説明

ロボット群制御装置および方法

【課題】所定エリア内の各ロボットが個別に作業を実行するロボット群システムにおけるロボットの一斉停止を安全に行うこと。
【解決手段】各ロボット100の動作状態及び周囲状態の少なくとも一方を示す状態情報に応じて設定された複数種類のロボット停止手順を格納する停止手順データベース32を準備し、停止指令部34により停止指令が発せられたときに、各ロボット100について状態情報検出部30によって検出される状態情報に基づいて停止手順データベース32からロボット停止手順を選択し、各ロボット100について選択されたロボット停止手順を停止手順指令部38によって実行させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボット群制御装置および方法に関し、特に、移動可能であって個別に作業を実行する複数台のロボットの運転を遠隔制御によって停止させるロボット群制御装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
公共施設やオフィス等、周囲に人が存在する環境下で稼働するロボットにおいて、ロボット搭載のタッチセンサによる対人、対物の物理的接触の検出や、CCDカメラによる画像データに基づく障害物検出や、音声検出部による音声検出等によって、対人的な安全対策とロボットの機体保全対策のために、危険を軽減あるいは回避する対処動作や緊急停止を行う自律動作型のロボットが知られている(たとえば、特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−306247号公報
【特許文献2】特開2010−162619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
移動可能なロボットが公共施設やオフィス等の所定エリア内に複数台配置され、所定エリア内の各ロボットが個別に、来客案内、運搬等の作業(タスク)を実行するロボット群システムにおいて、全ロボットを一括管理する上位のロボット群制御装置が設けられ、ロボット群制御装置に属するモニタに各ロボットの動作状態が表示され、モニタに表示される各ロボットの動作状態を一人のオペレータが目視によって監視することが考えられる。
【0005】
このようなロボット群システムにおいて、オペレータの判断や要求によって或る一台のロボットの稼働を停止させたい場合がある、このような場合には、オペレータの手動操作によって稼働停止対象のロボットに停止指令を送信し、当該ロボットの稼働を停止させればよい。
【0006】
このような場合、オペレータは稼働停止対象のロボットを注視するため、他のロボットの監視が十分に行われなくなる虞があるから、オペレータの判断や要求によって或る一台のロボットの稼働を停止させた場合、ロボット群システムの保全向上のために、他のロボットの稼働を自動的に一斉停止させることが考えられる。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、所定エリア内の各ロボットが個別に作業を実行するロボット群システムにおけるロボットの一斉停止を安全に行うことである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によるロボット制御装置は、移動可能であって個別に作業を実行可能な複数台のロボット(100)を遠隔制御するためのロボット制御装置であって、各ロボットの動作状態及び周囲状態の少なくとも一方を示す状態情報を検出する状態情報検出部(30)と、前記ロボットについて前記状態情報に応じて設定された複数種類のロボット停止手順を格納する停止手順データベース(32)と、オペレータからの指令又は所定の条件下に停止指令を発する停止指令部(34)と、前記停止指令部(34)により停止指令が発せられたときに、各ロボットについて、前記状態情報検出部(30)によって検出される状態情報に基づいて前記停止手順データベース(32)からロボット停止手順を選択する停止手順選択部(36)と、各ロボットについて、選択された前記ロボット停止手順を実行させる停止手順指令部(38)とを有する。
【0009】
この構成によれば、所定エリア内をロボットを一斉停止させる場合、各ロボットが個別に作業を実行していても、各ロボットの状態に応じた最適の停止手順をもって各ロボットが安全に停止する。
【0010】
本発明によるロボット制御装置は、好ましい一つの実施形態では、前記停止指令部(34)は、外部よりの緊急停止命令時、ロボットが実行する作業の編集時、ロボットの走行経路を定義した地図情報の編集時、特定のロボットの動作モードが作業自動実行モードより逐次動作モードに変更された時、ロボット群を監視するオペレータが不在の時の少なくとも一つのときに前記停止指令を発する。
【0011】
本発明によるロボット制御装置は、好ましい一つの実施形態では、前記停止手順データベース(32)が格納している前記ロボット停止手順は、移動の即座停止、退避位置への移動後の停止、移動速度の減速後の停止、実行中作業の即座停止、実行中作業の終了時停止の一つあるいは組み合わせである。
【0012】
本発明によるロボット制御装置は、好ましくは、更に、ロボット群の停止指令が発せられた時に各ロボットが実行している作業に応じて作業継続の優先度を各ロボットについて設定する作業継続優先度設定部(40)を有し、前記停止手順選択部(36)は、前記作業継続優先度設定部(40)が設定した優先度に応じてロボット停止手順を実行中作業終了時停止に変更する。
【0013】
この構成よれば、人と深く関わっている作業が中断されることが回避され、対応している人に不快感や迷惑をかけることがない。
【0014】
本発明によるロボット制御装置は、好ましい一つの実施形態では、前記ロボット状態情報検出部(30)が検出する前記状態情報は、ロボットの移動速度、ロボットの移動位置の通路幅、周囲の人あるいは周囲のロボットの動きの一つあるいは組み合わせである。
【0015】
本発明によるロボット群制御方法は、移動可能であって個別に作業を実行可能な複数台のロボットを遠隔制御するためのロボット群制御方法であって、ロボットの前記状態情報に応じて設定された複数種類のロボット停止手順を格納した停止手順データベースを用い、各ロボットの動作状態及び周囲状態の少なくとも一方を示す状態情報を検出する状態情報検出ステップと、オペレータからの指令又は所定の条件下に停止指令が発せられたときに、各ロボットについて、前記状態情報検出ステップによって検出される状態情報に基づいて前記停止手順データベースからロボット停止手順を選択する停止手順選択ステップと、各ロボットについて、選択された前記ロボット停止手順を実行させる停止手順指令ステップとを有する。
【0016】
この制御方法によれば、所定エリア内をロボットを一斉停止させる場合、各ロボットが個別に作業を実行していても、各ロボットの状態に応じた最適の停止手順をもって各ロボットが安全に停止する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によるロボット群制御装置、制御方法によれば、所定エリア内のロボットを一斉停止させる場合、各ロボットが個別に作業を実行していても、各ロボットの状態に応じた最適の停止手順をもって各ロボットが安全に停止する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明によるロボット群制御装置が用いられたロボット群システムの一つの実施形態を示すシステム構成図。
【図2】本実施形態によるロボット群システムに用いられる人型二足歩行ロボットの制御系のブロック図。
【図3】(A)〜(C)は、停止時のロボットと人との関係を示す説明図。
【図4】本発明によるロボット群制御方法を実施する処理ルーチンを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明によるロボット群制御装置が用いられたロボット群システムの一つの実施形態を、図1を参照して説明する。
【0020】
公共施設やオフィス等の所定のエリアA内に複数台のロボット100が配置されている。ロボット100は、作業を個別に実行するものであり、上位のロボット群制御装置10によって一括管理される。
【0021】
ロボット群制御装置10の説明に先立って、ロボット100について、図2を参照して説明する。ロボット100は、二足歩行を行う公知の人型ロボットであり、マイクロコンピュータを含む主制御部102と、作業(タスク)指令記憶部103と、左眼ビデオカメラ104と、右眼ビデオカメラ106と、背面ビデオカメラ105と、各ビデオカメラ104〜106よりビデオ信号(撮影情報)を入力して画像処理を行う画像処理部108と、マイクロホーン等による音声入力部110と、音声入力部110より音声信号を入力して音声識別を行う音声識別部112と、スピーカ等による音声出力部114と、音声出力部114に出力する音声信号を生成する音声合成部116と、レーザ照射、赤外線照射等による障害物探索部118と、倒立振子安定化制御のためのジャイロセンサ120と、ロボットの頭部、腕部、脚部の運動(動作)を制御する自律運動制御部122と、頭部駆動部124と、腕部駆動部126と、脚部駆動部128と、ロボット群制御装置10と双方向の無線通信を行う無線通信部132と、ロボット全体の電源で再充電可能なバッテリによるバッテリ電源部130とを有する。
【0022】
左眼ビデオカメラ104と右眼ビデオカメラ106はロボット前方(前面)の風景の撮影を行う。これらビデオカメラ104、105による撮影情報は、画像処理部108による画像処理により、ロボット(自機)100の移動位置の通路幅、ロボット(自機)100の周囲の人や他のロボット100の動きを認識するためのロボット100の周囲状態を示す状態情報に変換される。
【0023】
なお、ロボット100にはロボット後方(背面)の風景を撮影する背面ビデオカメラ105が追加されてもよい。また、左眼ビデオカメラ104と右眼ビデオカメラ106と背面ビデオカメラ105は、魚眼レンズによるビデオカメラや旋回式ビデオカメラ等の全方位カメラ107に置き換えることもできる。
【0024】
頭部駆動部124、腕部駆動部126、脚部駆動部128は、各々、サーボモータを含み、移動型ロボット100の頭部、腕部、脚部を駆動する。
【0025】
作業指令記憶部103は、無線通信部132が受信した作業指令を記憶する。主制御部102は、作業実行モード時には、作業指令記憶部103より作業指令を読み出して解析し、作業指令に従って、目的位置への移動、運搬、物品の手渡し、来客者案内、手振りや握手、おじぎによる挨拶等の役務を自律して遂行する。
【0026】
ロボット100の目的位置へ移動は、ジャイロセンサ120よりの信号を参照した倒立振子の安定化制御のもとに、脚部駆動部128による二足歩行により行われる。この歩行は、左眼カメラ104、右眼カメラ106の撮像信号による画像と、障害物探索部118による障害物探索のもとに、移動経路上の人や障害物を避けながら、設定された移動経路に沿って行われる。
【0027】
ロボット100は、移動位置、移動速度、電池(バッテリ)残量、姿勢(頭部、腕部、脚部の動作位置)等の自身の動作状態と、周囲の人あるいは周囲のロボットの動き等の周囲状態を示す状態情報をサイクリック情報として無線通信部132より所定時間ごとにロボット群制御装置10に送信する。
【0028】
図1に示されているように、ロボット群制御装置10には、キーボートや各種のファンクションボタン等を具備した操作盤12と、液晶表示パネル等による画面表示可能なモニタ14と、エリアA内の全ロボット100と双方向に無線通信を行う無線通信部16とが接続されている。
【0029】
ロボット群制御装置10は、マイクロコンピュータシステムによるものであり、作業(タスク)指令部20と作業(タスク)編集部24とを含む。作業指令部20は、操作盤12によるオペレータ操作によって指定された作業指令を作業記憶部22より読み出し、当該作業指令と地図情報記憶部26の地図情報とを指定されたロボット100へ無線通信部16によって送信する。
【0030】
作業編集部24は、操作盤12に設けられた作業編集ボタンがオペレータによって押下されたことによって起動し、オペレータ操作による役務の編集と、地図情報記憶部26に記憶される地図情報を参照した移動経路の編集とを行い、編集完了の作業指令を作業記憶部22に書き込む。作業記憶部22は作業編集部24によって編集された複数の作業指令を読み書き可能に格納するストレージである。
【0031】
地図情報記憶部26は、エリアA内のロボット100が移動(走行)可能な通路等の地図情報を読み書き可能に格納するストレージである。地図情報記憶部26の地図情報は、操作盤12に設けられた地図情報編集ボタンがオペレータによって押下されたことによって起動する地図編集部28によって編集可能である。
【0032】
ロボット群制御装置10は、更に、状態情報検出部30と、停止手順データベース32と、停止指令部34と、停止手順選択部36と、停止手順指令部38とを含んでいる。
【0033】
状態情報検出部30は、無線通信部16が受信する各ロボット100の動作状態及び周囲状態を示す状態情報と、エリアAを広域に監視するビデオカメラ(天井カメラ、レーザレンジファンダ等)42のビデオ映像を取り込み、作業記憶部22より作業に関する情報を、地図情報記憶部26より通路幅等のエリア属性に関する情報を取得し、各ロボット100を状態を検出する。状態情報検出部34が検出する状態情報は、各ロボット100毎に、移動速度、電池残量、移動位置の通路幅、周囲の人および他のロボットの動きがある。状態情報検出部34が検出した各ロボット100の状態情報は、停止手順選択部36と作業(タスク)継続優先度設定部40とに送られる。
【0034】
停止手順データベース32は、ロボット100について前述の状態情報に応じて予め設定された複数種類のロボット停止手順を格納している。停止手順データベース32が格納しているロボット停止手順には、走行移動と、頭部と腕部を含む上半身動作の停止手順がある。走行移動に関しては、移動の即座停止、退避位置への移動後の停止、移動速度の減速後の停止、実行中作業の即座停止、実行中作業の終了時停止の一つあるいは組み合わせがある。上半身動作に関しては、即座停止、減速してホームポジションにて停止、定常速度でホームポジションにて停止、実行中作業の終了後の停止等がある。
【0035】
本実施形態では、停止手順データベース32は、表1に示されているように、ロボット100の状態情報により決められる動作継続度毎に個別のロボット停止手順を格納している。表1に示されている例では、動作継続度が「1」〜「5」の5段階に設定され、動作継続度の数字が大きいほどロボット100が現動作を継続できる状態にあり、動作継続度の数字が小さいほどロボット100が現動作を継続し難い状態にある。
【0036】
【表1】

【0037】
表1に示されている例での動作継続度「1」〜「5」毎のロボット停止手順は、以下の通りである。
【0038】
動作継続度が「1」の場合は、走行移動については減速して停止し、腕部、頭部の上半身動作については上半身動作を即座に停止する。動作継続度が「2」の場合は、走行移動については減速して通路脇等の退避位置へ移動した後に停止し、上半身動作については腕部、頭部の動作速度を減速して腕部、頭部を予め定められているホームポジション(ディフォルト位置)に戻し、ホームポジションに戻った時点で上半身動作を停止する。動作継続度が「3」の場合は、走行移動についてはその場で即座に停止し、上半身動作については腕部、頭部を定常の動作速度のまま予め定められているホームポジションに戻し、ホームポジションに戻った時点で上半身動作を停止する。動作継続度が「4」の場合は、走行移動については定常速度のまま通路脇等の退避位置へ移動した後に停止し、半身動作については腕部、頭部を定常の動作速度のまま予め定められているホームポジションに戻し、ホームポジションに戻った時点で上半身動作を停止する。動作継続度が「5」の場合は、走行移動と上半身動作の双方について現在実行中の作業指令を継続して実行し、作業指令が終了した時点で、走行移動と上半身動作の双方を停止する。
【0039】
停止指令部34は、オペレータが或るロボットを緊急停止させるべく、操作盤12に設けられている緊急停止ボタンがオペレータによって押下された時、あるいは前述の作業編集ボタン、地図情報編集ボタンの何れかがオペレータによって押下された時、あるいはオペレータにより特定のロボット100の動作モードが作業自動実行モードより逐次動作モードに変更された時、あるいはロボット群を監視するオペレータが不在の時に停止指令を発する。ロボット群を監視するオペレータが不在であることの判定は、モニタ14に設けられるビデオカメラ(図示省略)の映像等により行うことができる。
【0040】
停止手順選択部36は、停止指令部34より停止指令が発せられた時に起動し、予め定められた動作継続度決定ルールに従って動作継続度を、状態情報検出部30からの状態情報に応じた各ロボット100毎に算出し、算出した動作継続度に対応するロボット停止手順を停止手順データベース32より選択し、選択したロボット停止手順を停止手順指令部38に渡す。停止手順選択部36における動作継続度決定ルールの一例が表2に示されている。
【0041】
【表2】

【0042】
表2に示されている動作継続度決定ルールは、ロボット100と人との関係とロボット100の移動状態(背面に人が追従している状態での移動、人と正対、人の背後を追従して移動、周囲に人がいない所を移動、移動していない)と、ロボット100の移動速度(高速、低速、ゼロ)と、ロボット100の移動位置の通路幅(広い、狭い)の組み合わせによって、動作継続度を1〜5の5段階に設定する。動作継続度の数字が大きいほど動作継続度が高く、動作継続度の数字が小さいほど動作継続度が低い。この例では、ロボット100が移動していない(停止している)場合や、周囲に人がいなくて通路幅が広い所を移動している場合に、動作継続度が最も高い動作継続度5が設定され、ロボット100が通路幅が狭い所を高速度で移動していて背後に人が追従している場合に、動作継続度が最も低い動作継続度1が設定される。
【0043】
停止手順指令部38は、各ロボット100について停止手順選択部36によって選択されたロボット停止手順の指令を無線通信部16によって対応する各ロボット100を送信し、ロボット停止手順を各ロボット100で自動的に実行させる。
【0044】
これにより、動作継続度が「5」のロボット100は、動作継続度が高いので、実行中の作業を最後まで行った後に停止し、動作継続度が「4」、「3」のロボット100は、通路幅に応じて通路脇に退避した移動停止あるいはその場で移動を停止し、腕部、頭部がホームポジションに戻った時点で上半身動作を停止する。これにより、停止状態のロボット100が不自然な姿勢をとらなくなる。このことは、人との対応が想定される自律ロボットにおいて必要なことであると考えられる。動作継続度が「2」であるロボット100は、動作継続度が低いので、減速して移動停止、上半身動作停止を行い、動作継続度が最も低い「1」であるロボット100は、移動に関しては減速して停止するが、上半身動作については即座に停止する。動作継続度が「1」、「2」では、背面に人が追従している状態での移動であるので、ロボット100の移動が急停止すると、背後の人がロボット100に衝突する虞があるから、減速して移動を停止してする。
【0045】
なお、ロボット100の周囲に人がいる場合には、「停止します」等の音声アナウンスをした後に、ロボット100の停止が行われることが好ましい。
【0046】
本実施形態では、作業継続優先度設定部40は、ロボット100が実行している作業の種類に応じて作業継続の優先度を各ロボット100について設定する。停止手順選択部36は、作業継続優先度設定部40によって設定された作業継続優先度と本来の動作継続度とに応じて、動作継続度を「5」に変更し、実行中の作業が最後まで行われるようにする。
【0047】
これは、握手や物品の手渡し、来客者案内等、人との関わりが深い作業は、作業が実行途中で停止されると、対応している人に不快感や迷惑をかける虞があるので、そのような作業は最後まで行われるようにする。
【0048】
表3は、作業継続優先度設定部40による作業継続優先度設定の一例を示している。作業継続優先度は、「1」〜「10」の10段階に設定されており、作業継続優先度の数字が大きいほど作業継続優先度が高く、作業継続優先度の数字が小さいほど作業継続優先度が低い。
【0049】
【表3】

【0050】
図3(A)に示されているように、通路幅が狭く通路を、ロボットR1が人H1に追従して移動し、ロボットR2が人H1の前方を低速度で目的地へ移動している場合に、ロボットR1に対して緊急停止がかかると、緊急停止対象であるロボットR1は、その場で即座に停止する。ロボットR2の動作継続度は、表2では「3」で、作業継続優先度は、表3では「1」であるので、ロボットR2は、表1の通り、その場で移動を即時に停止する。
【0051】
図3(B)に示されているように、通路幅が狭く通路を、ロボットR1が人H1に追従して移動し、ロボットR2が人H1の前方を高速度で目的地へ移動している場合に、ロボットR1に対して緊急停止がかけると、緊急停止対象であるロボットR1は、その場で即座に停止する。ロボットR2の動作継続度は、表2では「1」で、作業継続優先度は、表3では「1」であるので、ロボットR2は、表1の通り、減速後に移動を停止する。
【0052】
通路幅が狭く、ロボットR2が通路脇へ退避するゆとりがなく、ロボットR2が高速移動いているため、ロボットR2を即時停止すると、後続の人H1がロボットR2に衝突する虞があるので、ロボットR2は、「停止します」等の音声アナウンスをしながら、減速しつつ移動を停止すればよい。
【0053】
図3(C)に示されているように、通路幅が狭く通路を、ロボットR1が人H1に追従して移動し、ロボットR2が人H1の前方を低速度で人H2を案内している場合に、ロボットR1に対して緊急停止がかけると、緊急停止対象であるロボットR1は、その場で即座に停止する。ロボットR2の動作継続度は、表2では「3」で、作業継続優先度は、表3では「「10」であるので、ロボットR2は、表1の停止手順を変更して作業継続優先度が高い人H2の案内を続行する。あるいは、ロボットR2は、案内中の人H2に対して案内を中止する旨のアナウンスを行って人H2の案内を停止してもよい。
【0054】
なお、各ロボット100の動作継続度、作業継続優先度は、モニタ14に表示され、オペレータに報告することもできる。
【0055】
次に、本実施形態によるロボット群制御装置10によって実施される本実施形態によるロボット群制御方法の処理ルーチンを、図4のフローチャートを参照して説明する。
【0056】
まず、各ロボット100の状態情報を取得する(ステップS10)。次に、取得した状態情報に基づいて各ロボット100の動作継続度を算出し(ステップS11)、動作継続度に応じた停止手順を各ロボット100について決定する(ステップS12)。
【0057】
次に、各ロボット100が実行している作業に応じて作業継続優先度を算出し(ステップS13)、算出した作業継続優先度に応じて作業継続のための停止手順の変更を行う(ステップS14)。そして、緊急停止対象のロボット100と状態が類似するロボツト100停止手順の変更を行い(ステップS15)、停止手順指令を各ロボット100へ出力する(ステップS16)。
【0058】
次に、停止制御開始後、予め定められたt秒以内に、すべてのロボット100の停止が完了したか否かを判別する(ステップS17)。t秒以内に、すべてのロボット100の停止が完了した場合には、このルーチンを終了する。これに対し、停止が完了しない場合には、このルーチンを最初から繰り返す。
【0059】
動作継続度は、上述の実施形態以外に、次のような関数式によって定義することもできる。
【0060】
動作継続度=f(ω1×移動速度、ω2×人との相対位置および相対速度、ω3×通路幅、ω4×作業継続優先度、ω5×実行作業による腕部運動範囲、ω6×実行作業による腕部と人との接触、ω7×電池残量(SOC)、ω8×充電ステーションまでの距離、ω9×退避可能な場所までの距離、ω9×発生したエラー種別とレベル、ω10×周囲の人の密度、ω11×エリア属性、ω12×時刻、ω13×作業の類似度)
【0061】
ω1〜ω13は、重み付け係数であり、各項目ごとに適正値が設定されればよい。なお、エリア属性とは、たとえば、ドアの裏側スペース、休憩場所、通路の交差部等である。
【0062】
また、ロボット100の動作継続度が低い場合には、動作継続度が低いロボット100以外への操作を低減してもよい。この場合には、動作継続度が低いロボット100の非常停止ボタンにのみフォーカスしたり、ポインタを固定したりすることができる。また、すべてのロボット100の停止が完了するまで、ログのモニタ出力をブロックし、オペレータの注意が現在注目しているロボットの状況に向くようにするとよい。
【符号の説明】
【0063】
10 ロボット群制御装置
12 操作盤
14 モニタ
16 無線通信部
20 作業指令部
22 作業記憶部
24 作業編集部
26 地図情報記憶部
28 地図情報編集部
30 状態情報検出部
32 停止手順データベース
34 停止指令部
36 停止手順選択部
38 停止手順指令部
40 作業継続優先度設定部
100 ロボット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動可能であって個別に作業を実行可能な複数台のロボットを遠隔制御するためのロボット群制御装置であって、
各ロボットの動作状態及び周囲状態の少なくとも一方を示す状態情報を検出する状態情報検出部と、
前記ロボットの前記状態情報に応じて設定された複数種類のロボット停止手順を格納する停止手順データベースと、
オペレータからの指令又は所定の条件下に停止指令を発する停止指令部と、
前記停止指令部により停止指令が発せられたときに、各ロボットについて、前記状態情報検出部によって検出される状態情報に基づいて前記停止手順データベースからロボット停止手順を選択する停止手順選択部と、
各ロボットについて、選択された前記ロボット停止手順を実行させる停止手順指令部と、
を有するロボット群制御装置。
【請求項2】
前記停止指令部は、外部よりの緊急停止命令時、ロボットが実行する作業の編集時、ロボットの走行経路を定義した地図情報の編集時、特定のロボットの動作モードが作業自動実行モードより逐次動作モードに変更された時、ロボット群を監視するオペレータが不在の時の少なくとも一つのときに前記停止指令を発する請求項1に記載のロボット群制御装置。
【請求項3】
前記停止手順データベースが格納している前記ロボット停止手順は、移動の即座停止、退避位置への移動後の停止、移動速度の減速後の停止、実行中作業の即座停止、実行中作業の終了時停止の一つあるいは組み合わせである請求項1または2に記載のロボット群制御装置。
【請求項4】
ロボット群の停止指令が発せられた時に各ロボットが実行している作業に応じて作業継続の優先度を各ロボットについて設定する作業継続優先度設定部を有し、
前記停止手順選択部は、前記作業継続優先度設定部が設定した優先度に応じてロボット停止手順を実行中作業終了時停止に変更する請求項3に記載のロボット群制御装置。
【請求項5】
前記ロボット状態情報検出部が検出する前記状態情報は、ロボットの移動速度、ロボットの移動位置の通路幅、周囲の人あるいは周囲のロボットの動きの一つあるいは組み合わせである請求項1から4の何れか一項に記載のロボット群制御装置。
【請求項6】
移動可能であって個別に作業を実行可能な複数台のロボットを遠隔制御するためのロボット群制御方法であって、
ロボットの前記状態情報に応じて設定された複数種類のロボット停止手順を格納した停止手順データベースを用い、
各ロボットの動作状態及び周囲状態の少なくとも一方を示す状態情報を検出する状態情報検出ステップと、
オペレータからの指令又は所定の条件下に停止指令が発せられたときに、各ロボットについて、前記状態情報検出ステップによって検出される状態情報に基づいて前記停止手順データベースからロボット停止手順を選択する停止手順選択ステップと、
各ロボットについて、選択された前記ロボット停止手順を実行させる停止手順指令ステップと、
を有するロボット群制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−223847(P2012−223847A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−92614(P2011−92614)
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】