説明

ロール状媒体収容装置および液体噴射装置

【課題】重力方向に変位操作自在なロール状媒体収容部を、収容されたロール状媒体の媒体消費状態にかかわらず、重力方向に降下させることなく高位置に留めることができるとともに、重力方向へ容易に押し下げ操作できるロール状媒体収容装置、及び液体噴射装置を提供する。
【解決手段】ロール紙を収容するとともに、第1軸J1を中心に揺動するロール紙収容部11と、ロール紙収容部の揺動に連動しながら第2軸J2を中心に揺動するレバー部材15と、レバー部材に形成された案内部と係合しつつ第2軸と交差する方向に移動可能な軸体16と、軸体に一端が軸支されるとともに軸体を付勢してレバー部材に第2軸回りの回転トルクを与える付勢手段18と、を備え、ロール紙収容部が重力方向において低位置側から最高位置Dに第1軸を中心として揺動されるとき、軸体はその中心と第2軸の中心との間の距離が、最高位置において低位置側よりも離れるように移動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール状媒体収容装置およびこのロール状媒体収容装置を備えた液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴射ヘッドから液体(例えばインク)を記録媒体(用紙など)に噴射して付着させることによって用紙に所定の画像(文字や図形などを含む)を印刷する液体噴射装置が知られている。このような液体噴射装置において、多くの用紙枚数を必要とする大量印刷の場合や、用紙の搬送方向において印刷範囲が長い長尺印刷を行う場合には、用紙を印刷によって消費される消費側に連続して供給する必要がある。そのため、こうした液体噴射装置には、長尺の用紙(連続紙)がロール状に巻き重ねられた状態にあるロール紙(ロール状媒体)を収容し、かかるロール紙を回転させることによって該ロール紙から用紙を巻き解いて消費側に繰り出し供給可能としたロール紙収容装置が備えられている。
【0003】
このようなロール紙収容装置では、ロール紙を収容するロール紙収容部が設けられている。そして、収容されたロール紙から用紙が巻き解かれて消費し尽くされた場合には、ロール紙収容部に設けられた蓋を開けて新しいロール紙に交換する交換作業が行われる。このとき、例えば蓋の重量が重いなど蓋の開閉操作性が悪い場合、蓋の開閉を容易にするために蓋の開く方向に付勢する付勢手段を設ける構造が、種々提案されている。例えば、特許文献1には、熱転写プリンターにおいて、回動フレームに一端が軸支されたガススプリングを備える構成が開示されている。したがって、このような構成をロール紙収容部の蓋に採用すれば蓋の開閉を容易に行える。
【0004】
ところで、ロール紙収容部に収容されたロール紙とは別に、液体噴射装置の装置内に、例えば消費側に用紙を供給するためのロール紙が、あるいは交換用のためのロール紙が収容されている場合がある。そして、この場合において、液体噴射装置の使用状態において、液体噴射装置から別のロール紙を取り出す際の取出し部分が、ロール紙収容部によって塞がれている場合がある。このような場合、ロール紙収容部を液体噴射装置に設けられた1つの軸を中心として反重力方向に揺動(上昇)させて取り出し部分を塞がないようにすることにより、収容された別のロール紙を液体噴射装置から取り出せるようにする必要がある。
【0005】
このため、特許文献1に開示された構成を、ロール紙収容部に対して採用することが有効である。すなわち、収容するロール紙を含むロール紙収容部全体の総重量に抗する付勢力を与えるようにガススプリングを備えることによって、ロール紙収容部を容易に反重力方向に揺動させることができる。そして、揺動によって反重力方向に上昇到達した高位置において、ロール紙収容部が、その自重によって重力方向に降下しないようにすることができる。こうすることによって、取出し部分がロール紙収容部によって塞がれないので、液体噴射装置に収容されたロール紙を容易に取り出すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭63−51163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ロール紙収容部に収容されたロール紙は、用紙の消費に応じて重量が少なくなっていくため、新しい未使用の大径のロール紙が収容された状態と、紙の残量が少なくなった小径のロール紙が収容されている状態とでは、ロール紙収容部の総重量に差が生じる。従って、特許文献1に開示された構成を採用した場合、蓋の場合とは異なり、ロール紙収容部に新しい未使用のロール紙が収容された状態つまり最も重い重量のときに、ロール紙収容部が自重によって重力方向に揺動(降下)しないようにする必要がある。すなわち、ロール紙収容部が重力方向における高位置にあるとき、ロール紙収容部の総重量によって生ずる降下方向への回転トルクよりも大きな上昇方向の回転トルクが、1つの軸まわりに生ずるように、ガススプリングの付勢力を設定する必要がある。
【0008】
このとき、紙の残量が少なくなった小径のロール紙が収容されている状態あるいはロール紙が未収容の状態において、ロール紙収容部の総重量が軽くなるので、ロール紙収容部の総重量によって生ずる降下方向への回転トルクが小さくなる。この結果、設定されたガススプリングの付勢力によって生ずるロール紙収容部の上昇方向への回転トルクが相対的に大きくなる。このため、ロール紙収容部を降下させて液体噴射装置を使用状態に戻す場合、重力方向に押し下げるために要する操作力が大きくなるので、操作者は強い力でロール紙収容部を押し下げなければならなくなり、操作性が劣悪になってしまう。
【0009】
これを避けるためには、紙の残量が少なくなった小径のロール紙が収容されている状態あるいはロール紙が未収容の状態において、ロール紙収容部が自重によって重力方向に揺動(降下)しない最小の回転トルクを1つの軸回りに与えるように、ガススプリングの付勢力を設定すればよいことになる。しかしながら、こうすると、ガススプリングの付勢力による上昇方向への回転トルクが小さくなるので、ロール紙収容部に新しい未使用のロール紙が収容された状態つまり最も重い重量のときの降下方向への回転トルクに抗することができなくなる。その結果、ロール紙収容部が自重によって降下してしまうことになる。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためなされたものである。その主な目的は、重力方向に変位操作自在なロール状媒体収容部を、収容されたロール状媒体の媒体消費状態にかかわらず、重力方向に降下させることなく高位置に留めることができるとともに、重力方向へ容易に押し下げ操作できるロール状媒体収容装置を提供することにある。また、さらには、このようなロール状媒体収容装置を備えた液体噴射装置を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明のロール状媒体収容装置は、長尺の媒体がロール状に巻き重ねられた状態にあるロール状媒体を収容可能であるとともに、第1軸を中心に揺動するロール状媒体収容部と、前記ロール状媒体収容部の揺動に連動しながら第2軸を中心に揺動するレバー部材と、前記レバー部材に形成された案内部と係合しつつ前記第2軸の軸方向と交差する方向に移動可能な軸体と、前記軸体に一端が軸支されるとともに、前記軸体を付勢して前記レバー部材に前記第2軸回りの回転トルクを与える付勢手段と、を備え、前記付勢手段が与える前記第2軸回りの回転トルクによって、前記ロール状媒体収容部は、重力方向における低位置から、当該低位置よりも高い高位置に到る方向へ、前記第1軸を中心として反重力方向に揺動する力を受けるとともに、前記軸体は、該軸体の中心と前記第2軸の中心との間の距離が、前記高位置において前記低位置よりも離れるように移動する。
【0012】
この構成によれば、高位置において、軸体の中心と第2軸の中心との間の距離が低位置よりも離れて長くなることから、付勢手段によるレバー部材の回転トルクが大きくなる。従って、高位置において、レバー部材と連動して揺動するロール状媒体収容部に作用する反重力方向の回転トルクも大きくなる。この結果、未使用のロール状媒体など最大重量を有するロール状媒体が収容された場合においても、ロール状媒体収容部が高位置にある状態で、重力方向に揺動(降下)することがないようにロール状媒体収容部を保持することができる。また、付勢手段の付勢力による第2軸回りの回転トルクに抗する力、すなわちロール状媒体収容部を押し下げる操作力が大きくならないようにできるので、操作者はロール状媒体収容部を容易に押し下げ操作することができる。
【0013】
本発明のロール状媒体収容装置において、前記軸体が摺接するガイド部が形成されたガイド部材を備え、前記ガイド部の形状は、前記ロール状媒体収容部の前記低位置と前記高位置との間の揺動過程において、前記軸体が前記ガイド部を摺動することによって、前記軸体の中心と前記第2軸との中心との間の距離が変化するように形成されている。
【0014】
この構成によれば、軸体の中心と第2軸の中心との間の距離をガイド部の形状によって変化させることができるので、ロール状媒体収容部の揺動過程において、ロール状媒体収容部を反重力方向に揺動(上昇)させる第2軸まわりの回転トルクを任意に変化させることができる。従って、ガイド部の形状に応じて付勢手段の付勢力による第2軸回りの回転トルクを調節することができる。
【0015】
本発明のロール状媒体収容装置において、前記ガイド部の形状は、前記付勢手段によって発生する前記第2軸まわりの回転トルクが最大トルクを呈する位置において、前記軸体の中心と前記第2軸の中心との間の距離が最も近くなるように形成されている。
【0016】
この構成によれば、ロール状媒体収容部を上昇させる第2軸まわりの回転トルクの最大値を低く抑えることができる。従って、ロール状媒体収容部を押し下げ操作するとき、押し下げ力の最大値を小さくすることができる。この結果、ロール状媒体収容部が最も軽い状態のときに生じる押し下げ力の最大値を操作者の操作性に合わせて抑制することができる。
【0017】
本発明のロール状媒体収容装置において、前記付勢手段によって生ずる前記第2軸まわりの回転トルクが最大になる位置は、前記ロール紙収容部の重量によって生ずる前記第1軸まわりの回転トルクが最大になる位置と同じ位置である。
【0018】
この構成によれば、ロール状媒体収容部の重量による第1軸まわりの最大回転トルクと付勢手段の付勢力による第2軸まわりの最大回転トルクとが相殺される。この結果、上昇トルクと降下トルクの差によって生ずるロール状媒体収容部の押し下げ力を、例えば付勢手段の付勢力によって容易に調節することができる。
【0019】
本発明のロール状媒体収容装置は、前記第1軸を中心として前記ロール状媒体収容部と一体で回動する第1歯車と、前記第2軸を中心として前記レバー部材と一体で回動する第2歯車と、前記第1歯車と前記第2歯車とに張架されるとともに前記第1歯車および前記第2歯車と噛み合うチェーンと、を備え、前記第1歯車の回動と前記第2歯車の回動とが前記チェーンによって伝達されて連動することによって、前記第1軸を中心とした前記ロール状媒体収容部の揺動と前記第2軸を中心にした前記レバー部材の揺動とが連動する。
【0020】
この構成によれば、第1軸を中心としたロール状媒体収容部の揺動と第2軸を中心にしたレバー部材の揺動とを、チェーンによって確実に連動させることができる。また、第2軸の位置を第1軸の位置から離すことができるので、ロール状媒体収容装置においてレバー部材の設置できる範囲が広がる。この結果、レバー部材と係合する軸体を付勢する付勢手段の配置において自由度が増すことから、付勢手段をロール状媒体収容部から離すように設定することができる。したがって、レバー部材や軸体や付勢手段などロール状媒体収容部を揺動(上昇)させる機構部分が露出しないように外装で容易に覆うことができるので、外観上好ましい。
【0021】
本発明のロール状媒体収容装置は、前記第1軸を中心として前記ロール状媒体収容部と一体で回動する第1歯車と、前記第2軸を中心に前記レバー部材と一体で回動する第2歯車と、を備え、前記第1歯車と前記第2歯車とが直接または少なくとも一つの第3歯車を介して噛み合って前記第1歯車の回動と前記第2歯車とが連動して回動することによって、前記第1軸を中心とした前記ロール状媒体収容部の揺動と前記第2軸を中心にした前記レバー部材の揺動とが連動する。
【0022】
この構成によれば、第1軸を中心としたロール状媒体収容部の揺動と第2軸を中心としたレバー部材の揺動とを、歯車によって確実に連動させることができる。また、レバー部材つまり第2軸の位置を歯車を介在させることによって第1軸から遠ざけることができるので、ロール状媒体収容装置においてレバー部材の設置できる範囲が広がる。この結果、レバー部材と係合する軸体を付勢する付勢手段の配置において自由度が増すことから、付勢手段をロール状媒体収容部から離すように設定することができる。したがって、レバー部材や軸体や付勢手段などロール状媒体収容部を揺動(上昇)させる機構部分が露出しないように外装で容易に覆うことができるので、外観上好ましい。
【0023】
本発明のロール状媒体収容装置は、前記第3歯車を偶数個備えた。
この構成によれば、偶数の歯車を介在させて伝達することによって、ロール状媒体収容部が重力方向に抗して低位置から高位置に移動するときの第1軸を中心とする揺動方向と、付勢手段によって揺動するレバー部材の第2軸を中心とする揺動方向とは逆方向になる。この結果、第2軸に対してロール状媒体収容部と反対側にレバー部材を配置することができるので、付勢手段やレバー部材をロール状媒体収容部から離れるように設定することができる。したがって、レバー部材や軸体や付勢手段などロール状媒体収容部を揺動(上昇)させる機構部分が露出しないように外装で容易に覆うことができるので、外観上好ましい。
【0024】
本発明のロール状媒体収容装置において、前記第1軸と前記第2軸は同一軸である。
この構成によれば、第2軸を中心にしたレバー部材の揺動と、第1軸を中心としたロール状媒体収容部の揺動とを連動させるための部材を必要としない。従って、ロール状媒体収容装置が大きくならずに済むこと、また、装置の製造負荷も軽減されることともに、ロール状媒体収容部が高位置にある状態で、重力方向に揺動(降下)することがないようにロール状媒体収容部を保持することができる。
【0025】
本発明の液体噴射装置は、上記構成のロール状媒体収容装置と、前記ロール状媒体収容装置が収容するロール状媒体から巻き解かれることによって供給された前記媒体に液体を噴射して付着させる液体噴射ヘッドと、を備えた。
【0026】
この構成によれば、ロール状媒体収容装置は、未使用のロール状媒体など最大重量を有するロール状媒体がロール状媒体収容部に収容された場合においても、ロール状媒体収容部が高位置にある状態で、重力方向に揺動(降下)することがないように保持することができる。従って、例えば液体噴射装置内に収容されたロール状媒体の交換作業を容易に行うことができる液体噴射装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】(a)、(b)は、本発明の実施形態のプリンターの概略構成を示す模式図。
【図2】第1実施形態のロール紙収容装置の構成を示す斜視図。
【図3】第1実施形態で、ロール紙収容部の揺動状態を示す側面図。
【図4】第1実施形態で、揺動位置における軸体の移動を説明する説明図。
【図5】第1実施形態で、ロール紙収容部を押し下げる操作力を示すグラフ。
【図6】第2実施形態のロール紙収容装置の構成を示す側面図。
【図7】第2実施形態で、揺動位置における軸体の移動を説明する説明図。
【図8】第2実施形態で、ロール紙収容部を押し下げる操作力を示すグラフ。
【図9】第2実施形態の変形例となるロール紙収容装置の構成を示す斜視図。
【図10】変形例となるロール紙収容装置の構成を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を液体噴射装置の一種であるインクジェット式プリンター(以下、「プリンター」と略す場合もある)に具体化した実施形態について、図を用いて説明する。
図1(a)(b)は、本実施形態のロール紙収容装置(ロール状媒体収容装置)100を備えたプリンター10の概略構成図である。図1(a)に示すように、プリンター10は、外装となる略箱体形状の筐体13を有すると共に、その筐体13の内部には、印刷によって消費する用紙(媒体)の供給元となるロール紙(ロール状媒体)P2を収容したトレイ12が配置されている。また、筐体13の外部には、同じく用紙の供給元となるロール紙P1を内部空間に収容したハウジング構造のロール紙収容部(ロール状媒体収容部)11が設けられている。なお、ロール紙とは、長尺の用紙(すなわち、連続紙)がロール状に巻き重ねられた状態にあるものであって、かかるロール紙が軸線を中心に回転することにより、用紙はロール紙から巻き解かれて消費側に供給される。
【0029】
ロール紙収容部11は、筐体13の上部付近において1つの軸としての第1軸J1を中心に揺動可能な状態で、筐体13に取り付けられている。そして、本実施形態のロール紙収容装置100は、このロール紙収容部11と、ロール紙収容部11の揺動動作を行うために筐体13の内部に組み込まれた機構とを含んで構成されている(図2参照)。ロール紙収容部11は開閉可能な蓋11aが設けられており、この蓋11aを開けてロール紙P1を新しいものに交換できるようになっている。一方、トレイ12は、重力方向(図面では下方向)と交差する方向(図面では右方向)に移動(スライド)することによって筐体13外に取り出せるように構成され、取り出された状態でロール紙P2を新しいものに交換できるようになっている。
【0030】
さらに、プリンター10は、用紙の搬送方向下流側に向かって順に、ロール紙切替部20とロール紙から巻き解かれた用紙の消費側となる印刷部30とを備えている。ロール紙切替部20は、ローラー21,23と搬送駆動ローラー25、搬送従動ローラー26、および用紙を受ける受板22,24とを備え、用紙の供給元を切り替える。すなわち、供給元をロール紙P1とする場合は、ロール紙P1から引き出された用紙P1aを2つのローラー21と受板22とによって搬送駆動ローラー25と2つの搬送従動ローラー26との間に挿入すべく搬送するように構成されている。一方、供給元をロール紙P2とする場合は、ロール紙P2から引き出された用紙P2aをローラー23と受板24とによって搬送駆動ローラー25と2つの搬送従動ローラー26との間に挿入すべく搬送するように構成されている。なお、供給元となるロール紙の切替に際して、ローラー21,23は、必要に応じて供給元でないロール紙側の用紙を巻き戻す方向へ回転動作するように構成されている。
【0031】
印刷部30は、液体としてのインクを噴射する液体噴射ヘッド36と、インクの噴射対象物となる用紙P1aあるいは用紙P2a(以降これらをまとめて「用紙P」と呼ぶ)を支えるプラテン35とを有している。また、紙送りローラー31と従動ローラー32、および排紙ローラー33とを有している。紙送りローラー31と従動ローラー32は、ロール紙切替部20によって供給された用紙Pを液体噴射ヘッド36に対して相対的に所定量搬送するようになっている。そして、この所定量搬送される用紙Pに対して液体噴射ヘッド36からインクを噴射して、用紙Pの紙面に画像などを印刷する。なお、液体噴射ヘッド36は、搬送される用紙Pの幅方向に移動するキャリッジ型のヘッドや、ノズルが略用紙幅に渡って形成された固定型のヘッドである。
【0032】
その後印刷された用紙Pは、図示しない切断装置によって搬送方向において所定の長さに切断され、同じく図示しない排出トレイ等の排出位置へ搬送される。こうして、ロール紙P1およびロール紙P2における用紙P(P1a,P2a)は消費される。なお、図1(a)はロール紙P2から引き出された用紙P2aが印刷部30に供給されて印刷される状態を示している。
【0033】
そして、ロール紙P2から引き出された用紙P2aが印刷部30にて印刷されることによって全て消費された場合は、使用する用紙の供給元をロール紙P2から未使用のロール紙P1に切り替えると同時に、トレイ12のロール紙P2を新しいものに交換する必要がある。このとき、前述するようにロール紙P2は略箱体形状の筐体13を有するプリンター10の装置内に配置されたトレイ12に設置されているので、ロール紙P2の交換を行うためには、トレイ12を筐体13から外部へ引き出さなければならない。
【0034】
このようなロール紙P2の交換作業において、ロール紙収容装置100は、図1(b)に示すように、トレイ12を筐体13の外部へ引き出せるようにするため、ロール紙収容部11を図示しない付勢手段による第1軸J1回りの回転トルクを利用して揺動させる。すなわち、プリンター10の通常の使用状態における位置、すなわち図中二点鎖線で示した重力方向において低い低位置から、図中実線で示した重力方向において高い高位置まで、付勢手段の付勢力を用いて揺動(すなわち上昇)させる。このとき、ロール紙収容部11に設置されたロール紙P1が未使用の新品であることから重量が最も重くなるが、本実施形態のロール紙収容装置100では、この様な場合であってもロール紙収容部11が重力方向に降下しないように工夫が施されている。また、ロール紙収容部11を、付勢手段の付勢力に抗して、高位置から通常の使用状態である低位置まで押し下げるとき、その操作力が大きくならないように抑制する工夫もされている。以下、本実施形態のロール紙収容装置100について、このような工夫が施された第1実施形態と第2実施形態とを、図を参照して説明する。
【0035】
(第1実施形態)
図2は、第1実施形態のロール紙収容装置100aの構成を示した斜視図である。なお、ロール紙収容装置100aを除くプリンター10に係る構成要素については図示を省略している。また、以降の説明において、重力方向を「下」あるいは「下側」、反重力方向を「上」あるいは「上側」と呼ぶ場合もある。
【0036】
図示するように、ロール紙収容装置100aは、ロール紙収容部11と、筐体13(不図示)内に組み込まれたロール紙収容部を揺動させる機構部品とで構成されている。以下その構成について説明する。
【0037】
まず、トレイ12(不図示)が上面にてスライドするベース部13aを備え、このベース部13aに対して、下側に設けられた仕切り板14aの間においてトレイ12が収容できるように離間して立設された2つの支柱部14が設けられている。この2つの支柱部14の上側の位置にそれぞれ端部が軸支された回転軸が第1軸J1として設けられ、この第1軸J1に対して固定されるとともに、この第1軸J1を中心にして揺動するように、ロール紙収容部11が取り付けられている。ロール紙収容部11は、開閉可能な蓋11aを備え、その蓋11aを開放状態とすることにより、内部にロール紙P1を収容したり取り出したりできるように構成されている。そして、収容されたロール紙P1から引き出された用紙は、開口部11bを通って消費側である印刷部30(図1参照)に搬送される。
【0038】
支柱部14のそれぞれには、4つの平歯車からなる回転伝達部40が形成されている。4つの平歯車のうち、噛み合いの両端の一方に位置する平歯車41は、第1軸J1と一体で回転するようになっている。また他方に位置する平歯車42は、支柱部14と押え板40aとの間に軸支された第2軸J2を中心として回動するように構成されている。これらの間に位置する他の2つの平歯車も、平歯車42と同様に支柱部14と押え板40aとの間に軸支された軸を中心として回動するように構成されている。
【0039】
本実施形態では、平歯車42は第2軸J2に固定されている。そして、この第2軸J2を中心とし、この第2軸J2の回動と一体となって揺動する板状のレバー部材15が、第2軸J2に固定されて設けられている。この結果、回転伝達部40は、ロール紙収容部11の揺動に伴って回動する第1軸J1の回転が第2軸J2に伝達されて、第2軸J2が第1軸J1と連動して回転するように構成されている。
【0040】
さて、レバー部材15には後述する開口孔15a(図4参照)が設けられ、この開口孔内を、第2軸J2の軸方向と交差する方向(つまりレバー部材15の板面方向)に沿って開口孔と係合しつつ、この開口孔の形状に沿って移動可能な軸体16が備えられている。本実施形態では、軸体16は略円柱形状を有しており、その側面部分がレバー部材15の開口孔と係合するようになっている。なお、本実施形態では、レバー部材15は第2軸J2と反対側の端部においてL字形の曲げ板が固定され、この曲げ板にも同形状の開口孔が形成されている。そして、軸体16の軸方向から見たとき2つの開口孔が互いに重なるように配置されるとともに、この2つの開口孔と、軸体16の円柱部分の両端近傍の側面部分とがそれぞれ係合するように構成されている。
【0041】
この軸体16には、その中央付近において、付勢手段としてのガススプリング18の一端(上端)18aが固定されている。またガススプリング18の他端(下端)18bは、支柱部14に固定された固定板14bに回動可能に固定されている。従って、ガススプリング18は、付勢力によって軸体16を上側に付勢するようになっている。この結果、軸体16は、開口孔と係合するとともに、第2軸J2を中心にしてレバー部材15を揺動(上昇)させる付勢力をレバー部材15に加える作用点となる。
【0042】
さて、このように構成された第1実施形態のロール紙収容装置100aでは、ガススプリング18の付勢力によるレバー部材15の揺動に応じてロール紙収容部11が低位置としての最低位置Aから高位置としての最高位置Dまで揺動して変位するように構成されている。この揺動の様子を、図3を用いて説明する。なお、図3は、図2に示したロール紙収容装置100aを第1軸J1の軸線方向から見た側面図である。従って、ロール紙収容装置100aの各要素については図2と同符号を付し、それらの説明は省略する。
【0043】
まずプリンター10が通常使用状態、つまりレバー部材15が実線で示した状態にあるとする。このとき、ロール紙収容部11は最低位置Aに位置する状態である。この状態において、ガススプリング18はレバー部材15を付勢することによってロール紙収容部11を上側に揺動させようとする力を発生させる。つまり、ロール紙収容部11の重量が、ロール紙収容部11の重心Gに加わったときに発生する第1軸J1まわりの回転トルクに対して、より大きな逆方向(反重力方向)の回転トルクが加わるように、ガススプリング18の付勢力が設定されている。従って、本実施形態では、通常使用状態である最低位置Aでは、ロール紙収容部11が上側に揺動しないように図示しないロック機構によってロックされ、最低位置Aに保持されるようになっている。もとより連動するレバー部材15も揺動できない状態となる。
【0044】
さて、ロール紙P2の交換作業などを行うためにロック機構のロックを解除することによって、ロール紙収容部11は第1軸J1を中心に揺動できる状態となる。従って、レバー部材15は、ガススプリング18の付勢力によって第2軸J2を中心として揺動を開始する。すると、このレバー部材15の揺動に伴って第2軸J2が回転するので、これと連動して第1軸J1が回転する。この結果、ロール紙収容部11は第1軸J1を中心にして最低位置Aから図中破線で示した最高位置Dまで揺動つまり上昇することになる。
【0045】
この揺動過程において、ロール紙収容部11の重心Gの位置が重力方向において第1軸J1と略同じ高さになる水平位置B(図中二点鎖線)では、ガススプリング18の付勢力によるレバー部材15の第2軸J2回りの回転トルクが最大になるようになっている。すなわち、ロール紙収容部11の重量によって発生する第1軸J1回りの回転トルクが最大になる位置と、ガススプリング18の付勢力によって発生するレバー部材15の第2軸回りの回転トルクが最大になる位置とが一致するようになっている。
【0046】
そして、図中破線で示したように、ロール紙収容部11がさらに揺動して最高位置Dに到達した状態では、ロール紙収容部11が自重によって重力方向に降下しないように、レバー部材15に対して必要な回転トルクが加わるようになっている。すなわち、最高位置Dにおいて、ロール紙収容部11の重量が重心Gに加わったときに発生する第1軸J1回りの降下方向への回転トルクよりも大きな上昇方向への回転トルクが、ガススプリング18の付勢力を変える(増加する)ことなく第1軸J1に確実に加わるように工夫されている。具体的には、軸体16の中心と第2軸J2の中心との間の距離が、最高位置Dにおいて、この最高位置Dよりも低位置(例えば水平位置Bあるいは最低位置A)側における距離よりも長くなるように、軸体16が移動するように構成されている。この構成について、軸体16の移動動作と合わせて図4を用いて詳しく説明する。
【0047】
図4は、レバー部材15と軸体16、および回転伝達部40について、その構成を示したもので、図3の一部を拡大した図である。なお、図4では、ロール紙収容装置100aのうち、軸体16の移動動作の説明に必要でない構成物については図示を省略している。
【0048】
図示するように、回転伝達部40は、前述したように第1軸J1を中心としてロール紙収容部11と一体で回動する第1歯車としての平歯車41と、第2軸J2を中心にレバー部材15と一体で回動する第2歯車としての平歯車42とを備えている。そして、平歯車41と平歯車42との間に第3歯車としての2つの平歯車43,44が備えられ、これらが互いに噛み合って回転することによって、平歯車41の回動と平歯車42の回動とが連動するようになっている。これによって、第1軸J1を中心としたロール紙収容部11の揺動と第2軸J2を中心にしたレバー部材15の揺動とが連動する。
【0049】
従って、平歯車42の第2軸J2回りの回転トルクM2は、平歯車43と平歯車44によって順次回転トルクM3,M4として中継伝達され、平歯車41に対して第1軸J1回りに回転トルクM1を発生させる。逆に、平歯車41によって発生する第1軸J1回りの回転トルクM1は、平歯車44と平歯車43によって順次回転トルクM4,M3として中継伝達され、平歯車42に対して第2軸J2回りに回転トルクM2を発生させる。
【0050】
ここで、本実施形態では、歯車列は全て同一の歯車で構成されているものとする。従って、第1軸J1回りの回転トルクM1(以降、単に「回転トルクM1」)と、第2軸回りの回転トルクM2(以降、単に「回転トルクM2」)とは一致するようになっている。なお、少なくとも平歯車41と平歯車42とが同一歯車で構成されているようにすれば、平歯車43と平歯車44について歯数(ピッチ径)が異なっていても回転トルクM1と回転トルクM2とは同じトルク値となる。
【0051】
また、本実施形態では、回転伝達部40は平歯車41と平歯車42との間に、2つ(偶数個)の歯車を介在させている。この結果、ロール紙収容部11を最低位置Aから最高位置Dに揺動するときの平歯車41の回転方向と、このとき揺動するレバー部材15の揺動に伴って回転する平歯車42の回転方向とは互いに反対方向になっている。すなわち、図4においては、平歯車41の回転方向は反時計方向であり、平歯車42の回転方向は時計方向である。従って、レバー部材15は、第2軸J2に対してロール紙収容部11と反対側に配置される。もとより、平歯車41と平歯車42との間の回転伝達を、奇数個の平歯車を介在させて行っても差し支えない。この場合は、レバー部材15は、第2軸J2に対してロール紙収容部11と同じ側に配置される。
【0052】
さて、図4に示したように、レバー部材15には前述した開口孔15aが設けられている。この開口孔15aは、第2軸J2との間の距離が異なる2つの位置を中心に各々開口した2つの円形孔Ra,Rdと、さらにこれら2つの円形孔Ra,Rdの外径寸法と同じ開口幅を有する円弧状のスリットRsで2つの円形孔Ra,Rd間を繋げた略そらまめ形の開口形状となっている。そして、図中実線で示すように、ロール紙収容部11が最低位置Aにあるとき、レバー部材15を反重力方向に付勢する軸体16は、開口孔15aと係合しつつ第2軸J2との間の距離が近い方の円形孔Raの部分に位置するようになっている。
【0053】
この軸体16は、図中二点鎖線で示すように、ロール紙収容部11が水平位置Bにあるときも、最低位置Aのときと同様に、開口孔15aと係合しつつ第2軸J2との間の距離が近い方の円形孔Raの部分に継続して位置するようになっている。
【0054】
そして、図中一点鎖線で示すように、ロール紙収容部11が水平位置Bから最高位置Dにいたる間の位置Cにおいて、開口孔15aの上側の円弧形状部Rcの円形孔Raと繋がった円弧形状部分における接線Lの方向が略水平となる。この位置Cから、軸体16は、ガススプリング18の付勢力によって、力学的にスリットRsにおける上側の円弧形状部Rcの接線が水平となる位置において当接するように開口孔15a内を移動する。このとき、本実施形態では、円弧形状部Rcは、レバー部材15の上昇とともに、軸体16が第2軸J2との間の距離が長くなるように移動するべく形成されている。この結果、ガススプリング18の付勢力によってレバー部材15を上側に付勢する軸体16は、係合する開口孔15aの上側の円弧形状部Rcに沿って、第2軸J2との間の距離が近い方の円形孔Raの位置から遠い方の円形孔Rdの位置に向かって移動する。そして、ロール紙収容部11が最高位置Dに到達したとき、図中破線で示すように、開口孔15aと係合しつつレバー部材15を上側に付勢する軸体16は、最低位置Aのときと反対に、第2軸J2との間の距離が長い方の円形孔Rdに位置するようになっている。従って、開口孔15aは、特にその上側の円弧形状部Rcと、円形孔Ra、Rdとが、軸体16の移動を案内する案内部SGとして機能する。また、位置Cは軸体16の「移動開始位置C」となる。
【0055】
このように、ロール紙収容部11が揺動して最高位置Dに到るとき、レバー部材15において、ガススプリング18の付勢力の作用点となる軸体16は、レバー部材15に設けられた開口孔15aを案内部SGとして開口孔15a内を移動する。そして、移動後の軸体16の位置は、重力方向で低位置側つまり最低位置Aにおける位置よりも第2軸J2から離れた位置になる。従って、図4に示したように、最高位置Dにおいて、軸体16が最低位置Aにおける位置のまま移動しない場合は、重力方向と直交する方向における第2軸J2と軸体16との離間距離はL1である。これに対して、最高位置Dにおいて、軸体16が上述するように開口孔15aを移動した場合、重力方向と直交する方向における第2軸J2と軸体16との離間距離はL1よりも大きい値を有するL2となる。従って、ガススプリング18の付勢力をFgとすると、最高位置Dにおいてロール紙収容部11の重力方向の降下に抗する回転トルクM1は、回転トルクM2と同じ値、つまりFg×L1よりも大きいFg×L2となるのである。
【0056】
次に、このように構成された本実施形態のロール紙収容装置100aの作用について、ロール紙収容部11を最高位置Dから最低位置Aまで押し下げる操作力を用いて説明する。図5は、ロール紙収容部11が揺動する最高位置Dから最低位置Aまでの間において、ロール紙収容部11を押し下げる操作力を示したグラスである。そして、図5において実線で示すグラフは、軸体16が開口孔15a内を移動しない場合の操作力を示し、破線で示すグラフは、軸体16が開口孔15a内を移動する場合の操作力を示している。また、「ロール紙有」のグラフは未使用の新品のロール紙P1が収容されたときの操作力を示し、「ロール紙無」のグラフは収容されたロール紙P1が全て消費されたときの操作力を示している。なお、本実施形態では、新品のロール紙P1が収容されたロール紙収容部11の重量を約7.5Kgf、第1軸J1とロール紙収容部11の重心Gとの間の距離を260mm、押し下げる際に操作者が操作する図示しない取手の位置と第1軸J1との間の距離を460mmとしている。
【0057】
図示するように、ロール紙の有無にかかわらず、操作力は水平位置Bで最大となる。これは、上述したように、ガススプリング18の付勢力による回転トルクM2が水平位置Bで最大となることによる。もとより、水平位置Bでは、ロール紙収容部11の自重による第1軸J1回りの回転トルクも最大となるので、ガススプリング18の付勢力による回転トルクM2は、その最大値が抑圧される。この結果、操作力の最大値が抑制されることになる。そして、本実施形態では、この操作力の最大値が「ロール紙無」のときに、所定の操作力(ここでは5Kgf)を超えないようにガススプリング18の付勢力を設定することで、操作者の操作性を確保する。すると、操作力は「ロール紙有」のとき、軸体16が移動しない場合では、図中実線で示したグラフのように、最高位置Dにおいて回転トルクM1はFg×L1となり、操作力がマイナスになってしまうことがある。すなわち、ロール紙収容部11は自重で降下する状態となる。
【0058】
そこで、前述したように軸体16を移動させて回転トルクM2を増加させることによって、操作力は、図中破線で示したグラフのように軸体16の移動開始位置Cから増大することになる。そして、最高位置Dでは、前述するように回転トルクM1のトルク値がFg×L2と大きくなるので操作力はプラスとなるのである。この結果、最高位置Dにおいてロール紙収容部11は降下することなく保持される。もとより、このときの保持力が大きくなると、保持力の反力となる操作力も大きくなるので、ロール紙収容部11が最高位置Dにおいて降下しない範囲で回転トルクM1、つまり回転トルクM2の増加すべきトルク値を最小にすることが好ましい。なお、本実施形態の回転伝達部40では、各平歯車41〜44間において実際には歯車の噛み合いや回転軸の摩擦などによって、回転トルクM1と回転トルクM2の間に差異が生ずる場合がある。このような場合は、この差異を考慮して回転トルクM2の増加すべきトルク値を設定することが好ましい。
【0059】
なお、ガススプリング18は、軸体16の移動に伴ってその付勢方向が変化するが、本実施形態では、その変化は小さいとして考慮せず、付勢方向は常に反重力方向であるとして説明している。もとより、実際には、ガススプリング18の付勢方向は、軸体16の移動に伴って変化するので、この変化する方向を考慮して軸体16の移動量すなわち案内部SGの形状を形成することによって、回転トルクM2について増加したトルク値になるようにすることが好ましい。
【0060】
上記説明した第1実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)最高位置Dにおいてガススプリング18によるレバー部材15の回転トルクが大きくなるので、レバー部材15と連動して揺動するロール紙収容部11に作用する反重力方向の回転トルクも大きくなる。従って、未使用の新品のロール紙P1など最大重量を有するロール紙が収容された場合においても、ロール紙収容部11が最高位置Dにある状態で、重力方向に揺動(降下)することがないように保持することができる。また、ガススプリング18がロール紙収容部11を直接付勢しないようにすることができるので、レバー部材15や軸体16やガススプリング18などロール紙収容部11を揺動(上昇)させる機構部分が露出しないように筐体13で覆うことができるので外観上好ましい。
【0061】
(2)ロール紙収容部11の重量による第1軸J1まわりの最大回転トルクとガススプリング18の付勢力による第2軸J2まわりの最大回転トルクとが相殺される。この結果、例えば、ロール紙P1が収容されていないロール紙収容部11を押し下げるとき、押し下げ力の調節を容易に行うことができる。
【0062】
(3)第1軸J1を中心としたロール紙収容部11の揺動と第2軸J2を中心としたレバー部材15の揺動とを、平歯車41〜44によって確実に連動させることができる。また、第2軸J2の設置位置を第1軸J1から遠ざけることができるので、ロール紙収容装置100aにおいてレバー部材15を設置できる範囲が広がる。この結果、レバー部材15と係合する軸体16を付勢するガススプリング18の配置において自由度が増すことから、例えば、ガススプリング18をロール紙収容部11から離すように設置することができる。したがって、レバー部材15や軸体16やガススプリング18などロール紙収容部11を揺動(上昇)させる機構部分が露出しないように筐体13で容易に覆うことができるので外観上好ましい。
【0063】
(4)回転伝達部40は平歯車41と平歯車42との間に、2つ(偶数)の平歯車を介在させている。この結果、平歯車41と平歯車42の回転方向とは互いに反対方向になっている。従って、ロール紙収容部11が最低位置Aから最高位置Dに揺動するときの第1軸J1を中心とする揺動方向と、ガススプリング18によって揺動するレバー部材15の第2軸J2を中心とする揺動方向とは逆方向になる。この結果、第2軸J2に対してロール紙収容部11と反対側にレバー部材15を配置することができるので、ガススプリング18やレバー部材15をロール紙収容部11から離すように設置することができる。したがって、レバー部材15や軸体16やガススプリング18などロール紙収容部11を揺動(上昇)させる機構部分が露出しないように筐体13で容易に覆うことができるので外観上好ましい。
【0064】
(5)本実施形態のロール紙収容装置100aは、未使用のロール紙など最大重量を有するロール紙P1が収容された場合においても、ロール紙収容部11が最高位置Dにある状態で重力方向に揺動(降下)することがないように保持することができる。従って、本実施形態のロール紙収容装置100aを備えるプリンター10によれば、例えば筐体13内に収容されたロール紙P2の交換作業を容易に行うことができる液体噴射装置を実現することができる。また、レバー部材15や軸体16やガススプリング18などロール紙収容部11を揺動(上昇)させる機構部分が露出しないように筐体13で覆われた液体噴射装置を実現することができるので外観上好ましい。
【0065】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態は、第1実施形態における回転伝達部40として、平歯車に替えてチェーンを用いた構成を有するロール紙収容装置である。また、第1実施形態にて説明したレバー部材15における軸体16の移動を、別部材によって行うように構成されたロール紙収容装置である。
【0066】
図6は、第2実施形態のロール紙収容装置100bの構成を示した側面図であり、上記第1実施形態で説明した図3に相当する図である。なお、第1実施形態と同じ構成要素については同符号を付し、それらの説明は省略する。またプリンター10に係る構成要素についても図示を省略している。また、第1実施形態と同様に、以降の説明において、重力方向を「下」あるいは「下側」、反重力方向を「上」あるいは「上側」と呼ぶ場合もある。
【0067】
図6に示すように、本実施形態のロール紙収容装置100bは、2つの支柱部14において上側の位置に設けられた第1軸J1を中心にして揺動するように、ロール紙収容部11が第1実施形態と同様に取り付けられている。そして、支柱部14のそれぞれには
第1軸J1から離間した位置に第2軸J2が回動可能に設けられている。
【0068】
本実施形態では、第1軸J1には、この第1軸J1を中心としてロール紙収容部11と一体で回動する第1歯車としてのスプロケット45が取り付けられている。また第2軸J2には、この第2軸J2を中心として回動する第2歯車としてのスプロケット46と、スプロケット45とスプロケット46との間に張架されたチェーン47とからなる回転伝達部40が形成されている。この回転伝達部40は、ロール紙収容部11の揺動に伴って回動する第1軸J1の回転を伝達して、第2軸J2が第1軸J1と連動して回動するように構成されている。あるいは、逆に第2軸J2の回動を第1軸に伝達することによって、ロール紙収容部11が第1軸を中心として第2軸J2の回動と連動しながら揺動するように構成されている。なお、本実施形態では、スプロケット45とスプロケット46とは同一の歯数とピッチ径の歯車で構成されている。従って、第1軸J1回りの回転角と第2軸回りの回転角とは一致するとともに、第1軸J1回りの回転トルクT1(以降、単に「回転トルクT1」)と第2軸J2回りの回転トルクT2(以降、単に「回転トルクT2」)とは同じトルク値になる。
【0069】
そして、第1実施形態と同様に、第2軸J2を中心として、この第2軸J2の回動と一体となって揺動するように、板状のレバー部材15が第2軸J2(またはスプロケット46)に固定されて設けられている。このレバー部材15には開口孔15bが設けられている。そして、開口孔15b内を、第2軸J2の軸方向と交差する方向、つまりレバー部材15の板面方向に沿って、開口孔15bと係合しながらこの開口孔15b内を移動可能な軸体16が備えられている。
【0070】
さらに、本実施形態のロール紙収容装置100bでは、レバー部材15と平面的に重なるように、ガイド部材17が支柱部14に固定されて配置されている。このガイド部材17には軸体16の一端側の円柱側面部が摺接するガイド部17aが形成されている。本実施形態ではガイド部17aと軸体16とがカム機構を構成する。すなわち、ガイド部17aは開口が略S字形状を有する開口孔であり、軸体16の側面部分が、この開口孔であるガイド部17aに接しながら摺動することによって、レバー部材15に設けられた開口孔15b内における軸体16の移動位置が定まるようになっている。このように、ガイド部材17は、軸体16を、開口孔15bと係合しつつ開口孔15b内を移動させる部材として機能する。
【0071】
この軸体16は、第1実施形態と同様、付勢手段としてのガススプリング18の一端(上端)18aに固定されている。またガススプリング18の他端(下端)18bは、支柱部14に回動可能に固定されている。従って、ガススプリング18は、付勢力によって軸体16を上側に付勢するように構成されている。この結果、開口孔15bと係合する軸体16は、開口孔15bとの当接部を作用点として、第2軸J2を中心にしてレバー部材15を揺動させる付勢力をレバー部材15に加える。
【0072】
このように構成された第2実施形態のロール紙収容装置100bでは、ガススプリング18の付勢力によってレバー部材15が揺動すると、この揺動に応じてロール紙収容部11が図6に示した最低位置Aの状態から最高位置D(図3参照)まで揺動するように構成されている。このとき、本実施形態では、第1実施形態と異なり、軸体16の開口孔15b内での移動位置つまりガススプリング18の付勢力の作用点が、ガイド部材17に設けられたガイド部17aによって定められる。この構成について、軸体16の移動動作と合わせて図7を用いて詳しく説明する。
【0073】
図7は、レバー部材15と軸体16とガイド部材17、および回転伝達部40について、その構成を示したもので、図6の一部を拡大した図である。なお、図7では、ロール紙収容装置100bのうち、軸体16の移動動作の説明に必要でない構成物については図示を省略している。
【0074】
前述するように、ガススプリング18の付勢力によってレバー部材15が第1軸J1を中心として揺動すると、ロール紙収容部11は、第1軸J1を中心として、第1実施形態と同様に揺動する。このとき、図7に示すように、レバー部材15が実線で示された位置にあるときがロール紙収容部11の最低位置A、二点鎖線で示された位置にあるときがロール紙収容部11の水平位置B、破線で示された位置にあるときがロール紙収容部11の最高位置Dとなっている。
【0075】
レバー部材15に設けられた開口孔15bは、図示するように、第2軸J2との間の距離が異なる2つの位置をそれぞれ中心に開口した円形孔と、さらにこの2つの円形孔間を円形孔の外径寸法と同じ開口幅を有する直線状のスリットで繋げた長円形状を有している。なお、本実施形態では、この長円形状の中心線つまり直線状のスリット部分の中心線は第2軸J2の中心を通るように、開口孔15bが形成されている。また、レバー部材15と平面的に重なるように配置されたガイド部材17には、S字形の下四分の三の形状に凡そ相当する略S字形状の開口形状を呈するガイド部17aが形成されている。
【0076】
このような形状を有する開口孔15bとガイド部17aとによって、開口孔15bと係合しつつレバー部材15を反重力方向に付勢する軸体16が、開口孔15bにおいて次のように移動する。すなわち、まず、図中実線で示すようにレバー部材15が最低位置Aに対応する位置にあるとき、軸体16は開口孔15bの長円形状のうち第2軸J2に最も近い位置から少し離れたところに位置する。次に、レバー部材15が最低位置Aから水平位置Bに対応する位置に揺動すると、軸体16は、開口孔15bの長円形状において第2軸J2方向に漸次近づくように移動して、図中二点鎖線で示すように、水平位置Bでは長円形状において第2軸J2に最も近い位置になる。そして、レバー部材15が水平位置Bから最高位置Dに対応する位置まで揺動すると、軸体16は、開口孔15bの長円形状において第2軸J2から漸次離れるように移動し、図中破線で示すように最高位置Dでは長円形状において第2軸J2から最も離れた位置になる。つまり、第2軸J2の中心と軸体16との中心との間の距離は、重力方向において高位置である最高位置Dにおいて、高位置よりも重力方向で低位置側である水平位置Bよりも長くなるように構成されている。なお、これに加えて本実施形態では、第2軸J2の中心と軸体16との中心との間の距離は、最高位置Dにおいて、最低位置Aよりも長くなるように構成されている。
【0077】
このようにガススプリング18の付勢力の作用点となる軸体16は、ガイド部17aに接して摺動することによって、開口孔15bにおいて、このような位置となるように構成されている。なお、このとき、ガイド部17aにおいて摺接する軸体16は、上記第1実施形態と同様に、レバー部材15に設けられた開口孔15bを案内部SGとして、その上側形状部分に当接しつつ開口孔15b内を移動する。
【0078】
従って、本実施形態では、図7に示したように、最高位置Dにおいて、軸体16が水平位置Bにおける位置のまま移動しない場合、第2軸J2と軸体16との重力方向と直交する方向における離間距離はL1である。これに対して、重力方向における低位置側から最高位置Dへの揺動において、軸体16が上述するように開口孔15b内を移動した場合、第2軸J2と軸体16との重力方向と直交する方向における離間距離は、L1よりも大きい値を有するL2となる。従って、ガススプリング18の付勢力をFgとすると、最高位置Dにおける回転トルクT2はFg×L1よりも大きいFg×L2とすることができる。この結果、最高位置Dにおいてロール紙収容部11の重力方向の降下に抗する回転トルクT1は、同様に、Fg×L1よりも大きいFg×L2とすることができる。
【0079】
さらに、本実施形態では、上述したように、レバー部材15が最低位置Aに対応する位置にあるとき、軸体16は開口孔15bの長円形状をなす孔縁のうち第2軸J2に最も近い位置(つまり水平位置Bのときの位置)から、第2軸J2に対して少し離れた位置に移動させる。こうすると、図7に示したように、仮に最低位置Aにおいて、軸体16が水平位置Bにおける位置のままで移動しないとすると、第2軸J2と軸体16との重力方向と直交する方向における離間距離はK1である。これに対して、最低位置Aにおいて、軸体16が上述するように開口孔15a内を移動した場合、第2軸J2と軸体16との重力方向と直交する方向における離間距離は、K1よりも大きい値を有するK2となる。従って、ガススプリング18の付勢力をFgとすると、最低位置Aにおいてロール紙収容部11の重力方向に抗する第1軸J1回りの回転トルクT1は、Fg×K1よりも大きいFg×K2とすることができる。
【0080】
次に、このように構成された本実施形態のロール紙収容装置100bの作用について、ロール紙収容部11を最高位置Dから最低位置Aまで押し下げる操作力を用いて説明する。図8は、第1実施形態の図5と同様なグラフである。すなわち、ロール紙収容部11が揺動(降下)する最高位置Dから最低位置Aまでの間において、ロール紙収容部11を押し下げる操作力を示したグラフである。そして、図8において実線で示すグラフは、軸体16が水平位置Bの位置のまま移動しない場合の操作力を示し、破線で示すグラフは、軸体16がガイド部17aによって移動する場合の操作力を示している。また、「ロール紙有」のグラフは新品のロール紙P1が収容されたときの操作力を示し、「ロール紙無」のグラフは収容されたロール紙P1が全て消費されたときの操作力を示している。なお、本実施形態では、第1実施形態と同様に、新品のロール紙P1が収容されたロール紙収容部11の重量を約7.5Kgf、第1軸J1とロール紙収容部11の重心Gとの間の距離を260mm、押し下げる際に操作者が操作する図示しない取手の位置と第1軸J1との間の距離を460mmとしている。
【0081】
図示するように、第1実施形態と同様に、ロール紙の有無にかかわらず、操作力は水平位置Bで最大となる。また、この操作力の最大値が「ロール紙無」のときに、所定の操作力(ここでも5Kgf)を超えないようにガススプリング18の付勢力を設定することで、操作者の操作性を確保する。従って、本実施形態では、水平位置Bにおいて軸体16と第2軸J2との間が最も近くなるようにすることで、ガススプリング18による第2軸J2回りの最大回転トルクを低く抑えている。この結果、図5と同様、「ロール紙有」のとき、実線で示したグラフのように、軸体16を移動しない場合は、最高位置Dにおいて回転トルクT1がFg×L1となり、操作力がマイナスになってしまう。すなわち、ロール紙収容部11は自重で降下する状態となる。
【0082】
そこで、本実施形態では、上記第1実施形態と異なり、ロール紙収容部11の揺動に際して、上述したようにガイド部材17を用いることによって、水平位置Bを過ぎた任意の位置から軸体16をレバー部材15に設けた開口孔15b内で移動させる。従って、増加する回転トルクT2と抗する操作力は、図中破線で示したグラフのように水平位置B以降の任意な位置から増加させることができる。そして、最高位置Dでは回転トルクT2つまり回転トルクT1がFg×L2となり、操作力がプラスとなる。この結果、最高位置Dにおいてロール紙収容部11は降下することなく保持されるのである。もとより、このときの保持力が大きくなると、保持力の反力となる操作力も大きくなるので、ロール紙収容部11が最高位置Dにおいて自重で降下しない範囲で増加すべき回転トルク値を最小にすることが好ましい。
【0083】
さらに、本実施形態では、ガイド部材17を用いることによって、最低位置Aにロール紙収容部11を押し下げる際、上記第1実施形態と異なり、水平位置Bを過ぎた任意の位置から、軸体16をレバー部材15に設けた開口孔15b内において移動させる。従って、回転トルクT2すなわち回転トルクT1は、図中破線で示したグラフのように水平位置B以降の任意な位置から増加させることができる。そして、最低位置Aでは、回転トルクT1がFg×K2となり、操作力が増加して水平位置Bにおける操作力の値に近づく。この結果、最高位置Dから水平位置Bを通過して最低位置Aに到る降下過程において、ロール紙収容部11を押し下げる操作力の変化を少なくすることができる。なお、本実施形態の回転伝達部40では、各スプロケット45,46において実際にはチェーン47との噛み合いや回転軸の摩擦などによって、回転トルクT1と回転トルクとの間に差異が生ずる場合がある。このような場合は、この差異を考慮して増加すべき回転トルク値を設定することが好ましい。
【0084】
また、上記第1実施形態と同様に、ガススプリング18は、軸体16の移動に伴ってその付勢方向が変化するが、本実施形態でも、その変化は小さいとして考慮せず、付勢方向は常に反重力方向であるとして説明している。もとより、実際には、ガススプリング18の付勢方向は、軸体16の移動に伴って変化するので、この変化する方向を考慮して軸体16の移動量すなわちガイド部17aの形状を形成することによって、回転トルクM2について増加したトルク値になるようにすることが好ましい。
【0085】
上記説明した第2実施形態によれば、上記第1実施形態における(1)、(2)、(5)の各効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
(6)ロール紙収容部11を揺動(上昇)させる場合において、軸体16の中心と第2軸J2の中心との間の距離を任意に変化させることができるので、ロール紙収容部11を上昇させる第1軸J1まわりの回転トルクを任意に変化させることができる。従って、ガススプリング18の付勢力に応じてガイド部17aの略S字形状を形成して回転トルクを調節することによって、この回転トルクに抗してロール紙収容部11を最高位置Dから最低位置Aに押し下げる操作力が大きくならないように調節することができる。また、最高位置Dから水平位置Bを通過して最低位置Aに到るロール紙収容部11の降下過程において、ロール紙収容部11を押し下げる操作力の変化を少なくすることができるので、操作者はロール紙収容部11を円滑に押し下げることができる。
【0086】
(7)ロール紙収容部11の降下過程において、水平位置Bにおいて軸体16と第2軸J2との間が最も近くなるようにするので、ロール紙収容部11を上昇させる第2軸J2まわりの回転トルクの最大値を低く抑えることができる。従って、ロール紙収容部11を押し下げるとき、押し下げ力の最大値を小さくすることができるので、ロール紙収容部11が最も軽い状態のときに生じる押し下げ力の最大値を操作者の操作性に合わせて抑制することができる。
【0087】
(8)第1軸J1を中心としたロール紙収容部11の揺動と第2軸J2を中心にしたレバー部材15の揺動とを、スプロケット45,46とチェーン47によって確実に連動させることができる。また、第2軸J2の位置を第1軸J1から遠ざけることができるので、ロール紙収容装置100bにおいてレバー部材15の設置できる範囲が広がる。従って、レバー部材15や軸体16やガススプリング18などロール紙収容部11を揺動(上昇)させる機構部分が露出しないように筐体13で容易に覆うことができるので外観上好ましい。
【0088】
なお、上記実施形態は以下のような別の実施形態に変更してもよい。
・上記第2実施形態において、ガススプリング18は、例えば、重力方向と交差する方向に付勢力が作用するように配置してもよい。この変形例について図9を用いて説明する。なお、図9は、第2実施形態の説明に用いた図6に対応する側面図である。
【0089】
図示するように、本変形例のロール紙収容装置100cは、支柱部14の底部に、スプロケット45とチェーン47によって連動して回転するスプロケット46の回転中心である第2軸J2が設けられている。そして、第2軸J2を中心として、この第2軸J2の回動と一体となって揺動する板状のレバー部材15は、第2軸J2の下側において揺動するように固定されて設けられている。また、レバー部材15と平面的に重なるように配置されるガイド部材17も、軸体16が摺接するガイド部17aの略S字形状が、その長手方向を重力方向と交差する横方向を向くようにして、同じく支柱部14の底部に設けられている。従って、ガススプリング18はその一端18aが軸体16に固定され、他端18bが回動可能に軸支された図示しない固定板を介して、ベース部13aに固定されている。
【0090】
このような構成を有するロール紙収容装置100cによれば、例えば、プリンター10において、ガススプリング18を含むロール紙収容装置を重力方向において組み込むことが困難な場合に有効である。あるいは、重力方向と交差する横方向の長さが、重力方向である縦方向よりも長い筐体13を有する場合、ガススプリング18を筐体13内に収納することが容易になる。また、ガススプリング18の付勢力に対するロッドの自重の影響が少なくなる(特に最高位置Dにおける回転トルクへの影響(付勢力の減少)が抑制される)ことが期待できる。
【0091】
・上記実施形態において、第1軸J1と第2軸J2とを同一軸としてもよい。この変形例について図10を用いて説明する。図10は、本変形例のロール紙収容装置100dを示した図で、上記第1実施形態の説明に用いた図3に対応する側面図である。
【0092】
図示するように、ロール紙収容装置100dは、回転伝達部40(図3参照)を備えることなく、第1軸J1と第2軸J2とが同一な軸として構成されている。すなわち、支柱部14に、ロール紙収容部11の揺動中心となる第1軸J1と、ガススプリング18の付勢力によって揺動するレバー部材15の揺動中心である第2軸J2とが、同一軸として設けられている。このため、上記第1実施形態と異なり、レバー部材15の第2軸J2を中心とする揺動方向と、ロール紙収容部11の第1軸J1の揺動方向とは一致する。もとより、この場合は揺動する角度範囲も同じになる。
【0093】
そこで、本変形例のロール紙収容装置100dでは、図示するように、第2軸J2(第1軸J1)に対してロール紙収容部11と同じ側(図面では右側)に、レバー部材15に形成された開口孔15cを移動する軸体16が位置するように構成されている。なお、本変形例におけるレバー部材15は、上記第1実施形態におけるレバー部材15を裏返した形状を有しているため、その開口孔15cは第1実施形態における開口孔15aと線対称の形状を呈する。また、ガススプリング18は、一端(上端)18aが軸体16に固定されて他端(下端)18bが固定板14bを介して支柱部14に回動可能に固定されている。
【0094】
この結果、ガススプリング18の付勢力が軸体16に加わることによって、軸体16は第2軸J2を中心にしてレバー部材15を反重力方向に揺動させるように作用する。この結果、第2軸J2と同一軸である第1軸J1を中心としてロール紙収容部11が反重力方向に揺動する。そして、揺動中に軸体16が第2軸J2(第1軸J1)から離れるように開口孔15c内を移動することによって、ロール紙収容部11が最高位置Dに位置する状態では、ガススプリング18の付勢力による回転トルクが増加される。
【0095】
従って、本変形例のロール紙収容装置100dによれば、上記第1実施形態と同様、ロール紙収容部11が降下しないように保持できるとともに、第1軸J1と第2軸J2との回動を連動させる機構を必要としないので、ロール紙収容装置が大きくならずに済む。また、ロール紙収容装置の製造負荷も軽減される。
【0096】
・上記第1実施形態における回転伝達部40として、歯車列に替えて第2実施形態における回転伝達部40すなわちスプロケットとチェーンを用いても良い。あるいは、上記第2実施形態における回転伝達部40として、スプロケットとチェーンに替えて第1実施形態における回転伝達部40すなわち歯車列を用いても良い。どちらも、第1軸J1の回転と、第2軸J2の回転とを確実に連動させることができる。
【0097】
・上記実施形態において、付勢手段としてガススプリング18を用いたが、例えばコイルスプリングを採用してもよい。なお、上述した付勢力が得られる付勢手段であれば、特にこれらのスプリングに限るものでない。
【0098】
・上記実施形態において、レバー部材15に形成した開口孔15a,15bは下側つまり重力方向側に部材材料が存在していない開放状態を有する形状であってもよい。上述するように、軸体16は、ガススプリング18の付勢力によって開口孔15a、15bの上側を案内部SGとして移動することから、下側が開放された形状としてもよい。また軸体16がその形状に沿って移動できる形状であれば、開口孔でなく例えば凹部形状であってもよい。
【0099】
・上記実施形態において、ガイド部材17に形成したガイド部17aは、必ずしも開口孔でなくてもよい。例えば凹部としてもよい。要は、ガイド部17aと軸体16とがカム機構を構成し、軸体16が摺接できる形状であればどのような形状でも採用することができる。
【0100】
・上記第1実施形態における回転伝達部40において、少なくとも第1軸J1と一体で回転する平歯車41と、第2軸J2と一体で回転する平歯車42とが、歯数すなわちピッチ径が互いに異なる構成としてもよい。あるいは、上記第2実施形態における回転伝達部40において、第1軸J1と一体で回転するスプロケット45と、第2軸J2と一体で回転するスプロケット46とが、歯数すなわちピッチ径が互いに異なる構成としてもよい。こうすれば、第1軸J1と第2軸J2とが連動して回転するとき、第1軸J1の回転角と第2軸J2の回転角と異ならせることができる。
【0101】
例えば、平歯車41(スプロケット45)よりも平歯車42(スプロケット46)の歯数を多く(ピッチ径を大きく)する。こうすると、第1軸J1の回転角に対して第2軸J2の回転角を小さくすることができるので、例えば、ロール紙収容装置100のスペースにおいてレバー部材15の揺動角をロール紙収容部11の揺動角よりも小さくする必要がある場合有効である。なお、この場合は、レバー部材15の揺動のために要求される第2軸回りの回転トルクが大きくなるので、ガススプリング18について付勢力の大きいものが用いられる。
【0102】
あるいは、平歯車41(スプロケット45)よりも平歯車42(スプロケット46)の歯数を少なく(ピッチ径を小さく)する。こうすると、第1軸J1回りの回転トルクに対して第2軸J2回りの回転トルクを小さくすることができるので、例えば、ガススプリング18の付勢力が小さい値であっても用いることができる。なお、この場合、レバー部材15の揺動角はロール紙収容部11の揺動角よりも大きくなる。
【0103】
・上記実施形態では、液体噴射装置をインクジェット式のプリンター10に具体化したが、インク以外の他の液体を噴射したり吐出したりする液体噴射装置を採用してもよい。微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装置に流用可能である。なお、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクが挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。また、液体噴射装置の具体例としては、上記実施形態で説明したような用紙がロール状に巻かれたロール紙をロール紙収容部に備えた装置としたが、液体の噴射対象物をロール状に巻かれた状態で備えることができる液体噴射装置であれば、本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0104】
10…液体噴射装置としてのプリンター、11…ロール紙収容部(ロール状媒体収容部)、12…トレイ、13…筐体、14…支柱部、15…レバー部材、15a…開口孔、15b…開口孔、15c…開口孔、16…軸体、17…ガイド部材、17a…ガイド部、18…付勢手段としてのガススプリング、18a…一端、20…ロール紙切替部、30…印刷部、36…液体噴射ヘッド、40…回転伝達部、41〜44…平歯車、45…スプロケット、46…スプロケット、47…チェーン、100,100a,100b,100c,100d…ロール紙収容装置、SG…案内部、A…低位置としての最低位置、B…水平位置、C…移動開始位置、D…高位置としての最高位置、J1…1つの軸としての第1軸、J2…第2軸、M1〜M4…回転トルク、P1,P2…ロール紙、T1,T2…回転トルク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺の媒体がロール状に巻き重ねられた状態にあるロール状媒体を収容可能であるとともに、第1軸を中心に揺動するロール状媒体収容部と、
前記ロール状媒体収容部の揺動に連動しながら第2軸を中心に揺動するレバー部材と、
前記レバー部材に形成された案内部と係合しつつ前記第2軸の軸方向と交差する方向に移動可能な軸体と、前記軸体に一端が軸支されるとともに、前記軸体を付勢して前記レバー部材に前記第2軸まわりの回転トルクを与える付勢手段と、
を備え、
前記付勢手段が与える前記第2軸まわりの回転トルクによって、前記ロール状媒体収容部は、重力方向における低位置から、当該低位置よりも高い高位置に到る方向へ、前記第1軸を中心として反重力方向に揺動される力を受けるとともに、前記軸体は、該軸体の中心と前記第2軸の中心との間の距離が、前記高位置において前記低位置よりも離れるように移動することを特徴とするロール状媒体収容装置。
【請求項2】
請求項1に記載のロール状媒体収容装置において、
前記軸体が摺接するガイド部が形成されたガイド部材を備え、
前記ガイド部の形状は、前記ロール状媒体収容部の前記低位置と前記高位置との間の揺動過程において、前記軸体が前記ガイド部を摺動することによって、前記軸体の中心と前記第2軸との中心との間の距離が変化するように形成されていることを特徴とするロール状媒体収容装置。
【請求項3】
請求項2に記載のロール状媒体収容装置において、
前記ガイド部の形状は、前記付勢手段によって発生する前記第2軸まわりの回転トルクが最大トルクを呈する位置において、前記軸体の中心と前記第2軸の中心との間の距離が最も近くなるように形成されていることを特徴とするロール状媒体収容装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載のロール状媒体収容装置において、
前記付勢手段によって生ずる前記第2軸まわりの回転トルクが最大になる位置は、前記ロール状媒体収容部の重量によって生ずる前記第1軸まわりの回転トルクが最大になる位置と同じ位置であることを特徴とするロール状媒体収容装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載のロール状媒体収容装置において、
前記第1軸を中心として前記ロール状媒体収容部と一体で回動する第1歯車と、
前記第2軸を中心として前記レバー部材と一体で回動する第2歯車と、
前記第1歯車と前記第2歯車とに張架されるとともに前記第1歯車および前記第2歯車と噛み合うチェーンと、を備え、
前記第1歯車の回動と前記第2歯車の回動とが前記チェーンによって伝達されて連動することによって、前記第1軸を中心とした前記ロール状媒体収容部の揺動と前記第2軸を中心にした前記レバー部材の揺動とが連動することを特徴とするロール状媒体収容装置。
【請求項6】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載のロール状媒体収容装置において、
前記第1軸を中心として前記ロール状媒体収容部と一体で回動する第1歯車と、
前記第2軸を中心として前記レバー部材と一体で回動する第2歯車と、
を備え、
前記第1歯車と前記第2歯車とが直接または少なくとも一つの第3歯車を介して噛み合って前記第1歯車の回動と前記第2歯車とが連動して回動することによって、前記第1軸を中心とした前記ロール状媒体収容部の揺動と前記第2軸を中心にした前記レバー部材の揺動とが連動することを特徴とするロール状媒体収容装置。
【請求項7】
請求項6に記載のロール状媒体収容装置において、
前記第3歯車を偶数個備えたことを特徴とするロール状媒体収容装置。
【請求項8】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載のロール状媒体収容装置において、
前記第1軸と前記第2軸は同一軸であることを特徴とするロール状媒体収容装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか一項に記載のロール状媒体収容装置と、
前記ロール状媒体収容装置が収容するロール状媒体から巻き解かれることによって供給された前記媒体に液体を噴射して付着させる液体噴射ヘッドと、
を備えたことを特徴とする液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−178103(P2011−178103A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−46290(P2010−46290)
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】