説明

ワイヤハーネス組立用保持具

【課題】 ワイヤハーネスの組立作業台に対し保持具を表面側から取り付け操作可能とすると共に、保持具の回動を規制して位置決めできるようにする。
【解決手段】 ワイヤハーネス組立用保持具において、固定部5における支柱23の外周に形成したネジ部26に螺合するナットを備え、支柱23の下端には支柱23線に直交する方向に突出して取付孔1a周縁に係合する取付位置P2と、支柱23に沿って収容されることで取付孔1aに干渉しない収容位置P1との間で回動可能に支持される係止部材29を備えている。そして、係止部材29にはナット26の締め付けにより組立作業台1の裏面に食い込み可能な係止爪29aを突設することで、保持具の回動を規制できるようにしている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ワイヤハーネス組立用保持具に関し、詳しくはワイヤハーネスの組立作業台の取付孔に固定される組立用保持具の取付作業を容易に行い得るようにするものである。
【0002】
【従来の技術】従来ワイヤハーネスの組立作業台1上に立設されて電線等の構成部品を保持する保持具2は、図5R>5(A)に示すように、支柱3の上部にU字状の保持部4を設けると共に、下部には固定部5としてネジ部5aと第1のナット5bを備えている。そして、組立作業台1の取付孔1aに固定部5を挿通した後、組立作業台1の裏面側から第2のナット5cをネジ部5aに螺合することで、表面側の第1のナット5bとの間で締め付け固定するようにしている。
【0003】ところが、組み立てるべきワイヤハーネスの設計変更や、少量の生産等において、保持具を頻繁に着脱する必要がある場合、上記のように組立作業台1の裏面側から第2のナット5bを締め付け操作するのは作業性がわるく、必要とする組立作業台1の準備に手間を要していた。
【0004】そこで、組立作業台1の表面側からの操作のみで保持具12を固定可能としたものが特開平7−192553号公報に記載されている。この保持具12は、図5(B)に示すように、支柱13の下端には、棒状の係止部材16の中心をピン16aを介して回動可能に取り付けている。そして、取付孔1aに支柱13の下端を挿通するときは係止部材16を支柱13に沿わせるようにすることで取付孔1aに挿通する。挿通後は係止部材16を支柱13の両側から出っ張る方向に回動させることで係止部材16を組立作業台1の裏面側に係止させ、次いで、ネジ部15aに螺合したナット15bを表面側から締め付けることで保持具12を固定するようにしている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上記図5(B)の保持具12によれば、組立作業台1への保持具12の取付固定操作に際し、組立作業台1の表面側からのナット15bの締め付け操作のみで保持具12を固定することができる。しかしながら、この保持具12においては、保持具12自体の回り止め機能を有しないため、表面側からのナット15bの締め付け操作時や、保持具12の使用時における電線の張力の影響により支柱3が回動するおそれがある。支柱3が回動した場合、保持すべき電線等の構成部品の方向が所要の方向からずれてしまうため、ワイヤハーネスの組立精度の低下をきたす可能性があった。
【0006】本発明は上記した問題を解消せんとするもので、ワイヤハーネスの組立作業台に対し組立用保持具を表面側から容易に取り付け可能とすると共に、保持具が回動することなく確実に位置決めできるようにすることを課題としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため、本発明では、ワイヤハーネスの構成部品を保持するための保持部を支柱の上部に備え、上記支柱の下部には組立作業台に設けた取付孔に挿入して上記支柱を立設固定するための固定部を備えたワイヤハーネス組立用保持具において、上記固定部における支柱の外周にはネジ部を形成すると共に、該ネジ部に螺合するナットを備え、上記支柱の下端には支柱の軸線に直交する方向に突出して上記取付孔の裏面側周縁に係合する取付位置と、上記支柱に沿って収容されることで上記取付孔に干渉しない収容位置との間で回動可能に支持される係止部材を備え、該係止部材には上記ナットの締め付けにより上記組立作業台の裏面に食い込み可能な係止爪を突設したことを特徴とするワイヤハーネス組立用保持具を提供している。
【0008】上記構成によれば、係止部材を収容位置に回動させた状態で組立作業台の取付孔に支柱下端の固定部を挿入して係止部材を組立作業台の裏面側に位置させ、係止部材を支柱の軸線に垂直な方向に突出する取付位置に回動させることで係止部材を組立作業台の裏面に係合することができる。この状態でネジ部に予め備えられたナットを組立作業台の表面側から締め付けることにより、ナットと係止部材との間で組立作業台が挟持されて保持具が固定される。また、ナットの締め付けに伴なって係止部材に突設した係止爪が組立作業台の裏面に食い込んで保持具自体の回動が規制されるため、保持具を所要の方向に確実に位置決めすることができる。
【0009】具体的には、上記係止部材は付勢手段により収容位置から取付位置に向けて付勢するようにしている。このようにすれば、保持具の固定部を組立作業台の取付孔に挿通する際、係止部材は取付孔の内周に押圧されて自動的に収容位置に収容されるが、取付孔を抜け出た時点で付勢手段の作用によって係止部材を自動的に取付位置に回動させることができる。
【0010】更に具体的には、係止部材は基部を支点としてピンにより支柱の下端部に回動自在に取り付けると共に、支柱には係止部材の収容位置の回動に伴ない係止部材を収容可能な溝部を形成している。また、係止部材には係止爪とは反対側に回動支点から突出するストッパーを突設し、このストッパーを支柱の下端部に形成した係止溝の内面に当接させることで係止部材を取付位置に位置決めできるようにしている。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。図1は本発明のワイヤハーネス組立用保持具22を示し、支柱23の上部にワイヤハーネスを構成する電線を保持するU字状の保持部24を備え、下部には組立作業台1の取付孔1aに固定するための固定部25を備えている。
【0012】固定部25における支柱23の外周にはネジ部26を形成すると共に、ネジ部26には組立作業台1への固定用のナット27を螺合している。また、支柱23の下端部には、図2(A)〜(C)に示すように、支柱23の略半分の領域において下端から上方内部へ向かって切り込まれた溝部28を形成し、この溝部28内に板状の係止部材29を挿入すると共に、溝部28の両側の壁部28aから係止部材29の基部に渉ってピン30を挿通することによりピン30を支点として係止部材29を回動可能に支持するようにしている。
【0013】係止部材29の先端方には、上方へ向けて突出する先端尖鋭の係止爪29aを突設している。係止部材29は図2(A)中、A方向に回動することにより、支柱23に沿って溝部28内に収容されることで取付孔1aに干渉しない収容位置P1と、支柱23軸線に直交する方向に突出して上記取付孔1aの裏面側周縁に係合する取付位置P2との間の二位置間で変位可能とされている。係止部材29の基部には、回動支点であるピン30から係止爪29a側とは反対側に突出するストッパ29bを突設する一方、支柱23の下端部には、係止部材29が取付位置P2にあるとき、ストッパ29bに当接して係止部材29を取付位置P2に位置決めする係止溝32を形成している。
【0014】溝部28は、収容位置P1において係止爪29aを受け入れ可能とするため水平方向内部側へ更に延びる受け入れ部28bを形成し、この受け入れ部28b内には、収容位置P1に収容された係止部材29の係止爪29aに当接して圧縮される付勢部材としての圧縮コイルスプリング31を配置し、収容位置P1に押し込まれた係止部材29を取付位置P2側へ戻すように付勢している。なお、図3は付勢部材として捻じりバネ41を使用した変形例を示し、一端の係止端部41aを壁部28aに係止すると共に、他端の係止端部41bを係止部材29に係止し、係止部材29が収容位置P1へ回動したときに捻じりバネ41によって係止部材29を取付位置P2へ戻す付勢力が作用するようにしている。
【0015】上記構成からなる保持具22を組立作業台1に取り付けるには、先ず図1に示すように、ネジ部26にナット27とワッシャ27aを取り付けておき、係止部材29が支柱23に対し直交方向に突出する取付位置P2に位置する通常状態において、組立作業台1の取付孔1aに支柱23の下端部を挿入する。支柱23の下部が取付孔1aに挿入されるのに伴なって、図4(A)に示すように、係止部材29は取付孔1aの内周に押圧されて溝部28、28a内に収容される収容位置P1へ回動する。このとき、係止爪29aが圧縮コイルスプリング31を付勢力に抗して圧縮する状態となっている。
【0016】次いで、係止部材29が取付孔1aを通過した時点で、図4(B)に示すように、係止部材29は圧縮コイルスプリング31の付勢力によって支柱23に直交する取付位置P2へ回動復帰する。しかる後、組立作業台1の表面側からナット27を締め付けることにより、係止部材29先端の係止爪29aが組立作業台1の裏面において取付孔1aの周縁に次第に食い込んで、保持具22自体の回動が規制されて所要方向に位置決めされる。そして、最終的にナット27と係止部材29との間で組立作業台1が挟持されることにより組立作業台1上に保持具22が立設固定される。
【0017】なお、上記実施形態においては、係止部材29を付勢手段によって収容位置P1から取付位置P2側へ自動的に回動させるようにしたが、支柱23を取付孔1aに挿通した後、手動で係止部材29を取付位置P2へ回動させるようにしてもよい。更に、係止部材29の回動支点であるピン30を中心とする係止部材29の自重バランスによって、係止部材29を取付位置P2へ自動的に回動させるようにすることもできる。また、保持具22の保持部24として電線係止用のものを示したが、保持部24は、ワイヤハーネスのその他の構成部品であるコネクタ、プロテクタ、クランプ等の形状に合わせてこれらを嵌合保持するものであってもよい。
【0018】
【発明の効果】以上の説明より明らかなように、本発明によれば、保持具を組立作業台に立設固定するに際し、表面側からのナットの締め付け操作のみで、保持具を固定することができる。そして、その際、組立作業台の裏面側に位置する係止部材に突設した係止爪が組立作業台の裏面に食い込むようにしたので、保持具の取付作業時または保持具の使用中に保持具自体が回動して、保持方向のずれに伴なう組立精度の低下を確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のワイヤハーネス組立用保持具の実施形態を示す斜視図である。
【図2】 (A)は固定部の拡大正面図、(B)は側面図、(C)は底面図である。
【図3】 固定部における係止部材の付勢手段に変形例を示す図である。
【図4】 (A)(B)は、保持具を組立作業台に取り付ける工程を示す図である。
【図5】 (A)(B)は従来例を示す図である。
【符号の説明】
1 組立作業台
1a 取付孔
22 保持具
23 支柱
24 保持部
25 固定部
26 ネジ部
27 ナット
29 係止部材
29a 係止爪
31 圧縮コイルスプリング(付勢部材)
P1 収容位置
P2 取付位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ワイヤハーネスの構成部品を保持するための保持部を支柱の上部に備え、上記支柱の下部には組立作業台に設けた取付孔に挿入して上記支柱を立設固定するための固定部を備えたワイヤハーネス組立用保持具において、上記固定部における支柱の外周にはネジ部を形成すると共に、該ネジ部に螺合するナットを備え、上記支柱の下端には支柱の軸線に直交する方向に突出して上記取付孔の裏面側周縁に係合する取付位置と、上記支柱に沿って収容されることで上記取付孔に干渉しない収容位置との間で回動可能に支持される係止部材を備え、該係止部材には上記ナットの締め付けにより上記組立作業台の裏面に食い込み可能な係止爪を突設したことを特徴とするワイヤハーネス組立用保持具。
【請求項2】 上記係止部材は付勢手段により収容位置から取付位置へ向けて付勢するようにしている請求項1に記載のワイヤハーネス組立用保持具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2002−298668(P2002−298668A)
【公開日】平成14年10月11日(2002.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−101009(P2001−101009)
【出願日】平成13年3月30日(2001.3.30)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)