説明

ワイヤーハーネス配索構造

【課題】ワイヤーハーネスをなるべく見栄え良く配索すること。
【解決手段】ワイヤーハーネスWHと、ワイヤーハーネスWHのうち車体2とドア6との間に架け渡される部分を覆う筒状の外装部材20と、外装部材20のうち一方の端部寄りの一部分に固定され、車体2のうち開度規制部3と連結された部位の上方の部位に取り付けられた取付部材30と、ドア2のうち開度規制部3と連結された部位の上方の位置からドア6の内部に亘る領域に配置され、外装部材20のうち他方の端部を含む一部分のドア6内における変位経路を案内する筒状又は溝状の案内部50と、ドア6内において案内部50に連なって配置され、外装部材20の他方の端部から延び出たワイヤーハーネスWHを、該ワイヤーハーネスWHが迂回可能な余裕空間を有する状態で収容し、引出口44が形成された収容部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ワイヤーハーネスを車体からドアに配索する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ドア側ワイヤーハーネスがハーネスプロテクタに挿通されて、車両ボディ本体と車両ドアとの間に配索される車両用ドアハーネスの配索構造が開示されている。より具体的には、特許文献1の配索構造では、車両ドア内に設けられたスライドガイドのプロテクタ収容部によりハーネスプロテクタが案内され、ハーネスプロテクタから延出されるドア側ワイヤーハーネスが拡縮可能な輪部を形成する形態でハーネス収容部内に収容されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−263175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の配索構造では、ドア側ワイヤーハーネスが挿通されたハーネスプロテクタは、車体とドアとの間においてヒンジ等のドア開閉に係る構成から独立して架け渡されているため、ドアの開状態で目立って見栄えが悪かった。
【0005】
そこで、本発明は、ワイヤーハーネスをなるべく見栄え良く配索することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様は、ドアヒンジ及びドアの開度を維持する開度規制部により連結された車体と前記ドアとの間にワイヤーハーネスを配索するワイヤーハーネス配索構造であって、前記ワイヤーハーネスと、前記ワイヤーハーネスのうち前記車体と前記ドアとの間に架け渡される部分を覆う筒状の外装部材と、前記外装部材のうち一方の端部寄りの一部分に固定され、前記車体のうち前記開度規制部と連結された部位の上方の部位に取り付けられた取付部材と、前記ドアのうち前記開度規制部と連結された部位の上方の位置から前記ドアの内部に亘る領域に配置され、前記外装部材のうち他方の端部を含む一部分の前記ドア内における変位経路を案内する筒状又は溝状の案内部と、前記ドア内において前記案内部に連なって配置され、前記外装部材の前記他方の端部から延び出た前記ワイヤーハーネスを、該ワイヤーハーネスが迂回可能な余裕空間を有する状態で収容し、前記ワイヤーハーネスの引出口が形成された収容部とを備える。
【0007】
第2の態様は、第1の態様に係るワイヤーハーネス配索構造であって、前記取付部材は、平面視において前記車体のうち前記開度規制部と連結された部位と重なる部位に取り付けられ、前記案内部は、平面視において前記一方の端部が前記ドアのうち前記開度規制部と連結された部位と重なる位置に配置されている。
【0008】
第3の態様は、第1又は第2の態様に係るワイヤーハーネス配索構造であって、前記取付部材及び前記案内部は、前記ドアの閉状態において、前記取付部材と前記案内部のうち前記収容部に対して反対側の端部とが前記車体の前後方向に対向する位置で前記車体に取り付けられ又は前記ドア内に配置されている。
【0009】
第4の態様は、第1〜第3のいずれか一態様に係るワイヤーハーネス配索構造であって、前記収容部は、前記引出口が上方を向く姿勢で前記ドア内に配置されている。
【0010】
第5の態様は、第1〜第3のいずれか一態様に係るワイヤーハーネス配索構造であって、前記収容部は、前記引出口が下方を向くと共に前記開度規制部に対して前記ドアの後方側に位置する姿勢で前記ドア内に配置されている。
【発明の効果】
【0011】
第1の態様に係るワイヤーハーネス配索構造によると、案内部によりワイヤーハーネスを覆う外装部材のうち他方の端部を含む一部分のドア内のうち変位経路を案内可能であると共に、収容部により当該外装部材の他方の端部から延び出たワイヤーハーネスを、該ワイヤーハーネスが迂回可能な余裕空間を有する状態で収容するように形成されているため、ワイヤーハーネスをドアの開閉動作に伴ってドア内にスムーズに進退させて余長吸収することができる。しかも、取付部材が車体のうち開度規制部と連結された部位の上方の部位に取り付けられると共に、案内部がドアのうち開度規制部と連結された部位の上方の位置からドアの内部に亘る領域に配置されているため、車体とドアとの間でワイヤーハーネスを見栄え良く配索することができる。
【0012】
第2の態様に係るワイヤーハーネス配索構造によると、取付部材が、平面視において車体のうち開度規制部と連結された部位と重なる部位に取り付けられると共に、案内部が、平面視において一方の端部がドアのうち開度規制部と連結された部位と重なる位置に配置されている。このため、車体とドアとの間でワイヤーハーネスをより見栄え良く配索することができる。
【0013】
第3の態様に係るワイヤーハーネス配索構造によると、ドアの閉状態において、取付部材と案内部のうち収容部に対して反対側の端部とが車体の前後方向において対向するため、取付部材から案内部内に挿通されるワイヤーハーネスは直線状に配設され、当該ワイヤーハーネスにかかる負荷を軽減することができる。
【0014】
一般的に、ドア内に搭載されるスイッチ、パワーウインドウモータ、ドアロック及びミラーモータ等の電気機器は、ドア内の上方側に設置されることが多い。第4の態様に係るワイヤーハーネス配索構造によると、収容部が、引出口が上方を向く姿勢でドア内に配置されているため、ドア内でワイヤーハーネスを上方に引き出して当該電気機器に対してより短い経路で配索することができる。
【0015】
第5の態様に係るワイヤーハーネス配索構造によると、収容部が、引出口が下方を向くと共に開度規制部に対して前記ドアの後方側に位置する姿勢でドア内に配置されている。このため、ドア内でワイヤーハーネスを下方に引き出して開度規制部に対してドアの後方側のスペースで配索することができ、当該スペースを有効活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】ワイヤーハーネス配索構造が設けられた車体とドアとを示す図である。
【図2】取付部材の分解斜視図である。
【図3】ドアの開状態におけるワイヤーハーネス配索構造の平面図である。
【図4】ドアの開状態におけるワイヤーハーネス配索構造の正面図である。
【図5】ドアの閉状態におけるワイヤーハーネス配索構造の平面図である。
【図6】ドアの閉状態におけるワイヤーハーネス配索構造の正面図である。
【図7】変形例に係るワイヤーハーネス配索構造の配設形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第1実施形態>
以下、第1実施形態に係るワイヤーハーネス配索構造10について説明する(図1参照)。このワイヤーハーネス配索構造10は、自動車の車体2とドア6との間にワイヤーハーネスWHを配索するための構成である。
【0018】
ワイヤーハーネスWHは、ドア6に搭載されるスイッチ、パワーウインドウモータ、ドアロックモータ、ミラーモータ及びスピーカー等の電気機器に対して電源供給又は信号伝達するための複数の電線が、配索経路に対応して適宜束ねられて構成されている。ここで、ワイヤーハーネスWHのうち車体2からドア6に架け渡される部分は、上記複数の電線が1本に束ねられて構成されている。また、ワイヤーハーネスWHは、ドア6内で分岐されて各種電気機器に接続されている(図示省略)。
【0019】
ドア6は、車体2に形成されている乗降口を開閉可能なように、車体2に対してドアヒンジ5(一般的に一対のドアヒンジ5を有するが、図1では一方のみ表示)及び開度規制部3により連結されている。なお、車体2とは、金属部材で形成されたフレーム部分を言うものとする。ここでは、ドア6は、フロントサイドドアであり、説明の便宜上、垂直方向に沿った軸(ドアヒンジ5の回転軸)周りに姿勢変更するように車体2に対して連結されているものとする。
【0020】
上記開度規制部3(ドアチェックリンクとも言う)は、ドア6を所定の開度(全開姿勢、半開姿勢等)で維持するための構成である。より具体的には、開度規制部3は、アーム部3aとケース部3bとを備えている。アーム部3aは、一端部(以下、車体側連結部)が車体2に対して相対回転可能に連結され、長手方向複数位置に他の部分より肉薄(車体の上下方向に薄肉)な部分が形成された棒状に形成されている。なお、図1では、アーム部3aの厚薄は省略して示している。ケース部3bは、アーム部3aを挿通可能な貫通孔を有する筐状に形成され、その内部にアーム部3aを挟むように押圧付勢される図示省略の挟持部を有している。すなわち、ケース部3bは、挿通されるアーム部3aに対して、挟持部が薄肉部を挟む位置に留まり易くなっている。このケース部3bは、ドア6に対して固定され、開度規制部3のドア側連結部を担っている。
【0021】
そして、ドア6の開閉動作に連動して、アーム部3aがケース部3bに対して相対挿通移動される。ケース部3bの挟持部がアーム部3aの薄肉部を挟む位置にある状態では、厚肉部を乗り越えられるような外力が加えられない限り、ドア6の姿勢が維持される。一般的に、アーム部3aの薄肉部の位置は、ドア6の半開姿勢及び全開姿勢で姿勢維持可能なように設定されている。なお、アーム部3aは、ドア6の閉動作に伴ってドア6内に進入し、開動作に伴ってドア6内から退出する。
【0022】
この開度規制部3は、一般的に、上下方向において一対のドアヒンジ5の間の位置、すなわち、ドア6の中間部分(ウインドウ部分を除く)に設けられる。
【0023】
また、ドア6には、その周縁部に沿って防水用のウェザーストリップ6wが設けられている(図3、図5参照)。このウェザーストリップ6wは、ドア6を閉めた状態で、車体2の乗降口の開口縁部に密着して、車室内外において水密状態を保持可能なゴム等で形成された弾性部材である。そして、本ワイヤーハーネス配索構造10は、ウェザーストリップ6wより車室内側にワイヤーハーネスWHを配索するように構成されている。
【0024】
ドア6は、金属板をプレス成型、打抜き等して形成されたドアインナーパネル7及びその外側に設けられる外装部材としてのドアアウターパネルと、合成樹脂材料等で形成され、ドアインナーパネル7の内側に取り付けられる内装部材としてのトリム8とを有している(図3、図5参照)。また、ドア6は、その前端部から内部にワイヤーハーネスWHを挿通可能に構成されている。ここでは、ドアインナーパネル7の凹部7hの前方側開口部を通じてドアインナーパネル7とトリム8との間にワイヤーハーネスWHを配索可能になっている(図1参照)。この凹部7hは、後述するプロテクタPを収容する凹状部分であり、ドアインナーパネル7の車室内側で開口すると共に、前記前方側開口部を有している。
【0025】
また、車体2には、車体2内にワイヤーハーネスWHを挿通するための孔部2hが形成されている。この孔部2hは、乗降口の開口縁部のうち、凹部7hの前方側開口部に対してドア6の閉姿勢で車体2の前後方向に対向する部分に形成されている。なお、凹部7hの前方側開口部及び孔部2hは、ドア6を閉めた状態では、車体2の内装部材及びドア6のトリム8等により隠れるようになっている。
【0026】
また、ここでは、ワイヤーハーネスWHが車体2とドア6との間でウェザーストリップ6wより車室内側に配索されるため、凹部7hの前方側開口部及び孔部2hは、当該ウェザーストリップ6wより車室内側に形成されている(図3、図5参照)。
【0027】
ワイヤーハーネス配索構造10は、上記ワイヤーハーネスWHと、外装部材20と、取付部材30と、収容部40と、案内部50を備えている(図1参照)。
【0028】
ワイヤーハーネスWHのうち車体2からドア6に架け渡される部分を含む部分には、外装部材20が該ワイヤーハーネスWHの周囲を覆うように取り付けられている。この外装部材20は、ワイヤーハーネスWHを、外部から保護すると共に、車体2とドア6との間での垂れ下がり等を抑制して支持する部材である。
【0029】
外装部材20は、筒状に形成され、その中空部に挿通されたワイヤーハーネスWHを保護する。より具体的には、外装部材20は、ドア6の開閉動作に対応して車体2とドア6との間で曲がるように可撓性を(延在方向全体的に)有すると共に、車体2とドア6との間で垂れ下がりを抑制してワイヤーハーネスWHを支持可能な剛性を有する部材である。ここでは、外装部材20は、合成樹脂(例えば、PP(ポリプロピレン)、PA(ポリアミド)等)を押出成型すると共にブロー成型或いはバキューム成型して製造されたコルゲートチューブである。コルゲートチューブは、周方向に沿った凸条の山部及び凹条の谷部が軸方向に交互に連続した部材である。そして、コルゲートチューブは、軸方向に平行な断面視において、山部の頂部とその両側の側壁部との内角、及び、谷部の底部とその両側の側壁部との内角が大小変化することにより伸縮する。つまり、コルゲートチューブは、曲げ方向に力が加えられると内周側の部分の各内角が小さくなるように変形すると共に、外周側の部分の各内角が大きくなるように変形して曲げられる。ワイヤーハーネスWHより高い剛性を有する外装部材20としてのコルゲートチューブに挿通された該ワイヤーハーネスWHは、外装部材20の剛性により曲げ規制されて屈曲が抑制される。
【0030】
また、この外装部材20は、扁平な形状(例えば、断面視略楕円形、略長方形等の扁平な形状)に形成されている。ここでは、角が丸められた断面視略長方形に形成されている。すなわち、断面視における長手方向に曲がり難く(剛性が高く)、短手方向に曲がりやすい(可撓性が高い)形状である。より具体的には、コルゲートチューブの軸方向の伸縮可能量は通常周方向どの部分でも変わらないため、内周側端部と外周側端部との距離が長いほど角度変化量が小さく曲がり難い。なお、ワイヤーハーネスWHは、断面視円形に形成されていても、外装部材20の内部形状に対応した断面形状に形成されていてもよい。
【0031】
もっとも、外装部材20は、ワイヤーハーネスWHより高い剛性を有していればよく、上述したコルゲートチューブに限定されるものではない。例えば、外装部材は、比較的硬質なゴム(EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)、エラストマー等)により成形された扁平な筒状であってもよい。
【0032】
上記外装部材20の一端部は、ワイヤーハーネスWHのうち車体2内に配索される部分に対してテープT巻き等されて固定されると共に、車体2に取り付けられる取付部材30が固定されている。また、外装部材20の他端部は、ワイヤーハーネスWHのうちドア6内(ここでは後述する案内部50内)に配索される部分にテープT巻き等されて固定され、当該ワイヤーハーネスWHと共にドア6内に進退移動可能とされている。
【0033】
取付部材30(エッジプロテクタとも言う)は、外装部材20の一方の端部寄りの一部分を車体2に対して固定する部分である(図2参照)。この取付部材30は、外装部材20のうち一方の端部寄りの一部分に固定され、車体2のうち開度規制部3と連結された部位の上方の部位に取り付けられている(図3〜図6参照)。より具体的には、取付部材30は、車体2に形成されている孔部2hに対して押し付けることにより取り付け可能に構成されている。この取付部材30は、挿入部34と、押え部36と、凹凸嵌合部38とを有している。
【0034】
挿入部34は、車体2の孔部2h内に挿入可能、且つ、内側に外装部材20を配設可能な筒状に形成されている。ここでは、挿入部34は、孔部2hに対して車体2の前方(以下、挿入方向S)に向けて挿入される。なお、以下の説明において、取付部材30について、車体2に対する取付形態における挿入方向Sに準じて、該挿入方向Sを取付部材30の方向として使用することがある。すなわち、挿入方向Sとは、車体2の孔部2hと取付部剤30との関係における相対的な方向を指す。挿入部34の先端側部分には、挿入部34を孔部2h内に挿入した状態で孔部2hの周縁部に対して係止可能な係止部35が設けられている。この係止部35は、挿入部34の周方向複数位置(ここでは等間隔に4箇所)から外周側に突出するように形成され、それぞれ、孔部2hの周縁部に対して挿入方向S前方側から接触可能な係止面を有している。より具体的には、係止部35は、挿入部34の先端側から基端側に向けて徐々に突出寸法が大きくなるように形成されている。そして、各係止部35は、挿入部34が孔部2hに挿入される際に、挿入部34又は係止部35自身が挿入部34の内周側に弾性変形し、孔部2hを乗り越えた位置で外周側に弾性復帰して孔部2hの周縁部に係止する。
【0035】
押え部36は、挿入部34の基端部に連続して設けられ、その外周側に張り出す鍔状に形成されている。この押え部36は、孔部2hの周縁部に対して、挿入方向S後方側から面接触可能である。すなわち、押え部36の外周形状は、孔部2hより大きく形成されている。
【0036】
そして、挿入部34が孔部2hに挿入されると、係止部35が孔部2hの周縁部に対して挿入方向S前方側から係止すると共に、押え部36が孔部2hの周縁部に対して挿入方向S後方側から面接触する。これにより、孔部2hの周縁部が係止部35と押え部36とで挟まれて、取付部材30は車体2に対して固定される。
【0037】
凹凸嵌合部38は、挿入部34(及び押え部36)内に配設される外装部材20に対して、その延在方向に相対移動不能に位置決めする部分である。ここでは、凹凸嵌合部38は、外装部材20としてのコルゲートチューブの凹凸外部形状に対して嵌合可能に形成されている。より具体的には、凹凸嵌合部38は、挿入部34の内周部から、内周側に突出する周方向に沿った凸条に形成され、挿入方向Sにおいて、外装部材20の凹部に対応する間隔で複数設けられている。
【0038】
上記取付部材30は、一対の略U字部材(ここでは、対向片の長さが異なるU字形状)を合体させることにより構成される。ここでは、取付部材30は、一対の略U字部材の突き合わせ部分の各一方の端部から突出する係止部31と、各他方の端部に形成され、該係止部31が係止可能な被係止部32とを有している。より具体的には、係止部31は、U字部材の一方の端部から突出する挿入部の先端部からU字部材の内周側に突出し、先端側から基端側に向けて徐々に突出寸法が大きくなる断面視略三角形状に形成された係止爪31aを有する部分である。この係止爪31aは、基端側に面する係止面を有している。また、被係止部32は、U字部材の他方の端面と内周面との2箇所で開口する凹形状に形成されている。この被係止部32は、係止部31をU字部材の他方の端面で開口する開口部を通じて内部に挿入可能である。そして、一対のU字部材が突き合わされて係止部31が被係止部32内に挿入されると、係止爪31aの係止面が、被係止部32における内周側の開口部の開口縁部と対向して当接する。これにより、係止部31は被係止部32に係止し、一対の略U字部材が合体される。すなわち、外装部材20を間に挟み込んだ状態で一対の略U字部材を合体させることにより、凹凸嵌合部38が外装部材20の外周部に対して嵌合し、取付部材30は、外装部材20に対して該外装部材20の軸方向に相対移動不能に装着される。これにより、挿通孔部33にワイヤーハーネスWHが挿通された状態となり、この取付部材30が車体2に取り付けられた状態で、ワイヤーハーネスWHが車体2の貫通孔部2hを通じてその内外に配索される。なお、取付部材30は、一対の略U字部材が、開閉可能なようにヒンジにより一方の突き合せ端部同士が連結され、他方の突き合せ端部同士が係合可能に形成されていてもよい。
【0039】
そして、取付部材30は、外装部材20が上下方向に沿って扁平となる姿勢で貫通孔部2hの周縁部に対して取り付けられる。これにより、外装部材20の剛性がより高い断面視長手方向が鉛直方向に略沿って、より確実に垂れ下がりが抑制され、外装部材20に覆われているワイヤーハーネスWHの鉛直方向における屈曲を抑制することができる。また、取付部材30は、車体2における開度規制部3が連結される部位の下方の部位に形成された貫通孔部2hに対して嵌合されることにより、開度規制部3の車体側連結部の下方の位置で車体2に対して取り付けられる。
【0040】
もっとも、取付部材30は、上記形状に限られるものではない。例えば、ワイヤーハーネスWHを位置決めする部分が、押え部36の基端部から挿入方向S後方に向けて突出する扁平な細長矩形状に形成されていてもよい。すなわち、挿入部34(及び押え部36)内に配設した外装部材20を、当該位置決め部に対して、テープ巻き又はタイバンドで締め付ける等して固定することにより、取付部材30に対して挿入方向Sに位置決めすることができる。なお、タイバンドとは、段階的に環状体の周方向寸法を調節し保持可能な部材をいう。このような位置決め部を採用する場合、取付部材は、全体として射出成型により一体に形成されてもよい。
【0041】
また、取付部材30は、車体2に取り付け可能で且つ外装部材20を固定可能であればよく、上記のような樹脂成形品に限られず、合成ゴム等のエラストマーで成形されたグロメットであってもよい。
【0042】
案内部50は、ドア6のうち開度規制部3のドア側連結部の上方の部位からドア6の内部に亘る領域に配置され、外装部材20のうち他方の端部を含む一部分のドア6内における変位経路を案内する筒状又は溝状に形成されている。また、収容部40は、ドア6内において案内部50に連なって配置され、外装部材20の他方の端部から延び出たワイヤーハーネスWHを、該ワイヤーハーネスWHが迂回可能な余裕空間を有する状態で収容する部分である。ここでは、収容部40及び案内部50は、プロテクタPを構成する各部分である(図1参照)。
【0043】
より具体的には、案内部50は、一端部に外装部材20の他端側部分を挿入可能な案内口52を有し、他端部が収容部40の一端部と連続している。また、収容部40は、連通する案内部50内に挿入される外装部材20の他端部から延出されるワイヤーハーネスWHを余長吸収可能に収容可能な収容空間を有している。すなわち、収容空間は、ワイヤーハーネスWHを迂回させるための余裕空間を含む空間である。この収容部40は、案内部50を通じて収容空間内に進退可能に挿入されるワイヤーハーネスWHを、ドア6内に引き出し可能な引出口44を有している。つまり、プロテクタPは、案内口52を通じて案内部50内に挿入される外装部材20を収容部40に向けて案内し、その外装部材20の他端部から延出されるワイヤーハーネスWHを、収容部40の収容空間内で余長吸収可能に収容して引出口44を通じてその外方すなわちドア6内に延出させる部材である。そして、ワイヤーハーネスWHは、ドア6内において、プロテクタPにより周辺部材から保護される。図1では、案内口52と引出口44とが略直交する方向に開口し、全体として正面視略L字形状に形成されているプロテクタPを示している。ここで、プロテクタP(ワイヤーハーネス配索構造10)の正面とは、案内口52の開口方向(案内部50の案内方向)と引出口44の開口方向とに平行な面である。また、プロテクタPをドア6に取り付けた状態で説明すると、車室内外を結ぶ方向に直交する面が正面である。以下、プロテクタPについて、案内部50及び収容部40の各構成に着目してより詳細に説明する。
【0044】
案内部50は、外装部材20を延在方向に進退移動可能に配設可能な内部空間を有する筒状に形成されている(図4、図6参照)。ここでは、案内部50は、外装部材20の断面形状に対応した断面視略長方形の筒状である。そして、案内部50は、挿入される外装部材20の外周部に当接することにより、当該外装部材を案内方向に直交する方向(主として車室内外方向)において位置規制する。これにより、外装部材20の他方の端部を含む部分は、進退経路に案内される。もっとも、案内部50は、外装部材20を挿通案内可能であればよく、溝状、断面視略楕円形、円形或いは長方形以外の多角形等の筒状に形成されていてもよい。
【0045】
ここで、案内部50と外装部材20との関係について説明しておく。外装部材20は、一端側部分が取付部材30を介して車体2に固定された状態で、ドア6の開状態において、少なくとも他端部を含む一部分が案内部50内に挿入される程度に長い延在寸法に設定されている。一方、案内部50は、ドア6が開閉動作される際に、ドア6内で進退される外装部材20の他端側部分を主として車室内外方向に位置規制できればよく、ここでは、ドア6の閉状態において、外装部材20の他端部を収容部40内に突出させる程度の延在寸法に設定されている。もっとも、案内部50は、上記寸法より長く、ドア6の閉状態で外装部材20の他端部まで収容可能に設定されていてもよい。
【0046】
また、案内部50は、その一端部に形成されている案内口52が、外周側に拡開するように形成されていてもよい(図3〜図6参照)。ここでは、案内部50は、その延在方向に略直交する全方向に拡がる形状を採用している。この案内口52は、一端部に向けて徐々に拡がるように形成されている。
【0047】
収容部40は、外装部材20の他端部から延出されるワイヤーハーネスWHを、第1経路R1と、当該第1経路R1に対して中間部が離間するように膨らんだ第2経路R2との間で曲げて余長吸収可能に収容可能に形成されている(図5参照)。
【0048】
この収容部40は、正面視において、収容空間を挟んで対向する第1壁部41と第2壁部42とを有している。収容空間内に収容されるワイヤーハーネスWHは、第1経路R1を通る際に第1壁部41に近接し、第2経路R2を通る際に第2壁部42に近接して配設される。すなわち、ワイヤーハーネスWHが第1経路R1を通る状態で、該ワイヤーハーネスWHの第2壁部42側に余裕空間が存在する。この第1壁部41及び第2壁部42は、各一端部が案内部50の他端部に連続し、各他端部が引出口44の対向する壁部を形成している。より具体的には、第1壁部41は、正面視略L字形状のプロテクタPの内周側で、案内部50の他端部と収容部40の引出口44とを結ぶように延在している。また、第2壁部42は、第1壁部41に対してワイヤーハーネスWHを曲げ変形可能な間隔をあけて、正面視略L字形状のプロテクタPの外周側で、案内部50の他端部と引出口44とを結ぶように延在している。
【0049】
ドア6の開閉動作に関連付けて説明すると、ドア6の開状態では、外装部材20の他端部が案内部50のうち一端側の部分に退避して位置し、当該外装部材20の他端部から延出されるワイヤーハーネスWHは、第1経路R1を通って収容空間内に収容されている(図4参照)。
【0050】
また、ドア6が開姿勢から閉動作されると、外装部材20が案内部50内に前進移動し、その他端部から延出されるワイヤーハーネスWHは、収容空間内に押し込まれて第2壁部42に近接するように曲げられる。そして、ドア6が閉姿勢になると、ワイヤーハーネスWHは、第2経路R2を通って収容空間内に収容された状態となる(図6参照)。すなわち、ドア6の開状態に比べ、ワイヤーハーネスWHのうち収容空間内に収容される部分は長くなって余長吸収される。
【0051】
ドアの開動作時には、閉動作時とは逆に、ワイヤーハーネスWHは、収容空間内から案内部50側に引き出されて、その中の部分が第2経路R2から第1経路R1側に経路変更される(図4参照)。
【0052】
また、収容部40は、引出口44でワイヤーハーネスWHを固定可能なドア内位置決め部46を有している。ドア内位置決め部46は、引出口44の開口縁部が部分的に延出した形状に形成されている(図3〜図6参照)。そして、引出口44を通じて引き出されるワイヤーハーネスWHを、ドア内位置決め部46の内側に当接させた状態で、一緒にテープT巻き又はタイバンドで締付けして固定(ここではテープT巻きして固定)することにより、ドア6内において位置決めすることができる。これにより、ドア6の開閉動作時に収容部40内に車体2側のワイヤーハーネスWHが進退しても、ドア6内に配索されるワイヤーハーネスWHに対して引張り又は弛みが発生することを抑制して、収容空間内で余長吸収させることができる。
【0053】
ワイヤーハーネスWHを収容部40に対して固定する構成は、上記ドア内位置決め部46に限られず、引出口44から壁状に延出するドア内位置決め部にタイバンド挿通用の孔部が複数形成され、タイバンドを孔部に挿通してワイヤーハーネスWHを締付け固定するものであってもよい。
【0054】
なお、ワイヤーハーネスWHに加わる負荷を軽減する観点では、収容部40の好ましい形状は以下の通りである。以下、正面視における第1壁部41及び第2壁部42の形状を説明する。すなわち、第1壁部41は、ドア6の開状態において、ワイヤーハーネスWHのうち外装部材20の他端部とドア内位置決め部46との中間部分を、当該外装部材20の他端部とドア内位置決め部46とを結ぶ方向に平行な経路で収容するように経路規制可能に形成されている。また、第2壁部42は、ワイヤーハーネスWHが、案内部50の案内方向に沿ったライン及びドア内位置決め部46を通って案内方向に直交するライン上を通る経路より大きく曲げられることを規制可能に形成されている。ここでは、第2壁部42は、案内方向に沿った壁部と引出口44の貫通方向に沿った壁部とを湾曲部が接続する形状に形成されている。当該湾曲部は、部分的に案内部50から離間する向きにワイヤーハーネスWHの直径分より小さい寸法だけ膨らむように形成されている。
【0055】
もっとも、収容部40は、ワイヤーハーネスWHを余長吸収可能に収容するものであればよく、上記形状に限られるものではない。例えば、収容空間内に巻軸部を有し、当該巻軸部周りにワイヤーハーネスWHを巻いて収容可能な形状であってもよい。すなわち、収容部内でワイヤーハーネスWHの巻き径が変化することにより、余長吸収する構成である。なお、このようにワイヤーハーネスWHを巻いて余長吸収する構成でもよいが、本実施形態に係る上述した構成を採用すると、ワイヤーハーネスWHを交差させずに余長吸収できるため、収容部40の厚さ寸法を小さくすることができる。
【0056】
このプロテクタPは、ドア6内すなわちドアインナーパネル7とトリム8との間において、ドアインナーパネル7に形成されている凹部7h内に収容配設される。より具体的には、プロテクタPは、下記の姿勢及び位置でドア6内に配置可能なように、ドアインナーパネル7に対して固定可能に形成されている。
【0057】
プロテクタPは、案内部50が収容部40に対して前方側に位置すると共にドア6の前後方向に沿って延在し、引出口44がドア6の上方を向く姿勢でドア6内に配置されている。
【0058】
また、プロテクタPの取り付け位置について、取付部材30の車体2に対する取り付け位置との関係で説明する。上述したように、取付部材30は、車体2のうち開度規制部3と連結された部位の上方の部位に取り付けられ、プロテクタPは、案内口52がドア2のうち開度規制部3と連結された部位の上方の位置に配置されている。さらに、ここでは、平面視において、取付部材30は車体2のうち開度規制部3と連結された部位と重なる部位に取り付けられ、プロテクタPは、案内口52がドア2のうち開度規制部3と連結された部位と重なる位置に配置されている。これにより、ドア6の開状態で、平面視において、外装部材20のうち車体2とドア6との間に架け渡される部分が、開度規制部3に対して、該開度規制部3の車体側連結部とドア側連結部とを結ぶ方向全体に亘って重複する部分を有する(図3参照)。なお、開度規制部3のドア側連結部とは、ケース部3bのドア6(ドアインナーパネル7)に対する固定部である。
【0059】
そして、インナーパネル7の凹部7hは、プロテクタPを、上記姿勢且つ上記位置で、全体的又は部分的に収容可能な収容空間を有する凹形状に形成されている。そして、案内部50の案内口52は、凹部7hのうちドア6の前方の開口部を通じてドア6から外に露出される。
【0060】
上述したように、凹部7hの前側の開口部と車体2に形成されている孔部2hとは、ドア6の閉状態において、車体2の前後方向に対向するように形成されている。そして、取付部材30及びプロテクタPは、ドア6の閉状態において、当該取付部材30と案内部50の案内口52とが車体2の前後方向に対向する位置で車体2に取り付け又はドア6内に配置されている。より具体的には、ドア6の閉状態では、取付部材30の貫通方向(挿入方向S)と案内部50の延在方向とが略直線上に位置する。これにより、取付部材30及び案内部50に挿通される外装部材20及びその内部のワイヤーハーネスWHは、ドア6の閉状態において、略直線状に延在する。
【0061】
もっとも、ワイヤーハーネス配索構造10は、取付部材30及び案内部50の案内口52が開度規制部3の各連結部の真上の位置より車室外側(ドアヒンジ5に近い側)に位置するように設けられてもよい(図示省略)。すなわち、開度規制部3のアーム部3aが車体2とドア6との間で略直線状に延在するのに対して、外装部材20は車室内側(ドアヒンジ5から遠い側)に凸となる曲線状に延在する。このため、ドア6の開状態では、外装部材20が開度規制部3より僅かに車室内側に膨らんだ形状で延在する。これに対応して、平面視において、開度規制部3のアーム部3aが、より広範囲で外装部材20に重なるように、上記のように取り付け位置を設定してもよい。
【0062】
ここでは、プロテクタPは、ドアインナーパネル7の凹部7hの底部に形成される孔部に対して嵌合可能な固定部58を有している。この固定部58は、プロテクタPを凹部7h内に収容する方向に押し付けることにより、孔部に嵌合可能に形成されている。例えば、固定部58としては、プロテクタPの外面から突出する基軸部と、その先端部からその外周側に拡がるように形成され、内周側に弾性変形可能な係止部とを有する構成を採用できる。ここでは、固定部58は、プロテクタPの一方側の外面のうち、案内部50及び収容部40からそれぞれ突出するように2箇所に設けられている。より具体的には、固定部58は、案内部50が収容部40の前方側に位置すると共に引出口44がドア6の上方を向く姿勢のプロテクタPのうち、車室外側の面から当該車室外側に向けて突出している。
【0063】
そして、この固定部58を凹部7hに形成された孔部に挿入することにより、係止部が、孔部に当接して内周側に弾性変形し、孔部を越えると外周側に弾性復帰して孔部の周縁部に対して裏側から係止する。このように、上記固定部58によりドアインナーパネル7に対して固定可能なプロテクタPによると、プロテクタPを凹部7h内に配設する方向に近接させることにより、固定部58が凹部7hに形成された孔部に係止するため、容易に固定することが可能である。
【0064】
もっとも、プロテクタPをドアインナーパネル7に対して固定するための構成は、上記の姿勢及び位置でドア6内に配設可能であればよく、その他の固定構造が採用されてもよい。例えば、プロテクタPは、ねじ止めによりドアインナーパネル7に対して固定可能な形状であってもよい。
【0065】
上記姿勢及び位置でドア6内に配設されるプロテクタPの引出口44は、ドア6内のうち上側部分に位置する。一般的に、ドア内に搭載されるスイッチ、パワーウインドウモータ、ドアロック及びミラーモータ等の電気機器は、ドア6内の上側部分に設置されることが多い。このため、ドア6内に配索されるワイヤーハーネスWHは、より短い経路で電気機器に対して接続される。
【0066】
なお、収容部は、ドア6内におけるワイヤーハーネスWHの経路の短縮化の観点から、引出口(及び収容部全体)を各種電気機器の設置位置(通常後方)に向けて傾斜させて形成されてもよい。
【0067】
上記収容部40及び案内部50を有するプロテクタPは、例えば、凹状部材と蓋状部材とが合体されて成る構成(図示省略)を採用することができる。そして、プロテクタPは、凹状部材と蓋状部材とを、それぞれ射出成型等により製造して合体させることにより構成することができる。もっとも、プロテクタPは、全体として凹状に形成され、トリム8により開口を塞がれるように構成されていてもよい。
【0068】
もっとも、収容部40と案内部50とは、一部品のプロテクタPとして形成される場合に限られず、案内部50の他端側に当該案内部50とは別体の収容部40が設けられ、当該案内部50により収容部40に向けて外装部材20が案内されるものでもよい。
【0069】
上記ワイヤーハーネス配索構造10は、車体2からドア6内に配索されるワイヤーハーネスWH、外装部材20、取付部材30及びプロテクタPをモジュール化して、車両組付け前に組み立てておくとよい。すなわち、ワイヤーハーネスWHを外装部材20内に配設し、外装部材20の一端側部分に取付部材30を装着すると共にその一端部をワイヤーハーネスWHに対してテープT巻きして固定し、且つ、外装部材20の他端部をワイヤーハーネスWHにテープT巻きして固定する。そして、外装部材20の他端側部分をプロテクタPの案内部50内に配設し、外装部材20の他端部から延出されるワイヤーハーネスWHを収容部40内に配設して引出口44から引き出される部分をドア内位置決め部46にテープT巻き固定しておけばよい。
【0070】
これまで、ワイヤーハーネス配索構造10を、車体2とフロントサイドドアとしてのドア6との間に適用する例で説明したが、リアサイドドアにも適用可能である。この場合、センターピラー(フロントサイドドアとリアサイドドアとの間のピラー)とリアサイドドアとの間にワイヤーハーネスWHが架け渡される。すなわち、センターピラーに孔部が形成され、ここに取付部材30が取り付けられる。
【0071】
第1実施形態に係るワイヤーハーネス配索構造10によると、案内部50によりワイヤーハーネスWHを覆う外装部材20のうち他方の端部を含む一部分のドア6内における変位経路を案内可能であると共に、収容部40により当該外装部材20の他方の端部から延び出たワイヤーハーネスWHを、該ワイヤーハーネスWHが迂回可能な余裕空間を有する状態で収容するように形成されているため、ワイヤーハーネスWHをドア6の開閉動作に伴ってドア6内にスムーズに進退させて余長吸収することができる。しかも、取付部材30が車体2のうち開度規制部3と連結された部位の上方の部位に取り付けられると共に、案内部50がドア6のうち開度規制部3と連結された部位の上方の位置からドアの内部に亘る領域に配置されているため、車体2とドア6との間でワイヤーハーネスWHを見栄え良く配索することができる。
【0072】
しかも、開度規制部3より上方で配索されるワイヤーハーネスWHは、搭乗者の乗降時の足元の位置より上方に位置するため、ドア6の開度が大きい車種においても、当該ワイヤーハーネスWHを覆う外装部材20に対して、搭乗者の足等が接触することを抑制できる。
【0073】
また、取付部材30が、平面視において車体2のうち開度規制部3と連結された部位と重なる部位に取り付けられると共に、案内部50が、平面視において一方の端部がドア6のうち開度規制部3と連結された部位と重なる位置に配置されている。このため、ドア6の開状態で、平面視において、外装部材20のうち車体2とドア6との間に架け渡される部分は、開度規制部3に対して車体側連結部とドア側連結部とを結ぶ方向全体に亘って重複する。これにより、外装部材20がより露出されるドア6の開状態において、より見栄えを良くすることができる。
【0074】
また、取付部材30が開度規制部3の車体側連結部の真上の位置で車体2に対して取り付け可能に形成されていると共に、案内部50が、開度規制部3のドア側連結部の真上に案内口52が位置するようにドア6内に配設可能に形成されている。このため、車体2とドア6との間でワイヤーハーネスWHをより見栄え良く配索することができる。
【0075】
また、ドア6の閉状態において、取付部材30と案内部50の案内口52とが車体2の前後方向において対向するため、取付部材30から案内部50内に挿通されるワイヤーハーネスWHは直線状に配設され、当該ワイヤーハーネスWHにかかる負荷を軽減することができる。
【0076】
また、一般的に、ドア6内に搭載されるスイッチ、パワーウインドウモータ、ドアロック及びミラーモータ等の電気機器は、ドア6内の上方側に設置されることが多い。これに対して、収容部40は、引出口44が上方を向く姿勢でドア6内に配設可能に形成されているため、ドア6内でワイヤーハーネスWHを上方に引き出して当該電気機器に対してより短い経路で配索することができる。
【0077】
また、外装部材20が、扁平な形状に形成され、車体2の上下方向に沿って扁平な姿勢で設けられるため、ドア6の内外方向において狭いスペースに配索できると共に、ドア6内に配設される案内部50及び収容部40も扁平な形状にすることができ、ドアインナーパネル7とトリム8との間のスペースが狭いドア6の場合でも適用することができる。また、外装部材20は、車体2の上下方向沿って扁平な姿勢で設けられるため、当該上下方向において比較的曲がり難く、ワイヤーハーネスWHの垂れ下がりを抑制できる。
【0078】
また、取付部材30は、凹凸嵌合部38によりワイヤーハーネスWHを覆う外装部材20の一端側部分を位置決めして、孔部2hに対して一方側から押し付けるだけで嵌合するように構成されているため、ワイヤーハーネスWHを容易に車体2側に配索することができる。
【0079】
また、ワイヤーハーネス配索構造10は、ワイヤーハーネスWHをウェザーストリップ6wより車室内側に配索しているため、グロメット等の止水用の部材を省略して、部品点数及び組立工数の削減、これに伴うコストダウン及び作業の効率化を図ることができる。なお、グロメットを用いない構成によれば、輸送時、梱包時のグロメットの変形を防止するためのカバーを用意することを省略することができる。さらに、盗難防止にも寄与する。また、ドア6側にグロメットで取付する場合と比較して、ワイヤーハーネスWHを通す際のグロメットの拡げ作業も省略することができ、ワイヤーハーネスWHの組み付け性向上に寄与する。
【0080】
また、ワイヤーハーネス配索構造10は、ワイヤーハーネスWHをドアインナーパネル7とトリム8との間に配索しているため、ワイヤーハーネスWHを貫通孔に挿通して配索する手間を省けると共に露出した作業スペースで組み付け作業ができ、組付性の向上及び作業の効率化が図れる。
【0081】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係るワイヤーハーネス配索構造110について説明する。このワイヤーハーネス配索構造110のうち、第1実施形態に係るワイヤーハーネス配索構造10と実質的に異なる部分はプロテクタPaの形状とその配設態様のみであり、同様の構成については同符号を付し、説明を省略する。
【0082】
プロテクタPaは、案内部50が収容部40に対して前方側に位置すると共にドア6の前後方向に沿って延在し、引出口44がドア6の下方を向くと共に開度規制部3に対してドア6の後方側に位置する姿勢でドア6内に配置されている。すなわち、プロテクタPaは、上述したプロテクタPとは反対側に突出する固定部158を有している。より具体的には、固定部158は、案内部50が収容部40に対して前方側に位置すると共に引出口44がドア6の下方を向く姿勢で、ドア6の車室外側の面から当該車室外側に向けて突出している。なお、プロテクタPaは、全体として、案内方向及び引出口44の貫通方向に平行な面についてプロテクタPと面対称に形成されていてもよい。
【0083】
また、ドアインナーパネル7の凹部は、上記姿勢でプロテクタPaを収容配設可能な形状に形成されているとよい。
【0084】
そして、プロテクタPaがドア6内に配設された状態で、ワイヤーハーネスWHは、開度規制部3の上方を通ると共にその後方で下方に曲げて配索される。しかも、上記プロテクタPaは、全体として略L字形に形成されているため、その内周側すなわちプロテクタPのドア6配設姿勢において案内部50の下方且つ収容部40の前方には、プロテクタPによって2方を囲まれるスペースが生まれる。つまり、プロテクタPaは、案内口52が開度規制部3のドア側連結部の真上に位置すると共に引出口44が下方を向くように配設されるため、開度規制部3のケース部3b及びアーム部3aのドア6内進退スペースを囲むようにドア6内に位置する。これにより、開度規制部3の後方側のスペースをワイヤーハーネスWHの引き出しスペース及びプロテクタPの配設スペースとして有効活用することができる。
【0085】
また、ワイヤーハーネスWHを下方に引出す構成によれば、通常ドア6内の下側部分に設置されるスピーカーに接続される電線の配索経路を短くすることができる。
【符号の説明】
【0086】
2 車体
3 開度規制部
5 ドアヒンジ
6 ドア
10、110 ワイヤーハーネス配索構造
20 外装部材
30 取付部材
40 収容部
44 引出口
50 案内部
58、158 固定部
P、Pa プロテクタ
WH ワイヤーハーネス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドアヒンジ及びドアの開度を維持する開度規制部により連結された車体と前記ドアとの間にワイヤーハーネスを配索するワイヤーハーネス配索構造であって、
前記ワイヤーハーネスと、
前記ワイヤーハーネスのうち前記車体と前記ドアとの間に架け渡される部分を覆う筒状の外装部材と、
前記外装部材のうち一方の端部寄りの一部分に固定され、前記車体のうち前記開度規制部と連結された部位の上方の部位に取り付けられた取付部材と、
前記ドアのうち前記開度規制部と連結された部位の上方の位置から前記ドアの内部に亘る領域に配置され、前記外装部材のうち他方の端部を含む一部分の前記ドア内における変位経路を案内する筒状又は溝状の案内部と、
前記ドア内において前記案内部に連なって配置され、前記外装部材の前記他方の端部から延び出た前記ワイヤーハーネスを、該ワイヤーハーネスが迂回可能な余裕空間を有する状態で収容し、前記ワイヤーハーネスの引出口が形成された収容部と、
を備えるワイヤーハーネス配索構造。
【請求項2】
請求項1に記載のワイヤーハーネス配索構造であって、
前記取付部材は、平面視において前記車体のうち前記開度規制部と連結された部位と重なる部位に取り付けられ、
前記案内部は、平面視において前記一方の端部が前記ドアのうち前記開度規制部と連結された部位と重なる位置に配置されている、ワイヤーハーネス配索構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のワイヤーハーネス配索構造であって、
前記取付部材及び前記案内部は、前記ドアの閉状態において、前記取付部材と前記案内部のうち前記収容部に対して反対側の端部とが前記車体の前後方向に対向する位置で前記車体に取り付けられ又は前記ドア内に配置されている、ワイヤーハーネス配索構造。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のワイヤーハーネス配索構造であって、
前記収容部は、前記引出口が上方を向く姿勢で前記ドア内に配置されている、ワイヤーハーネス配索構造。
【請求項5】
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のワイヤーハーネス配索構造であって、
前記収容部は、前記引出口が下方を向くと共に前記開度規制部に対して前記ドアの後方側に位置する姿勢で前記ドア内に配置されている、ワイヤーハーネス配索構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−176649(P2012−176649A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−39820(P2011−39820)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)