説明

ワイヤの巻き出し・巻き取り機構及びワイヤ絡まり防止方法

【課題】機器の軽量化及び高信頼性化を実現する。
【解決手段】ワイヤ巻き出し開始時には、基底部16に隙間無く巻き付けられていたワイヤ13の最外層の一部がプーリードラム11の回転により後押しされ、波板形状の部材14に押し付けられる。引き続いて、プーリードラム11の回転により、ワイヤ13の最外層は更に後押しされ、波板形状の滑り部材14に押し付けられる。押し付けられたワイヤ13は、波板形状の滑り部材14の表面で滑走を開始し、開口部12からプーリードラム11の外部に絡まりなく送り出される。以後、同様にしてプーリードラム11の基底部16に巻き付けられていたワイヤ13は全て、波板形状の滑り部材14に押し付けられて、その表面を滑走し、開口部12からプーリードラム11の外部に絡まりなく送り出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はワイヤの巻き出し・巻き取り機構及びワイヤ絡まり防止方法に係り、特にプーリードラムを使用したワイヤの巻き出し・巻き取り機構及びワイヤ絡まり防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図5(A)は、ワイヤの巻き出し・巻き取り機構の一例の斜視図、同図(B)は、同図(A)のワイヤの巻き出し・巻き取り機構中のプーリードラム断面図を示す。図5に示すワイヤの巻き出し・巻き取り機構は、ワイヤ1に張力を与え、プーリードラム2からワイヤ1を引き出すための引き込みローラー3、及びこれを駆動させるための変速機4により構成される。また、変速機4とプーリードラム2のプーリードラム軸5の所定位置に設けられた円盤との間にベルト6が張架されており、プーリードラム軸5の回転力がベルト6を介して変速機4に伝達され、プーリードラム軸5と共にプーリードラム2が正方向又は逆方向に回転する。
【0003】
ワイヤ1は巻き出し・巻き取り機構のプーリードラム2に収納され、このプーリードラム2が回転することにより、ワイヤ1の展開及び収納が行われる。ここで、ワイヤ1の巻き出し・巻き取り作動時で、特に巻き出し時にワイヤ1に張力がかかっていない場合、ワイヤ1はプーリードラム2の回転によりプーリードラム2内で送り出され、その結果、プーリードラム2の側方にはみ出し、プーリードラム軸5等への絡まりが発生する場合がある。
【0004】
このため、引き込みローラー3は、ワイヤ1を引き出す方向に回転し、ワイヤ1に張力を与え、ワイヤ1のはみ出し・絡まりを防止する。また、引き込みローラー3は、ベルト6等による動力伝達手段によりプーリードラム軸5の回転に連動して作動する。ワイヤ1の展開速度及び収納速度は、プーリードラム2内でのワイヤ1の巻き取り直径により変化するため、ワイヤ1の巻き取り直径に合わせて引き込みローラー3の回転速度を調整するための、変速機4を有する。
【0005】
また、特許文献1には、ドラム及びその駆動装置を備えたワイヤ巻取装置が開示されている。このワイヤ巻取装置は、ワイヤの繰り出し方向の相対的な傾きの変化を検出して、ドラムユニット及びガイドローラを支持する傾動枠を傾動させることで、ワイヤの繰り出し方向の相対的な傾きを一定に維持する構成である。
【0006】
また、特許文献2には、第1ケーシングの外筒部と第2ケーシングの内筒部との間に形成された空間内にフラットケーブルを反転部で巻回方向を逆向きにして収納すると共に、この空間内に電気的接続に関与しない補強シートを収納してこれをフラットケーブルに重ねて巻回することにより、フラットケーブルが反転部に繰り出される際に、補強シートによってフラットケーブルが反転部に繰り出される途中でたるむことが防止される構造が開示されている。
【0007】
【特許文献1】特開平11−79678号公報
【特許文献2】特開平10−341521号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、図5に示したワイヤの巻き出し・巻き取り機構では、機器の重量が大きくなり、また、作動信頼性が低下してしまうという課題がある。その第1の理由は、プーリードラム2のワイヤ導出部に、ワイヤ1に張力を与えて引っ張り出すための、引き込みローラー3、ベルト6などの多数の付随部品を具備する必要があり、部品点数が増えるからである。
【0009】
第2の理由は、ワイヤ1の巻き取り直径により変化する、ワイヤ1の巻き出し速度及び巻き取り速度と、引き込みローラー3の回転速度を同調させるための変速機4を具備する必要があり、駆動部分の構造が複雑になるからである。
【0010】
また、特許文献1記載のワイヤ巻取装置では、ワイヤの絡まりを防止する機構を備えていない。特許文献2には、補強シートによってフラットケーブルが反転部に繰り出される途中でたるむことが防止される構造が開示されているだけであり、プーリードラムを回転させてワイヤを巻き取ったり、巻き出したりする機構におけるワイヤ絡まり防止機構は開示していない。
【0011】
本発明は以上の点に鑑みなされたもので、機器の軽量化及び高信頼性化を実現するワイヤ絡まり防止機構を備えたワイヤの巻き出し・巻き取り機構及びワイヤ絡まり防止方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するため、本発明のワイヤの巻き出し・巻き取り機構は、回転によりワイヤを巻き出すか、又はワイヤを巻き取るプーリードラムと、プーリードラムの外周側面に離間対向するように設けられた内周面を有し、かつ、一部にワイヤを取り出し又は挿入するための開口部が設けられている大略円環状の滑り部材と、を有し、滑り部材の内周面はワイヤが接触した際にワイヤを滑らせる構造であることを特徴とする。
【0013】
また、本発明のワイヤ絡まり防止方法は、プーリードラムからワイヤを巻き出す時に、プーリードラムの外周側面に離間対向するように設けられた内周面を有し、かつ、一部にワイヤを取り出し又は挿入するための開口部が設けられている大略円環状の滑り部材の内周面にワイヤを滑らせながら押さえ込むことにより、プーリードラム内でのワイヤの後押しによる側方へのはみ出しによるワイヤのプーリードラム軸への絡まりを防止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、部品点数を減らすことができるため、機構を小型・軽量化することができると共に、機構の単純化を実現したため、作動信頼性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
(第1の実施形態)
図1は、本発明になるワイヤの巻き出し・巻き取り機構の第1の実施形態の構成を示す。図1(A)は、本実施形態のワイヤの巻き出し・巻き取り機構10の斜視図、同図(B)は、同図(A)中の滑り部材14の部分拡大図、同図(C)は、プーリードラム11の分解斜視図、同図(D)は、プーリードラム11の断面図を示す。
【0017】
図1(A)〜(D)に示すように、本実施形態のワイヤの巻き出し・巻き取り機構10では、プーリードラム11の開口部12を除いた周囲に、大略円環状で、内側面が波板形状に形成された滑り部材14が固定配置されている。この滑り部材14の内側面に形成された波板形状は、図1(B)に示すように、曲面をつなぎ合わせることにより形成された形状である。
【0018】
プーリードラム11の平面形状の中心に貫通固定されたプーリードラム軸15は、大略円環状の滑り部材14の中心に位置している。また、図1(C)、(D)に示すように、プーリードラム11は、円筒形状の基底部16にワイヤ13が巻き付けられている。基底部16は、プーリードラム軸15及び滑り部材14と同軸で、かつ、プーリードラム軸15より大径で、滑り部材14の内径よりも小なる径である。基底部16は、プーリードラム軸15及びプーリードラム11と一体的に回転する。
【0019】
滑り部材14の内側面とプーリードラム11の外周側面とは図1(D)に示すように接触していないが、その間隔は使用するワイヤ13の断面直径よりも小さい。滑り部材14の波板形状とプーリードラム11との隙間に、ワイヤ13が入り込まないようにするためである。これにより、プーリードラム11は、プーリードラム軸15を回転させることにより、滑り部材14に接触することなくプーリードラム軸15と一体的に回転することができる。
【0020】
次に、本実施形態のワイヤの巻き出し・巻き取り機構10のワイヤ巻き出し時(繰り出し時)の動作について、ワイヤ絡まり発生を防止する過程を時系列に並べた図2のプーリードラム断面図と共に説明する。同図中、図1と同一構成部分には同一符号を付してある。
【0021】
まず、図2(A)に示すように、プーリードラム11の停止状態では、ワイヤ13はプーリードラム11の基底部16に隙間なく巻き付けられている。
【0022】
次に、ワイヤ巻き出し開始時には、図2(B)に示すように、プーリードラム11が、ワイヤ13を送り出す方向(図では反時計方向)に回転を開始する。なお、ここでは、ワイヤ13に巻き出し方向にテンションがかかっていないものとする。この場合、基底部16に隙間無く巻き付けられていたワイヤ13の最外層の一部がプーリードラム11の回転により後押しされ、波板形状の部材14に押し付けられる。
【0023】
続いて、図2(C)に示すように、ワイヤ巻き出し中(その1)において、プーリードラム11の回転により、ワイヤ13の最外層は更に後押しされ、波板形状の滑り部材14に押し付けられる。押し付けられたワイヤ13は、波板形状の滑り部材14の表面で滑走を開始し、開口部12からプーリードラム11の外部に絡まりなく送り出される。
【0024】
続いて、図2(D)に示すワイヤ巻き出し中(その2)から、同図(E)に示すワイヤ巻き出し中(その3)において、プーリードラム11は回転を続け、これによりプーリードラム11の基底部16に巻き付けられていたワイヤ13は全て、波板形状の滑り部材14に押し付けられて、その表面を滑走し、開口部12からプーリードラム11の外部に絡まりなく送り出される。
【0025】
なお、ワイヤ巻き取り時には、ワイヤ13は、プーリードラム11の回転力により引っ張られて基底部16に巻き取られる。このとき、ワイヤ13に巻き取り方向とは反対方向にテンションがかかっていない場合は、ワイヤ13が後押しされて側方へはみ出そうとする。しかし、本実施形態によれば、ワイヤ13は波板形状の滑り部材14に接触することで、滑り部材14の表面を滑走するため、プーリードラム11の内部に絡まりなく導入されて基底部16に巻き付けられる。
【0026】
このように、本実施形態のワイヤの巻き出し・巻き取り機構10では、滑り部材14が、ワイヤ展開時のプーリードラム11内での、ワイヤ13の後押しによる側方へのはみ出しを、ワイヤ13を滑らせながら押さえ込むことにより、プーリードラム軸15等にワイヤ13が絡まる事象を防止することができる。また、大略円環状の滑り部材14は、ワイヤ13と接触する内側面が波板形状であるため、平面形状の滑り部材に比べて、ワイヤ13との接触面積が少ない。従って、滑り部材14は、ワイヤ13が接触した際の摩擦による抵抗力が低いため、プーリードラム11内での接触によるワイヤ13の折れ曲がりや、絡まりを生じさせることなく、ワイヤ13をプーリードラム11の外部へ巻き出すことができる。
【0027】
従って、ワイヤの巻き出し・巻き取り機構10によれば、滑り部材14のみでワイヤ13の絡まり発生を防止することができるため、図5のワイヤの巻き出し・巻き取り機構にあった引き込みローラー3、ベルト6などの、多数の付随部品が不要となる。その結果、ワイヤの巻き出し・巻き取り機構10によれば、部品点数を減らすことができ、巻き出し・巻き取り機構10の小型・軽量化を実現できる。
【0028】
また、本実施形態のワイヤの巻き出し・巻き取り機構10では、ワイヤ13の巻き取り直径によるワイヤ13の巻き出し速度、及び巻き取り速度の変化を考慮する必要がないため、速度調整のための変速機を具備する必要がない。その結果、ワイヤの巻き出し・巻き取り機構10によれば、機構が単純化し、作動信頼性が向上する。
【0029】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図3は、本発明になるワイヤの巻き出し・巻き取り機構の第2の実施形態の構成図を示す。図3(A)は、本実施形態のワイヤの巻き出し・巻き取り機構20の斜視図、同図(B)は、プーリードラムの断面図を示す。図3(A)、(B)中、図1(A)〜(D)と同一構成部分には同一符号を付してある。
【0030】
図3(A)、(B)に示すように、本実施形態のワイヤの巻き出し・巻き取り機構20では、第1の実施形態のワイヤの巻き出し・巻き取り機構10で設けられていた波板形状の滑り部材14の替りに、自由に回転することができる小径ドラム21を滑り部材として使用する構造とした点に特徴がある。
【0031】
図3(A)、(B)に示すように、本実施形態のワイヤの巻き出し・巻き取り機構20では、プーリードラム11の開口部12を除いた外周側面に、滑り部材として自由に回転することができる複数個の小径ドラム21が、隙間なく配置されている。この小径ドラム21は、使用するワイヤ13が接触した際、小径ドラム21が回転することによりワイヤ13を滑らせることができる。小径ドラム21の外周側面とプーリードラム11の外周側面とは接触していないが、その間隔は使用するワイヤ13の断面直径よりも小さい。小径ドラム21とプーリードラム11との隙間に、ワイヤ13が入り込まないようにするためである。これにより、プーリードラム11は、プーリードラム軸15を回転させることにより、小径ドラム21に接触することなくプーリードラム軸15と一体的に回転することができる。
【0032】
本実施形態のワイヤの巻き出し・巻き取り機構20のテンションがかかっていないワイヤ13の巻き出し時は、図2と共に説明したワイヤの巻き出し・巻き取り機構10のワイヤ巻き出し時と同様に、ワイヤ13が小径ドラム21の外周側面に押し付けられて、その表面を滑走し、開口部12からプーリードラム11の外部に絡まりなく送り出される。
【0033】
また、本実施形態のワイヤの巻き出し・巻き取り機構20のテンションがかかっていないワイヤ13の巻き取り時も、第1の実施形態と同様に、ワイヤ13は、プーリードラム11の外部に絡まりなくプーリードラム11の基底部15に巻き取られる。
【0034】
このように、本実施形態のワイヤの巻き出し・巻き取り機構20では、複数個の小径ドラム21は、ワイヤ展開時のプーリードラム11内での、ワイヤ13の後押しによる側方へのはみ出しを、ワイヤ13を滑らせながら押さえ込む。これにより、ワイヤの巻き出し・巻き取り機構20は、プーリードラム軸15等にワイヤ13が絡まる事象を防止することができる。また、小径ドラム21は、ワイヤ13と接触する部分の形状が曲面形状であるため、平面形状の滑り部材に比べて、ワイヤ13との接触面積が少なく、ワイヤ13が接触した際の摩擦による抵抗力が低い。このため、ワイヤの巻き出し・巻き取り機構20は、プーリードラム11内での接触によるワイヤ13の折れ曲がりや、絡まりを生じせしめることなく、ワイヤ13をプーリードラム11の外部へ巻き出すことができる。
【0035】
従って、ワイヤの巻き出し・巻き取り機構20によれば、複数個の小径ドラム21のみでワイヤ13の絡まり発生を防止することができるため、図5のワイヤの巻き出し・巻き取り機構にあった多数の付随部品が不要となる。その結果、ワイヤの巻き出し・巻き取り機構20によれば、部品点数を減らすことができ、巻き出し・巻き取り機構20の小型・軽量化を実現できる。
【0036】
また、本実施形態のワイヤの巻き出し・巻き取り機構20では、ワイヤ13の巻き取り直径によるワイヤ13の巻き出し速度、及び巻き取り速度の変化を考慮する必要がない。このため、ワイヤの巻き出し・巻き取り機構20によれば、速度調整のための変速機を具備する必要がなく、その結果、機構が単純化し、作動信頼性が向上する。
【0037】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。図4は、本発明になるワイヤの巻き出し・巻き取り機構の第3の実施形態の構成図を示す。図4(A)は、本実施形態のワイヤの巻き出し・巻き取り機構30の斜視図、同図(B)は、プーリードラムの分解斜視図、同図(C)は、プーリードラムの断面図を示す。図4(A)〜(C)中、図1(A)〜(D)と同一構成部分には同一符号を付してある。
【0038】
本実施形態のワイヤの巻き出し・巻き取り機構30は、プーリードラム列31と、円環状の滑り部材32とから大略構成されている。プーリードラム列31は、プーリードラム軸15が中心部に共通に貫通固定され、かつ、プーリードラム軸15の軸方向に一定間隔で離間配置された複数のプーリードラムからなる。滑り部材32は、プーリードラム列31の外周側面に、その内側面が離間対向するように配置されている。このワイヤの巻き出し・巻き取り機構30では、滑り部材32の開口部33からプーリードラム列31の各プーリードラムの基底部16にそれぞれ巻き付けられている、全部で複数本のワイヤ13が同時に巻き出され、また、同時に各プーリードラムの基底部16にそれぞれ巻き取られる。
【0039】
プーリードラム列31の外周側面に離間対向する滑り部材32の内側面には、図1(B)に示した波板形状と同じ波板形状が形成されている。円環状の滑り部材32の中心位置は、プーリードラム軸15の中心位置と一致する。
【0040】
滑り部材32とプーリードラム列31の各プーリードラムの側面とは図4(C)に示すように接触していないが、その間隔は使用するワイヤ13の断面直径よりも小さい。滑り部材32とプーリードラムとの隙間に、ワイヤ13が入り込まないようにするためである。これにより、プーリードラム列31を構成する複数のプーリードラムは、プーリードラム軸15を回転させることにより、滑り部材32に接触することなくプーリードラム軸15と一体的に同時に回転することができる。
【0041】
本実施形態のワイヤの巻き出し・巻き取り機構30のテンションがかかっていない複数本のワイヤ13の巻き出し時は、図2と共に説明したワイヤの巻き出し・巻き取り機構10のワイヤ巻き出し時と同様に、複数本のワイヤ13のそれぞれが滑り部材32の内側面に形成された波板形状に押し付けられて、その表面を滑走し、開口部33からプーリードラム列31の外部に絡まりなく、同時に送り出される。
【0042】
また、本実施形態のワイヤの巻き出し・巻き取り機構30のテンションがかかっていない複数本のワイヤ13の巻き取り時も、プーリードラム列31の外部に絡まりなくプーリードラム列31を構成する各プーリードラムの基底部15に同時に巻き取ることができる。
【0043】
このように、本実施形態のワイヤの巻き出し・巻き取り機構30では、プーリードラム列31の周囲に設置された内側面が波板形状の滑り部材32のみで、複数本のワイヤ13の絡まり発生を防止することができるため、図5のワイヤの巻き出し・巻き取り機構にあった引き込みローラー3、ベルト6などの、多数の付随部品が不要となり、その結果、部品点数を減らすことができ、巻き出し・巻き取り機構30の小型・軽量化を実現できる。
【0044】
また、本実施形態のワイヤの巻き出し・巻き取り機構30では、複数本のワイヤ13の巻き取り直径によるワイヤ13の巻き出し速度、及び巻き取り速度の変化を考慮する必要がないため、速度調整のための変速機を具備する必要がなく、その結果、機構が単純化し、作動信頼性が向上する。
【0045】
なお、本発明は以上の実施形態に限定されるものではなく、例えば、図4の滑り部材32の替りに図3に示した小径ドラム21と同様の小径ドラムを配置する構成でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明のワイヤの巻き出し・巻き取り機構の第1の実施形態の構成図である。
【図2】本発明のワイヤの巻き出し・巻き取り機構の第1の実施形態の作動説明図である。
【図3】本発明のワイヤの巻き出し・巻き取り機構の第2の実施形態の構成図である。
【図4】本発明のワイヤの巻き出し・巻き取り機構の第3の実施形態の構成図である。
【図5】ワイヤ絡まり防止機構を有するワイヤの巻き出し・巻き取り機構の一例を示す構成図である。
【符号の説明】
【0047】
10、20、30 ワイヤの巻き出し・巻き取り機構
11 プーリードラム
12、33 開口部
13 ワイヤ
14、32 滑り部材
15 プーリードラム軸
16 基底部
21 小径ドラム
31 プーリードラム列

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転によりワイヤを巻き出すか、又は前記ワイヤを巻き取るプーリードラムと、
前記プーリードラムの外周側面に離間対向するように設けられた内周面を有し、かつ、一部に前記ワイヤを取り出し又は挿入するための開口部が設けられている大略円環状の滑り部材と、
を有し、
前記滑り部材の内周面は前記ワイヤが接触した際に前記ワイヤを滑らせる構造であることを特徴とするワイヤの巻き出し・巻き取り機構。
【請求項2】
前記プーリードラムは、複数個、軸方向に離間配置されてプーリードラム列を構成していることを特徴とする請求項1記載のワイヤの巻き出し・巻き取り機構。
【請求項3】
前記滑り部材の内周面は、波型形状に形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のワイヤの巻き出し・巻き取り機構。
【請求項4】
前記外周側面と前記滑り部材の内周面との間隔は、前記ワイヤの直径よりも小なる値に設定されていることを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一項記載のワイヤの巻き出し・巻き取り機構。
【請求項5】
一部にワイヤを取り出し又は挿入するための開口部が設けられており、回転により前記ワイヤを巻き出すか、又は前記ワイヤを巻き取る大略円筒状のプーリードラムと、
前記開口部を除いた前記プーリードラムの外周側面に離間対向する位置に沿って円周状に配置された、回転自在で前記プーリードラムよりも小径の複数個の小径ドラムと
を有することを特徴とするワイヤの巻き出し・巻き取り機構。
【請求項6】
前記プーリードラムは、複数個、軸方向に離間配置されてプーリードラム列を構成していることを特徴とする請求項5記載のワイヤの巻き出し・巻き取り機構。
【請求項7】
前記外周側面と前記小径ドラムの外周側面との間隔は、前記ワイヤの直径よりも小なる値に設定されていることを特徴とする請求項5又は6記載のワイヤの巻き出し・巻き取り機構。
【請求項8】
プーリードラムからワイヤを巻き出す時に、前記プーリードラムの外周側面に離間対向するように設けられた内周面を有し、かつ、一部に前記ワイヤを取り出し又は挿入するための開口部が設けられている大略円環状の滑り部材の前記内周面に前記ワイヤを滑らせながら押さえ込むことにより、前記プーリードラム内での前記ワイヤの後押しによる側方へのはみ出しによる前記ワイヤのプーリードラム軸への絡まりを防止することを特徴とするワイヤ絡まり防止方法。
【請求項9】
前記プーリードラムは、複数個、軸方向に離間配置されてプーリードラム列を構成していることを特徴とする請求項8記載のワイヤ絡まり防止方法。
【請求項10】
前記滑り部材の内周面は、波型形状に形成されていることを特徴とする請求項8又は9記載のワイヤ絡まり防止方法。
【請求項11】
前記外周側面と前記滑り部材の内周面との間隔が、前記ワイヤの直径よりも小なる値に設定されていることを特徴とする請求項8乃至10のうちいずれか一項記載のワイヤ絡まり防止方法。
【請求項12】
プーリードラムの開口部からワイヤを巻き出す時に、前記開口部を除いた前記プーリードラムの外周側面に離間対向する位置に沿って円周状に配置された、回転自在で前記プーリードラムよりも小径の複数個の小径ドラムの外周側面に前記ワイヤを滑らせながら押さえ込むことにより、前記プーリードラム内での前記ワイヤの後押しによる側方へのはみ出しによる前記ワイヤのプーリードラム軸への絡まりを防止することを特徴とするワイヤ絡まり防止方法。
【請求項13】
前記プーリードラムは、複数個、軸方向に離間配置されてプーリードラム列を構成していることを特徴とする請求項12記載のワイヤ絡まり防止方法。
【請求項14】
前記外周側面と前記小径ドラムの外周側面との間隔が、前記ワイヤの直径よりも小なる値に設定されていることを特徴とする請求項12又は13記載のワイヤ絡まり防止方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−132437(P2010−132437A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−311573(P2008−311573)
【出願日】平成20年12月5日(2008.12.5)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)