説明

ワイヤレス給電装置

【課題】磁場共振型のワイヤレス給電において、駆動系をシンプルに構成する。
【解決手段】給電コイルLから受電コイルLには磁気共振により電力が伝送される。駆動回路162は、共振周波数fの駆動信号DRを出力し、スイッチングトランジスタQとスイッチングトランジスタQを交互にオン・オフさせる。給電コイルLには共振周波数fの交流電力が供給され、給電コイルLから受電コイルLには共振周波数fの交流電力が供給される。給電コイルLを流れる交流電流Iが発生させる交流磁界により、検出コイルLSSには誘導電流ISSが流れる。駆動回路162は、この誘導電流ISSが発生させる交流信号を利用して、駆動信号DRの出力を継続させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤレスにて電力を送るためのワイヤレス給電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電源コードなしで電力を供給するワイヤレス給電技術が注目されつつある。現在のワイヤレス給電技術は、(A)電磁誘導を利用するタイプ(近距離用)、(B)電波を利用するタイプ(遠距離用)、(C)磁場の共振現象を利用するタイプ(中距離用)の3種類に大別できる。
【0003】
電磁誘導を利用するタイプ(A)は、電動シェーバーなどの身近な家電製品において一般的に利用されているが、数cm程度の近距離でしか使えないという課題がある。電波を利用するタイプ(B)は、遠距離で使えるが電力が小さいという課題がある。共振現象を利用するタイプ(C)は、比較的新しい技術であり、数m程度の中距離でも高い電力伝送効率を実現できることから特に期待されている。たとえば、EV(Electric Vehicle)の車両下部に受電コイルを埋め込み、地中の給電コイルから非接触にて電力を送り込むという案も検討されている。以下、タイプ(C)を「磁場共振型」とよぶ。
【0004】
磁場共振型は、マサチューセッツ工科大学が2006年に発表した理論をベースとしている(特許文献1参照)。特許文献1では、4つのコイルを用意している。これらのコイルを給電側から順に「エキサイトコイル」、「給電コイル」、「受電コイル」、「ロードコイル」とよぶことにする。エキサイトコイルと給電コイルは近距離にて向かい合わされ、電磁結合する。同様に、受電コイルとロードコイルも近距離にて向かい合わされ、電磁結合する。これらの距離に比べると、給電コイルから受電コイルまでの距離は「中距離」であり、比較的大きい。このシステムの目的は、給電コイルから受電コイルにワイヤレス給電することである。
【0005】
エキサイトコイルに交流電力を供給すると、電磁誘導の原理により給電コイルにも電流が流れる。給電コイルが磁場を発生させ、給電コイルと受電コイルが磁気的に共振すると、受電コイルには大きな電流が流れる。電磁誘導の原理によりロードコイルにも電流が流れ、ロードコイルと直列接続される負荷から電力が取り出される。磁場共振現象を利用することにより、給電コイルから受電コイルの距離が大きくても高い電力伝送効率を実現できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国公開2008/0278264号公報
【特許文献2】特開2006−230032号公報
【特許文献3】国際公開2006/022365号公報
【特許文献4】米国公開2009/0072629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
給電コイルから受電コイルへの電力伝送効率を最大化するためには、共振周波数の交流信号を生成する必要がある。たとえば、特許文献2では、発振器から所定周波数の信号(矩形波)を発生させ、更に、分周器によりその周波数を1/n倍に分周している。そして、この分周信号によりドライブ用ブリッジ回路(給電手段)を駆動している。本発明者は、交流電力そのものを利用することにより、給電コイルの駆動系をよりシンプルに構成できることに想到した。
【0008】
本発明は、本発明者による上記認識に基づいて完成された発明であり、磁場共振型のワイヤレス給電において、給電コイルの駆動系をシンプルな構成にて実現することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るワイヤレス給電装置は、給電コイルと受電コイルの共振周波数にて、給電コイルから受電コイルにワイヤレス送電するための装置である。この装置は、直列接続された第1のコイルおよびキャパシタを含む共振回路と、共振回路への第1および第2の方向からの電流の供給を制御する第1および第2のスイッチと、第1および第2のスイッチを交互に導通させることにより共振回路を共振させ、第1のコイルを給電コイルとして、第1のコイルから受電コイルへ交流電力を送電させる送電制御回路を備える。送電制御回路は、交流電力により第1および第2のスイッチをフィードバック制御することにより、共振回路の共振状態を持続させる。
【0010】
この装置は、エキサイトコイルを用いることなく、直接給電コイルを駆動できる。したがって、製造コストを抑え構成をコンパクトにしやすい。装置が発生させる交流電力を利用して第1および第2のスイッチをフィードバック制御するため、他の発振源を持たない場合でもワイヤレス給電を持続させやすくなる。この結果、給電システムの駆動系をシンプルに構成できる。
【0011】
この装置は、交流電力が発生させる磁界により誘導電流を発生させる第2のコイルを更に備えてもよい。送電制御回路は、誘導電流により第1および第2のスイッチをフィードバック制御してもよい。交流電力が発生させる磁界により第2のコイル(検出コイル)に誘導電流を発生させ、その誘導電流を利用して第1および第2のスイッチをフィードバック制御するため、給電コイルに直接的な負荷がかかりにくい。このため、給電コイルの共振特性への影響を抑制しつつ、共振状態を維持しやすい構成となる。
【0012】
送電制御回路は、共振回路のコイルを給電コイルとして動作させるのではなく、エキサイトコイルとして動作させ、別のコイルとして設けられる給電コイルに電力を供給させてもよい。
【0013】
第2のコイルはトロイダルコアに巻回されてもよい。そして、このトロイダルコアに第1のコイルの一部を通過させることにより、第1コイルと第2コイルとで結合トランスを形成してもよい。このようにトロイダルコアを第1および第2のコイルで共有することにより、第2のコイルに誘導電流を好適に発生させることができる。
【0014】
この装置は、有効信号を発生させる有効信号発生器、を更に備えてもよい。そして、送電制御回路は、有効信号の発生期間中であることを条件として、交流電力により第1および第2のスイッチを駆動してもよい。このような態様によれば、有効信号の発生期間の長さを制御することにより、交流電力の大きさや給電期間を調整しやすくなる。
【0015】
送電制御回路は、有効信号の発生を契機として、第1および第2のスイッチのいずれかの駆動を開始してもよい。有効信号をいわば開始スイッチとすることにより、交流電力の給電開始タイミングを有効信号発生器により制御できる。また、有効信号が停止したとき、第1および第2のスイッチをいずれもオフとすることにより給電を強制停止させてもよい。
【0016】
本発明に係る別のワイヤレス給電装置も、給電コイルと受電コイルの共振周波数にて、給電コイルから受電コイルにワイヤレス送電するための装置である。この装置は、第1および第2の電流経路を含む電源回路と、給電コイルと、給電コイルと磁気結合して電源回路から供給される交流電力を給電コイルに供給するエキサイトコイルと、第1および第2の電流経路それぞれに直列に接続される第1および第2のスイッチを共振周波数にて交互に導通させることによりエキサイトコイルに交流電力を供給させる送電制御回路を備える。送電制御回路は、交流電力により第1および第2のスイッチをフィードバック制御することによりエキサイトコイルへの交流電力の供給を持続させる。
【0017】
このような態様においても、装置が発生させる交流電力を利用して第1および第2のスイッチをフィードバック制御するため、発振源を持たなくてもワイヤレス給電を持続させやすくなる。この結果、給電システムの駆動系をシンプルに構成できる。
【0018】
この装置は、交流電力が発生させる磁界により誘導電流を発生させる検出コイルを更に備えてもよい。そして、送電制御回路は、誘導電流により第1および第2のスイッチをフィードバック制御してもよい。
【0019】
検出コイルは、給電コイルを流れる交流電流が発生させる磁界により誘導電流を発生させてもよいし、エキサイトコイルを流れる交流電流が発生させる磁界により誘導電流を発生させてもよい。
【0020】
検出コイルはトロイダルコアに巻回されてもよい。そして、このトロイダルコアに給電コイルやエキサイトコイルの一部を通過させることにより、給電コイルおよびエキサイトコイルの一方と検出コイルとで結合トランスを形成してもよい。
【0021】
この装置も、有効信号を発生させる有効信号発生器を更に備えてもよい。そして、送電制御回路は、有効信号の発生期間中であることを条件として、第1および第2のスイッチを駆動してもよい。また、送電制御回路は、有効信号の発生を契機として、第1および第2のスイッチのいずれかの駆動を開始してもよい。
【0022】
本発明におけるワイヤレス電力伝送システムは、上述した各種のワイヤレス給電装置と、受電コイルと、受電コイルと磁気結合して、受電コイルが給電コイルから受電した電力を供給されるロードコイルを備える。
【0023】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせ、本発明の表現を方法、装置、システムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、磁場共振型のワイヤレス給電技術において、給電コイルの駆動系をシンプルな構成にて実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第1実施形態におけるワイヤレス電力伝送システムのシステム構成図である。
【図2】検出コイルおよび給電コイルの拡大構成図である。
【図3】電圧および電流の変化過程を示すタイムチャートである。
【図4】波形増幅器の前後における制御電位の変化過程を示すタイムチャートである。
【図5】有効信号、制御信号および各スイッチングトランジスタのゲート電位の関係を示すタイミングチャートである。
【図6】第1実施形態におけるワイヤレス電力伝送システムの別例としてのシステム構成図である。
【図7】第2実施形態におけるワイヤレス電力伝送システムのシステム構成図である。
【図8】第3実施形態におけるワイヤレス電力伝送システムのシステム構成図である。
【図9】第3実施形態におけるワイヤレス電力伝送システムの別例としてのシステム構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を説明する。まず、第1実施形態および第2実施形態としてハーフブリッジ型について説明する。次に、第3実施形態としてプッシュプル型について説明する。各実施形態を特に区別しないときには単に「本実施形態」とよぶ。
【0027】
[第1実施形態:ハーフブリッジ型]
図1は、第1実施形態におけるワイヤレス電力伝送システム100のシステム構成図である。ワイヤレス電力伝送システム100は、ワイヤレス給電装置200、受電コイル回路130およびロード回路140を含む。ワイヤレス給電装置200は、その一部に給電コイルLを含む。給電コイルLと受電コイル回路130の間には数m程度の距離がある。ワイヤレス電力伝送システム100の主目的は、給電コイルLから受電コイル回路130にワイヤレスにて交流電力を送電することである。本実施形態におけるワイヤレス電力伝送システムは、100MHz前後の共振周波数fにて動作させることを想定したシステムである。したがって、給電コイルLと受電コイルLの共振周波数fは100MHzに設定される。なお、本実施形態におけるワイヤレス電力伝送システムは、たとえば、ISM(Industry-Science-Medical)周波数帯のような高周波数帯にて動作させることも可能である。
【0028】
ワイヤレス給電装置200は、エキサイトコイルを介すことなく、給電コイルLに交流電力を直接供給するハーフブリッジ型の回路である。図1に示すように、ワイヤレス給電装置200は上下対称形となっている。給電コイルLを流れる電流Iは交流であり、同図矢印にて示す方向を正方向、反対方向を負方向とする。本実施形態における給電コイルLの巻き数は7回、導線の直径は5mm、給電コイルL自体の直径は280mmである。
【0029】
受電コイル回路130は、受電コイルLとキャパシタCが直列接続された回路である。給電コイルLと受電コイルLは互いに向かい合っている。給電コイルLと受電コイルLの距離は、0.2m〜1m程度と比較的長い。本実施形態における受電コイルLの巻き数は7回、導線の直径は5mm、受電コイルL自体の直径は280mmである。受電コイル回路130の共振周波数fも100MHzとなるように、受電コイルLとキャパシタCそれぞれの値が設定されている。したがって、給電コイルLと受電コイルLは同一形状である必要はない。給電コイルLが共振周波数fにて磁界を発生させると、給電コイルLと受電コイルLは磁気的に共振し、受電コイル回路130にも大きな電流Iが流れる。同図矢印に示す方向を正方向、反対方向を負方向とする。電流Iの向きと電流Iの向きは逆(逆相)である。
【0030】
ロード回路140は、ロードコイルLと負荷Rが直列接続された回路である。本実施形態における負荷Rは電球である。受電コイルLとロードコイルLは互いに向かい合っている。受電コイルLとロードコイルLの距離は10mm以下と比較的近い。このため、受電コイルLとロードコイルLは電磁的に強く結合している。本実施形態におけるロードコイルLの巻き数は1回、導線の直径は3mm、ロードコイルL自体の直径は210mmである。受電コイルLに電流Iが流れることにより、ロード回路140に起電力が発生し、ロード回路140に電流Iが流れる。同図矢印に示す方向を正方向、反対方向を負方向とする。電流Iの向きと電流Iの向きは逆(逆相)である。すなわち、電流Iは、電流Iと同相である。こうして、電源回路200の給電コイルLから送電された交流電力は、受電コイル回路130とロード回路140により受電され、負荷Rから取り出される。
【0031】
負荷Rを受電コイル回路130に直列接続すると、受電コイル回路130のQ値が悪くなる。このため、受電用の受電コイル回路130と電力取り出し用のロード回路140を分離している。また、電力伝送効率を高めるためには、給電コイルL、受電コイルLおよびロードコイルLの中心線を揃えることが好ましい。
【0032】
次に、ワイヤレス給電装置200の構成を説明する。まず、ゲート駆動用トランスT1の一次側に駆動回路162が接続される。駆動回路162はトランスT1一次コイルLに動作周波数fの交流電圧(駆動信号DR)を供給する回路である。ただし、駆動回路162は交流電圧を独自生成する発振器ではない。駆動回路162は、給電コイルLから発生する交流電力を利用することにより共振周波数fと等しい動作周波数fの交流電圧(駆動信号DR)を供給する。詳細については後述する。
【0033】
駆動信号DRの電圧波形は正弦波でもよいが、ここでは矩形波であるとして説明する。この駆動信号DRにより、トランスT1一次コイルLには正負両方向に交互に電流が流れる。トランスT1一次コイルLとトランスT1二次コイルL、トランスT1二次コイルLはゲート駆動用の結合トランスT1を形成する。電磁誘導により、トランスT1二次コイルLとトランスT1二次コイルLにも正負の両方向に交互に電流が流れる。駆動回路162とゲート駆動用トランスT1が、ワイヤレス電力伝送システム100の駆動系として、ワイヤレス電力伝送システム100から受電コイル回路130等への送電を制御する。
【0034】
トランスT1二次コイルLの一端は、スイッチングトランジスタQのゲートと接続され、他端はスイッチングトランジスタQのソースと接続される。トランスT1二次コイルLの一端は、別のスイッチングトランジスタQのゲートと接続され、他端はスイッチングトランジスタQのソースと接続される。駆動回路162が共振周波数fにて駆動信号DRを発生させると、スイッチングトランジスタQとスイッチングトランジスタQの各ゲートには、電圧Vx(Vx>0)が共振周波数fにて交互に印加される。このため、スイッチングトランジスタQとスイッチングトランジスタQは共振周波数fにて交互にオン・オフする。スイッチングトランジスタQとスイッチングトランジスタQは同一特性のエンハンスメント型MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)であるが、バイポーラトランジスタなど他のトランジスタでもよい。トランジスタの代わりにリレースイッチ等、他のスイッチを用いてもよい。
【0035】
スイッチングトランジスタQのドレインは、電源Vdd1の正極に接続される。電源Vdd1の負極は、キャパシタCと給電コイルLを介して、スイッチングトランジスタQのソースに接続される。電源Vdd1の負極の電位は接地電位である。スイッチングトランジスタQのソースは、電源Vdd2の負極に接続される。電源Vdd2の正極は、キャパシタCと給電コイルLを介して、スイッチングトランジスタQのドレインに接続される。電源Vdd2の正極の電位は接地電位である。
【0036】
スイッチングトランジスタQのソース・ドレイン間の電圧をソース・ドレイン電圧VDS1、スイッチングトランジスタQのソース・ドレイン間の電圧をソース・ドレイン電圧VDS2とよぶ。また、スイッチングトランジスタQのソース・ドレイン間を流れる電流をソース・ドレイン電流IDS1、スイッチングトランジスタQのソース・ドレイン間を流れる電流をソース・ドレイン電流IDS2とする。ソース・ドレイン電流IDS1、IDS2については、同図矢印に示す方向を正方向、反対方向を負方向とする。
【0037】
キャパシタCと給電コイルLは共振周波数fにて電流共振するように値設定される。いいかえれば、キャパシタCと給電コイルLは、共振周波数fの「共振回路」を形成している。また、キャパシタCと給電コイルLが存在することによりソース・ドレイン電流IDS1、IDS2の電流波形は正弦波状となる。
【0038】
スイッチングトランジスタQのソース・ドレイン間にはキャパシタCQ1が並列接続され、スイッチングトランジスタQのソース・ドレイン間にはキャパシタCQ2が並列接続される。キャパシタCQ1とキャパシタCQ2は同一特性のキャパシタである。キャパシタCQ1はソース・ドレイン電圧VDS1の電圧波形を整形し、キャパシタCQ2はソース・ドレイン電圧VDS2の電圧波形を整形するために挿入される。キャパシタCQ1、CQ2を省略しても、ワイヤレス給電装置200によるワイヤレス給電は可能である。特に、共振周波数fが低いときには、これらのキャパシタの影響は小さくなる。
【0039】
スイッチングトランジスタQが導通(オン)するとき、スイッチングトランジスタQは非導通(オフ)となる。このときのメインの電流経路(以下、「第1電流経路102」とよぶ)は、電源Vdd1からスイッチングトランジスタQ、給電コイルL、キャパシタCを経由して帰還する経路となる。スイッチングトランジスタQは、第1電流経路102の導通・非導通を制御するスイッチとして機能する。
【0040】
スイッチングトランジスタQが導通(オン)するとき、スイッチングトランジスタQは非導通(オフ)となる。このときのメインの電流経路(以下、「第2電流経路104」とよぶ)は、電源Vdd2からキャパシタC、給電コイルL、スイッチングトランジスタQを経由して帰還する経路となる。スイッチングトランジスタQは、第2電流経路104の導通・非導通を制御するスイッチとして機能する。
【0041】
駆動回路162が共振周波数fにて駆動信号DRを供給すると、第1電流経路102と第2電流経路104が共振周波数fにて交互に導通する。キャパシタCと給電コイルLには共振周波数fの交流電流が流れることになるため、キャパシタCと給電コイルLは共振状態となる。受電コイル回路130も共振周波数fの共振回路であるから、給電コイルLと受電コイルLは磁気的に共振する。このとき、電力伝送効率は最大となる。
【0042】
給電コイルLの近くには、検出コイルLSSが設置される。検出コイルLSSは、貫通孔を有するコア154(トロイダルコア)にN回巻き付けられたコイルである。給電コイルLの一部もコア154を貫通するため、給電コイルLと検出コイルLSSは結合トランスを形成する。共振周波数fの交流電流Iが発生させる交流磁界により、検出コイルLSSには共振周波数fの誘導電流ISSが流れる。電流Iと誘導電流ISSは同相である。
【0043】
検出コイルLSSの両端には抵抗Rが接続される。抵抗Rの一端Bは接地され、他端AはキャパシタC、波形増幅器160を介して駆動回路162に接続される。キャパシタCは、接続点Aの電位Vt0の電圧波形から直流成分をカットするために挿入される。カット後の電位を制御電位Vt1とよぶ。波形増幅器160は、アナログ波形の制御電位Vt1を増幅して2値化し、デジタル波形の制御電位Vt2に変換する。波形増幅器160は、制御電位Vt1が所定の閾値、たとえば、0.1(V)より大きくなると飽和電圧5(V)を出力する増幅器である。このため、電位Vt1がアナログ波形となる場合でも、波形増幅器160によって制御電位Vt1はデジタル波形の制御電位Vt2に変換される。詳細については図4に関連して後述する。制御電位Vt2は、制御信号INとして、駆動回路162に入力信号となる。
【0044】
駆動回路162は、制御信号INおよび有効信号ENを入力信号、駆動信号DRを出力信号とする回路である。有効信号ENは、有効信号発生器164から供給される2値の信号である。駆動回路162は、既知の回路であり、たとえば、テキサス・インツルメンツ社の製品番号UCC37321のIC(Integrated Circuit)を利用すればよい。
【0045】
有効信号ENがローレベルからハイレベルに変化するとき、駆動信号DRはハイレベルまたはローレベルに変化する。このため、トランスT1一次コイルLにはいずれかの方向に瞬間的に電流が流れる。スイッチングトランジスタQとスイッチングトランジスタQのいずれかがオンとなるため、第1電流経路102か第2電流経路104のいずれかに電流Iが流れる。ここでは、電流Iは正方向(第1電流経路102)に流れたとする。給電コイルLに正方向の電流Iが流れると、検出コイルLSSに誘導電流ISSが発生し、駆動回路162にはハイレベルの制御信号INが入力される。共振回路(給電コイルLとキャパシタC)の共振現象により、やがて電流Iの向きは負方向(第2電流経路104)に変化する。このとき、駆動回路162にはローレベルの制御信号が入力される。この結果、制御信号INは共振周波数fの矩形波となる。更に詳細については図4に関連して後述する。
【0046】
有効信号ENがハイレベルに維持されている期間においては、駆動信号DR=制御信号INとなる。駆動信号DRは矩形波となるため、スイッチングトランジスタQとスイッチングトランジスタQが交互に導通し、共振状態が維持される。
【0047】
有効信号ENがローレベルとなると、駆動信号DRは強制停止される。このときには、スイッチングトランジスタQとスイッチングトランジスタQのいずれもオフとなり、電力供給は停止される。
【0048】
ワイヤレス給電装置200の動作周波数fが共振周波数fと一致するとき、給電コイルLには共振周波数fにて交流電流Iが流れ、受電コイル回路130にも共振周波数fにて交流電流Iが流れる。給電コイルLおよびキャパシタCと、受電コイル回路130の受電コイルLおよびキャパシタCは、同一の共振周波数fにて共振するため、給電コイルLから受電コイルLへの電力伝送効率は最大となる。
【0049】
図2は、検出コイルLSSおよび給電コイルLの拡大構成図である。図2は、検出コイルLSSの周辺構成を詳細に示す図である。コア154の形状は貫通孔を有する筒形状であり、その材質はフェライト、珪素鋼板、パーマロイ(permalloy)等の既知材料である。本実施形態における検出コイルLSSの巻き数Nは100回である。コア154の貫通孔を給電コイルLの一部が貫通している。これは、コア154に対する給電コイルLの巻き数Nが1回であることを意味する。このような構成により、検出コイルLSSと給電コイルLは結合トランスを形成する。
【0050】
給電コイルLが一次側巻線、検出コイルLSSが二次側巻線となることにより両者間で結合トランスが形成される。給電コイルLの交流電流Iが発生させる交流磁界により、検出コイルLSSには同相の誘導電流ISSが流れる。等アンペア・ターンの法則により、誘導電流ISSの大きさは、I・(N/N)となる。検出コイルLSSの一端Aにおける電位Vt0が計測対象となる。検出コイルLSSの他端Bは接地されるので、電位Vt0は抵抗Rに印加される電圧値に等しい。
【0051】
図3は、電圧および電流の変化過程を示すタイムチャートである。時刻t〜時刻tの期間(以下、「第1期間」とよぶ)は、スイッチングトランジスタQがオン、スイッチングトランジスタQがオフとなる期間である。時刻t〜時刻tの期間(以下、「第2期間」とよぶ)は、スイッチングトランジスタQがオフ、スイッチングトランジスタQがオンとなる期間、時刻t〜時刻tの期間(以下、「第3期間」とよぶ)は、スイッチングトランジスタQがオン、スイッチングトランジスタQがオフとなる期間、時刻t〜時刻tの期間(以下、「第4期間」とよぶ)は、スイッチングトランジスタQがオフ、スイッチングトランジスタQがオンとなる期間であるとする。
【0052】
スイッチングトランジスタQのゲート・ソース電圧VGS1が所定の閾値Vを超えたとき、スイッチングトランジスタQは飽和状態となる。したがって、第1期間の開始タイミングである時刻tにスイッチングトランジスタQがオン(導通)となると、ソース・ドレイン電流IDS1が流れ始める。いいかえれば、正方向(第1電流経路102)に電流Iが流れ始める。共振回路(給電コイルLとキャパシタC)が電流共振するため、電流Iの第1期間における電流波形は矩形波とはならず、立ち上がりと立ち下がりが緩やかになる。
【0053】
第2期間の開始タイミングである時刻tにスイッチングトランジスタQがオフ(非導通)となると、ソース・ドレイン電流IDS1は流れなくなる。代わりに、スイッチングトランジスタQがオン(導通)となり、ソース・ドレイン電流IDS2が流れはじめる。すなわち、負方向(第2電流経路104)に電流Iが流れ始める。
【0054】
電流Iと誘導電流ISSは同相であり、電位Vt1は誘導電流ISSと同相である。このため、電流Iの電流波形と電位Vt1の電圧波形は同期する。第3期間、第4期間以降は、第1期間、第2期間と同様の波形を繰り返す。
【0055】
図4は、制御電位Vt1と制御電位Vt2の変化過程を示すタイムチャートである。図4では、有効信号ENはハイレベルに固定されているものとする。トランスT1一次コイルLに瞬間電流が流れると、スイッチングトランジスタQとスイッチングトランジスタQのいずれかがオンとなり、第1電流経路102か第2電流経路104のいずれかの経路に電流Iが流れる。以下、第1電流経路102に電流Iが流れたとする。給電コイルLに流れる正方向の電流Iによって誘導電流ISSが発生する。図3に示したように、制御電位Vt1は正弦波状に増加する。波形増幅器160は制御電位Vt1を飽和電圧まで増幅する。したがって、電流Iが正方向(第1電流経路102)に流れ始めると、駆動回路162にはハイレベルの制御信号INが入力される。
【0056】
共振回路(給電コイルLとキャパシタC)の共振現象により、電流Iは徐々に減少し、負方向(第2電流経路104)に流れようとする。このとき制御電位Vt1も徐々に減少し、波形増幅器160は最低電位(ローレベル)の制御電位Vt1を出力する。駆動回路162にはローレベルの制御信号INが入力されるため、ローレベルの駆動信号DRが発生し、スイッチングトランジスタQがオンとなる。スイッチングトランジスタQはオフとなる。
【0057】
以降は同様であり、共振回路(給電コイルLとキャパシタC)の共振現象により、電流Iの流れる方向が共振周波数fにて変化する。電流Iの流れる方向が変化するごとに制御電位Vt1が変化し、スイッチングトランジスタQとスイッチングトランジスタQが交互に導通する。駆動回路162は、いったん共振現象を発生させた後は、その共振現象を利用してスイッチングトランジスタQとスイッチングトランジスタQをフィードバック制御している。このため、ワイヤレス給電装置200は発振器を持たなくても自励動作できる。
【0058】
図5は、有効信号EN、制御信号INおよび各スイッチングトランジスタのゲート電位の関係を示すタイミングチャートである。時刻tからtまでの期間において有効信号ENはローレベルである。時刻tからtまでの期間においては有効信号ENはハイレベルである。有効信号ENがローレベルに維持される期間を「停止期間」、有効信号ENがハイレベルに維持される期間を「駆動期間」とよぶ。
【0059】
まず、時刻tからtの停止期間においては、駆動信号DRはローレベルに固定される。トランスT1一次コイルLに電流が流れないため、スイッチングトランジスタQとスイッチングトランジスタQのいずれもオフである。ゲート・ソース電圧VGS1、VGS2はいずれもローレベルであり、共振回路に電流Iが流れないため、制御信号INもローレベルに固定される。
【0060】
時刻tに有効信号ENがローレベルからハイレベルに変化すると、駆動信号DRはハイレベルに変化する。トランスT1一次コイルLに瞬間的に電流が流れ、電流Iが流れ始める。電流Iが流れると、共振回路は共振を開始し、共振周波数fにて変化するデジタルパルス状の制御信号INが発生する。駆動期間においては、制御信号INの立ち上がりと立ち下がりに同期して駆動信号DRが変化する。駆動信号DRが変化するごとに、トランスT1一次コイルLには電流が流れる。トランスT1一次コイルLに流れる交流電流によって、スイッチングトランジスタQとスイッチングトランジスタQは交互に導通する。このため、駆動期間(時刻tからtの期間)においては、共振周波数fの交流電流Iが流れ続ける。給電コイルLは共振周波数fの交流電力を受電コイルLに給電し続ける。
【0061】
時刻tに有効信号ENがローレベルに変化すると、駆動信号DRはローレベルに固定され、電流Iは流れなくなる。ワイヤレス給電装置200からの給電も停止する。
【0062】
ワイヤレス給電装置200の場合、有効信号ENのデューティ比を変化させれば、給電コイルLから供給する交流電力の大きさを変化させることができる。本実施形態の場合、有効信号ENのデューティ比を変化させることにより、負荷Rとして接続されている電球の明るさが変化する。
【0063】
なお、誘導電流ISSではなく、電流Iから制御信号INを直接生成すると、給電コイルLに新たな負荷がかかり、共振回路のインピーダンスZが変化するため、Q値が悪化してしまう。共振している給電コイルLの電流経路に駆動回路162等を直接接続するのは、音叉を触りながらその振動を測定するようなものである。ワイヤレス電力伝送システム100では、給電コイルLが発生させる交流磁界を利用して検出コイルLSSに誘導電流ISSを発生させることにより、制御信号INを生成している。ワイヤレス給電装置200、特に、共振回路部分に負荷をかけない構成であることから、Q値への影響を抑制しつつスイッチングトランジスタQとスイッチングトランジスタQをフィードバック制御できる。
【0064】
給電コイルLに限らず、受電コイルLやロードコイルLなどを一次コイルとして結合トランスを形成し、検出コイルLSSに誘導電流ISSを発生させてもよい。
【0065】
図6は、第1実施形態におけるワイヤレス電力伝送システム100の別例としてのシステム構成図である。図1と同一の符号を付した構成は、図1で説明した構成と同一または同様の機能を有する。図1のシステム構成では給電コイルLと検出コイルLSSがコア154を共有することにより結合トランスを構成した。図6では、検出コイル回路170により制御電位Vt2を取り出している。検出コイル回路170は、コア154等を給電コイルL等と共有しないため、設置自由度が高まるというメリットがある。
【0066】
検出コイル回路170は、検出コイルLSSと抵抗Rが直列接続された回路である。給電コイルLが発生させる磁束が検出コイルLSSを通過するように検出コイル回路170を設置する。図1と同じく、抵抗Rの一端Bは接地され、他端Aから電位Vt0が検出される。給電コイルLに流れる電流Iが発生させる交流磁界により、検出コイル回路170には誘導電流ISSが流れる。この誘導電流ISSにより発生する電位Vt0から制御信号INを生成する。
【0067】
検出コイル回路170を設置する目的は、給電コイルLから受電することではなく、給電コイルLから送電される交流電力と同期する制御信号INを取り出すことである。このため、検出コイルLSSのサイズは給電コイルLに比べて十分に小さくできる。なお、給電コイルLに限らず、受電コイルLを流れる電流IやロードコイルLを流れる電流Iが発生させる交流磁界に基づいて、検出コイル回路170に誘導電流ISSを発生させることにより、制御信号INを生成してもよい。
【0068】
[第2実施形態:ハーフブリッジ型]
図7は、第2実施形態におけるワイヤレス電力伝送システム106のシステム構成図である。第1実施形態におけるワイヤレス電力伝送システム100では、駆動回路162によって給電コイルLを直接駆動したが、第2実施形態におけるワイヤレス電力伝送システム106では、駆動回路162は給電コイルLではなくエキサイトコイルLを駆動する。ワイヤレス電力伝送システム106の他の部分の構成は図1と同様である。図1と同一の符号を付した構成は、図1で説明した構成と同一または同様の機能を有する。
【0069】
ワイヤレス給電装置204は、エキサイトコイルLに共振周波数fにて交流電力を供給する。エキサイトコイルLとキャパシタCが共振周波数fの共振回路を形成する。給電コイル回路120は、給電コイルLとキャパシタCが直列接続された回路である。エキサイトコイルLと給電コイルLは互いに向かい合っている。エキサイトコイルLと給電コイルLの距離は10mm程度と比較的近い。このため、エキサイトコイルLと給電コイルLは電磁気的に強く結合している。エキサイトコイルLに電流Iを流すと、給電コイル回路120に起電力が発生し、給電コイル回路120には電流Iが流れる。同図矢印にて示す方向を正方向、反対方向を負方向とする。電流Iの向きと電流Iの向きは逆(逆相)である。電流Iは電流Iよりも格段に大きい。給電コイルLとキャパシタCそれぞれの値は、給電コイル回路120の共振周波数fが100kHzとなるように設定すればよい。
【0070】
第2実施形態では、エキサイトコイルLの側に検出コイルLSSを設置し、検出コイルLSSとエキサイトコイルLにより結合トランスを形成する。交流電流Iが発生させる磁界により、検出コイルLSSには誘導電流ISSが流れる。この誘導電流ISSに基づいて第1実施形態と同様の方法により制御信号INを発生させる。
【0071】
第2実施形態においても、エキサイトコイルLに限らず、給電コイルL、受電コイルL、ロードコイルLなどを一次コイルとして結合トランスを形成し、検出コイルLSSに誘導電流ISSを発生させてもよい。図6に関連して説明した検出コイル回路170により誘導電流ISSを発生させてもよい。
【0072】
[第3実施形態:プッシュプル型]
図8は、第3実施形態におけるワイヤレス電力伝送システム108のシステム構成図である。ワイヤレス電力伝送システム108は、ワイヤレス給電装置206と受電コイル回路130、ロード回路140を含む。ワイヤレス給電装置206の構成は、電源制御回路208、エキサイト回路110および給電コイル回路120に大別できる。給電コイル回路120と受電コイル回路130の間には数m程度の距離がある。ワイヤレス電力伝送システム108の主目的も、給電コイル回路120から受電コイル回路130に電力を送ることである。図1や図6、図7と同一の符号を付した構成は、既に説明した構成と同一または同様の機能を有する。
【0073】
エキサイト回路110は、エキサイトコイルLとトランスT2二次コイルLが直列接続された回路である。エキサイト回路110は、電源制御回路208側のトランスT2二次コイルLを介して交流電力を供給される。トランスT2二次コイルLは、トランスT2一次コイルLおよびトランスT2一次コイルLと共に結合トランスT2を形成し、電磁誘導により交流電力を供給される。エキサイトコイルLの巻き数は1回、導線の直径は3mm、エキサイトコイルL自体の直径は210mmである。エキサイト回路110を流れる電流Iは交流であり、同図矢印にて示す方向を正方向、反対方向を負方向とする。
【0074】
給電コイル回路120は、第2実施形態に示した給電コイル回路120の構成と同様であり、共振周波数f=100kHzで共振する回路である。受電コイル回路130とロード回路140の構成は、第1および第2実施形態に示した構成と同様である。
【0075】
電源制御回路208は、動作周波数fにて動作するプッシュプル型の回路であり、図13に示すように上下対称形である。エキサイト回路110は、動作周波数fの交流電力を電源制御回路208から供給される。この場合、エキサイト回路110、給電コイル回路120、受電コイル回路130およびロード回路140には、動作周波数fの電流I〜Iが流れる。動作周波数fと共振周波数fが一致するとき、すなわち、動作周波数f=100kHzとなるとき、給電コイル回路120と受電コイル回路130が磁場共振するため、電力伝送効率は最大となる。駆動回路162とゲート駆動用トランスT1が、ワイヤレス電力伝送システム108の駆動系として、ワイヤレス給電装置206から受電コイル回路130等への送電を制御する。
【0076】
電源制御回路208に含まれるゲート駆動用トランスT1の一次側には、駆動回路162が接続される。駆動回路162は、共振周波数fと等しい動作周波数fの交流電圧(駆動信号DR)を発生させる。この駆動信号DRにより、トランスT1一次コイルLには正負の両方向に交互に電流が流れる。トランスT1一次コイルLとトランスT1二次コイルL、トランスT1二次コイルLはゲート駆動用の結合トランスT1を形成する。電磁誘導により、トランスT1二次コイルLとトランスT1一次コイルLにも正負の両方向に交互に電流が流れる。
【0077】
トランスT1の二次コイルは中点接地される。すなわち、トランスT1二次コイルLの一端とトランスT1二次コイルLの一端は互いに接続され、そのまま接地される。トランスT1二次コイルLの他端は、スイッチングトランジスタQのゲートと接続され、トランスT1二次コイルLの他端は、別のスイッチングトランジスタQのゲートと接続される。スイッチングトランジスタQのソースとスイッチングトランジスタQのソースも接地されている。したがって、駆動回路162が共振周波数fにて交流電圧(駆動信号DR)を発生させると、スイッチングトランジスタQとスイッチングトランジスタQの各ゲートには、電圧Vx(Vx>0)が共振周波数fにて交互に印加される。すなわち、スイッチングトランジスタQとスイッチングトランジスタQは共振周波数fにて交互にオン・オフする。
【0078】
スイッチングトランジスタQのドレインは、トランスT2一次コイルLと直列接続される。同様に、スイッチングトランジスタQのドレインは、トランスT2一次コイルLと直列接続される。トランスT2一次コイルLとトランスT2一次コイルLの接続点には、平滑用のインダクタLが接続され、さらに、電源Vddが接続される。また、スイッチングトランジスタQのソース・ドレイン間にはキャパシタCQ1が並列接続され、スイッチングトランジスタQのソース・ドレイン間にはキャパシタCQ2が並列接続される。
【0079】
キャパシタCQ1はソース・ドレイン電圧VDS1の電圧波形を整形し、キャパシタCQ2はソース・ドレイン電圧VDS2の電圧波形を整形するために挿入される。キャパシタCQ1、CQ2を省略しても、ワイヤレス給電装置206によるワイヤレス給電は可能である。特に、共振周波数fが低い場合には、これらのキャパシタを省略しても電力伝送効率を維持しやすい。
【0080】
エキサイト回路110の入力インピーダンスは50(Ω)である。また、電源制御回路208の出力インピーダンスがこの入力インピーダンス50(Ω)と等しくなるようにトランスT2一次コイルLおよびトランスT2一次コイルLの巻き数を設定している。電源制御回路208の出力インピーダンスとエキサイト回路110の入力インピーダンスが一致するとき、ワイヤレス給電装置206の出力は最大となる。
【0081】
スイッチングトランジスタQが導通(オン)するとき、スイッチングトランジスタQは非導通(オフ)となる。このときのメインの電流経路(以下、「第1電流経路112」とよぶ)は、電源Vddから平滑用のインダクタL、トランスT2一次コイルL、スイッチングトランジスタQを経由してグランドへ至る経路となる。スイッチングトランジスタQは、第1電流経路112の導通・非導通を制御するスイッチとして機能する。
【0082】
スイッチングトランジスタQが導通(オン)するとき、スイッチングトランジスタQは非導通(オフ)となる。このときのメインの電流経路(以下、「第2電流経路114」とよぶ)は、電源Vddから平滑用のインダクタL、トランスT2一次コイルL、スイッチングトランジスタQを経由してグランドへ至る経路となる。スイッチングトランジスタQは、第2電流経路114の導通・非導通を制御するスイッチとして機能する。
【0083】
第3実施形態では、エキサイト回路110の側に検出コイルLSSを設置し、エキサイト回路110の一部と検出コイルLSSにより結合トランスを形成する。交流電流Iが発生させる磁界により、検出コイルLSSには誘導電流ISSが流れる。この誘導電流ISSに基づいて第1実施形態や第2実施形態と同様の方法にて制御信号INを生成する。
【0084】
図9は、第3実施形態におけるワイヤレス電力伝送システム108の別例としてのシステム構成図である。図8と同一の符号を付した構成は、図8で説明した構成と同一または同様の機能を有する。図8のシステム構成ではエキサイト回路110と検出コイルLSSがコア154を共有することにより結合トランスを構成しているが、図9のシステム構成では給電コイル回路120と検出コイルLSSがコア154を共有することにより結合トランスを形成している。
【0085】
エキサイト回路110や給電コイル回路120に限らず、受電コイル回路130、ロード回路140などを一次コイル側として結合トランスを形成し、検出コイルLSSに誘導電流ISSを発生させてもよい。図6に関連して説明した検出コイル回路170により誘導電流ISSを発生させてもよい。
【0086】
以上、実施形態に基づいてワイヤレス電力伝送システム100、106、108を説明した。本実施形態においては、外部の発振器によって交流電力を制御するのではなく、発生させた交流電力から制御信号INを生成し、この制御信号INによりワイヤレス給電装置をフィードバック制御している。このため、発振器を設置しなくても、交流電力を持続的に供給させ続けることができるため、システム構成がシンプルとなる。
【0087】
給電コイルL、受電コイルL、ロードコイルLは、いずれも同一の共振周波数fにて共振するため、これらのコイルになんらかの負荷を接続するとQ値が敏感に反応してしまう。エキサイトコイルLを利用する場合についても同様である。本実施形態においては、送受電対象となる交流電力を駆動回路162に直接フィードバックさせるのではなく、送受電時に発生する交流磁界により検出コイルLSSに誘導電流ISSを発生させ、この誘導電流ISSによって駆動回路162を動作させている。このため、フィードバック制御の共振特性(Q値)に対する影響を抑制しやすくなる。
【0088】
また、仮になんらかの原因で発振停止となっても、有効信号発生器164が有効信号ENをローレベルからハイレベルに変化させることにより、トランスT1一次コイルLに電流を流すことができる。有効信号発生器164は、共振周波数fよりも遙かに低い周波数にて有効信号ENを制御できる。
【0089】
電源Vdd1、Vdd2、Vddが定電源であっても、有効信号発生器164のデューティ比を調整することにより交流電力の大きさを制御できるため、システム全体としてのコストダウンを図りやすい。
【0090】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0091】
100、106、108 ワイヤレス電力伝送システム
102、112 第1電流経路
104、114 第2電流経路
110 エキサイト回路
120 給電コイル回路
130 受電コイル回路
140 ロード回路
154 コア
160 波形増幅器
162 駆動回路
164 有効信号発生器
170 検出コイル回路
200、204、206 ワイヤレス給電装置
208 電源制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給電コイルと受電コイルの共振周波数にて、前記給電コイルから前記受電コイルにワイヤレス送電するための装置であって、
直列接続された第1のコイルおよびキャパシタを含み、前記共振周波数にて共振する共振回路と、
前記共振回路への第1の方向からの電流の供給を制御する第1のスイッチと、
前記共振回路への第2の方向からの電流の供給を制御する第2のスイッチと、
前記第1および第2のスイッチを前記共振周波数にて交互に導通させることにより前記共振回路を共振させ、前記第1のコイルを前記給電コイルとして、前記第1のコイルから前記受電コイルへ交流電力を送電させる送電制御回路と、
前記第1および第2のスイッチを駆動可能な駆動期間と駆動不可能な停止期間を設定するための有効信号を発生させる有効信号発生回路と、を備え、
前記送電制御回路は、前記駆動期間において前記交流電力により前記第1および第2のスイッチをフィードバック制御することにより、前記共振回路の共振状態を持続させることを特徴とするワイヤレス給電装置。
【請求項2】
前記有効信号における前記駆動期間と前記停止期間のデューティ比は変更可能であることを特徴とする請求項1に記載のワイヤレス給電装置。
【請求項3】
前記送電制御回路は、前記有効信号の発生を契機として、前記第1および第2のスイッチのいずれかの駆動を開始することを特徴とする請求項1または2に記載のワイヤレス給電装置。
【請求項4】
前記交流電力が発生させる磁界により誘導電流を発生させる第2のコイル、を更に備え、
前記送電制御回路は、前記誘導電流により前記第1および前記第2のスイッチをフィードバック制御することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のワイヤレス給電装置。
【請求項5】
前記送電制御回路は、前記第1のコイルから、前記第1のコイルとは別のコイルである前記給電コイルに前記交流電力を供給することにより、前記給電コイルから前記受電コイルへ前記交流電力を送電させることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のワイヤレス給電装置。
【請求項6】
給電コイルと受電コイルの共振周波数にて、前記給電コイルから前記受電コイルにワイヤレス送電するための装置であって、
第1および第2の電流経路を含む電源回路と、
前記給電コイルと、
前記給電コイルと磁気結合し、前記電源回路から供給される交流電力を前記給電コイルに供給するエキサイトコイルと、
前記第1および第2の電流経路それぞれに直列に接続される第1および第2のスイッチを前記共振周波数にて交互に導通させることにより前記エキサイトコイルに前記交流電力を供給する送電制御回路と、
前記第1および第2のスイッチを駆動可能な駆動期間と駆動不可能な停止期間を設定するための有効信号を発生させる有効信号発生回路と、を備え、
前記送電制御回路は、前記駆動期間において前記交流電力により前記第1および第2のスイッチをフィードバック制御することにより、前記共振回路の共振状態を持続させることを特徴とするワイヤレス給電装置。
【請求項7】
前記有効信号における前記駆動期間と前記停止期間のデューティ比は変更可能であることを特徴とする請求項6に記載のワイヤレス給電装置。
【請求項8】
前記送電制御回路は、前記有効信号の発生を契機として、前記第1および第2のスイッチのいずれかの駆動を開始することを特徴とする請求項6または7に記載のワイヤレス給電装置。
【請求項9】
前記交流電力が発生させる磁界により誘導電流を発生させる検出コイル、を更に備え、
前記送電制御回路は、前記誘導電流により前記第1および前記第2のスイッチをフィードバック制御することを特徴とする請求項6から8のいずれかに記載のワイヤレス給電装置。
【請求項10】
前記検出コイルは、前記給電コイルを流れる交流電流が発生させる磁界により前記誘導電流を発生させるコイルであることを特徴とする請求項9に記載のワイヤレス給電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−34380(P2013−34380A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−240066(P2012−240066)
【出願日】平成24年10月31日(2012.10.31)
【分割の表示】特願2009−212804(P2009−212804)の分割
【原出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)