説明

ローラ外周面への塗料の塗布方法および電子写真用ローラ

【課題】生産性を向上させた、ローコストなローラ外周面への塗料の塗布方法、および、良好な画像を形成可能な比較的安価な電子写真用ローラを提供する。
【解決手段】軸芯体の外周面上に円筒層を備えたローラを水平状態でローラ周方向に回転させながら円筒層の外周面上に塗料を塗布するローラ外周面への塗料の塗布方法において、塗料が熱硬化性樹脂溶液であり、塗料の粘度が5mPa・s以上、500mPa・s以下であって、複数本のローラを軸芯体の片端を同一線上にそろえかつローラを間隔10μm以上1000μm以下で水平方向に互いに平行に並べる工程、塗料供給ノズルから円筒層外周全面を塗布できる量の塗料を円筒層の外周面上に供給する工程、および、複数本のローラをそれぞれローラ周方向に回転させる工程を有する。この方法によって塗布層が形成された電子写真用ローラ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ローラ外周面への塗料の塗布方法に関する。また、電子写真用ローラに関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、複写機等の電子写真装置は、種々の電子写真用ローラを備える。例えば、感光体ドラム表面を帯電させる帯電ローラ、感光体ドラム表面へトナーを供給し静電潜像の現像を行う現像ローラ、感光体ドラム上のトナーを記録紙に転写する転写ローラ、記録紙に転写されたトナーを定着する定着ローラ等である。
【0003】
このような電子写真用ローラは、軸芯体の外周面上に弾性や導電性を有する円筒層を備え、この円筒層の外周面上に表面性あるいは機能性を付与するために、各種の樹脂塗料を塗布した塗布層が設けられる。電子写真用ローラとしては、この塗布層が、最外層であったり中間層であったりする。
【0004】
また近年、塗布層形成の生産性を向上させる目的で、塗布方法のローコスト化も要求されている。
【0005】
従来、円筒層の外周面上に塗布層を形成する方法として、スプレー塗布方法、浸漬塗布方法、アプリケータ塗布方法等種々検討されている。
【0006】
スプレー塗布方法や浸漬塗布方法においては、塗布層の均一化は容易であるが、供給した塗料に対する塗布層になった塗料の割合、すなわち塗布効率が低い。つまり、実際の使用量に対して、大量の樹脂塗料が必要となり、生産性が低く、コストアップの一因となっている。
【0007】
アプリケータ塗布方法においては、スプレー塗布方法や浸漬塗布方法のような塗布効率の問題は改良される(特許文献1および2参照)。この塗布方法は、必要量の樹脂塗料のみを供給し、塗布層を形成できるので、必要以上の塗料を必要としない。この方法では、ローラ形状の被塗工体を水平方向でローラ周方向に回転させ、塗料供給ノズルから必要量の塗料を被塗布体に供給する。そして、アプリケータにより塗布層厚を制御しつつ、塗料供給ノズルおよびアプリケータをローラ軸方向に移動さることで、塗布層を形成する。しかしながら、塗料供給ノズルおよびアプリケータをローラ軸方向に同期させて、移動させなければならず、装置制御的に複雑となり、コストアップの一因となる。また、円筒層の外周面上に塗布層を形成するには、ローラ軸の片端から他方の片端まで、塗料供給ノズルおよびアプリケータを移動しなければならない。これにより、円筒層全面に塗布層を形成するには、時間がかかり生産性が低い。
【0008】
これを改良する目的で、多数本の塗料供給ノズルを用いたアプリケータ塗布方法が開示されている(特許文献2参照)。この塗布方法によれば、円筒層全面に塗布層を形成する時間は短くなり、生産性が高い。しかしながら、各塗料供給ノズルから供給された塗料が、円筒層上で交わる部分の制御が困難である。均一に交わらないと、電子写真用ローラとして使用した場合、画像不良を起こすことがある。また、ローラ形状の被塗工体の一個体ごとに塗料の塗布を行わねばならず、さらなる生産性の向上が必要とされる。
【特許文献1】特開平07−076049号公報
【特許文献2】特開2006−007198号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、生産性を向上させた、ローコストなローラ外周面への塗料の塗布方法を提供することである。
【0010】
本発明の別の目的は、良好な画像を形成可能な比較的安価な電子写真用ローラを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明により、軸芯体の外周面上に円筒層を備えたローラを、水平状態でローラ周方向に回転させながら、該円筒層の外周面上に塗料を塗布するローラ外周面への塗料の塗布方法において、
該塗料が熱硬化性樹脂溶液であり、該塗料の粘度が5mPa・s以上、500mPa・s以下であって、
複数本の該ローラを、軸芯体の片端を同一線上にそろえ、かつ、該ローラを間隔10μm以上、1000μm以下で水平方向に互いに平行に並べる工程、
塗料供給ノズルから、該円筒層外周全面を塗布できる量の塗料を、該円筒層の外周面上に供給する工程、および、
該複数本のローラをそれぞれローラ周方向に回転させる工程、
を有することを特徴とするローラ外周面への塗料の塗布方法が提供される。
【0012】
また本発明により、軸芯体と、該軸心体の外周面上に設けられた円筒層と、該円筒層の外周面上に設けられた塗布層とを有する電子写真用ローラであって、
該塗布層が、上記の方法により塗布された塗料の塗膜からなることを特徴とする電子写真用ローラが提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、生産性を向上させた、ローコストなローラ外周面への塗料の塗布方法が提供される。
【0014】
本発明によれば、良好な画像を形成可能な比較的安価な電子写真用ローラが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明によるローラ外周面への塗料の塗布方法、および該塗布方法により製造された電子写真用ローラについて詳細に説明する。
【0016】
本発明は、軸芯体の外周面上に円筒層を備えたローラを、水平状態でローラ周方向に回転させながら、円筒層の外周面上に塗料を塗布するローラ外周面への塗料の塗布方法に関する。塗料は熱硬化性樹脂溶液であり、塗料の粘度は5mPa・s以上、500mPa・s以下である。
【0017】
本発明の塗布方法は、複数本の該ローラを、軸芯体の片端を同一線上にそろえ、かつ、該ローラを間隔10μm以上、1000μm以下で水平方向に互いに平行に並べる工程を有する。
【0018】
また本発明の塗布方法は、該複数本のローラをそれぞれローラ周方向に回転させる工程を有する。
【0019】
そして本発明の塗布方法は、塗料供給ノズルから、該円筒層外周全面を塗布できる量の塗料を、該円筒層の外周面上に供給する工程を有する。
【0020】
本発明で使用される塗料は、熱硬化性樹脂溶液である。熱可塑性樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリエポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、単独で用いてよく、又は二種以上を混合して用いてもよい。特に限定されるものではないが、自己膜補強性、耐磨耗性、弾性が得られやすい点から、ウレタン樹脂を用いることが特に好ましい。
【0021】
これらの熱可塑性樹脂には必要に応じて各種添加剤が添加される。また、塗布層に導電性を持たせるためには、各種導電剤(導電性カーボン、グラファイト、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄粉及び金属酸化物である導電性酸化錫や導電性チタン等)が用いられる。
【0022】
これらの材料(熱硬化性樹脂と、必要に応じて加えられる添加剤)を塗料として塗工できる状態とするため、各種有機溶剤や水等で希釈し、分散を行い、塗工に適した液粘度・液温度に調整・管理することができる。
【0023】
熱可塑性樹脂溶液を調整するための溶剤は、上記樹脂を溶解することができるものであればいずれのものでもよい。例えばメタノール、エタノール、イソプロパノールなどの低級アルコール、メチルエチルケトンなどのケトン類、シクロヘキサン、トルエン、キシレンなどが好ましく用いられる。
【0024】
塗料粘度は、5mPa・s以上500mPa・s以下である。塗料粘度は、液温25℃でB型粘度計(25℃、ローターNo.1、ローター回転数60rpm)で測定される値である。塗料粘度が5mPa・s以上であると、塗料が自重で円筒層外周面上から下方に垂れてしまうことを防止することが容易である。塗料粘度が500mPa・s以下であると、分散した各種添加剤や導電剤の再凝集を抑制し、所望とする物性を得ることが容易である。
【0025】
なお、塗布層は一層であってもよいし、二層以上の多層構造であってもよい。なお、塗布層を二層以上構築する場合、各塗布層の形成を本発明に係る方法に従って行えるのは、もちろんのことである。塗布層を構成する材料は、サンドミル、ペイントシェーカー、ダイノミル、ボールミル等のビーズを利用した従来公知の分散装置を使用して、分散させることができる。
【0026】
本発明のローラ外周面への塗料の塗布方法に好適に用いることができる塗布装置を説明するための概略斜視図を図1に、概略断面図を図2に、概略上視図を図3にそれぞれ示す。
【0027】
ローラ201は、軸芯体101の外周面上に円筒層102を備えている。
【0028】
複数本(ここでは4本)のローラ201a〜dは、各々ローラの軸芯体101の片端が同一線(図中の破線)上にそろえ並べられる。この時ローラ201a〜dは、間隔109が10μm以上、1000μm以下の互いに非接触の状態で水平(図中のY方向)に、かつ互いに平行に並べられる。ローラの間隔とは、隣り合うローラの円筒層外周面同士の再至近間の間隔である。ローラ間隔は、すべて等しいことが好ましい。ローラ間隔が等しいと、どのローラにおいても得られる塗布層の層厚が一定になるからである。間隔が10μmより狭いと塗料の十分なレベリング効果が得られず、特に引き離し時に塗工欠陥が発生することがある。また、間隔が1000μmより広いと、塗料供給ノズル103より供給された塗料が、塗料の粘性により各ローラの円筒層外周面上に行き渡らず、また塗料が自重で円筒層外周面上から下方に垂れてしまい、塗布層が形成されないことがある。なお、各ローラの間隔は、ノギスマイクロゲージやレーザーマイクロゲージで測定できる。
【0029】
並べられた複数本のローラ201a〜dは、回転モータ(不図示)に接続されている軸芯体把持冶具107によって、その軸芯体が把持される。このように並べられた複数本のローラ201a〜dの円筒層外周面に、塗料供給ノズル103から円筒層外周全面を塗布できるだけの量の塗料が供給される。塗料供給ノズル103には塗料供給管104が接続されている。塗料供給管104は、塗料供給ポンプ105を介して塗料タンク106に接続している。これにより、塗料タンク106中の塗料は、塗料供給ポンプ105により送液され、塗料供給管104内を通り、塗料供給ノズル103より円筒層外周面に供給される。
【0030】
塗料供給ポンプ105は、一定量の塗料を供給可能な容積式ポンプが好ましい。容積式ポンプは、往復運動タイプ(例えば、ピストンポンプ、ブランジャーポンプ、ダイヤフラムポンプ等)や回転ポンプ(例えば、ギヤーポンプ、偏心ポンプ等)があるが、塗料の物性や塗布層の層厚によって、適宜選択すれば良い。
【0031】
塗料供給ノズルの幅は、円筒層全長以下(円筒層の長手方向の長さ以下)であることが好ましい。また、円筒層全長の1/2以上であることが好ましい。塗料供給ノズルの幅が円筒層全長以下であると、軸芯体上に塗料が供給されることが防止でき、軸芯体の清掃や軸芯体のマスキングを必要としなくて良い。また、円筒層全長の1/2以上であると、塗料が円筒層全長に良好に行き渡り、特に円筒層の端部側で塗布層が薄くなることが防止できる。
【0032】
また、ローラ周方向に対する塗料供給ノズルの幅は、円筒層の直径に対して、1/100以上、1/2以下であることが好ましい。1/100以上とすることで、塗料圧力が高くなるのを防止し、装置負荷を低減できる。1/2以下とすることで、塗料の飛び散りを防止し、供給量が均一でできる。
【0033】
また、塗料供給ノズル103の開口部は、スリット形状の一口であることが好ましい。一口であると、塗料の合流部でウエルドが発生することを容易に防止できるからである。塗料供給ノズルは、円筒層断面において、最頂点位置に設置されることが好ましい。このような構成にすることで、円筒層外周全面を塗布できる量の塗料を軸方向に均一に供給できる。
【0034】
このように、塗料供給ノズル103からローラの該円筒層外周全面を塗布できる量の塗料を供給した後、ローラは周方向に回転する。回転数は、1rpm以上、600rpm以下が好ましい。回転数が1rpm以上であると、塗料が重力の影響を受けて円筒層外周面上から下方に垂れてしまうことを容易に防止できる。回転数が600rpm以下であると、塗料自身の遠心力によって塗料が飛び散ることを容易に防止できる。回転方向は、各ローラが同方向でも逆方向でも、どちらでも良く、塗布する塗料の特性あるいは、形成された塗布層の特性によって、適宜選択すれば良い。なお、各ローラは塗料供給と同時に、好ましくは回転数1rpm以上600rpm以下で、回転しても良い。各ローラを一回転以上回転させることで、円筒層外周面に塗布層が形成される。また、各ローラ外周面の塗布層は、例えば、塗料溶剤の自己蒸発や、レベリング作用などにより、均一に引き剥がされる。このようにして、ローラ外周面に塗料が塗布される。
【0035】
塗料供給ノズル103は、例えば、各ローラの一本置きに配置される。このような配置にすることで、塗料が供給されてないローラをアプリケートローラとして、利用することができるとともに、塗工終了時には、円筒層の外周面に塗布層を有するローラが同時に二本製造される。つまりアプリケータを使わずに、さらに同時に円筒層の外周面に塗布層を有するローラ二本得られ、生産性が向上し、ローコストな塗布方法となる。
【0036】
本発明で使用される軸芯体は、電極および支持部材として機能することができる。軸芯体は、例えば、アルミニウム、銅合金およびステンレス鋼等の金属または合金、クロムやニッケル等で鍍金処理を施した鉄もしくは合成樹脂等の材質で構成される。形状は、円柱形や中心部を空洞化した円筒形が好ましい。軸芯体の外径は適宜決めることができるが、電子写真用ローラにおいては、通常4mm以上20mm以下の範囲にする。
【0037】
本発明で使用される軸芯体の外周面上の円筒層は、弾性層および/または導電層として機能することができる。軸芯体の外周上の円筒層の材料としては、シリコーンゴム、ウレタンゴム、ブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、天然ゴム等が挙げられる。このようなゴムは、単独で用いてよく、又は二種以上を混合して用いてもよい。中でも、円筒層に良好な弾性を持たせる観点から、シリコーンゴム、ウレタンゴムを用いることが好ましい。
【0038】
特に加工性が良好で寸法精度の安定性が高く、硬化反応時に反応副生成物が発生しないなどの生産性に優れる理由から、円筒層の材料として、付加反応架橋型液状シリコーンゴムを用いることが、より好ましい。
【0039】
また、導電性を得るために、これら液状シリコーンゴム中に導電剤を適宣添加し所望の抵抗に調整することができる。導電剤としては、カーボンブラック、グラファイト及び導電性金属酸化物等の電子伝導機構を有する導電剤及びアルカリ金属塩や四級アンモニウム塩等のイオン伝導機構を有する導電剤を用いることができる。
【0040】
なお、円筒層には、所望の性能が得られるように、必要に応じて、発泡剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、染料、顔料、天然油、合成油、ワックス等の公知の添加剤を配合してもよい。
【0041】
円筒層の層厚は通常0.5mm以上10.0mm以下の範囲とすることが好ましい。より好ましくは、2.0mm以上6.0mm以下である。0.5mm以上であると、良好な弾性を得ることが容易である。また、弾性向上の観点およびコストの観点から、10.0mm以下が好ましい。
【0042】
また、円筒層は、ソリッド体であっても発泡体であっても良い。
【0043】
このような、円筒層を軸芯体外周面に有するローラは、公知の方法で製造することができる。例えば、適当な層厚に押し出し成形した円筒形状のチューブに軸芯体を圧入し、その後所望の形状に研磨することで、得られる。また、円筒状の成形金型内に軸芯体を配し、その後金型内に円筒層形成用材料を注入し、加熱することにより硬化させて、円筒層を得るインジェクション成形法が挙げられる。
【0044】
本発明の電子写真用ローラは、軸芯体と、軸心体の外周面上に設けられた円筒層と、円筒層の外周面上に設けられた塗布層とを有する電子写真用ローラであって、塗布層が上記のローラ外周面への塗料の塗布方法により塗布された塗料の塗膜からなる。この電子写真用ローラは、生産性が高く、ローコストなものである。
【0045】
本発明の電子写真用ローラは、電子写真に用いるローラであれば特に制限はなく、例えば帯電ローラ、現像ローラ、転写ローラ、トナー供給ローラ、クリーニングローラなどとして用いることができる。特に帯電ローラまたは現像ローラとして、好適である。
【0046】
本発明の電子写真用ローラを、現像ローラとして、画像形成装置に装着した例について説明する。
【0047】
現像ローラは、潜像を担持する潜像担持体としての感光ドラムに対向して、当接または圧接した状態で現像剤(トナー)を担持する。そして、現像ローラは、感光ドラムに現像剤としてのトナーを付与することにより潜像をトナー像として可視化する機能を持つ。
【0048】
本発明の電子写真用ローラを現像ローラとして搭載した電子写真プロセスカートリッジ及び画像形成装置の一例を図4に模式図として示した。この図4により以下説明する。
【0049】
なお、本画像形成装置は、それぞれイエロー、シアン、マゼンタ及びブラックの画像を形成する画像形成ユニット10a〜10dが合計4個、タンデム方式で設けられている。これら4個の画像形成ユニット10a〜10dはそれぞれ、感光ドラム11、帯電装置12(図では帯電ローラ)、画像露光装置(図では書き込みビーム13を示す)、現像装置14、クリーニング装置15、画像転写装置16(図では転写ローラ)を備える。これ等の仕様が各色トナー特性に応じて少し調整に差異があるものの、基本的構成において画像形成ユニット10a〜10dは同じである。
【0050】
現像装置14には、一成分トナー5を収容した現像容器6と、現像容器6内の長手方向に延在する開口部に位置し、感光ドラム11と対向設置された現像ローラ1とを備え、感光ドラム11上の静電潜像を現像して可視化するようになっている。さらに、現像ローラ1に一成分トナー5を供給すると共に現像に使用されずに現像ローラ1に担持されている一成分トナー5を現像ローラ1から掻き取るトナー供給ローラ7が設けられる。また現像ローラ1上の一成分トナー5の担持量を規制すると共に摩擦帯電する現像ブレード8が設けられている。
【0051】
感光ドラム11の表面が帯電装置12により所定の極性・電位に一様に帯電され、画像情報が加増露光装置からビーム13として、帯電された感光ドラム11の表面に照射され、静電潜像が形成される。次いで、形成された静電潜像上に本発明の電子写真用ローラを現像ローラ1とする現像装置14から一成分トナーが供給され、感光ドラム11表面にトナー像が形成される。このトナー像は感光ドラム11の回転に伴って、画像転写装置16と対向する場所に来たときにその回転と同期して供給されてきた紙等の転写材25に転写される。
【0052】
なお、本図4では4つの画像形成ユニット10a〜10dが一連に連動して所定の色画像を1つの転写材25上に重ねて形成されている。したがって、転写材25をそれぞれの画像形成ユニットの画像形成と同期させる、つまり、画像形成が転写材25の挿入と同期している。そのために、転写材25を輸送するための転写材搬送ベルト17が感光ドラム11と画像転写装置16との間に挟まれるように、転写材搬送ベルト17の駆動ローラ18、テンションローラ19及び従動ローラ20に架けまわされる。転写材25は転写材搬送ベルト17に吸着ローラ21の働きにより静電的に吸着された形で搬送されている。なお、22は転写材25を供給するための供給ローラである。
【0053】
画像が形成された転写材25は、転写材搬送ベルト17から剥離装置23の働きにより剥がされ、定着装置24に送られ、トナー像は転写材25に定着されて、印画が完了する。一方、トナー像の転写材25への転写が終わった感光ドラム11はさらに回転して、クリーニング装置15により表面がクリーニングされ、必要により除電装置(不図示)によって除電される。その後感光ドラム11は次の画像形成に供される。なお、図4において、26、27はそれぞれ画像転写装置16、吸着ローラ21へのバイアス電源を示す。
【0054】
なお、ここでは、タンデム型の転写材上へ直接各色のトナー像を転写する装置を説明したが、他のタイプの電子写真装置にも本発明の電子写真用ローラを使用することができる。その例として、白黒の単色画像形成装置や、転写ローラや転写ベルトに一旦各色のトナー像を重ねてカラー画像を形成し、それを転写部材へ一括して転写する画像形成装置を挙げることができる。また、各色の現像ユニットがロータ上に配置されたり、感光ドラムに並列して配置されたりした画像形成装置等が挙げられる。
【0055】
以上のように本発明によれば、生産性の高い、安定したローコストなローラ外周面への塗料の塗布方法を提供することが可能となった。
【0056】
また、この塗布方法を用いることにより、ローコストな電子写真用ローラを提供することが可能となった。
【実施例】
【0057】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、これらは本発明を何ら制限するものではない。
【0058】
(ローラ間隔の測定)
塗工を開始するにあたり、各ローラ間の間隔の測定には、非接触レーザー測長器(キーエンス社製センサヘッドLS−5040・コントローラLS−5500(商品名))を用いた。水平に並べた各ローラに対し、非接触レーザー測長器を垂直に配置し、ローラ軸方向で5箇所を測定し、その平均値をローラ間の間隔とした。
【0059】
(塗料粘度の測定)
粘度測定には、B型粘度計(芝浦システム社製、デジタルビスメトロン粘度型VDA(商品名))を用いた。塗料が約500ml入っている500mlビーカに、粘度計のローターNo.1を入れ、このローターを60rpmで回転させた。ローター回転開始から30秒後に測定された値を粘度とした。測定温度は25℃とした。
【0060】
(画像評価)
ヒューレット・パッカード社製の電子写真方式の画像形成装置「HP Color LaserJet 3700」(商品名)を用意した。この画像形成装置には、電子写真プロセスカートリッジ(公称寿命6000枚、A4サイズ、5%印字率、プリントカートリッジ:黒・シアン・マゼンタ・イエロー)が備わる。
【0061】
実施例・比較例のそれぞれにおいて、作成した電子写真用ローラ(4本)を現像ローラとして上記4色のプリントカートリッジにそれぞれ組み込んだ。
【0062】
次いで、この電子写真プロセスカートリッジを上記画像成形装置に組み込んで、画像(ベタ画像、ハーフトーン画像、文字画像)を出力し、画像不良が発生しているかを目視にて観察し、下記基準で評価した。
A:全画像において良好であった。
B:ベタ・ハーフトーン画像において若干画像不良が確認されたが、実用上問題ない程度であった。
C:全画像において画像不良が確認された。
【0063】
〔実施例1〕
(軸芯体の外周面上に円筒層を備えたローラの作成)
外径φ6mm、長さ265mmの鉄製軸芯体を、内径φ12mmの円筒状金型内に同心となるように設置した。付加反応架橋型液状シリコーンゴム(体積固有抵抗値1×107Ω・cm、東レダウコーニング社製)を注型後、130℃のオーブンに入れ20分間加熱成型し、脱型後、200℃のオーブンで4時間二次加硫を行った。これにより、軸芯体の外周面上に、円筒層層厚3mm、長さ240mmの円筒層を備えたローラを得た。
【0064】
なお、本明細書において、φは直径を表す。
【0065】
(塗料の調製)
次の材料にMEK(メチルエチルケトン)を加え、サンドミルで1時間分散した。
・ポリウレタンポリオールプレポリマー「タケラックTE5060」(商品名、三井武田ケミカル株式会社製)100質量部。
・イソシアネート「コロネート2521」(商品名、日本ポリウレタン株式会社製)77質量部。
・カーボンブラック「MA100」(商品名、三菱化学株式会社製)24質量部。
【0066】
分散後さらに溶剤としてMEKを加えて粘度50mPa・sの塗布用塗料を得た。
【0067】
(ローラ外周面への塗料の塗布)
上記方法で作成した軸心体の外周上に円筒層を備えたローラ4本(ローラ201a〜d)を、軸芯体の片端が同一線上になるよう、非接触で水平に、互いに平行に並べた。この時の各ローラ間(ローラ201aとローラ201b、ローラ201bとローラ201c、ローラ201cとローラ201d)の間隔は、いずれも100μmであった。その後、軸芯体把持冶具により、各ローラの軸芯体の両端を把持した。上記方法で作成した塗料を、ローラ一本おきに、ローラ(塗料供給ノズルは、ローラ201aおよびローラ201c上に配置)の円筒層外周面上にピストンポンプにより各々1.1mlを塗料供給ノズルより供給した。塗料タンク中の塗料液温は25℃である。供給ノズルの形状は、長さ230mm、幅1mmの一口のスリット形状である。塗料供給ノズルの配置位置は、円筒層の断面で最頂点位置であり、塗料供給ノズルと円筒層外周面までの距離は5mmである。塗料を供給すると同時に、各ローラを60rpmで一分間、互いに逆方向に回転させ(隣接する二本のローラが互いに逆回転する)、円筒層外周面へ塗料を塗布した。一分間ローラを回転させると、溶剤がある程度蒸発し、各ローラ外周面の塗布層は、引き剥がされる。その後、塗布層を自然乾燥させ、塗膜を形成した。表1に塗布条件を示す。
【0068】
(電子写真用ローラの作製)
上記方法によりローラの円筒層外周面に塗料を塗布した後、各ローラを140℃にて60分間加熱処理して、塗料膜を硬化し、最外層が形成された電子写真用ローラを得た。
【0069】
(画像評価)
上記方法により作成した電子写真用ローラを現像ローラとして前記電子写真プロセスカートリッジに組み込み、画像出力して、評価した。表1に結果を示す。
【0070】
〔実施例2〕
塗料粘度を5mPa・s、ローラ間の間隔を10μm、各塗料供給ノズルからの塗料供給量を0.1mlとした以外、実施例1と同様にローラ(円筒層)外周面に塗料を塗布した。表1に塗布条件を示す。また、実施例1と同様にして電子写真用ローラを作成し、画像評価を行った。表1に結果を示す。
【0071】
塗料粘度の調整はMEKの量を調節することによって行った(以下の例においても同じ)。
【0072】
〔実施例3〕
塗料粘度を5mPa・s、ローラ間の間隔を1000μm、各塗料供給ノズルからの塗料供給量を11.0mlとした以外、実施例1と同様にローラ(円筒層)外周面に塗料を塗布した。表1に塗布条件を示す。また、実施例1と同様にして電子写真用ローラを作成し、画像評価を行った。表1に結果を示す。
【0073】
〔実施例4〕
塗料粘度を500mPa・s、ローラ間の間隔を10μm、各塗料供給ノズルからの塗料供給量を0.2ml、全ローラ数を8本とし、ローラ3本おきに、ローラの円筒層外周面上に塗料を供給した。つまり、塗料供給ノズルを、8本平行に並んだローラのうちの、1本目と4本目の上に一つずつ(合計二つ)配置した。これ以外は、実施例1と同様にローラ(円筒層)外周面に塗料を塗布した。表1に塗布条件を示す。また、実施例1と同様にして電子写真用ローラを作成し、画像評価を行った。表1に結果を示す。
【0074】
〔実施例5〕
塗料粘度を500mPa・s、ローラ間の間隔を1000μm、各塗料供給ノズルからの塗料供給量を16.5ml、全ローラ数を6本とし、ローラ2本おきに、ローラの円筒層外周面上に塗料を供給した。つまり、塗料供給ノズルを、6本平行に並んだローラのうちの、1本目と3本目の上に一つずつ(合計二つ)配置した。これ以外は、実施例1と同様にローラ(円筒層)外周面に塗料を塗布した。表1に塗布条件を示す。また、実施例1と同様にして電子写真用ローラを作成し、画像評価を行った。表1に結果を示す。
【0075】
〔比較例1〕
塗料粘度を3mPa・s、ローラ間の間隔を10μm、各塗料供給ノズルからの塗料供給量を0.1mlとした以外、実施例1と同様にローラ(円筒層)外周面に塗料を塗布した。表1に塗布条件を示す。また、実施例1と同様にして電子写真用ローラを作成し、画像評価を行った。表1に結果を示す。
【0076】
〔比較例2〕
塗料粘度を3mPa・s、ローラ間の間隔を1000μm、各塗料供給ノズルからの塗料供給量を11.0mlとした以外、実施例1と同様にローラ(円筒層)外周面に塗料を塗布した。表1に塗布条件を示す。また、実施例1と同様にして電子写真用ローラを作成し、画像評価を行った。表1に結果を示す。
【0077】
〔比較例3〕
塗料粘度を600mPa・s、ローラ間の間隔を10μm、各塗料供給ノズルからの塗料供給量を0.1mlとした以外、実施例1と同様にローラ(円筒層)外周面に塗料を塗布した。表1に塗布条件を示す。また、実施例1と同様にして電子写真用ローラを作成し、画像評価を行った。表1に結果を示す。
【0078】
〔比較例4〕
塗料粘度を600mPa・s、ローラ間の間隔を1000μm、各塗料供給ノズルからの塗料供給量を11.0mlとした以外、実施例1と同様にローラ(円筒層)外周面に塗料を塗布した。表1に塗布条件を示す。また、実施例1と同様にして電子写真用ローラを作成し、画像評価を行った。表1に結果を示す。
【0079】
〔比較例5〕
塗料粘度を50mPa・s、ローラ間の間隔を8μm、各塗料供給ノズルからの塗料供給量を0.1mlとした以外、実施例1と同様にローラ(円筒層)外周面に塗料を塗布した。表1に塗布条件を示す。また、実施例1と同様にして電子写真用ローラを作成し、画像評価を行った。表1に結果を示す。
【0080】
〔比較例6〕
塗料粘度を50mPa・s、ローラ間の間隔を1500μm、各塗料供給ノズルからの塗料供給量を17.0mlとした以外、実施例1と同様にローラ(円筒層)外周面に塗料を塗布した。表1に塗布条件を示す。また、実施例1と同様にして電子写真用ローラを作成し、画像評価を行った。表1に結果を示す。
【0081】
【表1】

【0082】
表1の結果より、塗料粘度が5mPa・s以上500mPa・s以下であり、塗工前の非接触のローラ間隔が10μm以上1000μm以下であると、より良好な画像を形成する電子写真用ローラ(現像ローラ)として用いることができた。
【0083】
また実施例において、アプリケータを必要とせずに、塗料を無駄にすることなく、多数のローラを一括して塗布することができた。すなわち、本発明によれば、生産性が向上し、ローコスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明に用いることができる塗布装置の概略を示す模式的斜視図である。
【図2】本発明に用いることができる塗布装置の概略を示す模式的断面図である。
【図3】本発明に用いることができる塗布装置の概略を示す模式的上視図である。
【図4】電子写真画像形成装置の概略を示す模式図である。
【符号の説明】
【0085】
1 現像ローラ
5 非磁性一成分トナー
6 現像容器
7 トナー供給ローラ
8 現像ブレード
10a〜d 画像形成ユニット
11 感光ドラム
12 帯電装置(帯電ローラ)
13 画像露光装置からの書き込みビーム
14 現像装置
15 クリーニング装置
16 画像転写装置(転写ローラ)
17 転写搬送ベルト
18 駆動ローラ
19 テンションローラ
20 従動ローラ
21 吸着ローラ
22 供給ローラ
23 剥離装置
24 定着装置
25 転写材
26 バイアス電源(画像転写装置(転写ローラ)16用)
27 バイアス電源(吸着ローラ21用)
101 軸芯体
102 円筒層
103 塗料供給ノズル
104 塗料供給管
105 塗料供給ポンプ
106 塗料タンク
107 軸芯体把持冶具
108 塗料
109 ローラ間隔
201 ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸芯体の外周面上に円筒層を備えたローラを、水平状態でローラ周方向に回転させながら、該円筒層の外周面上に塗料を塗布するローラ外周面への塗料の塗布方法において、
該塗料が熱硬化性樹脂溶液であり、該塗料の粘度が5mPa・s以上、500mPa・s以下であって、
複数本の該ローラを、軸芯体の片端を同一線上にそろえ、かつ、該ローラを間隔10μm以上、1000μm以下で水平方向に互いに平行に並べる工程、
塗料供給ノズルから、該円筒層外周全面を塗布できる量の塗料を、該円筒層の外周面上に供給する工程、および、
該複数本のローラをそれぞれローラ周方向に回転させる工程、
を有することを特徴とするローラ外周面への塗料の塗布方法。
【請求項2】
前記塗料供給ノズルの幅が円筒層全長以下であることを特徴とする請求項1に記載のローラ外周面への塗料の塗布方法。
【請求項3】
軸芯体と、該軸心体の外周面上に設けられた円筒層と、該円筒層の外周面上に設けられた塗布層とを有する電子写真用ローラであって、
該塗布層が、請求項1または2に記載の方法により塗布された塗料の塗膜からなることを特徴とする電子写真用ローラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−61374(P2009−61374A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−230040(P2007−230040)
【出願日】平成19年9月5日(2007.9.5)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】