説明

ローゼルの栽培方法

【課題】 ローゼルの葉をお茶や飲料などの食材として有効活用するためのローゼルの栽培方法に関する。
【解決手段】 本発明のローゼルの栽培方法は、年に複数回葉を刈取りまたは摘み取り、ガクをも収穫して有効利用する栽培方法である。ローゼルが持つ本来の栄養価を充分に摂取することができ、多種多様な食材として利用することにより抗酸化作用と健康促進に効果的である。
また、葉やガクの収穫後茎を抜取り、茎を和紙や布などの材料として余すところなく活用する栽培方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ローゼルの栽培に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のローゼルは、ガクの収穫のみに焦点を当てる栽培がされており、葉を収穫して活用するという概念が無かった。3月下旬頃から6月頃にかけて作付けし、11月中旬から1月上旬にガクの収穫期を迎える栽培方法が取られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
以上に述べた従来の栽培方法はガクのみを収穫し、食材となり得る葉を廃棄処分していることとなる。
【0004】
また、ガクを収穫するまで育成させることで土地が痩せ、連作障害を起こす可能性が高くなる。
【0005】
さらに、種蒔きあるいは苗の植付けをしてからガクの収穫期までの間には度重なる台風等が到来し、台風などの被害をうけた場合には何ら収穫に至らない場合もある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記目的を達成するために第1の手段として、ローゼルの種を蒔き、または苗を植えて本葉を4枚以上に成長させ、それ以降に所定の時期に主茎を所定部分から刈取るまたは摘み取り、その後花芽がついた段階以前に複数回葉を刈取るまたは摘み取ることを特徴とするローゼルの栽培方法である。
【0007】
第2の課題解決手段は、上記、主茎と葉の所定部分を同時に刈取るまたは摘み取ることを特徴とする請求項1に記載のローゼルの栽培方法である。
【0008】
また、第3の課題解決手段は、土地を2つに分割し、第1の土地ではローゼルを成長させながら複数回葉を収穫した後、少なくとも花芽がついた段階以前でローゼルの株を抜き取り、抜き取った後の土地の土作りを行い、第2の土地では成長させながら複数回葉を収穫した後、ガク及び花を収穫した後に株を抜き取り、抜き取った後の土地の土作りを行い、次期は土地利用を反転させて第1の土地で第2の土地での栽培方法を行い、第2の土地では第1の土地での栽培方法を行うことを特徴とするローゼルの栽培方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、これまで廃棄処分されていた葉を年に複数回収穫することで、食材などとして有効活用するものである。さらに、ローゼルの花・茎・ガクを使用することで、ローゼルが持つ本来の栄養価を充分に摂取することができる。
【0010】
ローゼルは花を咲かせガクを形成するために多くの栄養分を必要とし、ガクの収穫まで行うと土地が痩せ、連作障害を起こす可能性が高くなる。しかし本発明では年に複数回葉を収穫した後に株を抜き取り、抜き取った後の土地の土作りを行うことで、連作障害を起こさずに次期には同じ土地でガクまで収穫する栽培を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施例について詳述する。
【0012】
本発明のローゼル(Roselle)は、学名をHibiscus sabdariffa Linnというが、ローゼラ(Rosella)、ロゼリーRozeller、Rozelle、red sorrel、Jelly okraなどの名称でも記載されている。
さらに、中国では玖瑰麻、珀瑰茄、マレーシアではAssam wolanda、インドではPatwa、mesta、タイではKachieb priewなどと称している。
本発明におけるローゼルは、上記のいずれをも含むものである。
【実施例】
【0013】
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明は以下の記載例に限定されるものではない。
なお、全ての実施例において諸条件を固定してローゼルを栽培した。諸条件とは、東向きのph5の酸性土の栽培地において平成18年3月15日に種蒔きしたものである。
<実施例1>
図1は、主茎の刈取り時期が及ぼすその後の育成状況を検証したものである。
図1(a)のローゼルは種蒔きして発芽させ、本葉が5枚になるまで成長したときに上から2枚目の葉までを主茎ごと刈取った。2週間後に確認すると、多くの脇芽が成長して枝の数が増え、葉の量も著しく増えていた。
【0014】
<比較例1>
図1(b)のローゼルは種蒔きして発芽させ、本葉が3枚になるまで成長したときに上から1枚目の葉までを主茎ごと刈取った。2週間後に確認すると、1本の脇芽が成長していたが茎が細く発育が芳しくなかった。
図1(b)のローゼルは図1(a)のローゼルと比較して株全体の成長が乏しく、葉の全体量も少なかった。図1(b)のローゼルはその後の発育も悪く、結果として花芽を形成するまでには成長しなかった。
図1(a)のローゼルはその後の脇芽の成長も順調で、10月12日に第1番目の花芽の形成を確認することができた。
【0015】
以上から、ローゼルは基本栄養生長期間が比較的長い植物であることが分かる。請求項1に記載するローゼルの栽培方法では、本葉を4枚以上に成長させ、それ以降に所定の時期に所定部分から主茎を刈取ることを特徴としている。図1の(a)と(b)の比較例から明らかなように、第1回目の主茎の刈取りを本葉が3枚の幼植物時期に行うとその後の成長を妨げるので、本葉を4枚以上に成長させた以降に主茎を含めた葉の刈取りを行うことが望ましいといえる。
【0016】
<実施例2>
実施例1の株はその後も順調に発育し、6月2日には草丈が50cmに達した。図2は、主茎の整枝操作が及ぼす生育状況の図である。図2(c)に示すように、上から15cmの部分を主茎ごと刈取って第1回目の葉を収穫行った。その後、主茎の発育が止まり、その代わりに脇芽が多く出てきて葉が茂り、2ヵ月後の8月2日には80cmの背丈に成長した。
【0017】
本発明のローゼルの栽培方法では、主茎及び葉を刈取るまたは摘み取っても脇から新芽が伸び、育成に影響を与えないことが分かる。さらに、ローゼルは主茎を刈取るまたは摘み取って多本仕立てで栽培すると、側枝が伸張することが明らかとなった。
【0018】
<比較例2>
図2(d)に示すように、整枝操作を行わなかったローゼルは2ヵ月後には150cmの背丈に成長したが、枝数は変わらなかった。その後も成長を続け、12月1日には2m30cmの背丈となった。
その後も上部の刈取りを2回行った結果、12月1日には165cmの背丈に成長し、ガクの収穫も行うことができた。
【0019】
<実施例3>
図3は、請求項3におけるローゼルの栽培と収穫の手順を示す図である。
第1回目の葉の収穫を6月2日に行い、さらに背丈が80cm成長した8月2日に、上から20cmの部分を主茎ごと刈取って第2回目の葉の収穫を行った。
その後、上記第1の土地と第2の土地に分けた。第1の土地では株を抜き取り、抜き取った後の土地の土作りを行った。第2の土地では2回目の葉の収穫を行った後も順調に育成させ、10月12日に第1番目の花芽の形成を確認することができた。第2の土地では花を咲かせてガクを成長させ、ガクの収穫も行った。そしてガクの収穫後に株を抜き取り、抜き取った後の土作りを行った。
図4は、ローゼルの栽培方法と栽培に適した条件を示す図である。図に示すとおり、第1の土地ではガクの収穫を行わずに土作りを開始し、約4ヶ月の土作り期間を設けた。第2の土地ではガクの収穫を行った後に土作りを開始し、約1ヶ月の土作り期間を設けた。
第1の土地並びに第2の土地ともどもローゼルは順調に成長し、第1の土地では2回の葉の収穫を行うことができ、株を抜き取った後の土地の土作りも次期に向けて充分に行うことができた。第2の土地では2回の葉の収穫を行った後も育成を続け、従来のローゼル栽培方法を行った場合と同量のガクを収穫することができた。
【0020】
<比較例3>
ローゼル栽培の現状は、ほとんどがガクの収穫のみを行っている。
【0021】
次期に同じ土地でローゼルを栽培する場合には、前期の畝間に種蒔きあるいは苗を植えることで、より連作障害を免れやすくなる。
【0022】
ローゼルは5度以上の気候であれば発芽するので、条件が整えば1月でも種蒔きをすることができる。1月〜3月の間に発芽させれば、台風が到来する前に第1回目の葉の収穫を行うことができ、台風の被害を受ける前に少なくとも収益を上げることが可能となる。
【0023】
主茎の刈取りまたは摘み取りをせず整枝操作を行わないと、条件や環境によっては成長して2〜3mの草丈またはそれ以上に成長する。複数回葉を刈取るまたは摘み取ることで、従来の栽培方法に比べてローゼルの背丈を高く成長させることなく台風時期を乗り越えることができるため、台風による被害を最小限に抑える効果もある。
【0024】
主茎を刈取るまたは摘み取るという整枝操作を行うものと行わないものでは、ガクの収穫時期に65cmの伸長差を確認することができた。本発明における栽培方法を行うと、背丈を高く成長させることなく台風時期を乗り越えることができ、台風による被害を最小限に抑えることができることが確認できた。
【0025】
ローゼルは基本栄養生長期間が比較的長く、光強度・肥料条件に強く反応する植物である。従って本葉が3枚程度の幼植物時期に短日処理を行っても花芽を形成する可能性が低い。草丈が50cm以上に成長したローゼルに短日処理を行うと、花芽の形成を早めることができる。
【0026】
ローゼルは短日植物であるので、昼の長さ(夜の長さ)がある一定の短さになると、それに反応して花芽をつける。ある日照時間に達すること、つまり昼間と夜間の時間差がある一定に達すると花芽が出てくるので、それ以降はガクを収穫する土地では葉の刈取りまたは摘み取りを行わない。
本発明においては、ガクを収穫する土地では秋分の前後2週間を境に葉の刈取りを終了し、花芽を成長させる。
【0027】
また、圃場での栽培または温室栽培であっても、刈取りまたは摘み取り及び栽培の条件は変わらない。
【産業上の利用可能性】
【0028】
これまでローゼルの葉は栄養価が高いにもかかわらず、廃棄処分されることが多かった。本発明はガクのみならず葉を有効利用するための栽培方法である。資源の有効活用に寄与するとともに、従来の栽培方法に比べてローゼルの背丈を高く成長させることなく台風時期を乗り越えることができるため、台風による被害を最小限に抑える効果もある。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】主茎の刈取りのタイミングが及ぼす生育状況の比較図
【図2】ローゼルの栽培と収穫の手順を示す図
【図3】ローゼルの栽培サイクルと栽培の最適な条件を示す図
【図4】主茎の整枝操作が及ぼす生育状況の比較図
【図5】第1の土地と第2の土地における土作り期間を示す図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローゼルの種を蒔き、または苗を植えて本葉を4枚以上に成長させ、それ以降に所定の時期に主茎を所定部分から刈取るまたは摘み取り、その後花芽がついた段階以前に複数回葉を刈取るまたは摘み取ることを特徴とするローゼルの栽培方法。
【請求項2】
上記、主茎と葉の所定部分を同時に刈取るまたは摘み取ることを特徴とする請求項1に記載のローゼルの栽培方法。
【請求項3】
土地を2つに分割し、第1の土地ではローゼルを成長させながら複数回葉を収穫した後、少なくとも花芽がついた段階以前でローゼルの株を抜き取り、抜き取った後の土地の土作りを行い、第2の土地では成長させながら複数回葉を収穫した後、ガク及び花を収穫した後に株を抜き取り、抜き取った後の土地の土作りを行い、次期は土地利用を反転させて第1の土地で第2の土地での栽培方法を行い、第2の土地では第1の土地での栽培方法を行うことを特徴とするローゼルの栽培方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−22247(P2010−22247A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−185842(P2008−185842)
【出願日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(599039326)
【出願人】(507381824)
【Fターム(参考)】