説明

レーザ定着装置

【課題】 レーザ定着時に用紙が急激に加熱されることがなく、トナー像にブリスターやボイドを発生させないレーザ定着装置を提供する。
【解決手段】 レーザ光を照射するレーザ照射手段と、レーザ照射手段に、トナーが転写された用紙を搬送する用紙搬送手段とを有するレーザ定着装置であって、トナーにレーザ光を2回以上照射することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機や各種プリンタなどに組み込まれる定着装置に関し、詳しくは、記録紙上に形成された未定着のトナー像にレーザビームを照射し、発生した熱により記録紙上にトナー像を定着させるレーザ定着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機や各種プリンタ等は、用紙上に転写されたトナー像を定着させるため各種の定着装置を備えている。近年では、消費電力の少ないレーザ定着装置が提案されている。
【0003】
図7は、特許文献1に開示されているレーザ定着装置の模式図である。特許文献1のレーザ定着装置は、2個の半導体レーザにより2本のレーザ光L2、L3を出力する定着用レーザ光源80を備える。定着レーザ光は、光学レンズa1を通り、ポリゴンミラー81により走査され、ミラー82よって反射されて、用紙78のM2上の同じポイントに同時に照射され、用紙上のトナー像が定着される。特許文献1のレーザ定着装置によれば、各々のレーザ光L2、L3を同一領域のトナー像に焦点を重ね合せることで、比較的低出力の半導体レーザであっても、パワー不足を補いトナーを溶かしてレーザ定着を行なうことができる。
【0004】
図8は、特許文献2に開示されているレーザ定着装置の模式図である。特許文献2のレーザ定着装置は、感光体90の転写点後方に、半導体素子を複数個一列状に配列した基板91、92を搬送方向に直交して配置し、基板91、92の下部に配置したセルフォックスレンズアレイ93、94を介して、用紙の横幅に亘ってレーザを線状に集光照射できるようになっている。特許文献2のレーザ定着装置によれば、レーザを走査する光学駆動機構が不要であるため、定着装置自体を簡単な構成にすることができ、レーザビームを同時照射で行なうことによる作業能率の向上も得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−55516号公報(2005年3月3日公開)
【特許文献2】特開昭59−152472号公報(1984年8月31日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1や特許文献2のように、トナー像にレーザ光を照射して定着させる従来のレーザ定着装置では、図9に示す電子顕微鏡写真のように、レーザ定着されたトナーに、ブリスター95と呼ばれるドーム状の膨らみや、ボイド96と呼ばれる欠損部が生じ、画像の品質が劣化するという問題があった。
【0007】
これは、レーザ定着では、レーザ光の照射によりトナー像が短時間に溶融され、トナー像からの熱伝導により用紙も急激に加熱されるので、用紙の繊維内に含まれる水分が水蒸気に相変化して体積が1000倍以上に膨張することによって発生すると考えられる。
【0008】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、レーザ定着時にトナー像にブリスターやボイドを発生させないレーザ定着装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明のレーザ定着装置は、レーザ光を照射するレーザ照射手段と、レーザ照射手段に、トナーが転写された用紙を搬送する用紙搬送手段とを有するレーザ定着装置であって、トナーにレーザ光を2回以上照射することを特徴とする。
【0010】
また、レーザ照射手段は、トナーを定着させる照射エネルギー量を分割して照射することを特徴とする。
【0011】
また、本発明のレーザ定着装置において、レーザ照射手段は、レーザ光をスポット状に集光して、用紙の搬送方向と直交する方向に走査し、用紙搬送手段は、用紙にスポット状のレーザ光が搬送方向で重複するように、用紙を搬送することを特徴とする。
【0012】
また、レーザ光のスポット形は楕円形であり、スポット形の長軸が搬送方向に向いていることを特徴とする。
【0013】
また、レーザ照射手段は、トナーが転写されていない箇所にはレーザ光の照射を行なわないことを特徴とする。
【0014】
また、本発明のレーザ定着装置において、レーザ照射手段は、用紙に線状のレーザ光を間欠的に照射し、用紙搬送手段は、線状のレーザ光が照射されない休止期間に、線状のレーザ光の線幅以下のピッチで用紙を送ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、レーザ定着時にトナー像にブリスターやボイドを発生させないレーザ定着装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施例のレーザ定着装置を含む画像形成装置を示す図である。
【図2】実施例1のレーザ定着装置の構成を示す図である。
【図3】実施例1のレーザ光の照射方法を説明する図である。
【図4】多重照射時の照射エネルギー量を説明する図である。
【図5】実施例2のレーザ定着装置の構成を示す図である。
【図6】実施例2のレーザ光の照射方法を説明する図である。
【図7】従来のレーザ定着装置を示す図である。
【図8】従来のレーザ定着装置を示す図である。
【図9】トナー像に発生したブリスターとボイドを示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づいて本発明を実施するための最良の形態を説明する。なお、本発明の図面において、同一の参照符号は、同一部分又は相当部分を表すものとする。
【実施例1】
【0018】
図1は、実施例1の定着装置を有する画像形成装置の全体の構成を模式的に示した図である。画像形成装置1は、電子写真方式のプリンタであり、ネットワーク上の端末装置から送信される画像データ等に基づいて、所定の用紙に対して多色または単色の画像を形成する。なお、画像形成装置1は複合機または複写機に設けられるプリンタであってもよい。
【0019】
画像形成装置1は、図1に示すように、光学系ユニット2、可視像形成ユニット3a,3b,3c,3d、中間転写ベルト4、2次転写ユニット5、レーザ定着装置6、内部給紙ユニット7および手差し給紙ユニット8を備えている。
【0020】
図1に示すように、可視像形成ユニット3aは感光体ドラム11aを有し、可視像形成ユニット3bは感光体ドラム11bを有し、可視像形成ユニット3cは感光体ドラム11cを有し、可視像形成ユニット3dは感光体ドラム11dを有するものである。
【0021】
光学系ユニット2は、レーザ光源から射出される光が4組の可視像形成ユニット3a,3b,3c,3dの感光体ドラムを露光するように設計されている。詳しくは、光学系ユニット2は、メモリから読出した画像データ、または外部の装置から転送されてきた画像データに応じてレーザ光を出射するレーザ光源、レーザ光を偏向するポリゴンミラー、偏向されたレーザ光を補正するf−θレンズなどから構成されている。そして、入力画像データに応じて、帯電された感光体ドラム11a,11b,11c,11dを露光することにより、その表面に画像データに応じた静電潜像を形成する。
【0022】
可視像形成ユニット3aは、感光体ドラム11aの他、感光体ドラム11aの周囲に配置される現像ユニット12a、帯電ユニット13a、クリーニングユニット14aおよび1次転写ユニット15aを有する。現像ユニット12aにはブラック(B)のトナーが収容されている。
【0023】
帯電ユニット13aは、感光体ドラム11aの表面を帯電するものである。帯電ユニット13aとしては、感光体ドラム11aの表面を一様に、またオゾンを極力発生させることなく帯電するために、ローラ方式のものが採用される。現像ユニット12aは、光学系ユニット2からの照射光によって感光体ドラム11aの表面に形成された静電潜像に対しトナーを供給してトナー像を形成するためのものである。1次転写ユニット15aは、中間転写ベルト4を介して感光体ドラム11aを押圧するように配置されており、感光体ドラム11aの表面のトナー像を中間転写ベルト4に転写するための転写装置である。クリーニングユニット14aは、トナー像を転写した後の感光体ドラム11aの表面に残存しているトナーを除去するためのものである。
【0024】
他の3組の可視像形成ユニット3b,3c,3dは、可視像形成ユニット3aと同様の構成であるため、以下では可視像形成ユニット3b,3c,3dの各構成部材の説明を省略する。但し、各可視像形成ユニットの現像ユニット12b,12c,12dには、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の各色トナーが収容されている。
【0025】
中間転写ベルト4は、用紙搬送方向に沿って並設された可視像形成ユニット3a,3b,3c,3dに沿って、テンションローラ4a,4bにより撓むことなく配置されている。中間転写ベルト4において、テンションローラ4b側には廃トナーボックス17が当接配置され、テンションローラ4a側には2次転写ユニット5が当接配置されている。
【0026】
2次転写ユニット5は、中間転写ベルト4に一時的に転写されたトナー像を用紙に転写するためのものである。
【0027】
レーザ定着装置6は、用紙上の未定着トナー画像にレーザ光を照射して該未定着トナー画像を溶融して用紙上に定着させるレーザ照射手段30と、用紙を搬送する用紙搬送手段40とを備え、レーザ光によりトナー像を用紙に定着するものである。このレーザ定着装置6は、2次転写ユニット5の用紙搬送方向下流側に配置されている。
【0028】
光学系ユニット2の下方には、内部給紙ユニット7が設けられ、装置本体の外側の側面には手差し給紙ユニット8が設けられている。画像形成装置1の上部には排紙トレイ18が設けられている。この排紙トレイ18は、印刷済みの用紙をフェイスダウンで載置するためのものである。
【0029】
また、画像形成装置1には、内部給紙ユニット7の用紙および手差し給紙ユニット8の用紙を2次転写ユニット5やレーザ定着装置6を経由させて排紙トレイ18に案内するための用紙搬送路Fが設けられている。
【0030】
用紙搬送路Fには、給紙ローラ7a・8a、レジストローラ19、2次転写ユニット5、レーザ定着装置6、搬送ローラr等が配置されている。
【0031】
搬送ローラrは、用紙の搬送を促進・補助するための小型のローラであり、用紙搬送路Fに沿って複数設けられている。給紙ローラ7aは、内部給紙ユニット7の端部に備えられ、内部給紙ユニット7から用紙を1枚ずつ用紙搬送路Fに供給する呼び込みローラである。給紙ローラ8aは、手差し給紙ユニット8の近傍に備えられ、手差し給紙ユニット8から用紙を1枚ずつ用紙搬送路Fに供給する呼び込みローラである。
【0032】
レジストローラ19は、用紙搬送路Fにて搬送されている用紙を一旦保持し、中間転写ベルト4上のトナー像の先端と用紙の先端とを合わせるタイミングで用紙を2次転写ユニット5の転写部に搬送するものである。
【0033】
つぎに、用紙搬送について説明する。画像形成装置1には、図1に示すように、上述したように予め用紙を収納する内部給紙ユニット7および少数枚の印字を行う場合等に使用される手差し給紙ユニット8が配置されている。これら両ユニットには各々給紙ローラ7a・8aが配置され、これら給紙ローラ7a・8aによって用紙を1枚ずつ用紙搬送路Fに供給するようになっている。
【0034】
片面印字の場合、内部給紙ユニット7から搬送される用紙は、用紙搬送路F中の搬送ローラrによってレジストローラ19まで搬送され、レジストローラ19により用紙の先端と中間転写ベルト4上の積層されたトナー像の先端とが整合するタイミングで2次転写ユニット5の転写部に搬送される。転写部では中間転写ベルト4に形成されたトナー像が用紙上に転写され、このトナー像はレーザ定着装置6にて用紙上に定着される。その後、用紙は排紙ローラ18aから排紙トレイ18上に排出される。
【0035】
また、手差し給紙ユニット8から搬送される用紙は、複数の搬送ローラrによってレジストローラ19まで搬送される。それ以降の用紙搬送動作は、上述した内部給紙ユニット7から供給される用紙と同様の経過を経て排紙トレイ18に排出される。
【0036】
一方、両面印字の場合、上記のようにして片面印字が終了してレーザ定着装置6を通過した用紙が排紙ローラ18aに搬送され、用紙の後端が排紙ローラ18aにてチャックされる。その後、用紙は、排紙ローラ18aが逆回転することによって反転搬送路F´に導かれ、再びレジストローラ19を経て裏面印字が行われた後に、排紙トレイ18に排出される。
【0037】
つぎに、画像形成装置1における画像形成処理について説明する。可視像形成ユニット3aでは、感光体ドラム11aの表面が帯電ユニット13aにより一様に帯電された後、光学系ユニット2により感光体ドラム11a表面に静電潜像が形成される。その後、現像ユニット12aによって感光体ドラム11a上の静電潜像を現像してトナー像を形成する。感光体ドラム11a上で顕像化されたトナー像は、トナーとは逆極性のバイアス電圧が印加された1次転写ユニット15aにより中間転写ベルト4上に転写される。なお、他の3組の可視像形成ユニット3b,3c,3dにおいても、可視像形成ユニット3aと同様に画像形成が行われ、トナー画像が順次中間転写ベルト4上で重ねられるようになっている。
【0038】
そして、中間転写ベルト4上に形成されたトナー画像は、トナー画像とは逆極性のバイアス電圧が印加された2次転写ユニット5によって用紙に転写される。トナー画像が転写された用紙は、レーザ定着装置6に搬送され、レーザ定着装置6においてレーザ照射により未定着トナー像が加熱されて用紙上に融着された後、排紙ローラ18aにより外部の排紙トレイ18上に排出される。
【0039】
図2は、実施例1のレーザ定着装置6の構成を示す斜視図である。図2を用いて、実施例1のレーザ定着装置6の構成について詳細に説明する。
【0040】
レーザ定着装置6は、図2に示すように、レーザ照射手段30と、用紙搬送手段40とを備えている。また、レーザ定着装置6は、レーザ照射手段30および用紙搬送手段40の動作を制御する制御装置(図示省略)に接続されている。
【0041】
レーザ定着装置6においては、図2に示すように、用紙搬送手段40が用紙Pを搬送方向Fに搬送し、レーザ照射手段30がスポット状のレーザ光Lを搬送されている用紙Pに向けて照射し、走査方向Sに繰り返し走査するようになっている。用紙Pの表面に集光されたレーザスポットLSは、用紙Pの表面に転写されたトナーに順次照射され、トナーが熱溶融して用紙Pに定着する。図2において、符号T1は未定着のトナー、T2は定着したトナーを示すものである。
【0042】
つぎに、レーザ照射手段30について説明する。レーザ照射手段30は、図2に示すように、レーザ素子31、コリメートレンズ32、ホモジナイザー(図示省略)、ポリゴンミラー33、f−θレンズ34を備えている。
【0043】
レーザ素子31は、例えば、光出力は20W、波長808nmの赤外線レーザ光を出射する赤外LDを複数個並べて総出力340Wとして使用している。レーザ光の波長は、赤外光に限定されず、トナーに最も吸収される波長を選択することが好ましい。トナー中に含まれる吸収材料を調整すれば、紫外光を用いることも可能である。赤外LDの他にも、半導体LD、固体LD等を用いることができる。
【0044】
レーザ素子31から出射されるレーザ光Lは、合成ガラス製のコリメートレンズ32を通し平行光にして、集光部の光強度分布をホモジナイザーで整えた後、ポリゴンミラー33に入射される。
【0045】
ポリゴンミラー33は、回転軸と平行に多数のミラー面を備え、ポリゴンミラー33が回転しながらミラー面の角度を変えることにより、レーザ光Lを用紙Pの搬送方向Fと直交する方向Sに繰り返し走査する。また、走査されるレーザ光Lは、f−θレンズ34を通過することで、常に用紙Pの表面に集光するように構成されている。
【0046】
つぎに、用紙搬送手段40について説明する。用紙搬送手段40は、図2に示すように、搬送ベルト41、駆動ローラ42、従動ローラ43、吸着チャージャー44、分離チャージャー45、除電チャージャー46、分離爪47、駆動モータ(図示省略)を備えている。
【0047】
搬送ベルト41は、ベルト厚75(μm)、体積抵抗率1.0×1016(Ω・cm)のポリイミド樹脂からなる無端状のベルト部材であり、駆動ローラ42および従動ローラ43に張架されている。
【0048】
駆動ローラ42は、制御装置が駆動モータを駆動することで、所定の回転速度で回転するようになっている。すなわち、搬送ベルト41は、駆動ローラ42の回転によりT方向に所定の用紙搬送速度Vp(mm/sec)で搬送される。また、搬送ベルト41の周囲には、吸着チャージャー44、分離チャージャー45、除電チャージャー46、分離爪47が設けられている。
【0049】
このように構成された用紙搬送手段40において、2次転写ユニット5から搬送されてきた用紙Pは、搬送ベルト41の表面における、従動ローラ43と吸着チャージャー44との間の領域に送り込まれる。
【0050】
従動ローラ43は導電性材料で構成されて接地されている。搬送ベルト41の表面のうち、従動ローラ43に対向する位置において、吸着チャージャー44によって用紙に電荷を与えることにより、用紙Pと搬送ベルト41とが誘電分極を起こす。これにより、用紙Pは搬送ベルト41の表面に静電吸着される。
【0051】
駆動ローラ42の駆動によって搬送ベルト41はT方向に動いており、これにより、搬送ベルト41の表面に吸着される用紙Pはレーザ光が照射されている領域に搬送されるようになっている。
【0052】
用紙Pはレーザ光が照射されている領域に搬送され、レーザ光が照射されたトナー像は熱溶融して用紙Pに定着される。このレーザ定着の工程については後で詳細に説明する。
【0053】
トナー像の定着が行われた後、用紙Pは、搬送ベルト41に静電吸着された状態で、分離チャージャー45と駆動ローラ42との間に搬送される。駆動ローラ42は導電性材料で構成され接地されている。分離チャージャー45は、搬送ベルト41に載せられている用紙Pの表面を除電するものである。この除電によって、搬送ベルト41と用紙Pとの間の静電吸着力が弱められる。
【0054】
静電吸着力が弱められた後の用紙Pは、駆動ローラ42に沿って大きな曲率で回動することにより、その先端が搬送ベルト41から浮き上がる。さらに、用紙Pは、分離爪47により搬送ベルト41から完全に分離するようになっている。用紙Pが剥離された後の搬送ベルト41は、除電チャージャー36により表面および裏面が除電された後、再び用紙Pの吸着位置へ移動する。
【0055】
図3は、レーザ定着工程を説明するための図であり、用紙Pに照射されるレーザスポットLSと、レーザスポットLSが走査されて形成される照射領域Aを示している。図3に示すように、用紙Pを搬送方向Fに搬送しながら、レーザスポットLSの走査を、例えば、走査S1から走査S4まで4回行なうと、レーザスポットLSの高さSH1で帯状の照射領域A1〜A4が形成される。レーザスポットLSは、例えば、高さSH1が1.7mm、幅SW1が1mmの楕円形であり、レーザスポットLSの長軸が搬送方向に向いている。各照射領域A1〜A4の面積は、それぞれ、レーザスポットLSの高さSH1とレーザスポットLSの走査長の積となる。なお、図3では、各照射領域A1〜A4を区別するため、レーザ照射の開始位置をずらして図示しているが、走査方向でレーザ照射の開始位置と終了位置は揃うようになっている。
【0056】
本実施例のレーザ定着装置6では、図3に示すようにレーザスポットLSの走査速度と用紙Pの搬送速度を調整して、レーザスポットLSの走査毎に形成される照射領域A1〜A4を走査前後で重複させ、複数回レーザ照射される領域(多重照射領域B1〜B3)を形成している。
【0057】
例えば、走査速度は116m/sで、1回の走査周期は3.88msであり、搬送速度は走査周期の間に用紙Pを0.85mmの送り量(F1)で搬送するように設定している。レーザスポットLSの高さSH1が1.7mmに対して、送り量F1が0.85mmなので、多重照射領域B1〜B3はそれぞれの照射領域Aが半分づつ重複したものとなっている。
【0058】
図4は、トナー像が熱溶融し定着するのに要する照射エネルギーEをグラフ化したものである。図4(a)は従来のレーザ定着装置の場合であり、照射領域A1とA2は重複することなく、それぞれの照射領域A1、A2において、レーザ素子31の出力は、1回の照射でトナーが熱溶融し定着する照射エネルギーが設定されている。
【0059】
本発明のレーザ定着装置6では、図4(b)に示すように、各照射領域A1〜A3において、レーザ素子31の1回あたり照射エネルギーが、トナーを定着させるために必要な照射エネルギーの半分となるように設定されており、トナーが形成された領域で2回の照射エネルギーが合計されることにより、トナーが熱溶融して定着するようになっている。なお、最初の照射領域A1において2回目のレーザ照射が行なわれない領域は、トナーが形成されない余白部になるように設定されている。
【0060】
多重照射領域Bでは、各トナー像に対して、1回目のレーザスポットLSの照射によりトナーが半分程度が熱溶融し、2回目の照射により完全に熱溶融することにより、トナー像が用紙Pに定着される。1回目の照射から2回目の照射までの走査周期の間は、トナー像にレーザスポットLSが照射されない休止期間となる。
【0061】
用紙Pはトナー像からの熱伝導により加熱されるが、1回の照射による熱伝導量が小さくなるため、用紙Pから発生する水蒸気量は減少する。また、水蒸気が発生しても、休止期間に用紙Pの繊維の隙間等から用紙外に放出され、トナー像に取り込まれることがないのでブリスターやボイドが発生しない。
【0062】
なお、照射領域の重複は、図4(c)に示すように3回以上であってもよい。重複回数を増やすことにより、1回あたりの照射エネルギーを下げることができ、用紙Pからの水蒸気量をより減少させることができる。また、水蒸気を逃がす休止期間の回数も増えるので、水蒸気がトナー像に取り込まれることがなくなる。
【0063】
また、レーザ照射手段30を制御する制御装置は、画像処理部(図示省略)に接続されている。この画像処理部は、外部から入力した画像データに対して画像処理を施し、画像処理の施された画像データに基づいて露光系ユニットEを制御し、前記画像データに応じた潜像を感光体ドラムに形成するものである。つまり、前記画像データは用紙P上のトナー像の形成されている箇所を示したデータであるともいえる。
【0064】
制御装置は、画像処理部から前記画像データを入力する。そして、制御装置は、用紙Pのトナー像の形成されている箇所に選択的にレーザ光が当てられるように、画像データに基づいてレーザ照射手段30に含まれる半導体レーザ素子31のオンとオフとを制御する。これにより、用紙Pにおいてトナー像の形成されている箇所には必ずレーザ光が当てられ、用紙Pにおいてトナー像の形成されていない箇所にはレーザ光の照射されない範囲が生じることになる。このように、トナー像に合せて半導体レーザ素子31のオンとオフを制御することにより、レーザ定着装置6の消費エネルギーを低減することができる。
【実施例2】
【0065】
次に、別のレーザ照射手段50を用いた、レーザ定着装置について説明する。
【0066】
図5は、実施例2のレーザ照射手段50の構成を示し、図5(a)はレーザ照射手段50を用紙搬送出口側から見た正面図であり、図5(b)はレーザ照射手段50を側面から見た図である。なお、実施例2において、レーザ照射手段50を除く他の構成については実施例1と同じであるため詳細な説明は省略する。
【0067】
実施例2のレーザ照射手段50は、図5(a)および図5(b)に示すように、セラミック基板51とシリコン基板52とを有する構成である。セラミック基板51には表面電極53が形成されている。シリコン基板52には、ドライバ回路54がモノリシックに形成されている。そして、表面電極53とシリコン基板52とがボンディングワイヤによって電気的に接続されている。また、シリコン基板52には、光源であるレーザ素子55がマウントされており、レーザ素子55とドライバ回路54との間が電気的に接続されている。レーザ素子55は、例えば波長808nmの赤外線レーザ光を出射する赤外LDが用いられる。
【0068】
さらに、セラミック基板51にはアルミニウム合金製のヒートシンク56が取り付けられている。
【0069】
レーザ照射手段50は、図5(a)に示すように、シリコン基板52を複数個有しており、各レーザ素子55を用紙搬送方向と直交する方向に沿って一列に配置している。これにより、用紙Pの幅とほぼ同等のレーザ照射幅SW2でレーザ光Lを照射するようになっている。また、図5(b)に示すように、用紙Pの搬送方向Fに、個々のレーザ素子55のレーザスポットLSの高さSH2でレーザ光Lを照射するようになっている。
【0070】
図6は、実施例2のレーザ定着工程を説明するための図である。実施例2のレーザ定着装置は、レーザ照射手段50から間欠的にレーザ光Lを照射し、各レーザ照射領域Cが重複するように、レーザ光Lの照射タイミングと用紙Pの送り量F1が設定されている。
【0071】
図6において、レーザ照射領域C1〜C4は、1回のレーザ光Lの照射により形成される照射領域であり、各レーザ照射領域Cは、レーザ照射幅SW2とレーザ照射高さSH2で規定される線状となっている。なお、図6では、各照射領域C1〜C4を区別するため、各照射領域Cの端部の位置をずらして図示しているが、各照射領域Cの端部の位置は揃うようになっている。
【0072】
実施例2のレーザ定着装置は、間欠的に線状のレーザ光Lを照射し、レーザ照射領域Cが形成される毎に、トナー像の冷却と用紙Pの水蒸気を逃すための休止期間を設けて、用紙Pを搬送方向Fに送り量F1づつ搬送する。この送り量F1は、例えば、線状のレーザ光Lの線幅SH2の半分以下、例えば、0.85mmに設定される。
【0073】
このように、レーザ光Lの照射タイミングと用紙Pの送り量F1を設定することにより、前後のレーザ照射領域Cが重複して多重照射領域Dが形成される。多重照射領域Dにおいて、用紙Pに転写されたトナー像にレーザ光を2回に分けて照射することができ、1回目の照射と2回目の照射の間に休止期間を設けることができる。なお、最初の照射領域C1において2回目のレーザ照射が行なわれない領域は、トナーが形成されない余白部になるように設定されている。
【0074】
実施例1と同様に、トナー像は、1回目のレーザスポットLSの照射により半分程度が熱溶融し、2回目の照射により完全に熱溶融して用紙Pに定着される。このため、用紙Pはトナー像からの熱伝導により加熱されるが、1回あたりの熱伝導量が小さくなり、用紙Pから発生する水蒸気量は減少する。また、水蒸気が発生しても、レーザが照射されない休止期間に用紙Pの繊維の隙間等から抜け出し、トナー像に取り込まれることがないのでブリスターやボイドが発生しない。
【0075】
したがって、実施例2のレーザ定着装置によれば、レーザ照射手段50が、用紙の横幅のほぼ全長に亘って線状のレーザ光を間欠的に照射し、用紙搬送手段40が、レーザ光が照射されない休止期間にレーザ光の線幅以下のピッチで用紙を搬送するので、レーザ光Lをトナー像に少なくとも2回以上に分けて照射することができ、複数のレーザ光Lの照射間に休止期間を設けることができる。このため、トナー像にブリスターやボイドの発生を防止することができる。
【0076】
以上、本発明のレーザ定着装置を各実施例に基づいて詳細に説明したが、今回開示された実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0077】
6 レーザ定着装置
30、50 レーザ照射手段
31 レーザ素子
32 コリメートレンズ
33 ポリゴンミラー
34 f−θレンズ
40 用紙搬送手段
41 搬送ベルト
42 駆動ローラ
43 従動ローラ
44 吸着チャージャー
45 分離チャージャー
46 除電チャージャー
47 分離爪37

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を照射するレーザ照射手段と、
トナーが転写された用紙を搬送する用紙搬送手段とを有するレーザ定着装置であって、
前記トナーに前記レーザ光を2回以上照射することを特徴とするレーザ定着装置。
【請求項2】
前記レーザ照射手段は、前記トナーを定着させるために必要な照射エネルギー量を分割して照射することを特徴とする請求項1記載のレーザ定着装置。
【請求項3】
前記レーザ照射手段は、前記レーザ光をスポット状に集光して、前記用紙の搬送方向と直交する方向に走査し、
前記用紙搬送手段は、前記用紙に前記スポット状のレーザ光が搬送方向で重複するように、前記用紙を搬送することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のレーザ定着装置。
【請求項4】
前記レーザ光のスポット形は楕円形であり、前記スポット形の長軸が搬送方向に向いていることを特徴とする請求項3記載のレーザ定着装置。
【請求項5】
前記レーザ照射手段は、前記トナーが転写されていない箇所には前記レーザ光の照射を行なわないことを特徴とする請求項3または請求項4に記載のレーザ定着装置。
【請求項6】
前記レーザ照射手段は、前記用紙に線状のレーザ光を間欠的に照射し、
前記用紙搬送手段は、前記線状のレーザ光が照射されない休止期間に、前記線状のレーザ光の線幅以下のピッチで前記用紙を搬送することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のレーザ定着装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかのレーザ定着装置を備えた画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−92640(P2013−92640A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−234476(P2011−234476)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】