説明

ローラ清掃用フィルム及びローラの清掃方法

【課題】ウエブ搬送装置に設けられているローラを、そのローラの構造にかかわらず清掃することのできるローラ清掃用フィルム、及び該清掃用フィルムを用いたローラの清掃方法を提供する。
【解決手段】ローラ清掃用フィルムは、ウエブ搬送装置に設けられているローラの清掃に用いられる。ローラ清掃用フィルムは、ウエブ搬送装置にて搬送されるシート状材料の表面に粘着力を有する接着面12Aを介して接着されるとともに、接着面12Aとは反対側の面に粘着力を有する吸着面11Aを有し、接着面12Aの粘着力と吸着面11Aの粘着力とが、接着面12Aの粘着力>吸着面11Aの粘着力なる関係に設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエブ搬送装置のローラ清掃に用いられるローラ清掃用フィルム、及び該清掃用フィルムを用いたローラの清掃方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ロール状に巻き取られた紙や樹脂、金属などのシート状材料を搬送しつつ、同シート状材料にスリッター装置やコーティング装置などとして所定の加工を施すウエブ搬送装置は、紙製品や樹脂製品、金属製品、そして電子部品などの製造にも幅広く用いられている。
【0003】
このうちコーティング装置であれば、例えば図6に示すように、巻き取られたシート状材料Mを送り出す巻出部51と、巻き出されたシート状材料Mに所定の塗布材料を塗布するコーティング部52と、塗布された塗布材料をシート状材料Mに乾燥固定(定着)させる乾燥部53と、塗布材料が乾燥固定されたシート状材料Mを巻き取る巻取部54とを備える構成となる。通常、このようなコーティング装置は、巻出部51から送り出したシート状材料Mを巻取部54まで搬送するローラを上記各部51〜54に複数有しており、それらローラの総数は、少ない装置で十数本、多い装置になると百数十本やそれ以上にもなる。
【0004】
ところで近年は、製品の品質要求の高まりに伴って、ウエブ搬送装置としても高機能化が進んでいるものの、搬送用のローラに付着していた付着物がウエブ搬送装置が搬送するシート状材料に傷を付けたり、巻き込まれたりすることが製品管理上の問題となることも多くなってきている。すなわち、このような問題によって製品が不良品と判断されるおそれも高まってきている。そこで、このようなローラ付着物による製品不良を防ぐために、ウエブ搬送装置のローラ清掃を行う必要があるが、ウエブ搬送装置に組み込まれているローラは、それらローラ周辺に配置されている機器などにより、外部からの清掃が容易ではない場合も多い。そしてこのことは、こうしたローラの総数が増加するにしたがって顕著となる。このようなことから、従来は、ローラの付着物を簡単に清掃することのできるローラの清掃方法も提案されており、その一例が特許文献1に記載されている。
【0005】
この特許文献1に記載のローラの清掃方法は、表裏両面にウレタン系の感圧接着ゴムから成る粘着層が形成されたローラ清掃用シートをまずは用意する。そして、上下一対の送りローラが複数組並設されて金属板の搬送ラインを形成する搬送装置にこの清掃用シートを適時搬送して、各送りローラの周面に付着した汚れを粘着層に接着させるようにする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−178446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載のローラの清掃方法によれば、挟み込ませたローラ清掃用シートに圧力を印加する構造となるピンチローラやフィードローラなどの特定のローラであれば、確かにこれらを清掃できるようにはなる。しかし、ウエブ搬送装置に多く設けられているシート状材料を表面に載せるだけで、これを挟み込まないローラとなると、これを清掃することはできない。
【0008】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ウエブ搬送装置に設けられているローラを、そのローラの構造にかかわらず清掃することのできるローラ清掃用フィルム、及び該清掃用フィルムを用いたローラの清掃方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、ウエブ搬送装置に設けられているローラの清掃に用いられるローラ清掃用フィルムであって、前記ウエブ搬送装置にて搬送されるシート状材料の表面に粘着力を有する接着面を介して接着されるとともに、前記接着面とは反対側の面に粘着力を有する吸着面を有し、前記接着面の粘着力と前記吸着面の粘着力とが、接着面の粘着力>吸着面の粘着力なる関係に設定されていることを要旨とする。
【0010】
上記課題を解決するため、請求項6に記載の発明は、ウエブ搬送装置にて搬送されるシート状材料の表面にローラ清掃用フィルムを接着して、同ウエブ搬送装置に設けられているローラを清掃するローラの清掃方法であって、ローラ清掃用フィルムとして請求項1〜5のいずれか一項に記載のローラ清掃用フィルムを用いることを要旨とする。
【0011】
このような構成または方法によれば、ウエブ搬送装置は、搬送するシート状材料に接着されたローラ清掃用フィルムの吸着面がシート状材料の搬送に伴いローラの表面に当接し、該当接した吸着面の粘着力によりローラの表面に付着している付着物などが同表面から取り除かれるように同ローラ表面が清掃される。これにより、ローラの付着物が、シート状材料から加工された製品に、同付着物に起因する不良などを生じさせることが抑制される。また、搬送するシート状材料をそのままローラの清掃に用いるようにすれば、ローラ清掃の際、ウエブ搬送装置からシート状材料を除去する手間が省かれるなど、ローラ清掃に要する時間が大幅に短縮されるとともに、清掃の際に生じるシート状材料の無駄が減少されるようにもなる。
【0012】
また、ウエブ搬送装置が搬送するシート状材料にローラ清掃用フィルムを設けることで、該シート状材料が接触する全てのローラをローラ清掃用フィルムにて清掃することができる。さらに、ウエブ搬送装置を搬送されるシート状材料の同装置による搬送を利用したローラ清掃であるため、外部から清掃が困難なローラであれ、容易に清掃できる。これらのことにより、装置外部からローラを清掃する場合に比べて、装置周辺の機器を避ける時間などが不要になるなどから、ローラ清掃に要する時間を短くすることができるようになる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のローラ清掃用フィルムにおいて、前記吸着面の粘着力が0.05〜0.3[N/cm]に設定されていることを要旨とする。
このような構成によれば、ローラ清掃用フィルムは清掃対象とするローラの表面に付着しているゴミ等の付着物を吸着して同ローラの表面から除去することができるとともに、フィルムの吸着面がローラの表面に付着して残留する(転写する)ことが防止される。また、一旦、ローラ清掃用フィルムに付着した付着物が同清掃用フィルムに好適に保持されるとともに、同清掃用フィルムに保持されている付着物が他のローラに再付着されることも防ぐことができるようになる。これにより、ウエブ搬送装置のローラの清掃が一層好適に行えるようになる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のローラ清掃用フィルムにおいて、前記接着面の粘着力が前記吸着面の粘着力の2倍以上の強さに設定されていることを要旨とする。
【0015】
このような構成によれば、ローラ清掃用フィルムがシート状材料から剥離してローラに付着してしまうようなことや、シート状材料から離れた吸着面がローラを適切に清掃できなくなるようなことを防ぐことができる。これにより、ローラ清掃用フィルムによるローラの清掃が好適に行えるようになる。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載のローラ清掃用フィルムにおいて、前記接着面の粘着力が2[N/cm]以上に設定されていることを要旨とする。
【0017】
このような構成によれば、ローラ清掃用フィルムがシート状材料から剥離してローラに付着してしまうようなことや、シート状材料から離れた吸着面がローラを適切に清掃できなくなるようなことがより一層好適に防止される。これにより、ウエブ搬送装置のローラの清掃がより一層好適に行えるようになる。
【0018】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載のローラ清掃用フィルムにおいて、前記清掃の対象となるローラの表面が金属であり、前記接着されるシート状材料が樹脂材料からなることを要旨とする。
【0019】
このような構成によれば、金属のローラを有するウエブ搬送装置にて樹脂材料を搬送する場合、それらローラの清掃にローラ清掃用フィルムを適用することができる。ウエブ搬送装置には金属のローラが採用されることも多く、また、ウエブ搬送装置の搬送対象は樹脂材料であることも多い。このように、このローラ清掃用フィルムを多くのウエブ搬送装置に利用することができる。
【0020】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載のローラの清掃方法において、前記搬送するシート状材料の両面に前記ローラ清掃用フィルムをそれぞれ接着することを要旨とする。
このような方法によれば、ウエブ搬送装置においてシート状材料の両面側に設けられているローラを一括して清掃することができるため、ローラ清掃に要する時間がより一層短縮されるようになる。
【0021】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載のローラの清掃方法において、前記ローラ清掃用フィルムの各々を前記シート状材料の両面に交互に接着することを要旨とする。
このような方法によれば、ローラ清掃用フィルムが接着された状態でのシート状材料の厚みを抑えることができるようになるため、ウエブ搬送装置にて搬送されるシート状材料やローラ清掃用フィルムに不要な圧力が印加されることなどが抑制され、ローラ清掃を適切に行うことができるようになる。
【0022】
請求項9に記載の発明は、請求項6〜8のいずれか一項に記載のローラの清掃方法において、前記ローラ清掃用フィルムの長さを、清掃対象とするローラのうちの最大径を有するローラの外周長以上とすることを要旨とする。
【0023】
このような方法によれば、ローラの全周をローラ清掃用フィルムにより清掃することができるようになることから、ローラ清掃を好適に行なうことができるようになる。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係るローラ清掃用フィルム、及び該清掃用フィルムを用いたローラの清掃方法によれば、ウエブ搬送装置に設けられているローラを、そのローラの構造にかかわらず清掃することのできるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係るローラ清掃用フィルムの一実施形態について、その平面構造を示す平面図。
【図2】同実施形態のローラ清掃用フィルムであって図1の2−2線における断面構造を示す断面図。
【図3】同実施形態のローラ清掃用フィルムをシート状材料に接着した態様を示す模式図。
【図4】同実施形態のローラ清掃用フィルムを評価するための態様を模式的に示す模式図。
【図5】同実施形態のローラ清掃用フィルムを評価した結果を表にて示す図。
【図6】従来のウエブ搬送装置の一例としてのコーティング装置について、その概略構成を模式的に示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係るローラ清掃用フィルムについて、図1〜図3に従って説明する。
ローラ清掃用フィルム10は、上述の図6に示されたウエブ搬送装置にて搬送されるポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)からなるシート状材料Mに接着されて同シート状材料Mとともにウエブ搬送装置を搬送されることによって同ウエブ搬送装置に設けられたローラを清掃する。そのため、図1に示すように、ローラ清掃用フィルム10は、幅W及び長さLからなる平面矩形のシート形状に形成されている。ローラ清掃用フィルム10の幅Wは、シート状材料Mの搬送方向に直交する方向の長さであって該シート状材料Mの幅に対応するとともに、同長さLは、搬送方向に沿う方向の長さであって清掃対象のローラの最長の外周長よりも長い長さである。
【0027】
図2に示すように、ローラ清掃用フィルム10は、その厚さ方向に厚みTを有しているとともに、その厚さ方向中央に樹脂材料からなるシート状の基材13を有し、同基材13の一方の面に吸着層11を積層させ、同基材13の他方の面に接着層12を積層させている。そして、吸着層11は、基材13に反対側の面、いわゆる外面側に吸着面11Aが形成されているとともに、接着層12は、基材13に反対側の面、いわゆる外面側に接着面12Aが形成されている。つまり、ローラ清掃用フィルム10には、その一方の面である表面に吸着面11Aが設けられているとともに、その他方の面、つまり吸着面11Aの反対側の面である裏面に接着面12Aが設けられている。
【0028】
基材13は、例えば、PETの薄膜、いわゆる樹脂フィルムから構成されている。この樹脂フィルムは、ウエブ搬送装置にて搬送されるシート状材料Mと同じものであるが、シート状材料Mとともにウエブ搬送装置を搬送させることのできるものであれば、厚みが異なっていたり、材料の合成樹脂が異なっていたりしてもよい。
【0029】
吸着層11はアクリル系の粘着材から構成されているため、吸着面11Aには同粘着材に基づく粘着力が生じるとともに、基材13には基材13から剥離しないように定着するようになっている。なお、吸着面11Aの粘着力は、ウエブ搬送装置に設けられているローラに対して粘着後、剥離可能である強さに設定されている。
【0030】
接着層12はアクリル系の粘着材から構成されているため、接着面12Aには同粘着材に基づく粘着力が生じるとともに、基材13には基材13から剥離しないように定着するようになっている。なお、接着面12Aの粘着力は、接着されたシート状材料Mから剥離しない強さに設定されている。
【0031】
このように、吸着面11Aにはローラに対する所定の強さの粘着力が設定され、接着面12Aにはシート状材料Mに接着する所定の強さの粘着力が設定されるため、吸着面11Aの粘着力及び接着面12Aの粘着力は、それぞれ異なる強さに設定される。すなわち、吸着層11を構成する粘着材と、接着層12を構成する粘着材とは、それぞれ異なる特性を有している。
【0032】
次に、シート状材料Mに接着されたローラ清掃用フィルム10について図3に従って説明する。なお、図3において、ウエブ搬送装置による搬送対象であるシート状材料Mは、その搬送方向(図の矢印方向)に直交する方向に幅Wを有している。また、ウエブ搬送装置にて清掃対象のうちの最大径Dmを有するローラは外周長Lmを有しているものとする。
【0033】
詳述すると、図3に示すように、各ローラ清掃用フィルム10は、シート状材料Mに接着面12Aを介して接着されることによって吸着面11Aが外側に配置された状態でシート状材料Mに接着固定(定着)される。つまり、ローラ清掃用フィルム10は、その幅Wをシート状材料Mの幅Wに合わせるとともに、シート状材料Mの搬送方向に対して長さLを合わせるように配置された状態で、その接着面12Aによりシート状材料Mに接着される。なお、長さLは、清掃対象のローラの外周長Lm以上の長さに設定されている。またこのとき、ローラ清掃用フィルム10は、シート状材料Mとの間に空気を含まないようにシート状材料Mに貼り付けられて接着される。
【0034】
このようにローラ清掃用フィルム10が接着された状態でウエブ搬送装置が各ローラ15,16によりシート状材料Mを搬送することで、ローラ清掃用フィルム10も、各ローラ15,16によりウエブ搬送装置を搬送方向に搬送される。なお、各ローラ15,16はシート状材料Mの搬送にあたり駆動されるものであっても、シート状材料Mの搬送を補助する駆動されないローラであってもよい。また、各ローラ15,16の表面は金属であるものとする。
【0035】
つまり、図3において、シート状材料Mの下面に接着されたローラ清掃用フィルム10は、ローラ15に到達すると吸着面11Aをローラ15の表面に吸着させて、それからローラ15の表面とともに移動する。そしてローラ15から離れるとき、ローラ清掃用フィルム10は吸着面11Aをローラ15の表面から剥離させる。一方、ローラ清掃用フィルム10には、ローラ15の表面から剥離させる力の方向とは逆の方向である、ローラ15の表面に引かれる方向、つまりシート状材料Mから引き剥がされる方向にも力が加わる。しかし、ローラ清掃用フィルム10の吸着面11Aは、ローラ清掃用フィルム10の基材13から引き剥がされてローラ15の表面に残留しないように同基材13に定着されているため、ローラ15の表面に付着して残留することが防止されている。またローラ清掃用フィルム10としては、引き剥がされる方向の力には接着面12Aの粘着力が対抗してシート状材料Mへの接着を維持させる。すなわち、接着面12Aの粘着力は、吸着面11Aがローラ15から剥離される場合であれ、ローラ清掃用フィルム10をシート状材料Mから剥離させない強さに設定されている。また、ローラ清掃用フィルム10は、ウエブ搬送装置を搬送されることにより複数のローラへの吸着剥離を繰り返すため、吸着面11Aにはローラへの吸着剥離を繰り返すことが可能な粘着力が設定されているとともに、接着面12Aには、ローラへの吸着剥離を繰り返してもシート状材料Mへの接着を維持する粘着力が設定される。
【0036】
また、図3において、シート状材料Mの上面に接着されたローラ清掃用フィルム10は、その吸着面11Aをローラ16に対して吸着剥離させる。なおこの吸着剥離も、上述のシート状材料Mの下面に接着されたローラ清掃用フィルム10の場合と同様であるため、説明の便宜上、その詳細な説明を割愛する。
【0037】
このようなことから、本実施形態では、ローラ清掃用フィルム10は、吸着面11Aの粘着力と接着面12Aの粘着力との関係が、「接着面12Aの粘着力>吸着面11Aの粘着力」となるように設定されている。
【0038】
なお、本実施形態では、シート状材料Mの両面にそれぞれローラ清掃用フィルム10が接着されているとともに、各ローラ清掃用フィルム10の間には、搬送方向に対する隙間として間隔Gが設けられている。つまり、ローラ清掃用フィルム10は、シート状材料Mの各面に間隔Gをあけて交互に接着されている。また、各ローラ清掃用フィルム10の間に搬送方向に対する間隔Gをあけることによってシート状材料Mの厚み方向に両面のローラ清掃用フィルム10が重ならないようになる。これにより、シート状材料Mにおける厚みの増加を片面のローラ清掃用フィルム10の厚みTのみに抑制できるため、ウエブ搬送装置において材料の厚みの増加に伴って生じるおそれのあるシート状材料Mのローラ接触圧の変動などが抑制できる。つまり、シート状材料Mに接着されたローラ清掃用フィルム10としてもローラ表面への接触圧力が安定化されてローラ表面への吸着の安定化が図られるとともに、シート状材料Mへの接着についての安定化なども図られるようになる。
【0039】
次に、このようなローラ清掃用フィルム10における吸着面11Aの粘着力と接着面12Aの粘着力との関係について図4及び図5に従って説明する。
図4に示すように、ローラ清掃用フィルム10として適切な吸着面11Aの粘着力と接着面12Aの粘着力とを得るため、ローラ清掃用フィルム10と同様の構成を有する評価用フィルム20を製作した。すなわち評価用フィルム20には、ローラへの吸着状態を評価できる評価用吸着面21Aと、ウエブ搬送装置にて搬送されるシート状材料Mへの接着状態を評価できる評価用接着面22Aとが備えられている。そして、この評価用フィルム20をシート状材料Mに接着し、ウエブ搬送装置に用いられているローラ15,16と同等の表面特性を有する評価用ローラ23にて搬送することを通じて得られた適切な評価用吸着面21Aの粘着力及び評価用接着面22Aの粘着力に基づいて、吸着面11Aの粘着力及び接着面12Aの粘着力を設定するようにした。なお、評価用ローラ23の表面は、クロムめっき処理されている金属表面であるとともに、その表面粗さは、最大高さRz(JIS B0601:2001)を「0.1μm」とする精度の仕上げ「0.1S」としている。なお、本実施形態では、評価用ローラ23は、その回転中心に対して「10°」〜「180°」の角度範囲の外周面にシート状材料Mを当接させて搬送するものとする。いわゆる、評価用ローラ23がシート状材料Mと当接している角度である抱角は「10°」〜「180°」の範囲となっている。また、シート状材料の張力は40〜120[N]の範囲となっている。
【0040】
図5に示すように、評価用フィルム20として、評価用吸着面21Aの粘着力と評価用接着面22Aの粘着力との組み合わせを実施例1〜6及び比較例1〜6に示す組み合わせだけ設けた。すなわち、評価リスト30において、「吸着面の粘着力」に評価用吸着面21Aの粘着力として設定された値が示されており、「接着面の粘着力」に評価用接着面22Aの粘着力として設定された値が示されている。なお、吸着面の粘着力及び接着面の粘着力のいずれも粘着力の単位は[N/cm]である。
【0041】
すなわち、実施例1は、吸着面の粘着力が「0.05」、接着面の粘着力が「2.00」にそれぞれ設定されている。実施例2は、吸着面の粘着力が「0.10」、接着面の粘着力が「2.00」にそれぞれ設定されている。以下、吸着面の粘着力及び接着面の粘着力の組み合わせについて、実施例3は「0.20」及び「2.00」、実施例4は「0.30」及び「2.00」、実施例5は「0.05」及び「0.10」、実施例6は「0.30」及び「0.60」にそれぞれ設定されている。また、吸着面の粘着力及び接着面の粘着力の組み合わせについて、比較例1は「0.01」及び「2.00」、比較例2は「0.02」及び「2.00」、比較例3は「0.04」及び「2.00」、比較例4は「0.40」及び「2.00」にそれぞれ設定されている。さらに、吸着面の粘着力及び接着面の粘着力の組み合わせについて、比較例5は「0.05」及び「0.08」、比較例6は「0.30」及び「0.50」にそれぞれ設定されている。
【0042】
そして、評価用ローラ23の表面に、合成樹脂などからなる直径約3μmのスペーサービーズ24をローラ付着物として付着させた後、評価用フィルム20の評価用吸着面21Aが評価用ローラ23の表面を清掃するように、各実施例及び各比較例の評価用フィルム20を接着したシート状材料Mを順次搬送させた。そして評価用フィルム20により清掃された評価用ローラ23の表面について、スペーサービーズ24の残数と、評価用フィルムの吸着面の転写(付着)状態と、評価用フィルムの接着面の剥がれ状態とについて各実施例及び比較例毎に調べた。なお、評価用ローラ23の表面におけるスペーサービーズ24の残数の測定及び評価用フィルムの吸着面の転写状態の観測はマイクロスコープを用いて行った。必要に応じて、評価用フィルムの接着面の剥がれ状態、特に評価用ローラ23の表面への付着状態についてもマイクロスコープにより観測した。
【0043】
実施例1〜6の各評価用フィルム20の場合、スペーサービーズ24の残数がいずれも「0」であった。また、評価用吸着面21Aを構成する粘着物は評価用ローラ23に転写されなかったとともに、評価用接着面22Aがシート状材料Mから剥がれなかった。つまり、実施例1〜6の各評価用フィルム20は、評価用ローラ23に付着していたローラ付着物を除去(清掃)できた(判定○)。
【0044】
一方、比較例1〜3の評価用フィルム20の場合、評価用吸着面21Aを構成する粘着物は評価用ローラ23に転写されないとともに、評価用接着面22Aがシート状材料Mから剥がれなかった。しかしながら、評価用ローラ23にはスペーサービーズ24がそれぞれ「21個」、「8個」、「5個」残留していた。つまり、比較例1〜3の各評価用フィルム20は、評価用ローラ23に付着していたローラ付着物を除去(清掃)できなかった(判定×)。
【0045】
また、比較例4の評価用フィルム20の場合、評価用接着面22Aがシート状材料Mから剥がれなかったとともに、スペーサービーズ24の残数が「0」であって評価用ローラ23に付着していたローラ付着物を除去(清掃)できた。しかしながら、評価用吸着面21Aを構成する粘着物が評価用ローラ23に転写された。つまり、比較例4の評価用フィルム20の場合、評価用フィルム20から剥離した粘着物が評価用ローラ23に付着した(判定×)。
【0046】
さらに、比較例5及び6の各評価用フィルム20の場合、評価用吸着面21Aを構成する粘着物のみとしては評価用ローラ23に転写されないとともに、スペーサービーズ24の残数がいずれも「0」であって評価用ローラ23に付着していたローラ付着物を除去(清掃)できた。しかしながら、評価用接着面22Aがシート状材料Mから剥離した。つまり、比較例5及び6の各評価用フィルム20の場合、評価用フィルム20がシート状材料Mから剥離することにより、評価用ローラ23に付着したり、シート状材料Mから評価用吸着面21Aが離れて評価用ローラ23を適切に清掃することなどができなくなった(判定×)。
【0047】
すなわち、評価用吸着面21Aの粘着力が「0.05」未満(比較例1〜3)の場合、評価用ローラ23から付着物を除去できない。一方、評価用吸着面21Aの粘着力が「0.30」を越える(比較例4)場合、評価用吸着面21Aを構成する粘着物が破断され、評価用ローラ23に転写されてしまうおそれがある。また、評価用接着面22Aの粘着力が評価用吸着面21Aの粘着力の2倍より弱い(比較例5及び6)場合、評価用接着面22Aが剥がれて評価用ローラ23に評価用フィルム20が転写されたりするおそれがある。
【0048】
これら評価用フィルム20による調査に基づいて、ローラ清掃用フィルム10としては、吸着面11Aの粘着力が「0.05」〜「0.30」であることが好適であることが得られた。
【0049】
また、接着面12Aの粘着力は、吸着面11Aの粘着力の2倍以上が適切であり、例えば「0.20」以上であることが好適であることが得られた。特に、ローラ毎に抱角が異なる場合、抱角により接着面12Aの剥がれやすさが変わる、つまり、抱角に応じて接着面12Aの粘着力の適切な値が異なる。そこで、接着面12Aの粘着力を吸着面11Aの粘着力の2倍以上(より好ましくは2[N/cm]以上)とする。これにより、10°〜180°の抱角において接着層12の破断、詳しくは接着面12Aを構成する粘着物の破断による同接着面12Aのシート状材料Mからの剥がれを防ぐことができるとともに、各ローラの表面の清掃を好適に行うことができる。
【0050】
(作用)
ウエブ搬送装置にて、ローラ清掃用フィルム10を両面に接着させたシート状材料Mを搬送することによって、該シート状材料Mを搬送方向に搬送等する各ローラ15,16のいずれかの表面に、対応するローラ清掃用フィルム10の吸着面11Aが吸着する。これにより、表面に当接したローラ清掃用フィルム10の吸着面11Aの粘着力により、対応するローラ15,16の表面に付着していたゴミdなどが取り除かれて、ローラ15,16の表面が清掃されるようになる。なお、各ローラ15,16の表面に付着するゴミdは、主にシート状材料Mを構成する合成樹脂、又はセルロースや固化した塗布材料などである。また、ゴミdは、各ローラ15,16の表面に静電気や固化した塗布材料に残っていた接着力など、吸着面11Aの粘着力に比べて弱い力によって付着しているため、その静電気などよりも強い力の吸着面11Aの粘着力によって各ローラ15,16に付着しているゴミdが吸着面11Aに吸着移動されるようになる。さらに、吸着面11Aの粘着力は、各ローラ15,16の表面が静電気などによりゴミdを吸着する力よりも強いため、ゴミdを吸着した吸着面11Aはその後、搬送方向下流側(後段)にて他のローラを清掃したとしても、吸着面11Aに吸着されたゴミdが該他のローラに取り残されるようなおそれもない。このようなことから、ローラ清掃用フィルム10によって、複数のローラ、例えば、十数本から百数十本のローラを連続して清掃することができるようにもなる。
【0051】
また、ローラ清掃用フィルム10の長さLを、清掃対象のローラのうちの最大径Dmを有するローラ15,16の外周長Lm(=Dm×π)以上の長さにすることで、ローラ清掃用フィルム10がローラ15,16の外周に一周以上粘着し、ローラ15,16の外周面の全周を清掃することができるようにしている。すなわち、シート状材料Mの下面に接着された長さLのローラ清掃用フィルム10がローラ15の外周面全周に渡って付着物であるゴミdを除去、いわゆる清掃できるようになる。また同様に、シート状材料Mの上面に接着された長さLのローラ清掃用フィルム10がローラ16の外周面全周に渡って付着物であるゴミdを除去、いわゆる清掃できるようになる。
【0052】
また、従来、ウエブ搬送装置のローラの清掃を人手により行うこともあったが、上述のように、ローラ周辺に配置されている機器などにより、外部からの清掃は容易でなく、狭いところでの作業や無理な姿勢での作業が生じる問題があり、それら問題の解消が望まれていた。すなわち、このローラ清掃用フィルム10は、ウエブ搬送装置のローラ清掃から、人手による作業を無くす、もしくは減少させるため、前記問題を解消させることもできる。
【0053】
ところで、ローラの付着物が付いた製品はその付着物が付着した部分が不良品と判定されるおそれがある。また、付着物の付いたローラが搬送した製品は、ローラの周長毎に付着物により付された跡、いわゆる打痕(ダコン)が付くおそれがある。打痕は、製品の全範囲に渡って残されてしまうため、これが不良と判定されると、ロール状の製品が一巻きまるまる不良品と判定されて大きな損失となってしまうおそれもある。そのため、特に、打痕を生じさせるようなゴミについては、ローラからの確実な除去が望まれている。本実施形態では、そのようなゴミに対応するものとして、スペーサービーズ24を用いたローラ付着物の清掃状態を調査したものであることから、このローラ清掃用フィルム10を用いてウエブ搬送装置のローラを清掃することによって、製品に打痕が残ってしまうおそれを防ぐことができるようにもなる。これにより、一巻き分全てのシート状材料から製造された製品が不良品と判定されてしまうようそれを防ぐことができるようになる。
【0054】
以上説明したように、本実施形態のローラ清掃用フィルムによれば、以下に列記するような効果が得られるようになる。
(1)ウエブ搬送装置は、搬送するシート状材料Mに接着されたローラ清掃用フィルム10の吸着面11Aがシート状材料Mの搬送に伴いローラ15,16の表面に当接し、該当接した吸着面11Aの粘着力によりローラ15,16の表面に付着している付着物(ゴミd)などが同表面から取り除かれるように同ローラ表面が清掃される。これにより、ローラ15,16の付着物が、シート状材料Mから加工された製品に、同付着物に起因する不良などを生じさせることが抑制される。また、搬送するシート状材料Mをそのままローラ15,16の清掃に用いるようにすれば、ローラ清掃の際、ウエブ搬送装置からシート状材料Mを除去する手間が省かれるなど、ローラ清掃に要する時間が大幅に短縮されるとともに、清掃の際に生じるシート状材料の無駄が減少されるようにもなる。
【0055】
(2)ウエブ搬送装置が搬送するシート状材料Mにローラ清掃用フィルム10を設けることで、該シート状材料Mが接触する全てのローラ15,16をローラ清掃用フィルム10にて清掃することができる。さらに、ウエブ搬送装置を搬送されるシート状材料Mの同装置による搬送を利用したローラ清掃であるため、外部から清掃が困難なローラであれ、容易に清掃できる。これらのことにより、装置外部からローラを清掃する場合に比べて、装置周辺の機器を避ける時間などが不要になるなどから、ローラ清掃に要する時間を短くすることができるようになる。
【0056】
(3)吸着面11Aの粘着力を0.05〜0.3[N/cm]に設定することで、ローラ清掃用フィルム10の吸着面11A、詳細には吸着面11Aを構成する粘着物がローラ15,16に転写してしまうようなことを一層好適に防止できるようにした。また、一旦、ローラ清掃用フィルム10に付着した付着物が同ローラ清掃用フィルム10に好適に保持されるため、同ローラ清掃用フィルム10に保持されている付着物(ゴミd)が他のローラに再付着されることを防ぐことができるようにもなる。これにより、ウエブ搬送装置のローラの清掃がより一層好適に行えるようになる。
【0057】
(4)接着面12Aの粘着力を吸着面11Aの粘着力の2倍以上の強さに設定したことから、接着層12の破断を防ぐことができ、ローラ清掃用フィルム10がシート状材料Mから剥離してローラ15,16に付着してしまうようなことをより確実に防ぐことができる。これにより、ローラ清掃用フィルムによるローラの清掃が好適に行えるようになる。
【0058】
特に、接着面12Aの粘着力を2[N/cm]以上に設定することにより接着層12の破断によるローラ清掃用フィルム10のシート状材料Mからの剥離をより確実に防ぐことができる。
【0059】
つまり、ローラ毎に抱角が異なる場合、抱角により接着面12Aの剥がれやすさが変わる、つまり、抱角に応じて接着面12Aの粘着力の適切な値が異なる。そこで、接着面12Aの粘着力を吸着面11Aの粘着力の2倍以上(より好ましくは2[N/cm]以上)とする。これにより、10°〜180°の抱角において接着層12の破断、詳しくは接着面12Aを構成する粘着物の破断による同接着面12Aのシート状材料Mからの剥がれを防ぐことができるとともに、各ローラの表面の清掃を好適に行うことができる。
【0060】
(5)清掃対象とするローラ15,16の表面が金属であり、搬送するシート状材料MがPETからなるようなウエブ搬送装置にて、それらローラ15,16の清掃にローラ清掃用フィルム10を適用することができる。ウエブ搬送装置には金属のローラ15,16が採用されることも多く、また、ウエブ搬送装置の搬送対象はPETなどの樹脂材料であることも多いことから、このローラ清掃用フィルム10を多くのウエブ搬送装置に利用することができる。
【0061】
(6)搬送対象として多用されるPETフィルムをウエブ搬送装置として好適な表面である表面粗さ0.1Sを有するローラ15,16により搬送する場合にあっても、このローラ清掃用フィルム10を適用することができる。
【0062】
(7)ウエブ搬送装置においてシート状材料Mの両面側に設けられているローラ15,16を一括して清掃することができるため、ローラ清掃に要する時間をより一層短縮することができるようになる。
【0063】
(8)ローラ清掃用フィルム10の各々をシート状材料Mの両面に交互に接着することにより、ローラ清掃用フィルム10が接着された状態でのシート状材料Mの厚みを抑えることができるようになる。このため、ウエブ搬送装置にて搬送されるシート状材料Mやローラ清掃用フィルム10に不要な圧力が印加されることなどが抑制され、ローラ清掃を適切に行うことができるようになる。
【0064】
(9)ローラ清掃用フィルムの長さLを、清掃対象とするローラ15,16のうちの最大径Dmを有するローラ15,16の外周長Lm以上としたことにより、ローラ15,16はその全周がローラ清掃用フィルム10により必ず清掃されるようになる。これにより、ローラ清掃が好適に行なわれるようになる。
【0065】
なお上記実施形態は、以下の態様で実施することもできる。
・上記実施形態では、ローラ15,16の表面がクロムめっき処理されている場合について例示したが、これに限らず、ローラの表面は金属であれば、他のめっき処理などが施されていてのよいし、ローラが金属製であれば表面はその金属のままであってもよい。また、ローラ表面が金属以外、例えば、合成樹脂やゴムなどから構成されていてもよい。なお、ウエブ搬送装置としては、上述の各表面を有するローラが混在していてもよい。ローラ清掃用フィルムの粘着力は、どのようなローラに対してであっても多かれ少なかれ清掃能力を発揮する。これにより、ローラ清掃用フィルムを適用することのできるウエブ搬送装置、及び、同装置に設けられているローラの種類の拡張を図ることができるようになる。
【0066】
・上記実施形態では、シート状材料に対する清掃対象のローラの抱角は「10°」〜「180°」である場合について例示した。しかしこれに限らず、ローラの抱角は「10°」より小さい角度、例えば、点接触となるような角度であってもよいし、「180°」よりも大きい角度であってもよい。これにより、ローラ清掃用フィルムを適用することのできるウエブ搬送装置の拡張を図ることができるようになる。
【0067】
・上記実施形態では、ウエブ搬送装置でPETからなるシート状材料Mを搬送する場合について例示した。しかしこれに限らず、ウエブ搬送装置で搬送するシート状材料は、ポリ塩化ビニル(PVC)などの他の合成樹脂や金属、及び、それらの積層された材料などから構成されていてもよい。これにより、ローラ清掃用フィルムを適用することのできるウエブ搬送装置の拡張を図ることができるようになる。
【0068】
・上記実施形態では、用途が清掃用には限られていないシート状材料Mにローラ清掃用フィルム10を接着する場合について例示したが、これに限らず、用途を清掃用に限ったシート状材料にローラ清掃用フィルムを接着させてウエブ搬送装置を搬送してもよい。これにより、例えば、製品用のシート状材料と、清掃用のシート状材料とを区別することができるようになるため、製品用のシート状材料の無駄を減らすことができるようにもなる。また、製品用のシート状材料が清掃に適しない場合や、ローラ清掃用フィルムの接着に適さない場合であっても、清掃に適したシート状材料を用いることができるため、このようなローラ清掃用フィルムによるウエブ搬送装置のローラ清掃の適用範囲を拡張することができるようにもなる。
【0069】
・上記実施形態では、基材13がPETからなる場合について例示したが、これに限らず、基材は合成樹脂などが複数積層されたシート状材料であってもよい。これにより、ローラ清掃用フィルムの設計自由度の向上が図られるようになる。
【0070】
・上記実施形態では、ローラ清掃用フィルム10は、吸着面11Aや接着面12Aを露出させている場合について例示した。しかしこれに限らず、ローラ清掃用フィルムの吸着面や接着面には、それら吸着面や接着面を保護するセパレータが設けられていてもよい。この場合、ローラ清掃用フィルムは、接着面のセパレータを取り除いてからシート状材料に接着されるとともに、ウエブ搬送装置を搬送されるとき、吸着面のセパレータを取り除かれるようにすればよい。例えば、ロール状に巻き取られたシート状材料に、吸着面のセパレータをつけたままローラ清掃用フィルムを接着しておき、当該ローラ清掃用フィルムが巻き出されるときに吸着面のセパレータを除去するようにすればよい。これにより、ローラ清掃用フィルムの利用態様の自由度が高められるようになる。
【0071】
・上記実施形態では、シート状材料Mの両面にローラ清掃用フィルム10を接着する場合について例示した。しかしこれに限らず、シート状材料のいずれか一方の面に対応するローラのみ清掃したい場合などには、シート状材料の片面のみにローラ清掃用フィルムを接着してもよい。
【0072】
・また、上記実施形態では、シート状材料Mの片面にはローラ清掃用フィルム10を1枚接着する場合について例示した。しかしこれに限らず、シート状材料の片面に、ローラ清掃用フィルムを複数枚接着するようにしてもよい。これにより、ローラを複数回清掃することができるようになったり、ローラの外周長よりも短いシート状材料を用いて当該ローラの全周を好適に清掃することができるようにすることができる。
【0073】
シート状材料の両面にそれぞれ複数枚のローラ清掃用フィルムを設ける場合、各ローラ清掃用フィルムを、それらの間には所定の間隔を設けつつ、シート状材料の両面に千鳥状に配置するようにすることにより上記実施形態の効果を維持しつつ、ローラの清掃回数を増やすことができるようになる。
【0074】
・さらに、ウエブ搬送装置による搬送に不都合が生じないのであれば、シート状材料の両面に設ける各ローラ清掃用フィルムを、シート状材料の厚み方向に一部若しくは全部が重なるように設けてもよい。
【0075】
上述のように、シート状材料におけるローラ清掃用フィルムの配置の自由度が向上されるようになれば、このローラ清掃用フィルムを利用したローラ清掃の適用可能性などの向上が図られるようにもなる。
【0076】
・上記実施形態では、ウエブ搬送装置を特に限定していないが、ウエブ搬送装置は、シート状材料に所定の加工を施す装置であれば、スリッター装置やコーティング装置などであってもよい。これにより、多様なウエブ搬送装置に対しても、このローラ清掃用フィルムを適用することでそれらウエブ搬送装置のローラ清掃が簡単に行なえるようになるとともに、清掃に要する時間の短縮なども図られるようになる。
【0077】
・なおこのローラ清掃用フィルムは、電池の正極や負極を製造するウエブ搬送装置、具体的には、リチウムイオン電池の電極を作成する工程に用いられるスリッター装置やコーティング装置、ニッケル水素電池の電極を作成する工程に用いられるスリッター装置やコーティング装置に適用することもできる。これにより、電池の正極や負極を製造するウエブ搬送装置のローラを、このローラ清掃用フィルムを用いて簡単に清掃できるようになるとともに、清掃に要する時間の短縮なども図ることができるようになる。
【符号の説明】
【0078】
10…ローラ清掃用フィルム、11…吸着層、11A…吸着面、12…接着層、12A…接着面、13…基材、15,16…ローラ、20…評価用フィルム、21A…評価用吸着面、22A…評価用接着面、23…評価用ローラ、24…スペーサービーズ、30…評価リスト、51…巻出部、52…コーティング部、53…乾燥部、54…巻取部、M…シート状材料。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエブ搬送装置に設けられているローラの清掃に用いられるローラ清掃用フィルムであって、
前記ウエブ搬送装置にて搬送されるシート状材料の表面に粘着力を有する接着面を介して接着されるとともに、前記接着面とは反対側の面に粘着力を有する吸着面を有し、前記接着面の粘着力と前記吸着面の粘着力とが、
接着面の粘着力>吸着面の粘着力
なる関係に設定されている
ことを特徴とするローラ清掃用フィルム。
【請求項2】
前記吸着面の粘着力が0.05〜0.3[N/cm]に設定されている
請求項1に記載のローラ清掃用フィルム。
【請求項3】
前記接着面の粘着力が前記吸着面の粘着力の2倍以上の強さに設定されている
請求項1または2に記載のローラ清掃用フィルム。
【請求項4】
前記接着面の粘着力が2[N/cm]以上に設定されている
請求項1〜3のいずれか一項に記載のローラ清掃用フィルム。
【請求項5】
前記清掃の対象となるローラの表面が金属であり、前記接着されるシート状材料が樹脂材料からなる
請求項1〜4のいずれか一項に記載のローラ清掃用フィルム。
【請求項6】
ウエブ搬送装置にて搬送されるシート状材料の表面にローラ清掃用フィルムを接着して、同ウエブ搬送装置に設けられているローラを清掃するローラの清掃方法であって、
前記ローラ清掃用フィルムとして請求項1〜5のいずれか一項に記載のローラ清掃用フィルムを用いる
ことを特徴とするローラの清掃方法。
【請求項7】
前記搬送するシート状材料の両面に前記ローラ清掃用フィルムをそれぞれ接着する
請求項6に記載のローラの清掃方法。
【請求項8】
前記ローラ清掃用フィルムの各々を前記シート状材料の両面に交互に接着する
請求項7に記載のローラの清掃方法。
【請求項9】
前記ローラ清掃用フィルムの長さを、清掃対象とするローラのうちの最大径を有するローラの外周長以上とする
請求項6〜8のいずれか一項に記載のローラの清掃方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−28409(P2013−28409A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−163470(P2011−163470)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(399107063)プライムアースEVエナジー株式会社 (193)
【Fターム(参考)】