レール締結装置
【課題】 レールの振動を抑えて騒音を低減させることができるレール締結装置を提供する。
【解決手段】 締結ばね9は、レール4を押さえ付けて締結するばねである。締結ばね9は、例えば、板状のばね鋼を略S字状に折り曲げて形成した板ばねであり押さえ金として機能する。押付部9aは、レール4の底部上面4dを長さ方向に連続して押さえ付ける部分である。押付部9aは、レール底部4bの底部上面4dと密着してこの底部上面4dを押圧する。押付部9aは、板ばねの弾性力によって底部上面4dを略均一の加圧力によって押さえ付けるように平板状に形成されている。このため、レール4の振動を抑制し、この振動によって発生する騒音を低減することができる。
【解決手段】 締結ばね9は、レール4を押さえ付けて締結するばねである。締結ばね9は、例えば、板状のばね鋼を略S字状に折り曲げて形成した板ばねであり押さえ金として機能する。押付部9aは、レール4の底部上面4dを長さ方向に連続して押さえ付ける部分である。押付部9aは、レール底部4bの底部上面4dと密着してこの底部上面4dを押圧する。押付部9aは、板ばねの弾性力によって底部上面4dを略均一の加圧力によって押さえ付けるように平板状に形成されている。このため、レール4の振動を抑制し、この振動によって発生する騒音を低減することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、レールを支持体に締結するレール締結装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のレール締結装置は、軌道スラブの上面とレールの底部底面との間に設置されるタイプレートと、このタイプレートの下面と軌道スラブの上面との間に挿入されるゴムパッドと、タイプレートの上面とレールの底部底面との間に挿入される軌道パッドと、レールの底部上面を押さえ付けて締結する締結ばねと、締結ばねを締め付ける締結ボルトと、締結ボルトと締結ばねとの間に挟み込まれる座金などを備えている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2001-81704号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図4は、従来のレール締結装置の使用状態を概略的に示す斜視図である。
従来のレール締結装置105は、図4に示すように、軌道スラブ102に着脱自在に装着され軌道スラブ102とレール104との間に挿入される金属製で板状のタイプレート106と、このタイプレート106とレール104との間に挿入されるゴム製で板状の軌道パッド107と、レール104をタイプレート106に締結する締結ボルト108などを備えている。このような従来のレール締結装置105は、レール104の長さ方向に所定の間隔(例えば60cm程度)をあけて、タイプレート106にこのレール104を締結ボルト108によって離散的に締結している。このため、このような従来のレール締結装置105では、レール104上を車両が走行するとこのレール104に特異な振動が発生し、この振動によってレール放射音が発生する問題点があった。
【0005】
この発明の課題は、レールの振動を抑えて騒音を低減させることができるレール締結装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、以下に記載するような解決手段により、前記課題を解決する。
なお、この発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、この実施形態に限定するものではない。
請求項1の発明は、レール(4)を支持体(2)に締結するレール締結装置であって、レール底部上面(4d)を長さ方向に連続して押さえ付ける押付部(9a)を備えることを特徴とするレール締結装置(5)である。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載のレール締結装置において、前記押付部を長さ方向に間隔をあけて締め付ける締結部材(8)を備えることを特徴とするレール締結装置である。
【発明の効果】
【0008】
この発明によると、レールの振動を抑えて騒音を低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して、この発明の実施形態について詳しく説明する。
図1は、この発明の実施形態に係るレール締結装置に使用状態を示す斜視図である。図2は、この発明の実施形態に係るレール締結装置の締結ばねの使用状態を概略的に示す斜視図である。
【0010】
図1に示す路盤1は、軌道を支持する基盤であり、鉄道車両が通過するときに荷重を支持する構造物である。路盤1は、例えば、スラブ軌道区間に設置される路盤コンクリートであり、軌道スラブ2の水平力を支えるために所定の間隔をあけて突起(突起コンクリート)1aが形成されている。軌道スラブ2は、道床とまくらぎとを一体化させた省力化軌道であり、矩形平板状のプレキャストのコンクリート版(スラブ版)によって構成されている。てん充層3は、軌道スラブ2の高低及び弾性を調整するために、路盤1と軌道スラブ2との間にてん充材を充填して形成した層である。てん充層3は、例えば、セメントとアスファルトとを混合した混合モルタル(CAモルタル)によって形成されている。
【0011】
図1及び図2に示すレール4は、鉄道車両の車輪を支持し案内してこの鉄道車両を走行させる部材である。レール4は、鉄道車両の車輪と接触するレール頭部4aと、軌道スラブ2に設置されるレール底部4bと、レール頭部4aとレール底部4bとを繋ぐレール腹部4cとから構成されている。レール底部4bには、締結ばね9によって押さえ付けられる底部上面4dと、軌道スラブ2に設置される底部下面4eとが形成されている。
【0012】
図1に示すレール締結装置5は、レール4を軌道スラブ2に締結する装置である。レール締結装置5は、図1に示すように、タイプレート6と、軌道パッド7と、締結ボルト8と、締結ばね9などを備えている。レール締結装置5は、レール4の長さ方向に沿ってこのレール4を軌道スラブ2に連続的に締結する連続支持型の締結装置であり、レール4を上下方向及び左右方向に調整可能な構造である。
【0013】
タイプレート6は、軌道スラブ2の上面とレール底部4bの底部下面4eとの間に設置される板状の締結用部材であり、レール4の水平方向の移動を規制する。タイプレート6は、図1及び図2に示すように、レール底部4bと軌道スラブ2の上面との間に挿入されており、図4に示す従来のレール締結装置105のタイプレート106とは異なりレール4の長さ方向に伸びた長尺板状の部材であり、レール底部4bの長さ方向に連続して挿入されており軌道パッド7の長さ方向の略全面と密着する。
【0014】
軌道パッド7は、レール4とタイプレート6との間に挿入される緩衝用の板状部材であり、鉄道車両が通過する際に発生する衝撃荷重を緩和するとともに、レール4が長手方向に移動するふく進に対する抵抗力を確保するために、レール底部4bの底部下面4eとタイプレート6の上面との間に挟み込まれる加硫ゴム製やウレタン製の長尺板状の部材である。軌道パッド7は、軌道スラブ2の表面を保護する機能と電気的に絶縁する機能とを有する。軌道パッド7は、図4に示す従来のレール締結装置105の軌道パッド107とは異なりレール4の長さ方向に伸びた長尺板状の部材であり、レール底部4bの長さ方向に連続して挿入されておりこのレール底部4bの長さ方向の略全面と密着する。図1及び図2に示すように、軌道パッド7の幅はレール底部4bの幅と略等しい。
【0015】
締結ボルト8は、締結ばね9を長さ方向に間隔をあけて締め付ける部材であり、タイプレート6及び締結ばね9を貫通して軌道スラブ2に埋設された埋込栓の雌ねじ部と噛み合う六角ボルトなどである。締結ボルト8は、図1に示すように、レール4の長さ方向に所定の間隔をあけて締結ばね9に着脱自在に装着されており、レール底部4bの底部上面4dに締結ばね9を押し付けている。
【0016】
図1及び図2に示す締結ばね9は、レール4を押さえ付けて締結するばねである。締結ばね9は、例えば、長尺板状のばね鋼を略S字状に折り曲げて形成した板ばね(主ばね)であり押さえ金(ばねクリップ)として機能する。締結ばね9は、例えば、図1に示すように、軌道スラブ2にレール4を締結するときには、この軌道スラブ1枚当たり2本程度の締結ボルト8によってこの軌道スラブ2に装着され、まくらぎにレール4を締結するときには、まくらぎ3〜4本当たり1本程度の締結ボルト8によってこのまくらぎに装着される。締結ばね9の長さは、図1に示すように、現場への搬入や運搬が容易であって現場で容易に施工可能なように、軌道スラブ1枚の長さ又はレール1本の長さと略等しい。締結ばね9は、締結ボルト8の締め付け力を調整することによって、気温の変化によってレール4が伸縮したときにレール4の長さ方向の移動を許容するようにレール4と軌道スラブ2とを締結している。締結ばね9は、図2に示すように、押付部9aと、取付部9bと、湾曲部9cとを備えておりこれらが一体に形成されている。
【0017】
押付部9aは、レール4の底部上面4dを長さ方向に連続して押さえ付ける部分であり、底部上面4dと密着してこの底部上面4dを押圧する。押付部9aは、板ばねの弾性力によって底部上面4dを略均一の加圧力によって押さえ付けるように平板状に形成されている。押付部9aは、締結ボルト8による締め付け量が少ないときにはこの押付部9aの下面の縁部(先端部)側の一部のみが底部上面4dと接触するが、締結ボルト8による締め付け量が増すと押付部9aが湾曲部9cを支点として撓み、この押付部9aの下面の略全面が底部上面4dと密着する。
【0018】
取付部9bは、軌道スラブ2に着脱自在に取り付けられる板状部分である。取付部9bは、図1に示す締結ボルト8の座面とタイプレート6の上面との間に挟み込まれるように平板状に形成されている。湾曲部9cは、押付部9aと取付部9bとの間に形成された部分であり、締結ボルト8の座面とタイプレート6の上面との間に取付部9bが挟み込まれた状態で締結ボルト8を締め付けたときに、この締め付け量に応じて弾性変形する。
【0019】
次に、この発明の実施形態に係るレール締結装置の作用を説明する。
締結ばね9の取付部9bを軌道スラブ2上に設置するとともに、締結ばね9の押付部9aをレール底部4bの底部上面4dに設置して、締結ばね9の長さ方向に所定の間隔をあけて締結ボルト8を装着し、この締結ボルト8を締め付ける。締結ボルト8による締め付け量が小さいときには押付部9aの下面の縁部(先端部)側の一部のみが底部上面4dと接触しているが、締結ボルト8の締め付け量を増やすと押付部9aが湾曲部9cを支点として撓み、押付部9aの下面の略全面が底部上面4dと密着する。トンネル区間のようにレール4の伸縮量が比較的少ない箇所では締結ボルト8の締め付け量を多くして押付部9aを底部上面4dに強固に押し付ける。一方、トンネル区間以外の明かり区間のようにレール4の伸縮量が比較的多い箇所では締結ボルト8の締め付け量を調整してレール4が長さ方向に伸縮可能なように、押付部9aと底部上面4dとの間の押付力を調整する。レール4上を車両が通過するとこのレール4が振動するが、レール4の長さ方向に沿って押付部9aによって底部上面4dが連続して押し付けられているため、レール4の振動が抑えられて騒音が低減する。
【0020】
図3は、この発明の実施形態に係るレール締結装置の加振に対するレールの周波数応答の数値計算の結果を示すグラフである。
図3に示す縦軸は、アクセレランス((N/(m/s2))であり、横軸は周波数(Hz)である。図3に示す実線は、図1及び図2に示すような連続支持型のレール締結装置5による数値計算の結果であり、鎖線は図4に示すような従来のレール締結装置105による数値計算の結果である。図3に示すように、従来の締結の場合には、200〜4000Hzの周波数帯域で特異な振動が発生しているが、連続締結の場合にはこの周波数帯域の振動を抑制可能であることが分かる。
【0021】
この発明の実施形態に係るレール締結装置には、以下に記載するような効果がある。
(1) この実施形態では、レール4の底部上面4dを長さ方向に連続して押付部9aが押さえ付ける。このため、図4に示すような従来のレール締結装置105のように離散的にレール4を締結する構造に比べて、レール4の振動を抑えることができるため、この振動によって発生する騒音を低減することができる。その結果、鉄道沿線におけるレール放射音を低減することができる。
【0022】
(2) この実施形態では、締結ボルト8が押付部9aを長さ方向に間隔をあけて締め付ける。この実施形態では、レール締結装置5が長大化し押付部9aが底部上面4dを連続して押さえ付ける。このため、図4に示すような従来のレール締結装置105のように多数の締結ボルト108によって締結する必要がなくなり、レール4の敷設工事などにおける作業負担を軽減することができる。
【0023】
この発明は、以上説明した実施形態に限定するものではなく、以下に記載するように種々の変形又は変更が可能であり、これらもこの発明の範囲内である。
この実施形態では、軌道スラブ2にレール4を締結する場合を例に挙げて説明したが、まくらぎにレール4を締結する場合についてもこの発明を適用することができる。また、この実施形態では、レール4の底部上面4dを押付部9aによって押さえ付ける場合を例に挙げて説明したが、締結ばね9の剛性が高い場合にはレール4の腹部側面も押付部9aによって押さえ付けることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】この発明の実施形態に係るレール締結装置に使用状態を示す斜視図である。
【図2】この発明の実施形態に係るレール締結装置の締結ばねの使用状態を概略的に示す斜視図である。
【図3】この発明の実施形態に係るレール締結装置の加振に対するレールの周波数応答の数値計算の結果を示すグラフである。
【図4】従来のレール締結装置の使用状態を概略的に示す斜視図である。
【符号の説明】
【0025】
1 路盤
2 軌道スラブ(支持体)
3 てん充層
4 レール
4a レール頭部
4b レール底部
4c レール腹部
4d 底部上面
4e 底部下面
5 レール締結装置
6 タイプレート
7 軌道パッド
8 締結ボルト(締結部材)
9 締結ばね
9a 押付部
9b 取付部
9c 湾曲部
【技術分野】
【0001】
この発明は、レールを支持体に締結するレール締結装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のレール締結装置は、軌道スラブの上面とレールの底部底面との間に設置されるタイプレートと、このタイプレートの下面と軌道スラブの上面との間に挿入されるゴムパッドと、タイプレートの上面とレールの底部底面との間に挿入される軌道パッドと、レールの底部上面を押さえ付けて締結する締結ばねと、締結ばねを締め付ける締結ボルトと、締結ボルトと締結ばねとの間に挟み込まれる座金などを備えている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2001-81704号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図4は、従来のレール締結装置の使用状態を概略的に示す斜視図である。
従来のレール締結装置105は、図4に示すように、軌道スラブ102に着脱自在に装着され軌道スラブ102とレール104との間に挿入される金属製で板状のタイプレート106と、このタイプレート106とレール104との間に挿入されるゴム製で板状の軌道パッド107と、レール104をタイプレート106に締結する締結ボルト108などを備えている。このような従来のレール締結装置105は、レール104の長さ方向に所定の間隔(例えば60cm程度)をあけて、タイプレート106にこのレール104を締結ボルト108によって離散的に締結している。このため、このような従来のレール締結装置105では、レール104上を車両が走行するとこのレール104に特異な振動が発生し、この振動によってレール放射音が発生する問題点があった。
【0005】
この発明の課題は、レールの振動を抑えて騒音を低減させることができるレール締結装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、以下に記載するような解決手段により、前記課題を解決する。
なお、この発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、この実施形態に限定するものではない。
請求項1の発明は、レール(4)を支持体(2)に締結するレール締結装置であって、レール底部上面(4d)を長さ方向に連続して押さえ付ける押付部(9a)を備えることを特徴とするレール締結装置(5)である。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載のレール締結装置において、前記押付部を長さ方向に間隔をあけて締め付ける締結部材(8)を備えることを特徴とするレール締結装置である。
【発明の効果】
【0008】
この発明によると、レールの振動を抑えて騒音を低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して、この発明の実施形態について詳しく説明する。
図1は、この発明の実施形態に係るレール締結装置に使用状態を示す斜視図である。図2は、この発明の実施形態に係るレール締結装置の締結ばねの使用状態を概略的に示す斜視図である。
【0010】
図1に示す路盤1は、軌道を支持する基盤であり、鉄道車両が通過するときに荷重を支持する構造物である。路盤1は、例えば、スラブ軌道区間に設置される路盤コンクリートであり、軌道スラブ2の水平力を支えるために所定の間隔をあけて突起(突起コンクリート)1aが形成されている。軌道スラブ2は、道床とまくらぎとを一体化させた省力化軌道であり、矩形平板状のプレキャストのコンクリート版(スラブ版)によって構成されている。てん充層3は、軌道スラブ2の高低及び弾性を調整するために、路盤1と軌道スラブ2との間にてん充材を充填して形成した層である。てん充層3は、例えば、セメントとアスファルトとを混合した混合モルタル(CAモルタル)によって形成されている。
【0011】
図1及び図2に示すレール4は、鉄道車両の車輪を支持し案内してこの鉄道車両を走行させる部材である。レール4は、鉄道車両の車輪と接触するレール頭部4aと、軌道スラブ2に設置されるレール底部4bと、レール頭部4aとレール底部4bとを繋ぐレール腹部4cとから構成されている。レール底部4bには、締結ばね9によって押さえ付けられる底部上面4dと、軌道スラブ2に設置される底部下面4eとが形成されている。
【0012】
図1に示すレール締結装置5は、レール4を軌道スラブ2に締結する装置である。レール締結装置5は、図1に示すように、タイプレート6と、軌道パッド7と、締結ボルト8と、締結ばね9などを備えている。レール締結装置5は、レール4の長さ方向に沿ってこのレール4を軌道スラブ2に連続的に締結する連続支持型の締結装置であり、レール4を上下方向及び左右方向に調整可能な構造である。
【0013】
タイプレート6は、軌道スラブ2の上面とレール底部4bの底部下面4eとの間に設置される板状の締結用部材であり、レール4の水平方向の移動を規制する。タイプレート6は、図1及び図2に示すように、レール底部4bと軌道スラブ2の上面との間に挿入されており、図4に示す従来のレール締結装置105のタイプレート106とは異なりレール4の長さ方向に伸びた長尺板状の部材であり、レール底部4bの長さ方向に連続して挿入されており軌道パッド7の長さ方向の略全面と密着する。
【0014】
軌道パッド7は、レール4とタイプレート6との間に挿入される緩衝用の板状部材であり、鉄道車両が通過する際に発生する衝撃荷重を緩和するとともに、レール4が長手方向に移動するふく進に対する抵抗力を確保するために、レール底部4bの底部下面4eとタイプレート6の上面との間に挟み込まれる加硫ゴム製やウレタン製の長尺板状の部材である。軌道パッド7は、軌道スラブ2の表面を保護する機能と電気的に絶縁する機能とを有する。軌道パッド7は、図4に示す従来のレール締結装置105の軌道パッド107とは異なりレール4の長さ方向に伸びた長尺板状の部材であり、レール底部4bの長さ方向に連続して挿入されておりこのレール底部4bの長さ方向の略全面と密着する。図1及び図2に示すように、軌道パッド7の幅はレール底部4bの幅と略等しい。
【0015】
締結ボルト8は、締結ばね9を長さ方向に間隔をあけて締め付ける部材であり、タイプレート6及び締結ばね9を貫通して軌道スラブ2に埋設された埋込栓の雌ねじ部と噛み合う六角ボルトなどである。締結ボルト8は、図1に示すように、レール4の長さ方向に所定の間隔をあけて締結ばね9に着脱自在に装着されており、レール底部4bの底部上面4dに締結ばね9を押し付けている。
【0016】
図1及び図2に示す締結ばね9は、レール4を押さえ付けて締結するばねである。締結ばね9は、例えば、長尺板状のばね鋼を略S字状に折り曲げて形成した板ばね(主ばね)であり押さえ金(ばねクリップ)として機能する。締結ばね9は、例えば、図1に示すように、軌道スラブ2にレール4を締結するときには、この軌道スラブ1枚当たり2本程度の締結ボルト8によってこの軌道スラブ2に装着され、まくらぎにレール4を締結するときには、まくらぎ3〜4本当たり1本程度の締結ボルト8によってこのまくらぎに装着される。締結ばね9の長さは、図1に示すように、現場への搬入や運搬が容易であって現場で容易に施工可能なように、軌道スラブ1枚の長さ又はレール1本の長さと略等しい。締結ばね9は、締結ボルト8の締め付け力を調整することによって、気温の変化によってレール4が伸縮したときにレール4の長さ方向の移動を許容するようにレール4と軌道スラブ2とを締結している。締結ばね9は、図2に示すように、押付部9aと、取付部9bと、湾曲部9cとを備えておりこれらが一体に形成されている。
【0017】
押付部9aは、レール4の底部上面4dを長さ方向に連続して押さえ付ける部分であり、底部上面4dと密着してこの底部上面4dを押圧する。押付部9aは、板ばねの弾性力によって底部上面4dを略均一の加圧力によって押さえ付けるように平板状に形成されている。押付部9aは、締結ボルト8による締め付け量が少ないときにはこの押付部9aの下面の縁部(先端部)側の一部のみが底部上面4dと接触するが、締結ボルト8による締め付け量が増すと押付部9aが湾曲部9cを支点として撓み、この押付部9aの下面の略全面が底部上面4dと密着する。
【0018】
取付部9bは、軌道スラブ2に着脱自在に取り付けられる板状部分である。取付部9bは、図1に示す締結ボルト8の座面とタイプレート6の上面との間に挟み込まれるように平板状に形成されている。湾曲部9cは、押付部9aと取付部9bとの間に形成された部分であり、締結ボルト8の座面とタイプレート6の上面との間に取付部9bが挟み込まれた状態で締結ボルト8を締め付けたときに、この締め付け量に応じて弾性変形する。
【0019】
次に、この発明の実施形態に係るレール締結装置の作用を説明する。
締結ばね9の取付部9bを軌道スラブ2上に設置するとともに、締結ばね9の押付部9aをレール底部4bの底部上面4dに設置して、締結ばね9の長さ方向に所定の間隔をあけて締結ボルト8を装着し、この締結ボルト8を締め付ける。締結ボルト8による締め付け量が小さいときには押付部9aの下面の縁部(先端部)側の一部のみが底部上面4dと接触しているが、締結ボルト8の締め付け量を増やすと押付部9aが湾曲部9cを支点として撓み、押付部9aの下面の略全面が底部上面4dと密着する。トンネル区間のようにレール4の伸縮量が比較的少ない箇所では締結ボルト8の締め付け量を多くして押付部9aを底部上面4dに強固に押し付ける。一方、トンネル区間以外の明かり区間のようにレール4の伸縮量が比較的多い箇所では締結ボルト8の締め付け量を調整してレール4が長さ方向に伸縮可能なように、押付部9aと底部上面4dとの間の押付力を調整する。レール4上を車両が通過するとこのレール4が振動するが、レール4の長さ方向に沿って押付部9aによって底部上面4dが連続して押し付けられているため、レール4の振動が抑えられて騒音が低減する。
【0020】
図3は、この発明の実施形態に係るレール締結装置の加振に対するレールの周波数応答の数値計算の結果を示すグラフである。
図3に示す縦軸は、アクセレランス((N/(m/s2))であり、横軸は周波数(Hz)である。図3に示す実線は、図1及び図2に示すような連続支持型のレール締結装置5による数値計算の結果であり、鎖線は図4に示すような従来のレール締結装置105による数値計算の結果である。図3に示すように、従来の締結の場合には、200〜4000Hzの周波数帯域で特異な振動が発生しているが、連続締結の場合にはこの周波数帯域の振動を抑制可能であることが分かる。
【0021】
この発明の実施形態に係るレール締結装置には、以下に記載するような効果がある。
(1) この実施形態では、レール4の底部上面4dを長さ方向に連続して押付部9aが押さえ付ける。このため、図4に示すような従来のレール締結装置105のように離散的にレール4を締結する構造に比べて、レール4の振動を抑えることができるため、この振動によって発生する騒音を低減することができる。その結果、鉄道沿線におけるレール放射音を低減することができる。
【0022】
(2) この実施形態では、締結ボルト8が押付部9aを長さ方向に間隔をあけて締め付ける。この実施形態では、レール締結装置5が長大化し押付部9aが底部上面4dを連続して押さえ付ける。このため、図4に示すような従来のレール締結装置105のように多数の締結ボルト108によって締結する必要がなくなり、レール4の敷設工事などにおける作業負担を軽減することができる。
【0023】
この発明は、以上説明した実施形態に限定するものではなく、以下に記載するように種々の変形又は変更が可能であり、これらもこの発明の範囲内である。
この実施形態では、軌道スラブ2にレール4を締結する場合を例に挙げて説明したが、まくらぎにレール4を締結する場合についてもこの発明を適用することができる。また、この実施形態では、レール4の底部上面4dを押付部9aによって押さえ付ける場合を例に挙げて説明したが、締結ばね9の剛性が高い場合にはレール4の腹部側面も押付部9aによって押さえ付けることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】この発明の実施形態に係るレール締結装置に使用状態を示す斜視図である。
【図2】この発明の実施形態に係るレール締結装置の締結ばねの使用状態を概略的に示す斜視図である。
【図3】この発明の実施形態に係るレール締結装置の加振に対するレールの周波数応答の数値計算の結果を示すグラフである。
【図4】従来のレール締結装置の使用状態を概略的に示す斜視図である。
【符号の説明】
【0025】
1 路盤
2 軌道スラブ(支持体)
3 てん充層
4 レール
4a レール頭部
4b レール底部
4c レール腹部
4d 底部上面
4e 底部下面
5 レール締結装置
6 タイプレート
7 軌道パッド
8 締結ボルト(締結部材)
9 締結ばね
9a 押付部
9b 取付部
9c 湾曲部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レールを支持体に締結するレール締結装置であって、
レール底部上面を長さ方向に連続して押さえ付ける押付部を備えること、
を特徴とするレール締結装置。
【請求項2】
請求項1に記載のレール締結装置において、
前記押付部を長さ方向に間隔をあけて締め付ける締結部材を備えること、
を特徴とするレール締結装置。
【請求項1】
レールを支持体に締結するレール締結装置であって、
レール底部上面を長さ方向に連続して押さえ付ける押付部を備えること、
を特徴とするレール締結装置。
【請求項2】
請求項1に記載のレール締結装置において、
前記押付部を長さ方向に間隔をあけて締め付ける締結部材を備えること、
を特徴とするレール締結装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図2】
【図3】
【図4】
【公開番号】特開2006−249832(P2006−249832A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−69760(P2005−69760)
【出願日】平成17年3月11日(2005.3.11)
【出願人】(000173784)財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月11日(2005.3.11)
【出願人】(000173784)財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
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