説明

ワイヤハーネス

【課題】被配線部材へ極めて容易に取り付けて配線することができ、しかも経済的なワイヤハーネスを提供すること。
【解決手段】複数本のケーブルを束ねた幹線24と、この幹線24から分岐された枝線18と、この枝線18に接続された待受けコネクタ19aとを有し、リーンホースRへ取り付けられるワイヤハーネス11であって、幹線24が樹脂からなる発泡モールド体16によって覆われて一体化され、発泡モールド体16に一体成型された支持ブロック部23と、支持ブロック部23に一部が埋め込まれて固定されて待受けコネクタ19aを支持する支持パネル25とからなるセルフフィット接続部22が一体に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のインストルメントパネルやドアパネル等に配線されるワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両のインストルメントパネルやドアパネルには、各種の電装品が取り付けられており、これらの電装品には給電等のためにワイヤハーネスが接続されている。
【0003】
このワイヤハーネスには、複数の枝線が分岐され、これらの枝線に、各種電装品、計器あるいは制御装置等に接続されるコネクタが設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、ワイヤハーネス等に用いられるコネクタとして、ケーブルに接続される端子をインサート成形によって一体化させた一次モールド成形品であるコネクタ部品に、溶融樹脂を二次モールド成形することにより、成形時におけるショートショットや変形を抑えることが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−153822号公報
【特許文献2】特開平11−19937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の特許文献1に記載のワイヤハーネスを車両に配線する場合、このワイヤハーネスを車体の補強部材等に固定し、さらに、複数のコネクタを電装機器に接続しなければならず、その作業に手間を要していた。
【0007】
また、車両のインストルメントパネルの中央には、オーディオ機器や空調操作部などの多くの電装機器が配置されたセンタークラスタとされており、これらの多くの電装機器とワイヤハーネスとが多数のコネクタによって接続している。したがって、このセンタークラスタでは、互いに接続するコネクタを作業者が両手でそれぞれ把持して一つずつ接続しており、その接続作業が極めて煩雑であり、作業の簡略化が望まれていた。
【0008】
ここで、特許文献2に記載の技術を用い、ワイヤハーネスの複数のコネクタを樹脂によってモールドすることにより、複数のコネクタをまとめて接続の容易化を図ることが考えられる。しかし、この場合であっても、ワイヤハーネスの補強部材への取付作業とは別に、互いに接続させるコネクタを両手でそれぞれ把持して接続作業を行わなければならなかった。
【0009】
また、電装機器との接続作業を行うために、各コネクタが設けられた枝線は作業性を考慮して余長を確保しなければならず、このため、必要となるケーブル長が長くなりワイヤハーネスのコストが嵩んでしまうという問題があった。
【0010】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、被配線部材へ極めて容易に取り付けて配線することができ、しかも経済的なワイヤハーネスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述した目的を達成するために、本発明に係るワイヤハーネスは、下記(1)から(5)のいずれかを特徴としている。
(1) 複数本のケーブルを束ねた幹線と、この幹線から分岐された枝線と、この枝線に接続された待受けコネクタとを有し、被配線部材へ取り付けられるワイヤハーネスであって、
前記幹線が樹脂からなるモールド体によって覆われて一体化され、
前記モールド体に一体成型された支持ブロック部と、該支持ブロック部に一部が埋め込まれて固定されて前記待受けコネクタを支持する支持パネルとからなる接続部が一体に設けられていること。
(2) 上記(1)の構成のワイヤハーネスにおいて、前記支持ブロック部は、前記待受けコネクタへの相手方コネクタの接続時の荷重を受け止めること。
(3) 上記(1)の構成のワイヤハーネスにおいて、前記支持ブロック部は、前記被配線部材に当接する荷重受け面を有し、前記待受けコネクタへの相手方コネクタの接続時の荷重が、前記支持ブロック部を介して前記被配線部材で受け止められること。
(4) 上記(1)〜(3)のいずれか一つの構成のワイヤハーネスにおいて、前記待受けコネクタは、前記支持パネルに対して、相手方コネクタの接続方向と直交する方向へ変位可能とされていること。
(5) 上記(1)から(4)のいずれか一つの構成のワイヤハーネスにおいて、前記モールド体は、発泡ビーズを発泡させてなる発泡モールド体であること。
【0012】
上記(1)の構成のワイヤハーネスでは、幹線を覆って一体化するモールド体に一体に設けられた接続部の支持ブロック部に、待受けコネクタを支持する支持パネルが埋め込まれて固定されているので、モールド体を車両等の被配線部材へ固定することにより、待受けコネクタも一括して被配線部材へ取り付けることができる。これにより、現場における待受けコネクタの取付作業が不要となり、被配線部材へ極めて容易に取り付けて配線することができる。
また、被配線部材に取り付けられた待受けコネクタへ相手方コネクタを押し込むだけで互いのコネクタを接続させることができるので、作業者が待受けコネクタと相手方コネクタとをそれぞれ把持して接続させるものと比較して、煩雑な接続作業を不要とすることができ、しかも、多極化することにより接続時に要する挿入力が大きくなっても、容易に接続させることができる。また、接続時に要する挿入力が大きくなっても、容易に接続させることができることとなり、よって、多数のコネクタをまとめて多極化することにより、一つの待受けコネクタに一つの相手方コネクタを接続させる一括接続構造としても、これらを容易に接続することができる。また、相手方コネクタとの接続作業のための余長を確保する必要もなくなり、よって、低コスト化を図ることができ、経済的である。
上記(2)の構成のワイヤハーネスでは、相手方コネクタを接続部の待受けコネクタへ接続する際に、相手方コネクタから受ける荷重が、支持ブロック部によって受け止められる。これにより、支持ブロック部の構造を簡略化することができる。
上記(3)の構成のワイヤハーネスでは、相手方コネクタを接続部の待受けコネクタへ接続する際に、相手方コネクタから受ける荷重が、支持ブロック部を介して被配線部材で受け止められる。これにより、接続荷重による支持ブロック部の破損を防止することができ、また、ワイヤハーネスを作業者が手で押えて接続荷重を受け止めることなく、相手方コネクタを接続部の待受けコネクタへ容易に接続することができる。
上記(4)の構成のワイヤハーネスでは、待受けコネクタが、支持パネルに対して、相手方コネクタの接続方向と直交する方向へ変位可能とされているので、相手方コネクタと待受けコネクタとの間に多少の位置ずれがあっても、相手方コネクタに合わせて待受けコネクタが変位することにより、相手方コネクタと待受けコネクタとを確実に接続させることができる。
上記(5)の構成のワイヤハーネスでは、モールド体が発泡ビーズを発泡させた発泡モールド体であるので、大幅な軽量化を図ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、被配線部材へ極めて容易に取り付けて配線することができ、しかも経済的なワイヤハーネスを提供できる。
【0014】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、実施形態に係るワイヤハーネスが取り付けられたインストルメントパネル内のリーンホースの概略図であり、図1(a)はリーンホースの上面図であり、図1(b)はリーンホースの断面図である。
【図2】図2は、実施形態に係るワイヤハーネスのセルフフィット接続部を示す図であって、図2(a)はセンタークラスタコネクタの未接続時の前方側から視た斜視図、図2(b)はセンタークラスタコネクタの接続時の前方側から視た斜視図である。
【図3】図3は、実施形態に係るワイヤハーネスのセルフフィット接続部を示す図であって、図3(a)はセンタークラスタコネクタの未接続時の後方側から視た斜視図、図3(b)はセンタークラスタコネクタの接続時の後方側から視た斜視図である。
【図4】図4は、実施形態に係るワイヤハーネスのリーンホースへの取り付け前におけるセルフフィット接続部を示す図であって、図4(a)は前方側から視た斜視図、図4(b)は後方側から視た斜視図である。
【図5】図5は、実施形態に係るワイヤハーネスのリーンホースへの取り付け前におけるセルフフィット接続部を示す図であって、図5(a)は正面図、図5(b)は背面図である。
【図6】図6は、待受けコネクタ及びその周辺の斜視図である。
【図7】図7は、発泡モールド体を成型する金型を説明する金型の一部分の斜視図である。
【図8】図8は、発泡モールド体を成型する下金型の一部分を示す図であって、図8(a)は斜視図、図8(b)は平面図である。
【図9】図9は、ケーブル及び支持パネルに装着した待受けコネクタを下金型へセットした状態を示す図であって、図9(a)は斜視図、図9(b)は平面図である。
【図10】発泡モールド体の成型後における下金型の一部分の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る実施形態の例を、図面を参照して説明する。
【0017】
図1は実施形態に係るワイヤハーネスが取り付けられたインストルメントパネル内のリーンホースの概略図であり、図1(a)はリーンホースの上面図であり、図1(b)はリーンホースの断面図、図2は実施形態に係るワイヤハーネスのセルフフィット接続部を示す図であって、図2(a)はセンタークラスタコネクタの未接続時の前方側から視た斜視図、図2(b)はセンタークラスタコネクタの接続時の前方側から視た斜視図、図3は実施形態に係るワイヤハーネスのセルフフィット接続部を示す図であって、図3(a)はセンタークラスタコネクタの未接続時の後方側から視た斜視図、図3(b)はセンタークラスタコネクタの接続時の後方側から視た斜視図、図4は実施形態に係るワイヤハーネスのリーンホースへの取り付け前におけるセルフフィット接続部を示す図であって、図4(a)は前方側から視た斜視図、図4(b)は後方側から視た斜視図、図5は実施形態に係るワイヤハーネスのリーンホースへの取り付け前におけるセルフフィット接続部を示す図であって、図5(a)は正面図、図5(b)は背面図、図6は待受けコネクタ及びその周辺の斜視図である。
【0018】
図1(a)、図1(b)に示すように、ワイヤハーネス11は、自動車のインストルメントパネル周りの計器等に接続される電線を有するもので、車体補強部材であるリーンホースRの長手方向に沿って配索されている。リーンホースRは、車幅方向に延在する導電性の鋼管からなるリーンホース本体13と、リーンホース本体13に固定された複数のブラケット(図示せず)とから構成されている。ワイヤハーネス11は、発泡樹脂からなる発泡モールド体16で一体化されている。ワイヤハーネス11は、発泡モールド体16から引き出される枝線18を複数有しており、枝線18には、各種のコネクタ19が設けられている。これらのコネクタ19が、インストルメントパネル周りの計器等に接続される。また、発泡モールド体16は、リーンホースRに沿って延在する本体部21と、本体部21の中央に設けられたセルフフィット接続部(接続部)22とを有している。
【0019】
図2(a)、図2(b)及び図3(a)、図3(b)に示すように、発泡モールド体16の本体部21には、幹線24が埋設されている。幹線24は互いに束ねられる複数本のケーブル15から構成されており、枝線18は、幹線24から分岐された1本または複数本のケーブル15から構成されている。
【0020】
セルフフィット接続部22には、センタークラスタコネクタ(相手方コネクタ)20が接続される。このセンタークラスタコネクタ20は、先端側が開口された嵌合凹部20aを有したもので、車両のインストルメントパネルの中央に設けられるオーディオ機器や空調操作部などの多くの電装機器に繋がる配線がまとめて接続されている。
【0021】
図4(a)、図4(b)及び図5(a)、図5(b)に示すように、セルフフィット接続部22は、間隔をあけて配置された一対の支持ブロック部23を有しており、これらの支持ブロック部23が、本体部21に一体に成型されている。これらの支持ブロック部23は、本体部21に対して、リーンホース(被配線部材)Rの配設側へ突出されており、これにより、これらの支持ブロック部23は、本体部21側である後端側に、リーンホースRが当接される荷重受け面23aが形成されている。
【0022】
これらの支持ブロック部23の間には、支持パネル25が設けられている。図6に示すように、支持パネル25は、例えば、プラスチック等の樹脂から成型されたもので、パネル部26と、このパネル部26の両端部に形成された側板部27とを有している。そして、これらの側板部27が支持ブロック部23に埋設され、これにより、支持パネル25が支持ブロック部23に一体的に設けられている。また、側板部27には、センタークラスタコネクタ20の接続方向に沿う突条27aが形成されており、セルフフィット接続部22への接続時に、センタークラスタコネクタ20の側面に形成されたガイド溝20bに側板部27の突条27aが挿入され、これにより、センタークラスタコネクタ20がセルフフィット接続部22へ位置決めされて導かれる。
【0023】
パネル部26には、その中央位置に矩形状の窓部26aが形成されており、このパネル部26は、本体部21側に配置される。このパネル部26には、その窓部26aに、本体部21側から待受けコネクタ19aが挿し込まれている。この待受けコネクタ19aには、幹線24から引き出されたセンタークラスタ用の枝線18が接続されている。この待受けコネクタ19aは、そのハウジング29の両側部に、後方へ延在し、さらに側方へ屈曲された係止片29aを有しており、パネル部26の窓部26aへ挿し込むと、係止片29aが窓部26aの縁部に係止され、窓部26aへの挿入方向への移動が規制される。また、待受けコネクタ19aのハウジング29には、その先端における両側部に、テーパ面29bが形成されており、これにより、ハウジング29は先細り形状とされている。
【0024】
この待受けコネクタ19aには、窓部26aへの挿し込み方向後方側に、係止部材30が取り付けられている。この係止部材30は、ハウジング29の表裏に配置される係止板部30aを有しており、これらの係止板部30aには、爪部30bが形成されている。そして、待受けコネクタ19aを窓部26aへ係止片29aが窓部26aの縁部を係止するまで挿し込むと、係止部材30の各係止板部30aの爪部30bがパネル部26の窓部26aの縁部を係止する。これにより、待受けコネクタ19aは、パネル部26の窓部26aへ挿し込まれた状態で支持パネル25に、ある程度のガタを持って保持され、よって、パネル部26の面方向であるセンタークラスタコネクタ20の接続方向と直交する方向へ変位可能とされている。
【0025】
発泡モールド体16は、ワイヤハーネス11がセットされた型内で複数の発泡ビーズを発泡させて一体化させた発泡スチロールからなる。この発泡モールド体16によって複数本のケーブル15が束ねられた状態に一体化されてワイヤハーネス11とされている。
【0026】
上記のワイヤハーネス11は、リーンホースRに対して、その下方側に本体部21が配置されて取り付けられる。すると、セルフフィット接続部22を構成する支持ブロック部23は、その後端側の荷重受け面23aがリーンホースRに当接した状態となる(図1(a)〜図3(b)参照)。
【0027】
この状態において、作業者がセルフフィット接続部22にセンタークラスタコネクタ20を押し込むと、このセンタークラスタコネクタ20が、ガイド溝20bに支持パネル25の側板部27の突条27aが挿入されることにより、待受けコネクタ19aへ向かって案内される。そして、このセンタークラスタコネクタ20の嵌合凹部20aにセルフフィット接続部22の待受けコネクタ19aが、テーパ面29bによって案内されて位置決めされながら嵌合されて接続される。このとき、待受けコネクタ19aは、支持パネル25のパネル部26の面方向であるセンタークラスタコネクタ20の接続方向と直交する方向へ変位可能に保持されているので、センタークラスタコネクタ20の嵌合凹部20aに対して変位しながら確実に嵌合する。また、このように、センタークラスタコネクタ20をセルフフィット接続部22へ接続する際に、センタークラスタコネクタ20から受ける荷重は、荷重受け面23aがリーンホースRに当接している支持ブロック部23を介してリーンホースRで受け止められる。これにより、作業者は、ワイヤハーネス11を手で押えて接続荷重を受け止めることなく、センタークラスタコネクタ20をセルフフィット接続部22へ容易に接続することができる。
【0028】
次に、待受けコネクタ19aを保持したセルフフット接続部22を有する発泡モールド体16を成型する場合について説明する。
【0029】
図7は発泡モールド体を成型する金型を説明する金型の一部分の斜視図、図8は発泡モールド体を成型する下金型の一部分を示す図であって、図8(a)は斜視図、図8(b)は平面図、図9はケーブル及び支持パネルに装着した待受けコネクタを下金型へセットした状態を示す図であって、図9(a)は斜視図、図9(b)は平面図、図10は発泡モールド体の成型後における下金型の一部分の斜視図である。
【0030】
まず、図7に示すように、発泡モールド体16を成型するための下金型31及び上金型51を用意する。
【0031】
図8(a)、図8(b)に示すように、下金型31は、ケーブル配索型溝部32を有しており、このケーブル配索型溝部32に、ワイヤハーネス11の幹線24部分のケーブル15が配索される。このケーブル配索型溝部32には、配索されるケーブル15をケーブル配索型溝部32の底面から浮いた位置に配置させる複数のケーブル支持部33がケーブル配索型溝部32の長手方向へ間隔をあけて設けられている。このケーブル支持部33は、ケーブル配索型溝部32の底面から立設された支持板部34と、この支持板部34の両側部から上方へ延在された支持棒部35とを有しており、これらの支持棒部35間にケーブル15が配索される。これにより、ケーブル15は、支持棒部35によってケーブル配索型溝部32の幅方向の略中央位置に配置されるとともに、支持板部34によってケーブル配索型溝部32の底面との間に間隔をあけた位置に配置される。
【0032】
また、この下金型31は、一対の支持ブロック成型凹部41を有しており、これらの支持ブロック成型凹部41で支持ブロック部23を成型する。また、これらの支持ブロック成型凹部41の間には、コネクタ収容凹部42が形成されている。このコネクタ収容凹部42と支持ブロック成型凹部41との間には、パネル収容溝部43が形成されており、また、コネクタ収容凹部42とケーブル配索型溝部32との間には、枝線収容溝部44が形成されている。
【0033】
上記の下金型31及び上金型51を用意したら、図9(a)、図9(b)に示すように、下金型31にワイヤハーネス11のケーブル15を配索させる。具体的には、ワイヤハーネス11の幹線24を構成するケーブル15を、ケーブル配索型溝部32に配索してケーブル支持部33に支持させる。また、待受けコネクタ19aを保持した支持パネル25の側板部27を支持ブロック成型凹部41へ収容させるとともに、パネル部26をパネル収容溝部43へ収容させ、待受けコネクタ19aをコネクタ収容凹部42に収容させる。また、幹線24から分岐されて待受けコネクタ19aが接続された枝線18は、枝線収容溝部44へ収容させる。
【0034】
この状態において、下金型31の上方から上金型51を被せる。上金型51には、発泡モールド体16の成型箇所に凹部52を有している。したがって、下金型31に上金型51を被せると、これらの下金型31と上金型51との間には、ケーブル配索型溝部32及び支持ブロック成型凹部41と凹部52とからなる成型空間が形成される。
【0035】
次に、これらの下金型31及び上金型51を成型装置(図示略)にセットして型締めし、この状態で、下金型31と上金型34とから形成された成型空間内へ、エアーによって発泡ビーズを充填する。ここで、充填する発泡ビーズは、粒子状のポリプロピレンビーズを一次発泡させることにより、米粒程度の大きさとしたものである。なお、この発泡ビーズは、成型装置へ下金型31及び上金型51をセットする前に、成型空間へ充填しておいても良い。
【0036】
この状態で、成型空間内の発泡ビーズを約140℃程度に加熱して発泡させる。これにより、加熱発泡された発泡ビーズ同士が融着し、よって、支持ブロック部23を有し、この支持ブロック部23に、待受けコネクタ19aを保持する支持パネル25が一体化されたセルフフィット接続部22が一体に成型される。冷却後、下金型31及び上金型51を成型装置から取り出し、図10に示すように、下金型31から上金型51を取り外し、下金型31から発泡モールド体16を抜き取る。
【0037】
これにより、互いに束ねられた複数本のケーブル15の周囲が発泡モールド体16によって覆われて一体化されたワイヤハーネス11が得られ、また、このワイヤハーネス11では、待受けコネクタ19aを保持する支持パネル25が支持ブロック部23に固定されたセルフフィット接続部22が一体的に設けられる。
【0038】
以上、説明したように、本実施形態に係るワイヤハーネスによれば、幹線24を覆って一体化する発泡モールド体16に一体に設けられたセルフフィット接続部22の支持ブロック部23に、待受けコネクタ19aを支持する支持パネル25が埋め込まれて固定されているので、発泡モールド体16を車両等のリーンホースRへ固定することにより、待受けコネクタ19aも一括してリーンホースRへ取り付けることができる。これにより、現場における待受けコネクタ19aの取付作業が不要となり、リーンホースRへ極めて容易に取り付けて配線することができる。
【0039】
また、リーンホースRに取り付けられた待受けコネクタ19aへセンタークラスタコネクタ20を押し込むだけで互いのコネクタを接続させることができるので、作業者が待受けコネクタ19aとセンタークラスタコネクタ20とをそれぞれ把持して接続させるものと比較して、煩雑な接続作業を不要とすることができる。また、接続時に要する挿入力が大きくなっても、容易に接続させることができることとなり、よって、本実施形態のように、多数のコネクタをまとめて多極化することにより、一つの待受けコネクタ19aに一つのセンタークラスタコネクタ20を接続させる一括接続構造としても、これらを容易に接続することができる。
【0040】
また、センタークラスタコネクタ20との接続作業のための余長を確保する必要もなくなり、よって、低コスト化を図ることができ、経済的である。
【0041】
また、センタークラスタコネクタ20をセルフフィット接続部22の待受けコネクタ19aに接続する際に、センタークラスタコネクタ20から受ける荷重が、支持ブロック部23を介してリーンホースRで受け止められる。これにより、接続荷重による支持ブロック部23の破損を防止することができ、また、ワイヤハーネス11を作業者が手で押えて接続荷重を受け止めることなく、センタークラスタコネクタ20をセルフフィット接続部22の待受けコネクタ19aへ容易に接続することができる。
【0042】
しかも、待受けコネクタ19aが、支持パネル25に対して、パネル部26の面方向であるセンタークラスタコネクタ20の接続方向と直交する方向へ変位可能とされているので、センタークラスタコネクタ20と待受けコネクタ19aとの間に多少の位置ずれがあっても、センタークラスタコネクタ20に合わせて待受けコネクタ19aが変位することにより、センタークラスタコネクタ20と待受けコネクタ19aとを確実に接続させることができる。
【0043】
なお、上記実施形態では、支持パネル25が埋め込まれた支持ブロック部23の後端面をリーンホースRに当接される荷重受け面23aとした。が、支持パネル25のパネル部26に、支持ブロック部23の後端へ延在する部分を形成し、この延在させたパネル部26で接続時の荷重を受けるようにしてリーンホースRに当接させないようにしても良い。
【0044】
また、発泡モールド体16は、発泡ビーズを発泡させたものであるので、一般的な樹脂モールドと比較して大幅な軽量化を図ることができる。
【0045】
また、発泡樹脂からなる発泡モールド体16は、一般的な樹脂モールドと比較してケーブル15との固着力が小さいため、成型後の冷却養生時に、ケーブル15と発泡モールド体16との熱膨張率の相違によるテンションの付与を極力抑えることができる。これにより、冷却養生時におけるテンションが付与されることによるケーブル15や発泡モールド体16への不具合をなくすことができる。
【0046】
また、冷却養生時におけるテンションが抑えられるので、ケーブル15の長手方向にわたって発泡モールド体16で一体化させることができる。
【0047】
また、冷却養生時におけるテンションを考慮する必要がないので、煩雑なケーブル15と発泡樹脂との相性の確認作業を不要とすることができ、製造の容易化を図ることができる。
【0048】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、製造方法を含めて、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【符号の説明】
【0049】
11 ワイヤハーネス
15 ケーブル
16 発泡モールド体(モールド体)
18 枝線
19a 待受けコネクタ
20 センタークラスタコネクタ(相手方コネクタ)
22 セルフフィット接続部(接続部)
23 支持ブロック部
23a 荷重受け面
24 幹線
25 支持パネル
R リーンホース(被配線部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本のケーブルを束ねた幹線と、この幹線から分岐された枝線と、この枝線に接続された待受けコネクタとを有し、被配線部材へ取り付けられるワイヤハーネスであって、
前記幹線が樹脂からなるモールド体によって覆われて一体化され、
前記モールド体に一体成型された支持ブロック部と、該支持ブロック部に一部が埋め込まれて固定されて前記待受けコネクタを支持する支持パネルとからなる接続部が一体に設けられていることを特徴とするワイヤハーネス。
【請求項2】
前記支持ブロック部は、前記待受けコネクタへの相手方コネクタの接続時の荷重を受け止めることを特徴とする請求項1に記載のワイヤハーネス。
【請求項3】
前記支持ブロック部は、前記被配線部材に当接する荷重受け面を有し、前記待受けコネクタへの相手方コネクタの接続時の荷重が、前記支持ブロック部を介して前記被配線部材で受け止められることを特徴とする請求項1に記載のワイヤハーネス。
【請求項4】
前記待受けコネクタは、前記支持パネルに対して、相手方コネクタの接続方向と直交する方向へ変位可能とされていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のワイヤハーネス。
【請求項5】
前記モールド体は、発泡ビーズを発泡させてなる発泡モールド体であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のワイヤハーネス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−133926(P2012−133926A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−283317(P2010−283317)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】