説明

ロングシートの座席を仕切る区画ベルト

【課題】 鉄道車両の急停止時や列車衝突時の乗客同士のぶつかり合いによる傷害を軽減することができる、ロングシートの座席を仕切る区画ベルトを提供する。
【解決手段】 鉄道車両内のロングシートを仕切る区画ベルトにおいて、布製の区画ベルト4と、この区画ベルト4に印加される張力を検出する張力検知センサ5と、前記張力検知センサ5からの出力に基づいて、前記区画ベルト4に張力が掛かるように動作する張力付与装置9を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両などのロングシートを仕切る区画ベルトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道車両内のロングシートにおいては、ロングシートの両端に袖仕切り板が配置されている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4387890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のロングシートの場合は、複数の乗客が区画なしに着席するようになっている。そのため、鉄道車両が急停止したような場合や列車の衝突事故などの場合に、図8に示すように、ロングシート101に着席している複数の乗客が袖仕切り板102の横に座る乗客Aに重なるように倒れ混み、その乗客Aに傷害を負わせるといった問題があった。
【0005】
本発明は、上記状況に鑑みて、鉄道車両の急停止時や列車衝突時の乗客同士のぶつかり合いによる傷害を軽減することができる、ロングシートの座席を仕切る区画ベルトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕鉄道車両内のロングシートを仕切る区画ベルトであって、布製の区画ベルトと、この区画ベルトに印加される張力を検出する張力検知センサと、前記張力検知センサからの出力に基づいて、前記区画ベルトに張力が掛かるように動作する張力付与装置を具備することを特徴とする。
【0007】
〔2〕上記〔1〕記載の鉄道車両内のロングシートを仕切る区画ベルトであって、前記区画ベルトはロングシートの背もたれと荷台から延びる手すりとの間に配置されることを特徴とする。
〔3〕上記〔1〕又は〔2〕記載の鉄道車両内のロングシートを仕切る区画ベルトであって、この区画ベルトの上端高さが車両床面から約1000mmであることを特徴とする。
【0008】
〔4〕上記〔1〕記載の鉄道車両内のロングシートを仕切る区画ベルトであって、背もたれから座席の前面端部へ向かって配置される幅広の布製のベルトであることを特徴とする。
〔5〕上記〔1〕記載の鉄道車両内のロングシートを仕切る区画ベルトであって、背もたれから座席の前面端部へ向かって三角形状に配置されることを特徴とする。
【0009】
〔6〕上記〔5〕記載の鉄道車両内のロングシートを仕切る区画ベルトであって、前記ロングシートが折りたためる座席にも適用可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、次のような効果を奏することができる。
(1)鉄道車両の急停止時や列車衝突時の乗客同士の重なるぶつかり合いによる傷害を軽減することができる。
(2)従来の仕切り板と比較して仕切るベルトは布製であるので、頭部が当たったとしても傷害は低減される。
【0011】
(3)従来の仕切り板より薄くなり、現状の車内の腰掛けにも設置しやすい。
(4)従来の仕切り板と比較して車内の閉塞感が無い。
(5)従来の仕切り板と比較して体格が大きい人でも対応が可能である。
(6)腰掛けが折りたためる仕様のロングシートにも適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施例を示す鉄道車両内のロングシートの上面図である。
【図2】本発明の第1実施例を示す鉄道車両内のロングシートの区画ベルトの側面図である。
【図3】本発明の第1実施例を示す鉄道車両内のロングシートの通常時の使用態様を示す上面図である。
【図4】本発明の第2実施例を示す鉄道車両内のロングシートの上面図である。
【図5】本発明の第2実施例を示す鉄道車両内のロングシートの区画ベルトの側面図である。
【図6】本発明の第2実施例を示す鉄道車両内のロングシートの通常時の使用態様を示す上面図である。
【図7】本発明の第3実施例を示す鉄道車両内のロングシートの区画ベルトの側面図である。
【図8】従来の鉄道車両内のロングシートの問題点を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の車内のロングシートを仕切る区画ベルトは、布製の区画ベルトと、この区画ベルトに印加される張力を検出する張力検知センサと、前記張力検知センサからの出力に基づいて、前記区画ベルトに張力が掛かるように動作する張力付与装置を具備する。
【実施例】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は本発明の第1実施例を示す鉄道車両内のロングシートの上面図、図2はその鉄道車両内のロングシートの区画ベルトの側面図、図3はその鉄道車両内のロングシートの通常時の使用態様を示す上面図である。
これらの図において、1はロングシート、1Aはロングシート1の背もたれ、2は袖仕切り板、3は荷棚から延びる手すり、4は手すり3とロングシート1の背もたれ1Aの間に配置される区画ベルト、5は区画ベルト4の張力検知センサであり、背もたれ1Aの内部に配置される。ここで、区画ベルト4は布製のベルトからなり、この区画ベルト4に強い張力が印加されると、その張力を張力検知センサ5で検知する。次いで、この検知された張力に基づいて、巻き掛け部6A,6Bに掛けられ区画ベルト4に接続されているワイヤ7が、張力付与装置9を動作させる。この張力付与装置9は、ピストン8Aがスライド可能に挿入されたシリンダ8Bと、シリンダ8Bの一端からガスを供給するマイクロガスジェネレータ(MGG)8Cとから構成されている。また、区画ベルト4は上端高さが車両床面から約1000mm(成人男性の肩位)となるようにするのが好適である。なお、Bはロングシート1へ着席する乗客である。
【0015】
また、区画ベルト4として布製のベルトを用いるようにしたので、図3に示すように、通常の使用時に座席aに肩幅の広い乗客Cが、座席bに肩幅の狭い乗客Dが隣り合って着席するような場合にも、区画ベルト4が撓むので乗客Cは窮屈な思いをせず、互いに占有面積を融通し合って乗車することができる。
図4は本発明の第2実施例を示す鉄道車両内のロングシートの上面図、図5はその鉄道車両内のロングシートの区画ベルトの側面図、図6はその鉄道車両内のロングシートの通常時の使用態様を示す上面図である。
【0016】
これらの図において、11はロングシート、11Aはロングシート11の背もたれ、12は袖仕切り板、13はロングシート11の背もたれ11Aから座席の前面の手すり、14は手すり13から背もたれ11A間に配置される幅広の布製の区画ベルト、15は区画ベルト14の張力付与装置である。ここで、この区画ベルト14に強い張力が印加されると、区画ベルト14へ張力が掛かるように区画ベルト14の張力付与装置15を動作させる。なお、図5において、Eはロングシート11へ着席する乗客である。
【0017】
このように、区画ベルトとして幅広の布製の区画ベルト14を用い、しかもロングシート11の背もたれ11Aから座席の手すり13に向かって配置される幅広の布製の区画ベルトとしたので、乗客Eの接触面積が広くなり、身体の局所への過度の接触圧がかかるのを和らげることができる利点がある。
また、通常の使用時に図6に示すように、座席cに肩幅の広い乗客Eが、座席dに肩幅の狭い乗客Gが隣り合って着席するような場合も、区画ベルト23が撓むので乗客Fは窮屈な思いをせず、互いに占有面積を融通し合って乗車することができる。
【0018】
図7は本発明の第3実施例を示す鉄道車両内のロングシートの区画ベルトの側面図である。
この図において、21はロングシート、21Aはロングシート21の背もたれ、22は袖仕切り板、23はロングシート21の背もたれ21Aから座席の前面端部へ三角形状に配置される区画ベルト、24は区画ベルト23の張力付与装置である。ここで、上記したと同様に、区画ベルト23は布製のベルトからなり、この区画ベルト23に強い張力が印加されると、区画ベルト23へ張力が掛かるように区画ベルト23の張力付与装置24を動作させる。なお、図7において、Fはロングシート21へ着席する乗客である。
【0019】
このように、区画ベルト23として布製のベルトを用い、しかもロングシート21の背もたれ21Aから座席の前面端部へ向かって三角形状に配置される区画ベルトとしたので、区画間に配置する手すりを省略することができ、区画されても、より開放的であり、子供などの座席として好適である。
また、この実施例の区画ベルトは布製のベルトであり、設置に手すりを必要としないので、ロングシートが折りたためる座席に対しても適用できる利点がある。
【0020】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明のロングシートの座席を仕切る区画ベルトは、鉄道車両の急停止時や列車衝突時の乗客同士のぶつかり合いによる傷害を軽減することができる、ロングシートの座席を仕切る区画ベルトとして利用可能である。
【符号の説明】
【0022】
1,11,21 ロングシート
1A,11A,21A ロングシートの背もたれ
2,12,22 袖仕切り板
3,13 荷棚から延びる手すり
4 区画ベルト
5 張力検知センサ
6A,6B 巻き掛け部
7 ワイヤ
8A ピストン
8B シリンダ
8C マイクロガスジェネレータ(MGG)
9,15,24 張力付与装置
14 幅広の布製の区画ベルト
B,E,F ロングシートへ着席する乗客
23 三角形状に配置される区画ベルト
C,F 肩幅の広い乗客
D,G 肩幅の狭い乗客
a,b,c,d 区画された座席

【特許請求の範囲】
【請求項1】
布製の区画ベルトと、該区画ベルトに印加される張力を検出する張力検知センサと、前記張力検知センサからの出力に基づいて、前記区画ベルトに張力が掛かるように動作する張力付与装置を具備することを特徴とする鉄道車両内のロングシートを仕切る区画ベルト。
【請求項2】
請求項1記載の鉄道車両内のロングシートを仕切る区画ベルトであって、前記区画ベルトはロングシートの背もたれと荷台から延びる手すりとの間に配置されることを特徴とする鉄道車両内のロングシートを仕切る区画ベルト。
【請求項3】
請求項1又は2記載の鉄道車両内のロングシートを仕切る区画ベルトであって、該区画ベルトの上端高さが車両床面から約1000mmであることを特徴とする鉄道車両内のロングシートを仕切る区画ベルト。
【請求項4】
請求項1記載の鉄道車両内のロングシートを仕切る区画ベルトであって、背もたれから座席の前面端部へ向かって配置される幅広の布製のベルトであることを特徴とする鉄道車両内のロングシートを仕切る区画ベルト。
【請求項5】
請求項1記載の鉄道車両内のロングシートを仕切る区画ベルトであって、背もたれから座席の前面端部へ向かって三角形状に配置されることを特徴とする鉄道車両内のロングシートを仕切る区画ベルト。。
【請求項6】
請求項5記載の鉄道車両内のロングシートを仕切る区画ベルトであって、前記ロングシートが折りたためる座席にも適用可能であることを特徴とする。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−32055(P2013−32055A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−168048(P2011−168048)
【出願日】平成23年8月1日(2011.8.1)
【出願人】(000173784)公益財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)