説明

レーザ点火エンジンのための方法および装置

【課題】内部燃焼エンジン内のレーザ点火のための方法および装置を提供すること。
【解決手段】レーザ放射光は、適合可能な光学を用いて燃焼チャンバ内の点火位置に向けられ、点火位置のポジションは、適合可能な光学を用いてエンジンの動作の間に適合可能に調整される。複数の点火位置が、内部燃焼エンジンのサイクルの間に提供され得る。レーザ放射光の第一のパルスは、適合可能な光学を用いて燃焼チャンバ内の第一の点火位置に向けられ、レーザ放射光の第二のパルスは、適合可能な光学を用いて燃焼チャンバ内の第二の点火位置に向けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2001年5月24日に出願された、Thomas W.Ryan IIIによる「Methods and apparatuses for laser ignited engines」と題する米国仮出願第60/293,556号の利益を主張する。この出願は、本明細書により参考として援用される。
【0002】
(発明の背景)
1.発明の分野
本発明は、概して、内部燃焼エンジンの分野に関する。より詳細には、本発明は、エンジンの動作中の燃焼チャンバ内の1以上の点火位置のポジションを適応可能に調整するためにレーザ点火を用いるための方法および装置に関する。本発明は、さらに、エンジン動作の単一サイクルの間の複数の点火位置を提供するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0003】
2.関連技術の説明
内部燃焼エンジンのための通常の点火装置では、スパーク放電により空気−燃料混合を点火するために、燃焼チャンバの壁表面上に固定された点火プラグに高圧が付与される。しかしながら、この種の点火装置では、いくつかの問題が生じる。例えば、点火プラグは、燃焼チャンバに直接さらされるので、炭素が点火プラグに付着して、点火プラグの放電が困難になる。さらに、点火プラグの電極の熱損失に起因して、放電によって生成されたフレームのトーチまたは基点が冷却され、フレームに達する前に消える。点火は燃焼チャンバの壁表面上またはそのごく近くで発生するので、空気−燃料混合は、それがチャンバの中心部分にあるよりも点火が困難になる。点火されたとしても、フレームが燃焼チャンバの全体のスペースにわたって広がる前にかなりの時間を要する。さらに、点火は壁表面上またはそのごく近くで発生するので、壁表面から燃料が燃焼することに関連付けられる困難性に起因する不十分な混合がしばしば結果として生じる。
【0004】
上記に言及された問題は、従来のキャブレタータイプのエンジンおよびポートインジェクションエンジンだけではなく、新世代のダイレクトインジェクションエンジンにも存在する。このダイレクトインジェクションエンジンは、より乏しい空気/燃料比を必要とするNO放出標準をかなり低減することにある程度起因して発生した。図1に示されるのは、ポートインジェクションエンジン2である。このエンジンに含まれるのは、インレットポート12、インレットバルブ4、排出ポート14、排出バルブ6、燃料インジェクタ10、スパークプラグ8、燃焼チャンバ17、およびピストン16である。空気は、インレットポート12からインレットバルブ4を介して燃焼チャンバ17に入る(排出バルブ6は閉じている)。この空気は、燃焼チャンバ17に入る前に燃料インジェクタ10からの燃料と予め混合される(すなわち、混合は、「ポートインジェクトされる」)。燃料−空気混合は、ピストン16により圧縮され、その後、スパークプラグ8によって点火され、いわゆるパワーストロークでピストン16を下方向に強制する。次いで、排出ガスが、排出バルブ6を介して排出ポート14を通ってエンジンを出る(インレットバルブ4は閉じている)。
【0005】
図1を見ると、システムの幾何学的条件が燃料ガスが燃焼チャンバ17の壁に向けられるように指定していることは明らかである。このため、限局されたスパークプラグ8を介する点火は上記の対応する急冷(quenching)および不十分な混合を克服しなければならない。
【0006】
図2に示されるのは、ダイレクトインジェクションエンジン20であり、このダイレクトインジェクションエンジン20は、上記に議論された同一の問題を受ける。実際に、ポートインジェクションエンジン2によって受ける急冷および不十分な混合は、スパークプラグ近くで燃料リッチな混合を有する必要性およびその結果として得られる燃焼チャンバ内の非常に密接した物理的なクリアランスに起因して、ダイレクトエンジンにおいて悪化され得る。エンジン20は、インレットポート12、インレットバルブ4、排出ポート14、排出バルブ6、燃料インジェクタ10、スパークプラグ8、燃焼チャンバ17、およびピストン16を含む。空気は、インレットポート12からインレットバルブ4を介して燃焼チャンバ17に入る(排出バルブ6は閉じている)。燃料は、燃焼チャンバ17内で「直接」空気と混合される(バルブ4および6は閉じている)。ガス燃料混合は、ピストン16で圧縮され、その後、スパークプラグ8によって点火され、パワーストロークでピストン16を下方向に強制する。次いで、排出ガスが排出バルブ6を介して排出ポート14を通ってエンジンを出得る(インレットバルブ4は閉じている)。
【0007】
図2では、燃料インジェクタ10およびスパークプラグ8が図1におけるより一層物理的に制約され得ることが明らかである。示された幾何学的条件に起因して、燃料は、スパークプラグおよび燃焼チャンバ17の壁に向けられなければならない。それに対応して、限局されたスパークプラグ8を介する点火は、燃焼チャンバ17の壁の冷たい境界層に関連付けられる急冷および不十分な混合条件を克服しなければならない。
【0008】
内部燃焼エンジンの技術におけるこれらおよび他の多数の周知の問題を取り組むためにいくつかの試みがなされた。最も一般的な試みの一つは、エンジン内の燃料および空気の流れを制御することを含む。例えば、混合の問題に取り組むために、他のものは、乱気(tumble)および渦(swirl)を提供する吸気運動を用いた。図3に示されるのは(ここでは、デイレクトインジェクションエンジン30示す)、所定形状に形成化されたトップ19を有するピストン16である。トップ19は、エンジンの動作中、図3の湾曲矢印に概して似ている、燃焼チャンバ17内で流体の流れのパターン(空気および燃料の両方)を形成する。特に、燃焼チャンバ17内の燃料および空気の「乱気」は、急冷および不十分な混合の有害な影響のいくつかを、少なくともある程度は、和らげている。
【0009】
他の形状化されたピストントップおよび異なるコンポーネントの配列が、当該技術において知られているように、異なる流体流れパターンに導き得る。例えば、米国特許第5,058,548号(この特許は、本明細書によって参考として全体が援用される)は、燃焼チャンバのルーフ内の円弧形状化されたオフセットキャビティおよび円錐形態の燃料インジェクトのためのインジェクタを含む。他の例は、以下の流れに影響を及ぼすことを含む。:少し例を挙げれば、渦巻を生じさせる(swirling)、スウィッシング(swishing)、および逆方向乱気(reverse tumbling)である。
【0010】
このような方法は、少なくともある程度の成功を示すが、これらの方法は、固定された、限局された点火位置によって依然として妨害されるので、改善の余地は残っている。さらに、急冷および不十分な混合の問題は、低減されるが、依然として面倒なままであり得る。さらに、これらの空気力学に支配されるシステムにおいて燃料インジェクションおよびシリンダ内の空気移動を制御することは、空気移動およびインジェクションプロセスがエンジン負荷の変化に応じて有意に変化しなければならないので、非常に複雑であり得る。例えば、軽い負荷では、燃料は、燃焼チャンバ壁に近接して配置されるスパークプラグの近傍に、圧縮ストロークにおいて遅れてインジェクトされる。これは、燃料ジェット修正、表面相互作用、および制御された空気移動の組み合わせによって達成される。逆に、高い負荷では、燃料は、圧縮ストローク中に非常に早くインジェクトされ、点火の前に、均一な化学量論条件に燃料および空気を完全に混合するために労力がなされなければならない。このような複雑さは、これらの方法が提供し得るある種の利点を減らす。
【0011】
本明細書に議論された問題への別の試みられた解決策は、スパークプラグによる点火でないレーザ点火を含む。このまたは関連するアプローチを開示する以下の代表的な特許は、第6,053,140号、第5,769,621号、第4,852,529号、第4,434,753号および第4,416,226号である。これら全ては、本明細書によって参考としてその全体が援用される。
【0012】
米国特許第6,053,140号は、外部から供給される点火を有する内部燃焼エンジンを議論する。ここでは、圧縮された空気−燃料混合は、少なくとも部分的に、少なくとも1つのレーザビームの使用で点火される。レーザビームは、少なくとも1つの光学導波管を介して燃焼チャンバに導入され、点火位置上に焦点を合わされ得る。光学導波管は、燃焼チャンバと境を接するシーリングエレメントに配置され、シーリングエレメントは、燃焼チャンバを通る切断面に配置され、好適には、シリンダーヘッドガスケットによって構成される。
【0013】
米国特許第5,769,621号は、燃料/酸化剤点火の方法を開示する。この方法は、(a)レーザ放射光に吸収性である物質表面へのレーザ光の付与、(b)気化された表面物質の強烈なホットクラウドとして加熱された表面から発する高温アブレーションプルームを形成するためのレーザ光を用いる物質表面の加熱、および(c)燃料点火を開始するのに十分な温度に燃料を加熱するための物質の表面およびその近辺でのホットアブレーションクラウドとの燃料/酸化剤混合の接触を包含する。
【0014】
米国特許第5,756,924号は、所定の異なる時間長さおよびピークパワーを有する2以上のレーザ光パルスが、燃料/酸化剤比、燃料液滴サイズ、数密度および燃料エアロゾル内の速度、および初期燃料温度等の燃料パラメータの広範囲にわたって燃料点火性能を改善するために燃料混合へのレーザエネルギー送達の速度および持続時間を連続して調整するために採用される技術を議論する。
【0015】
米国特許第4,852,529号は、内部燃焼エンジンのための点火システムを議論する。点火システムは、時間配列でスパイクされ、エンジン燃焼チャンバに送達されるエネルギーレベルで燃焼を開始するために必要とされるより少ないエネルギーレベルでレーザエネルギーを連続して供給するように配列されたレーザエネルギー発生器を含む。このシステムはまた、燃焼チャンバ内の所定点にパルス化レーザエネルギーの焦点を合わせるための光学手段であって、焦点が合わされたレーザエネルギーは、燃焼チャンバ内の任意の燃焼可能なチャージ(charge)を点火するために十分であり、パルスレーザエネルギーは、パージングチャンバを通して、パージングチャンバに連続して、燃焼ガスがレーザ光学手段に流れることを防止するために供給されるパージングガスとともに各燃焼チャンバに伝達される、光学手段を含む。
【0016】
米国特許第4,434,753号は、エンジンの燃焼チャンバに空気および燃料の混合を供給する取入経路、燃料ではなく、かつ、高い光吸収ファクタを有する物質の混合パーティクルを供給するために燃焼チャンバに開いている放出ポートを有するパーティクル供給ユニット、および燃焼チャンバの内部スペース内の適切に選択されたポジションに向く光焦点合わせユニットを通してレーザビームを放射する光源を含む内部燃焼エンジンのための点火装置を議論する。レーザビームは、空気−燃料混合を点火するためのトーチを生成するためにパーティクル供給ユニットから供給される高い光吸収ファクタの混合パーティクルに突き当たる。
【0017】
米国特許第4,416,226号は、エンジンの各圧縮ストロークの間に少なくとも2つの連続的なパルス形状のレーザビームを発生させるレーザ発振器を含むレーザ点火装置を議論する。第一のパルス形状のレーザビームは、レーザ発振器のQスイッチングアクションによって発生され、これにより、高いピーク出力を有し、第二のパルス形状のレーザビームは、Qスイッチングアクションなしで発生され、低いピーク出力であるが、第一のレーザビームより大きいパルス持続時間を有する。第一および第二のパルス形状のレーザビームは、エンジンの燃焼チャンバにガイドされ向けられ、高いエネルギー密度の第一のレーザビームは、プラズマを発生するために、燃焼チャンバ内の空気−燃料混合の分解を引き起こす。第二のレーザビームは、空気−燃料混合を発火すること保証するために、プラズマのエネルギーさらに増加させる。
【0018】
これら特許のシステムは、それそれ、それら自体の有意な利点を提示し得るが、しかしながら、それらは、同様に欠点を受ける。例えば、記載されたシステムのどれも、エンジンサイクル中の1以上の点火位置の適合可能なポジショニングが可能ではないことは明らかである。むしろ、大抵の記載されたシステムは、サイクル全体にわたって固定される(単一の)点火位置を採用するようである。これらの欠点は、以下に詳細に説明されるように、それ程柔軟性を可能にしない。特に、記載されたシステムは、他の従来の内部燃焼システムのように、燃焼チャンバ内のガスおよび/または空気の流れを調整するように強制され、問題に取り組み、性能を改善するために、これは、非常に複雑な仕事であり得る。本発明の絡みで記載されたように、サイクルの間に点火位置を適合可能に調整することは、より良好な解決策を提示する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0019】
(発明の要旨)
開示された発明は、エンジンスピードおよび負荷の関数として燃料および空気混合を制御する必要性を除くことによって、上記に言及された問題を克服する。むしろ、点火位置は、以下に記載されるようなレーザ放射および適合可能な光学を用いて変更され得る。
【0020】
開示された発明は、ダイレクトインジェクトエンジンを含むスパーク点火エンジンの任意のタイプでのレーザ点火システムの組み込みを含む。レーザ点火システムは、焦点が合わされたレーザビームの焦点での放電を形成するために十分なエネルギー(例えば、一実施形態では100mJ/パルス以上)のパルスレーザを含む。本システムはまた、レーザパルスに対する燃焼チャンバへの光学アクセスを可能にするためにウィンドウおよびウィンドウホルダ、および燃焼チャンバ内でビームの焦点の位置の調整を可能にする適合可能な光学を含む。レーザ点火システムは、燃料が燃焼チャンバに直接噴射されるエンジン構成と併用され得る。いくつかの異なる燃焼チャンバ構成が可能である。
【0021】
本発明の目的は、以下に制限されるわけではないが、(a)燃料−壁相互作用を最小にすることおよび(b)従来の電気スパーク放電システムに要求されるように、燃料−空気混合および混合位置ではなく、点火位置を移動させることによって燃料噴射および取入空気の移動の制御システムを単純化することを含む。
【0022】
一つの関連では、本発明は、内部燃焼エンジンのためのレーザ点火装置である。これは、燃焼チャンバ、レーザ、および適合可能な光学を含む。燃焼チャンバは、1以上の点火位置を規定する。「規定」することによって、それは、1以上の点火位置が燃焼チャンバ内に位置付けられることを意味し、チャンバ内の正確な位置(単数または複数)は、本発明の動作によって、より特定すると、適合可能な光学の動作によって決定される。レーザは、燃焼チャンバと光学的に連絡する。適合可能な光学は、燃焼チャンバおよびレーザと光学的に連絡し、エンジンの動作中の1以上の点火位置のポジションを適合可能に調整するように構成される。本明細書に用いられるように、「適合可能に調整する」ことによって、それは、ポジションは、1以上の動作条件またはエンジンのパラメータにしたがって、手動でまたは自動的に(機械および/または電気手段によって)調整され得ることを意味する。例えば、ポジションは、エンジンのノックを低減するように適合可能に調整され得る。あるいは、ポジションは、エンジンの負荷にしたがって適合可能に調整され得る。あるいは、ポジションは、エンジンのタイプ(例えば、ダイレクトインジェクション対ポートインジェクションエンジンまたはガソリン対天然ガスエンジン)にしたがって適合可能に調整され得る。この開示に利益を有する当業者に理解されるように、他の動作状態またはパラメータの任意数が存在する。これらの状態またはパラメータの任意の1つまたは組み合わせは、本明細書に記載された点火位置の調整によって適合され得る。
【0023】
他の関連では、内部燃焼エンジンは、ガソリンエンジンを含み得る。内部燃焼エンジンは、ダイレクトインジェクションガソリンエンジンを含み得る。内部燃焼エンジンは、ポートインジェクト式のガソリンエンジンを含み得る。内部燃焼エンジンは、天然ガスエンジンを含み得る。光学は、エンジンスピードまたは負荷の関数として1以上の点火位置のポジションを適合可能に調整するように構成され得る。光学は、エンジンノックの関数として1以上の点火位置のポジションを適合可能に調整するように構成され得る。
【0024】
一つの関連では、本発明は、内部燃焼エンジンのサイクル中に複数の点火位置を提供するためのレーザ点火装置である。本装置は、燃焼チャンバ、パルスレーザ、および適合可能な光学を含む。燃焼チャンバは、第一および第二の点火位置を規定する。パルスレーザは、燃焼チャンバと光学的に連絡する。適合可能な光学は、燃焼チャンバおよびレーザと光学的に連絡し、光学は、エンジンの単一のサイクル中、レーザ放射光の第一のパルスを第一の点火位置に、レーザ放射光の第二のパルスを第二の点火位置に向けるように構成される。
【0025】
他の関連では、適合可能な光学は、エンジンの動作中に第一または第二の点火位置のポジションを適合可能に調整するようにさらに構成され得る。光学は、エンジンスピードおよび負荷の関数として第一または第二の位置のポジションを適合可能に調整するように構成され得る。光学は、エンジンノックの関数として第一または第二の点火位置のポジションを適合可能に調整するように構成され得る。
【0026】
一つの関連では、本発明は、内部燃焼エンジン内のレーザ点火のための方法である。レーザ放射光は、適合可能な光学を有する燃焼チャンバ内の点火位置に向けられる。点火位置のポジションは、適合可能な光学を用いてエンジンの動作中に適合可能に調整される。
【0027】
他の関連では、点火位置のポジションは、エンジンスピードまたは負荷の関数として調整され得る。点火位置のポジションは、エンジンノックの関数として調整され得る。本方法はまた、レーザ放射光を適合可能な光学を有する燃焼チャンバのウィンドウに向けてウィンドウを掃除する工程を含み得る。
【0028】
一つの関連では、本発明は、内部燃焼エンジンのサイクル中に複数の点火位置を提供するための方法である。レーザ放射光の第一のパルスは、適合可能な光学を有する燃焼チャンバ内の第一の点火位置に向けられる。レーザ放射光の第二のパルスは、適合可能な光学を用いて燃焼チャンバ内の第二の点火位置に向けられる。
【0029】
他の関連では、第一または第二の点火位置のポジションは、適合可能な光学を用いてエンジンの動作中に適合可能に調整され得る。第一または第二の点火位置のポジションは、エンジンスピードまたは負荷の関数として調整され得る。第一または第二の点火位置のポジションは、エンジンノックの関数として調整され得る。本方法はまた、レーザ放射光の第三のパルスを、適合可能な光学を有する燃焼チャンバのウィンドウに向けてウィンドウを掃除する工程を含み得る。
【0030】
本発明の明細書の以下の図面形態部分は、本発明の所定の局面をさらに実証するために含まれる。本発明は、本明細書に提示された特定の実施形態の詳細な説明と組み合わされた図面の1以上の参照により、よりよく理解され得る。これらの図面は、例示として示すのであって、制限されず、それらは、同様の要素を示す参照のように用いる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、従来技術のポートインジェクションエンジンを示す。
【図2】図2は、従来技術のダイレクトインジェクションエンジンを示す。
【図3】図3は、燃焼チャンバ内で乱気移動を形成するために湾曲されたトップを有するピストンを利用する従来技術のダイレクトインジェクションエンジンを示す。
【図4】図4は、本発明の一実施形態にしたがうダイレクトインジェクションエンジンを示す。このダイレクトエンジンに含まれるのは、レーザ点火装置である。
【図5】図5は、本発明の別の実施形態にしたがうダイレクトインジェクションエンジンを示す。これもまた、レーザ点火装置を含む。
【図6A】図6Aは、本発明の一実施形態にしたがう適合可能な光学装置の正面図を示す。
【図6B】図6Bは、本発明の一実施形態にしたがう適合可能な光学装置の側面図を示す。
【図7】図7は、本発明の開示の一実施形態にしたがう燃焼チャンバおよびレーザ点火装置のブロック図を示す。示されるのは、燃焼チャンバ内の種々の点火位置である。
【図8】図8は、本発明の開示の一実施形態にしたがう例示のプロセスのフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
(例示された実施形態の説明)
図4を見ると、本発明の一実施形態にしたがうダイレクトインジェクションエンジン40が示されている。これは、コンポーネントに中でも特に、高圧燃料ポンプ41、インレットポート4、燃料インジェクタ43、燃焼チャンバ44、レーザ45、ビームステアリング機構46、適合可能な光学装置47、取付ブロック48、アウトレットポート49、制御ユニット50、ピストン52、および燃焼チャンバウィンドウ53を含む。これらコンポーネントのいくつかは、分野において共通して見出され得、本明細書の徹底的なレビューを保証しない。そのリストに含まれるのは、少なくとも、燃料ポンプ、インレットおよびアウトレットポート、燃料インジェクタ、ピストン、および燃焼チャンバである。
【0033】
個々のコンポーネントの別々の詳細な説明に取りかかる前に、一般的な観点で、図4に示されるエンジンの動作を最初に記載することは価値がある。図4のエンジンはスパークプラグを含まないことが留意される。この不在は、以下のコンポーネントを通じて一般的に示されるレーザ点火装置の存在によって正当化される。それは、レーザ45、ビームステアリング機構46、適合可能な光学装置47、取付ブロック48、および制御ユニット50である。これらのコンポーネントは、燃料インジェクタ43から発射された燃料および燃焼チャンバ44内に存在する空気を点火するように動作する。以下により詳細に記載されるように、本明細書に記載されたレーザ点火装置は、エンジンのサイクル中に1より多い点火位置で燃料および/または燃料−空気混合点火する能力を有する。これはまた、エンジンの動作中に1以上の点火位置のポジションを適合可能に調整する能力を有する。
【0034】
一般に、図4のエンジンは、取入ストローク中に燃焼チャンバ44への空気の入口を提供する。続いて、圧縮ストローク中に、ピストン52は、燃料インジェクタ43に向って上方に運ばれ、燃料インジェクタ43は、示されるように燃料のスプレーを出す。続いて、1以上のエネルギーパルスが、制御ユニット50からの信号にしたがってレーザ45から放射される。これらの1以上のエネルギーパルスは、ビームステアリング機構46および適合可能な光学装置47によって燃焼チャンバ44に向けられる。ビームステアリング機構46および適合可能な光学装置47は、制御ユニット50または制御可能な態様で光学コンポーネントを調整するに適した別の制御デバイスによって制御され得る。1以上のエネルギービームは、燃焼チャンバ内に都合良く配置され得る燃焼チャンバウィンドウ53を通して燃焼チャンバ44に入る。図4に示されるウィンドウ53は、シリンダライナ(sylinder liner)を通るが、ヘッド通る、またはピストンをさえ通る等の他の位置も可能である。燃焼チャンバ44内では、1以上のエネルギーパルスが、燃料インジェクタ43からの燃料および/または燃焼チャンバ44内の燃料−空気混合を点火する。
【0035】
レーザ点火プロセスは、少なくとも3つの機構の任意の1つまたは組み合わせによって発生し得る。特に、点火は、(1)光化学、(2)熱点火、および/または(3)レーザ誘導スパーク(LIS)から生じ得る。
【0036】
光化学点火では、レーザ光子は、ターゲット分子を高度に反応性のラジカル種に解離する。次いで、これらのラジカルは、速い化学鎖反応または燃焼を開始する。当該技術に周知であるように、光化学点火は、解離が起こるために、レーザ励起波長とターゲット分子の吸収波長との間の近い一致を必要とする。こららの一致(共鳴)波長での十分なエネルギーの放射光のみが解離を誘発し、首尾よく効率的に燃焼を開始し得る。例えば、当該技術に知られているように、酸素分子Oを解離させるために、157nm(Fレーザライン)または193nm(ArFレーザライン)の波長が用いられ得る。光化学点火は、少量のレーザエネルギーのみ、典型的には、O/Hおよび幾分のOおよび炭化水素混合に対して1ミリジュールを必要とする。他の点火機構と比較して、光点火は、十分な量の反応性ラジカルがターゲット分子から発生され得る限り、より低圧かつ引火性制限のより近くで混合を点火するために用いられ得る。光化学点火は、通常は、700nm未満の波長のエネルギー性のレーザ光子を必要とする。
【0037】
第二の機構である熱点火は、ターゲットの並進、合理的(rational)、振動のいずれかの形態における運動エネルギーを増加させるためにレーザビームを用いる。結果として、分子結合が最終的に分断され、化学反応が起こり得る。点火遅延時間は、典型的には、他の2つのレーザ点火機構と比較してより長く、レーザ波長とターゲット分子の吸収波長との間の近い一致は有益である。この機構は、固体、液体、およびガス相と組み合わせて可燃性体を点火するために容易に用いられ得る。この技術を用いて物質を加熱することは、大部分は、赤外レーザを用いてなされる。
【0038】
LIS点火では、レーザビームは、マルチフォトン吸収または逆Bremstrahlungプロセスのいずれかを介してプラズマ核(kernel)またはスパークを形成するために焦点が合わされる。このスパークは、周囲媒体に光、熱、および衝撃波を放出して、点火を開始するためのエネルギーを供給する。LIS点火は、主に、レーザスパークおよび出射される衝撃波の両方において発生された熱が点火の原因となる熱化学プロセスである。点火のためのスパークを生成するために、レーザビームは、典型的には、約10ナノ秒のQスイッチパルス持続時間でパルス化され、要求される高パワー密度(W/cm)を提供するために、焦点が合わされる。赤外(10.6μm)および近赤外(1.06μm)は、O/Hおよび炭化水素混合を点火するために用いられる多くの波長のうちの2つのみである。当技術において知られているように、LIS点火は、他の2つの機構よりレーザ波長において選択性が少なくあり得る。実際に、焦点でのこのレーザパワー密度、または照射量が、点火のために熱を発生させるために十分高くなっている限り、どの波長が用いられてもほとんど問題にならないようである。LIS点火は、ガス状混合または液体燃料を点火するために適用され得る。しかしながら、LISの一つの欠点は、ガス状混合において衝撃波を発生し、液体および固体からのパーティクルを排出する傾向があることである。
【0039】
適合可能な光学装置47の説明と関連して記載されるように、燃料を点火するために用いられる1以上のエネルギーパルスおよび/または空気−燃料混合は、燃焼チャンバ44内の種々の位置で点火を引き起こすように調整され得る。次に、この能力は、大きな柔軟性を可能にし、燃料−壁の相互作用を最小にし、エンジン内の燃料発射および取入空気移動制御システムを単純にする方法を提供する。
【0040】
レーザ45は、焦点が合わされたレーザビームの焦点に放電を生成するために十分なエネルギーを出射することが可能な当技術において知られた任意のレーザ装置であり得る。一実施形態では、レーザ45は、パルスあたり約100mJのパワーを示すパルスレーザであり得るが、任意の他の適切なパワー範囲が用いられ得ることが理解される。一実施形態では、レーザ45は、1064nm波長範囲で動作するNd:YAGレーザであり得る。レーザの波長は、選択された燃料に応じてメタンまたは他の分子等の所定分子の共鳴周波数に合わせられ得る。一実施形態では、レーザビームは、約10ナノ秒の周期で非消滅レーザスパークを発生するように構成され得る。
【0041】
一実施形態では、レーザ45は、以下のモデル設計を有するNd:YAGレーザであり得る。:1064nm波長で動作するSpectra Physics DCR−1 2130、これは、スペクトルの赤外線部分である。再度、このような波長が選択され得るのは、天然ガス等の所定のガス分子の共鳴周波数に近いからである。当技術において知られるように、レーザパルスエネルギーは、適切なプローブを用いてモニタされ得、一実施形態では、MolectronレーザプローブモデルJ−25が用いられ得る。当技術においてさらに知られるように、いくつかの他の適切な波長が点火を達成するために採用され得、いくつかの異なるレーザの型およびモデルが対応して採用され得る。
【0042】
レーザ45は、当技術において知られる任意の取付手段によって燃焼チャンバ44に適切に近傍して取り付けられ得る。示されるように、レーザ45は、燃焼チャンバ44およびピストン52に隣接して直接取り付けられる。このような取り付けは、当技術において知られる機械的方法の任意数によって達成され得る。例えば、レーザ45は、レーザエンクロージャーをエンジン装置に溶接することによって示されるように取り付けられ得る。レーザ45は、当技術において知られる任意の適切な手段によってエンジンの高熱状態および振動から保護され得る。
【0043】
図4の制御ユニット50は、レーザユニット45(および適合可能な光学装置47)に結合され得か、レーザユニット45と統合され得る。制御ユニット50は、レーザ45および/または適合可能な光学装置47を制御するための1以上のモジュールを含み得る。例えば、制御ユニット50は、レーザ制御回路および/または点火タイミング制御回路を含み得る。当技術において知られるように、レーザ制御回路は、点火タイミングと同期するようにレーザ発振器を制御し得る。他方、点火タイミング制御回路は、エンジンの動作状態を検出し、点火タイミングを計算する点火タイミング計算回路含む制御回路を含み得る。このような例示の制御ユニットのさらなる説明は、少なくとも、米国特許第4,416,226号内で見出され得る。この特許は、本明細書に参考としてすでに援用されている。
【0044】
別の実施形態では、電気制御ユニット(ECU)が制御ユニット50としてまたは制御ユニット50とともに用いられ得る。現代の内部燃焼エンジンは、エンジンの動作の種々の局面を制御するために用いられる1以上のECUを日常的に備えている。スパーク点火エンジンでは、ECUは、一般的に、燃料レート、燃料噴射プロセスのタイミング(インジェクト式エンジンに対して)、点火タイミング(スパークタイミング)、および空気燃料比を制御する。これらのユニットは、一般的に、クランクシャフト位置および回転速度を識別するシャフトエンコーダ、ノックセンサ、および空気−燃料比センサ等のセンサを組み込む。ユニットは、典型的には、入力および出力のいくつかのチャネルを有するマイクロプロセッサベースのデバイスである。このようなユニットは、レーザパルスおよび適合可能な光学のタイミングを制御するために、本明細書の種々の実施形態に適合され得る。
【0045】
図4のビームステアリング機構46は、レーザ45から燃焼チャンバ44の方に1以上のエネルギーパルスを向けるために適した光学コンポーネントの任意数であり得る。図4に示されるのは、レーザ45から燃焼チャンバウィンドウ53に約90度にエネルギーパルスを適合するように合わされた取付ブロック48に付着されたミラーである。この図示は、例示目的のみを意味し、ビームステアリング機構46は、焦点を合わせる、成形する、または、レーザ45から出射された放射光の光学特性に一般的な影響を与えるために、いくつかのレンズおよび他の光学コンポーネントを含み得ることが、本開示の利益を有する当業者に理解される。一実施形態では、ビームステアリング機構46は、45度反射ミラーまたは平凸焦点化レンズ等の光学素子を含み得る。このようなレンズは、一実施形態では、約25.4nmの直径および燃焼チャンバ44内にビームの焦点を合わせる焦点長さを有し得る。
【0046】
図4の燃焼チャンバウィンドウ53は、放射光を伝送するために適した任意の物質から作製され得る。一実施形態では、それは、石英またはサファイアから作製され得るが、当業者は、多くの他の物質が用いられ得ることを認識する。図4のウィンドウ43の位置および大きさは、例示目的のみを意味する。他の実施形態は、ウィンドウ位置をシリンダヘッド54に含む。ウィンドウのサイズは、レーザビームの直径のみによって制限される。一実施形態では、ウィンドウ43は、レーザ45を用いてきれいにされ得る。特に、適合可能な光学装置47が、クリーニングサイクルの間にウィンドウ43に放射光をステアリングするために用いられ得る。このクリーニングサイクルは、サイクルの間またはエンジンが走行ていないときの時間の間に任意の点でエンジンの動作中に起こり得る。当技術において知られる適切なセンサが、ウィンドウ43のスループットをモニタしてクリーニングが必要なときを決定するために用いられ得る。その時点で、クリーニングサイクルが開始され得る。
【0047】
図5は、本開示の別の実施形態を示す。図5に示されるのは、エンジン70、インレットポート42、燃料インジェクタ43、燃焼チャンバ44、レーザ45、適合可能な光学装置47aおよび47b、モジュール74および76を有する制御ユニット72、およびピストン52である。この実施形態では、レーザ45の配置が図4に含まれるビームステアリング機構46の必要性を除去する。さらに、図5の制御ユニット72は、2つのモジュール(モジュール74および76)を明示的に示す。この2つのモジュールは、レーザ制御回路および/または点火タイミング制御回路に対応し得る。あるいは、これらのモジュール(2より多くのモジュールがあってもよい)は、エンジン動作状態およびパラメータをモニタおよび/または評価する適切な検出ユニットを有する動作インターフェースを含み得る。さらに、モジュールは、適合可能な光学装置を動作させるための制御アルゴリズムを含み得る。図5では、適合可能な光学装置は、複数の光学コンポーネントが用いられ得ることを示すために2つのコンポーネント(47aおよび47b)を有するように示される。
【0048】
図4の適合可能な光学装置47および図5の47aおよび47bは、レーザ45から出射される放射光のポジショニングを迅速に調整するのに適切な1以上の光学デバイスを含み得る。前述のように、成句「適合可能な光学」は、光学素子が制御可能な様式(プログラム可能であり得る)におけるなんらかの態様で調整可能であることを伝え、その結果、放射光のパルスが例えば、燃焼チャンバ44内の1以上の異なる位置に向けられ得ることを単に意味する。適合可能な光学装置は、本発明の開示の利益を有する当業者に明らかなように、いくつかの形態をとり得る。
【0049】
適合可能な光学装置は、変形可能なミラー、チップ/傾斜プラットフォーム、または移動、調整され、または光学特定が変更され得ることにより放射光のビームがステアリングおよび焦点が合わせられ得る任意の他の活動的な光学コンポーネントを含み得る。適合可能な光学装置の適切なタイプの一例が図6Aに示される。そこでは、3つの圧電アクチュエータに結合されたミラーが示される。具体的には、図6Aに示される適合可能な光学装置47は、変形可能なミラー90、圧電アクチュエータ92、94、および96、取付基台98、ボールベアリング100、および支持構造102を含む。
【0050】
図6Bに示されるのは、図6Aに示される装置の側面図である。そこでは、ボールベアリング100、圧電アクチュエータ92および96、支持102、ミラー90、および支持98の相対的な配向がより明瞭に見られ得る。当技術において理解されるように、圧電アクチュエータ、ミラー90の1以上に適切な信号を送ることによって、ミラー90は、制御可能な、プログラム可能な様式で「飛行中」のビームステアリングを達成するために、任意の方向に傾斜または倒され得る。
【0051】
3つの圧電アクチュエータの三角形配置として示されているが、本発明の開示の利益を有する当業者は、いくつかの他の配置が適切な適合可能な光学装置47を達成するために用いられ得ることを理解する。例えば、機械的な偏向手段(高度に制御可能な態様で電気的に作動され得る)が、放射光をステアリングするように任意の光学デバイスを倒すおよび/または傾斜させるために用いられる。さらに、適切な適合可能な光学装置は、制御可能なプラットフォーム上に構成されたレーザ45を単に含み得る、その結果、出力方向は、プラットフォームのポジションまたは配向によって操作され得る。
【0052】
図6に示されたもの等の機構によって可能にされた制御可能なビームステアリングは、適切なフィードバックの使用を通じて、適合可能な光学装置47が設置されたエンジンの1以上の動作状態に対して「適合可能に」され得る。当技術において知られるように、圧電アクチュエータシステム出力(および/または別の電気デバイスからの出力)のポジションは、適合可能な光学装置の性能を維持するためまたは評価可能な態様でその動作を制御するための入力としてアクチュエータコントローラ(単数または複数)に戻され得る。このフィードバックは、エンジンの1以上の検出された状態に関連付けられ得る。
【0053】
特に、当技術知られる1以上の検出ユニット(図示せず)は、エンジンノック等のエンジンの状態を感知し得、対応する情報を適合可能な装置47のコントローラ(単数または複数)に中継し得、その結果、適切な圧電アクチュエータ92、94、および/または96が調整され得、これにより、レーザ45から燃焼チャンバ44への1以上の放射光のパルスを、検出された問題(単数または複数)の発生を削除(または低減)する適切な位置(単数または複数)にステアリングするために、ミラー90が傾斜され得る。具体的には、圧電アクチュエータは、検出ユニットからの適切なフィードバックを用いて作動され、モニタされ、および制御され得る。
【0054】
適合可能な調整のこのタイプは、従来の内部燃焼エンジンを超える大きな利点を提供する。例えば、エンジンノックが低減され得る。エンジンノックは、当技術において知られた任意の方法によってエンジン内でモニタされ得、エンジンノック情報は、適合可能な光学装置へのフィードバックとして機能し得、適合可能な光学装置は、ノッキングの発生を低減するように電気的に調整され得る(フィードバックの利益を有する)。
【0055】
本発明の開示はまた、エンジンの負荷にしたがう適合可能な調整を可能にする。例えば、エンジンの負荷は、当技術において知られる任意の方法によってエンジン内でモニタされ得、負荷情報は、適合可能な光学装置への入力として機能し得、適合可能な光学装置は、そのロード状態に対する最適な性能にしたがって電気的に調整され得る。一実施形態(ダイレクトインジェクションエンジンを含む実施形態)では、高い負荷への階層化された電荷動作に対する遅延サイクル噴射に伴って、負荷が光負荷から変更されると、適合可能な光学は、均一な電荷動作に対する初期サイクルインジェクションの間にレーザ放射を燃料ジェットから燃焼チャンバの中心に向け、焦点を合わせることがなされ得る。対照として、現行の実施は、燃料ジェットを、階層化された光負荷に対するスパークプラグ位置に向けることを試行することである。燃料壁相互作用が起こり、結果として、不完全な燃焼を生じ、低減された効率および高い未燃焼の炭化水素放出につながるで、これは妥協を表わす。燃焼チャンバ壁近くの点火の固定された位置はエンジンノック許容度に影響を与えるため、高い負荷の均一な放電動作も妥協である。
【0056】
別の実施形態(天然ガスエンジンを含む実施形態)では、適合可能な光学を有するレーザ点火の使用は、低品位で薄い混合に対して要求された点火エネルギーの伝送を可能にし、これらのエンジンにおいて共通して見られるスパークプラグの耐久力の問題を取り除く。レーザの迅速なパルス能力と組み合わされた適合可能な光学は、各エンジンサイクル中の燃焼チャンバにおける異なる位置での複数の点火現象の使用を可能にする。これは、低品位で薄い燃料−空気混合の点火を改善し、エンジンのノック許容度を劇的に改善する。
【0057】
本発明の開示はまた、エンジンタイプにしたがう適合可能な調整を可能にする。例えば、本発明の開示にしたがう点火装置は、エンジンがダイレクトインジェクションかまたはポートインジェクションエンジンかどうかに応じて、異なる位置での放射光の焦点を合わせるように構成され得る。同様に、点火位置は、エンジンがガソリンかまたは天然ガスかどうかに応じて異なり得る。点火位置の選択は、当業者に理解されるように、他のパラメータの任意数に対して最適化され得る。
【0058】
本発明の開示はまた、ユーザの任意の他の性能にしたがう適合可能な調整を可能にする。例えば、一実施形態では、エンジンのオペレータは、オペレータの選択のパラメータまたは状態に適合させるために点火位置を手動で調整し得る。
【0059】
本発明の開示の実施形態は、点火の適合可能な調整を提供するだけではなく、エンジンの単一サイクル中の複数の点火位置も提供する。換言すると、レーザ45は、例えば、ピストンの単一のストロークの間、異なる位置で、2以上の放射光の点火パルスを発火するように構成され得る。各パルスは、図6に示されるもの等の適合可能な光学装置を介してそれぞれの位置に向けられ得る。この能力は、当業者に理解されるように、多くの有意な利点を提供する。
【0060】
例えば、本発明の開示の実施形態は、エンジンノックを防止し得る。多くのガソリンダイレクトインジェクト式エンジンにおけるスパークプラグは、対称ではないので、フレームは、非常に長い距離にわたって移動しなければならない。しばしば、フレーム前方の未燃焼の燃料は熱くなり、最終的には、爆発して、エンジンノックを引き起こす。ノックを低減するためにスパークタイミングを変更することを試みる従来の方法と異なり、本発明の実施形態は、単一のエンジンサイクルの間1回より多く(そしておそらく1より多い位置で)レーザ点火装置をパルスにする。複数の点火位置を用いることは、燃焼持続時間およびフレーム進行回数を低減する複数のフレームを可能にする。当業者に知られるように、これは、ノックを低減する。
【0061】
一実施形態では、第一のパルスは、適合可能な光学を有する燃焼チャンバの一方側に向けられ得、次いで、第二のパルスは、光学を有する他方側に向けられ得る。エンジンあたり可能なパルスの数が、採用されるレーザのパルスレートおよび適合可能な光学のスピードによって、少なくとも部分的に決定される。
【0062】
単一のエンジンサイクルの間に複数の点火位置を用いる実施形態は、エンジンノックを防止し得るだけではなく、ユーザが低品位の燃料混合を実行することも可能にし得る。低品位混合に伴う大問題の一つは、フレーム移動がおそいことである。このため、燃焼が完了する前にエンジンサイクル全体が終わる。これに対応して、未燃焼のガスが排出される。しかしながら、単一サイクルの間に複数位置において点火することは、この問題に取り組み得る。例えば、燃料は、燃焼チャンバの反対側上で点火され得、これは、フレームが移動する必要がある距離を低減することによってフレームの速度を効率的にスピード化する。複数の点火位置はまた、温度、温度上昇速度、および全体的な燃焼速度の増加を有利なように上げ得る。
【0063】
図7は、上記に議論された原理−単一サイクルの間の適合可能な調整および複数の点火位置を示す。図7では、内部燃焼チャンバ44、レーザ45、適合可能な光学装置47、レーザ取付118、およびウィンドウ53が示されている。適合可能な光学装置47、レーザ45、燃焼チャンバ44、およびウィンドウ53は、上記に記載された。また、図7に示されるのは、いくつかの潜在的な点火位置である位置120、122、124、126、および128の図示である。
【0064】
図7は、レーザ45は、燃焼チャンバウィンドウ53を通じて1以上のレーザパルス放射光をステアリングするために適合可能な光学装置47とともに作動して、上記に列挙された点火位置の任意の1つ以上で燃料または燃料−空気混合を点火し得ることを示す。例えば、第一のエンジンサイクルの間、適合可能な光学装置47は、位置120で点火を起こさせるように放射光のパルスをステアリングし、焦点を合わせ得る。結果的には、点火位置が燃焼チャンバの近くに移動される場合にエンジンがより最適に実行することが(例えば、1以上の検出ユニットによって、ユーザによって、または、いくつかの他の手段によって)決定され得る。第二のエンジンサイクルの間、適合可能な光学装置47は、点火位置を適合可能に(すなわち、前文において言及された決定に応答して)位置122に調整し得る。結果的には、点火位置は、依然としてより中心的に位置付けられることが決定され得る。第三のエンジンサイクルの間、適合可能な光学装置47は、点火位置を位置124に適合可能に調整し得る。
【0065】
同様に、図7は、単一のエンジンサイクルの間の複数の点火位置を示す。一実施形態では、レーザ45は、燃料および/または燃料−空気混合を点火するための第一のパルスを位置126に焦点を合わせ得る。燃料および/または燃料−空気混合物を点火するための第二のパルスを位置128に焦点を合わせ得る。第一および第二のパルスは、単一のエンジンサイクルの間に発生し得る。第一および第二のパルスは、多数の方法のうちの任意の一つでタイミング設定され得る。例えば、両方のパルスは、エンジンサイクルの早期部分の間に発生し得る。両パルスは、サイクルから遅れて発生し得る。第一のパルスは、早期に発生し得、第二のパルスは、遅れて発生し得る。ほとんど無限の数の他の類似のタイミング方式が当業者に明らかである。
【0066】
図7はまた、単一のエンジンサイクルの間に適合可能に調整される複数の点火位置を示す。一実施形態では、レーザ45は、燃料および/または燃料−空気混合を点火するための第一のパルスを位置126に焦点を合わせ得る。同一のエンジンサイクルの間に、燃料および/または燃料−空気混合を点火するための第二のパルスを位置128に焦点を合わせ得る。結果として、エンジンは、点火位置が燃焼チャンバ44のより左方向にある場合により最適に実行することが決定され得る。続くエンジンサイクルの間に、適合可能な光学装置47は、点火発生位置を適合可能に位置126および122に調整し得る。以前の通り、第一および第二のパルスは、多数の方法のうちの任意の一つでタイミング設定され得る。例えば、両パルスは、エンジンサイクル早期または遅い部分の間に発生し得る。第一のパルスは、早期に発生し得、第二のパルスは、遅れて発生し得る。ほとんど無限数の他の類似のタイミング方式が当業者に明らかである。
【0067】
ここで、図8を見ると、本発明の実施形態にしたがう動作の方法を示すフローチャートが示されている。図8のステップは、自明である。一般に、それらは、エンジン動作の間の1以上の点火位置の適合可能な調整を明示する。
【0068】
本発明の開示は、種々の改変および代替の形態に対して適合可能であり得るが、本明細書において特定の実施形態が例示により示され、記載された。しかしながら、本発明の開示は、記載された特定形態に制限されるように意図されないことが理解されるべきである。むしろ、それは、添付の請求の範囲によって規定されたように開示の意図および範囲内に落ち着く全ての改変、均等物、および代替をカバーすることである。
【0069】
さらに、開示された装置および方法の異なる局面は、種々の組み合わせにおいて、および/または独立して利用され得る。このため、本発明は、本明細書に示された組み合わせのみに制限されず、むしろ、他の組み合わせを含み得る。当業者は、多数の他の改変が開示された方法および装置に対してなされ得るが、全てのこのような類似の置換および改変は、本発明の意図、範囲、および概念の範囲内であると考えられることを理解する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部燃焼エンジンのためのレーザ点火装置であって、本願明細書に記載のレーザ点火装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−168040(P2009−168040A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−114024(P2009−114024)
【出願日】平成21年5月8日(2009.5.8)
【分割の表示】特願2002−591660(P2002−591660)の分割
【原出願日】平成14年5月24日(2002.5.24)
【出願人】(595081275)サウスウエスト・リサーチ・インスティチュート (2)