説明

ロープ交換方法およびクレーン

【課題】 段取りが少なくかつ簡単に、短時間で交換できるロープ交換方法を提供する。
【解決手段】 横行ドラム37を一方向に回転し海側ロープ55を取外す第一の取出工程と、陸側ロープ59の一端を廃棄用ドラム67に接続し、廃棄用ドラム67に巻き取るようにして横行ドラム37から外す第二の取出工程と、陸側ロープ59の接続端61に海側ロープ55の接続端57を接続する接続工程と、これらのロープを全て廃棄用ドラム67に巻き取る巻取工程と、接続された新海側ロープ73および新陸側ロープ75が巻き付けられている新ロープ用ドラム69から横行ドラム37へ向けて新ロープを繰り出す繰出工程と、繰出工程の途中で、新海側ロープ73と新陸側ロープ75との接続を解く分離工程と、新陸側ロープ75を横行ドラム37に巻き取る第一の巻付工程と、新海側ロープ73を横行ドラム37に巻き取る第二の巻付工程と、が備えられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相互に反対方向に巻き付けられたロープを有するドラムにおけるロープ交換方法およびこれを実施し得るクレーンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
アンローダ、コンテナクレーン等のクレーンには、荷役手段を支持するトロリをガーダ等に沿って移動させるのに、ロープを用いるものがある。
これは、ドラムに一対のロープを相互に反対方向に巻き付け、一方のロープをガーダの一端側を経由してトロリの一端側に接続し、他方のロープをガーダの他端側を経由してトロリの他端側に接続する。
この状態で、ドラムを一方のロープが繰り出される方向に回転させると、他方のロープは反対方向に巻き付けられているので、一方のロープは繰り出され、他方のロープは巻き付けられることになる。
このロープの移動によってトロリは他方のロープに引っ張られ他方側に移動する。一方のロープは同じ量だけ繰り出されているので、この移動を阻止しない。そして、トロリを一方側に移動させる時は、ドラムを一方のロープが巻き付けられる方向に移動させればよい。
【0003】
これらのロープは、安全のため定期的(例えば、年に数回)に交換する必要がある。
この交換は、高所作業で、重量物を扱い、かつ、相互に反対方向に巻き付けられたロープを有するため、単純に行なえず、困難な作業となっていた。
このため、例えば、特許文献1に示すような種々の方法が提案されている。
【0004】
【特許文献1】WO97/34824号再公表公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これらの方法はいずれもロープ一本ずつを交換するものであり、例えば、各ロープが2(複数)本備えられている場合には、4本のロープをそれぞれ交換する必要があり、それぞれに交換の段取りを行なう必要があるため、交換作業に時間がかかるという問題があった。
また、特に、特許文献1に示すものは、ドラムを設置している機械室に、キャプスタン等の交換用の設備や、新ロープを巻き付けた新ロープドラム装置等を設置するので、機械室が大きくかつ重くなる。高所の機械室が大きくかつ重くなるとクレーンの安定性が悪くなるという問題がある。
さらに、これらの設備のために、他の巻上げや起伏等のためのロープを交換する作業がし難くなるという問題もある。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑み、段取りが少なくかつ簡単に、短時間で交換できるロープ交換方法およびこれを実施し得るクレーンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明にかかるロープ交換方法は、第一のロープおよび第二のロープが相互に反対方向に巻き付けられているドラムのロープを交換するロープ交換方法であって、前記ドラムを一方向に回転し前記第一のロープを繰り出し前記ドラムから取外す第一の取出工程と、前記第二のロープの一端を廃棄用ドラムに接続し、前記ドラムを他方向に回転し該廃棄用ドラムに巻き取るようにして前記第二のロープを繰り出し前記ドラムから外す第二の取出工程と、前記第二のロープの前記ドラムへの接続端に前記第一のロープの前記ドラムへの接続端を接続する接続工程と、前記廃棄用ドラムを回転させて、前記第一のロープおよび前記第二のロープを全て前記廃棄用ドラムに巻き取る巻取工程と、接続端同士が接続された新第一のロープおよび新第二のロープが巻き付けられている新ロープ用ドラムから前記ドラムへ向けて前記新第一のロープおよび前記新第二のロープを繰り出す繰出工程と、前記繰出工程の途中で、新第二のロープの接続端が前記ドラムの近傍に到った状態で、前記新第一のロープと前記新第二のロープとの接続を解く分離工程と、前記新第二のロープの接続端を前記ドラムに接続し、前記ドラムを一方向に回転させ新ロープ用ドラムから繰出される前記新第二のロープを前記ドラムに巻き取る第一の巻付工程と、前記新第一のロープの接続端を前記ドラムに接続し、前記ドラムを他方向に回転させ前記新第一のロープを前記ドラムに巻き取る第二の巻付工程と、が備えられていることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、第二のロープを廃棄用ドラムに巻き取る際に、先にドラムから外しておいた第一のロープを第二のロープに接続して、第一のロープおよび第二のロープを一体として廃棄用ドラムに巻き取るようにされている。
また、新ロープ用ドラムには、接続端同士が接続された新第一のロープおよび新第二のロープが巻き付けられ、これが一体としてドラムに向かい繰り出され、ドラムの近傍で分離され個々に巻き付けられるようにされている。
このように、第一のロープおよび第二のロープは一体として、廃棄用ドラムへ巻き取られあるいは新ロープ用ドラムから繰り出されるので、一回の処理でロープの交換を行なうことができる。
したがって、段取りが少なくかつ簡単になるので、ロープ交換を短時間で行なうことができる。また、これにより、ロープ交換はドラムを用いる作業スケジュールへの影響が少なくなるので、所定のタイミングでロープ交換を行なうことができる。
また、取り外す第一のロープおよび第二のロープは一体として、廃棄用ドラムへ巻き取られるので、廃棄等の処理を容易に行なうことができる。
【0009】
また、本発明にかかるロープ交換方法は、前記第一の取出工程の前に、前記第一のロープの一端に第一のガイドロープを接続し、前記第二のロープの一端に第二のガイドロープを接続する準備工程が備えられ、前記巻取工程では、前記第二のガイドロープによって前記第二のロープを巻き取り、前記繰出工程では、前記新第一のロープを前記第一のガイドロープによって牽引することを特徴とする。
【0010】
このように、第一のガイドロープは第一のロープの一端に接続されているので、第一のロープおよび第二のロープが一体として廃棄用ドラムへ巻き取られる際、第一のロープおよび第二のロープの所定経路に沿って移動することとなる。
このため、新第一のロープおよび新第二のロープを牽引する際に、第一のガイドロープは、第一のロープおよび第二のロープの所定経路に沿って移動するので、新第一のロープおよび新第二のロープを簡単に所定経路に沿って配置することができる。
また、第二のガイドロープは第二のロープの一端に接続されているので、第二のロープの一端を廃棄用ドラムへ案内することができる。
【0011】
また、本発明にかかるロープ交換方法では、前記第一のガイドロープは第一のウインチで繰出しあるいは巻取りされ、前記第二のガイドロープは第二のウインチで繰出しあるいは巻取りされることを特徴とする。
【0012】
このように、第一のガイドロープは第一のウインチで繰出しあるいは巻き取られ、第二のガイドロープは第二のウインチで繰出しあるいは巻き取られるので、第一ロープおよび第二ロープを一体的に滑らかに移動させることができる。
【0013】
また、本発明にかかるロープ交換方法は、前記第一の巻付工程では、その途中で、前記第二のロープが全て前記新ロープ用ドラムから繰り出された時、前記第二のロープの一端に前記第二のガイドロープを接続し、前記新ロープ用ドラムあるいは前記第二のウインチによって前記第二のロープに張力を付与し、前記第二の巻付工程では、前記第一のウインチによって前記第一のロープに張力を付与することを特徴とする。
【0014】
このように、新第二のロープおよび新第一のロープは、ドラムに巻き取られる時、反対端側から張力を付与されているので、確りと所定の位置に巻き取ることができる。
【0015】
また、本発明にかかるロープ交換方法は、前記第一のロープおよび前記第二のロープが移動体の移動に用いられる前記ドラムが機械室に配置され、前記廃棄用ドラム、前記新ロープ用ドラムおよび前記第二ウインチの内の所要のものが地上に配置されているクレーンにおいて実施することを特徴とする。
【0016】
このように、廃棄用ドラム、新ロープ用ドラムおよび第二ウインチの内の所要のものが地上に配置されているクレーンにおいて実施されるので、例えば、機械室に備えられている既存の交換用ウインチを第一ウインチとして用いれば、機械室には新規な大型設備を設けなくてもよい。
このため、機械室が大きくかつ重くなることがないので、クレーンの安定性の劣化を防止できる。
また、他の巻上げや起伏等のためのロープを交換する作業への悪影響を排除することができる。
さらに、既存のクレーンに対しても容易に適用することができる。
【0017】
また、本発明にかかるクレーンは、トロリの移動に用いられる第一のロープおよび第二のロープが相互に反対方向に巻き付けられ、機械室に配置されているドラムと、機械室に配置され、第一のガイドロープを繰り出し巻き取る第一のウインチと、地上に設置されるドラム廃棄用ドラムと、地上に設置され、接続端同士が接続された新第一のロープおよび新第二のロープが巻き付けられている新ロープ用ドラムと、地上に設置され、第二のガイドロープを繰り出し巻き取る第二のウインチと、が備えられていることを特徴とする。
【0018】
このように構成されたクレーンでは、上記各発明にかかるロープ交換方法を実施できるので、第一のロープおよび第二のロープのロープ交換を短時間で行なうことができる。
これにより、ロープ交換はドラムを用いる作業スケジュールへの影響が少なくなるので、所定のタイミングでロープ交換を行なうことができる。
また、取り外す第一のロープおよび第二のロープは一体として、地上に配置された廃棄用ドラムへ巻き取られるので、廃棄等の処理を一層容易に行なうことができる。
さらに、廃棄用ドラム、新ロープ用ドラムおよび第二ウインチが地上に配置されているので、例えば、機械室に備えられている既存の交換用ウインチを第一ウインチとして用いれば、機械室には新規な大型設備を設けなくてもよい。
このため、機械室が大きくかつ重くなることがないので、クレーンの安定性の劣化を防止できる。
また、他の巻上げや起伏等のためのロープを交換する作業への悪影響を排除することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、第一のロープおよび第二のロープが一体として廃棄用ドラムへ巻き取られあるいは新ロープ用ドラムから繰り出されるので、一回の処理でロープの交換を行なうことができる。
このため、操作段取りが少なくかつ簡単になるので、ロープ交換を短時間で行なうことができる。
これにより、ロープ交換はドラムを用いる作業スケジュールへの影響が少なくなるので、所定のタイミングでロープ交換を行なうことができる。
また、取り外す第一のロープおよび第二のロープは一体として、廃棄用ドラムへ巻き取られるので、廃棄等の処理を容易に行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明をロープトロリ式橋形アンローダ(以下、アンローダという。)に適用した実施形態について、図1〜図13を用いて説明する。
図1は、本実施形態にかかるアンローダ1の全体概略構成を示す側面図である。
アンローダ1には、岸壁3に沿って敷設されたレールに上を移動する海側脚5と、陸側脚7と、海側脚5と陸側脚7とに支持されたメインガーダ9と、メインガーダ9の後部に支持された機械室11と、メインガーダ9の先端部に回動可能に支持された起伏ガーダ13と、マスト15と、が備えられている。
【0021】
メインガーダ9と起伏ガーダ13とには、主トロリ17および補トロリ19が長手方向に沿って走行可能に設けられている。
主トロリ17には、例えば、鉱石運搬船Kから鉱石を積み降ろしする荷役用のグラブバケット21が備えられている。
海側脚5の陸側には、グラブバケット21から、例えば鉱石等のばら物を受けるホッパー23が備えられている。
起伏ガーダ13は、水平時、テンションバー25によりマスト15に支持されている。テンションバー25は、起伏ガーダ13が上方に揺動する場合には、中間部が折れ曲がるように構成されている。
【0022】
補トロリ19の上部には、補トロリ上シーブ27が幅方向に6個取り付けられている。マスト15の下部海側にはマストシーブ29が幅方向に4個取付けられている。
ガーダ9の陸側端上部には、陸側ガーダエンドシーブ31が幅方向に2個取り付けられている。起伏ガーダ13の先端部には、海側ガーダエンドシーブ33が幅方向に2個取り付けられている。
主トロリ17には、主トロリシーブ35が幅方向に4個取り付けられている。
【0023】
機械室11には、横行ドラム(ドラム)37と、開閉ドラム39と、巻ドラム41と、起伏ドラム43と、機械室ウインチ(第一のウインチ)45とが備えられている。
開閉ドラム39には、2本の開閉ロープ47が同方向に巻き付けられている。開閉ドラム39から繰り出された2本の開閉ロープ47は、マストシーブ29、補トロリ上シーブ27および主トロリシーブ35を順次経由してグラブバケット21に接続されている。
巻ドラム41には2本の支持ロープ49が同方向に巻き付けられている。巻ドラム41から繰り出された2本の支持ロープ49は、マストシーブ29、補トロリ上シーブ27および主トロリシーブ35を順次経由してグラブバケット21に接続されている。
開閉ロープ47は、2本の支持ロープ49を挟むような位置関係に配置されている。
【0024】
起伏ドラム43には、先端が起伏ガーダ13の中間部に固定された起伏ロープ51が巻き付けられている。起伏ロープ51の繰り出し巻き取りによって起伏ガーダ13は揺動することとなる。
機械室ウインチ45には、2本の機械室ウインチロープ(第一のガイドロープ)53が巻き付けられている。
機械室ウインチ45は、機械室11と岸壁3との間で、機械室11内の備品、部品等の揚げ降ろしを行なうウインチであり、各ドラムのロープ交換等にも用いられる等、種々の作業を行うものである。
【0025】
横行ドラム37について、図2も併せて参照して説明する。
横行ドラム37には、海方向に繰り出される2本の海側ロープ(第一のロープ)55と、陸方向に繰り出される2本の陸側ロープ(第二のロープ)59と、が巻き付けられている。
海側ロープ55および陸側ロープ59は、径が、例えば、47.5mmである。横行ドラム37は、直径が、例えば、1600mmの円筒形状をしているので、海側ロープ55および陸側ロープ59の1巻で略5mとなる。
海側ロープ55,55は、それぞれ一端である接続端57,57が横行ドラム37の軸線方向における中央部分に接続され、そこからそれぞれ端に向かうように、図1、図2の紙面方向を見て時計回りに巻き付けられている。
【0026】
海側ロープ55,55の巻き始めには3巻程度の捨て巻き部がある。これによって、海側ロープ55,55の横行ドラム37への接続部に張力が掛かるのを防止している。
陸側ロープ59,59は、それぞれ一端である接続端61,61が横行ドラム37の軸線方向における端部分に接続され、そこからそれぞれ中央部分に向かうように、図1、図2の紙面方向を見て反時計回りに巻き付けられている。
陸側ロープ59,59の巻き始めには3巻程度の捨て巻き部がある。これによって、陸側ロープ59,59の横行ドラム37への接続部に張力が掛かるのを防止している。
すなわち、海側ロープ55,55と陸側ロープ59,59とは、横行ドラム37にそれぞれ反対方向に巻き付けられている。
【0027】
海側の方向に繰り出された海側ロープ55,55は、海側ガーダエンドシーブ33を介して主トロリ17の海側に取り付けられているロープソケット63に固定されている。
陸側の方向に繰り出された陸側ロープ59,59は、陸側ガーダエンドシーブ31を介して補トロリ19に導かれ、補トロリ19に取り付けられた補トロリ上シーブ27で180度向きを変え、ガーダ後部に取り付けられているロープソケット58に固定されている。
この海側ロープ55,55および陸側ロープ59,59の繰り出し、巻き取りによって主トロリ17は、ガーダ9および起伏ガーダ13を走行し、補トロリ19はガーダのみを走行する。
【0028】
岸壁3には、地上ウインチ(第二のウインチ)65と、廃棄用ドラム67と、新ロープ用ドラム69と、が移動可能に載置されている。
地上ウインチ65には、2本の地上ウインチロープ(第二のガイドロープ)71が巻き付けられている。
新ロープ用ドラム69には、2本の新海側ロープ(新第一のロープ)73と2本の新陸側ロープ(新第二のロープ)75とが巻き付けられている。
新海側ロープ73,73と新陸側ロープ75,75とは、それぞれ新海側ロープ73の接続端77と新陸側ロープ75の接続端79とが接続され、二本のロープとなっている。
この2本のロープはそれぞれ新陸側ロープ75側の端部が、新ロープ用ドラム69の軸線方向における中央部分に接続され、そこからそれぞれ端に向かうように巻き付けられている。
【0029】
機械室11には、第一ガイドシーブ81,81が設けられている。第一ガイドシーブ81,81は、機械室ウインチ45の機械室ウインチロープ53を案内して海側ロープ55の端部に接続させるものである。
第一ガイドシーブ81,81の設置場所は機械室11の内部でなくてもよいし、前記接続が直接行なわれるようであれば省略してもよい。また、例えばスナッチブロックのようなものでもよい。
ガーダ9の後端部には、第二ガイドシーブ83,83が設けられている。第二ガイドシーブ83,83の設置場所は機械室11の内部であってもよい。
【0030】
以上説明した本実施形態にかかる横行ドラム37のロープ交換について、図2〜図13を参照して説明する。
まず、準備工程について説明する。
横行ドラム37を図1の紙面に向いて時計方向に回転させ、主トロリ17および補トロリ19を最も陸側に移動させる。
この時、開閉ドラム39および巻ドラム41を回転させて、グラブバケット21を開いて着地させるようにしてもよい。こうすると、万が一のグラブバケット21が落下するような事故を防止することができる。
また、起伏ドラム43を運転させて起伏ガーダ13を起立させるようにしてもよい。こうすると、交換作業中に、海側ロープ55が海面の方へ垂れ下がるのを防止できるので、例えば、船の出入りを邪魔することはない。
【0031】
次いで、地上ウインチ65、廃棄用ドラム67および新ロープ用ドラム69を岸壁3の上に設置する。
機械室ウインチ45の機械室ウインチロープ53,53を、第二ガイドシーブ83を経由して地上に降ろす。
機械室ウインチロープ53,53を地上ウインチ65の地上ウインチロープ71,71に接続して、機械室ウインチロープ53,53を巻き戻し、地上ウインチ65を繰り出す。
このようにして、地上ウインチロープ71,71の先端を機械室11に導入し、機械室ウインチロープ53,53との接続を開放する。
機械室11内に固定されている陸側ロープ59,59を開放し、地上ウインチロープ71,71の先端に接続する。
一方、主トロリ17のロープソケット63に固定されている海側ロープ55,55を開放し、機械室ウインチロープ53,53に接続する。
図2は、この状態を示している。
【0032】
これらの接続は、例えば、ワヤロープグリップの両端から、一方に地上ウインチロープ71を、他方に陸側ロープ59を挿入し、ワイヤロープグリップを長手方向に伸ばして締付けることで行なう。
あるいは、地上ウインチロープ71および陸側ロープ59の先端にナットを溶接し、両方のナット間を細いロープで連結するようにしてもよい。
このようにすれば、接続部分が太くならないので、シーブ等を滑らかに通過することができる。
以下、本実施形態では、ロープ同士の接続は全てこのように行なわれている。
もちろん、本発明における接続はこれに限定されるものではなく、適宜手段を用いて行なってよい。
【0033】
次に、海側ロープ55,55の取り出し(第一の取出工程)について説明する。(図3参照)
主トロリ17が最も陸側に来ている状態(図2)では、海側ロープ55,55は横行ドラム37に捨て巻き部分しか巻き付けられていない。
この状態から、機械室ウインチ45を作動させて機械室ウインチロープ53,53を巻き取るとともに横行ドラム37を海側ロープ55,55が繰り出される方向へ回転させる。この時、陸側ロープ59,59は横行ドラム37で巻取るため、地上ウインチ65はウインチロープ71,71を繰出す方向に回転させる。
海側ロープ55,55は横行ドラム37から繰り出され、図3に示されるように、略半巻き程度になった時点で止める。
次いで、海側ロープ55,55の接続端57を横行ドラム37から外し、チェンブロック等で落下しないように保持しながら機械室11に仮止めする。
【0034】
これにより、海側ロープ55,55が横行ドラム37と無関係となり、陸側ロープ59,59を処理できるようになるので、陸側ロープ59,59の取り出し(第二の取出工程)に移る。
地上ウインチ65を作動させて地上ウインチロープ71,71を巻き取るとともに横行ドラム37を陸側ロープ59,59が繰り出される方向へ回転させる。
陸側ロープ59,59の先端が岸壁3に近接した位置に到ると、横行ドラム37および地上ウインチ65を止め(図4参照)、地上ウインチロープ71,71と陸側ロープ59,59との接続を解く。
次いで、陸側ロープ59,59の先端を廃棄用ドラム67の軸線方向中央部にクリップ止めする(図5参照)。
【0035】
廃棄用ドラム67および横行ドラム37を回転させ、陸側ロープ59,59を廃棄用ドラム67の回りに巻き取る。
この状態で、陸側ロープ59,59が横行ドラム37から繰り出され、図6に示されるように、略半巻き程度になった時点で横行ドラム37および廃棄用ドラム67の回転を止める。
次いで、陸側ロープ59,59の接続端61,61の近傍をチェンブロック等で落下しないように保持し、陸側ロープ59,59の接続端61,61を横行ドラム37から外す。
陸側ロープ59,59の接続端61,61と海側ロープ55,55の接続端57,57とを接続する(接続工程)。
海側ロープ55,55の接続端57,57の仮止めと陸側ロープ59,59の接続端61,61の保持を外す。
【0036】
次いで、廃棄用ドラム67および横行ドラム37を回転させ、廃棄用ドラム67に、接続された陸側ロープ59,59および海側ロープ55,55を連続して巻き取る(巻取工程)。
この巻取りが終了すると、陸側ロープ59,59および海側ロープ55,55は廃棄用ドラム67に全て巻き取られ、機械室ウインチロープ53,53の先端部は廃棄用ドラム67の周面近傍に到っている(図7参照)。
この時、機械室ウインチロープ53,53は、陸側ロープ59,59および海側ロープ55,55の経路に沿って繰り出されている。
【0037】
この状態で、海側ロープ55,55と機械室ウインチロープ53との接続を解き、廃棄用ドラム67を移動させる(図8参照)。
このように、陸側ロープ59,59および海側ロープ55,55は一体として、廃棄用ドラム67へ巻き取られるので、廃棄等の処理を容易に行なうことができる。
そして、図8に示すように新ロープ用ドラム69を所定の位置に設置し、接続されている新海側ロープ73,73および新陸側ロープ75,75の新海側ロープ73,73側端部に機械室ウインチロープ53を接続する。
【0038】
この状態で、機械室ウインチ45を巻き付け方向に回転させると、新海側ロープ73,73および新陸側ロープ75,75は新ロープ用ドラム69から繰り出され、それぞれ所定の経路を通過して運ばれる(繰出工程)。
新海側ロープ73,73と新陸側ロープ75,75との接続部分が横行ドラム37の近傍に到ると(図9参照)、機械室ウインチ45および新ロープ用ドラム69の回転を止める。
新海側ロープ73,73の接続部77,77近傍および新陸側ロープ75,75の接続部79,79近傍は、機械室11に仮固定する。
新海側ロープ73,73の接続端77,77と新陸側ロープ75,75の接続端79,79との接続を開放する(分離工程)。
新陸側ロープ75,75の接続端79,79は、横行ドラム37の両端部にクリップ仮固定を開放する。
【0039】
次いで、新ロープ用ドラム69に若干のブレーキを掛けながら横行ドラム37を新陸側ロープ75,75を巻き取る方向に回転させ、新陸側ロープ75,75を巻き付ける(第一の巻付工程)。
この状態で、陸側ロープ59,59が新ロープ用ドラム69から図10に示されるように完全に繰り出され時点で横行ドラム37の回転を止める。
そして、新陸側ロープ75,75の端部を地上ウインチロープ71,71の先端に接続する。
横行ドラム37の回転を再開させ、地上ウインチ65によって若干のブレーキを掛けた状態で、新陸側ロープ75,75の横行ドラム37への巻き付けを続行し、捨て巻き分余分に巻き付ける(図11参照)。横行ドラム37の回転を止める。
このように、新陸側ロープ75,75は、新ロープ用ドラム69あるいは地上ウインチ65によって張力を付与された状態で横行ドラム37に巻き付けられるので、確実に所定の位置に巻き付けられる。
【0040】
新海側ロープ73,73の接続端77,77を、横行ドラム37の軸線方向中央部にクリップし仮固定を開放する。
横行ドラム37を、新海側ロープ73,73を巻き付ける方向に回転させ、機械室ウインチ45によって若干のブレーキを掛けた状態で、新海側ロープ73,73の横行ドラム37への巻き付けを行い、捨て巻き部分まで巻き付ける(第二の巻付工程、図12参照)。横行ドラム37の回転を止める。
このように、新海側ロープ73,73は、機械室ウインチ45によって張力を付与された状態で横行ドラム37に巻き付けられるので、確実に所定の位置に巻き付けられる。
【0041】
次いで、新陸側ロープ75,75の端部近傍をガーダ後部に仮固定し、新陸側ロープ75,75の端部と地上ウインチロープ71,71との接続を解消し、新陸側ロープ75,75の端部をガーダ後部に取付けられているロープソケット58の所定位置に固定する。
また、新海側ロープ73,73の端部近傍を主トロリ部に仮固定し、新海側ロープ73,73の端部と機械室ウインチロープ53との接続を解消し、新海側ロープ73,73の端部を主トロリ17のロープソケット63に固定する。
地上ウインチ65および機械室ウインチ45を作動して地上ウインチロープ71,71および機械室ウインチロープ53を巻き取る(図13参照)。
これで、ロープの交換作業は終了する。
【0042】
このように、陸側ロープ59,59および海側ロープ55,55は一体的に連続して廃棄用ドラム67へ巻き取られ、かつ、新海側ロープ73,73および新陸側ロープ75,75は一体的に連続して新ロープ用ドラム69から繰り出されるので、一回の処理でロープの交換を行なうことができる。
したがって、段取りが少なくかつ簡単になるので、ロープ交換を短時間で行なうことができる。
また、これにより、ロープ交換は横行ドラム37を用いる作業スケジュールへの影響が少なくなるので、所定のタイミングでロープ交換を行なうことができる。
【0043】
さらに、廃棄用ドラム67、新ロープ用ドラム69および地上ウインチ65が岸壁3上(地上)に配置され、かつ、荷役作業に使われる機械室ウインチ45を用いるようにしているので、機械室11には新規な大型設備を設けなくてもよい。
このため、機械室11が大きくかつ重くなることがない。アンローダ1の安定性を損なう恐れをなくすことができる。
また、開閉ドラム39、巻ドラム41および起伏ドラム43等のロープを交換する作業への悪影響を排除することができる。
さらに、このロープ交換方法は、既存のアンローダ等のクレーンに対しても容易に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一実施形態にかかるアンローダの全体概略構成を示す側面図である。
【図2】図1の横行ドラムのロープ交換方法の途中状態を示す斜視図である。
【図3】図1の横行ドラムのロープ交換方法の途中状態を示す斜視図である。
【図4】図1の横行ドラムのロープ交換方法の途中状態を示す斜視図である。
【図5】図1の横行ドラムのロープ交換方法の途中状態を示す斜視図である。
【図6】図1の横行ドラムのロープ交換方法の途中状態を示す斜視図である。
【図7】図1の横行ドラムのロープ交換方法の途中状態を示す斜視図である。
【図8】図1の横行ドラムのロープ交換方法の途中状態を示す斜視図である。
【図9】図1の横行ドラムのロープ交換方法の途中状態を示す斜視図である。
【図10】図1の横行ドラムのロープ交換方法の途中状態を示す斜視図である。
【図11】図1の横行ドラムのロープ交換方法の途中状態を示す斜視図である。
【図12】図1の横行ドラムのロープ交換方法の途中状態を示す斜視図である。
【図13】図1の横行ドラムのロープ交換方法の終了状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0045】
1 アンローダ
3 岸壁
11 機械室
17 主トロリ
19 補トロリ
37 横行ドラム
45 機械室ウインチ
53 機械室ウインチロープ
55 海側ロープ
57 接続端
59 陸側ロープ
61 接続端
65 地上ウインチ
67 廃棄用ドラム
69 新ロープ用ドラム
71 地上ウインチロープ
73 新海側ロープ
75 新陸側ロープ
77 接続端
79 接続端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一のロープおよび第二のロープが相互に反対方向に巻き付けられているドラムのロープを交換するロープ交換方法であって、
前記ドラムを一方向に回転し前記第一のロープを繰り出し前記ドラムから取外す第一の取出工程と、
前記第二のロープの一端を廃棄用ドラムに接続し、前記ドラムを他方向に回転し該廃棄用ドラムに巻き取るようにして前記第二のロープを繰り出し前記ドラムから外す第二の取出工程と、
前記第二のロープの前記ドラムへの接続端に前記第一のロープの前記ドラムへの接続端を接続する接続工程と、
前記廃棄用ドラムを回転させて、前記第一のロープおよび前記第二のロープを全て前記廃棄用ドラムに巻き取る巻取工程と、
接続端同士が接続された新第一のロープおよび新第二のロープが巻き付けられている新ロープ用ドラムから前記ドラムへ向けて前記新第一のロープおよび前記新第二のロープを繰り出す繰出工程と、
前記繰出工程の途中で、新第二のロープの接続端が前記ドラムの近傍に到った状態で、前記新第一のロープと前記新第二のロープとの接続を解く分離工程と、
前記新第二のロープの接続端を前記ドラムに接続し、前記ドラムを一方向に回転させ新ロープ用ドラムから繰出される前記新第二のロープを前記ドラムに巻き取る第一の巻付工程と、
前記新第一のロープの接続端を前記ドラムに接続し、前記ドラムを他方向に回転させ前記新第一のロープを前記ドラムに巻き取る第二の巻付工程と、が備えられていることを特徴とするロープ交換方法。
【請求項2】
前記第一の取出工程の前に、前記第一のロープの一端に第一のガイドロープを接続し、前記第二のロープの一端に第二のガイドロープを接続する準備工程が備えられ、
前記巻取工程では、前記第二のガイドロープによって前記第二のロープを巻き取り、
前記繰出工程では、前記新第一のロープを前記第一のガイドロープによって牽引することを特徴とする請求項1に記載のロープ交換方法。
【請求項3】
前記第一のガイドロープは第一のウインチで繰出しあるいは巻き取られ、
前記第二のガイドロープは第二のウインチで繰出しあるいは巻き取られることを特徴とする請求項2に記載のロープ交換方法。
【請求項4】
前記第一の巻付工程では、その途中で、前記第二のロープが全て前記新ロープ用ドラムから繰り出された時、前記第二のロープの一端に前記第二のガイドロープを接続し、前記新ロープ用ドラムあるいは前記第二のウインチによって前記第二のロープに張力を付与し、
前記第二の巻付工程では、前記第一のウインチによって前記第一のロープに張力を付与することを特徴とする請求項3のいずれかに記載のロープ交換方法。
【請求項5】
前記第一のロープおよび前記第二のロープが移動体の移動に用いられる前記ドラムが機械室に配置され、前記廃棄用ドラム、前記新ロープ用ドラムおよび前記第二ウインチの内の所要のものが地上に配置されているクレーンにおいて実施することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のロープ交換方法。
【請求項6】
トロリの移動に用いられる第一のロープおよび第二のロープが相互に反対方向に巻き付けられ、機械室に配置されているドラムと、
機械室に配置され、第一のガイドロープを繰り出し巻き取る第一のウインチと、
地上に設置されるドラム廃棄用ドラムと、
地上に設置され、接続端同士が接続された新第一のロープおよび新第二のロープが巻き付けられている新ロープ用ドラムと、
地上に設置され、第二のガイドロープを繰り出し巻き取る第二のウインチと、が備えられていることを特徴とするクレーン。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2007−137557(P2007−137557A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−331353(P2005−331353)
【出願日】平成17年11月16日(2005.11.16)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)