説明

ワイヤシール用製品及びワイヤシール方法

【解決手段】ワイヤスプライスを形成するための熱収縮可能な管状物は、(i)熱収縮可能な外被材料と、(ii)チキソ性を有し熱流動可能な接着剤の内層とを具備する。この管状物は、15mm以下の最大内径及び100mm以下の最大長さの少なくともいずれか一方を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤをシール(封止)するための製品及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車産業において、電気ハーネスにワイヤスプライスが広く使用されている。製品環境においてスプライスを封止する必要がある他の状況に適用可能であるが、本発明は上述の用途に特に利益がある。
【0003】
自動車産業において電気ハーネス内でスプライスされたワイヤを保護するために、寸法が回復可能なチューブを使用することが多い。最も一般的なスプライス構成の一つに「インラインスプライス」がある。インラインスプライスにおいて、スプライスされる各ワイヤは、裸の導電性ワイヤを露出するために、例えば一端又は1箇所以上の他の場所でワイヤの絶縁被覆が除去される。次に、結合されるワイヤは、必要に応じて露出した裸ワイヤ全てが互いにほぼ平行且つ重なった状態で配置される。他の種類のスプライスには、絶縁被覆を除去しないものがある。
【0004】
次に、裸ワイヤは、スプライスの「小塊(ナゲット;nugget)」を形成するために、圧着され、溶接され、半田接続され又は他の方法で結合されることが代表的であるが、必ずしも必要ではない。その後、ナゲット及び隣接する露出導体は、外部環境から保護され封止されなければならない。ナゲットを保護し、水分及び他の混入物質から封止するための好適な手段は、寸法回復可能なチューブ内にナゲットを包み込むことである。この寸法回復可能なチューブは、封止材又は接着剤の内装(ライナ)を有することにより、ワイヤシールを形成する。ナゲットの周囲でチューブに熱回復(収縮)を同時に生じさせながら、封止材又は接着剤を流動化させるために、代表的には加熱される。チューブは露出ワイヤの周囲で収縮し、接着剤又は封止材はチューブ内で流れ、露出ワイヤを覆うと共に封止する。接着剤又は封止材も、ワイヤに沿って流れ、剥がされていない絶縁被覆の一部に接触すると共に覆う。これにより、露出ワイヤの全長及びスプライスナゲットにわたって絶縁被覆の始まりまで封止するので、ワイヤの絶縁被覆内部の導体に沿ってスプライス内への水の浸入を防止する。ワイヤ突き当てスプライス、及びリング端子又は他の接続デバイスへのワイヤスプライスも、このようにして封止し保護することができる。
【0005】
さらに、熱収縮チューブと組み合わせて接着剤のインサートを使用して、コネクタを水の浸入から封止し、ワイヤ束を封鎖することができる。
【0006】
最新の自動車の電気的機能の増加のため、自動車用ハーネスの複雑さ及びハーネスに組み込まれるワイヤスプライスの数は増大している。この結果、自動車製造業者は、電気的整合性を確保し信頼性を保証するために、スプライスを封止した製品を多数使用している。従って、生産性を最大にすると共にコストを最小にするために、シールを形成するために要する時間が最小である自動車用スプライス封止製品が要求されている。
【0007】
種々の熱収縮可能なスプライス封止スリーブが市販されている。これらスリーブの一例は、タイコ・エレクトロニクスが販売する二重壁熱収縮スプライスシールスリーブ・Raychem RBK−ILS−125(商標)である。このスプライスシールは、内部熱流動性接着剤(封止材)ライナと組み合わせた外部架橋ポリマ熱収縮スリーブを有するチューブ状構造物からなる。
【0008】
加熱すると、チューブは収縮し、接着剤層又は封止材層は溶融し流動化する。このような製品は、幅広い異なる材料及び寸法で周知であり、ケーブル及びワイヤスプライスを環境から封止するために種々の産業界で使用されている。製品は、封止される領域上にスリーブ及びライナを滑らせ、熱線銃、火炎、赤外線、又はチューブを収縮させる他の熱源を使用して加熱することにより、取り付けられる。スプライスを封止するために要する最小時間は、スプライスを作り上げる部品としてのワイヤの数及び寸法、チューブの寸法、チューブの回復温度、接着剤ライナの溶融温度、回復温度でのライナ粘度、回復温度でのチューブのフープ応力、銅ナゲットの温度、使用される加熱装置のタイプ及びその熱特性を含む多数のファクタに依存する。
【0009】
本明細書で説明する発明は、その範囲内に、加熱時に流動することができるライナを有する寸法回復可能チューブを使用して形成可能なこのような全てのスプライス、ハーネス、シール及びブロックを含む。このため、本発明は、上述の構造に加えて、リング端子シール、スタブスプライスシール、多様な種類のコネクタシール及び多様な種類の束ねブロック等の構造を含む。
【0010】
ここでは便宜上、このような構造全てを「スプライス」と称し、本発明が関連する構造の中に導体又は他のフィラメントを実際には共にスプライスすることを要しないものもあるが、文脈上必要な場合は、「スプライスシール」と称する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
公知の熱収縮スプライスシールスリーブの問題は、特に自動車及び他の車両に取り付けられるワイヤハーネスの大量生産において、一般的には、迅速取付タイプ又は高温定格タイプのいずれかであるが、接着剤の流動特性に対する要求事項と相容れないため、同一製品において両方を達成することができないことである。
【0012】
迅速取付タイプのスプライスシールスリーブは一般に、取付温度で比較的低い粘度を有する接着剤からなる。この迅速取付特性は、特に高いスループットが要求される環境において、それらスリーブを商業的に魅力的なものにしている。しかし、このようなスプライスシールスリーブ内の接着剤は、定格温度で使用中に過剰に流動するので、高温環境には適さない。他方、高温抵抗性スプライスシールスリーブは、使用温度で比較的高い粘性を有する接着剤で製造される傾向があるので、高温環境での使用に適する。しかし、この接着剤は、製品取付に時間がかかり時間当たりの取付率を低下させるので、製造工程を不要に遅延させる。特に、高温定格のスプライスシールスリーブを迅速取付タイプと比較すると、製造工程が数秒遅いだけであるが、自動車産業のように大規模に製造される場合、余分な遅延は著しい不利益コストとなってしまう。
【0013】
スプライスシールは、一旦取り付けられると、使用環境を反映するよう設計された或る仕様の要求事項に合わなければならない。自動車産業において、これらの仕様には、エンジン室環境を反映して、燃料への浸漬、耐温度サイクル及び耐高温フローの間に、封止が持続することが含まれる。これらの要求事項に合致して封止を持続するために、取り付けられた接着剤は、比較的高温で流動に抵抗しなければならない。自動車用スプライスシールにとって鍵となる二つの要求事項は、迅速に取り付けられることと、取付後、150℃で垂直に配置したときに接着剤流れが最小限であることである。これらの要求事項に対する技術的解決手段は、迅速な取付については接着剤の低粘度、取付後の流動抑制については高粘度という直接背反するものである。
【0014】
1〜15%のヒュームドシリカを付加的に有するエチレンビニルアセテート(EVA)共重合体からなるホットメルト接着剤を提供することは、欧州特許出願公開第376461号明細書で公知である。このホットメルト接着剤は、ホットメルト銃で使用できるスティックのりを提供するために使用するのが代表的である。結果として得られるスティックのりは、使用時に糸を引く傾向が少なく、抗たるみ性の溶融物を提供すると言われている。
【0015】
米国特許第3983070号明細書に記載された接着剤は、カプセル封入及び絶縁された導体の接続時に使用されるポリマ材料を接合する際に、特に有用であると言われている。この接着剤は、αオレフィン及び無機シリコン含有コンパウンドの極性(polar)共重合体からなる。その特許明細書の文脈で使用される接着剤は、熱収縮可能なスリーブの内部コーティングと、特に電話ケーブルにおけるケーブル結合及び接続用の端キャップとを設けるために特に有用であると言われており、好適には5未満のメルトフローインデクスを有する。シリカ含有接着剤の使用は、70℃の温度での高い剥離強度を与えると共に、ケーブルの架橋されたポリエチレン及びリード被覆間で得られる結合部の強度を増大させると言われている。
【0016】
しかし、電話ケーブルは、本発明のスプライスシールスリーブにより考えられる寸法よりも実質的に大きな寸法を有するのが代表的である。
【0017】
発明の詳細な説明から、その特許明細書のシリコン含有コンパウンドは、例えばAerosil R972等の化学処理されたシリカ充填剤である。この結果物である接着剤は、例えばポリマ材料を別のポリマ材料又は別の基板に結合させる際に高い結合強度を提供し、また、所望の電気特性を提供し、カプセル封止又は接続するために熱回復可能な材料が使用される場所で特に使用することができると言われている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の第1の側面において、(1)熱収縮可能な外被材料、及び(2)チキソ性を有し熱流動可能な接着剤の内層を具備する、ワイヤスプライスを封止するための熱収縮可能な管状物であって、15mm以下の最大内径及び100mm以下の最大長さの少なくともいずれか一方を有する熱収縮可能な管状物が提供される。場合によっては、管状物は、これらの最大寸法の両方を有してもよい。
【0019】
チキソ性を有し熱流動可能な接着剤は、接着剤にチキソ性を付与する添加剤を含む接着剤からなる。好都合なことに、添加剤はシリカであり、意外なことに、上掲の米国特許の文脈では、未処理のシリカがよく機能し、好適である可能性があることが判明した。
【0020】
本発明で使用される接着剤は、良好な充填剤互換性を有するホットメルト接着剤であるならいかなる接着剤であってもよい。この接着剤は、ASTM D1238(修正版)により決定される5を超えるメルトフローインデクスを有することが極めて好ましい。好都合なことに、チキソ性(すなわちチキソトロピック添加剤を含む)接着剤は、10を超えるメルトフローインデクスを、好ましくは20を超えるメルトフローインデクスを、実施形態によっては100を超え、500をも超えるメルトフローインデクスを有する。好都合なことに、接着剤は、エチレンビニルアセテート(EVA)共重合体接着剤である。好適なEVA共重合体接着剤は15〜40重量%のビニルアセテートを含有する。特に好適なEVA共重合体接着剤は25〜28重量%のビニルアセテートを含有する。
【0021】
接着剤は、高流動性チキソトロピック接着剤であることが極めて望ましい。これは、結合部シールをブロックし封止するために、取付条件下で接着剤が流れることを意味するが、その後の使用時に150℃で大きく流動してはならない。
【0022】
より詳細には、熱収縮可能な管状物に使用される接着剤は、130℃未満の温度、好適には120℃未満の温度の剪断力下で流動することが極めて好ましい。このような例において、熱回復可能な外被材料の収縮により、剪断力が生ずる。しかし、接着剤は、好適には150℃の温度で流動してはならない。
【0023】
本発明の別の側面において、(1)熱収縮可能な外被材料、及び(2)チキソ性を有し熱流動可能な接着剤の内層を具備する、ワイヤスプライスを封止するための熱収縮可能な管状物であって、130℃未満の温度の剪断力下で流動するが、150℃の温度で流動しない熱収縮可能な管状物が提供される。
【0024】
このような例における流れは、適当な温度(例えば150℃)で垂直に24時間吊り下げられる際に、接着剤が後取付の封止されたスプライスから流動するかどうかにより決定される。
【0025】
接着剤にチキソ性を付与して接着剤をチキソトロピック接着剤にする添加剤は、好適にはシリカである。本発明に従った使用に適したシリカは、接着剤のチキソ性に従っており、好都合なことに100m2/gより大きな表面積を有する例えばヒュームドシリカ等の大表面積シリカが好ましい。また、チキソ性を付与する他の添加剤も適しており、例えばベントナイト又はガラマイト等の表面積の大きな無機充填剤であるのが代表的であろう。好都合なことに、接着剤にチキソ性を付与する添加剤は、接着剤の重量の1〜15重量%、好適には2〜10重量%、実施形態によっては5〜7重量%のレベルで接着剤に存在してもよい。
【0026】
本発明に係る熱収縮可能なスプライスシールスリーブは、代表的には12mm未満の直径を有するワイヤスプライスを封止する際の使用に特に適する。このように、本発明に係る未回復の熱収縮可能なスプライスシールスリーブは、約20mm未満、好適には約15mm未満の内径を有するの代表的である。
【0027】
本発明に係る熱収縮可能な管状物は、上掲の米国特許に記載されたケーブルシール及び端キャップとは対照的に、ワイヤから作り上げられたスプライスを封止するためにのみ使用されるので、100mm未満の長さを、好適な実施形態においては80mm未満又は70mm未満の長さを有するのが代表的である。
【0028】
本発明の別の一側面によれば、(1)熱収縮可能な外被材料及び熱流動可能なチキソ性接着剤の内層を有する熱収縮可能な管状物(例えばスリーブ)を加熱する工程と、(2)熱収縮可能な管状物を収縮させてスプライスシールを形成する工程とからなる、2本以上のワイヤ間にスプライスシールを形成する方法が提供される。
【0029】
本発明の別の一側面において、熱収縮可能な外被材料及び熱流動可能なチキソ性接着剤の内層を同時押し出しする工程を具備する、ワイヤ間にスプライスシールを形成するのに適する熱収縮可能な管状物を形成する方法が提供される。好適には、同時押し出しされた外被材料及び接着剤層は、次に100mm未満の長さに切断される。
【0030】
チキソトロピック添加剤含有接着剤を含む本発明に係る熱収縮可能なスプライスシールスリーブは、スプライスシールスリーブ及び結果として得られるワイヤスプライスシールに、要求される垂直滴下性能試験に合格する良好な高温抵抗性のみならず、意外なことに良好な(すなわち迅速な)取付時間をも与える。観測される迅速な取付時間は、公知の迅速収縮スプライスシールスリーブの経済的便益を維持するのに役立ち、他の物では取付時間の遅延のおそれがあるチキソトロピック添加剤の含有を考慮すると意外なことである。
【0031】
本発明に係る熱収縮可能なスプライスシールは、公知の加熱及びこのようなスプライスシールドの形成のための設備を使用して、任意の公知のシール形成手順での使用に適する。
【0032】
本発明に係るスプライスシールの形成のための適当な加熱装置は、タイコ・エレクトロニクスが市販するRBKプロセッサマークIIである。
【0033】
本発明に係る方法での使用に適する好適な熱収縮管状物は、透明な(実質的に光を吸収しない)外被及び黒のライナを有するものであり、EVAを主材料とするライナと組み合わせた、タイコ・エレクトロニクスのES1000製品の高密度ポリエチレン外被をベースにする。このライナは、表面積が200m2/gのヒュームドシリカ7%と、カーボンブラック0.0125%相当を含有するカラーマスターバッチ0.5%を含有する。
【0034】
スプライスを封止するために、封止剤材料は、ポリマ絶縁物が除去された金属ナゲットの部品である裸ワイヤの周囲及びその間に流れなければならない。従って、二重壁熱収縮製品において、ライナは、収縮する外被材料により発生する剪断力下で接着剤が流動する温度まで加熱され、次に熱収縮外被によりナゲット及び絶縁物内へ及びナゲット及び絶縁物の周囲で強制されなければならない。また、結果として得られるシールは、水の浸入を阻止することができることが重要である。
【0035】
このような方法で使用される外被及びライナは、同時押し出しされることが好ましい。また、ライナは、接着剤材料の層自体か、又はその層を含むことが好ましい。別の構造において、内層(ライナ)は、外被の内部にコーティングされてもよい。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下の実施例を参照して本発明をさらに説明する。
【0037】
(実施例1)
EVA共重合体(ビニルアセテート28%、MFI(メルトフローインデクス)500dg/分)を92%、粘着付与剤を5%、酸化防止剤を3%有するEVA接着剤を使用した。この接着剤は、クイック収縮スプライス封止製品に使用され、約5秒でスプライスシールを生成するのが代表的である。しかし、スプライスシールを垂直に吊るすと、120℃以上の温度で、接着剤が流れ、封止されたスプライス領域から滴下し、或る欧州の用途では使用に適さない。
【0038】
(実験)
小さな内部ミキサー(ブラベンダー製)を用いて、この接着剤を、表面積が200m2/gのヒュームドシリカ(添加レベルは5%及び7%、以下の表参照)及びカーボンブラック(0.0125重量%)と混合した。充填剤は120℃で加え、毎分32回転で15分間混合した。
【0039】
各混合物から、0.2〜0.3mm厚の平板を160℃でプレスした。
【0040】
使用される熱収縮外被は手作りであった。このため、タイコ・エレクトロニクスが市販するスプライスシール製品ES1000は、接着剤層を注意深く除去され、高密度ポリエチレン熱収縮外被材料が残された。上述したように作成された接着剤の計測用シートは、丸められ熱収縮外被材料の内部に配置される際に接着剤との重なりが最小となるように、切断された。次に、外被及び接着剤の組立体は、接着剤を溶融させて外被及び接着剤を一体化するために、赤外線加熱装置の内部で加熱される10mmのポリ四フッ化エチレン製マンドレル上に載置された。冷水内で冷却後、この二重壁製品はポリ四フッ化エチレン製マンドレルから外された。
【0041】
サンプルは、タイコ・エレクトロニクスが市販する、500℃に設定されたRBKプロセッサマークII内でスプライスを封止するために使用された。作成されたスプライスは、7:4 1.5mm2、すなわち、スプライスの一側では7x1.5mm2のワイヤであり、他側では4x1.5mm2のワイヤであった。
【0042】
連続する5個のサンプルのうち封止に要する時間が最も短いサンプルが取り付けられ、1気圧試験を合格した。
【0043】
(滴下性能)
各タイプ5サンプルを、空気循環炉内に表1及び表2に示される温度で垂直に吊るした。接着剤が移動する距離は、滴下性能として記録した。
【0044】
(観測結果)
サンプルは、例えばヒュームドシリカ等の好適なタイプの微粒子充填剤を使用する際の取付特性(封止に要する時間)及び上昇温度性能(滴下に対する抵抗性)の効果を示す表1で与えられる。
【表1】

【0045】
サンプルは、好適でない非チキソトロピック微粒子充填剤(例えば水酸化マグネシウム)を使用する際の取付特性及び上昇温度性能の効果を示す表2で比較される。
【表2】

ここで、滴下性能は、空気循環炉内で垂直に吊るされたスプライスで測定した。接着剤流れは24時間後に計測した。注意:計測可能な最大値は250mmである。
【0046】
(結論)
表1は、接着剤滴下性能におけるヒュームドシリカの効果は0mm、すなわち滴下なしであるので、最良であることを示している。5%又は7%のヒュームドシリカの添加は、150℃までの温度での滴下を無くすが、取付時間に関し計測できる有害な効果はない。
【0047】
ヒュームドシリカ含有接着剤は、チキソトロピックに振舞うと考えられる。すなわち、剪断の程度が低いと、材料は比較的粘性を有するのに対し、剪断の程度が高い(すなわち、熱収縮可能な外被の回復により小さなワイヤ間隙を通して駆動される)と、材料は低粘性となり、比較的容易な取付が可能になる。
【0048】
従って、本システムにおいて、取付時間における明白な不利益を伴うことなく、滴下性能において利益がある。
【0049】
別の非チキソ性微粒子充填剤がEVA接着剤に添加されると、表2に示されるように、容易には効果が観察されない。この場合、水酸化マグネシウムの量が増加すると、滴下性能の改善は低く、主剤の粘性を増大させる充填剤により説明できるかもしれない。いずれにせよ、120℃及び130℃における滴下特性は、水酸化マグネシウム添加接着剤が125℃での実使用には適さないことを示唆している。
【0050】
水酸化マグネシウムの量が増加すると、取付時間が増加する。これも、充填剤添加による粘性増大の結果かもしれない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤスプライスを形成するための熱収縮可能な管状物であって、
熱収縮可能な外被材料と、
チキソ性を有し熱流動可能な接着剤の内層と
を具備し、
前記管状物は、15mm以下の最大内径及び100mm以下の最大長さの少なくともいずれか一方を有することを特徴とする熱収縮可能な管状物。
【請求項2】
前記管状物は、15mm以下の最大内径及び100mm以下の最大長さの両方を有することを特徴とする請求項1記載の熱収縮可能な管状物。
【請求項3】
前記接着剤は、5を超えるメルトフローインデクスを有することを特徴とする請求項1又は2記載の熱収縮可能な管状物。
【請求項4】
前記接着剤は、100を超えるメルトフローインデクスを有することを特徴とする請求項3記載の熱収縮可能な管状物。
【請求項5】
前記接着剤はエチレンビニルアセテート共重合体接着剤であることを特徴とする請求項1ないし4のうちいずれか1項記載の熱収縮可能な管状物。
【請求項6】
前記エチレンビニルアセテート共重合体接着剤は、ビニルアセテートを15〜40重量%含有することを特徴とする請求項5記載の熱収縮可能な管状物。
【請求項7】
前記接着剤にチキソ性を付与する添加剤が、シリカであることを特徴とする請求項1ないし6のうちいずれか1項記載の熱収縮可能な管状物。
【請求項8】
前記シリカは未処理のシリカであることを特徴とする請求項7記載の熱収縮可能な管状物。
【請求項9】
前記シリカは、100m2/gより大きな表面積を有することを特徴とする請求項7又は8記載の熱収縮可能な管状物。
【請求項10】
前記管状物は、5mm未満の直径、好ましくは3mm未満の直径のワイヤ同士にスプライス接合に適することを特徴とする請求項1ないし9のうちいずれか1項記載の熱収縮可能な管状物。
【請求項11】
前記接着剤にチキソ性を付与する添加剤が、大表面積の無機充填剤であることを特徴とする請求項1ないし10のうちいずれか1項記載の熱収縮可能な管状物。
【請求項12】
前記管状物は、13mm未満の最大内径を有することを特徴とする請求項1ないし11のうちいずれか1項記載の熱収縮可能な管状物。
【請求項13】
前記管状物中の前記接着剤は、150℃の温度で流動しないことを特徴とする請求項1ないし12のうちいずれか1項記載の熱収縮可能な管状物。
【請求項14】
前記管状物中の前記接着剤は、130℃の温度で流動しないことを特徴とする請求項1ないし13のうちいずれか1項記載の熱収縮可能な管状物。
【請求項15】
前記管状物は、透明な熱収縮可能な外被を具備することを特徴とする請求項1ないし14のうちいずれか1項記載の熱収縮可能な管状物。
【請求項16】
前記内層はライナの形態であることを特徴とする請求項1ないし15のうちいずれか1項記載の熱収縮可能な管状物。
【請求項17】
前記外被材料及び前記内層は同時に押し出しされることを特徴とする請求項1ないし16のうちいずれか1項記載の熱収縮可能な管状物。
【請求項18】
前記接着剤にチキソ性を付与する添加剤が、前記接着剤の重量の1〜15重量%、好適には2〜10重量%であることを特徴とする請求項1ないし17のうちいずれか1項記載の熱収縮可能な管状物。
【請求項19】
2本以上のワイヤ間にスプライスシールを形成する方法であって、
熱収縮可能な外被材料及び熱流動可能なチキソ性接着剤の内層を有する熱収縮可能な管状物を加熱する工程と、
前記熱収縮可能な管状物を収縮させて前記スプライスシールを形成する工程と
からなることを特徴とするスプライスシール形成方法。
【請求項20】
前記管状物は、15mm以下の最大内径及び100mm以下の最大長さの少なくともいずれか一方を有することを特徴とする請求項19記載のスプライスシール形成方法。
【請求項21】
前記接着剤は、5を超えるメルトフローインデクスを有することを特徴とする請求項19又は20記載のスプライスシール形成方法。
【請求項22】
前記接着剤は、100を超えるメルトフローインデクスを有することを特徴とする請求項21記載のスプライスシール形成方法。
【請求項23】
前記接着剤はエチレンビニルアセテート共重合体接着剤であることを特徴とする請求項19ないし22のうちいずれか1項記載のスプライスシール形成方法。
【請求項24】
前記エチレンビニルアセテート共重合体接着剤は、エチレンビニルアセテートを15〜40重量%含有することを特徴とする請求項23記載のスプライスシール形成方法。
【請求項25】
前記接着剤にチキソ性を付与する添加剤が、シリカであることを特徴とする請求項19ないし24のうちいずれか1項記載のスプライスシール形成方法。
【請求項26】
前記シリカは未処理のシリカであることを特徴とする請求項25記載のスプライスシール形成方法。
【請求項27】
前記シリカは、100m2/gより大きな表面積を有することを特徴とする請求項25又は26記載のスプライスシール形成方法。
【請求項28】
前記接着剤にチキソ性を付与する添加剤が、大表面積の無機充填剤であることを特徴とする請求項19ないし27のうちいずれか1項記載のスプライスシール形成方法。
【請求項29】
前記管状物は、5mm未満の直径、好ましくは3mm未満の直径のワイヤ同士にスプライス接合に適することを特徴とする請求項19ないし28のうちいずれか1項記載のスプライスシール形成方法。
【請求項30】
前記管状物は、13mm未満の内径を有することを特徴とする請求項19ないし29のうちいずれか1項記載のスプライスシール形成方法。
【請求項31】
前記管状物は、透明な熱収縮可能な外被を具備することを特徴とする請求項19ないし30のうちいずれか1項記載のスプライスシール形成方法。
【請求項32】
前記内層はライナの形態であることを特徴とする請求項19ないし31のうちいずれか1項記載のスプライスシール形成方法。
【請求項33】
前記管状物中の前記接着剤は、150℃の温度で流動しないことを特徴とする請求項19ないし32のうちいずれか1項記載のスプライスシール形成方法。
【請求項34】
前記管状物中の前記接着剤は、130℃の温度で流動しないことを特徴とする請求項19ないし33のうちいずれか1項記載のスプライスシール形成方法。
【請求項35】
前記接着剤にチキソ性を付与する添加剤が、前記接着剤の重量の1〜15重量%、好適には2〜10重量%であることを特徴とする請求項19ないし34のうちいずれか1項記載のスプライスシール形成方法。
【請求項36】
ワイヤ間にスプライスシールを形成するのに適する熱収縮可能な管状物の形成方法であって、
熱収縮可能な外被材料及び熱流動可能なチキソ性接着剤の内層を同時に押し出す工程を具備することを特徴とする熱収縮可能な管状物の形成方法。

【公表番号】特表2010−541124(P2010−541124A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−525418(P2010−525418)
【出願日】平成20年9月16日(2008.9.16)
【国際出願番号】PCT/GB2008/003137
【国際公開番号】WO2009/037433
【国際公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(502165089)タイコ エレクトロニクス ユーケー リミテッド (15)