説明

ロール状ペーパー用接着剤及びロール状ペーパー

【課題】初期接着性が高く、塗工面をべたつかせることなく紙を容易に剥離させるロール状ペーパー用接着剤、及びそのロール状ペーパー用接着剤が塗布されたロール状ペーパーを提供する。
【解決手段】グルコースを含む(A)糖類、重量平均分子量20,000〜4,000,000の水性高分子を含む(B)粘性調整剤及び(C)グリコール及び/又はトリオールを含むロール状ペーパー用接着剤は、初期接着性及び剥離性の双方に優れ、更に、べたつきを生じないので、ロール状ペーパーの巻き始めに塗布されて、特にピックアップ剤として有用に使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トイレットペーパー及びキッチンタオル等のロール状ペーパー、ロール状ペーパーに塗布されるロール状ペーパー用接着剤、特にロール状ペーパーの巻き始めに塗布される接着剤(いわゆるピックアップ剤)に関する。
【背景技術】
【0002】
ロール状ペーパーとは、例えば、キッチンペーパー、ペーパーウェス、ラッピングペーパー、トイレットペーパー及びペーパータオル等の紙がロール状に巻かれた紙製品をいい、有芯型と無芯型がある。有芯型のロール状ペーパーは、筒芯(紙管)に紙を緩く巻き付け、紙を所望の長さと外径を有するように巻き取ることにより製造されている。無芯型のロール状ペーパーは、細い巻芯(巻軸)に紙を緩く巻付け、次いで固く巻き付けて所望の長さと外径を有する製品とし、その後巻芯を抜いて製造されるか、有芯型の筒芯と同径の巻芯に紙を固く巻き付けて所望の長さと外径を有する製品とし、その後、巻芯を抜いて製造されている。
【0003】
ロール状ペーパーを製造する際、有芯型、無芯型を問わず、紙を巻き始める部分に、特殊な接着剤、いわゆるピックアップ剤が塗布され、芯(例えば、筒芯及び巻芯等であり、特に、紙管)とペーパーが接着される。
【0004】
ピックアップ剤には、下記の性能が要求される:1)ピックアップ剤は芯に塗布された後、乾燥前の湿った状態で、芯と、ロール状に巻かれるペーパーを迅速に接着できること;及び、2)ピックアップ剤の乾燥後、接着されたペーパーを芯から簡単に剥離できること。従って、ピックアップ剤には、湿った状態での接着性(以下、「初期接着性」ともいう)及び乾燥後の剥離性(以下、単に「剥離性」ともいう)の双方に優れることが要求される。
【0005】
水、ポリビニルアルコール、エチルセルロース、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂等を主成分とするピックアップ剤が公知である。しかし、これらのピックアップ剤は、初期接着性が高すぎるため、剥離性が不十分であるという問題がある。そこで、ピックアップ剤の剥離性を向上させることを目的として、ピックアップ剤に剥離調整剤を添加する方法が知られている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0006】
例えば、特許文献1は、でんぷん等の糖類を主成分とする糊に、剥離調整剤として脂肪酸エステルや脂肪酸アミドが添加されたピックアップ剤を開示する(特許文献1請求項1及び2、及び実施例等参照)。また、特許文献2は、剥離調整剤としてポリアルキレングリコールを用いることを開示する(特許文献2請求項1及び2、及び実施例参照)。
【0007】
これらの特許文献1及び2に開示されたピックアップ剤は、剥離調整剤を含むので、剥離性に優れるため、芯からペーパーを容易に剥がすことができるが、初期接着性が不十分である。初期接着性に乏しいピックアップ剤をロール状ペーパーの巻き始めの箇所に塗布しても、湿った状態での接着力が低いため、芯とペーパーとを接着(即ち、ピックアップ)させることができないという問題がある。
ピックアップ剤の初期接着性と剥離性とのバランスをとるため、剥離調整剤の添加量を制御すると、ロール状ペーパーの塗工面がべたつき、剥離性が低下することがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−261736号公報
【特許文献2】特開2005−272084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような事情を鑑みなされたものであり、初期接着性が高く、塗工面をべたつかせることなく紙を容易に剥離させるロール状ペーパー用接着剤(特に、ピックアップ剤)、及びそのロール状ペーパー用接着剤が塗布されたロール状ペーパーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本研究者らは、鋭意研究を続けた結果、グルコースを含有する糖類に、特定の水性高分子及び特定の化合物を添加した接着剤は、「べたつき」を生じず、かつ初期接着性及び剥離性に優れ、特に、ピックアップ剤として有用であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
即ち、本発明は、一の要旨において、
(A)糖類、(B)粘性調整剤及び(C)グリコール及び/又はトリオールを含むロール状ペーパー用接着剤であって、
(A)糖類はグルコースを含み、
(B)粘性調整剤は、重量平均分子量20,000〜4,000,000の水性高分子を含むことを特徴とするロール状ペーパー用接着剤を提供する。
【0012】
本発明は、一の態様において、(A)糖類が、更に、マルトースを含むロール状ペーパー用接着剤を提供する。
本発明は、他の態様において、重量平均分子量20,000〜4,000,000の水性高分子は、重量平均分子量25,000〜400,000のビニルピロリドン系重合体及び/又は重量平均分子量300,000〜3,500,000のアルキレンオキシド系重合体であるロール状ペーパー用接着剤を提供する。
本発明は、好ましい態様において、ロール状ペーパーの巻き始めに塗布されるロール状ペーパー用接着剤を提供する。
【0013】
本発明は、他の要旨において、上記ロール状ペーパー用接着剤が塗布されたロール状ペーパーを提供する。
本発明の他の要旨のロール状ペーパーは、上記ロール状ペーパー用接着剤が巻き始め部分に塗布されたことが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るロール状ペーパー用接着剤は、(A)糖類、(B)粘性調整剤及び(C)グリコール及び/又はトリオールを含むロール状ペーパー用接着剤であって、
(A)糖類はグルコースを含み、
(B)粘性調整剤は、重量平均分子量20,000〜4,000,000の水性高分子を含むので、初期接着性及び剥離性の双方に優れ、更に、べたつきを生じない。
【0015】
尚、本明細書では、「初期接着性」とは、ロール状ペーパーに接着剤が塗布された直後のウェットな状態での接着力のことをいう。「剥離性」とは、ロール状ペーパーを芯へ貼り付けるために塗布された接着剤が完全に乾燥した後、ロール状ペーパーが芯から剥離し易さを示す指標をいう。
【0016】
本発明に係るロール状ペーパー用接着剤は、(A)糖類が、更に、マルトースを含む場合、初期接着性が更に優れる。
本発明に係るロール状ペーパー用接着剤は、重量平均分子量20,000〜4,000,000の水性高分子は、重量平均分子量25,000〜400,000のビニルピロリドン系重合体及び/又は重量平均分子量300,000〜3,500,000のアルキレンオキシド系重合体を含む場合、初期タックがより高くなり、それに伴い初期接着性がより高くなる。
本発明に係るロール状ペーパー用接着剤は、ロール状ペーパーの巻き始めに塗布されて、ピックアップ剤として有用に使用することができる。
【0017】
本発明に係るロール状ペーパーは、上記ロール状ペーパー用接着剤が塗布されることで、ペーパーが芯へ迅速に貼り付けられ、尚且つ、ペーパーの剥離性が向上する。
本発明に係るロール状ペーパーは、上記ロール状ペーパー用接着剤が巻き始め部分に塗布されるので、さらに、ペーパーが芯から剥がれ易くなる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係るロール状ペーパー用接着剤は、(A)糖類、(B)粘性調整剤及び(C)グリコール及び/又はトリオールを含む。
本発明において「(A)糖類」とは、必須成分としてグルコースを含み、本発明が目的とするロール状ペーパー用接着剤を得ることができるものである限り、特に限定されるものではない。「グルコース」とは、代表的な単糖類の一種であり、ブドウ糖とも呼ばれる。(A)糖類は、グルコース単独であってよいが、他の糖類を含むことが好ましい。「他の糖類」として、例えば、単糖類(グルコースを除く)、二糖類、三糖類、四糖類、多糖類、及びその他オリゴ糖を例示できる。
【0019】
「単糖類(グルコースを除く)」として、具体的に以下のものを例示できる。
プシコース、フルクトース、ソルボース、タガトース、アロース、アルトロース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、フコース、フクロース、ラムノース等のヘキソース;
ケトトリオース(ジヒドロキシアセトン)、アルドトリオース(グリセルアルデヒド)等のトリオース;
エイリトリロース、エリトロース、トレオース等のテトロース;及び
リブロース、キシルロース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、デオキシリボース等のペントース。
【0020】
「二糖類」として、例えば、スクロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、ツラノース、セロビオースを例示でき、「三糖類」として、例えば、ラフィノース、エレジトース、マルトトリオースを例示でき、「四糖類」として、例えば、アカルボース、スタキオースを例示できる。
「多糖類」として、例えば、グリコーゲン、デンプン(アミロース、アミロペクチン)、セルロース、デキストリン、グルカン、N-アセチルグルコサミン、キチン質を例示できる。
「その他のオリゴ糖」として、例えば、フラクオリゴ糖、ガラクオリゴ糖、マンナンオリゴ糖を例示できる。
【0021】
これら「他の糖類」は、単独で又は組み合わせて用いることができる。
他の糖類として、単糖類(グルコールを除く)及び二糖類が好ましく、二糖類として、マルトースが好ましい。
従って、本発明に係るロール状ペーパー用接着剤は、(A)糖類として、グルコース及びマルトースを含むことがより好ましい。
【0022】
本発明において、(A)糖類は、(B)粘性調整剤や(C)グリコール及び/又はトリオールと混合されるが、固形状態で混合されても、予め水に溶解されて液糖(シロップ)とされてから、(B)粘性調整剤や(C)グリコール及び/又はトリオールと混合されても良い。
【0023】
本発明において、(B)粘性調整剤とは、重量平均分子量20,000〜4,000,000の水性高分子を含み、本発明が目的とするロール状ペーパー用接着剤を得ることができるものである限り、特に限定されるものではない。本発明において、「(B)粘性調整剤」に含まれる水溶性高分子として、例えば、ビニルピロリドン系重合体、アルキレンオキシド系重合体、ポリビニルアルコール等を例示することができる。
【0024】
重量平均分子量20,000〜4,000,000の水性高分子は、重量平均分子量25,000〜400,000のビニルピロリドン系重合体及び/又は重量平均分子量300,000〜3,500,000のアルキレンオキシド系重合体のアルキレンオキシド系重合体であることが好ましい。そのようなビニルピロリドン系重合体及びアルキレンオキシド系重合体は、単独で用いられても、混合されて用いられても良い。
【0025】
ビニルピロリドン系重合体の重量平均分子量は、25,000〜400,000であることが好ましく、200,000〜400,000であることがより好ましい。重量平均分子量が25,000〜400,000である場合、ロール状ペーパー用接着剤の初期接着性がより高くなる。
アルキレンオキシド系重合体の重量平均分子量は、300,000〜3,500,000であることが好ましく、300,000〜2,000,000であることがより好ましい。重量平均分子量が300,000〜3,500,000である場合、ロール状ペーパー用接着剤の初期接着性が向上する。
【0026】
本明細書では、重量平均分子量(Mw)とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)装置で測定され、単分散分子量ポリエチレングリコールで換算された重量平均分子量をいう。より具体的には、Waters2690,2487,410を用い、RI及びUVのクロマトグラムを検出した。GPCカラムとして、TSKgel SuperMultipore PWXL、Ultrahydrogel Liner、TSKgel GMPWXL、Ulyrahydrogel250(東ソー社製)を用いた。
【0027】
試料をアセトニトリル/0.1M pH7.0リン酸緩衝液(20:80)に溶解して、流速を0.6ml/min、カラム温度を40℃にて流した。
尚、標準物質としてエチレングリコール(EG)溶液と、分子量の異なる7種類の標準ポリエチレンオキサイド(PEO)/ポリエチレングリコール(PEG)を用いて準備した2種類のPEO/PEG溶液(下記「STD−A」及び「STD―B」)の計3種を使用して得た検量線を用いて、Mwを求めた。ここで、STD−Aは、Mw=920,000、107,000及び24,000のPEOと、Mw=1,500のPEGを混合して得た。STD−Bは、Mw=250,000及び50,000のPEOと、Mw=3,000のPEGを混合して得た。
【0028】
本発明において「ビニルピロリドン系重合体」とは、N−ビニルピロリドンから得られるビニルピロリドン単位を有する重合体をいい、本発明が目的とするロール状ペーパー用接着剤を得ることができる限り、特に限定されるものではない。ビニルピロリドン系重合体として、例えば、ポリビニルピロリドン及び/又はN−ビニルピロリドンを必須とするホモポリマー(単独重合体)、若しくは、必要に応じてその他の単量体を共重合して得られるコポリマー(共重合体)を例示することができ、これらを好適に使用することができる。
【0029】
ビニルピロリドン系重合体が共重合体である場合、N−ビニルピロリドンと共重合する単量体は、N−ビニルピロリドンと共重合可能なものであって、本発明が目的とするロール状ペーパー用接着剤を得ることができる限り、特に限定されるものではない。
具体的には、
(1)(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル等の(メタ)アクリル酸エステル類;
(2)(メタ)アクリル酸アミド、N−モノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N’−ジメチル(メタ)アクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等の(メタ)アクリルアミド誘導体類;
(3)(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール等の塩基性不飽和単量体;
(4)ビニルホルムアミド、ビニルアセトアミド、ビニルオキサゾリドン、N−ビニルカプロラクタム等のビニルアミド類;
(5)(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等のカルボキシル基含有不飽和単量体;
(6)無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和酸無水物類;
(7)プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル等のビニルエステル類;
(8)ビニルエチレンカーボネート及びその誘導体;
(9)スチレン及びその誘導体;
(10)ビニルスルホン酸及びその誘導体;
(11)エチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;
(12)エチレン、プロピレン、ブタジエン等のオレフィン類
を例示できる。
【0030】
アルキレンオキシド系重合体は、アルキレンオキシドから誘導されるアルキレンオキシド単位を有する重合体であって、本発明が目的とするロール状ペーパー用接着剤を得ることができる限り、特に限定されるものではない。
そのようなアルキレンオキシドとして、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドを例示できる。これらアルキレンオキシドの中でも、特にエチレンオキシドが本発明では好ましい。
【0031】
本発明では、アルキレンオキシド系重合体は、アルキレンオキシドと他の単量体との共重合体であってもよい。アルキレンオキシドと共重合する単量体は、本発明が目的とするロール状ペーパー用接着剤を得ることができる限り、特に限定されるものではないが、不飽和カルボン酸単量体及び/又はその塩であることが好ましい。不飽和カルボン酸単量体として、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロキシプロピオン酸、シトラコン酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸等を例示することができ、これらの中でも、アクリル酸、メタクリル酸が好ましい。また、不飽和カルボン酸単量体の塩として、例えば、前記不飽和カルボン酸単量体のナトリウム塩、カリウム塩等の金属塩及び、アンモニウム塩等を例示できる。
【0032】
(B)粘性調整剤が、上記水性高分子を含むことで、ロール状ペーパー用接着剤の初期接着性が向上する。本発明では、住友精化社の(商品名:PEO#2、PEO#3Z、PEO#8Z、PEO#15Z)や、日本触媒化学社の(商品名:PVP K-30、PVP K-90、PVP K-85)を、(B)粘性調整剤として好適に用いることができる。
【0033】
(B)粘性調整剤は、ビニルピロリドン系重合体やアルキレンオキシド系重合体の他にも、本発明が目的とするロール状ペーパー用接着剤を得ることができる限り、
尿素、尿素化合物、ジシアンジアミド等の窒素含有物質や、
水酸化カルシウム、酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、リン酸3ナトリウム、リン酸水素2アンモニウム、硼砂、フッ化ナトリウム、水ガラス、アンモニア水等の一般的に粘性調整剤とされるものを含有することができる。
【0034】
本発明に係るロール状ペーパー用接着剤は、(C)グリコール及び/又はトリオールを含む。
本発明に係る「(C)グリコール及び/又はトリオール」とは、Mwが20,000未満であるグリコール及び/又はトリオールをいい、本発明が目的とするロール状ペーパー用接着剤を得ることができる限り、特に限定されるものではないが、常温常圧で液体であって、(A)糖類と(B)粘性調整剤を溶解可能であることが好ましく、グリコールであることが、より好ましい。
【0035】
(C)グリコール及び/又はトリオールとして、例えば、
グリセリン等のトリオール;
エチレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のグリコール;
を例示することができる。これらは、単独又は組み合わせて使用することができる。
(C)は、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコールであってもよいが、Mwは20,000未満であるので、(B)粘性調整剤に含まれるアルキレンオキシド系重合体とは、明確に異なる。
尚、本発明では、(C)グリコール及び/又はトリオールは、べたつき調整剤として作用する。(C)グリコール及び/又はトリオールは、そのまま用いても、溶媒と混合して用いてもよい。溶媒は、水性媒体、非水性媒体のいずれでもよく、両者の混合媒体でも良いが、水性媒体を含む媒体であることが好ましく、水性媒体であることがより好ましい。
【0036】
上記(A)糖類、(B)粘性調整剤及び(C)グリコール及び/又はトリオールは、そのままの状態、例えば、固体又は液体の状態で、混合されてもよいが、必要に応じて水性媒体に溶かされて、混合されてもよい。得られた混合物は、更に、水性媒体を用いて適宜所望の濃度に調節されて本発明に係るロール状ペーパー用接着剤が得られる。従って、本発明に係るロール状ペーパー用接着剤は、一般に水性接着剤である。本発明に係る接着剤は、水性媒体に均一に溶解していることが好ましい。
ここで、「水性媒体」とは、水道水、蒸留水又はイオン交換水等の一般的な水をいうが、水性媒体に溶解可能な有機溶剤であって、本発明に係る接着剤の成分と反応性の乏しい有機溶剤、例えば、アセトン及び酢酸エチル等を含んでもよく、更に水性媒体に溶解可能な単量体、オリゴマー、プレポリマー及び/又は樹脂等を含んでも良い。また後述するような各種添加剤等を含んでも良い。
【0037】
本発明では、(A)〜(C)の総重量100重量部に対し、(A)糖類は、固形分として、10〜90重量部が配合されることが好ましく、20〜70重量部が配合されることがより好ましく、40〜60重量部が配合されることが特に好ましい。ロール状ペーパー用接着剤は、(A)〜(C)の総重量100重量部に対し(A)糖類が10〜90重量部配合されることで、初期接着性及び剥離性のバランスにより優れ、不要な「べたつき」をより生じない。
【0038】
本発明では、(A)〜(C)の総重量100重量部に対し、(B)粘性調整剤は、固形分として、1〜10重量部が配合されることが好ましく、1〜8重量部が配合されることがより好ましく、1〜7重量部が配合されることが特に好ましい。ロール状ペーパー用接着剤は、(A)〜(C)の総重量100重量部に対し(B)粘性調整剤が1〜10重量部配合されることで、初期接着性及び剥離性のバランスにより優れ、不要な「べたつき」をより生じない。
【0039】
本発明では、(A)〜(C)の総重量100重量部に対し、(C)グリコール及び/又はトリオールは、10〜70重量部が配合されることが好ましく、20〜70重量部が配合されることがより好ましく、20〜60重量部が配合されることが特に好ましい。ロール状ペーパー用接着剤は、(A)〜(C)の総重量100重量部に対し(C)グリコール及び/又はトリオールが10〜70重量部配合されることで、初期接着性及び剥離性のバランスにより優れ、不要な「べたつき」をより生じない。
【0040】
本発明では、(A)〜(C)成分の総重量は、ロール状ペーパー用接着剤の総重量100重量部に対し、10〜90重量部であることが好ましく、30〜90重量部であることがより好ましく、40〜80重量部であることが特に好ましい。(A)〜(C)成分の総重量が10〜90重量部である場合、本発明のロール状ペーパー用接着剤は、初期接着性および剥離性に優れ、不要なべたつきを生じることはない。
【0041】
本発明のロール状ペーパー用接着剤は、成分(A)〜(C)の他に、更に、架橋剤、可塑剤、消泡剤、防錆剤、防腐剤等の添加剤を必要に応じて適宜含むことができる。添加剤の配合方法は、特に限定されることはない。
【0042】
本発明のロール状ペーパー用接着剤を調製する場合、成分(A)〜(C)と必要に応じて各種添加剤を配合した後、水性媒体を添加しても良いし、成分(A)〜(C)を予め水性媒体に混合した後、各種添加剤を配合しても良い。
【0043】
各種添加剤のうち、架橋剤として、例えば、酢酸亜鉛、酸化亜鉛、酢酸ジルコニウム、炭酸ジルコニウムアンモニウム等を例示できる。これらの架橋剤は、単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0044】
消泡剤として、例えば、
ジメチルポリシロキサン、ポリオキシアルキレン変性シリコーン、有機変性ポリシロキサン、フッ素シリコーン等のシリコーン系消泡剤;
ヒマシ油、ゴマ油、アマニ油、動植物油等の油脂系消泡剤;
ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸等の脂肪酸系消泡剤;
イソアミルステアリン酸、ジグリコールラウリン酸、ジステアリルコハク酸、ジステアリン酸、ソルビタンモノラウリン酸、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン、モノラウリン酸ブチルステアレート、ショ糖脂肪酸エステル、スルホン化リチノール酸のエチル酢酸アルキルエステル、天然ワックス等の脂肪酸エステル系消泡剤;
ポリオキシアルキレングリコールとその誘導体、ポリオキシアルキレンアルコール水和物、ジアミルフェノキシエタノール、3−ヘプタノール、2−エチルヘキサノール等のアルコール系消泡剤;
3−ヘプチルセルソルブ、ノニルセルソルブ−3−ヘプチルカルビトール等のエーテル系消泡剤;
トリブチルホスフェート、オクチルリン酸ナトリウム、トリス(ブトキシエチル)ホスフェート等のリン酸エステル系消泡剤;
ジアミルアミン等のアミン系消泡剤;
ポリアルキレンアマイド、アシレイトポリアミン、ジオクタデカノイルピペリジン等のアマイド系消泡剤;
ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、オレイン酸カリウム、ウールオレインのカルシウム塩等の金属石鹸系消泡剤;
ラウリルスルホン酸ナトリウム、ドデシルスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸エステル系消泡剤等を例示することができる。
【0045】
本発明に係るロール状ペーパー用接着剤は、消泡剤として、シリコーン系消泡剤を含有することが好ましい。シリコーン系消泡剤は、他の消泡剤と比べて肌に優しいので、トイレットペーパーやキッチンペーパーに塗工されるロール状ペーパー用接着剤の成分として好ましい。
【0046】
本発明に係るロール状ペーパー用接着剤は、ロール状に巻かれたペーパーに塗布されて使用される。ロール状ペーパーは、ペーパーがロール状に巻かれたものであれば良いが、一般的にはトイレットペーパーや、キッチンペーパー等の衛生薄葉紙がロール状に巻回されたものが挙げられる。ロール状に巻回されるペーパーは、1プライの単層紙でもよいが、吸水性等の点から2プライ以上の重ね紙であることが好ましい。
【0047】
ロール状ペーパー用接着剤が塗布される部位は、ロール状ペーパーのいずれの部分でも良いが、特にロール状ペーパーの巻き始めか、テールシール部(巻き終わり)に塗布されるのが本発明では好適である。本発明のロール状ペーパー用接着剤は、ロール状ペーパーの巻き始めに塗布されるピックアップ剤として、特に有効に使用される。
本明細書において、ピックアップ剤とは、芯にペーパーを巻き始める時に塗布される水性接着剤である。ピックアップ剤は、芯からペーパーを容易に剥がすために使用される。
【0048】
本発明に係るロール状ペーパーは、上記ロール状ペーパー用接着剤が塗布されたトイレットペーパーやキッチンペーパー等であり、特にロール状ペーパーの巻き始めか、テールシール部(巻き終わり)に塗布されたものが好ましく、さらに好ましくは、巻き始めに塗布されたものが本発明では好適である。
本発明に係るロール状ペーパーの最も好ましい実施形態は、ペーパーの巻き始めに、ロール状ペーパー用接着剤がピックアップ剤として塗布されたトイレットペーパー、特に有芯型トイレットペーパーである。
【0049】
本発明に係るロール状ペーパー接着剤を塗布する方式については、特別な方式を採用する必要はない。ホイール方式、ブレード方式、マウント方式、ノズル方式、スプレー方式等、一般的な方式が挙げられる。
【0050】
本発明では、初期接着性の高いロール状ペーパー用接着剤が塗布されているので、ロール状ペーパーの芯とペーパーとが迅速に貼り付けられる。さらに、本発明のロール状ペーパーは、剥離性に優れたロール状ペーパー用接着剤が塗布されているので、芯(巻き始め部分)や、テールシール(巻き終わり部分)からペーパーが容易に剥離し、最後まで無駄なく使用される。
【実施例】
【0051】
以下に本発明を実施例及び比較例を用いて説明するが、これらの例は本発明を説明するためのものであり、本発明を何ら限定するものではない。
【0052】
まず、ロール状ペーパー用接着剤の成分として、以下の成分を準備した。()内に、商品名名及び製造会社名を記載した。尚、部とは重量部を意味し、「分子量」とは重量平均分子量(Mw)を意味する。
[(A)糖類]
(A-1)グルコース(ブドウ糖TDH、サンエイ糖化(株))
(A-2)液糖(サンシラップR75、日本コーンスターチ(株))(サンシラップR75は、グルコース、マルトース及びその他糖類が、75重量%の濃度で、水に溶解された水溶液である。)
(A'-3)デキストリン(Dextrin Mw=75,000、和光純薬工業(株))
(A'-4)カルボキシメチルセルロース(CMC1205、ダイセル化学工業(株))
(A'-5)メチルセルロース(マーポローズ90EMP4000、松本油脂製薬(株))
【0053】
[(B)粘性調整剤]
ポリビニルピロリドン
(B-1)(PVPK-30 Mw=25,000 、日本触媒(株))
(B-2)(PVPK-85 Mw=250,000、日本触媒(株))
(B-3)(PVPK-90 Mw=400,000、日本触媒(株))
ポリエチレンオキサイド
(B-4)(PEO#2 Mw=350,000 、住友精化(株))
(B-5)(PEO#3Z Mw=340,000 、住友精化(株))
(B-6)(PEO#8Z Mw=2,000,000 、住友精化(株))
(B-7)(PEO#15Z Mw=3,500,000、住友精化(株))
ポリビニルアルコール
(B-8)(JP-33 Mw=145,000、日本酢ビ・ポバール(株))
【0054】
[(C)グリコール及び/又はトリオール]
(C-1)ジエチレングリコール (ジエチレングリコール、和光純薬工業(株))
(C-2)トリエチレングリコール(トリエチレングリコール、和光純薬工業(株))
(C-3)ジプロピレングリコール(ジプロピレングリコール、和光純薬工業(株))
(C-4)ポリアルキレングリコール(ユニルーブ75DE170 Mw=5,000、日油(株))
[消泡剤]
(D-1)シリコーン系消泡剤 (KM72-F、信越化学工業(株))
【0055】
実施例1〜17のロール状ペーパー用接着剤を、以下の処方及び配合条件を用いて製造した。
実施例1
攪拌装置を備えたフラスコに、水を40部、(A-1)を44部、(B-3)を6部、(C-1)を50部加えて、60℃に加熱して1時間攪拌した。水、糖類、粘性調整剤及びグリコール類の混合液140部を得た。混合液を室温(23℃)に冷却し、(D-1)1部を添加後、30分間攪拌して実施例1のロール状ペーパー用接着剤を得た。
【0056】
実施例2
(A-1)44部の替わりに、(A-2)59部を用いたことを除いて、実施例1と同様の方法を用いて、実施例2のロール状ペーパー用接着剤を得た。
実施例3
(B-3)の替わりに(B-6)を用いたことを除いて、実施例1と同様の方法を用いて、実施例3のロール状ペーパー用接着剤を得た。
実施例4
(A-1)44部の替わりに(A-2)59部を用いたことを除いて、実施例3と同様の方法を用いて、実施例4のロール状ペーパー用接着剤を得た。
【0057】
実施例5
(B-3)の替わりに(B-1)を用いたことを除いて、実施例1と同様の方法を用いて、実施例5のロール状ペーパー用接着剤を得た。
実施例6
(B-3)の替わりに(B-2)を用いたことを除いて、実施例1と同様の方法を用いて、実施例6のロール状ペーパー用接着剤を得た。
実施例7
(B-3)の替わりに(B-5)を用いたことを除いて、実施例1と同様の方法を用いて、実施例7のロール状ペーパー用接着剤を得た。
【0058】
実施例8
(B-3)の替わりに(B-4)を用いたことを除いて、実施例1と同様の方法を用いて、実施例8のロール状ペーパー用接着剤を得た。
実施例9
(B-3)の替わりに(B-7)を用いたことを除いて、実施例1と同様の方法を用いて、実施例9のロール状ペーパー用接着剤を得た。
実施例10
(C-1)の替わりに(C-2)を用いたことを除いて、実施例1と同様の方法を用いて、実施例10のロール状ペーパー用接着剤を得た。
【0059】
実施例11
(C-1)の替わりに(C-3)を用いたことを除いて、実施例1と同様の方法を用いて、実施例11のロール状ペーパー用接着剤を得た。
実施例12
(C-1)の替わりに(C-4)を用いたことを除いて、実施例1と同様の方法を用いて、実施例12のロール状ペーパー用接着剤を得た。
実施例13
(C-1)の替わりに(C-2)を用いたことを除いて、実施例2と同様の方法を用いて、実施例13のロール状ペーパー用接着剤を得た。
【0060】
実施例14
(C-1)の替わりに(C-3)を用いたことを除いて、実施例2と同様の方法を用いて、実施例14のロール状ペーパー用接着剤を得た。
実施例15
(C-1)の替わりに(C-4)を用いたことを除いて、実施例2と同様の方法を用いて、実施例15のロール状ペーパー用接着剤を得た。
実施例16
(A-1)の量を44部から70部に、(C-1)の量を50部から26.8部に、(B-3)の量6部から3.2部に変更したことを除いて、実施例1と同様の方法を用いて、実施例16のロール状ペーパー用接着剤を得た。
【0061】
実施例17
(A-1)の量を44部から30部、(C-1)の量を50部から64部に変更したことを除いて、実施例1と同様の方法を用いて、実施例17のロール状ペーパー用接着剤を得た。
実施例1〜17のロール状ペーパー用接着剤141部(消泡剤1部含む)の組成を表1にまとめた。
【0062】
【表1】

【0063】
比較例1〜9のロール状ペーパー用接着剤を以下に示される処方および配合条件で製造した。
比較例1
攪拌装置を備えたフラスコに、水40部、(A-1)を50部、(C-1)を50部添加し、60℃に加熱して1時間攪拌し、混合液140部を得た。混合液に(B)粘性調整剤を添加しないで、室温(23℃)に冷却し、その後、(D-1)1部を添加し、30分間攪拌して、比較例1のロール状ペーパー用接着剤を得た。
【0064】
比較例2
(A-1)50部の替わりに(A-2)67部を加え、水の添加量を40部から25部に変更したことを除いて、比較例1と同様の方法を用いて、比較例2のロール状ペーパー用接着剤を得た。
比較例3
(A-1)の替わりに(A'-3)を用いたことを除いて、比較例1と同様の方法を用いて、比較例3のロール状ペーパー用接着剤を得た。
比較例4
(A-1)の替わりに(A'-3)を用いたことを除いて、実施例1と同様の方法を用いて、比較例4のロール状ペーパー用接着剤を得た。
【0065】
比較例5
(A-1)の替わりに(A'-3)を用いたことを除いて、実施例3と同様の方法を用いて、比較例5のロール状ペーパー用接着剤を得た。
比較例6
(A-1)の替わりに(A'-4)を用い、水の添加量を40部から880部に変更したことを除いて、実施例1と同様の方法を用いて、比較例6のロール状ペーパー用接着剤を得た。40部の水を用いても、(A'-4)は、十分に溶解しなかったので、水の添加量を増やして、粘度を調節した。
比較例7
(A-1)の替わりに(A'-5)を用い、水の添加量を40部から880部に変更したことを除いて、実施例1と同様の方法を用いて、比較例7のロール状ペーパー用接着剤を得た。比較例6と同様に水の添加量を増やして、粘度を調節した。
【0066】
比較例8
(A-1)の替わりに(B-8)を用い、水の添加量を40部から440部に変更したことを除いて、実施例1と同様の方法を用いて、比較例8のロール状ペーパー用接着剤を得た。比較例6と同様に水の添加量を増やして粘度を調節した。
比較例9
攪拌装置を備えたフラスコに、水40部、(A-1)を79部、(B-3)を21部添加し、60℃に加熱して1時間攪拌し、混合物を得た。混合物を室温に冷却し、(D-1)1部を添加後、30分間攪拌して、比較例9のロール状ペーパー用接着剤を得た。
比較例1〜9のロール状ペーパー用接着剤(消泡剤1部含む)の組成を表2にまとめた。
【0067】
【表2】

【0068】
実施例および比較例のロール状ペーパー用接着剤について、評価試験を実施した。試験方法及び評価基準を以下に記載する。
【0069】
〈剥離性試験〉
実施例及び比較例のロール状ペーパー用接着剤の各々を、バーコーターNO.40(日本コーティングテスター株式会社)を用いて、市販のトイレットロール用紙管原紙に塗工(塗工量:70〜80g/mWet)し、この紙管を市販の2プライ−トイレットロール状ペーパー紙に張り合わせた。室温(23℃)で、24時間乾燥後、接着剤の剥離性を評価した。
(評価基準)
〇:ペーパーが破れないで、紙管から容易に剥がれる
△:ペーパーが紙管から剥がれるときに、わずかに破れる
×:ペーパーが紙管から剥がれるときに、破れる
【0070】
〈初期接着性試験〉
実施例及び比較例で製造したロール状ペーパー用接着剤の各々を、市販の2プライ−トイレットロール状ペーパー紙に、薄塗り塗工条件及び厚塗り塗工で塗工した。各塗工条件で塗工した接着剤について、塗工直後に、室温で、タックレベルを指蝕試験によって評価した。
薄塗り塗工条件:バーコーターNO.6(日本コーティングテスター株式会社)を用いて、塗工量:13〜14g/mWetで塗工した。
厚塗り塗工条件:バーコーターNO.70(日本コーティングテスター株式会社)を用いて、塗工量130〜140g/mWetで塗工した。
(評価基準)
◎:非常にタックが強い
〇:タックが強い
△:ややタックがある
×:全くタックがない
【0071】
〈べたつき試験〉
実施例及び比較例で製造したロール状ペーパー用接着剤の各々を、バーコーターNO.70(日本コーティングテスター株式会社)を用いて、紙管原紙に塗工(塗工量130〜140g/mWet)し、この紙管を2プライ−トイレットロール状ペーパー紙と貼りあわせた。室温(23℃)で24時間放置後、紙管と2プライ−トイレットロール状ペーパー紙とを剥がした後、接着剤が塗工された面のタックレベルを指蝕試験によって評価した。
(評価基準)
◎:全くべたつきがない
〇:ほとんどべたつきがない
△:ややべたつきがある
×:べたつきがある
【0072】
実施例1〜17及び比較例1〜9のロール状ペーパー用接着剤の剥離性試験、初期接着性試験、べたつき試験の評価結果を、下記表3及び4にまとめた。
【0073】
【表3】

【0074】
【表4】

【0075】
表1及び3に示されるように、実施例1〜17の接着剤は、剥離性及び初期接着性に優れ、べたつきも生じなかった。これらの性能をバランス良く維持する接着剤は、ロール状ペーパー用接着剤、特にピックアップ剤として有効である。
比較例1〜9の接着剤は、表2及び4に示されるように、剥離性、初期接着性、べたつきのいずれかに問題がある。
【0076】
比較例1〜3の接着剤は、成分(B)を含まないので、初期接着性が低下している。比較例4〜8の接着剤は、グルコース成分である(A−1)又は(A−2)を含まないので、実施例の接着剤と比較すると、剥離性に劣る。比較例4及び5は、糖類として(A’−3)デキストリンを含むが、グルコースを含まないので、剥離性が低下している。比較例6〜7は、糖類として(A’−4)カルボキシメチルセルロースや(A’−5)メチルセルロースを含むが、グルコースを含まず、更に剥離性や初期接着性が低下している。比較例8は、ポリビニルアルコールを含むが、糖類を全く含まず、剥離性や初期接着性に乏しい。比較例9は、成分(C)を含まないので、べたつきを生じる。
【0077】
これらの結果から、ロール状ペーパー用接着剤として優れた性能を持つために、3成分((A)〜(C))を必須成分とすることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、ロール状ペーパー用接着剤、及びそのロール状ペーパーが塗布されたロール状ペーパーを提供できる。本発明に係るロール状ペーパーは、特にピックアップ剤として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)糖類、(B)粘性調整剤及び(C)グリコール及び/又はトリオールを含むロール状ペーパー用接着剤であって、
(A)糖類はグルコースを含み、
(B)粘性調整剤は、重量平均分子量20,000〜4,000,000の水性高分子を含むことを特徴とするロール状ペーパー用接着剤。
【請求項2】
(A)糖類が、更に、マルトースを含む請求項1に記載のロール状ペーパー用接着剤。
【請求項3】
重量平均分子量20,000〜4,000,000の水性高分子は、重量平均分子量25,000〜400,000のビニルピロリドン系重合体及び/又は重量平均分子量300,000〜3,500,000のアルキレンオキシド系重合体である請求項1又は2に記載のロール状ペーパー用接着剤。
【請求項4】
ロール状ペーパーの巻き始めに塗布される請求項1〜3のいずれかに記載のロール状ペーパー用接着剤。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のロール状ペーパー用接着剤が塗布されたことを特徴とするロール状ペーパー。
【請求項6】
上記ロール状ペーパー用接着剤が巻き始め部分に塗布された請求項5に記載のロール状ペーパー。

【公開番号】特開2011−206369(P2011−206369A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−78560(P2010−78560)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(391047558)ヘンケルジャパン株式会社 (43)