説明

ロール体保持装置および記録装置とロール体保持方法。

【課題】 紙管の内径の異なるロール体を1つのロール体保持装置で保持する。
【解決手段】 紙管の内径が小さいロール体をロール体保持装置15により保持する場合、アダプタ2を装着せずに保持装置本体1の突出部5を紙管内に挿入し、第1の弾性片6を紙管内面に圧接させる。紙管の内径が大きいロール体を保持する場合、鞘部8を突出部5に被せ爪部9を長溝7に挿入した後、アダプタ2を回転させて爪部9を長溝7に係合させ、第1の弾性片6を嵌合凹部11に嵌合させて、アダプタ2を保持装置本体1に離脱不能かつ回転不能に装着する。そして、鞘部8を紙管内に挿入し、第2の弾性片10を紙管の内面に圧接させる。アダプタ2を取り外す際には、解除部材3を突出部5と鞘部8の隙間に挿入して第1の弾性片6と嵌合凹部11の嵌合を解除してから、アダプタ2を回転させて爪部9と長溝7の係合を解除する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はロール体保持装置およびそれを有する記録装置と、ロール体保持方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばプリンタ等の装置にウエブ材(連続する長尺の記録媒体)を連続的に供給する場合には、ウエブ材を巻いたロール体を用意し、このロール体からウエブ材を順次繰り出す構成が採用されている。特に、大型プリンタの場合には、大きく重いウエブ材が用いられることが多いため、芯材である中心軸の周りにウエブ材を巻き付けてロール体が構成される。中心軸は、段ボールや合成樹脂などからなる円柱または円筒であり、あまり大きく撓むことなく、重いウエブ材を保持することができる。そして、中心軸の周りにウエブ材を巻き付けた構成のロール体を装置にセットする際には、装置の小型化および構成の簡略化のために、ロール体全体を支持するのではなく、ロール体の両端部、特に中心軸の両端部を支持するのが一般的である。
【0003】
特許文献1は、2つのローラ状の軸受部材によってロール体の中心軸を支持し、2つの軸受部材を同一方向に回転させてロール体全体を回転させ、ウエブ材の繰り出しまたは巻き取りを行うスクローラを開示している。
【0004】
一方、特許文献2は、紙管(円筒状の中心軸)の内側に支持機構を挿入して、当接部材が紙管に内側から圧接することによってロール体を保持する構成を開示している。なお、円筒状の中心軸は、一般に「紙管」と称されているが、紙製の管状部材に限られず、塩化ビニール等の合成樹脂製の管状部材なども広く使用されている。
【特許文献1】特開2005−212322号公報
【特許文献2】特開平5−77976号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されている構成では、ロール体の中心軸の外周面を支持しているため、中心軸の外周のうち、2つの軸受部材に支持される部分はごく一部に過ぎず、ウエブ材の繰り出し時および巻き取り時にがたつきを生じる可能性が高く、ロール体の保持の安定性が低い。特に、中心軸の外径が大きい場合には、中心軸の外周のうち、2つの軸受部材に支持される部分が占める割合が非常に小さくなり、ロール体の保持の安定性はさらに低くなる。一方、中心軸の外径が小さすぎる場合には、その中心軸が2つの軸受部材の間に落ち込んで、しっかりと保持できない可能性がある。
【0006】
特許文献2に開示されている構成では、紙管(ロール体の円筒状の中心軸)の内面を支持しているため、紙管の内周の大部分を内側から支持することができ、特許文献1の構成に比べてロール体の保持の安定性は高い。しかし、特許文献2の構成においても、紙管の内径が大きすぎる場合には、紙管の内面と当接部材の間に隙間が開き、ウエブ材の繰り出し時および巻き取り時にがたつきを生じて、ウエブ材の進退が円滑に行えず、ウエブ材の端部が折れ曲がったり、斜行(スキュー)を起こしたりする可能性がある。また、紙管の内径が小さすぎる場合には、当然のことながら支持機構を紙管内に挿入することができず、ロール体を全く保持できない。
【0007】
このように、紙管の内面を支持する特許文献2の構成であっても、ある特定の内径を有する紙管を備えたロール体の保持にのみ使用可能である。一般に、紙管の内径はある程度規格化されているが、それでもやはり、例えば2インチ(50.8mm)や3インチ(76.2mm)など内径の異なる紙管を有する様々なロール体が存在する。特許文献2の構成では、ある特定の寸法の内径を有する紙管を備えたロール体を保持するための、専用のロール体保持装置が用いられる。そして、内径の異なる紙管を有する様々なロール体を保持したい場合には、ロール体保持装置自体を交換する必要がある。従って、使用することが想定されている紙管の内径の規格の数と同数のロール体保持装置を用意しておかなければならない。
【0008】
そこで本発明の目的は、安定してロール体を保持でき、しかも、複数種類のロール体を保持可能なロール体保持装置およびロール体保持方法と、そのロール体保持装置を有する記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のロール体保持装置は、
ロール体の端部に近接して配置されるフランジ部と、フランジ部から突出し、ロール体の中心孔の内部に挿入可能な突出部と、フランジ部の、突出部の周囲に設けられている被係合部と、突出部の外周部に設けられている第1の弾性片とを含む保持装置本体と、
突出部の外形よりも大きな外形を有し突出部に被せることが可能な鞘部と、鞘部の周囲に設けられており被係合部に係合可能な係合部と、鞘部の内周に設けられており突出部の第1の弾性片が嵌合可能な嵌合凹部とを含む、保持装置本体に対して着脱可能なアダプタとを有する。
【0010】
この構成によると、アダプタを装着せずに保持装置本体のみでロール体を保持する場合と、アダプタを保持装置本体に装着してロール体を保持する場合とで、中心孔の内径の異なるロール体の保持が可能である。
【0011】
アダプタは、鞘部が突出部に被せられ、係合部が被係合部に係合させられ、突出部の第1の弾性片が嵌合凹部内に嵌合させられることによって、保持装置本体に対して回転不能に装着されることが好ましい。この構成によると、アダプタが保持装置本体に装着された状態で、特にロール体が回転して繰り出しまたは巻き取りが行われている際にも、アダプタが保持装置本体に対して相対的に回転して外れてしまうことがない。
【0012】
さらに、第1の弾性片の嵌合凹部内への嵌合は、鞘部の先端に設けられた開口から、鞘部の内周と突出部の外周の間の隙間に薄板状の部材が挿入されることによって解除可能であることが好ましい。この場合、前記したように外れ防止のために回転不能に装着されたアダプタを、簡単な操作で容易に回転可能にすることができる。従って、アダプタの保持装置本体からの取り外しが非常に簡単である。この薄板状の部材として円筒状の解除部材を有していてもよい。
【0013】
また、アダプタは、鞘部の外周に設けられている第2の弾性片を有し、第1の弾性片は、比較的小さい中心孔を有するロール体の中心孔内に、アダプタが未装着の状態の保持装置本体の突出部が挿入されると、その中心孔の内面に内側から圧接するものであり、第2の弾性片は、比較的大きい中心孔を有するロール体の中心孔内に、アダプタが装着された保持装置本体の、鞘部が被せられた突出部が挿入されると、その中心孔の内面に内側から圧接するものである。これによって、比較的小さい中心孔を有するロール体と、比較的大きい中心孔を有するロール体とを、選択的にしっかりと保持することができる。
【0014】
本発明の記録装置は、前記したいずれかの構成のロール体保持装置と、ロール体保持装置に保持されているロール体から繰り出された記録媒体に対して記録を行う記録ユニットとを有する。
【0015】
また、本発明のロール体保持方法は、突出部を有する保持装置本体と、突出部の外形よりも大きな外形を有し突出部に被せることが可能な鞘部を有する、保持装置本体に対して着脱可能なアダプタとを用い、
小径の中心孔を有するロール体を保持する場合には、アダプタを装着せずに保持装置本体の突出部を中心孔内に挿入して、突出部の外周部に設けられている第1の弾性片を中心孔の内面に内側から圧接させてロール体を保持し、
大径の中心孔を有するロール体を保持する場合には、保持装置本体にアダプタを装着して鞘部を中心孔内に挿入して、鞘部の外周部に設けられている第2の弾性片を中心孔の内面に内側から圧接させてロール体を保持することを特徴とする。
【0016】
アダプタを保持装置本体に装着するステップは、鞘部を突出部に被せ、アダプタの係合部を保持装置本体の被係合部に係合させるとともに、保持装置本体の第1の弾性片を、鞘部の内周に設けられた嵌合凹部に嵌合させることによって、アダプタを保持装置本体に対して回転不能に保持するステップである。
【0017】
アダプタを保持装置本体から取り外すステップは、円筒状の解除部材を、鞘部の先端の開口から鞘部と突出部の間の環状の隙間に挿入し、解除部材を第1の弾性片と嵌合凹部の間に進入させてそれらの嵌合を解除させることによって、アダプタを保持装置本体に対して回転可能にするステップと、回転可能にされたアダプタを保持装置本体に対して回転させることによって、係合部と被係合部との係合を解除するステップと、最後に、鞘部を突出部から引き離すステップとを含む。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、1つのロール体保持装置で、中心孔の内径が異なる複数種類のロール体の保持を、非常に簡単な操作により容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0020】
図1に、本実施形態のロール体保持装置15の全体が示されている。このロール体保持装置15の基本構成は、保持装置本体1と、この保持装置本体1に着脱可能なアダプタ2と、解除部材3とからなる。
【0021】
保持装置本体1は、フランジ部4に、僅かに先細になった円柱状の突出部5が設けられた構成であり、突出部5の外周部には複数の第1の弾性片6が形成されている。第1の弾性片6は、突出部5の外周部の一部が切り欠かれ、その切り欠き部の中に片持ち梁状になっており、外側に向けて隆起した形状を有している。フランジ部4の、突出部5の根元付近には、略円弧状の複数の長溝(被係合部)7が設けられている。長溝7は溝幅の広い部分7aと溝幅の狭い部分7bとを有している。
【0022】
保持装置本体1の突出部5の外径は、保持すべきロール体のうち、中心孔が小さいもの(図2参照)の、中心孔(紙管が存在する場合には紙管)の内径(例えば2インチ=50.8mm)よりも僅かに小さい径である。そして、互いに対向する第1の弾性片6の初期状態における最外部同士を結んだ最大直径は、その小さい中心孔の内径よりも僅かに大きい。
【0023】
アダプタ2は、突出部5に被せられる形状の鞘部8を有し、鞘部8の先端は開口している。鞘部8の根元付近には鞘部8と反対側に向けて突出する複数の爪部(係合部)9が設けられている。爪部9は長溝7と同数であり、長溝7内にそれぞれ挿入されて長溝7の一部(溝幅の狭い部分7b)に係合可能である。鞘部8の外周には、第1の弾性片6と同様な構成の、複数の第2の弾性片10が形成されている。図6,7に示すように、鞘部8の内周には、第1の弾性片6と同数であり、各第1の弾性片6が嵌合可能な嵌合凹部11が設けられている。
【0024】
アダプタ2の鞘部8の外径は、保持すべきロール体のうち、中心孔が大きいもの(図7参照)の、中心孔(紙管が存在する場合には紙管)の内径(例えば3インチ=76.2mm)よりも僅かに小さい径である。そして、互いに対向する第2の弾性片10の初期状態における最外部同士を結んだ最大直径は、その大きい中心孔の内径よりも僅かに大きい。
【0025】
ここで、保持装置本体1の各部分とアダプタ2の各部分の関係について説明する。図3〜7に示すように、アダプタ2は、鞘部8が突出部5に被さるようにして、保持装置本体1に装着され、保持装置本体1に対して相対的に回転することによって、第1の位置と第2の位置をとることができる。図6,7に示すように、第1の位置では、各爪部9が各長溝7の溝幅の狭い部分7bの内壁部にそれぞれ係合して、アダプタ2は保持装置本体1から離脱不能であり、さらに、各第1の弾性片6が各嵌合凹部11にそれぞれ嵌合することによって、アダプタ2は保持装置本体1に対して回転不能である。一方、この第1の位置からアダプタ2が保持装置本体1に対してある角度だけ回転した位置である第2の位置(図示せず)では、各爪部9が各長溝7内にそれぞれ挿入されているが、長溝7の溝幅の広い部分7aに位置して内壁部に係合しておらず、長溝7内から脱出可能である。また、各第1の弾性片6は各嵌合凹部11に嵌合していない。従って、この第2の位置では、アダプタ2を保持装置本体1に対して回転可能である。このように、通常は、アダプタ2が保持装置本体1に対して第2の位置から第1の位置まで、各爪部9が各長溝7内に位置する範囲で相対的に回転可能であり、アダプタ2は第1の位置において回転不能かつ離脱不能になる。なお、長溝7の溝幅の広い部分7aが比較的長く形成されている場合には、第2の位置は、単一の地点を指すのではなく、爪部9が長溝7の溝幅の広い部分7a内に位置する範囲全体を指す。
【0026】
解除部材3は、フランジ状の把手部12と円筒部13からなり、円筒部13は、保持装置本体1の突出部5の外径より大きく、アダプタ2の鞘部8の内径および開口の内径より小さい径を有している。従って、図8,9に示すように、解除部材3は、アダプタ2の鞘部8の開口から、保持装置本体1の突出部5とアダプタ2の鞘部8との間の隙間に挿入可能である。
【0027】
このロール体保持装置15においてロール体を保持する方法について説明する。図2に示すように、中心孔が小さい(例えば2インチ=50.8mmの)ロール体を保持する場合には、アダプタ2を装着せずに保持装置本体1の突出部5をロール体の中心孔内に、この例では紙管101Aの内側に挿入する。挿入時には第1の弾性片6は半径方向内側に一旦縮められ、弾性によって紙管101Aの内面に圧接する。第1の弾性片6は突出部5の全周にわたって分散して配置されているので、紙管101Aの内面全体が偏りなく比較的均等に保持される。このような弾性片を用いた保持方法は、従来から公知の方法である。
【0028】
一方、図7に示すように、中心孔が大きい(例えば3インチ=76.2mmの)ロール体を保持する場合には、保持装置本体1にアダプタ2を装着する。この装着方法について説明すると、まず、アダプタ2を前記した第2の位置に位置させる。すなわち、鞘部8を突出部5に被せつつ、各爪部9を長溝7の溝幅の広い部分7a内に挿入する。このとき、各第1の弾性片6は各嵌合凹部11から離れた位置にあり、鞘部8の内面によって半径方向に弾性的に縮められた状態である。次に、アダプタ2を保持装置本体1に対して相対的に回転させ、第1の位置に移動させる。この相対的な回転によって、図6,7に示すように、各爪部9は長溝7の溝幅の狭い部分7bに移動してその内壁部に係合する。爪部9と長溝7の係合によって、アダプタ2は保持装置本体1から抜き取ることができなくなる。同時に、前記した相対的な回転によって、各第1の弾性片6がアダプタ2の内面の各嵌合凹部11内にそれぞれ嵌合する。各第1の弾性片6は、嵌合凹部11に一旦嵌合すると、弾性によって嵌合凹部11の内面に圧接するため、嵌合凹部11から脱出できなくなる。この嵌合によって、アダプタ2は保持装置本体1に対して回転不能になる。
【0029】
このようにして、アダプタ2を保持装置本体1に装着した状態で、鞘部8が被せられた突出部5をロール体の中心孔内に、この例では紙管101Bの内側に挿入する。前記した第1の弾性片6と同様に、挿入時には第2の弾性片10は半径方向内側に一旦縮められ、弾性によって紙管101Bの内面に圧接する。第2の弾性片10は鞘部8の全周にわたって分散して配置されているので、紙管101Bの内面全体が偏りなく比較的均等に保持される。
【0030】
なお、図2,7において、ロール体は紙管101A,101Bのみが図示されている。
【0031】
ロール体保持装置15に保持されているロール体は、ウエブ材の繰り出しや巻き取りに伴って回転するため、アダプタ2に回転力が加わる。仮に、この回転力によってアダプタ2が保持装置本体1に対して相対的に回転してしまうと、爪部9が長溝7の溝幅の広い部分7aに移動して係合が解除され、アダプタ2が保持装置本体1から外れてしまう可能性がある。しかし本実施形態では、第1の弾性片6が嵌合凹部11内に嵌合しているため、この嵌合が解除されない限り、アダプタ2が保持装置本体1に対して相対的に回転できず、爪部9が長溝7の溝幅の広い部分7aに移動することはない。従って、アダプタ2に回転力が加わっても、保持装置本体1から外れてしまうおそれはない。
【0032】
次に、再び中心孔が小さいロール体を保持する場合などに、アダプタ2を保持装置本体1から取り外す方法について説明する。本実施形態では、アダプタ2の取り外し時に解除部材3を使用する。
【0033】
前記した通り、図3〜7に示すようにアダプタ2が保持装置本体1に装着されている状態(第1の位置)では、第1の弾性片6が嵌合凹部11内に嵌合しており、各第1の弾性片6は、弾性によって嵌合凹部11の内面に圧接して脱出不能になっているため、アダプタ2を保持装置本体に対して回転させることができない。従って、爪部9を長溝7の溝幅の広い部分7aに移動させることができず、アダプタ2を保持装置本体1から取り外すことができない。
【0034】
そこで、本実施形態では、図8,9に示すように、鞘部8の先端の開口から解除部材3の円筒部13を差し込み、突出部5の外周と鞘部8の内周の間の隙間に挿入する。この時、円筒部13は、第1の弾性片6を半径方向内側にさらに押し込みながら、第1の弾性片6と嵌合凹部11の間に入り込む。その結果、第1の弾性片6と嵌合凹部11の嵌合が解除される。本実施形態では、第1の弾性片6の隆起部は、円筒部の挿入方向に沿って徐々に高くなっている形状に形成されているため、さほど大きな力を加えなくても、円筒部13に押されて半径方向内側に縮みやすい。
【0035】
なお、この第1の弾性片6の隆起部は、周方向に沿っては比較的急な段部となっており、なだらかに傾斜する形状ではないため、回転力によってこの第1の弾性片6の隆起部が嵌合凹部11を横方向に乗り越えて脱出することは困難である。これに対し、前記したように、第1の弾性片6の隆起部は、円筒部の挿入方向に沿ってなだらかな斜面になっているので、円筒部13の進入を許容し易く、それによって嵌合凹部11から抜け出すのが容易である。
【0036】
以上説明したように、解除部材3の円筒部13を挿入することによって、第1の弾性片6と嵌合凹部11の嵌合が解除され、それによってアダプタ2が保持装置本体1に対して回転可能になる。そこで、アダプタ2を相対的に回転させて、爪部9を第1の位置から第2の位置へ、すなわち、長溝7の溝幅の狭い部分7bに係合する状態から、長溝の7の溝幅の広い部分7aまで移動させる。そこで、鞘部8を突出部5から引き抜くことによって、アダプタ2を保持装置本体1から取り外すことができる。このように、本実施形態では、アダプタ2が保持装置本体1に装着されている状態(第1の位置)では、回転不能かつ離脱不能である。しかし、解除部材3を用いることによって第1の弾性片6と嵌合凹部11の嵌合を容易に解除することができ、それによって、アダプタ2の保持装置本体1に対する相対的な回転が可能になる。そして、アダプタ2を相対的に回転させることによって、爪部9の長溝7への係合を解除して、アダプタ2を保持装置本体1から自在に引き抜いて容易に取り外すことが可能になる。
【0037】
なお、本実施形態では保持装置本体1に1つのアダプタ2を装着可能な構成として、1つのロール体保持装置15によって、紙管の内径が異なる2種類のロール体に対応することを可能にしている。さらに、図示しないが、鞘部8の外径が異なる複数のアダプタを選択的に保持装置本体1に装着可能な構成としてもよい。また、図示しないが、前記したアダプタ2の外側に、さらに別のアダプタを装着して、アダプタを多重に重ねることができる構成としてもよい。これらの変形例によると、1つのロール体保持装置15によって、紙管の内径がそれぞれ異なる3つ以上のロール体に対応することができる。
【0038】
以上、紙管の周りにウエブ材が巻かれたロール体を保持する例について説明したが、本発明のロール体保持装置15によって、紙管が存在せず、ウエブ体のみによって構成されたロール体を保持することもできる。いずれにしても、ロール体の中心孔(紙管が存在する場合には、紙管の内側が中心孔となる)に、鞘部8が被せられていない突出部5、または鞘部8が被せられた状態の突出部5を選択的に挿入することによって、ロール体を保持することができる。
【0039】
次に、本実施形態のロール体保持装置15を採用した記録装置の一例について、図10〜12を参照して説明する。この記録装置は、例えば0.5m〜2m程度の比較的広い幅を有する紙や合成樹脂等からなるウエブ材である記録媒体30に対して記録を行うインクジェットプリンタである。このインクジェットプリンタは、記録媒体30に記録を行う記録ユニット31と、この記録ユニット31によって記録される記録媒体30を搬送する搬送ユニット32とを備えている。
【0040】
記録ユニット31は、記録媒体30にインク滴を吐出する記録ヘッド33と、記録媒体30の搬送方向に直交する幅方向に記録ヘッド33を走査させるヘッド移動機構とを有している。ヘッド移動機構は、記録ヘッド33を保持するキャリッジ34と、このキャリッジ34を記録媒体30の幅方向に移動可能に案内するガイドレール(図示せず)と、キャリッジ34をガイドレールに沿って駆動するための駆動モータ(図示せず)等を含む。
【0041】
搬送ユニット32は、記録媒体30の搬送経路の順に、記録媒体30を供給する供給用のロール体100aを支持する供給部35と、記録ヘッド33側に搬入される記録媒体30をガイドするフロントペーパガイド36と、記録ヘッド33によって記録される記録媒体30を支持するプラテン37と、記録ヘッド33側から搬出される記録媒体30をガイドするリアペーパガイド38と、記録ヘッド33によって記録された記録媒体30を巻き取るための巻き取り用ロール体100bを支持する巻き取り部39とを有している。本実施形態においては、搬送ユニット32自体は記録媒体30を搬送するための送り出し機構を有しておらず、単に、記録ヘッドの近傍に設けられている搬送ローラ(図示せず)の回転に伴って記録媒体30が移動するのにつれて両ロール体100a,100bが回転できるように支持するものである。
【0042】
供給部35と巻き取り部39は、それぞれ、記録媒体30が紙管101に巻回されて構成されているロール体100a,100bの紙管101を内側から支持するために、前記した本発明のロール体保持装置15を有している。図10には、ロール体保持装置15を模式的に図示しているが、供給部35と巻き取り部39は、ロール体100a,100bおよびロール体保持装置15を支持する支持構造体16および支持フレーム14をさらに有している。
【0043】
図11に示すように、支持構造体16は、ロール体100a,100bの両端部に対向する位置にそれぞれ配置されており、両支持構造体16の間にはレール状のガイド部材17(図10,12では図示省略)が取り付けられている。そして、各支持構造体16の内側に支持フレーム14がそれぞれ配置されており、各支持フレーム14に本発明のロール体保持装置15がそれぞれ取り付けられている。具体的には、保持装置本体1のフランジ部4が各支持フレーム14にそれぞれ固定されている。そして、少なくとも一方の支持フレーム14が、ロール体保持装置15が取り付けられた状態で、両ロール体保持装置15の間の間隔をロール体の幅に合わせるためにガイド部材17に沿って所定の範囲内で移動可能である。なお、一方の支持フレーム14は、ロール体を回転させるための駆動部14aを有している。
【0044】
図11に示すように、支持構造体16には、保持装置本体1から取り外されたアダプタ2を保持しておく保持部16aが設けられている。保持部16aは、アダプタ2を保持可能であればいかなる構成であってもよいが、例えば、爪部9が係合可能な係合溝(図示せず)が形成されていてもよい。なお、図11においては、便宜上、保持装置本体1に装着されているアダプタ2に加えて、保持部16aに保持されているアダプタ2も図示されているが、実際には、アダプタ2は、保持装置本体1から取り外されたときにのみ保持部16aに保持される。
【0045】
本実施形態では、記録媒体30を積極的に送り出す送り出し機構として、ロール体100a,100bを間欠的に回転させる駆動部14aが設けられているが、駆動部14aを持たず、記録媒体30の移動に伴って両ロール体100a,100bが連れ回りするだけの構成であってもよい。
【0046】
この構成によると、本発明のロール体保持装置15を用いて供給用ロール体100aをしっかりと保持することによって、記録媒体30を斜行することなく円滑に供給して所望の記録を行うことができる。また、本発明のロール体保持装置15によって巻き取り用ロール体100bをしっかりと保持し、記録媒体30を円滑に巻き取ることができる。図11,12には、ロール体保持装置15の保持装置本体1にアダプタ2が装着された状態を示しているが、本発明によると、前記したように、保持装置本体1にアダプタ2を装着した状態と、アダプタ2を装着していない状態とを使い分けることによって、紙管の内径が異なる複数種類のロール体をしっかりと保持することができる。
【0047】
なお、図10に示す例では、供給用ロール体100aと巻き取り用ロール体100bの両方を本発明のロール体保持装置15を用いて保持しているが、一方のみを本発明のロール体保持装置15を用いて保持する構成にすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施形態のロール体保持装置を示す分解斜視図である。
【図2】図1に示すロール体保持装置の、アダプタを装着していない保持装置本体を示す断面図である。
【図3】図1に示すロール体保持装置の、保持装置本体にアダプタを装着した状態を示す斜視図である。
【図4】図1に示すロール体保持装置の、保持装置本体にアダプタを装着した状態を示す側面図である。
【図5】図1に示すロール体保持装置の、保持装置本体にアダプタを装着した状態を示す正面図である。
【図6】図4のA−A線断面図である。
【図7】図1に示すロール体保持装置の、保持装置本体にアダプタを装着した状態を示す断面図である。
【図8】図1に示すロール体保持装置の、解除部材を挿入した状態を示す斜視図である。
【図9】図1に示すロール体保持装置の、解除部材を挿入した状態を示す断面図である。
【図10】本発明のロール体保持装置を採用した記録装置の一例を示す正面図である。
【図11】図10に示す記録装置のロール体保持装置とそれを支持する構成を示す斜視図である。
【図12】図11の要部拡大図である。
【符号の説明】
【0049】
1 保持装置本体
2 アダプタ
3 解除部材
4 フランジ部
5 突出部
6 第1の弾性片
7 長溝(被係合部)
7a 溝幅の広い部分
7b 溝幅の狭い部分
8 鞘部
9 爪部(係合部)
10 第2の弾性片
11 嵌合凹部
12 把手部
13 円筒部
14 支持フレーム
14a 駆動部
15 ロール体保持装置
16 支持構造体
16a 保持部
17 ガイド部材
30 記録媒体
31 記録ユニット
32 搬送ユニット
33 記録ヘッド
34 キャリッジ
35 供給部
36 フロントペーパガイド
37 プラテン
38 リアペーパガイド
39 巻き取り部
100a,100b ロール体
101,101A,101B 紙管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール体の端部に近接して配置されるフランジ部と、前記フランジ部から突出し、前記ロール体の中心孔の内部に挿入可能な突出部と、前記フランジ部の、前記突出部の周囲に設けられている被係合部と、前記突出部の外周部に設けられている第1の弾性片とを含む保持装置本体と、
前記突出部の外形よりも大きな外形を有し前記突出部に被せることが可能な鞘部と、前記鞘部の周囲に設けられており前記被係合部に係合可能な係合部と、前記鞘部の内周に設けられており前記突出部の前記第1の弾性片が嵌合可能な嵌合凹部とを含む、前記保持装置本体に対して着脱可能なアダプタと
を有するロール体保持装置。
【請求項2】
前記アダプタは、前記鞘部が前記突出部に被せられ、前記係合部が前記被係合部に係合させられ、前記突出部の前記第1の弾性片が前記嵌合凹部に嵌合させられることによって、前記保持装置本体に対して回転不能に装着される、請求項1に記載のロール体保持装置。
【請求項3】
前記第1の弾性片の前記嵌合凹部内への嵌合は、前記鞘部の先端に設けられた開口から、前記鞘部の内周と前記突出部の外周の間の隙間に薄板状の部材が挿入されることによって解除可能である、請求項2に記載のロール体保持装置。
【請求項4】
前記薄板状の部材として円筒状の解除部材を有する、請求項3に記載のロール体保持装置。
【請求項5】
前記アダプタは、前記鞘部の外周に設けられている第2の弾性片を有し、
前記第1の弾性片は、比較的小さい中心孔を有するロール体の該中心孔内に、前記アダプタが未装着の状態の前記保持装置本体の前記突出部が挿入されると、該中心孔の内面に内側から圧接するものであり、
前記第2の弾性片は、比較的大きい中心孔を有するロール体の該中心孔内に、前記アダプタが装着された前記保持装置本体の、前記鞘部が被せられた前記突出部が挿入されると、該中心孔の内面に内側から圧接するものである、請求項1〜4のいずれか1項に記載のロール体保持装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のロール体保持装置と、
前記ロール体保持装置に保持されているロール体から繰り出された記録媒体に対して記録を行う記録ユニットと
を有する記録装置。
【請求項7】
突出部を有する保持装置本体と、前記突出部の外形よりも大きな外形を有し前記突出部に被せることが可能な鞘部を有する、前記保持装置本体に対して着脱可能なアダプタとを用い、
小径の中心孔を有するロール体を保持する場合には、前記アダプタを装着せずに前記保持装置本体の前記突出部を前記中心孔内に挿入して、前記突出部の外周部に設けられている第1の弾性片を前記中心孔の内面に内側から圧接させて前記ロール体を保持し、
大径の中心孔を有するロール体を保持する場合には、前記保持装置本体に前記アダプタを装着して前記鞘部を前記中心孔内に挿入して、前記鞘部の外周部に設けられている第2の弾性片を前記中心孔の内面に内側から圧接させて前記ロール体を保持する、
ロール体保持方法。
【請求項8】
前記アダプタを前記保持装置本体に装着するステップは、前記鞘部を前記突出部に被せ、前記アダプタの係合部を前記保持装置本体の被係合部に係合させるとともに、前記保持装置本体の前記第1の弾性片を、前記鞘部の内周に設けられた嵌合凹部に嵌合させることによって、前記アダプタを前記保持装置本体に対して回転不能に保持するステップである、請求項7に記載のロール体保持方法。
【請求項9】
前記アダプタを前記保持装置本体から取り外すステップは、
円筒状の解除部材を、前記鞘部の先端の開口から前記鞘部と前記突出部の間の環状の隙間に挿入し、前記解除部材を前記第1の弾性片と前記嵌合凹部の間に進入させてそれらの嵌合を解除させることによって、前記アダプタを前記保持装置本体に対して回転可能にするステップと、
回転可能にされた前記アダプタを前記保持装置本体に対して回転させることによって、前記係合部と前記被係合部との係合を解除するステップと、
最後に、前記鞘部を前記突出部から引き離すステップとを含む、請求項8に記載のロール体保持方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−90707(P2007−90707A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−284150(P2005−284150)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(395003187)株式会社セイコーアイ・インフォテック (173)
【Fターム(参考)】