法で測定した値を表示している。
【0149】
本発明の樹脂組成物に用いられるポリマー1〜6、及び、比較ポリマーR1〜R3の合成について、以下に説明する。
【0150】
<ポリマー1の合成>
特許第3639859号公報の実施例40に記載の合成方法を用い、RAFT剤として1,4−ビス(2−チオベンゾイルチオプロプ−2−イル)ベンゼン、オレフィン性不飽和モノマーとしてn−ブチルアクリレートを用い合成した。このポリマーを和光純薬工業(株)製のラジカル開始剤VA−086(2,2’−Azobis[2−methyl−N−(2−hydroxyethyl)propionamide])により末端処理を行い、両末端に水酸基を導入した下記ポリマー1(Mn50,000、Mw/Mn1.3)を合成した。
なお、下記ポリマー1におけるAはn−ブチルアクリレートの重合鎖を表す。
【0151】
【化15】

【0152】
<ポリマー2の合成>
実施例1のポリマーに2−メタクリロイロキシエチルイソシアネートを添加し、80℃5時間撹拌し、両末端にメタクロイル基が導入された下記ポリマー2(Mn52,000、Mw/Mn1.4)を合成した。なお、下記ポリマー2におけるAはn−ブチルアクリレートの重合鎖を表す。
【0153】
【化16】

【0154】
<ポリマー3の合成>
実施例1のラジカル開始剤を和光純薬工業(株)製VA−080(2,2’−Azobis{2−methyl−N−[1,1−bis(hydroxymethyl)−2−hydroxyethyl]propionamide})に変更した以外は同様の操作を行い、両末端に水酸基を導入したポリマー3(Mn45,000、Mw/Mn1.5)を合成した。なお、下記ポリマー3におけるAはn−ブチルアクリレートの重合鎖を表す。
【0155】
【化17】

【0156】
<ポリマー4の合成>
実施例1のエチレン性不飽和モノマーを、アクリル酸2−メトキシエチルに変更した以外は同様の操作を行った。これに3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランを添加し、80℃3時間撹拌し、両末端にトリエトキシシランが導入された下記ポリマー4(Mn34,000、Mw/Mn1.5)を合成した。なお、下記ポリマー4におけるAはアクリル酸2−メトキシエチルの重合鎖を表す。
【0157】
【化18】

【0158】
<ポリマー5の合成>
実施例4の末端反応剤を2−メタクリロイロキシエチルイソシアネートに変更した以外は同様の操作を行い、両末端にメタクロイル基が導入さした下記ポリマー5(Mn52,000、Mw/Mn1.6)を合成した。なお、下記ポリマー5におけるAはアクリル酸2−メトキシエチルの重合鎖を表す。
【0159】
【化19】

【0160】
<ポリマー6の合成>
特開2008−81738号公報の実施例1記載と同様な方法により、ポリマー6(Mn26,000、Mw/Mn1.3)を合成した。なお、下記ポリマー6におけるAはアクリル酸n−ブチルの重合鎖を表す。
【0161】
【化20】

【0162】
<比較ポリマーR1の合成>
窒素気流下PGMEA(ポリプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)中、アクリル酸2−メトキシエチル及びアクリル酸2−ヒドロキシエチル(モル比97/3)を、開始剤V−601(和光純薬工業(株)製)にて80℃で重合させ、側鎖に水酸基を有するポリマーR1(Mn55,000、Mw/Mn2.59)を得た。
【0163】
<比較ポリマーR2の合成>
窒素気流下PGMEA中、アクリル酸2−メトキシエチルを開始剤VA−086にて110℃で重合させ、片末端に水酸基を有するポリマーR2(Mn115,000、Mw/Mn2.78)を得た。
【0164】
<比較ポリマーR3の合成>
比較例1の開始剤をVA−086に変更し110℃で重合させた以外は同様に行い、片末端と側鎖に水酸基を導入したポリマーR3(Mn45,000、Mw/Mn2.78)を得た。
【0165】
(実施例1)
1.レーザー彫刻用樹脂組成物の調製
撹拌羽及び冷却管をつけた3つ口フラスコ中に、成分Aのポリマー1を50部、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート47部を入れ、撹拌しながら70℃で120分間加熱しポリマーを溶解させた。その後、溶液を40℃にし、更に(成分B)架橋剤としてS−32を25部、重合開始剤としてt−ブチルパーオキシベンゾエート(商品名:パーブチルZ、日油(株)製)を0.5部、(成分C)光熱変換剤としてケッチェンブラックEC600JD(カーボンブラック、ライオン(株)製)を1部、を添加して30分間撹拌した。この操作により、流動性のある架橋性レリーフ形成層用塗布液1(レーザー彫刻用樹脂組成物1)を得た。
【0166】
2.レーザー彫刻用フレキソ印刷版原版の作製
PET基板上に所定厚のスペーサー(枠)を設置し、上記より得られた架橋性レリーフ形成層用塗布液1をスペーサー(枠)から流出しない程度に静かに流延し、70℃のオーブン中で3時間乾燥させた。その後80℃で3時間、更に100℃で3時間加熱してレリーフ形成層を熱架橋し、厚さがおよそ1mmのレリーフ形成層を設け、レーザー彫刻用フレキソ印刷版原版1を作製した。
【0167】
3.フレキソ印刷版の作製
架橋後のレリーフ形成層(架橋レリーフ形成層)に対し、以下の2種のレーザーにより彫刻した。
炭酸ガスレーザー彫刻機として、レーザー照射による彫刻を、高品位CO2レーザーマーカML−9100シリーズ(KEYENCE(株)製)を用いた。炭酸ガスレーザー彫刻機で、出力:12W、ヘッド速度:200mm/秒、ピッチ設定:2,400DPIの条件で、1cm四方のベタ部分をラスター彫刻した。
半導体レーザー彫刻機として、最大出力8.0Wのファイバー付き半導体レーザー(FC−LD)SDL−6390(JDSU社製、波長915nm)を装備したレーザー記録装置を用いた。半導体レーザー彫刻機でレーザー出力:7.5W、ヘッド速度:409mm/秒、ピッチ設定:2,400DPIの条件で、1cm四方のベタ部分をラスター彫刻した。
フレキソ印刷版が有するレリーフ層の厚さは、およそ1mmであった。
【0168】
(実施例2〜8、比較例1〜3)
1.レーザー彫刻用架橋性樹脂組成物の調製
実施例1で用いた成分A、成分B及び添加剤を、下記表1に示すように代えた以外は、実施例1と同様にして、架橋性レリーフ形成層用塗布液(レーザー彫刻用架橋性樹脂組成物)1〜8及び比較用架橋性レリーフ形成層用塗布液(レーザー彫刻用架橋性樹脂組成物)1〜3を調製した。
【0169】
なお、各実施例及び比較例で使用した成分A、成分B、及び、添加剤の詳細は以下の通りである。
(成分A)
・ポリマー1〜6:上記ポリマー1〜6の合成例を参照
・比較ポリマーR1〜R3:上記比較ポリマーR1〜R3の合成例を参照
(成分B)
・ブレンマーPDE−200:ポリエチレングリコールジメタクリレート((メタ)アクリレート化合物)、日油(株)製
・化合物S−32(シランカップリング剤):下記式で表される化合物(なお、Meはメチル基を表す。)
【0170】
【化21】

【0171】
(添加剤)
・パーブチルZ:重合開始剤、t−ブチルパーオキシベンゾエート、日油(株)製
・DBU:1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン
【0172】
2.レーザー彫刻用フレキソ印刷版原版の作製
実施例1における架橋性レリーフ形成層用塗布液1を、架橋性レリーフ形成層用塗布液2〜8、比較架橋性レリーフ形成層用塗布液1〜3に各々変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例のレーザー彫刻用フレキソ印刷版原版2〜8及び比較例のレーザー彫刻用フレキソ印刷版原版1〜3を得た。
【0173】
3.フレキソ印刷版の作製
実施例のレーザー彫刻用フレキソ印刷版原版2〜8、及び比較例のレーザー彫刻用フレキソ印刷版原版1〜3のレリーフ形成層を、実施例1と同様にして、熱架橋した後、彫刻してレリーフ層を形成することにより、実施例のフレキソ印刷版2〜8、比較例のフレキソ印刷版1〜3を得た。
これらのフレキソ印刷版が有するレリーフ層の厚さは、およそ1mmであった。
【0174】
4.フレキソ印刷版の評価
以下の項目でフレキソ印刷版の性能評価を行い、結果を表1に示す。なお、炭酸ガスレーザーで彫刻を行った場合の評価結果と、半導体レーザーで彫刻を行った場合の評価結果は、同じであった。
【0175】
5.耐刷性
得られたレリーフ印刷版を印刷機(ITM−4型、(株)伊予機械製作所製)にセットし、インクとして、水性インキ アクアSPZ16紅(東洋インキ製造(株)製)を希釈せずに用いて、印刷紙として、フルカラーフォームM 70(日本製紙(株)製、厚さ100μm)を用いて印刷を継続し、ハイライト1〜10%を印刷物で確認した。印刷されない網点が生じたところを刷了とし、刷了時までに印刷した紙の長さ(メートル)を指標とした。数値が大きいほど耐刷性に優れると評価する。
結果は、表1に示した。
【0176】
6.膜の破断強度
各実施例及び比較例のレーザー彫刻用樹脂組成物を硬化させることにより得られる硬化膜(レリーフ層)について、破断強度を次のようにして測定した。
引張り試験機として、(株)島津製作所製Shimadzu AGSH5000を用い、試験片形状はJIS規格記載のダンベル型(横幅の平均:2.25cmとして入力し測定した。)に加工して測定した。測定環境は、温度:約21℃、湿度:60%、引張速度:2mm/分とした。数値が大きいほど、レリーフ層の強度に優れる。
【0177】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(成分A)エチレン性不飽和モノマー由来の構成単位を有し、エチレン性不飽和基、水酸基及びアルコキシシリル基よりなる群から選ばれる官能基を少なくとも2つ主鎖末端に有する重合体を含有することを特徴とする
レーザー彫刻用樹脂組成物。
【請求項2】
成分Aが、式(I)で表される重合体である、請求項1に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
【化1】

(式(I)中、Qは2価の有機連結基を表し、R1及びR3はそれぞれ独立に、アルキル基を表し、R2及びR4はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、X1及びX2はそれぞれ主鎖末端に位置し、それぞれ独立に、エチレン性不飽和基、水酸基及びアルコキシシリル基よりなる群から選ばれた基を末端に有する有機残基を表し、m及びnはそれぞれ独立に、4〜1,000の整数を表し、波線部分は結合位置を表す。)
【請求項3】
成分Aが、式(II)で表される重合体である、請求項1又は2に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
【化2】

(式(II)中、R1及びR3はそれぞれ独立に、アルキル基を表し、R2及びR4はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、Y1及びY2はそれぞれ独立に、エチレン性不飽和基、水酸基及びアルコキシシリル基よりなる群から選ばれた基を末端に有する有機残基を表し、m及びnはそれぞれ独立に、4〜1,000の整数を表し、波線部分は結合位置を表す。)
【請求項4】
(成分B)架橋剤を更に含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
【請求項5】
(成分C)光熱変換剤を更に含有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を有するレーザー彫刻用フレキソ印刷版原版。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を光及び/又は熱により架橋した架橋レリーフ形成層を有するレーザー彫刻用フレキソ印刷版原版。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を形成する層形成工程、並びに、
前記レリーフ形成層を光及び/又は熱により架橋し、架橋レリーフ形成層を有するフレキソ印刷版原版を得る架橋工程、を含む
レーザー彫刻用フレキソ印刷版原版の製造方法。
【請求項9】
前記架橋工程が、前記レリーフ形成層を熱により架橋し、架橋レリーフ形成層を有するフレキソ印刷版原版を得る工程である、請求項8に記載のレーザー彫刻用フレキソ印刷版原版の製造方法。
【請求項10】
請求項7に記載のレーザー彫刻用フレキソ印刷版原版における架橋レリーフ形成層をレーザー彫刻してレリーフ層を形成する彫刻工程、を含むことを特徴とするフレキソ印刷版の製版方法。
【請求項11】
請求項10に記載のフレキソ印刷版の製版方法により製造されたレリーフ層を有するフレキソ印刷版。
【請求項12】
前記レリーフ層の厚さが、0.05mm以上10mm以下である、請求項11に記載のフレキソ印刷版。
【請求項13】
前記レリーフ層のショアA硬度が、50°以上90°以下である、請求項11又は12に記載のフレキソ印刷版。

【公開番号】特開2013−111827(P2013−111827A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259410(P2011−259410)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】