説明

ロータリキルンによる廃棄物処理方法および廃棄物処理用ロータリキルン

【目的】 廃棄物をロータリキルン1内で熱分解する場合、熱分解段階で発生する高濃度HClガスを発生段階で中和し固定する。
【構成】 廃棄物3をロータリキルン1内で焼却あるいは抑制燃焼により熱分解する場合、炉前側固定フードからロータリキルン1内のガス流れ方向に消石灰等のアルカリの粉末もしくは、スラリーもしくは水溶液を噴霧する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、紙類,繊維類,ちゅう芥,木草類,プラスチック類,ゴム,皮革等の炭化水素系可燃物あるいはガラス,金属,土砂,コンクリート,陶磁器等の不燃物からなる廃棄物を熱分解により処理するロータリキルンによる廃棄物処理方法および廃棄物処理用ロータリキルンに関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、ロータリキルンを使用する廃棄物処理方式としては、次の方式が知られている。
(1)図5に示すように、廃棄物3をロータリキルン1内で抑制燃焼により熱分解し、そのロータリキルン1から排出された残渣を後燃焼ストーカ4により焼却すると共に、熱分解ガスを再燃室5内で燃焼させ、その再燃室5内で発生した高温排ガスをボイラ6に通して冷却したのち、その排ガス中のダストを電気集塵機7により除去し、次にダスト除去後の排ガスを、空気予熱器8に導いて冷却し、次いで湿式洗煙装置9に導いて、NaOH水溶液などのアルカリ水溶液によりHCl,SOX を吸収して除去する方式。
【0003】(2)図6に示すように、ボイラ6からの排出ガスを半乾式反応塔10に供給すると共に、消石灰粉ホッパー11を接続した消石灰スラリタンク12から消石灰スラリをポンプ13により半乾式反応塔10内に噴霧し、スラリ中の水分蒸発により前記排出ガスを冷却すると同時に、消石灰との反応によりHCl,SOxをCaCl2 ,CaSO4 として粉末中に吸収固定し、次いでバグフィルタ14により前記粉末をダストと共に除去する方式。
【0004】(3)図7に示すように、ボイラ6からの排出ガスを減温装置15に供給して水噴霧により減温し、減温装置15のガス排出口とバクフィルタ14のガス入口とを接続するガスダクト16内に、消石灰粉ホッパー11を接続した定量切出フィーダ12から消石灰粉末を粉体輸送ブロア13により噴霧し、消石灰との反応により、HCl,SOxをCaCl2 ,CaSO4 として粉末中に吸収固定し、次いでバグフィルタ14により前記粉末をダストと共に除去する方式。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】前記従来の(1)〜(3)の廃棄物処理方式の場合は、燃焼部,ボイラ6,電気集塵機7および煙道が高濃度の酸性ガスにさらされるので、耐食構造に留意する必要があり、そのため耐火物や保温層を施工する必要があるので、廃棄物処理設備の製作コストが高くなり、かつボイラのチューブ温度を一定範囲内とするため、節炭器やスーパヒータが設けられず、熱効率が低いという欠点がある。また廃棄物処理設備が腐食し易いので寿命が短かく、さらに洗煙装置の入口の酸性ガス負荷量が大きいので、洗煙装置の処理容量を大きくする必要があり、設備費が高くなる。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、前記課題を有利に解決するために、廃棄物3をロータリキルン1内で焼却あるいは抑制燃焼あるいは外部からの間接加熱により熱分解する場合、ロータリキルン1の炉前側固定フードからガス流れ方向に消石灰等のアルカリの粉末もしくは、スラリーもしくは水溶液を噴霧する。
【0007】
【実施例】図1および図2は本発明の第1実施例を示すものであって、駆動装置(図示を省略した)により回転されるロータリキルン1の炉前側固定フード内に点火用バーナ18と抑制燃焼用空気供給管19とロータリキルン1内のガス流れ方向に消石灰等のアルカリ粉末を噴霧するアルカリ噴霧ノズル2とが設けられ、廃棄物3を収容したホッパ20の下部にスクリュウフィーダ21の基端部が接続され、そのスクリュウフィーダ21の先端部に接続された廃棄物装入シュート22の排出口はロータリキルン1の炉前側固定フード内に配置され、消石灰粉末等のアルカリ粉末を収容したアルカリ粉末ホッパー23の下部は定量切出しフィーダ24を介して風力圧送管25に接続され、その風力圧送管25の一端部は粉体輸送ブロア26に接続され、かつ風力圧送管25の他端部はアルカリ噴霧ノズル2に接続されている。
【0008】前記ロータリキルン1の炉尻側固定フードの下部に、縦型のコークスベッド溶融炉27の炉頂部が接続され、そのコークスベッド溶融炉27の下部排出口に、高温ガス供給口を有する高温保持炉28の上部が接続され、その高温保持炉28の下端開口部は、レーキ式残渣掻上排出装置29を有する水砕冷却槽30の水中に配置され、かつコークスベッド溶融炉27の下部に、これを囲む環状空気供給管31が設けられ、その環状空気供給管31とコークスベッド溶融炉27の下部とは複数の送気管32を介して接続され、送風機により環状空気供給管31に供給された空気および酸素は、複数の送気管32を経てコークスベッド溶融炉27の下部に供給される。
【0009】ロータリキルン1の炉尻側固定フードの上部は、管路を介してサイクロン33の上部の周壁に接続され、そのサイクロン33の中央上部の排気口は管路を介して2次燃焼炉45,タービン46を運転するためのボイラ6,電気集塵機7,空気予熱機8および湿式洗煙装置9に順次接続され、湿式洗煙装置9の排ガス出口は送風機39を介して白煙防止器34の排ガス入口に接続され、その白煙防止器34の排ガス出口は煙突35に接続されている。また前記電気集塵機7の排ガス出口は、管路及び送風機20を介して分岐しロータリキルン1の炉前に設けられた給気ノズル19に接続されている。
【0010】湿式洗煙装置9内の下部に水40が収容され、その洗煙装置9には、充填物41が設けられ、かつ循環ポンプ42の吹込口は湿式洗煙装置9の水中に配置され、その循環ポンプ42の吐出管は充填物41の上部に開口し、さらに循環ポンプ42の分岐吐出管43は排水処理装置44に接続されている。
【0011】前記実施例の装置において、ホッパ20内の廃棄物3はスクリュウフィーダ21およびシュート22を経てロータリキルン1の炉前側固定フード内に供給され、ロータリキルン1内において抑制燃焼により熱分解され、ロータリキルン内の約300℃に加熱されるゾーンで高濃度のHClガスを生成する。一方、アルカリ粉末ホッパー23内の消石灰等のアルカリ粉末は、ロータリキルン1の炉前側固定フードに設けられたアルカリ噴霧ノズル2から、ロータリキルン1内のガス流れ方向に噴霧され前述のロータリキルン1内の高濃度のHClガス生成ゾーンで乾式中和する。さらに、ロータリキルン1からコークスベッド溶融炉27内に排出された熱分解残渣は、コークスベッド溶融炉27内の還元性雰囲気において溶融され、コークスベッド溶融炉27の下部排出口から排出された溶融スラグは、高温保持炉28を通って水砕冷却槽30の水中に落下して水砕及び急冷される。
【0012】コークスベッド溶融炉27の上部から排出された排ガスは、サイクロン33に送られ固形物が分離除去されたのち、ボイラ6を経て電気集塵機7に送られて除塵され、その電気集塵機7から排出された排ガスは、空気予熱機8,湿式洗煙装置9および白煙防止器34を経て煙突35から排出される。
【0013】図3は本発明の第2実施例を示すものであって、消石灰粉末等のアルカリ粉末を収容したアルカリ粉末ホッパ36の下部にアルカリタンク37が接続され、そのアルカリタンク37はポンプ38を介してロータリキルン1の炉前側固定フード内に設けられたアルカリ噴霧ノズル2に接続され、前記第1実施例におけるアルカリ粉末タンク23,風力圧送管25および送風機26等が省略されているが、その他の構成は第1実施例の場合と同様である。
【0014】第2実施例の場合は、ロータリキルン1のガス流れ方向に噴霧されるアルカリがスラリーもしくは水溶液であり、高濃度HClガス生成ゾーンで半乾式中和する。
【0015】
【発明の効果】本発明によれば、廃棄物3をロータリキルン1内で焼却あるいは抑制燃焼あるいは外部からの間接加熱により熱分解する場合、ロータリーキルンの炉前部分の廃棄物が約300℃に加熱されるゾーンで高濃度のHClガスを生成すると同時に、炉前側固定フードからのアルカリの噴霧により中和するので、反応効率が良く加えてロータリキルンを反応器として用いるので特別な反応器を必要としない。ロータリキルン以降の煙道が高濃度のHClガスにさらされることがないので、設備の腐食面での耐久性を向上でき、ボイラーの熱回収条件も有利にでき、節炭器やスーパーヒータが設置可能となる。酸性ガス負荷量が小さくなるので洗煙装置の処理容量を小さくできる。またアルカリのスラリーもしくは水溶液を噴霧する場合、水蒸気によりロータリキルン内の酸素ガス濃度が低減されること、又は高温雰囲気下で水性ガス反応を生じさせることにより、熱分解もしくは焼却でのピーク温度を低くし平滑化するのでロータリキルン内での温度制御を容易にすると共に過加熱による融着トラブルを防止できる。排ガス処理系においてアンモニアや尿素などの脱硝剤を吹き込み脱硝する場合、排ガス中に介在するHClが少ないため脱硝剤が塩化アンモニウムに転化することになるロスを低減でき、生成した塩化アンモニウムが煙道や脱硝触媒に付着閉塞することを防止でき、後流排ガスに塩化アンモニウムが飛散し白煙が発生することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施例の廃棄物処理方法を説明するための縦断側面図である。
【図2】第1実施例の廃棄物処理設備を示す一部縦断側面図である。
【図3】第2実施例の廃棄物処理方法を説明するための縦断側面図である。
【図4】従来の廃棄物処理設備の第1例を示す一部縦断側面図である。
【図5】従来の廃棄物処理設備の第2例を示す一部縦断側面図である。
【図6】従来の廃棄物処理設備の第3例を示す一部縦断側面図である。
【符号の説明】
1 ロータリキルン
2 アルカリ噴霧ノズル
3 廃棄物
6 ボイラ
7 電気集塵機
8 空気予熱機
9 湿式洗煙装置
17 炉前側固定フード
18 点火用バーナ
19 抑制燃焼用空気供給管
20 ホッパ
21 スクリュウフィーダ
22 シュート
23 アルカリ粉末ホッパー
24 定量切出しフィーダ
25 風力圧送管
26 粉体輸送ブロア
27 コークスベッド溶融炉
28 高温保持炉
29 レーキ式残渣掻上排出装置
30 水砕水槽
36 アルカリ粉末ホッパ
37 アルカリタンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】 廃棄物をロータリキルン1内で焼却あるいは抑制燃焼あるいは外部からの間接加熱により熱分解する廃棄物処理方法において、ロータリキルン1の炉前側固定フードからロータリキルン1内のガス流れ方向に消石灰等のアルカリの粉末もしくは、スラリーもしくは水溶液を噴霧するロータリキルンによる廃棄物処理方法。
【請求項2】 廃棄物を焼却あるいは抑制燃焼あるいは外部からの間接加熱により熱分解する廃棄物処理用ロータリキルンにおいて、ロータリキルン1の炉前側固定フードからロータリキルン1内のガス流れ方向に消石灰等のアルカリの粉末もしくは、スラリーもしくは水溶液を噴霧する噴霧手段が設けられている廃棄物処理用ロータリキルン。

【図5】
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【図6】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開平5−33916
【公開日】平成5年(1993)2月9日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−210506
【出願日】平成3年(1991)7月29日
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)