説明

ロッドホルダ

【課題】チャック部材を常に完全に閉じて、確実にボーリングロッドを保持する保持状態とでき、また軽量化、小型化にも応えることができるロッドホルダを提供する。
【解決手段】回動軸25を回動させて、回動側チャック部材41を解除状態にする。回動軸25を軸方向へスライドさせて、凸条31を凸条挿通部23に通す。回動軸25の回動が規制され、回動側チャック部材41が解除状態にロックされる。ホルダボディ3を、その切り欠き7が削孔に対向する状態に備える。回動軸25を軸方向へスライドさせて、凸条31を凸条挿通部23から外れる位置にする。回動軸25の回動の規制が解かれ、ロックが解除される。ロックが解除されるとバネ81の付勢力によって回動軸25が回動させられて、回動側チャック部材41が保持状態となる。回動側チャック部材41と固定側チャック部材61とによってボーリングロッドRが保持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はロッドホルダに関し、さらに詳細には、ボーリングロッドの着脱作業の際に、削孔内のボーリングロッドを孔の口元で保持するためのロッドホルダに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のロッドホルダは例えば特許文献1に開示されているように一対のチャック部材を備えており、チャック部材を開閉して、一対のチャック部材によってボールリングロッドを挟持して保持したり、保持を解除したりする。
ところで近年においては削孔の深さが30メートルのボーリングがかなりの割合を占めており、このボーリングに用いるロッドホルダが保持するボーリングロッドの重量は最大で数百キログラムである。従って、保持するボールリングロッドの重量に見合ったロッドホルダは軽量化、小型化が要請されており、このような軽量化、小型化の要請に応えるためにはロッドホルダのチャック部材の開閉を手動で行うものが有利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−252374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、チャック部材の開閉を手動で行うロッドホルダは、チャックを閉めるための操作を行っても、チャック部材と、チャック部材を保持するホルダボディとの間に泥が詰まるなどして、チャック部材が途中で引っ掛かった状態となって完全に閉じないことがある。これに気付かずにボーリングロッドの着脱作業を行うと、ボーリングロッドが削孔内へ落ちてしまうことになる。
本発明は、上記従来の問題点に着目して為されたものであり、チャック部材を常に完全に閉じて、確実にボーリングロッドを保持する保持状態とでき、また軽量化、小型化にも応えることができるロッドホルダを提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、請求項1の発明は、 ホルダボディと、前記ホルダボディに一対に設けられて、少なくも一方が動作してボーリングロッドを保持する保持状態とボーリングロッドの保持を解除する解除状態となるチャック部材とを有するロッドホルダにおいて、前記チャック部材の少なくとも一方を保持状態となる方向へ付勢する付勢手段を具備したことを特徴とするロッドホルダである。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載したロッドホルダにおいて、チャック部材を解除状態にロックすることができる解除状態ロック手段を備えたことを特徴とするロッドホルダ。
【0007】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載したロッドホルダにおいて、チャック部材はホルダボディに形成された挿通穴に対し挿通されて回動自在に支持された回動軸に固定され、前記回動軸と共に回動することを特徴とするロッドホルダである。
【0008】
請求項4の発明は、請求項3に記載したロッドホルダにおいて、付勢手段は回動軸に連結されたバネによって構成されていることを特徴とするロッドホルダである。
【0009】
請求項5の発明は、請求項3または4に記載したロッドホルダにおいて、解除状態ロック手段は回動軸の軸方向に所定長さ設けられた凸条と、ホルダボディに形成され回動軸が通る軸挿通部と凸条が通る凸条挿通部とから成る挿通穴とによって構成され、回動軸を軸方向へスライドさせて前記凸条を凸条挿通部に通し、回動軸の回動を規制してチャック部材を解除状態にロックし、また凸条を凸条挿通部から外れる位置に回動軸を軸方向へスライドさせて回動軸の回動規制を解き、ロックを解除することを特徴とするロッドホルダである。
【0010】
請求項6の発明は、請求項3から4のいずれかに記載したロッドホルダにおいて、チャック部材は回動可能な回動側チャック部材と、前記回動側チャック部材に対向して固定されて備えられた固定側チャック部材とによって構成されていることを特徴とするロッドホルダである。
【0011】
請求項7の発明は、請求項6に記載したロッドホルダにおいて、固定側チャック部材は所定範囲で動作可能にガタをもって支持されていることを特徴とするロッドホルダである。
【発明の効果】
【0012】
本発明のロッドホルダによれば、チャック部材を常に完全に閉じることができ、確実にボーリングロッドを保持する保持状態とすることができる。従って、ボーリングロッドが削孔内へ落ちてしまう事故を防止することが可能となる。
また、ロッドホルダの軽量化、小型化の要請に応えることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係るロッドホルダの斜視図である。
【図2】図1のロッドホルダの一部斜視図である。
【図3】図1のロッドホルダの平面図である。
【図4】図1のロッドホルダの反対側から見た斜視図である。
【図5】回動側チャック部材が解除状態にロックされる状態を説明するための図である。
【図6】回動側チャック部材が解除状態にロックされた状態から、ロックが解除される状態を説明するための図である。
【図7】回動側チャック部材が解除状態と保持状態となる状態を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態に係るロッドホルダ1を図面にしたがって説明する。
ホルダボディ3の構成について説明する。
符号5はベース板を示し、このベース板5の前端部側に切り欠き7が形成されている。ベース板5上面の切り欠き7を挟んで左右両側には垂直姿勢の支持板9、11が配置されている。またベース板5上面の後端部側には垂直姿勢の支持板13が備えられ、この支持板13は支持板9、11に間隔をあけて対向している。更に、ベース板5上面には連結板15が設けられ、この連結板15は支持板13と支持板9に固定されている。
【0015】
図4に示すように支持板13には挿通穴19が形成されており、この挿通穴19は円形の軸挿通部21と、軸挿通部21に連設された略半円形の凸条挿通部23とから成っている。
符号25は回動軸を示し、この回動軸25は細径部27と太径部29とを有している。細径部27には凸条31が軸方向に所定長さ設けられており、この凸条31は凸条挿通部23に対しスライド動作自在に嵌まり込むサイズに設定されている。凸条31は細径部27に形成されたキー溝に備えられたキーによって構成されている。細径部27は軸挿通部21と支持板9に形成された図示しない挿通穴とに挿通され、これにより回動軸25は回動自在に支持されている。回動軸25の先端部にはボルト33によって座金35が取付けられて、回動軸25が抜け止めされている。
解除状態ロック手段は凸条31と、挿通穴19とによって構成されている。
【0016】
回動軸25には回動側チャック部材41が固定され、この回動側チャック部材41は支持板13と支持板9との間に配置されており、回動軸25と共に回動可能となっている。回動側チャック部材41は略扇形に広がる形状の圧接ブロック45を有しており、この圧接ブロック45にはやや窪んだチャック面47が形成されている。チャック面47には多数の凹凸49が連続して形成されている。
【0017】
支持板13と支持板11との間には載置ベース51が配置されており、この載置ベース51はベース板5の上面に固定されている。載置ベース51の上面には立ち壁部53が固定されており、この立ち壁部53は図2においてホルダボディ3の右側方に向かってやや傾斜する姿勢となっている。従って、立ち壁部53の左側面は傾斜する当接面55となっている。
載置ベース51上には小さなブロックから成る固定側チャック部材61が載置されている。この固定側チャック部材61は立ち壁部53の図2において左側に配置され、回動側チャック部材41に対向している。固定側チャック部材61の側部には円弧状のチャック面63が形成されており、また固定側チャック部材61の前面と背面には互いに対向する有底の穴部65、67が形成されている。
【0018】
支持板11、13には雄ネジ71、73が取付けられており、雄ネジ71と雄ネジ73とは互いに対向している。雄ネジ71の先端部は支持板11の背面から、雄ネジ73の先端部は支持板13の前面から突出しており、雄ネジ71と雄ネジ73の突出した部分は穴部65と穴部67にそれぞれ入り込んでいる。雄ネジ71、73の突出した部分と穴部65、67が形成された部分の内周面との間には隙間がそれぞれ形成されている。従って、固定側チャック部材61は所定範囲で動作可能にガタをもって支持されている。
【0019】
符号81は付勢手段としてのバネを示し、このバネ81の一端は回動軸25の太径部29に連結されており、他端は雄ネジ73に連結されている。バネ81は回動側チャック部材41を保持状態となる方向へ付勢している。
ホルダボディ3の支持板13にはハンドル83が突出して取付けられている。
一対のチャック部材は回動側チャック部材41と固定側チャック部材61とによって構成されている。前述したように固定側チャック部材61は小さなブロックから成っているため、ホルダボディ3の支持板等を従来と比べ小さく構成できる。従って、ロッドホルダ1の軽量化、小型化の要請に応えることができるようになる。
【0020】
次に、ロッドホルダ1の使用方法について説明する。
ボーリングロッドRの着脱作業を行う場合には、図1に示す矢印の方向に回動軸25を回動側チャック部材41と共に回動させて、回動側チャック部材41を図7の仮想線で示す解除状態にする。そして回動軸25を軸方向へスライドさせて、図5に示すように凸条31を凸条挿通部23に通す。これにより回動軸25の回動が規制され、回動側チャック部材41が解除状態にロックされる。
そして、ハンドル83やホルダボディ3を持ち、ホルダボディ3を、その切り欠き7が削孔に対向する状態に備える。そして、回動側チャック部材41と固定側チャック部材61との間に位置させる。
【0021】
次に、図6に示すように回動軸25を軸方向へスライドさせて、凸条31を凸条挿通部23から外れる位置にする。これにより回動軸25の回動の規制が解かれ、ロックが解除される。ロックが解除されるとバネ81の付勢力によって回動軸25が回動側チャック部材41と共に回動させられて、回動側チャック部材41が図7の実線で示す保持状態となる。この保持状態では回動側チャック部材41と固定側チャック部材61とによってボーリングロッドRが両側から挟まれて保持される。なお、このとき固定側チャック部材61は立ち壁部53の当接面55に圧接させられて固定されている。
そして、この状態でボーリングロッドRの着脱作業を行う。
【0022】
前述したようにバネ81は回動側チャック部材41を保持状態となる方向へ付勢しているため、回動側チャック部材41とホルダボディ3との間に泥が詰まっているような場合でも回動側チャック部材41が途中で引っ掛かることなく、バネ81の付勢力によって回動軸25が回動側チャック部材41と共に自動的に回動する。
このように回動側チャック部材41を常に完全に閉じることができ、確実にボーリングロッドRを保持する保持状態とすることができる。従って、ボーリングロッドRが削孔内へ落ちてしまう事故を防止することが可能となる。
【0023】
ボーリングロッドRの着脱作業が終了した場合には、前述したように回動軸25を回動側チャック部材41と共に回動させて、回動側チャック部材41を解除状態にする。これによりボーリングロッドRの保持が解除される。
回動側チャック部材41がボーリングロッドRに食い込んで回動しない場合には、ハンマー等で支持板13を軽く叩く。前述したように固定側チャック部材61は所定範囲で動作可能にガタをもって支持されているため、固定側チャック部材61が振動によって僅かに動く。これにより食い込みが解消して回動側チャック部材41を回動させることができるようになる。
【0024】
以上、本発明の実施の形態について詳述してきたが、具体的構成は、この実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計の変更などがあっても発明に含まれる。
上記実施の形態は、一対のチャック部材を回動側チャック部材41と固定側チャック部材61とによって構成したが、一対の回動側チャック部材によって構成してもよい。
上記実施の形態は、チャック部材を解除状態にロックすることができる解除状態ロック手段を備えたが、解除状態ロック手段を備えない構成としてもよい。
上記実施の形態は、固定側チャック部材61を所定範囲で動作可能にガタをもって支持させたが、固定側チャック部材61を動作しないように固定してもよい。
【0025】
上記実施の形態では、付勢手段としてコイル状のバネを示したが、本発明はこれに限定されず、板バネ等の他のバネ、更に合成ゴム等の他の弾性体を用いてもよく、チャック部材の少なくとも一方を保持状態となる方向へ付勢することができるものであれば、どのような構成のものであってもよい。
なお、上記実施の形態のロッドホルダ1は、操作者からみて、回動軸25を右側、ハンドル83を左側に配置したが、これとは逆に回動軸25を左側、ハンドル83を右側に配置する構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明はボーリングロッドを保持するロッドホルダの製造業に利用可能である。
【符号の説明】
【0027】
1…ロッドホルダ 3…ホルダボディ
5…ベース板 7…切り欠き
9、11、13…支持板 15…連結板
19…挿通穴
21…軸挿通部 23…凸条挿通部
25…回動軸 27…細径部
29…太径部 31…凸条
33…ボルト 35…座金
41…回動側チャック部材
45…圧接ブロック 47…チャック面
49…凹凸 51…載置ベース
53…立ち壁部 55…当接面
61…固定側チャック部材 63…チャック面
65、67…穴部
71、73…雄ネジ
81…バネ 83…ハンドル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホルダボディと、前記ホルダボディに一対に設けられて、少なくも一方が動作してボーリングロッドを保持する保持状態とボーリングロッドの保持を解除する解除状態となるチャック部材とを有するロッドホルダにおいて、前記チャック部材の少なくとも一方を保持状態となる方向へ付勢する付勢手段を具備したことを特徴とするロッドホルダ。
【請求項2】
請求項1に記載したロッドホルダにおいて、チャック部材を解除状態にロックすることができる解除状態ロック手段を備えたことを特徴とするロッドホルダ。
【請求項3】
請求項1または2に記載したロッドホルダにおいて、チャック部材はホルダボディに形成された挿通穴に対し挿通されて回動自在に支持された回動軸に固定され、前記回動軸と共に回動することを特徴とするロッドホルダ。
【請求項4】
請求項3に記載したロッドホルダにおいて、付勢手段は回動軸に連結されたバネによって構成されていることを特徴とするロッドホルダ。
【請求項5】
請求項3または4に記載したロッドホルダにおいて、解除状態ロック手段は回動軸の軸方向に所定長さ設けられた凸条と、ホルダボディに形成され回動軸が通る軸挿通部と凸条が通る凸条挿通部とから成る挿通穴とによって構成され、回動軸を軸方向へスライドさせて前記凸条を凸条挿通部に通し、回動軸の回動を規制してチャック部材を解除状態にロックし、また凸条を凸条挿通部から外れる位置に回動軸を軸方向へスライドさせて回動軸の回動規制を解き、ロックを解除することを特徴とするロッドホルダ。
【請求項6】
請求項3から4のいずれかに記載したロッドホルダにおいて、チャック部材は回動可能な回動側チャック部材と、前記回動側チャック部材に対向して固定されて備えられた固定側チャック部材とによって構成されていることを特徴とするロッドホルダ。
【請求項7】
請求項6に記載したロッドホルダにおいて、固定側チャック部材は所定範囲で動作可能にガタをもって支持されていることを特徴とするロッドホルダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−209595(P2010−209595A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−57446(P2009−57446)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(302057409)株式会社扶桑工業 (1)
【Fターム(参考)】