説明

ロール情報管理部材

【課題】圧延機にて使用されるロールに関する情報を効率的かつ正確に管理することを可能とするロール情報管理部材を提供する。
【解決手段】ロールエンドカバー1は、非導電性を有する本体部10を有しており、圧延機に使用されるロール100に関する情報を記憶可能な無線ICタグが、当該本体部10にて保持される。本体部10は、ロール100の端縁部に対して嵌脱自在な嵌着部と、無線ICタグを収容可能な収容部30とを有する。収容部30は、当該収容部30に収容された無線ICタグに対して、ロール100に関する情報を無線通信によって書き込みまたは/および読み取り可能な位置に形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧延機に使用されるロールに関する情報を管理するためのロール情報管理部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧延機に用いられるロールは、金属などの被加工物の圧延によってロール表面が磨耗すると、ロール表面が研磨された新ロールに交換される。そのため、圧延機に併設されたロールショップには、購入直後の新規ロールや使用済みの旧ロールなどを研磨するためのロール研磨装置が設けられており、また研磨済みロールにダル加工を施すためのダル加工装置や、これらのロールの搬送作業および交換作業を行う装置なども設けられている。そして、ロールショップにおける研磨処理やダル加工などの各種作業(以下、ロールショップ作業という)は、その多くが作業者の手動運転によって行なわれていたため、作業者の労力および熟練を要していた。そこで、近年では、ロールショップ作業の省力化と効率向上を目的として、ロールショップ作業を自動化する種々の手法が提案されている。
【0003】
例えば、圧延機用演算処理手段、ロールショップ用演算処理手段およびロールデータ管理用演算処理手段を相互に連繋して、圧延機やロール移送手段、チョック付ロール研削盤間でデータの送受を行なうことにより、オペレータを要することなく通常ロールと事故ロールとの仕分け、ロールデータの収集および設定、チョック付ロール研削盤やロール移送手段の制御を自動化する。これにより、一連の工程の全てを自動運転で行なうことができるようにしたロールショップ作業の自動運転方法およびその装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、圧延スケジュール、ロール組替・研削・搬送・スケジュールなど、一連のロールスケジューリングの各機能を統合的に計算機システムとして構築することにより、オペレータによる判断でも困難であったスケジューリングを全自動無人運転化ができるようにした統合ロールショップ運転方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
また、研削負荷予測管理システムによって合計の圧延時間と研削時間とを比較し、研削時間が不足する場合は、生産管理システムによって製造指示情報を変更する。一方、研削時間が不足しない場合は、鋼帯毎の圧延時間と研削時間との比から求めた研削負荷余裕係数αKの小さいものを先にした圧延順確定情報に基づいて、圧延機、ロール搬送装置及びグラインダーを制御する。これにより、圧延機に必要とする圧延ロールを過不足なく研削および供給して、研削遅れによる圧延休止を防止するとともに圧延ロールの余分な研削をなくすようにした手法が知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
【特許文献1】特開平8−10810号公報
【特許文献2】特開平4−284906号公報
【特許文献3】特開平8−39114号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1〜3に記載の発明は、いずれもロールショップ作業を自動化することでシステム全体としての省力化を図る一方で、個々のロールに関する情報を効率的に管理することができなかった。つまり、これらの従来技術では、ロールショップにおける個々のロールに関する情報として、各ロールの現在位置、現在の使用状態、過去の使用履歴および現在のロール径などを効率的かつ正確に管理できないため、作業者が所望のロールについて各種情報を得ることが困難であった。
【0008】
そのため、従来のロールショップ作業では、特定のロールを必要とする事態が発生したときは作業者がロールショップ内を歩いて当該ロールを探したり、特定のロールについて過去の使用履歴を知りたいときは作業者が人手で書かれた管理簿を参照したりするなど、作業者に多くの手間を生じることがあった。また、圧延機に使用するロールが最適なロール径であるか否かも作業者が経験によって判断していたが、かかる判断は作業者の熟練を必要としていた。
【0009】
このように、個々のロールについての情報を効率的かつ正確に管理できないと、ロールショップ作業の省力化および効率向上を妨げてしまうという問題があった。特に、小径のロールを用いる圧延機(例えば、ゼンジミアミル)では、大径のロールを用いる圧延機よりも使用するロール数が多くなり、また新旧ロールの交換作業の実行頻度も高くなる。すると、ロールショップ作業が行われるロール数も増加してしまい、これらの全てのロールについての情報を効率的かつ正確に管理することがより一層困難となっていた。
【0010】
本発明の目的は、圧延機にて使用されるロールに関する情報を効率的かつ正確に管理することを可能とするロール情報管理部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明において、以下の特徴は単独で、若しくは、適宜組合わされて備えられている。
【0012】
前記課題を解決するための本発明に係るロール情報管理部材は、圧延機に使用されるロールに関する情報を記憶可能な情報記憶媒体を、非導電性を有する本体部にて保持するロール情報管理部材であって、前記本体部は、前記ロールの端縁部に対して嵌脱自在な嵌着部と、前記情報記憶媒体を収容可能な収容部と、を少なくとも有しており、前記収容部は、当該収容部に収容された前記情報記憶媒体に対して、前記ロールに関する情報を無線通信によって書き込みまたは/および読み取り可能な位置に形成されたことを特徴とする。
【0013】
上記構成によれば、ロール情報管理部材は、圧延機に使用されるロールに関する情報を記憶可能な情報記憶媒体を、非導電性を有する本体部にて保持するものである。そして、本体部は、ロールの端縁部に対して嵌脱自在な嵌着部を有しており、この嵌着部によってロール情報管理部材をロールに取り付けることができる。また、本体部は、情報記憶媒体を収容可能な収容部を有しており、この収容部内に情報記憶媒体を配置することができる。そして、この収容部は、当該収容部に収容された情報記憶媒体に対して、ロールに関する情報を無線通信によって書き込みまたは/および読み取り可能な位置に形成されている。
【0014】
ここで、「情報記憶媒体」は、少なくとも当該情報記憶媒体に固有の識別情報を記憶している。そして、この固有の識別情報が「ロールに関する情報」に相当するものであって、ロール情報管理部材が取り付けられるロールを各々識別するための識別情報として機能する。なお、「ロールに関する情報」として、各ロールの現在位置、現在の使用状態、過去の使用履歴および現在のロール径などを記憶してもよい。また、「情報記憶媒体」は、無線通信によって書き込みまたは/および読み取り可能な非接触型の記憶媒体であり、具体的には非接触型ICタグ(いわゆる、RFID)が例示される。
【0015】
また、「非導電性」とは、導電率が低いこと(あるいは、電気抵抗が高いこと)を意味しており、少なくとも本体部の内部に配置された情報記憶媒体を外部から無線通信によって書き込みまたは/および読み取り可能な程度に導電率が低いことを要する。そのため、本体部は、非導電性であるために電気を通しにくい絶縁材料(ゴム、プラスティック等)で構成される。つまり、本体部は、電波を通過させる物質で構成されることによって、電波を反射させる金属体(ここでは、ロール)から情報記憶媒体を離隔させる機能を有する。
【0016】
ここで、ロール(少なくとも、ロールの端縁部)が鉄などの導電性金属で構成されていると、情報記憶媒体に関する無線信号を反射してしまい、情報記憶媒体に対する書き込みまたは/および読み取りを妨げるおそれがある。これに対し、本体部は「非導電性」としたので、情報記憶媒体に関する無線信号を反射することがなく(または、無線信号の反射率が低いので)、情報記憶媒体に対する書き込みまたは/および読み取りを妨げてしまうおそれがない。
【0017】
そして、本体部において収容部が形成される「ロールに関する情報を無線通信によって書き込みまたは/および読み取り可能な位置」は、ロール情報管理部材が嵌着部によりロールの端縁部に対して取り付けられても、収容部内の情報記憶媒体に対する情報の書き込みまたは/および読み取りが、当該ロールによって阻害されない位置である。具体的には、この収容部は、本体部において、ロールの端縁部に取り付けられる嵌着部から、当該ロールが電気的に影響を与えない程度に離間して形成される。これにより、ロールの端縁部に対して嵌着部が取り付けられたとしても、収容部内の情報記憶媒体に対する情報の書き込みまたは/および読み取りが可能となる。
【0018】
これにより、ロール情報管理部材は、ロールに関する情報を記憶可能な情報記憶媒体が保持された状態で、ロールの端縁部に取り付けることができる。そして、圧延機に用いられるロールが導電性金属で構成されていても、この情報記憶媒体に対して無線通信により情報の書き込みまたは/および読み取りを可能とすることができる。そのため、圧延機およびロールショップにて使用される複数のロールにそれぞれロール情報管理部材を取り付けるだけで、情報記憶媒体にて記憶される固有の識別情報を参照して各ロールを一意に識別することが可能となる。
【0019】
そして、管理装置において各ロールの詳細情報(各ロールの現在位置、現在の使用状態、過去の使用履歴および現在のロール径など)を一元管理する場合には、各ロールに取り付けられたロール情報管理部材に保持される情報記憶媒体を参照し、この情報記憶媒体に固有の識別情報(つまり、ロールの識別情報)に基づいて各ロールの詳細情報を適宜登録すればよい。これにより、作業者が特定のロールについての詳細情報を知りたい場合には、管理装置に当該ロールの識別番号をキーとして検索させるだけで詳細情報を簡易に得られることができ、圧延機やロールショップにて使用されるロールに関する情報を効率的かつ正確に管理することができる。
【0020】
なお、各ロールの詳細情報を管理装置にて一元管理するのに代えて、またはこれに併せて、各ロールに取り付けられたロール情報管理部材に保持される情報記憶媒体に、当該ロールの詳細情報を無線通信によって書き込んでもよい。これによれば、作業者が特定のロールについての詳細情報を知りたい場合には、当該ロールに取り付けられたロール情報管理部材に保持される情報記憶媒体から無線通信によってロールの詳細情報を直接読み取って参照することが可能となり、作業効率が向上する。
【0021】
前記課題を解決するための本発明に係るロール情報管理部材において、前記本体部は、前記嵌着部が前記ロールの端縁部に嵌着された状態で当該ロールの軸線と略同軸をなす筒状体であるとともに、当該本体部の外径が前記ロールにおける最大径部よりも大きいことが好ましい。
【0022】
上記構成によれば、本体部は、嵌着部がロールの端縁部に嵌着された状態で当該ロールの軸線と略同軸をなす筒状体をなす。つまり、ロール情報管理部材がロールに取り付けられると、筒状体をなす本体部の軸線と略円柱状をなすロールの軸線とが略一致する。そして、本体部の外径がロールにおける最大径部よりも大きくなっているが、一般にロールにおける最大径部は、圧延機に使用された場合に金属などの被加工物に当接する胴部であるため、本体部の外径はロールの胴部における外径よりも大きいともいえる。
【0023】
これにより、ロール情報管理部材がロールの端縁部に取り付けられると、本体部およびロールの軸線からみて本体部が最も径外方向に突出することになる。そのため、複数のロールを並列に配置したときに、隣り合うロールが互いに近接する方向に移動したとしても、各ロールの胴部が互いに接触する前に、各ロールに取り付けられたロール情報管理部材がそれぞれ隣接するロールの胴部またはロール情報管理部材に当接する。そのため、複数のロールを隣接して配置したとしても、各ロールの胴部が互いに接触してロール表面に傷や破損を生じることを防止することができる。
【0024】
前記課題を解決するための本発明に係るロール情報管理部材において、前記本体部は、弾性材によって一体形成されて可撓性を有することが好ましい。本体部を弾性材によって一体形成することで、本体部の構造を簡素化することができ、ロール情報管理部材の製造工程や製品コストを低減することができるためである。また、本体部が可撓性を有することで、ロールへの着脱を容易にすることができるとともに、ダル加工機におけるショットブラストによる破損を防止することができるためである。
【0025】
なお、「弾性材」としてはゴムが例示されるが、ショットブラスト時におけるロールの発熱等によって本体部が変形してしまい、嵌着部がロールの端縁部から外れてしまうといった不具合を防止するために、この「弾性材」は所定の耐熱性を有していることが望ましい。
【0026】
前記課題を解決するための本発明に係るロール情報管理部材において、前記ロールの端縁部は、前記圧延機にて被加工物の圧延に使用される胴部よりも小径をなす首部であって、前記嵌着部は、前記ロールの端縁部に嵌着されると、前記首部の略全体を外包することが好ましい。
【0027】
これによれば、ロールの端縁部は、圧延機にて金属等の被加工物の圧延に使用される胴部よりも小径をなす首部(ネック部)である。言い換えると、ロールの端縁部は、圧延機における被加工物の圧延に使用されない部位である。このロール首部は、圧延機の種類に応じて用途や機能が異なっており、例えば、圧延機に対してロールを着脱する際に作業者が把持する部位として機能したり、圧延機にてロールを回転可能に軸支する部位として機能したりする。
【0028】
そして、嵌着部がロールの端縁部に嵌着されると、当該嵌着部によってロール首部の略全体が外包される。つまり、ロール情報管理部材がロールに取り付けられた状態では、ロール首部の略全体が嵌着部によって外部から保護されることになるため、例えば、ショットブラスト時においてもロール首部に対して投射材が衝突することを防止し、ロール首部の損傷や破損を防ぐことができる。
【0029】
前記課題を解決するための本発明に係るロール情報管理部材において、前記嵌着部は、前記ロールの端縁部が嵌合される凹陥部と、前記凹陥部に嵌合された前記ロールの外周面に向けて突出形成され、当該凹陥部の内側面にて当該ロールを係止する係止部と、を少なくとも有することが好ましい。
【0030】
これによれば、嵌着部は、ロールの端縁部が嵌合される凹陥部を有している。この凹陥部は、ロールの端縁部に対して緊密に嵌め込まれるように、ロールの端縁部と略同径かつ略同形状をなす。また、この凹陥部は、ロールの端縁部の略全体が挿入可能な程度の深さ(凹陥部における開口部から内底部までの距離)を有しており、具体的には、ロールの端縁部の軸線方向長さと略一致する程度の深さを有している。
【0031】
また、嵌着部は、凹陥部に嵌合されたロールの外周面に向けて突出形成された係止部を有している。そのため、本体部の軸線からみて係止部までの距離は凹陥部の内側面までの距離よりも、若干小さくなっている。なお、この係止部は、凹陥部の内側面(凹陥部が円筒状であれば内周面)における全周に亘って形成されていてもよいし部分的に形成されてもよい。また、係止部の断面形状や突出形状も任意に形成できるが、この係止部の突出幅は、凹陥部に対するロールの挿脱を作業者が意図的に外圧を加えて行える程度であることが好適である。
【0032】
そして、凹陥部にロールが嵌合されると、この係止部からロール表面側に付与される押圧力によって、当該ロールは凹陥部の内側面にて係止される。これにより、ロール情報管理部材がロールに取り付けられると、例えばショットブラストなどによってロールに振動や回転力が付与されても、当該ロールからロール情報管理部材が外れてしまう不具合を防止することができる。
【0033】
前記課題を解決するための本発明に係るロール情報管理部材において、前記収容部に収容された前記情報記憶媒体を封止する封止部材、を備えており、前記封止部材は、少なくとも前記収容部に収容された情報記憶媒体を視認可能な透光性を有することが好ましい。これによれば、収容部に収容された情報記憶媒体を封止部材で封止することができるので、ロール情報管理部材から情報記憶媒体が取れ落ちてしまうような不具合を防止することができる。また、封止部材は透光性を有しているため、封止部材で封止された状態でも収容部に収容された情報記憶媒体を視認することが可能である。そのため、封止部材をその都度取り外したりしなくても、収容部内に情報記憶媒体が収容されているか否かを確認でき、作業者の負担を軽減できる。
【0034】
なお、封止部材は、透光性を有するような透明材料によって構成されるとともに、収容部内の情報記憶媒体に対する情報の書き込みまたは/および読み取りを阻害しないような被導電性材料によって構成されることが好ましく、例えば、ゴム、ガラス、プラスチックなどにより構成される。また、封止部材は、少なくとも収容部内における情報記憶媒体の有無を確認できる程度の透明性を有していればよい。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、圧延機にて使用されるロールに関する情報を効率的かつ正確に管理することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明に係るロール情報管理部材について、図面を用いて具体的に説明する。本実施形態においては、ロール情報管理部材として主にゴムからなるロールエンドカバー1を例示して説明する。
【0037】
本実施形態のロールエンドカバー1(後述する図1等参照)は、金属などの被加工物の圧延を行なう加工機に使用されるロールに対して着脱される部材であり、より詳細にはゼンジミアミルなどで用いられる比較的小径のロールに着脱される。そして、ロールエンドカバー1は、無線通信によって各種情報の書き込みまたは/および読み取り可能な情報記憶媒体を保持可能に構成され、当該ロールエンドカバー1が取り付けられたロールにこの情報記憶媒体を物理的に関連付ける(所謂、紐付けを行なう)機能を有するものである。
【0038】
まず、図1および図2を参照して、本実施形態に係るロールエンドカバー1およびロール100の概要について説明する。図1は、ロールエンドカバー1およびロール100の外観を説明するための模式的斜視図である。図2は、図1とは異なる方向からみた、ロールエンドカバー1およびロール100の外観を説明するための模式的斜視図である。
【0039】
図1および図2に示すように、ロールエンドカバー1は、直径の大きさよりも高さ(軸線方向長さ)が若干小さい略円筒形状をなす非導電性の本体部10を有する。この本体部10の一端面には、ロール100の端縁部に対して嵌脱自在な嵌着部20が形成されるとともに、本体部10の他端面には、後述する無線ICタグを収容可能な収容部30が形成されている。また、この本体部10は、非導電性材料として耐熱性を有するゴムによって一体成型されているため、ロールエンドカバー1は全体として外圧に応じて変形可能な可撓性を有する。
【0040】
ここで、「非導電性」とは、導電率が低いこと(あるいは、電気抵抗が高いこと)を意味しており、少なくとも本体部10に配置された無線ICタグを外部から無線通信によって書き込みまたは/および読み取り可能な程度に導電率が低ければよい。ここでは、本体部10を、非導電性材料としての電気を通しにくい絶縁材料であるゴムで構成したので、本体部10が無線ICタグに関する無線信号を反射することがなく(または、無線信号の反射率が低いので)、無線ICタグに対する書き込みまたは/および読み取りを妨げてしまうおそれがない。
【0041】
本実施形態では、本体部10は上記の条件を満たす天然耐磨耗性ゴムにより構成されており、この天然耐磨耗性ゴムが常態で要求される性能を例示すると、標準硬度(Duro−A型)「37〜47」、引張強さ「20Mpa以上」および「204kgf/cm以上」、伸び率「500%以上」となる。ここでは、本体部10を構成する天然耐摩耗性ゴムは、標準硬度(Duro−A型)「43」、引張強さ「22.7Mpa」および「232kgf/cm」、伸び率「620%」であるものとする。
【0042】
一方、ロール100は、ゼンジミアミルなどの圧延機で用いられる比較的小径(具体的には、65mm〜85mm)の鉄製ロールである。そして、ロール100は、圧延機で使用された場合に被加工物の圧延を行なう円柱本体(胴部)110と、ロール100の両端縁部に形成されるとともに胴部110よりも若干小径をなすネック部分(首部)120と、が一体的に形成されている。
【0043】
なお、首部120は、本実施形態では、例えば、圧延機に対してロール100を組み込む際に把持される部位として機能する。また、首部120は、当該首部120における胴部110と連結される部位に、当該首部120よりもさらに小径をなす溝部121が形成されている。
【0044】
そして、ロールエンドカバー1をロール100に対して取り付ける際には、当該ロールエンドカバー1を、嵌着部20がロール100の端縁側に対向する状態まで近接させる。そして、当該ロール100の首部120をロールエンドカバー1の嵌着部20に嵌め込ませるように、ロールエンドカバー1に対して外圧を加える。これにより、ロールエンドカバー1がロール100に対して取り付けられるとともに、収容部30に収容された無線ICタグが当該ロール100に対して物理的に関連付けられる。
【0045】
一方、ロールエンドカバー1をロール100から取り外す際には、嵌着部20がロール100の首部120から離間する方向に、当該ロールエンドカバー1に対して外圧を加えて、当該首部120を嵌着部20から引き抜く。これにより、ロールエンドカバー1がロール100から取り外されるとともに、収容部30に収容された無線ICタグについて、当該ロール100に対する物理的な関連付けが解除される(無線ICタグに記憶されているデータが消失するわけではない)。
【0046】
次に、図3および図4を参照して、本実施形態に係るロールエンドカバー1およびロール100の物理的構造の詳細について説明する。図3は、ロールエンドカバー1の側面断面図である。図4は、ロール100に対してロールエンドカバー1を取り付けた状態の側面断面図である。なお、図3に示す軸線Oは、略円筒状をなす本体部10の軸線を示している。
【0047】
図3に示すように、ロールエンドカバー1の本体部10は、略円形をなす薄板状の基端部11の外周縁に沿って、円筒状の壁部12が基端部11に対して垂直に立設された構造をなし、全体としては側面視で略コの字型の断面形状を有している。なお、本体部10の外径L1は、ロール100の胴部110(図1または図2参照)における径よりも大きく、本実施形態では90mmである。また、本体部10の高さ(軸線O方向長さ)は、本実施形態では55mmである。
【0048】
本体部10の一端側には、基端部11の表面と円筒状の壁部12とに取り囲まれて嵌着部20が形成されている。この嵌着部20は、本体部10の軸線Oを中心とする断面が略円形をなす凹陥部21を有しており、この凹陥部21が、ロール100の端縁部が嵌合される部位として機能する。なお、凹陥部21の高さ(軸線O方向長さ)は、壁部12の幅長(つまり、基端部11からみた壁部12の高さ)に等しく、本実施形態では35mmである。また、凹陥部21における直径L2は、外径L1から壁部12の厚みを減算した長さであって、ロール100の首部120(図1または図2参照)における径とほぼ等しく、本実施形態では77mmである。
【0049】
また、嵌着部20は、凹陥部21から径内側方向に向けて全周に亘って突出形成された係止部22を、凹陥部21の開口縁に沿った位置に有している。詳しくは、この係止部22は、円筒状の壁部12の内周面に沿って全周形成された突起部であって、嵌着部20の開口縁部に形成されている。つまり、この係止部22は、凹陥部21に嵌合されたロール100(図1参照)の外周面に向けて突出するような形状を有しており、当該凹陥部21の内側面にて当該ロール100を係止する機能を有している。なお、係止部22の突出幅(径内側方向の高さ)は、凹陥部21へのロール100の首部120の嵌脱を阻害しない程度の大きさであり、本実施形態では3mm程度である。そして、凹陥部21のうちで係止部22が形成された部位における内周面の直径L3は、直径L2から係止部22の突出幅を減算した長さとなり、本実施形態では71mmである。
【0050】
本体部10の基端面11aには、無線ICタグ80を収容可能な程度の容積を有する収容部30が形成されている。詳細には、この収容部30は、基端部11における壁部12が形成された面とは反対側の面の一部が陥没するように形成され、本体部10の軸線Oを中心とした断面が小径の略円形をなす凹陥部である。なお、収容部30の高さ(軸線O方向長さ)は、基端部11の幅長(つまり、基端部11の厚み)のほぼ半分程度であり、本実施形態では12mmである。
【0051】
このように、本体部10の両端側には嵌着部20と収容部30とがそれぞれ形成されているところ、嵌着部20と収容部30とは基端部11の厚みによって物理的に隔てられた構造を有する。つまり、基端部11における嵌着部20と収容部30とに挟まれた部位が、ロール100の首部120が嵌着部20に嵌め込まれた場合に、収容部30に収容された無線ICタグ80から当該首部120を離間させて、無線ICタグ80と首部120とが物理的に接触することを防止する緩衝部50である。
【0052】
ここで、本実施形態のロール100は、導電性金属である鉄で構成されていることから、無線ICタグ80と首部120とが互いに近接していると、無線ICタグ80に関する無線信号を反射してしまい、無線ICタグ80に対する書き込みまたは/および読み取りを妨げるおそれがある。これに対して本実施形態の緩衝部50は、ロールエンドカバー1がロール100に取り付けられた状態で無線ICタグ80に対する無線通信が行なわれる場合に、当該ロール100の首部120が電波を反射してこの無線通信を阻害することを防止する機能を有する。
【0053】
すなわち、収容部30は、ロールエンドカバー1がロール100に取り付けられても、無線ICタグ80に対する情報の書き込みまたは/および読み取りが可能となる位置(言い換えると、無線ICタグ80に対する情報の書き込みまたは/および読み取りが阻害されない位置)に形成される。具体的には、収容部30は、嵌着部20に嵌め込まれたロール100が無線ICタグ80に対して電気的に影響を与えないように、緩衝部50によって嵌着部20ひいては首部120と離間して形成される。これにより、ロールエンドカバー1がロール100に取り付けられても、収容部30内の無線ICタグ80に対する情報の書き込みまたは/および読み取りが可能となる。
【0054】
なお、本体部10には、基端部11を軸線O方向に略平行に貫通して、嵌着部20の凹陥部21と本体部10の他端面とを連通させる空気逃げ孔40が形成されている。この空気逃げ孔40は、凹陥部21にロール100が嵌め込まれる際に凹陥部21内の空気を外部に流出させるとともに、凹陥部21からロール100が抜き出される際に凹陥部21に外部から空気を流入させることで、凹陥部21に対するロール100の着脱を円滑にする機能を有している。
【0055】
無線ICタグ80は、無線通信によって書き込みまたは/および読み取り可能な非接触型の記憶媒体であり、少なくとも各無線ICタグに固有のID情報を記憶している。また、この無線ICタグ80は、収容部30への出し入れが容易となるような小型・軽量なコイン型ICタグである。なお、本実施形態の無線ICタグ80は、直径22mmおよび厚さ4mmの薄手円盤形状であり、使用周波数としては13.56MHz、メモリ容量としては112Bytesが例示される。
【0056】
封止蓋90は、収容部30に無線ICタグ80を納めたのちに、収容部30から無線ICタグ80が飛び出さないように、収容部30の開口部を封止する蓋部材である。そのため、封止蓋90は、無線ICタグ80よりも大型の円盤形状を有するとともに、収容部30に対して緊密に嵌め込まれるように、収容部30の開口断面と同一または当該開口断面よりも若干大きい径を有しており、本実施形態では封止蓋90の直径は30mmである。
【0057】
なお、封止蓋90は、透明または半透明の非導電性材料(ここでは、透明性または半透明性を有するゴム)によって構成される。封止蓋90が透光性を有するような透明材料で構成されるのは、封止蓋90が収容部30の開口部に取り付けられたときに、作業者がその都度封止蓋90を取り外すことなく、収容部30内に無線ICタグ80が納められているか否かを確認できるようにするためである。そのため、封止蓋90は、少なくとも収容部30内における無線ICタグ80の有無を確認できる程度の透明性を有していればよい。また、封止蓋90が非導電性材料で構成されたのは、収容部30内の無線ICタグ80に対する情報の書き込みまたは/および読み取りを阻害しないようにするためである。さらに、封止蓋90は、可撓性に乏しい弾性材料(ここでは、弾性が小さいゴム)で構成されることが好ましい。これにより、封止蓋90を収容部30の開口部への着脱するのが容易となり、またショットブラスト時において投射材が衝突して傷や破損を生じるような不具合も防止できる。
【0058】
ここで、収容部30の内部構造について詳細に説明する。図3に示すように、収容部30は、基端面11aに形成される略円形の開口縁31を有しており、この開口縁31における直径は、無線ICタグ80の直径よりも若干大きく且つ封止蓋90の直径よりも若干小さい。本実施形態では、開口縁31の直径L11は26mmである。
【0059】
また、収容部30では、この開口縁31から嵌着部20側(図3における右方向側であり、以下、「軸線O方向一端側」と称する)に向けて、軸線Oを中心とする径が漸増するように(言い換えると、収容部30の開口断面が漸増するように)、その内周面が軸線O方向に対して傾斜している。そして、収容部30において軸線Oに対して傾斜面で囲まれた部位が、封止蓋90が嵌め込まれる蓋保持部32である。収容部30において、この蓋保持部32の占める軸線O方向長さは、封止蓋90の厚みよりも若干大きい程度である。また、本実施形態では、蓋保持部32において内径が最も大きくなる部位での直径L12は30mmであり、封止蓋90の直径とほぼ等しい。つまり、蓋保持部32は、封止蓋90を径内側方向に挟持可能な形状および大きさとなるように形成されているが、詳細は後述する。
【0060】
また、収容部30では、蓋保持部32からさらに軸線O方向一端側に向けて、当該蓋保持部32よりも小径をなす凹陥部位であるタグ保持部33が形成される。つまり、収容部30の内部では、開口縁31からみて拡径する蓋保持部32と、小径の円筒形状をなすタグ保持部33とが、当該収容部30の内周面に形成される段差によって連設されている。なお、収容部30において、このタグ保持部33の占める軸線O方向長さは無線ICタグ80の厚み4mmと略等しく、タグ保持部33の直径は無線ICタグ80の直径22mmと略等しい。つまり、タグ保持部33は、無線ICタグ80の外形とほぼ同一の形状および大きさとなるように形成されている。
【0061】
次に、図4を参照して、ロール100にロールエンドカバー1を着脱したり、ロールエンドカバー1に無線ICタグ80を着脱したりする具体的な態様について説明する。なお、ロール100にロールエンドカバー1が取り付けられると、ロール100の軸線とロールエンドカバー1の本体部10の軸線とが略一致する。
【0062】
ところで、ロールエンドカバー1が着脱されるロール100は、先述したように、胴部110および首部120から構成される。そして、胴部110の外径L4は、本体部10の外径L1(図3参照)よりも小さく且つ本体部10の内径(詳しくは凹陥部21の直径L2、図3参照)よりも小さく、本実施形態では85mmである。また、首部120の外径L5は、凹陥部21の直径L2と比べて同一か、または、凹陥部21の直径L2よりも若干小さく且つ係止部22における直径L3(図3参照)よりも大きく、本実施形態では77mmである。
【0063】
まず、作業者がロール100に対して無線ICタグ80を取り付ける場合、作業者は無線ICタグ80を開口縁31から収容部30の内部に挿入して、当該無線ICタグ80をタグ保持部33に嵌合させる。先述のように、タグ保持部33は無線ICタグ80の外形とほぼ同一の形状および大きさで形成されているため、無線ICタグ80をタグ保持部33に嵌合させるとある程度は固定される。しかし、ロールエンドカバー1に回転や振動が発生すると、タグ保持部33から無線ICタグ80が自然に外れてしまい、収容部30から飛び出してしまうおそれがある。
【0064】
そこで、無線ICタグ80をタグ保持部33に嵌合させたのち、作業者は蓋保持部32に封止蓋90を嵌め込むことで、無線ICタグ80がタグ保持部33から外れたり収容部30から飛び出したりしてしまうことを防止している。ここで、蓋保持部32においては、タグ保持部33側の直径L12(図3参照)が封止蓋90の直径とほぼ等しい一方で、開口縁31側の直径L11が封止蓋90の直径よりも小さい。そのため、蓋保持部32の内周面では、開口縁31に近い部位ほど封止蓋90の外周面に対して大きな弾性圧が加えられて、封止蓋90が挟持された状態となる。さらに、蓋保持部32から加えられる弾性圧によって、封止蓋90は軸線O方向一端側に向けて付勢される。これにより、ロールエンドカバー1に回転や振動が発生しても、封止蓋90が軸線O方向他端側(図4の左方向側)に移動してしまい蓋保持部32から取れ落ちるような不具合が防止されるとともに、封止蓋90が無線ICタグ80をタグ保持部33に押し付けることで無線ICタグ80がより安定的に固定される。
【0065】
一方、作業者がロール100から無線ICタグ80を取り外す場合は、本体部10に外圧を加えて収容部30の開口縁31の開口面積を広げ、封止蓋90を収容部30の外部に取り出す。その後、タグ保持部33から無線ICタグ80を取り外し、当該無線ICタグ80を収容部30の外部に取り出せばよい。
【0066】
次に、作業者がロール100に対してロールエンドカバー1を取り付ける場合、ロールエンドカバー1の嵌着部20をロール100の首部120に近接させて、この首部120が凹陥部21の内部に押し込まれるように外圧を加える。ここで、首部120の外径L5は、凹陥部21のうちで係止部22が形成された部位における内周面の直径L3よりもわずかに大きく、首部120の外周面に係止部22が当接することとなる。しかし、本体部10が可撓性を有しており壁部12も外圧に応じて変形することに加え、係止部22は先端に丸みを帯びた突出形状を有しているため、作業者が所定量の外圧を加えれば比較的スムーズに首部120を凹陥部21に嵌め込むことができる。
【0067】
そして、ロールエンドカバー1の嵌着部20がロール100の首部120に取り付けられた状態では、嵌着部20によって首部120の略全体(具体的には、首部120のうちで溝部121を除く部分)が外包されて、首部120が安定的に保持されるとともに外部から保護されることになる。
【0068】
また、この嵌着部20の内部では、凹陥部21の直径L2と首部120の外径L5が略等しいため、凹陥部21の内周面21aが首部120の外周面に対して緊密に面接触して首部120を外周全面で保持する。さらに、凹陥部21の内底面21bが首部120の先端面に当接して、首部120の軸線O方向他端側への移動を制限する。さらに、係止部22が首部120の外周面に当接し、径内方向に向けた弾性圧によって首部120を係止することで、首部120の軸線O方向一端側への移動を制限する。つまり、このロールエンドカバー1は、ロール100に取り付けられると嵌着部20の内部で首部120のほぼ全体を緊密に保持するため、首部120が外部に露出せず嵌着部20から外れ難い構造を有している。
【0069】
このように、作業者がロール100に対してロールエンドカバー1を取り付けると、このロールエンドカバー1によってロール100の首部120が外部から保護される。それとともに、ロールエンドカバー1が保持する無線ICタグ80がロール100に対して物理的に関連付け(紐付け)される。これにより、作業者は、この無線ICタグ80が有する固有の識別情報を読み出すことで、複数のロール100を一意に識別することが可能となる。
【0070】
一方、作業者がロール100からロールエンドカバー1を取り外す場合は、作業者は本体部10の壁部12を変形させて係止部22による首部120の係止を解除しつつ、嵌着部20から首部120が引き抜かれるような外圧を加えればよい。なお、ロール100からロールエンドカバー1が取り外されると、ロール100に対する無線ICタグ80の物理的な関連付け(紐付け)が解除された状態となる。
【0071】
次に、ロールエンドカバー1が取り付けられたロール100の構造上の特長について、図5を参照して説明する。図5は、ロールエンドカバー1がそれぞれ取り付けられた複数のロール100を略並列に配置した場合の概略平面図である。なお、図5では、ロールエンドカバー1が取り付けられた3本のロール100a〜100cを例示しており、各ロール100a〜100cの両端縁部に取り付けられるロールエンドカバー1を、それぞれロールエンドカバー1a〜1cとしている。
【0072】
図5に示すように、ロール100aおよびロール100bは、各々の軸線が略平行をなし且つ各々の軸線方向における位置が略一致するように並列配置されている。そして、ロール100aおよびロール100bのいずれかが互いに近接する方向に移動すると、ロール100aおよびロール100bは隣接した状態となる。このとき、ロール100aおよびロール100bの両端縁部においては、ロールエンドカバー1aとロールエンドカバー1bとが互いに当接する。これにより、胴部110aと胴部110bとの間に、所定幅(幅h1)の間隙が形成され、胴部110aと胴部110bとの干渉が回避される。なお、この幅h1の大きさは、2本のロール100について本体部10の半径L1/2から胴部110の半径L4/2を減算した値の和に相当する。
【0073】
また、ロール100bおよびロール100cは、各々の軸線が略平行をなす一方で各々の軸線方向における位置がずれた状態で並列配置されている。そして、ロール100bおよびロール100cのいずれかが互いに近接する方向に移動すると、ロール100bおよびロール100cは隣接した状態となる。このとき、ロール100bの軸線O方向一端側ではロールエンドカバー1bがロール100cの胴部110cに当接するとともに、ロール100cの軸線O方向他端側ではロールエンドカバー1cがロール100bの胴部110bに当接する。そして、ロールエンドカバー1bと胴部110cとの間(すなわち、ロールエンドカバー1cと胴部110bとの間)に、所定幅(幅h2)の間隙が形成される。この幅h2の大きさは、1本のロール100の本体部10の外径L1から胴部110の外径L4を減算した値の合計値に相当する(つまり、幅h1のおよそ半分である)。
【0074】
このように、ロールエンドカバー1が取り付けられた複数のロール100を並列配置した場合は、各ロール100が互いに近接する方向に移動してロール100同士が隣接したとしても、当該ロール100に取り付けられたロールエンドカバー1によって各々の胴部110の間には所定幅(幅h1,h2)の間隙が形成されることになる。これは、ロールエンドカバー1(詳細には、本体部10)の外径L1が、ロール100(詳細には、胴部110)の外径L4よりも大きいためである。
【0075】
そのため、ロールエンドカバー1が取り付けられたロール100を平面上に回転自在な状態で配置したとしても、各々の胴部110が互いに直接接触することはなく、ロール表面に傷や破損が発生することが防止される。なお、先述のようにロールエンドカバー1の本体部10は、可撓性を有する弾性体(ここでは、ゴム)によって構成されているため、ロールエンドカバー1がロール100の胴部110に接触した場合でも、当該胴部110のロール表面に傷や破損が発生することがない。
【0076】
なお、図5では理解を容易にするために複数のロール100を並列配置した場合を例示したが、ロールエンドカバー1の外径L1がロール100の外径L4よりも大きければ、複数のロール100が交差するように配置した場合や、複数のロール100として全長や直径が各々異なるロールを使用した場合でも、上記と同様の効果が得られる。
【0077】
次に、ロールエンドカバー1が各々取り付けられた複数のロール100を圧延機およびロールショップに使用する一具体例を、図6を参照して説明する。図6は、複数のロール100が搭載されたパレット200の外観斜視図である。
【0078】
圧延機に用いられるロール100は、金属などの被加工物の圧延によってロール表面が磨耗すると、ロール表面が研磨または/およびブラスト処理された新ロールに交換される。そのため、図示しないが、圧延機に併設されたロールショップには、購入直後の新規ロールや使用済みの旧ロールなどを研磨するためのロール研磨装置が設けられており、また研磨済みロールにダル加工を施すためのダル加工装置や、これらのロールの搬送作業および交換作業を行う装置なども設けられている。
【0079】
ところで、複数のロール100の保管や搬送などの各種作業は、規定数のロール100を搭載可能なパレット200を一単位として行なわれる。例えば、ダル加工機にてロール100に対してショットブラストを施す場合は、規定数のロール100を搭載したパレット200をダル加工機まで搬送し、ダル加工機では当該パレット200に搭載された複数のロール100を1本ずつショットブラストする等である。なお、本実施形態のパレット200では、規定数として10本のロール100を搭載可能である。
【0080】
図6に示すように、パレット200は、4本の柱状鉄筋が額縁状に連接された台座201を有しており、この台座201上に10本のロール100を並列に載置可能となっている。なお、台座201は、複数のロール100が搭載されたときに当該ロール100の軸線方向と平行をなす左右方向が長手であって、この台座201の左右方向長さはロール100の軸線方向長さよりも若干大きくなっている。
【0081】
そして、台座201には、当該パレット200の長手方向に沿って配置された2本の柱状鉄筋のそれぞれに、当該柱状鉄筋の上面側に着脱可能なロールストッパ202を2箇所ずつ設置可能となっている。このロールストッパ202は、台座201の柱状鉄筋の上面側に取り付けられると当該柱状鉄筋から上方に向けて立設する棒状部材であって、台座201に載置されたロール100の回転方向(つまり、台座201の短手をなす前後方向)への移動を規制して、例えばパレット200の搬送時などにロール100が台座201から落下するのを防止する機能を有する。一方、例えば圧延機などでロール100を使用するときは、台座201からロールストッパ202を取り外すことで、ロール100を軸線中心に回転させつつパレット200から容易に移動させることができる。なお、各ロールストッパ202は、台座201に載置されたロール100の胴部110に当接する位置に設けられるとともに、胴部110に接触しても傷や破損を生じないような弾性部材(例えば、ゴム)で構成されている。
【0082】
また、台座201には、当該パレット200の長手方向に沿って配置された2本の柱状鉄筋に跨って、2本の薄板状の支持レール203が架設されている。これらの支持レール203は、台座201に載置されるロール100の溝部121に対応する位置に設けられる。ここで、ロール100に対してロールエンドカバー1が取り付けられると、本体部10と胴部110との間に隙間部分が形成される(図4参照)。そして、パレット200に複数のロール100を搭載するときは、2本の支持レール203が各ロール100における本体部10と胴部110との隙間部分に入り込むように位置決めしつつ、台座201に各ロール100を載置する作業を行なう。このようにして台座201上に複数のロール100が載置されると、各ロール100は2本の支持レール203によって各々の溝部121で支持された状態となる。これにより、台座201上に載置されたロール100は、2本の支持レール203によって軸線方向(つまり、パレット200の左右方向)への移動が規制されるため、パレット200の搬送時におけるロール100の安定性が高まり、パレット200からのロール100の落下が防止される。なお、支持レール203も、ロールストッパ202と同様に、ロール100の溝部121や胴部110に接触しても傷や破損を生じないような弾性部材(例えば、ゴム)で構成されている。
【0083】
さらに、台座201には、無線通信によって書き込みまたは/および読み取り可能な非接触型の記憶媒体である無線ICタグ210が取り付けられている。この無線ICタグ210は、少なくとも各無線ICタグに固有のID情報を記憶しており、この固有のID情報がパレット200を一意に識別するための情報として機能する。なお、無線ICタグ210は、搬送中のパレット200に取り付けられていても各種情報の書き込みまたは/および読み取りが可能となるように、当該無線ICタグ210との無線通信が容易な台座201の側面部位に設けられている。
【0084】
ここで、圧延機やロールショップに使用されるロール100に関する情報の管理する一態様について説明する。まず、新規にロール100が購入されると、当該ロール100はロールエンドカバー1がそれぞれ取り付けられたのちにパレット200に搭載される。なお、各ロール100の両端縁部にロールエンドカバー1が取り付けられるが、いずれか一方のロールエンドカバー1に無線ICタグ210が保持される。
【0085】
そして、作業者は、無線ICタグに対して無線通信により書き込みまたは/および読み取りを実行可能なリーダライタを内蔵した携帯端末(以下、リーダライタ端末とよぶ。)を、無線ICタグ80を保持したロールエンドカバー1に近接させて、当該無線ICタグ80が記憶する固有のID情報を読み出す。このリーダライタ端末は、ロール100に関する情報を管理するためのコンピュータ(以下、管理装置とよぶ。)と無線または有線によって接続されており、無線ICタグ80から読み取られたID情報はこの管理装置に記憶される。なお、この管理装置に記憶されたID情報は、ロールエンドカバー1が取り付けられたロール100を各々識別するための識別情報(つまり、ロール識別ID)として機能する。
【0086】
さらに、作業者は、当該ロール100が搭載されたパレット200の無線ICタグ210にもリーダライタ端末を近接させて、当該無線ICタグ210が記憶する固有のID情報(つまり、パレット識別ID)を読み出す。すると、管理装置では、このパレット識別IDがロール識別IDに対応付けて記憶される。これにより、管理装置にて、ロール100に対して当該ロール100が搭載されたパレット200が関連付けられたことになる。
【0087】
なお、管理装置では、このロール識別IDをキーとして、パレット識別IDの他に、ロールの現在位置、現在の使用状態、現在のロール径などをデータ項目とするロール関連情報を、履歴データとして時系列に一元管理している。そのため、例えば新規のロール100のロール関連情報であれば、上記のロール識別IDおよびパレット識別IDとともに、ロールの現在位置「ロール保管庫」、現在の使用状態「未使用」、現在のロール径「77mm」といったデータ内容を有している。
【0088】
そして、ロールショップにおいて、パレット200に搭載される複数のロール100を一単位として、ロール研磨装置での研磨作業やダル加工機でのショットブラスト作業などが行われるごとに、当該ロール100についての最新のロール関連情報が管理装置に登録される。例えば、ロール研磨装置で研磨作業が行われる際に、作業者がリーダライタ端末によって研磨対象となるロール100のロールエンドカバー1からロール識別IDを読み取ると、管理装置では、ロールの現在位置が「ロール研磨装置」、現在の使用状態が「研磨作業中」に更新されたロール関連情報が最新の履歴データとして登録される。
【0089】
このように、管理装置では、各ロール100のロール関連情報を一元管理しているため、例えば作業者が特定のロール100についての詳細情報を知りたい場合には、当該特定のロール100のロールエンドカバー1からロール識別IDを読み取れば、管理装置において当該ロール識別IDをキーとして対応するロール関連情報を検索することができる。そして、このロール関連情報を参照すれば、現在のロール100に関する詳細情報のみならず、当該ロール100に関する過去の履歴データも参照できる。このように、ロール100にロールエンドカバー1を取り付けるだけで、圧延機やロールショップにて使用されるロール100に関する情報を効率的かつ正確に管理することができる。
【0090】
さらに、従来では、圧延機に使用するロール100が最適なロール径であるか否かも作業者が経験によって判断していた。しかし、本実施形態では、作業者が必要に応じて各ロール100のロール関連情報を参照し、現在のロール径や過去の使用履歴などを把握することできる。そのため、ロール100を圧延機に使用すべきか否かや、ロール100を廃棄や研磨をすべきか否かなどを、作業者の経験や熟練に頼らず正確に判断可能となり、作業者の負担を軽減して作業効率を向上させることができる。
【0091】
ところで、ロール研磨装置において磨耗したロール100のロール面(詳しくは、胴部110の外周面)を研磨すると、胴部110の外径L4が小さくなる。そして、胴部110の外径L4が所定量(例えば、3mm)小さくなると、これに合わせて首部120の外周面も研磨して外径L5が小さくなるようにすることがある。ところが、この研磨作業によって、首部120の外径L5がロールエンドカバー1の凹陥部21の直径L2よりも大幅に小さくなると、凹陥部21に対して首部120を緊密に嵌め込むことができなくなり、ロールエンドカバー1が取れ落ちやすくなる問題がある。
【0092】
そこで、本実施形態では、あらかじめ凹陥部21の直径L2が異なる複数パターンのロールエンドカバー1を用意しておき、ロール100の首部120の外径L5と略一致するような凹陥部21の直径L2を有するロールエンドカバー1を当該ロール100に取り付けるようにしている。なお、このような複数パターンのロールエンドカバー1は、それぞれ本体部10の壁部12の厚みを径方向に増減させた構成とすることによって、凹陥部21の直径L2が各々異なるようにすることができる。また、複数パターンのロールエンドカバー1を、本体部10の壁部12の厚みのみを径方向に増減させた構成とすることで、それぞれ凹陥部21の直径L2は異なるものの本体部10の外径L1は同じとすることができる。
【0093】
また、ダル加工機においてロール100に対してショットブラストによるダル加工を施すときは、当該ロール100の首部120はロールエンドカバー1によって保護されているため、ショットブラストによって投射材が胴部110の外周面に対してのみ投射され、首部120の外周面に投射材が当たって傷や損傷が発生するような不具合が防止される。また、ロールエンドカバー1の本体部10や封止蓋90は弾性体であるゴムで構成されているため、投射材が当たっても傷や破損を軽微に抑えることができる。また、ショットブラスト時にはロール100に投射材が衝突することで熱が発生するものの、ロールエンドカバー1の本体部10は耐熱性を有するゴムで構成されているので変形することがない。さらに、ショットブラストによってロール100が回転すると、その遠心力によってロールエンドカバー1が外れてしまうおそれがあるが、ロール100の端縁部は凹陥部21にて緊密に嵌め込まれるとともに係止部22で係止されるため、かかる遠心力が加えられてもロールエンドカバー1の落下が防止される。
【0094】
以上説明したように、本実施形態のロールエンドカバー1は、圧延機に使用されるロール100に関する情報を記憶可能な無線ICタグ80を、非導電性を有する本体部10にて保持するものである。そして、本体部10は、ロール100の端縁部に対して嵌脱自在な嵌着部20を有しており、この嵌着部20によってロールエンドカバー1をロール100に取り付けることができる。また、本体部10は、無線ICタグ80を収容可能な収容部30を有しており、この収容部30内に無線ICタグ80を配置することができる。そして、この収容部30は、当該収容部30に収容された無線ICタグ80に対して、ロール100に関する情報を無線通信によって書き込みまたは/および読み取り可能な位置(詳しくは、緩衝部50によってロール100の首部120と離間された位置)に形成されている。
【0095】
これにより、ロールエンドカバー1は、ロール関連情報を記憶可能な無線ICタグ80が保持された状態で、ロール100の端縁部に取り付けることができる。そして、本体部10は、電波を通過させる物質で構成されることによって、電波を反射させるロール100から無線ICタグ80を離隔させる機能を有する。そのため、圧延機に用いられるロール100が導電性金属で構成されていても、無線ICタグ80に対して無線通信により情報の書き込みまたは/および読み取りを可能とすることができる。そのため、圧延機およびロールショップにて使用される複数のロールにそれぞれロールエンドカバー1を取り付けるだけで、無線ICタグ80にて記憶される固有の識別情報を参照するだけで、各ロール100を一意に識別することが可能となる。
【0096】
そして、管理装置において各ロール100の詳細情報(各ロールの現在位置、現在の使用状態、過去の使用履歴および現在のロール径など)を一元管理する場合には、各ロール100に取り付けられたロールエンドカバー1に保持される無線ICタグ80を参照し、この無線ICタグ80に固有の識別情報(つまり、ロールの識別情報)に基づいて各ロール100の詳細情報を適宜登録すればよい。これにより、作業者が特定のロール100についての詳細情報を知りたい場合には、管理装置に当該ロール100の識別番号をキーとして検索させるだけで詳細情報を簡易に得られることができ、圧延機やロールショップにて使用されるロール100に関する情報を効率的かつ正確に管理することができる。
【0097】
また、本体部10は、嵌着部20がロール100の端縁部に嵌着された状態で当該ロール100の軸線と略同軸をなす筒状体をなす。つまり、ロールエンドカバー1がロール100に取り付けられると、筒状体をなす本体部10の軸線と略円柱状をなすロール100の軸線とが略一致する。そして、本体部10の外径L1がロール100における最大径部よりも大きくなっているが、一般にロール100における最大径部は、圧延機に使用された場合に金属などの被加工物に当接する胴部110であるため、本体部10の外径L1はロールの胴部110における外径L4よりも大きいともいえる。
【0098】
これにより、ロールエンドカバー1がロール100の端縁部に取り付けられると、本体部10およびロール100の軸線からみて、本体部10が最も径外方向に突出することになる。そのため、複数のロール100を並列に配置したときに、隣り合うロール100が互いに近接する方向に移動したとしても、各ロール100の胴部110が互いに接触する前に、各ロール100に取り付けられたロールエンドカバー1がそれぞれ隣接するロール100の胴部110またはロールエンドカバー1に当接する。そのため、複数のロール100を隣接して配置したとしても、各ロール100の胴部110が互いに接触してロール表面に傷や破損を生じることを防止することができる。
【0099】
また、本体部10は、弾性材(ここでは、ゴム)によって一体形成されて可撓性を有する。本体部10を弾性材によって一体形成することで、本体部10の構造を簡素化することができ、ロールエンドカバー1の製造工程や製品コストを低減することができる。また、本体部10が可撓性を有することで、ロール100への着脱を容易にすることができるとともに、ダル加工機におけるショットブラストによる破損を防止することができる。なお、ショットブラスト時におけるロール100の発熱等によって本体部が変形してしまい、嵌着部20がロール100の端縁部から外れてしまうといった不具合を防止するために、この弾性材は所定の耐熱性を有していることが望ましい。
【0100】
また、ロール100の端縁部は、胴部110よりも小径をなす首部(ネック部)120であり、圧延機における被加工物の圧延に使用されない部位である。この首部120は、例えば、圧延機に対してロール100を組み込む際に把持される部位として機能したり、圧延機にてロール100を回転可能に軸支される部位として機能したりする。そして、嵌着部20がロール100の端縁部に嵌着されると、当該嵌着部20によって首部120の略全体が外包される。つまり、ロールエンドカバー1がロール100に取り付けられた状態では、首部120の略全体がロールエンドカバー1によって外部から保護されることになるため、例えば、ショットブラスト時においても首部120に対して投射材が衝突することを防止し、首部120の損傷や破損を防ぐことができる。
【0101】
また、嵌着部20は、ロール100の端縁部に対して緊密に嵌め込まれるように、ロール100の端縁部と略同径かつ略同形状をなし、ロール100の端縁部の略全体が挿入可能な程度の深さ(開口縁から内底部までの距離)を有する凹陥部21を有する。そして、凹陥部21に嵌合されたロール100の外周面に向けて突出形成された係止部22を有し、本体部10の軸線からみて係止部22までの距離は凹陥部21の内側面までの距離よりも若干小さくなっている。そのため、凹陥部21にロール100が嵌合されると、この係止部22からロール表面側に付与される押圧力によって、当該ロール100は凹陥部21の内側面にて係止される。これにより、例えばショットブラストなどによってロール100に振動や回転力が付与されても、当該ロール100からロールエンドカバー1が外れてしまう不具合を防止することができる。
【0102】
なお、係止部22は、凹陥部21の内側面(凹陥部21が円筒状であれば内周面)における全周に亘って形成されているが、当該凹陥部21の内側面に部分的に形成されてもよい。また、係止部22の断面形状や突出形状も任意に形成できるが、この係止部22の突出幅は、後述するように凹陥部21に対するロール100の挿脱を作業者が意図的に外圧を加えて行える程度であることが好適である。
【0103】
また、収容部30に収容された無線ICタグ80を封止し、少なくとも収容部30に収容された無線ICタグ80を視認可能な透光性を有する封止蓋90を有する。これによれば、ロールエンドカバー1から無線ICタグ80が取れ落ちてしまうような不具合を防止することができ、また封止蓋90で封止された状態でも収容部30に収容された無線ICタグ80を視認することが可能である。そのため、封止蓋90をその都度取り外したりしなくても、収容部30内に無線ICタグ80が収容されているか否かを確認でき、作業者の負担を軽減できる。
【0104】
なお、本発明は、上記の好ましい実施形態に記載されているが、本発明はそれだけに制限されない。本発明の精神と範囲から逸脱することのない様々な実施形態が可能である。
【0105】
例えば、本実施形態では、ロールエンドカバー1の本体部10が円筒形状である場合を例示しているが、この本体部10の形状や大きさなどは任意に設計することができる。ここで、ロールエンドカバー1の本体部10の形状を変更した例を、図7に示す。図7は、他の形態のロールエンドカバー1が取り付けられたロール100の外観図である。図7に示すロールエンドカバー1は、その軸線方向と直交する断面が八角形状をなすような八角柱状に構成されたものである。これによれば、パレット200に複数のロール100を搭載させた場合に、台座201がロールストッパ202を有していなくても、ロール100の回転方向への移動がロールエンドカバー1によって規制されるため、ロール100の胴部110同士の相互干渉を防止することができる。
【0106】
また、ロールエンドカバー1の本体部10が有する嵌着部20や収容部30の形状や大きさなども適宜変更可能である。すなわち、嵌着部20は、ロール100の端縁部に対して取り付け可能であればよいため、ロールエンドカバー1の端縁部の形状や大きさに合わせて形成すればよい。また、収容部30は、無線ICタグ80を収容可能であればよいため、少なくとも無線ICタグ80を内部に納めることが可能な形状や大きさで形成すればよい。また、無線ICタグ80も、本実施形態のようなコイン型に限定されず、収容部30に収容可能なスティック型やカード型であってもよく、使用周波数や記憶容量についてもロールエンドカバー1が使用される環境に応じて適宜最適なものを選択すればよい。
【0107】
さらに、各ロール100の詳細情報を管理装置にて一元管理するのに代えて、またはこれに併せて、各ロール100に取り付けられたロールエンドカバー1に保持される無線ICタグ80に、当該ロール100の詳細情報を無線通信によって書き込んでもよい。これによれば、作業者が特定のロール100についての詳細情報を知りたい場合には、当該ロール100に取り付けられたロールエンドカバー1に保持される無線ICタグ80から無線通信によってロール100の詳細情報を直接読み取って参照することが可能となり、作業効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】ロールエンドカバーおよびロールの外観を説明するための模式的斜視図である。
【図2】図1とは異なる方向からみた、ロールエンドカバーおよびロールの外観を説明するための模式的斜視図である。
【図3】ロールエンドカバーの側面断面図である。
【図4】ロールに対してロールエンドカバーを取り付けた状態の側面断面図である。
【図5】ロールエンドカバーがそれぞれ取り付けられた複数のロールを略並列に配置した場合の概略平面図である。
【図6】複数のロールが搭載されたパレットの外観斜視図である。
【図7】他の形態のロールエンドカバーが取り付けられたロールの外観図である。
【符号の説明】
【0109】
1 ロールエンドカバー
10 本体部
11 基部
12 壁部
20 嵌着部
21 凹陥部
22 係止部
30 収容部
31 開口部
32 蓋保持部
33 タグ保持部
80 無線ICタグ
90 封止蓋
100 ロール
110 胴部
120 首部
121 溝部
200 パレット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧延機に使用されるロールに関する情報を記憶可能な情報記憶媒体を、非導電性を有する本体部にて保持するロール情報管理部材であって、
前記本体部は、
前記ロールの端縁部に対して嵌脱自在な嵌着部と、
前記情報記憶媒体を収容可能な収容部と、
を少なくとも有しており、
前記収容部は、当該収容部に収容された前記情報記憶媒体に対して、前記ロールに関する情報を無線通信によって書き込みまたは/および読み取り可能な位置に形成されたことを特徴とするロール情報管理部材。
【請求項2】
前記本体部は、
前記嵌着部が前記ロールの端縁部に嵌着された状態で当該ロールの軸線と略同軸をなす筒状体であるとともに、
当該本体部の外径が前記ロールにおける最大径部よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載のロール情報管理部材。
【請求項3】
前記本体部は、弾性材によって一体形成されて可撓性を有することを特徴とする請求項1または2に記載のロール情報管理部材。
【請求項4】
前記ロールの端縁部は、前記圧延機にて被加工物の圧延に使用される胴部よりも小径をなす首部であって、
前記嵌着部は、前記ロールの端縁部に嵌着されると、前記首部の略全体を外包することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載のロール情報管理部材。
【請求項5】
前記嵌着部は、
前記ロールの端縁部が嵌合される凹陥部と、
前記凹陥部に嵌合された前記ロールの外周面に向けて突出形成され、当該凹陥部の内側面にて当該ロールを係止する係止部と、
を少なくとも有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載のロール情報管理部材。
【請求項6】
前記収容部に収容された前記情報記憶媒体を封止する封止部材、を備えており、
前記封止部材は、少なくとも前記収容部に収容された情報記憶媒体を視認可能な透光性を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載のロール情報管理部材。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−12482(P2010−12482A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−172824(P2008−172824)
【出願日】平成20年7月1日(2008.7.1)
【出願人】(000004581)日新製鋼株式会社 (1,178)