説明

ワイヤハーネスの配索装置

【課題】ワイヤハーネスの屈曲部位への負荷を低減する。
【解決手段】ワイヤハーネス10の配索装置は、第1、第2端部91、81間に配索されるワイヤハーネス10と、ワイヤハーネス10を内包しつつ長さ方向に延出し、かつ長さ方向両端部が第1、第2端部91、81に連結され、第1、第2端部91、81が相対変位した場合に、ワイヤハーネス10とともにほぼ平面方向に沿って屈曲されるハーネスガイド20と、ワイヤハーネス10を内包しつつハーネスガイド20の長さ方向途中に介装され、第1、第2端部91、81が相対変位した場合に、ワイヤハーネス10に捻じり動作を行わせるアダプタ40とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤハーネスの配索装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車における車体とスライドドアとの間には、スライドドアへの給電用のワイヤハーネスが配索されている。この種のワイヤハーネスの配索装置として、特許文献1に記載のものが知られている。このものは、複数のリンク部材を長さ方向に連結してなるキャタピラ状のハーネスガイドを備えている。ハーネスガイドの長さ方向両端部は、スライドドア側の第1端部と車体側の第2端部とに連結されている。ワイヤハーネスは、ハーネスガイドに内包されている。
【0003】
スライドドアの開閉動作に起因して第1、第2端部の相対位置が変動すると、ハーネスガイドがほぼ同一平面上に沿って屈曲され、同時にハーネスガイド内のワイヤハーネスも屈曲されて、スライドドアの動きに追従することが可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−25999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の場合に、スライドドアの開閉動作に伴ってハーネスガイドが双方向に振られると、ワイヤハーネスの長さ方向途中に屈曲動作の支点となる部分が形成され、この部分に大きな曲げ力が加わることになる。万一、この曲げ力がワイヤハーネスの限界応力を超えると、ワイヤハーネスの屈曲部位が損傷するおそれがあるため、ワイヤハーネスの屈曲部位への負荷を軽減することが求められている。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、ワイヤハーネスの屈曲部位への負荷を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、ワイヤハーネスの配索構造であって、互いに相対変位可能な第1、第2端部間に配索されるワイヤハーネスと、前記ワイヤハーネスを内包しつつ長さ方向に延出し、前記長さ方向両端部が前記第1、第2端部に連結され、前記第1、第2端部が相対変位した場合に、前記ワイヤハーネスとともにほぼ平面方向に沿って屈曲されるハーネスガイドと、前記ワイヤハーネスを内包しつつ前記ハーネスガイドの前記長さ方向途中に介装され、前記第1、第2端部が相対変位した場合に、前記ワイヤハーネスに捻じり動作を行わせるアダプタとを備えるところに特徴を有する。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記ハーネスガイドが、前記アダプタを境として前記第1端部側に位置する第1ガイド部と前記第2端部側に位置する第2ガイド部とを有し、前記第1、第2ガイド部が前記平面方向と交差する高さ方向に段違いに配置され、前記アダプタの高さ方向両端部が前記第1、第2ガイド部の各端末に連結されているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0009】
<請求項1の発明>
第1、第2端部が相対変位すると、ワイヤハーネスがハーネスガイドによってほぼ平面方向に沿って屈曲されるのに加えてアダプタによって捻じられる。このため、ワイヤハーネスに作用する応力が屈曲動作に伴う曲げ応力と捻じり動作に伴う捻じり応力とに分散され、ワイヤハーネスの屈曲部位に大きな曲げ応力が加わるのが回避される。したがって、ワイヤハーネスの屈曲部位への負荷が低減される。
【0010】
<請求項2の発明>
第1、第2ガイド部が平面方向と交差する高さ方向に段違いに配置され、アダプタの高さ方向両端部が第1、第2ガイド部の各端末に連結されているため、ワイヤハーネスに作用する応力が高さ方向に分散され、局所的な応力集中が回避される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態1に係るワイヤハーネスの配索装置におけるアダプタの正面図である。
【図2】アダプタの平面図である。
【図3】図2のX−X線断面図である。
【図4】アダプタの側面図である。
【図5】アダプタ本体の斜視図である。
【図6】全体の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図6によって説明する。実施形態1に係る配索装置は、自動車におけるスライドドア等のスライド部材90の内部に設けられた電装品に常時給電するワイヤハーネス10の配索装置を例示するものであって、図6に示すように、ワイヤハーネス10を内包するハーネスガイド20及びアダプタ40を備えている。スライド部材90には第1端部91が固定して設けられ、スライド部材90に対向する車体80側には第2端部81が固定して設けられている。上記ワイヤハーネス10の配索装置は、第1、第2端部91、81間に架け渡して形成されている。
【0013】
スライド部材90は車体80に対して開閉可能に連結され、第1、第2端部91、81の相互の相対位置はスライド部材90の開閉動作に応じて変動される。具体的には、第2端部81が固定端、第1端部91が可動端とされ、第2端部81が第1端部91を挟んだ開閉方向両側の双方向に変位可能とされている。
【0014】
ハーネスガイド20は、複数のリンク部材21で構成されている。各リンク部材21は、相互に隣接して配置され、全体として長さ方向に線状に延びる形態とされている。隣接するリンク部材21同士は周知の連結手段を介して回転可能に連結され、長さ方向両端に位置するリンク部材21は同じく周知の連結手段を介して第1、第2端部91、81に回転可能に連結されている。連結手段の軸方向は高さ方向に向けられ、これによって各リンク部材21は高さ方向と交差(直交)する平面方向に沿って屈曲可能とされている。また、スライド部材90と車体80との間に配索されたワイヤハーネス10は、各リンク部材21内に挿通され、各リンク部材21の動きに応じて屈曲可能とされている。
【0015】
スライド部材90が開閉されると、第1、第2端部91、81が相対変位させられ、それに伴い第1、第2端部91、81にリンク結合されたハーネスガイド20がワイヤハーネス10ともども平面方向に沿って屈曲動作を行うようになっている。ハーネスガイド20の長さ方向途中には上記屈曲動作の略支点となる部分が形成され、この部分にアダプタ40が介装されている。
【0016】
各リンク部材21は、アダプタ40を介して第1端部91側と第2端部81側とに分断されている。具体的には、各リンク部材21は、アダプタ40を挟んだ長さ方向両側のうち、第1端部91側のリンク部材21で構成される第1ガイド部22と、第2端部81側のリンク部材21で構成される第2ガイド部23とからなる。第1、第2ガイド部22、23はアダプタ40を介して高さ方向に段違いに配置されている。具体的には、図3にしめすように、第1ガイド部22は、第1平面25にほぼ沿って配置され、第2ガイド部23は、第1平面25よりも低位の第2平面26にほぼ沿って配置されている。
【0017】
アダプタ40は合成樹脂製であって、図1及び図2に示すように、アダプタ本体41と、アダプタ本体41及び第1、第2ガイド部22、23とに連結される第1、第2連結部材42、43とからなる。アダプタ本体41は、図3に示すように、全体として高さ方向に長い角ボックス状をなし、内部に中空部44を有している。図4及び図5に示すように、アダプタ本体41における底壁45、両側壁46、及び天井壁47に周方向の境界線48が形成され、境界線48を境として前後一対の半割体49、50に分割可能とされている。
【0018】
図3に示すように、天井壁47には、円形の第1軸孔51が貫通して形成され、底壁45には、同じく円形の第2軸孔52が貫通して形成されている。第1、第2軸孔51、52は中空部44を挟んだ高さ方向両端に同軸に対向して配置されている。また、両側壁46のうち、第1端部91側に位置する第1側壁53には、その上端部に矩形の第1装着孔55が貫通して形成され、第2端部81側に位置する第2側壁54には、その下端部に矩形の第2装着孔56が貫通して形成されている。
【0019】
図1に示すように、第1連結部材42は、角ボックス状をなし、第1装着孔55を介してアダプタ本体41の第1側壁53にほぼ直角な方向から連結され、第2連結部材43は、同じく角ボックス状をなし、第2装着孔56を介してアダプタ本体41の第2側壁54にほぼ直角な方向から連結される。そして、第1、第2連結部材42、43は、アダプタ本体41の内外に跨って配置され、第1、第2装着孔55、56と適合する矩形の断面形状を有している。
【0020】
第1連結部材42の上下両壁の外側端部(アダプタ本体41の外側に突出する側の端部)には、後述する第1外側開口部67を挟んだ高さ方向両側に、一対の第1連結板57が対向して形成されている。両第1連結板57には、図2及び図3に示すように、連結孔58が高さ方向に同軸で貫通して形成されている。そして、両第1連結板57には第1ガイド部22の端末に配置されたリンク部材21が板厚方向に重ねられ、リンク部材21の連結手段が連結孔58に凹凸嵌合することにより、第1連結部材42が第1ガイド部22の端末に回転可能に連結されるようになっている。
【0021】
第2連結部材43の上下両壁の外側端部にも、後述する第2外側開口部69を挟んだ高さ方向両側に、一対の第2連結板59が対向して形成されている。両第2連結板59における対向面とは反対側の外側面には、連結突起60が高さ方向に同軸で突出して形成されている。そして、第2連結板59には第2ガイド部23の端末に配置されたリンク部材21が板厚方向に重ねられ、リンク部材21の連結手段に連結突起60が凹凸嵌合することにより、第2連結部材43が第2ガイド部23の端末に回転可能に連結されるようになっている。
【0022】
第1連結部材42の上壁及び第2連結部材43の下壁は、図1に示すように、蓋部61とされ、両側壁に着脱可能に連結されている。蓋部61と両側壁には複数のロック部62が形成され、ロック部62の弾性係止によって蓋部61が両側壁に閉止状態に保持されるようになっている。また、図3に示すように、第1連結部材42の上壁の内側端部(アダプタ本体41の中空部44に挿入される側の端部)には、第1膨出部63が突出して形成され、第2連結部材43の下壁の内側端部には、第2膨出部64が突出して形成されている。第1、第2膨出部63、64は、筒状の突起部65の根元周りを球面状の周面で包囲する形態とされている。そして、第1膨出部63の突起部65は第1軸孔51に下方から嵌合されて軸支され、第2膨出部64の突起部65は第2軸孔52に上方から嵌合されて軸支される。
【0023】
第1、第2連結部材42、43の内部には、ワイヤハーネス10が挿通される電線挿通孔66が形成されている。第1連結部材42の外側端面(アダプタ本体41の外側に突出する側の端面)には、第1平面25側に開口する第1外側開口部67が形成され、第1連結部材42の内側下面(アダプタ本体41の中空部44に挿入される側でかつ第1連結部材42の下壁側の面)には、下向きに開口する第1内側開口部68が形成されている。また、第2連結部材43の外側端面には、第2平面26側に開口する第2外側開口部69が形成され、第2連結部材43の内側上面(アダプタ本体41の中空部44に挿入される側でかつ第2連結部材43の上壁側の面)には、上向きに開口する第2内側開口部70が形成されている。第1、第2内側開口部68、70は、高さ方向に間隙をあけて対向して配置されている。
【0024】
ここで、ワイヤハーネス10の長さ方向途中部位11は、第1連結部材42の電線挿通孔66と第1内側開口部68との間でほぼ直角に屈曲させられ、第1内側開口部68と第2内側開口部70との間で高さ方向にほぼ沿って配置され、第2内側開口部70と第2連結部材43の電線挿通孔66との間でほぼ直角に屈曲させられる。端的は、ワイヤハーネス10の長さ方向途中部位11は、アダプタ本体41の中空部44にほぼクランク状に屈曲されつつ遊嵌状態で収容されるようになっている。
【0025】
次に、実施形態1に係るワイヤハーネス10の配索装置の作用を説明する。
ハーネスガイド20にアダプタ40を組み付けるにあたり、まず、第1、第2ガイド部22、23の各リンク部材21にワイヤハーネス10を挿通させ、第1、第2ガイド部22、23間に、ワイヤハーネス10の長さ方向途中部位11(屈曲動作の略支点となる屈曲部位)を位置させる。そして、蓋部61を開放した第1、第2連結部材42、43の電線挿通孔66に、ワイヤハーネス10の長さ方向途中部位11を挿入する。続いて、蓋部61を閉止し、その状態でアダプタ本体41の一方の半割体49の中空部44に第1、第2連結部材42、43をワイヤハーネス10とともに嵌着させ、さらに第1、第2連結部材42、43を挟持するようにして一方の半割体49に他方の半割体50を合体させ、両半割体49、50を互いにボルト締め等して固定する。これにより、第1、第2連結部材42、43がアダプタ本体41に固定されるとともに、ワイヤハーネス10の長さ方向途中部位11がアダプタ本体41内に高さ方向に段付き状に配索される。
【0026】
続いて、スライド部材90を開状態から閉状態にスライドさせ、あるいはスライド部材90を閉状態から開状態にスライドさせる。このスライド部材90のスライド過程では、第2端部81が第1端部91に対して開閉方向に相対変位し、それに伴って第1、第2ガイド部22、23がそれぞれ第1、第2平面25、26にほぼ沿うように屈曲される。すると、ワイヤハーネス10が第1、第2ガイド部22、23に追従して第1、第2平面25、26にほぼ沿うように屈曲される。また、第1、第2ガイド部22、23が高低差を有して配置されていることに起因し、ワイヤハーネス10の長さ方向途中部位11がアダプタ本体41内で高さ方向の軸周りに捻じり変形させられる。このため、スライド部材90の開閉時にワイヤハーネス10の長さ方向途中部位11にかかる応力は、屈曲動作のための曲げ応力と、捻じり動作のための捻じり応力とにふり分けられる。したがって、ワイヤハーネス10の長さ方向途中部位11に曲げ応力のみが集中することはなく、この部位11が過大な応力によって損傷される事態が回避される。
【0027】
以上説明したように、本実施形態によれば、第1、第2端部91、81が相対変位すると、ワイヤハーネス10がハーネスガイド20の第1、第2ガイド部22、23によって第1、第2平面25、26にほぼ沿って屈曲されるのに加えてアダプタ40によって捻じられる。このため、ワイヤハーネス10の屈曲部位に大きな曲げ応力が加わるのが回避され、ワイヤハーネス10の屈曲部位への負荷が低減される。
【0028】
また、第1、第2ガイド部22、23が平面方向と交差する高さ方向に段違いに配置され、アダプタ40の高さ方向両端部が第1、第2ガイド部22、23の各端末に連結されているため、ワイヤハーネス10に作用する応力が高さ方向に分散され、局所的な応力集中が回避される。
【0029】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)本発明は、互いに相対変位可能な第1、第2端部間に配索されるワイヤハーネスに広く適用され、変位手段として、スライドドアに限定されるわけではない。
(2)実施形態1とは逆に、第2ガイド部が第1ガイド部よりも高い位置に配置されるものであってもよい。
(3)アダプタは、ハーネスガイドの長さ方向途中に複数介装されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0030】
10…ワイヤハーネス
11…長さ方向途中部位
20…ハーネスガイド
22…第1ガイド部
23…第2ガイド部
40…アダプタ
41…アダプタ本体
42…第1連結部材
43…第2連結部材
80…車体
81…第2端部
90…スライド部材
91…第1端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに相対変位可能な第1、第2端部間に配索されるワイヤハーネスと、
前記ワイヤハーネスを内包しつつ長さ方向に延出し、前記長さ方向両端部が前記第1、第2端部に連結され、前記第1、第2端部が相対変位した場合に、前記ワイヤハーネスとともにほぼ平面方向に沿って屈曲されるハーネスガイドと、
前記ワイヤハーネスを内包しつつ前記ハーネスガイドの前記長さ方向途中に介装され、前記第1、第2端部が相対変位した場合に、前記ワイヤハーネスに捻じり動作を行わせるアダプタとを備えることを特徴とするワイヤハーネスの配索装置。
【請求項2】
前記ハーネスガイドが、前記アダプタを境として前記第1端部側に位置する第1ガイド部と前記第2端部側に位置する第2ガイド部とを有し、前記第1、第2ガイド部が前記平面方向と交差する高さ方向に段違いに配置され、前記アダプタの高さ方向両端部が前記第1、第2ガイド部の各端末に連結されていることを特徴とする請求項1記載のワイヤハーネスの配索装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−90387(P2013−90387A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226981(P2011−226981)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)