説明

ロッド状の構造体及び該構造体の製造方法並びに該構造体を用いたカラム

【課題】分離性能や送液性能が高く、かつ、未だ量産実用化されていない外装材の内径が0.53〜2.0mmを含むあらゆるサイズ(0.1mm以下〜1000mm以上)のロッド状構造体を得る。
【解決手段】モノリスロッドに外装される外装材として、モノリスロッドで性能に悪影響を及ぼすような構造変化が生じる温度よりも低い温度で熱処理することによってモノリスロッドと一体化できるものを採用することによって、外装材の内径サイズとしてあらゆるサイズを選択することができ、かつ、分離性能や送液性能が高いロッド状構造体を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロッド状の構造体及び該構造体の製造方法並びに該構造体を用いたカラムに
関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のとおり、近年、クロマトグラフィー用カラムに採用されているモノリス構造のロ
ッド状構造体は、一般的な粒子充填型のクロマトグラフィー用カラムに比べて気体・液体
状の試料を低圧・高速で送液でき、かつ、高い分離性能を有することから注目を集めてお
り、その性能向上に関して改良が進められている。
【0003】
モノリス構造を備えたロッド状構造体は、その製造方法によってクラッド型とキャピラ
リー型に大別でき、クラッド型のロッド状構造体は、予め形成されたモノリスロッドを例
えば樹脂製の外装材を用いて外装し、外装材の熱膨張・収縮する性質を利用してロッドと
密着させる方法によって製造されるものであり、キャピラリー型のロッド状構造体は、キ
ャピラリーチューブの中空内で内壁に接合した状態のモノリス構造を形成する方法によっ
て製造されるものである。
【0004】
クラッド型のロッド状構造体を用いたクロマトグラフィー用カラムとしては、後出特許
文献1に、多孔質体からなるモノリスロッドと、その外周を被覆する密着性、耐熱性、耐
薬品性及び耐圧性を有する有機系樹脂外筒部材とを具備し、有機系樹脂外筒部材は、熱収
縮チューブと、この熱収縮チューブの外側に設けられた熱硬化性樹脂層の二層構造より形
成されている液体クロマトグラフィー用カラムが開示されている。また、市販品として、
PEEK樹脂(ポリエーテルエーテルケトン樹脂)の熱膨張・収縮する性質を利用して当該樹
脂からなる外装材をモノリスロッドに密着させたロッド状構造体が知られている。
【0005】
キャピラリー型のロッド状構造体を用いたクロマトグラフィー用カラムとしては、後出
特許文献2に、第2の材料の表面と化学的に相互作用できる支持骨格官能基を含み重合し
た支持骨格ナノコンポジット(PSN)を備えるハイブリッド無機/有機キャピラリモノ
リスが第2の材料内で形成されたカラムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−197508号公報
【特許文献2】特表2007−515503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、従来におけるクラッド型のロッド状構造体を用いたクロマトグラフィー用カ
ラムによって試料を分離して得られるクロマトグラム(特許文献1:図2参照)は、各溶
質の分離性能が低いため、高い分離度を要求する各溶質の定量分析においては効率が非常
に低いものであった。これは、モノリスロッドと外装材の密着性、不均一性に起因するも
のと考えられ、効率の高い分離分析の要件の一つであるカラム内での安定した移動相の流
れが微視的に阻害され、試料の拡散等の悪影響を引き起こしているものと考えられる。
【0008】
そして、当該クラッド型のロッド状構造体を用いたクロマトグラフィー用カラムとして
市販されているものは、PEEK樹脂製の外装材を熱膨張・収縮させる際に熱処理する必要が
あるため、外装材の内面と接触するモノリスロッドの化学修飾された表面が熱による変性
等の影響を受けて性能低下に影響を及ぼすことから、その変性の影響の程度が相対的に小
さい太いロッド状構造体、具体的には、外装材の内径が2.0mm以上のロッド状構造体しか
量産実用化されていなかった。
【0009】
また、従来におけるキャピラリー型のロッド状構造体においては、キャピラリーチュー
ブの中空内でモノリス構造を形成する際に、チューブの内壁からモノリス構造が剥離しな
いように外装材の内壁にモノリス構造との結合を強固にさせるための活性化処理が施され
ることが多く、その結果、図14に示すように、キャピラリーチューブ100の内壁を覆
うように不均一な構造の濡れ層101(Wetting layer)が形成され、その内部102に
モノリス構造が形成された状態となる。このため、図15に示すように、モノリス構造を
形成する過程において、化学反応・焼成の際に生じる収縮により、濡れ層101の一部が
内壁から剥離したり、収縮時に張力が集中する濡れ層などの粗密で不均一な構造を有する
部分に亀裂103が生じる場合が多い。これらのことから、従来におけるキャピラリー型
のロッド状構造体としては相対的に収縮による影響の程度の小さい細いロッド状構造体、
具体的には、キャピラリーチューブの内径が0.53mm以下のロッド状構造体しか量産実用化
されていなかった。
【0010】
そこで、本発明は、分離性能や送液性能が高く、かつ、未だ量産実用化されていない外装材の内径が0.53〜2.0mmを含むあらゆるサイズ(0.1mm以下〜1000mm以上)のロッド状構
造体を得ることを技術的課題として、その具現化をはかるべく、試作・実験を繰り返した
結果、モノリスロッドに外装される外装材として、モノリスロッドにおいて性能に悪影響
を及ぼすような構造変化が生じる温度よりも低い温度で熱処理することによってモノリス
ロッドと一体化できるものを採用すれば、外装材の内径サイズとしてあらゆるサイズを選択することができ、かつ、分離性能や送液性能が高いロッド状構造体を得ることができるという刮目すべき知見を得、前記技術的課題を達成したものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記技術的課題は、次の通りの本発明によって解決できる。
【0012】
即ち、本発明に係るロッド状構造体は、二重構造を有するロッド状構造体であって、内
部は液体及び気体が通過できるモノリス構造に形成されており、外部は液体及び気体が通
過できない緻密構造に形成されており、内部のモノリス構造を形成する骨格が外部に対し
て直接一体的に結合しているものである。
【0013】
また、本発明は、前記ロッド状構造体において、内部のモノリス構造と外部の緻密構造
との界面に濡れ層(Wetting Layer)が介在していないものである。
【0014】
また、本発明は、前記いずれかのロッド状構造体において、内部を形成する物質と外部
を形成する物質又は外部を形成する物質の主成分とが同じものであるか、若しくは、内部
を形成する物質の主成分と外部を形成する物質又は外部を形成する物質の主成分とが同じ
ものである。
【0015】
また、本発明は、前記ロッド状構造体において、内部を形成する物質がケイ酸化合物の
ものか、若しくは、内部を形成する物質の主成分がケイ酸化合物のものである。
【0016】
また、本発明は、前記いずれかのロッド状構造体の両端に接続具を取り付けてなるカラ
ムである。
【0017】
また、本発明は、前記カラムにおいて、ロッド状の構造体を保護カバーによって被覆し
てなるものである。
【0018】
また、本発明に係るロッド状構造体の製造方法は、モノリスロッドに外装材を外装する
外装工程と、外装材が外装されたモノリスロッドに熱処理を施してモノリスロッドのモノ
リス構造を形成する骨格を脱水反応によって外装材に直接一体的に結合させる結合工程と
を備えたものである。
【0019】
また、前記ロッド状構造体の製造方法の結合工程において、モノリスロッドのモノリス
構造を形成する骨格を脱水反応によって濡れ層を介在させることなく外装材に直接一体的
に結合させるものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、モノリスロッドに外装される外装材として、モノリスロッドにおける
メゾポア等の均一な構造が変化して性能低下に影響を及ぼさない温度帯での加熱によって
モノリスロッドとの化学反応を進行できるものを採用したので、外装材の内径(モノリス
ロッドの外径)が2.0mm以下であって長さ250mm以上の細長いロッド状構造体であっても高
い性能に維持することができる。このため、細長いロッド状構造帯を切断し、端面の平滑
化処理を施すことによって任意の長さの細いロッド状構造体を効率よく量産することがで
きる。また、モノリスロッドを形成する素材として最も汎用されているケイ酸化合物又は
ケイ酸化合物を主成分とする物質を使用すると共に、外装材を形成する素材としてモノリ
スロッドで性能に悪影響を及ぼすような構造変化が生じる温度よりも低い作業温度(104d
Pa・sの粘度に相当する温度)を有する低融点硝子を使用することにより、高性能で量産
品質の安定したロッド状構造体を得ることができる。これは、熱処理を施した際に、モノ
リスロッドと外装材とが単に物理的に密着するだけなく、両部材を形成するケイ酸化合物
のシラノール基が互いに均一な構造を維持したまま脱水反応を通じてシロキサン結合する
ためである。
【0021】
従って、本発明の産業上利用性は非常に高いといえる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施の形態1に係るロッド状構造体を示した縦断面図である。
【図2】実施の形態1に係るロッド状構造体の外部と骨格の界面付近を電子顕微鏡で拡大した拡大写真である。
【図3】モノリスロッドの製造工程を示した説明図である。
【図4】実施の形態1に係るモノリスロッドの表面を電子顕微鏡で拡大した拡大写真である。
【図5】ロッド状構造体の製造工程を示した説明図である。
【図6】図1に示すロッド状構造体を用いたクロマトグラフィー用カラムを示した一部省略縦断面図である。
【図7】実施の形態2に係るロッド状構造体を用いたクロマトグラフィー用カラムを示した一部省略縦断面図である。
【図8】実施の形態3に係るロッド状構造体を用いたクロマトグラフィー用カラムを示した一部省略縦断面図である。
【図9】実施例1の測定によって得られたクロマトグラムである。
【図10】実施例2の測定によって得られたクロマトグラムである。
【図11】実施例3の測定によって得られたクロマトグラムである。
【図12】実施例4〜6の測定によって得られたクロマトグラムである。
【図13】実施例7〜9の測定によって得られたクロマトグラムである。
【図14】従来のキャピラリー型のロッド状構造体の構造を示した概念図である。
【図15】従来におけるキャピラリー型のロッド状構造体のキャピラリーチューブと濡れ層の界面付近を電子顕微鏡で拡大した拡大写真である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0024】
実施の形態1.
【0025】
図1は本実施の形態に係るロッド状構造体を示した縦断面図である。図2は本実施の形
態に係るロッド状構造体の外部と骨格の界面付近を電子顕微鏡で拡大した拡大写真である。図3はモノリスロッドの製造工程を示した説明図である。図4は本実施の形態に係るモノリスロッドの表面を電子顕微鏡で拡大した拡大写真である。図5はロッド状構造体の製造工程を示した説明図である。図6は図1に示すロッド状構造体を用いたクロマトグラフィー用カラムを示した一部省略縦断面図である。これらの図において、1は、二重構造を有し、内部2が液体及び気体が通過できるモノリス構造に形成されており、外部3が液体及び気体が通過できない緻密構造に形成されており、図2に示すように、内部2のモノリス構造を構成する骨格4が外部3に対して直接一体的に結合しているロッド状構造体である。
【0026】
ロッド状構造体1の内部2は、モノリス構造に形成されており、液体や気体が通過でき
る構造になっている。モノリス構造は、骨格4が枝分かれを繰り返しながら複雑に延びる
ことによって三次元ネットワーク状に形成された構造であり、隣接する骨格4によって形
成される空隙によって液体や気体が通過するマクロポア5と呼ばれる流路が形成される。
また、モノリス構造を形成する骨格4の表面には、メゾポア(図2には写し出されていな
い)と呼ばれる細孔が多数形成されている。
【0027】
ロッド状構造体1の外部3は、緻密構造に形成されており、液体や気体が通過できない
構造になっている。
【0028】
そして、ロッド状構造体1の内部2と外部3との界面では、内部2のモノリス構造を形
成する骨格4が外部3と直接一体的に結合した状態となっており、従来のキャピラリー型
のロッド状構造体に見られるような濡れ層101(図14、図15参照)は形成されてい
ない。詳述すると、内部2のモノリス構造を形成する骨格4において最も外部3側に位置
付けられる部分が外部3の最も内部2側に位置付けられる面に接触し、その接触した部分
において互いに融着し、その他の構造を介在させることなく一体化した状態となっている

【0029】
なお、ロッド状構造体1の内部2を構成する物質としては、ケイ酸化合物、ポリスチレ
ン(スチレン・ジビニルベンゼン共重合体)、ポリメタクリレート、ポリヒドロキシメタ
クリレート又はポリビニルアルコールなどのポリマー、アルミナ、セルロース、アガロー
ス、デキストリン、キサトン、ハイドロキシアパタイト、ジルコニアなどの物質を単独で
用いてもよく、当該各物質を主成分とする物質を用いてもよい。また、ロッド状構造体1
の外部3を構成する物質としては、内部2のモノリス構造を形成する骨格4と一体的に結
合できる物質である必要があるため、内部を形成する物質と外部を形成する物質又は外部
を形成する物質の主成分が同じであるか、或いは、内部を形成する物質の主成分と外部を
形成する物質又は外部を形成する物質の主成分とが同じであることが好ましいが、内部2
のモノリス構造を構成する骨格4と一体的に結合できる物質であれば特に限定されない。
【0030】
次に、本実施の形態に係るロッド状構造体1の製造工程を説明する。
【0031】
先ず、ロッド状構造体1の内部2を構成するモノリスロッドを形成するため、チューブ
の中空内にモノリス構造の生成物を形成する。詳述すると、先ず、図3の(a)に示すよ
うに、チューブ6の中空内に材料を流し込んでモノリス構造の生成物7を形成する。この
時、生成物7は、チューブ6の内面を覆うように形成された不均一な構造の濡れ層(スキ
ン層)に覆われてモノリス構造が形成された状態となる。同時に、モノリス構造を構成す
る骨格に対してメゾポアを調整するための処理を施し、モノリスロッド8を得る(モノリ
スロッド形成工程)。従って、得られたモノリスロッド8は、図4に示すように、濡れ層
9(スキン層)によって覆われた表面の内部にモノリス構造を構成する骨格10が形成さ
れた状態となる。
【0032】
次に、図5の(a)に示すように、モノリスロッド形成工程で得られたモノリスロッド
8が収まる中空を有する外装材11を用意し、モノリスロッド8に外装材11を外装させ
る(外装工程)。次に、図5の(b)に示すように、モノリスロッド8に外装された外装
材11の表面を加熱し、モノリスロッド8のモノリス構造を構成する骨格10を外装材1
1の内面に融着させて一体的に結合させる(結合工程)。これらの工程によって得られた
構造体は緻密構造とモノリス構造から構成される二重構造であり、濡れ層(スキン層)の
ような不均一な構造を全く又は殆ど有さない。これは、熱処理によって濡れ層が構造変化
して消滅したためであると考えられる。なお、この後、必要に応じてモノリスロッド8か
らなる内部を化学修飾することによってロッド状構造体1を得る。
【0033】
結合工程においては、モノリスロッド8がメゾポア等の構造変化により性能低下に影響
を及ぼさない範囲の熱処理でモノリスロッド8のモノリス構造を構成する骨格10を外装
材11の内面に融着させ、かつ、モノリスロッド8の濡れ層9及び濡れ層9付近に形成さ
れたモノリス構造が不均一な部分を全く又は殆ど残さないように外装材11と一体化させ
ることができる温度で加熱する必要がある。
【0034】
例えば、モノリスロッド8及び外装材11を形成する素材としてケイ酸化合物又はケイ
酸化合物を主成分とする物質を用いた場合には、結合工程における加熱温度は、モノリス
ロッド8において性能低下に影響を及ぼすような構造変化、具体的には、メゾポア径の減
少や消滅などが生じる温度以下、即ち、900℃以下であり、かつ、外装材11を形成する
物質の成形作業温度(104dPa・sの粘度に相当する温度)、即ち、600℃以上である必要が
あり、よって、600〜900℃の範囲であることが好ましい。
【0035】
なお、結合工程における加熱手段としては、一定温度で加熱できるものであれば特に限
定されず、バーナーやヒーターなどを使用することができる。
【0036】
次に、ロッド状構造体1を用いたクロマトグラフィー用カラムを説明する。
【0037】
ロッド状構造体1を用いたクロマトグラフィー用カラム12は、図6に示すように、ロ
ッド状構造体1にクロマトグラフィー装置(図示せず)に接続するための接続具13を取
り付けた状態のものである。
【0038】
接続具13は、ロッド状構造体1とクロマトグラフィー装置との接続を仲介する部材で
あり、ロッド状構造体1の両先端部を被覆する一対のスリーブ14と、スリーブ14によ
って被覆されたロッド状構造体1の先端部に取り付けられるオシネ15と、オシネ15に
接続されるジョイント16とから構成されている。
【0039】
スリーブ14は、ロッド状構造体1の外径よりも僅かに大きい内径を有する円筒体であ
り、ロッド状構造体1の外面に密着するようにロッド状構造体1の先端部に被せられる。
【0040】
オシネ15は、六角柱状に形成されたボルト部17と、ボルト部17から一方側へ伸び
る外面にネジ溝18が形成されたネジ部19と、ボルト部17から他方側へ伸びる円筒部
20とから構成されており、各部17,19,20を貫くようにスリーブ14によって被
覆されたロッド状構造体1の先端部を通すことができる貫通孔21が形成されている。そ
して、オシネ15は、スリーブ14によって被覆されたロッド状構造体1の先端部を貫通
孔21に通してネジ部19側から該先端部が僅かに突出するように取り付けられている。
【0041】
ジョイント16は、一端部にオシネ15のネジ部19がネジ止めできるように内面にネ
ジ溝22が形成された一方側接続部23が形成されていると共に、他端部にクロマトグラ
フィー装置から伸びるクロマトグラフィー用カラムに試料や移動相を送液するための配管
(図示せず)が接続できる構造に形成された他端側接続部24が形成されており、両接続
部23,24は直接、若しくはフィルタを介在させた状態で内径の小さな通孔25によっ
て繋がっている。そして、一方側接続部23に対してオシネ15を介して接続されたロッ
ド状構造体1と他方側接続部24に接続された配管とは通孔25を介して連通するように
配置される。
【0042】
また、本実施の形態におけるクロマトグラフィー用カラム12においては、ロッド状構
造体1を衝撃から保護するための円筒状のカバー26が取り付けれており、カバー26は
、ロッド状構造体1の両先端部に取り付けられたオシネ15の円筒部20に架け渡される
一対の半円筒体27,27から構成されている。カバー26をオシネ15の円筒部20に
固定する際には、接着剤で固定してもよく、また、ゴムなどの弾性を有するリングによっ
て締め付けて固定してもよい。なお、カバー26は、ロッド状構造体1が衝撃に対して弱
い場合など必要に応じて取り付ければよい。また、カバー26は、ロッド状構造体1を保
護できるものであれば形状は限定されず、例えば、円筒状、その他の形状のものを使用し
てもよい。
【0043】
実施の形態2.
【0044】
本実施の形態は実施の形態1におけるクロマトグラフィー用カラムの変形例である。図
7は本実施の形態に係るクロマトグラフィー用カラムを示した一部省略縦断面図である。
この図において、図1〜図6と同一符号は同一又は相当部分を示している。
【0045】
本実施の形態におけるクロマトグラフィー用カラム12は、接続具13を構成するスリ
ーブ28がロッド状構造体1全体を被覆できる長さに形成されており、スリーブ28がロ
ッド状構造体1を保護するカバーの役割を果たしている。そして、スリーブ28によって
被覆されたロッド状構造体1の両先端部には、オシネ15及びジョイント16が取り付け
られている。なお、本実施の形態におけるオシネ15は、ボルト部17及びネジ部19の
みによって構成されており、両部17,19を貫くようにスリーブ28によって被覆され
たロッド状構造体1を通すことができる貫通孔21が形成されている。
【0046】
実施の形態3.
【0047】
本実施の形態は実施の形態1におけるクロマトグラフィー用カラムの変形例である。図
8は本実施の形態に係るクロマトグラフィー用カラムを示した一部省略縦断面図である。
この図において、図1〜図6と同一符号は同一又は相当部分を示している。
【0048】
本実施の形態におけるクロマトグラフィー用カラム12の接続具13は、ロッド状構造
体1全体を被覆する円筒状のホルダー29と、ホルダー29の両端に接続されるジョイン
ト16とから構成されている。
【0049】
そして、ホルダー29は、ロッド状構造体1の外径よりも僅かに大きい内径を有してい
ると共に、ロッド状構造体1を挿入した際に両端からロッド状構造体1の両先端部が僅か
に突出するようにロッド状構造体1の長さよりも僅かに短く形成されており、両先端部の
外面にはジョイント16を接続するためのネジ溝30が形成されている。なお、ホルダー
29は、衝撃に強い硬質の素材、例えば、ステンレスなどによって形成されており、ロッ
ド状構造体1を保護するカバーの役割を果たしている。また、ジョイント16は、一端部
にホルダー29のネジ溝30にネジ止めできるように内面にネジ溝22が形成された一方
側接続部23が形成されていると共に、他端部にクロマトグラフィー装置から伸びるカラ
ムに試料や移動相を送液するための配管(図示せず)が接続できる構造に形成された他端
側接続部24が形成されており、両接続部23,24は直接、若しくはフィルタを介在さ
せた状態で内径の小さな通孔25によって繋がっている。そして、一方側接続部23に対
してホルダー29を介して接続されたロッド状構造体1と他方側接続部24に接続された
配管とは通孔25を介して連通するように配置される。
【0050】
なお、前記各実施の形態においては、ロッド状構造体にクロマトグラフィー装置に接続
するための接続具を装着してなるクロマトグラフィー用カラムを説明したが、当該接続具
を変更することによってクロマトグラフィー以外の用途に使用することができるカラムと
することもできる。
【0051】
次に、本発明の実施例について説明する。
【実施例】
【0052】
実施例1〜3
【0053】
外装材としてケイ酸化合物を主成分とする物質からなる内径1.3mm×長さ250mm、内径1.
3mm×長さ150mm、内径1.3mm×長さ50mmの三種類の低融点硝子管(日本電気硝子株式会社
製:品番:NL-16)を用意した。また、モノリスロッドとしてケイ酸化合物を主成分とす
る物質からなる外径1.0mm×長さ250mm、外径1.0mm×長さ150mm、外径1.0mm×長さ50mmの
三種類のものを用意した。
【0054】
続いて、先ず、外装材にモノリスロッドを挿入した後、モノリスロッドが挿入された外
装材をバーナーによって600℃〜900℃で加熱してモノリスロッドのモノリス構造を構成す
る骨格が外装材の内面と一体化させた。なお、この時、バーナーによって外筒体全体を加
熱するが、外筒体の周面が均等に加熱されるように外筒体を常に回転させながら加熱した
。次に、外筒体を冷却して得られたロッド状構造体に実施の形態2に示す接続具を装着し
、ロッド状構造体120℃で16時間減圧乾燥させ、続いて、ODS化反応を行った後にアセトン
、トリフルオロ酢酸を0.1%添加した50%アセトニトリル水溶液、アセトニトリルを順次
送液して洗浄し、さらに、120℃で16時間減圧乾燥させ、最後に、エンドキャップを行っ
た後にアセトニトリルを送液して洗浄を行って三種類のクロマトグラフィー用カラムを得
た。
【0055】
得られたクロマトグラフィー用カラムを高速液体クロマトグラフィー装置に接続し、高
速液体クロマトグラフィー装置によって当該カラムに移動相・試料を所定条件にて送液し
、カラムから溶出する物質を検出器にて測定してクロマトグラムを作成した。
【0056】
試料は、アセトニトリル60vol%と水40vol%とを混合した溶媒に対し、ウラシル0.03mg/ml、安息香酸メチル0.7mg/ml、トルエン2.9mg/ml及びナフタレン0.3mg/mlを溶質として溶解したものを用意した。また、測定温度を常温(25℃)に保持した状態で、圧力を長さ250mmのカラムに対して10.9MPa、長さ150mmのカラムに対して6.2MPa、長さ50mmのカラムに対して2.2MPaとして各カラムに送液される試料の流量を100μl/minとなるように調節し、3つのクロマトグラムを作成した。
【0057】
前記各カラムの測定によって得られたクロマトグラフを図9〜11に示す。なお、図9
は、長さ250mmのカラムによって得られたクロマトグラムを示しており、図10は、長さ1
50mmのカラムによって得られたクロマトグラムを示しており、図11は、長さ50mmのカラ
ムによって得られたクロマトグラムを示している。いずれのクロマトグラムにおいても、
各溶質のピークが充分に分離された状態で検出された。また、各クロマトグラムにおいて
最後に溶出したナフタレンのピークに基づいて理論段数を計算したところ、長さ250mmの
カラムにおいて11242、長さ150mmのカラムにおいて7044、長さ50mmのカラムにおいて2387
という高い数値が得られた。
【0058】
実施例4〜6
【0059】
前記実施例1〜3における長さ150mmのクロマトグラフィー用カラムを用意した。そ
して、クロマトグラフィー用カラムに送液される移動相の流量を200μl/min、100μl/min
、50μl/minと変化させ、前記実施例1〜3と同様にしてクロマトグラムを作成した。得
られたクロマトグラムを図12に示す。各クロマトグラムにおいて最後に検出されたナフ
タレンのピークに基づいて理論段数を計算したところ、いずれもN=10000以上の高い数値
が得られた。
【0060】
実施例7〜9
【0061】
前記実施例1〜3における長さ250mmのクロマトグラフィー用カラムを用意した。そ
して、クロマトグラフィー用カラムに送液される移動相の流量を150μl/min、100μl/min
、50μl/minと変化させ、前記実施例1〜3と同様にしてクロマトグラムを作成した。得
られたクロマトグラムを図12に示す。各クロマトグラムにおいて最後に検出されたナフ
タレンのピークに基づいて理論段数を計算したところ、いずれもN=20000以上の高い数値
が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明に係るロッド状構造体は、クロマトグラフィーに限らず、例えば、触媒を担持し
た化学反応担体等に利用できる。特に、ケイ酸化合物で構成されたロッド状構造体は、透
明で可視領域を含む光を透過することが可能なため、色素等の分離においては分離の様子
を肉眼で観察することができ、また、UV-VIS検出器や蛍光検出器のような光学検出器のセ
ルとしても利用することができる。
【符号の説明】
【0063】
1 ロッド状構造体
2 内部
3 外部
4 骨格
5 マクロポア
6 チューブ
7 生成物
8 モノリスロッド
9 濡れ層(Wetting layer)
10 骨格
11 外装材
12 クロマトグラフィー用カラム
13 接続具
14 スリーブ
15 オシネ
16 ジョイント
17 ボルト部
18 ネジ溝
19 ネジ部
20 円筒部
21 貫通孔
22 ネジ溝
23 一方側接続部
24 他方側接続部
25 通孔
26 カバー
27 半円筒体
28 スリーブ
29 ホルダー
30 ネジ溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二重構造を有するロッド状構造体であって、内部は液体及び気体が通過できるモノリス構
造に形成されており、外部は液体及び気体が通過できない緻密構造に形成されており、内
部のモノリス構造を形成する骨格が外部に対して直接一体的に結合していることを特徴と
するロッド状構造体。
【請求項2】
内部のモノリス構造と外部の緻密構造との界面に濡れ層(Wetting Layer)が介在してい
ない請求項1記載のロッド状構造体。
【請求項3】
内部を形成する物質と外部を形成する物質又は外部を形成する物質の主成分とが同じであ
る請求項1又は2のいずれかに記載のロッド状構造体。
【請求項4】
内部を形成する物質の主成分と外部を形成する物質又は外部を形成する物質の主成分とが
同じである請求項1又は2のいずれかに記載のロッド状構造体。
【請求項5】
内部を形成する物質がケイ酸化合物である請求項3記載のロッド状構造体。
【請求項6】
内部を形成する物質の主成分がケイ酸化合物である請求項4記載のロッド状構造体。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載のロッド状構造体の両端に接続具を取り付けてなるカラ
ム。
【請求項8】
ロッド状構造体を保護カバーによって被覆してなる請求項7記載のカラム。
【請求項9】
モノリスロッドに外装材を外装する外装工程と、外装材が外装されたモノリスロッドに熱
処理を施してモノリスロッドのモノリス構造を形成する骨格を脱水反応によって外装材に
直接一体的に結合させる結合工程とを備えたことを特徴とするロッド状構造体の製造方法

【請求項10】
モノリスロッドのモノリス構造を形成する骨格を脱水反応によって濡れ層を介在させるこ
となく外装材に直接一体的に結合させる請求項9記載のロッド状構造体の製造方法。

【図1】
image rotate

【図3】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図2】
image rotate

【図4】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2011−59101(P2011−59101A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−165623(P2010−165623)
【出願日】平成22年7月23日(2010.7.23)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)